特許第6249776号(P6249776)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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特許6249776ワークピースの機械加工のための2つの振動成分を有するシステム
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6249776
(24)【登録日】2017年12月1日
(45)【発行日】2017年12月20日
(54)【発明の名称】ワークピースの機械加工のための2つの振動成分を有するシステム
(51)【国際特許分類】
   B23C 3/00 20060101AFI20171211BHJP
【FI】
   B23C3/00
【請求項の数】5
【全頁数】8
(21)【出願番号】特願2013-545247(P2013-545247)
(86)(22)【出願日】2011年12月19日
(65)【公表番号】特表2014-500159(P2014-500159A)
(43)【公表日】2014年1月9日
(86)【国際出願番号】EP2011073185
(87)【国際公開番号】WO2012084779
(87)【国際公開日】20120628
【審査請求日】2013年10月18日
【審判番号】不服2016-2340(P2016-2340/J1)
【審判請求日】2016年2月16日
(31)【優先権主張番号】102010055288.7
(32)【優先日】2010年12月21日
(33)【優先権主張国】DE
(73)【特許権者】
【識別番号】510246138
【氏名又は名称】エーファウ・グループ・ゲーエムベーハー
(74)【代理人】
【識別番号】100114890
【弁理士】
【氏名又は名称】アインゼル・フェリックス=ラインハルト
(74)【代理人】
【識別番号】100116403
【弁理士】
【氏名又は名称】前川 純一
(74)【代理人】
【識別番号】100135633
【弁理士】
【氏名又は名称】二宮 浩康
(74)【代理人】
【識別番号】100162880
【弁理士】
【氏名又は名称】上島 類
(72)【発明者】
【氏名】ヘルベルト・ティーフェンベック
【合議体】
【審判長】 西村 泰英
【審判官】 長清 吉範
【審判官】 平岩 正一
(56)【参考文献】
【文献】 特開2007−69344(JP,A)
【文献】 特開平5−23901(JP,A)
【文献】 特開2005−319563(JP,A)
【文献】 特開2005−1096(JP,A)
【文献】 特開2004−351605(JP,A)
【文献】 実開昭50−47081(JP,U)
【文献】 特開2007−61925(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B23C 3/00
B23B 1/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
ワークピース(5)の機械加工のための装置であって、
工具(6)を受ける工具保持固定具と、
前記ワークピース(5)を受けるワークピース保持固定具と
第1の振動要素(2’)および第2の振動要素(3’)であって、互いに直交するX方向、Y方向、Z方向のうち、Y方向およびZ方向の双方に対して傾斜する傾斜面に沿って前記第1の振動要素(2’)が前記第2の振動要素(3’)に対して摺動可能な、第1の振動要素(2’)および第2の振動要素(3’)と、
を備え、
機械加工中に、前記第1の振動要素(2’)が前記第2の振動要素(3’)に対して前記傾斜面に沿って摺動することにより、機械加工方向または工具(6)および/またはワークピース(5)の送り方向である前記Z方向に対して角度を持つ振動成分を生ぜしめる、ワークピース(5)の機械加工のための装置において、
つの圧電素子(8,9)をさらに備え、前記2つの圧電素子(8,9)によって、前記第1の振動要素(2’)が前記第2の振動要素(3’)に対して前記傾斜面に沿って摺動することを特徴とする、ワークピース(5)の機械加工のための装置。
【請求項2】
振動周波数を1GHz未満に調整することができる、請求項1に記載の装置。
【請求項3】
振動振幅を100μm未満に調整することができる、請求項1または2に記載の装置。
【請求項4】
X方向の振動成分を生成する第3の振動要素(4)をさらに備え、
前記第1の振動要素(2’)が前記第2の振動要素(3’)に対して前記傾斜面に沿って摺動し、追加的に前記第3の振動要素(4)がX方向の振動成分を生成することにより、機械加工方向または工具(6)および/またはワークピース(5)の送り方向である前記Z方向に対して角度を持つ振動成分を生ぜしめる、請求項1から3までのいずれか1項記載の装置。
【請求項5】
請求項1から4までのいずれか一項に記載のワークピース(5)の機械加工のための装置によって、ワークピース(5)を機械加工する方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、請求項1によるワークピースを機械加工する装置、請求項10によるワークピース保持固定具、および請求項12によるワークピースを機械加工する方法に関連する。
【背景技術】
【0002】
ワークピースの金属の切断、特にフライス加工のための既知の装置は、工具の振動を伴う機械加工の工程中に、工具の回転中の改善されたフライス加工特性を生じさせることができ、18,000Hz〜20,000Hzの周波数が使用される
【0003】
特に、きわめて硬いワークピース、例えばSiC,SiNまたはB4Nなどは、このような装置では工具の極端な磨耗を導くという問題がある。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
したがって本発明の目的は、工具の磨耗を低減するように一般的な装置を改善することであり、それに対応してより長い耐用年数、および加工速度の増加、すなわち単位時間当たりの金属切断量または除去量の増加が達成される。
【課題を解決するための手段】
【0005】
この目的は、請求項1および9の特徴により解決される。本発明の好都合な発展形は、従属請求項に記載される。本明細書、請求項および/または図に記載された少なくとも2つの特徴の全ての組み合わせもまた本発明の技術範囲内である。記載された値の範囲において、記載された限定内にある値は、値を制限するものとして開示され、かつ任意の組み合わせにおいて請求されるものとみなされる。
【0006】
本発明の基本的な思想は、工程制御された、多次元に結合され、かつ同期した軸方向振動によって向上した金属切断効果を達成することである。
【0007】
したがって本発明は、例えば酸化物セラミック、非酸化物セラミック、硬い金属またはガラスなどの硬いおよび超硬材料に特によく適している。本発明によれば、工具がワークピースに係合する際、すなわち金属切断中にワークピース保持固定具、したがってワークピースおよび工具の間の多軸方向の周期的に振動する相対移動が起こる。向上した金属切断効果が達成されるようにワークピースの微細構造は、負荷を受ける。
【0008】
工具およびワークピース間の多軸方向に結合され、かつ同期した相対移動を介した、工具の通常多軸方向の機械加工可能性により、X、Y、およびZ方向は、それぞれの加工面に関連する。これは、図に示す通常の向きで必須ではないが、理想的には、ワークピースの個々の機械加工を可能とするために望ましい。XおよびY方向の機械加工面および機械加工方向、または、工具および/またはワークピースの送り方向、すなわち工具および/またはワークピースの互い対する移動が提供される。
【0009】
したがって、特にZ方向、すなわち送り方向に提供される第1振動成分、第2振動成分によって導入される横成分により、微細チゼル(ノミ)効果または微細衝撃効果が本発明によって作られる。
【0010】
工具のチゼル効果は、振動要素により作られ、主振動成分または振幅がZ方向、すなわち送り方向に好ましく提供される。
【0011】
振動成分の導入は、特に軸に関連する振動減衰(受動的)を通じて、および/または特に軸に関連する振動励起(能動的)を通じて起こる。本発明によれば、導入手段が特に工具に設けられる。
【0012】
本発明によれば、各振動成分の導入の受動制御は、規定の振幅、周波数および/または位相を有する事前に選択された振動成分が作られるという方法により、工具によるワークピースの機械加工を介して励起される振動が低減、変調、または減衰されることによって行われる。
【0013】
各振動成分の導入の能動制御は、追加的な、特に外部から励起される振動によって行われ、それは工具自体による機械加工によって励起される任意の既存の振動によって重ねられる。
【0014】
本発明によれば、能動制御は、特にプログラム可能な、多軸方向に周期的に振動する工具の場合に、適切なプログラミング制御によって行うことができ、機械加工中のプログラムされた動きによって規定の振幅、周波数、および/または位相を有する規定の振動成分が生成される。
【0015】
(減衰されたおよび/または外部から励起された)各振動成分の振動周波数は、好ましくは1kHz未満、特に500Hz未満、好ましくは10Hz以上である。
【0016】
本発明の好都合な実施形態によると、第1および/または第2振動成分の振動振幅および/または振動周波数が特に互いに独立して調整できるように設けられている。このように、装置は、機械加工する所定の材料のワークピース、または工具およびワークピースの材料の組み合わせに対して調整することができる。
【0017】
1GHz未満、特に<100MHz、好ましくは、<1MHz、より好ましくは、<100kHz、さらにより好ましくは、<1kHz、理想的には100Hz〜600Hzの間に振動周波数を調整することができる場合、より良好な金属切断効果が達成される。
【0018】
同時にまたは独立して、<100μm、特に<10μm、好ましくは<1μm、より好ましくは<100nmおよび理想的には1nm〜10nmの間に振動振幅を調整することができることにより、装置の金属切断効果はさらに向上する。本発明の実施形態により、圧電素子により振動成分が生成される場合特に好都合である。
【0019】
Xおよび/またはY方向の振動振幅は、好ましくは、最大でも工具の表面の微細構造、特にダイヤモンド、の平均寸法と同程度の大きさである。
【0020】
本発明のさらなる利点、特徴、および詳細は、実施形態の好ましい例、および図面に基づく説明から、明らかになる。
【図面の簡単な説明】
【0021】
図1】本発明による装置の第1実施形態の斜視図を示す。
図2】本発明による装置の第2実施形態の斜視図を示す。
図3】本発明による装置の第3実施形態の斜視図を示す。
図4a】振動要素の機能モードを示す。
図4b】振動要素の機能モードを示す。
図4c】振動要素の機能モードを示す。
【発明を実施するための形態】
【0022】
全く同一の、または全く同一の作用の部品/機構は、図において同じ参照符号によって示されている。
【0023】
図1による装置は、ワークピース5の機械加工のための工具6に対してワークピース5を保持し、かつ移動させる、ワークピース保持固定具1を有する機械工具である。
【0024】
図1による実施形態において、ワークピース保持固定具1は、Z方向の振動運動を行う第1振動要素2を備える。Z方向は、工具6の移動方向、工具から離れる方向に一致する。振動要素2は、特に、Z方向における単一の自由度を有し、かつそれに応じてZ方向において前後移動、特に直線移動を行う。
【0025】
振動要素2に接続された2つのさらなる振動要素3,4は、ワークピース5をX方向またはY方向に移動、または振動し、X、YおよびZ方向は、それぞれ互いに垂直である。振動要素3,4はまた、単一の自由度を有する。
【0026】
振動要素2,3,4の移動は、所定の振動振幅および所定の振動周波数を有する振動の形で行われ、それは、各振動要素2,3,4について、特に互いに独立して調整することができる。このように、ワークピース保持固定具1に固定されたワークピース5の多軸方向振動の励起を発生させることができ、本発明によれば、少なくとも第1振動成分が振動要素2によってZ方向に提供され、かつX方向の第2振動成分が駆動部品4によって、および/または駆動部品3によってY方向に提供され、全機械加工工程中、第1および第2振動成分の振動は、互いに一定の位相関係を有する。
【0027】
振動要素2,3,4は、特に振動励起のための圧電素子8,9を備える。あるいは振動励起は、所望の振動周波数および/または振動振幅に応じて偏心軸を有するスピンドルによって生成することができる。
【0028】
特にそれらの振動位相、および/または振動周波数および/または振動振幅に関して、振動成分を同時に調整することができる場合特に好都合である。言い換えれば、それらの振動位相および/または振動周波数および/または振動振幅は、同期した方法で作用するように設計される。
【0029】
独立した振動成分でワークピースを移動するための独立の振動要素2,3,4駆動手段(ここでは説明されない)が意図した機械工具により、または所望の機械加工により設けられる。
【0030】
図2に示す本発明の好ましい実施形態において、振動要素2’,3’は、振動要素2’および3’の互いに対する相対運動により、斜めの振動成分が生成されるように互いに対して案内され、それは、各場合において、XおよびY方向、またはXおよびZ方向または図3に示す例のようなYおよびZ方向に、少なくとも1つの振動成分を同時に生成する。したがって、機械加工方向または工具および/またはワークピースの送り方向に対して傾斜している結果として、2つの振動成分の組み合わせが起こり、斜めの振動面を有する斜めの振動成分が提供される。したがって斜めの振動面とは、振動面の垂線がZ方向(機械加工方向またはまた工具および/またはワークピースの送り方向)に対して傾斜していることを示す。
【0031】
このように、YおよびZ方向における2つの振動成分は、機械的に事前に選択された設計要素、すなわち斜めの平面によって、振動振幅および振動周波数および特に振動位相に関して自動的に同時に起こる、または同期する、およびその両方である。したがって第1に述べた実施形態とは対照的に、軸に沿った2つの振動成分は、上記に規定された斜めの振動面に沿った1つの振動成分によって置換されるため、2つの振動成分の2つの個別の振動の一定の位相関係を保つために個別の手段を設ける必要がない。
【0032】
振動要素4は、特に振動要素2’および3’による振動と同時に、X方向の振動を追加的に生成することができる。
【0033】
振動要素2’,3’によって生成された振動は、好都合にX方向の振動成分を備えない。
【0034】
図1による実施形態と比較すると、斜めの平面を有する実施形態は、2つの振動成分、すなわち図2に示す例においてはYおよびZ方向の成分は、全く同一の振動振幅、振動位相および振動周波数で提供されるという利点を有するのに対し、図1による実施形態においては、振動要素2および3の正確な制御または調整が必要である。
【0035】
斜めの平面の角度は、特に自由に選択可能であるが、好ましくは、X方向またはX−Y平面に対して20°〜70°の間である。本発明によれば、これは、特に振動要素2’および3’が互いに対して回転可能であり、かつ特定の調整可能な角度でロック可能であることによって達成される。平面の傾斜の変化、およびしたがって振動成分の向きの変化が可能である。制御は、制御装置を介して行われる。
【0036】
圧電素子8,9による振動要素2’および3’の運動による振動成分の発生の作用モードは、図4a〜図4cに示される。示される実施形態において、振動要素2’は、振動要素3’に対して、より正確には、斜めの平面、特にX−Y平面に対して20°の角度に沿って摺動するように案内される。
【0037】
図4aにおいて、2つの圧電素子8,9は、初期位置、特に、圧力が加えられない位置にある。圧電素子8は、圧電素子9の方向に振動要素3’の停止部10に対して設置される。圧電素子9は、圧電素子8の方向に、振動要素3’の対応する停止部11に対して設置される。
【0038】
図4bによると、圧電素子9の活性化により圧電素子9の膨張がもたらされ、その結果圧電素子9は、停止部11かつ反対側の振動要素2’の停止部13に支持され、それにしたがい、振動要素3’に沿って振動要素2’を動かす。それに応じて圧電素子8は、停止部10およびその反対側に配置された振動要素2’の停止部12の間で圧縮される。
【0039】
圧電素子8が活性化される場合は、図4cのように反対になる。
【0040】
本発明の実施形態のように、工具6に設けられた振動要素によって導入されるZ方向の振動成分を提供することができる。これは、振動要素2の代わりに、または追加的に設けられる。
【0041】
第1実施形態による振動要素2と類似の振動要素2が図3に示す実施形態に設けられる。XおよびY方向の振動のための振動要素3,4の代わりに、回転方向の振動成分を生成することができる振動要素7が設けられ、回転軸Aが特にZ方向に配置される。回転軸Aは、ここでは好都合にドリルである工具6’の回転軸に好ましく一致する。
【0042】
振動要素2,2’,3,3’,4,7の振動振幅および/または振動周波数は、所定のワークピース5のための最適振動振幅または振動周波数を調整するために、制御装置によって個別に調整されることができる。
【0043】
ワークピース5の機械加工を可能とするために、示されていない追加的なモーターが必要であり、これにより、ワークピース保持固定具1および工具6の間の相対運動がもたらされる。このようなモーターは、好ましくは事実上振動のない運転を行う。モーターは、ワークピース保持固定具1および/または工具6を駆動するように取り付けることができる。
【0044】
したがって本発明は、工具6のタイプ、移動方向、衝撃角度、周波数等が独立している。振動位相、振動周波数、および振動振幅を用いて導入される好ましくは同時の、追加的な多軸方向の振動成分によって、特に超硬材料の場合、ミクロン範囲、さらにはナノメートル範囲での微細構造の破壊が実現される。工具6は、特に硬い、または超硬材料、特にダイヤモンドコーティングによって被覆され、工具6の表面から突出する個々のダイヤモンド結晶が、マイクロ/ナノ構造のマイクロ/ナノチゼルとして作用する。
【符号の説明】
【0045】
1 ワークピース保持固定具
2,2’ 振動要素
3,3’ 振動要素
4 振動要素
5 ワークピース
6 工具
7 振動要素
8 圧電素子
9 圧電素子
10 停止部
11 停止部
A 回転軸
X X方向
Y Y方向
Z Z方向
図1
図2
図3
図4a
図4b
図4c