特許第6249729号(P6249729)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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特許6249729光学的測定装置、記録装置、処理方法およびプログラム
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6249729
(24)【登録日】2017年12月1日
(45)【発行日】2017年12月20日
(54)【発明の名称】光学的測定装置、記録装置、処理方法およびプログラム
(51)【国際特許分類】
   G01J 3/51 20060101AFI20171211BHJP
【FI】
   G01J3/51
【請求項の数】12
【全頁数】11
(21)【出願番号】特願2013-236736(P2013-236736)
(22)【出願日】2013年11月15日
(65)【公開番号】特開2015-96826(P2015-96826A)
(43)【公開日】2015年5月21日
【審査請求日】2016年11月8日
(73)【特許権者】
【識別番号】000001007
【氏名又は名称】キヤノン株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100126240
【弁理士】
【氏名又は名称】阿部 琢磨
(74)【代理人】
【識別番号】100124442
【弁理士】
【氏名又は名称】黒岩 創吾
(72)【発明者】
【氏名】五十嵐 勇樹
(72)【発明者】
【氏名】永山 正登
【審査官】 塚本 丈二
(56)【参考文献】
【文献】 特開2008−185565(JP,A)
【文献】 特開2010−281808(JP,A)
【文献】 特開2013−174506(JP,A)
【文献】 米国特許出願公開第2013/0265795(US,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G01J 3/00−3/52
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
記録媒体に対して光を発するための、第1の光源による第1の発光部と前記第1の光源よりも耐用期間が長い第2の光源による第2の発光部と、前記記録媒体により反射された前記第1および第2の発光部から発せられた光それぞれを受光するための受光部と、を備えたセンサを有し、前記記録媒体に記録された画像を前記センサにより前記光学的に測定する光学的測定装置であって、
前記第1の発光部の発光強度と前記第2の発光部の発光強度とに関する情報を取得する取得手段と、
前記取得手段が取得した情報に基づき、前記第1の発光部からの光の波長と前記第2の発光部からの光の波長とが重複する波長領域における前記第1の発光部の発光強度と前記第2の発光部の発光強度との比の変動に応じて前記第1の発光部の前記第1の光源の交換に関わる処理を行う処理手段を有することを特徴とする光学的測定装置。
【請求項2】
前記処理手段は、前記取得手段が取得した情報に基づく前記第1の発光部の発光強度の前記取得手段が取得した前記第2の発光部の発光強度に対する比が所定の比より小さい場合に前記第1の発光部の前記第1の光源の交換に関わる処理を行うことを特徴とする請求項1に記載の光学的測定装置。
【請求項3】
前記処理手段は、前記取得手段が取得した情報に基づく前記第1の発光部の発光強度の前記取得手段が取得した前記第2の発光部の発光強度に対する比の、前記取得手段が前回以前に取得した情報に基づく前記第1の発光部の発光強度の前記取得手段が取得した前記第2の発光部の発光強度に対する比からの変動に応じて、前記第1の発光部の前記第1の光源の交換に関わる処理を行う請求項1または2に記載の光学的測定装置。
【請求項4】
前記第1の発光部の前記第1の光源の交換に関わる処理は前記第1の発光部の前記第1の光源の交換に関わる情報をユーザーに報知することであることを特徴とする請求項1乃至3のいずれか一項に記載の光学的測定装置。
【請求項5】
前記第1の発光部の前記第1の光源の交換に関わる処理は前記第1の発光部の前記第1の光源の交換に関わる情報を表示デバイスに表示させることであることを特徴とする請求項1乃至4のいずれか一項に記載の光学的測定装置。
【請求項6】
前記取得手段は前記第1の発光部と、前記第2の発光部とのそれぞれが、同じ校正部材に対して発した光の反射光それぞれを前記受光部にて受光することにより前記第1の発光部の発光強度と前記第2の発光部の発光強度とに関する情報を取得することを特徴とする請求項1乃至5のいずれか一項に記載の光学的測定装置。
【請求項7】
前記取得手段は前記第1の発光部と、前記第2の発光部とのそれぞれは、同じ光路部材を通して前記校正部材に対して光を発することを特徴とする請求項6に記載の光学的測定装置。
【請求項8】
前記第1の光源は金属に対して通電することで通電部が発光する光源であり、前記第2の光源は発光ダイオードを用いた光源である事を特徴とする請求項1乃至のいずれか一項に記載の光学的測定装置。
【請求項9】
前記第1の光源はハロゲンランプであり、前記第2の光源はLEDである事を特徴とする請求項に記載の光学的測定装置。
【請求項10】
請求項1乃至のいずれか一項に記載の光学的測定装置と、前記記録媒体に画像の記録を行うための記録手段とをそなえた記録装置。
【請求項11】
記録媒体に対して光を発するための、第1の光源による第1の発光部と前記第1の光源よりも耐用期間が長い第2の光源による第2の発光部と、前記記録媒体により反射された前記第1および第2の発光部から発せられた光それぞれを受光するための受光部と、を備えたセンサであって、前記記録媒体に記録された画像を前記光学的に測定するための前記センサの処理方法であって、
前記第1の発光部の発光強度と前記第2の発光部の発光強度とに関する情報を取得する取得工程と、
前記取得工程において取得した情報に基づき、前記第1の発光部からの光の波長と前記第2の発光部からの光の波長とが重複する波長領域における前記第1の発光部の発光強度と前記第2の発光部の発光強度との比の変動に応じて前記第1の発光部の前記第1の光源の交換に関わる処理を行う処理工程と、
を有することを特徴とするセンサの処理方法。
【請求項12】
請求項1に記載の処理方法をコンピュータに実行させるためのプログラム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、光学的測定装置、記録装置、処理方法およびプログラムに関する。
【背景技術】
【0002】
従来、印刷物の製作現場では本印刷に入る前に校正刷りを行い、校正刷りした印刷見本に表示された画像や当該画像と一緒に表示されている認証用のカラーパッチを参考にして画像データの色が再現されているか否かを確認する色校正が行われている。
【0003】
最近では校正刷りに要する時間を短縮するために、製版用の印刷データから直接、校正紙を出力する簡易校正と呼ばれている色校正の形態が広く普及しており、このような校正紙の出力にインクジェットプリンタが使用されるようになってきている。
【0004】
さらには、印刷から測色までの一連の高速なワークフローを提供するため、記録装置に発光手段および受光手段を備える測色センサを装着可能なものがある。更には、測色センサそのものの定期校正やメンテナンスを目的としてセンサ部をユーザ交換可能とした構成をとる装置がある。
【0005】
さて、一般的に測色センサは工場出荷時やユーザ使用中も定期的に、タイルや色票を基準として、波長と反射率が決められた値に等しくなるように反射率補正が行われる。ユーザ使用時の温度や湿度などの環境によって変化が生じるものに対しては、例えば白色基準板のようなものを測定前に基準測定物として測定させることによって、測定精度を向上させることもある。
【0006】
一方、光源の劣化や特性変動が発生することがあり、定期的に光源を交換することが推奨されている。
【0007】
一般的に、前述の光源の交換は、センサの使用回数や使用時間に基づいて推奨値が決められているが、センサそのものの特性を測定し、設置時からの波長や反射率の変動からユーザに対して交換を促したり判断させたりする機能を有するものがある。
【0008】
例えば、特許文献1では、複数の光源を有する分光光度計において、各光源の光量をそれぞれ独立に測定し、各光源の絶対値が所定の適性値になるように各光源の駆動パラメータを決定して、駆動を行う。また、駆動パラメータが許容範囲を超えた場合には、その光源を交換するように警報を出す。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0009】
【特許文献1】特開平9−184758号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
しかしながら、複数光源のそれぞれの光量を独立に検出して、それぞれが交換時期に至ったかどうかを判定している。この方法においては、それぞれの光源から受光手段までの光路上の光学部品が劣化もしくは汚れていた場合にはそれに起因する検出誤差の影響を受け、使用を重ねたことで発光部の発光強度が下がってきたことについて正確に関知することができない。
【0011】
本発明は上記を鑑みなされたものであって使用による発光部の発光強度の低下を正確に関知することが可能な光学的測定装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0012】
本発明は、記録媒体に対して光を発するための、第1の光源による第1の発光部と前記第1の光源よりも耐用期間が長い第2の光源による第2の発光部と、前記記録媒体により反射された前記第1および第2の発光部から発せられた光それぞれを受光するための受光部と、を備えたセンサを有し、前記記録媒体に記録された画像を前記センサにより前記光学的に測定する光学的測定装置であって、前記第1の発光部の発光強度と前記第2の発光部の発光強度とに関する情報を取得する取得手段と、前記取得手段が取得した情報に基づき、前記第1の発光部からの光の波長と前記第2の発光部からの光の波長とが重複する波長領域における前記第1の発光部の発光強度と前記第2の発光部の発光強度との比の変動に応じて前記第1の発光部の前記第1の光源の交換に関わる処理を行う処理手段を有することを特徴とする光学的測定装置。
【発明の効果】
【0013】
本発明によれば、記録物の読み取りセンサの光学特性を補正するための構成部材の状態を簡便な方法で検知することが可能となり、センサのばらつきの補正を簡便に精度よく行うことができる方法および装置を提供することが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0014】
図1】本発明の実施形態に係る記録装置を説明するための模式図である。
図2】本発明の実施形態に係る記録装置の構成要素を説明するためのブロック図である。
図3】本発明の実施形態に係るセンサ内に保存される反射率データを示す表である。
図4】本発明の実施形態に係るセンサ状態判定フローチャートである。
図5】本発明の実施形態に係る各光源と汚れの分光特性を示すグラフである。
【発明を実施するための形態】
【0015】
以下、本発明の実施形態について図面を参照して説明する。以下の説明では本発明に係る光学的測定装置を備えるインクジェット記録装置に備えた場合について説明するが本発明はこれに限定されず、電子写真方式の記録装置にも適用可能である。
【0016】
図1は本発明の一実施形態に係る光学的測定装置を備えたインクジェット記録装置を示す模式図であり、図1(a)はインクジェット記録装置の断面図、図1(b)は測色部の斜視図、図1(c)は測色センサの概略構成図である。図2はインクジェット記録装置の簡略ブロック図である。
【0017】
図1に示すように、インクジェット記録装置1において、用紙50は矢印の方向に搬送され、用紙50の先端が搬送ローラ10とピンチローラ11とのニップ部まで到達すると、用紙50は搬送ローラ10とピンチローラ11とで挟持され、記録ヘッド2に対向配置されたプラテン12上へと搬送される。画像記録部に搬送された用紙50は、記録ヘッド2により画像が記録される。記録媒体に印刷を行なうための印刷部は、記録ヘッド2と、記録ヘッド2を搭載するキャリッジ3と、記録ヘッド2に対向配置されたプラテン12とによって構成されている。キャリッジ3は、インクジェット記録装置に互いに平行に配置されたキャリッジシャフト4と不図示のガイドレールに沿って記録媒体の搬送方向と交差する方向に摺動可能に支持されている。
【0018】
図2もさらに参照すると、まず、光学的測定装置は測色センサ20、測色センサの測色に関わる昇降モータ41、センサホルダモータ43、送風ファン45等のデバイスと、各デバイスそれぞれを駆動させるための各駆動回路40、42、44および測色装置制御回路38を備えている。測色装置制御回路38は、不揮発性メモリ(不図示)に記憶された制御プログラムに従い、各駆動回路40、42、44への信号の伝達、測色センサ内の記憶部105に対するインターフェイス部106を介しての情報の読み書き、情報をもとにした計算、および記録装置のインターフェイス部22を介しての記録装置との通信を行う。測色センサ20内のCPU104は点灯回路100を介して発光部101を制御する。受光部である光電変換素子102が受光した光はA/Dコンバータにより電気信号に変換され、受光強度が得られる。なお、以下に説明する測色装置制御回路38による制御動作は、プログラムによって記録装置のCPUや記録装置とともに使用されるコンピュータに実行させることも可能である。
【0019】
一方記録装置においては、エンコーダセンサ37からのパルス情報に基づいてキャリッジモータ31とキャリッジモータ駆動回路31によってキャリッジモータ30を駆動してキャリッジ3の移動が制御される。印刷データは、エンコーダセンサ37からのパルス情報をもとに印刷データ処理回路36によってキャリッジ位置と同期した印刷タイミングで処理され、記録ヘッド駆動制御回路27へ送信され、記録ヘッド2によって順次記録される。その他記録装置には記録装置の記録動作の制御に関わるCPU23、ROM24、RAM25、EEPROM26,KEY,SW33,入力制御回路32、の表示デバイスとしてのLED、LCD35およびそれを制御する出力制御回路34を備えている。出力制御回路34は、後述する測色装置制御回路38からの光源交換に関わる処理に基づいてLED、LCDにユーザーに交換の必要性を知らせる表示を行わせる。
【0020】
印刷が開始されると、キャリッジ3の往動または復動による1ライン分のスキャンにより画像を記録すると、搬送モータ29と搬送モータ駆動回路28とにより、搬送方向に所定ピッチだけ用紙50を送り、キャリッジ3を再び移動させて次のラインの画像記録を行う。用紙50の記録済み部は、排紙ガイド14へ向けて搬送され、これを繰り返してページ全体に画像が記録される。画像記録が終了すると、用紙50の記録済み部は搬送ローラ10とピンチローラ11とにより所定の位置まで搬送され、測色を実行しない場合はカッター5によって切断される。切断された用紙50は、排紙ガイド14から不図示の排紙バスケットに排出される。
【0021】
測色部6は、印刷部の下流側の排紙ガイド14の上部に配置されており、測色に用いられる測色センサ20は測色部6内のセンサホルダ7に搭載可能なように構成されている。
【0022】
測色部6は、ユーザによって測色センサが着脱可能な構成であり、初期設置時には取り付けを、メンテナンス時、定期校正時にはセンサと白色基準板110をユーザが取り外しを行う。
【0023】
測色部6には送風ファン45と用紙部に送風させるための送風ダクト15が内蔵されており、所定位置にある用紙50に対して送付ファン駆動回路44を介して送風ファン45を駆動し、印刷されたチャートの定着を促すように送風を行う。
【0024】
センサホルダ7は、インクジェット記録装置に互いに平行に配置された測色キャリッジシャフト8と不図示のガイドレールによって支持されており、用紙50上に印刷された測色チャートは、搬送ローラ10とピンチローラ11と搬送制御部により測色スポットの下に搬送される。測色スポットは符号21で図示され、用紙押さえ部材9のスリット中央部に位置する。
【0025】
測色部6は、ユニット回転軸13を中心として回転し、測色動作を行うときには用紙50を用紙抑え部材9と排紙ガイド14の間で挟むように測色部6を所定の測色位置まで移動させる。なお、非測色時は用紙との干渉を避けるため、測色部6を測色時とは逆の方向に移動させる。
【0026】
測色部6が所定の測色位置まで移動すると、センサホルダが反射率補正位置108まで移動する。反射率補正位置108には測色センサの基準位置と用紙50との距離と同じ距離になるように反射率補正用の白色基準板110が配置されており、測色前と連続所定測色回数を超えた場合には反射率補正を実行する(図1(b))
反射率補正が終了すると、センサホルダ7に保持された測色センサ20は、測色キャリッジシャフト8とガイドレールに沿って移動し、用紙50上に測色センサ移動方向と平行に印刷された測色用チャート内の各パッチを順次測色する。
【0027】
印刷が終了し測色を実行する場合には、CPU23は搬送モータ駆動回路28を駆動し、用紙50に印刷された測色対象チャートを所定の位置まで搬送する。搬送する目標位置は、メカの設計寸法から算出された位置であり、送風ダクト15から送風される風があたる位置まで搬送し、一定期間送風後に測定対象チャートをセンサスポット21の光軸中心とチャートの搬送方向の中心が同一位置になるように搬送する。本実施例においては、ここでの同一になる位置は設計上の寸法から算出された値とするが、用紙ごとに印刷時の搬送ローラ10とピンチローラ11と、用紙50との滑り量から算出された補正値を設計上の寸法に加算した値としても良い。
【0028】
測定対象チャートが所定位置に到達すると、測色部6を用紙抑え部材9が測定対象チャートを挟んで排紙ガイド14上に接するように移動し、移動後に測色センサ20にて測色を実施する。
【0029】
測定対象チャートが複数の行で構成されている場合は、上述の動作を各行にて繰り返しながら順次測色を実施する。全ての行の測色が終了すると、用紙50の記録済み部の測色領域は搬送ローラ10とピンチローラ11とにより所定の位置まで搬送され、カッター5によって切断される。切断された用紙50は、排紙ガイド14から不図示の排紙バスケットに排出される。
【0030】
記録装置のCPUは測色結果に基づいて印刷データ処理回路36に記録濃度を補正する処理を行わせる。
【0031】
本発明の実施形態において使用される測色センサ20について図1(c)を参照して詳細に説明する。測色センサは図1(c)に示すように、0−45°のジオメトリで、400nmから700nmまでの10nmごとにバンドパスフィルタ107を有する環状受光系で構成されるセンサの例を示す。
【0032】
第1の発光部101Aは第1の光源であるハロゲンランプによる発光を行う、第2の発光部101Bは第2の光源としてのUVLEDによる発光を行う。それぞれの光は同一のレンズなどの光路部材(不図示)を経由して測定対象物に照射される。これら発光部は測定対象物に対して垂直に照射するように構成されており、測定対象物が反射した反射光の45°の乱反射成分を抽出して取り出すように、リング状に31個の受光部としての光電変換素子102が配置される。光源による照射はハロゲンランプの点灯、UVLEDの点灯またはその両方を点灯させての測定を選択的に行う事が可能である。
【0033】
各光電変換素子の前部には400nmから700nmまで10nmごとの透過波長のピークを有するバンドパスフィルタ107が配置されている。これにより、測定対象物からの乱反射成分が分光され、各光電変換素子によって電圧に変換される。その後、各電圧はA/Dコンバータ103によって16bitのデジタルデータへ変換される。本実施例では高速化のためA/Dコンバータ103は光電変換素子と同じ個数分だけ備えられているが、各光電変換素子とA/Dコンバータ103の中間にアナログスイッチを設けて逐次切り替えてアナログ−デジタル変換しても良い。さらには、これら10nmごとのデジタルデータを、全反射を反射率150%として正規化し、出力することによって受光強度としての分光反射率データをI/F部106を介して外部へ出力する。
【0034】
また、測色センサは反射率の補正を行うために基準測定対象物として白色基準板110とのセットで出荷される。白色基準板110は、出荷前に基準となる標準分光測色器にて分光反射率がハロゲンランプ照射条件、UVLED照射条件またはその両方の照射条件で測定される。測定結果は10nm波長ごとに16bit諧調データへと変換され、セット出荷される測色センサの記憶部105へそれぞれのデータが記憶される。
【0035】
反射率補正は、まず、測色センサにて白色基準板110を測定し、記憶された同じ波長の16bitの基準分光反射率で10nmバンドごとに得られた16bitのデジタルデータを割ることによって補正係数を算出する。そしてチャート測定時に各々の測定結果に対してこの補正係数を補正値としてかけることによって行われる。
【0036】
出荷前にそれぞれの照射条件における出荷時補正前測定値がセンサ内部の記憶部105へそれぞれ保存される。具体的には、まず測色センサ20にてセットとなる白色基準板110を規定の位置にて測定する。そして、A/Dコンバータ103の基準電圧を反射率150%として正規化を行って得られた値を、図3のように出荷時補正前測定値として白色基準分光反射率と共に測色センサの記憶部105に保存される。
【0037】
ユーザ先では、温湿度などの測定環境が変化した場合や前回の反射率補正時からの一定時間経過後に再度白色基準板110を測定して補正値が算出される。そして、各光電変換素子からの出力値とセンサ内部に保存されている白色基準分光反射率からセンサから出力される分光反射率を補正する。
【0038】
本発明の実施形態における測色センサは、センサ内部に保存されている基準分光反射率を用いて反射率補正を行った結果と、補正を行わず正規化した結果をそのまま出力する2種類の結果を測定値として選択的に出力可能である。
【0039】
また測定については、光源をハロゲンランプの点灯、UVLEDの点灯またはその両方を点灯させての測定をそれぞれ選択的に行う事が可能である。
【0040】
図4は、前述の測色器の構成と測色センサを用いたセンサ状態判定フローを示したフローチャートである。センサ状態の判定フローではセンサ出荷時に取得された出荷時補正前測定値と、判定フロー時に取得された反射率補正しない測定値を比較することによってセンサの状態を判定する。
【0041】
図4に示すセンサ状態判定フローは時間あるいは測色センサの使用回数に基づいて一定期間ごとに実行されることが望ましい。本実施例に置いては、測色センサを使用するプリント物が印刷される直前に実施する。また、図4のフローはユーザがセンサを装着した際には毎回実行されることが望ましい。
【0042】
センサの状態判定フローでは、先ず出荷時と同じ対象物である校正部材の白色基準板を測定するために測色センサを白色基準板110上部へ移動させる(S401)。移動が終了すると、白色基準板110の分光反射率をハロゲンランプの照射光の反射光の受光により測定する(S402)。測色が終了すると、A/Dコンバータ103のリファレンス電圧を150%として正規化して得られた分光反射率を測色装置制御回路38へ送信する(S403)。同様に白色基準板110の分光反射率をUVLEDの照射により測定し(S404)、正規化した分光反射率を測色装置制御回路38へ送信する(S405)。次に測色装置制御回路38は出力されたハロゲンランプ照射とUVLED照射による分光反射率の400nm〜700nmまで10nm毎の積分値をそれぞれの発光強度に関わる情報としてそれぞれ求めて、その比を算出する(S406)。
【0043】
ここで、本発明に用いられる複数の光源の分光スペクトルは重複する波長領域を持っている。図5(a)は複数の光源のそれぞれの分光強度を波長毎に表したグラフであり、P501がハロゲンランプ、P502がUVLEDを表している。また図5(b)は光学部品に付着する汚れの分光特性を表し、P504は有彩色でP505は無彩色の汚れの分光特性である。P503は複数の光源の重複する波長領域を表し、この領域P503のみを選択して積分値を求めてもよい。この領域503を用いて発光強度比を演算すると、図5(b)に示すP504のような有彩色の汚れが光学部品に付着し、特定の波長にのみ影響を与えた場合でもその影響を抑制する事が出来る。
【0044】
また、分光反射率の積分値に置き換えて、分光反射率から計算した明度を用いても良い。また、上記センサの光源はハロゲンランプまたはUVLEDまたはその両方を選択的に照射可能で、発光強度比の算出もハロゲンランプを照射して得られた発光強度とハロゲンランプとUVLEDの両方を照射して得られた発光強度の比を算出してもよい。
【0045】
測色装置制御回路38は分光測色値を取得すると、続いて測色センサ内部の記憶部105に保存されているそれぞれの照射条件の出荷時補正前測定値を読み出す(S407)。S406と同様に読み出したそれぞれの照射条件の分光反射率の400nm〜700nmまで10nm毎の積分値をそれぞれ受光強度して求めて、その比を算出する(S408)。S406と同様にここでも、複数の光源の重複する400nm付近の波長領域のみを選択して積分値を求めてもよい。また、分光反射率の積分値に置き換えて、分光反射率から計算した明度を用いても良い。
【0046】
出荷時補正前測定値の比からの変動を算出する為に出荷時測定値の比Rwで測定時の比Rを除算してKを求める(S409)。この出荷時からの変動率であるKが所定の閾値0.6よりも大きい時にS411へ、小さい時はセンサ状態が正常として判定終了する(S410)。この時の閾値は経験的に設定される値である。そして、S410で閾値を超えていた場合は記録装置のLED35等の表示デバイスに“センサの交換時期が近づいています”と表示して、ユーザーにセンサの交換を促す(S411)。また、上述した例では出荷時の値と比較したが、前回以前に白色基準板を測定した際の結果を記憶部に記憶しておいて、前回以前の発光強度比と今回の発光強度比とを比較することで判定をおこなってもよい。
【0047】
一般的に、ハロゲンランプやLEDなどの光源は点灯時間の経過とともに緩やかに光量が低下していく。寿命までの時間(耐用期間)は一般的にハロゲンランプが1000時間程度、LEDが40000時間程度であり、点灯時間が経過するとともにその比は単純変動する。この比がある所定の比を下回ると、寿命が短い光源の寿命が近付いた事が分かり、光源の交換が必要な時期が近付いてきたと判定する。
【0048】
また、上記の性質を利用すれば複数の光源の発光強度の比が変動していないのに急激に複数の光源の発光強度が低下した場合は光路上の光学部品や白色基準板等の部品が劣化したり、汚れたりした事を検出できる。そしてこの検出結果を“白色基準板が汚れている可能性があります”と、表示させることでユーザーに報知してもよい。
【0049】
センサ状態が正常として判定終了した場合にはチャートの印刷と測色が開始される。
【0050】
以上のように、白色基準板110を測色した際にセンサ内部に保存されている反射率補正量を適用して分光反射率に基づく値を出力し、出力された値を判定する。これによって、センサの初期出荷時からの光源劣化状態を、光路上の光学部品や白色基準板等の部品の劣化や汚れの影響を抑制して判定することが可能となる。
【0051】
また、上記分光測色センサの光源は寿命特性の異なる光源の組み合わせであれば、ハロゲンランプとLEDに限らない。例えば、寿命の短い光源として、タングステンなどの金属抵抗体であるフィラメントに電流を流して通電部を発光させる電球、蛍光灯、HIDランプなどの放電ランプがあげられる。また、寿命の長い光源としてはLED、有機EL、無機ELなどのエレクトロルミネセンス効果を用いた発光ダイオードを用いた光源である。発光ダイオードは半導体の中で電子の持つエネルギーを直接、光エネルギーに変換することで発光し、発熱が少ないためにエネルギー効率が高い。そのためフィラメントに通電して発光させる電球のように発光部が劣化していく構造に対して、原理的に寿命が長くなる。
【符号の説明】
【0052】
6 測色部
20 測色センサ
38 測色部制御回路
50 用紙部
100 点灯回路
101 発光部
101A ハロゲンランプ
101B UVLED
102 受光部
105 センサ記憶部
110 白色基準板
図1
図2
図3
図4
図5