(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【背景技術】
【0002】
近年、地球環境を保護するために、再生エネルギーの使用が注目されていて、特に太陽光発電が重視されている。このような太陽光発電においては、一般的に、半導体と同様に、単結晶シリコンを材料とする太陽電池が用いられている。
【0003】
単結晶シリコンは、チョクラルスキー法(以下、CZ法という)を適用した単結晶シリコン引上装置によって生産することが一般的である。
【0004】
CZ法は、単結晶シリコン引上装置において、高耐圧気密チャンバ内に配置した石英製のルツボ内に多結晶シリコンを入れて、石英ルツボ内の多結晶シリコンを加熱溶融し、石英ルツボの上方に配置されたワイヤ等からなる上軸に保持されたシードチャックにシード(種結晶)を取り付け、このシードを石英ルツボ内のシリコン融液に浸漬して、シード及び石英ルツボを回転させながらシードを引き上げて、単結晶シリコンを成長させるようになっている(例えば、特許文献1参照。)。
【0005】
一方、単結晶シリコン引上装置によって半導体製造用の単結晶シリコンを生産する際には、固液界面近傍の温度勾配を大きくするとともに、その他の温度領域における温度勾配を制御することによって、高品質の単結晶シリコンを生産するための技術が開示されている(例えば、特許文献2〜6参照。)。
【0006】
太陽電池を製造するための単結晶シリコンは、半導体の製造に用いる単結晶シリコンに比較すると、品質には高い水準を要求されないものの、単結晶シリコンが大量に必要とされることから、生産コストが低いことが要求され、単結晶シリコンを高速度で引き上げて、単結晶シリコン生産における生産性を向上する必要がある。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
しかしながら、単結晶シリコンを高速度で引き上げると、石英るつぼ内に貯留された融液が結晶化する際に、単結晶シリコンがくねって変形するという問題がある。
単結晶シリコンを低コストで生産するためには、単結晶シリコン引上時における変形を抑制しつつ、単結晶シリコンを高速度で引き上げることが不可欠であり、単結晶シリコンを、変形を抑制しつつ高速度で引上げる技術に対する技術的要請がある。
【0009】
そこで、発明者は、例えば、太陽電池の製造に用いる単結晶シリコンの引き上げに関して、高速度で引き上げても、単結晶シリコンを生産する際の生産性を向上することが可能な単結晶シリコン製造装置を鋭意研究した結果、引き上げ中の単結晶シリコンの熱を適切に抜熱することにより、引き上げ時の変形を抑制しつつ高速度で引き上げることが可能であるとの知見を得た。そして、単結晶シリコンの熱を適切に抜熱するうえで、チャンバの上部(トップチャンバ)内面を黒色化することが有効であることを掴んだ。
【0010】
この発明は、このような事情を考慮してなされたもので、太陽電池や半導体等に用いる単結晶シリコンを引き上げて生産する際に、単結晶シリコンがくねって変形を抑制しつつ高速度で引き上げられ、生産性を向上することが可能な単結晶シリコン引上装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0011】
上記課題を解決するために、この発明は以下の手段を提案している。
請求項1に記載の発明は、単結晶シリコン引上装置であって、チャンバと、石英ルツボと、前記石英ルツボを軸線周りに回転するルツボ駆動手段と、前記石英ルツボに貯留したシリコン融液に対して、シードを垂下、浸漬して引き上げるとともに、前記シードを軸線周りに回転するシード駆動手段と、制御部とを備え、前記チャンバは、チャンバ上部内面に、
フッ素樹脂系コーティング材料によって黒色化部分が形成されていることを特徴とする。
【0012】
本発明に係る単結晶シリコン引上装置によれば、チャンバ上部内面に、黒色化部分が形成されているので、チャンバの上部からチャンバの外部に効率的に放熱(抜熱)することが可能であるので、太陽電池等に用いる単結晶シリコンを引き上げて生産する際に、単結晶シリコンがくねって変形するのを抑制しつつ、単結晶シリコンを高速度で引き上げることができる。
また、黒色化部分がフッ素樹脂系コーティング材料により形成されているので、黒色化部分を容易に形成することが可能であり、チャンバ上部の温度に安定して耐えることが可能である。
また、黒色化部分がフッ素樹脂系コーティング材料により形成されていることから、結晶シリコンに対する金属汚染が発生することが抑制される。
その結果、太陽電池等に用いる単結晶シリコン生産における生産性を向上することができる。
【0013】
請求項2に記載の発明は、請求項1に記載の単結晶シリコン引上装置であって、前記黒色化部分は、輻射率ε≧0.50とされていることを特徴とする。
【0014】
本発明に係る単結晶シリコン引上装置によれば、黒色化部分は、輻射率ε≧0.50とされているので、効率的に放熱することができる。
【0017】
請求項3に記載の発明は、請求項1
又は請求項2に記載の単結晶シリコン引上装置であって、前記チャンバ上部から下方に向かって延在する冷却筒が形成されていることを特徴とする。
【0018】
本発明に係る単結晶シリコン引上装置によれば、チャンバ上部から下方に向かって延在する冷却筒が設けられているので、単結晶シリコンの放熱を効率的におこなうことができる。
【0019】
請求項4に記載の発明は、請求項1から
請求項3のいずれか1項に記載の単結晶シリコン引上装置であって、前記チャンバ上部内面は、全面を黒色化部分とされていることを特徴とする。
【0020】
本発明に係る単結晶シリコン引上装置によれば、チャンバ上部内面が、全面にわたって黒色化部分とされているので、大容量の放熱を効率的におこなうことができる。
【発明の効果】
【0021】
本発明に係る単結晶シリコン引上装置によれば、太陽電池等に用いる単結晶シリコンを引き上げて生産する際に、単結晶シリコンがくねって変形するのを抑制しつつ高速度で引き上げることにより、生産性を向上することができる。
【発明を実施するための形態】
【0023】
以下、図面を参照し、この発明の一実施形態について説明する。
図1はこの発明の一実施形態に係る単結晶シリコン引上装置の概略を模式的に示す図であり、符号1は単結晶シリコン引上装置を示している。
【0024】
単結晶シリコン引上装置1は、
図1に示すように、耐圧気密に構成されたチャンバ10と、石英ルツボ15と、黒鉛ルツボ16と、シードチャック17と、ヒータ19と、ルツボ駆動機構20と、ルツボ支持台21と、シード駆動機構30と、引き上げられている単結晶シリコンを冷却する冷却装置40と、制御部50とを備えている。
【0025】
また、単結晶シリコン引上装置1は、減圧状態としたチャンバ10内で、シードチャック17に取り付けたシードSを石英ルツボ15内に貯留したシリコン融液Mに浸漬して、石英ルツボ15を回転させるとともに、シードSを石英ルツボ15と反対向きに回転させながら上方に引き上げることにより、単結晶シリコンTを成長させるように構成されている。なお、上方から見たときに、シードSを時計回りとするか反時計回りとするかは、任意に設定することができる。
【0026】
チャンバ10は、
図1、
図2に示すように、メインチャンバ11と、メインチャンバ11の上方に接続されたトップチャンバ(チャンバ上部)12と、トップチャンバ12の上方に接続されたプルチャンバ13とを備えており、メインチャンバ11は、底部11Aと底部11Aに立設する筒状部11Bとから構成されている。
【0027】
また、チャンバ10の平面視中心部には石英ルツボ15が配置され、排気孔11Dに図示しない真空ポンプが接続されてチャンバ10内を減圧又は真空状態とすることが可能とされている。
【0028】
メインチャンバ11は、この実施形態では、例えば、底部11A及び筒状部11Bの内周面が、全体にわたって黒色化部分とされ、引き上げられた結晶シリコンTから放射される熱を効率的に吸収するように構成されている。
【0029】
メインチャンバ11の黒色化部分は、例えば、例えば、PTFE(四フッ化エチレン樹脂)によるコーティングによって形成されていて、輻射率ε≧0.50とされている。
なお、輻射率ε≧0.80とするとより好適であり、輻射率ε≧0.85とさらに好適である。輻射率ε≧0.90とすることがさらに好適である。
【0030】
また、メインチャンバ11は、底部11Aに、スピルトレイ14が配置されていて、石英ルツボ15が破損してシリコン融液Mが流出することがあった場合に、シリコン融液Mが底部11Aと直接接触チャンバが破損するのを防止できるようになっている。
【0031】
トップチャンバ12は、この実施形態では、例えば、上部内面が、全体にわたって黒色化部分とされ、引き上げられた結晶シリコンTから放射される熱をトップチャンバ12の外部に効率的に放射するように構成されている。
このトップチャンバ12の黒色化部分は、例えば、PTFE(四フッ化エチレン樹脂)によるコーティングによって形成されていて、輻射率ε≧0.50とされている。
【0032】
なお、トップチャンバ12の内面の輻射率εは、引き上げられた結晶シリコンTから放射される熱をトップチャンバ12の外部に効率的に放射するうえで、輻射率ε≧0.80とすることがより好適であり、輻射率ε≧0.85とすることがさらに好適である。また、輻射率ε≧0.90とするとさらに好適である。
【0033】
プルチャンバ13は、略円筒形状に形成され、引き上げられた単結晶シリコンTを収納する空間を有しており、トップチャンバ12によってメインチャンバ11と接続されている。
【0034】
プルチャンバ13は、この実施形態では、例えば、内面が全体にわたって黒色化部分とされ、引き上げられた結晶シリコンTから放射される熱を、プルチャンバ13の外部に効率的に放射するように構成されている。
プルチャンバ13の黒色化部分は、例えば、PTFE(四フッ化エチレン樹脂)によるコーティングによって形成されていて、輻射率ε≧0.50とされている。
【0035】
なお、輻射率ε≧0.80とするとより好適であり、輻射率ε≧0.85とさらに好適である。輻射率ε≧0.90とすることがさらに好適である。
【0036】
石英ルツボ15は、石英ルツボ15の凹部には単結晶シリコンTの原料である塊状の多結晶シリコンを保持可能とするとともに多結晶シリコンが加熱、溶融されて生成したシリコン融液Mを貯留可能とされており、黒鉛ルツボ16に収納されている。
【0037】
黒鉛ルツボ16は、ルツボ支持台21の上面に配置されたペディスタル21Cに保持されることにより一体に組み合わせて形成されている。
ルツボ支持台21は、その支持部21Aがメインチャンバ11の底部11Aの中心部において底部11A及びスピルトレイ14を貫通して形成された貫通孔11Hに挿入されている。
【0038】
シードチャック17は、その先端側がカーボンにより形成されたカーボンチャック部にはシード(種結晶)Sが挿入されて、シードSが固定されるようになっている。
また、シードチャック17は、基端側がワイヤWに接続され、ワイヤWがシード駆動機構30を接続されることによりシードSがメインチャンバ11に対して相対的に回転及び昇降自在とされている。
【0039】
ルツボ駆動機構20は、ルツボ回転機構(ルツボ回転手段)20Aと、ルツボ昇降機構(不図示)とを備えており、ルツボ回転機構20Aは、支持部21Aと連結されるモータM1を有しており、平面視メインチャンバ11の中心に形成される回転軸線O周りに、支持部21Aを回転可能とされるとともに、支持部21Aをメインチャンバ11に対して昇降可能とされている。
【0040】
また、黒鉛ルツボ16の周囲には円筒状のヒータ19と、ヒータ19の外方に円筒状の保温筒22とが配置され、保温筒22は、円筒状の黒鉛からなる内側保温筒22Aと内側保温筒22Aの外方に配置された円筒状の多孔質黒鉛からなる外側保温筒22Bとを有している。
【0041】
保温筒22は、内側保温筒22Aの内径と略同じ内径の孔が形成された円板状のロアリング22Cに載置されるとともに上方には内側保温筒22Aの内径と略同じ内径の孔が形成された円板状のアッパリング22Dが配置されている。
【0042】
ヒータ19は、下方が電極継手19Aにボルト19Bで固定され、電極継手19Aはスピルトレイ14に形成された貫通孔に配置された黒鉛電極19Cを介して図示しない電源と接続されている。
【0043】
また、保温筒22の上端にはアッパリング22D、フロー管25が取り付けられている。
フロー管25は、アッパリング22Dの上に接続されていて、下端開口部から拡径されて上方に向かって鉛直に伸び、大径とされた上端開口部に向かって漸次拡径される中空筒とされ、黒鉛またはSiCにより形成されている。
【0044】
シード駆動機構30は、シード引上機構(シード引上手段)31と、シード回転機構(シード回転手段)35とを備え、プルチャンバ13の上部に設けられている。
シード引上機構31は、ワイヤWの基端側が接続されてワイヤWを巻回する巻取ドラム32と、巻取ドラム32を駆動するモータM2とを備え、巻取ドラム32を回転させてワイヤWを介してシードSを昇降可能とされている。
【0045】
シード回転機構35は、ワイヤWを平面視メインチャンバ11の中心に形成される回転軸線Oと一致させて、ワイヤWを回転軸線O周りに回転可能とされる回転駆動部36と、回転駆動部36に連結され回転駆動部36を回転させるモータM3とを備えている。
かかる構成により、シード駆動機構30は、シードSを回転軸線O周りに回転させながら昇降して、単結晶シリコンTを成長させるようになっている。
【0046】
冷却装置40は、内部に冷却水が流通可能に構成された冷却筒41と、冷却筒41内に冷却水を移送する冷却水移送管42と、冷却筒41に送る冷却水の流量を調整する流量制御弁43とを備えている。
【0047】
冷却筒41は、例えば、
図2に示すように、トップチャンバ12の内部において、プルチャンバ13の開口部から鉛直方向下方に向かって延在して形成されていて、単結晶シリコンTから放射される熱を、冷却水を用いて冷却するようになっている。
【0048】
また、冷却筒41は、全体にわたって、フッ素樹脂系コーティング材料のコーティングによって黒色化部分とされていて、引き上げられた結晶シリコンTから放射される熱を、効率的に吸収するように構成されている。
【0049】
なお、冷却筒41の輻射率εは、引き上げられた結晶シリコンTから放射される熱を効率的に吸収するうえでは、輻射率ε≧0.80とすることがより好適であり、輻射率ε≧0.85とすることがさらに好適である。また、輻射率ε≧0.90とするとさらに好適である。
【0050】
流量制御弁43は、外部から供給される冷却水の流量を調整して、冷却筒41に供給するように構成されており、制御部50の指示によって、冷却筒41に供給する冷却水の流量及び流通タイミングを調整するようになっている。
【0051】
制御部50は、例えば、第1のインバータ51と、第2のインバータ52と、第3のインバータ53と、冷却水流量調整部54と、演算部55とを備え、第1のインバータ51、第2のインバータ52、第3のインバータ53、冷却水流量調整部54は、演算部55が出力する指示信号に基づいて駆動信号を送出するように構成されている。
【0052】
第1のインバータ51は、演算部55から出力された信号によって出力周波数が変化されてモータM1の回転を制御することにより、石英ルツボの回転方向及び回転速度を制御するように構成されている。この実施形態では、例えば、石英ルツボ15を平面視右方向(矢印R1方向)に、回転速度VR1を4〜14rpmに制御可能に構成されている。
【0053】
第2のインバータ52は、演算部55から出力された信号によって出力周波数が変化されてモータM2の回転を制御することにより、巻取ドラム32の回転方向及び回転速度を制御するように構成されている。この実施形態では、例えば、シードチャック17を、引上速度Vを1.05〜1.75mm/minで上昇可能に構成されている。
【0054】
第3のインバータ53は、演算部55から出力された信号によって出力周波数が変化されてモータM3の回転を制御することにより、ワイヤWの回転方向及び回転速度を制御するように構成されている。この実施形態では、例えば、ルツボ回転速度VR1に対するシードSの回転速度VR2の速度比(VR2/VR1)が、0.8〜3.0となるようにシード回転機構35を回転制御するように構成されている。
【0055】
冷却水流量調整部54は、演算部55から出力された信号によって流量制御弁43に対して出力し、流量制御弁43が流通させる冷却水の流量等を調整することにより冷却筒41に送る冷却水の流量、タイミングを調整して、冷却筒41による単結晶シリコンTからの抜熱量を調整するようになっている。
【0056】
次に、単結晶シリコン引上装置1の作用について説明する。
まず、原料となる塊状の多結晶シリコンを石英ルツボ15に充填する。
次に、チャンバ10内を減圧して、不活性ガスを導入してチャンバ10内を減圧された不活性ガス雰囲気とし、ヒータ19で石英ルツボ15を加熱して多結晶シリコンを溶解して1420℃のシリコン融液Mとする。所定時間放置して、シリコン融液M中のガスを十分に放出する。
次に、シードチャック17にシードSを固定して、シード駆動機構30を駆動して、シードチャック17を下降させてシードSをシリコン融液Mに浸漬し、シードSをシリコン融液Mになじませ、シードチャック17を、引上速度Vを1.05〜1.75mm/minで上昇させる。
次いで、石英ルツボ15を平面視左方向(矢印R1方向)に回転し、シードSが平面視左方向(矢印R2方向)となるようにワイヤWを回転する。
シードチャック17を引き上げながら、例えば、石英ルツボの回転速度VR1を4〜14rpmに制御する。上記条件によりシードSを引き上げることで、単結晶シリコンTを析出させながら、単結晶シリコンTが成長する。
次いで、シード駆動機構30を駆動してワイヤWを巻き取り、単結晶シリコンTを成長させながら引き上げる。この場合、単結晶シリコンTの成長にともない、石英ルツボ15内のシリコン融液Mの液面が低下するので、シリコン融液Mの液面低下に対応してルツボ昇降機構を駆動してルツボ支持台21を上方向に移動して、シリコン融液Mの液面レベルを一定に保つ。
そして、単結晶シリコンTが、トップチャンバ12及び冷却筒41に接近したら、単結晶シリコンTが放射する熱が、トップチャンバ12及び冷却筒41に吸収されて単結晶シリコンTが冷却され、単結晶シリコンTがくねって変形するのが抑制される。
【0057】
一実施形態に係る単結晶シリコン引上装置1によれば、トップチャンバ(チャンバ上部)12の内面に、黒色化部分が形成されているので、トップチャンバ12の上部から外部に効率的に放熱(抜熱)することが可能であるので、単結晶シリコンTがくねって変形するのを抑制しつつ、単結晶シリコンTを高速度で引き上げることができる。結晶成長工程における引上げ速度を約10%以上向上することができる。
【0058】
また、一実施形態に係る単結晶シリコン引上装置1によれば、トップチャンバ12の黒色化部分が、輻射率ε≧0.50とされているので効率的に放熱することができる。
【0059】
また、一実施形態に係る単結晶シリコン引上装置1によれば、黒色化部分がフッ素樹脂系コーティング材料により形成されているので、黒色化部分を容易に形成することが可能であり、チャンバ上部の温度に安定して耐えることが可能である。
また、フッ素樹脂系コーティング材料により形成されていることから、結晶シリコンTに対する金属汚染が発生することが抑制される。
【0060】
また、一実施形態に係る単結晶シリコン引上装置1によれば、トップチャンバ12から下方に向かって延在する冷却筒41が設けられているので、単結晶シリコンTの放熱を効率的におこなうことができる。
以上のように、単結晶シリコン引上装置1によれば、単結晶シリコンTがくねって変形するのを抑制しつつ単結晶シリコンTの引上速度を高速化することができるので、太陽電池等に用いる単結晶シリコンTを製造する際の生産性を向上することができる。
【0061】
なお、上記の実施形態において記載した技術的事項については、発明の趣旨を逸脱しない範囲で種々の変更を加えることが可能である。
【0062】
例えば、上記実施の形態においては、チャンバ10の内面が全面にわたって黒色化されている場合について説明したが、メインチャンバ11、プルチャンバ13冷却筒部41を黒色化するかどうかは任意に設定することができる。また、これらを黒色化する場合に、どの部分を黒色化するかは任意に設定することができる。
【0063】
また、上記実施の形態においては、トップチャンバ12の内面が全面にわたって黒色化されている場合について説明したが、部分的に黒色化されていない部分があってもよい。
【0064】
また、上記実施の形態においては、メインチャンバ11、トップチャンバ12、プルチャンバ13の黒色化部分が、輻射率ε≧0.50である場合について説明したが、黒色化部分は、輻射率ε<0.50であってもよい。
また、黒色化部分を輻射率ε≧0.80としてもよいし、輻射率ε≧0.85や輻射率ε≧0.90に設定することもできる。また、全体を黒体化部分とせずに、部分的に黒体化部分としてもよいことはいうまでもない。
【0065】
また、上記実施の形態においては、黒色化部分が、PTFE(四フッ素化樹脂、ポリテトラフルオロエチレン)からなる完全フッ素化樹脂コーティング材料により形成されている場合について説明したが、PTFEに代えて、PFA(ペルフルオロアルコキシフッ素樹脂)、FEP(四フッ化エチレン・六フッ化プロピロピレン共重合体)、ETFE(エチレン・四フッ化エチレン共重合体)、ECTFE(エチレン・クロロトリフルオロエチレン共重合体)等からなるフッ素化樹脂共重合体を用いてもよい。
また、フッ素樹脂系コーティング材料に代えて、黒鉛等の物質による表面処理等により黒色化してもよい。
【0066】
また、上記実施の形態においては、チャンバ上部から下方に向かって延在し、黒色化され内部を冷却水が流通する冷却筒を備える場合について説明したが、冷却筒を設けるかどうか、冷却筒を水冷するかどうか、冷却筒を黒色化するかどうかについては、任意に設定することが可能である。
【0067】
また、上記実施の形態においては、インバータ51、52、53によりモータM1、M2、M3の回転方向、回転速度を制御して、石英ルツボ15の回転方向と回転速度、シードSの引上げ速度、シードSの水平方向の回転方向と回転速度を調整する場合について説明したが、制御手段、駆動手段については、周知の技術を任意に選択することが可能である。