特許第6249778号(P6249778)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6249778
(24)【登録日】2017年12月1日
(45)【発行日】2017年12月20日
(54)【発明の名称】吸入器
(51)【国際特許分類】
   A61M 15/00 20060101AFI20171211BHJP
【FI】
   A61M15/00 Z
【請求項の数】14
【全頁数】16
(21)【出願番号】特願2013-558408(P2013-558408)
(86)(22)【出願日】2012年3月13日
(65)【公表番号】特表2014-513591(P2014-513591A)
(43)【公表日】2014年6月5日
(86)【国際出願番号】EP2012054371
(87)【国際公開番号】WO2012123448
(87)【国際公開日】20120920
【審査請求日】2015年3月3日
(31)【優先権主張番号】61/452,763
(32)【優先日】2011年3月15日
(33)【優先権主張国】US
(73)【特許権者】
【識別番号】504389991
【氏名又は名称】ノバルティス アーゲー
(74)【代理人】
【識別番号】100092783
【弁理士】
【氏名又は名称】小林 浩
(74)【代理人】
【識別番号】100120134
【弁理士】
【氏名又は名称】大森 規雄
(74)【代理人】
【識別番号】100104282
【弁理士】
【氏名又は名称】鈴木 康仁
(72)【発明者】
【氏名】ホーゼマン,ミヒャエル
(72)【発明者】
【氏名】フィリップス,デズモンド
(72)【発明者】
【氏名】ランブル,デイビッド
(72)【発明者】
【氏名】レイノルズ,シーン
(72)【発明者】
【氏名】バーノン−ハーコート,エドワード
【審査官】 田中 玲子
(56)【参考文献】
【文献】 国際公開第2011/020554(WO,A1)
【文献】 特表2009−532189(JP,A)
【文献】 特開2006−153760(JP,A)
【文献】 特開2007−097787(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A61M 15/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
薬剤カプセルを収容するカプセルハウジングと、空気流れ発生中、少なくとも1つの空気入口から出口へ空気が通って流れる空気流路であって、前記空気流路が前記カプセルハウジングの中を通る、空気流路と、第1のセンサと、プロセッサと、前記プロセッサを駆動する電源とを備える吸入器であって、
前記カプセルハウジングは、少なくとも1つの壁によって画成され、前記カプセルハウジング内にカプセルが配置され、前記空気流路に沿って前記カプセルハウジングを通って十分な空気が流れるとき、前記カプセルが前記カプセルハウジング内で運動するように構成され、前記第1のセンサが、前記カプセルハウジングを介して前記カプセルハウジング内での前記カプセルの運動を検出し、前記運動を示す第1の信号を発生することができるように、前記第1のセンサが前記吸入器に配置され、前記プロセッサが、前記第1のセンサから前記第1の信号を受け取り、前記第1の信号を使用して、空気流れ発生中、前記第1の信号が前記カプセルハウジング内のカプセルの存在を示しているか、または不在を示しているか判定し、それを示すカプセル信号を生成し、
前記第1のセンサが衝突センサであり、前記第1の信号が衝突信号であり、前記カプセルハウジングが少なくとも1つの壁によって画成され、前記カプセルハウジングが、前記カプセルハウジング内でカプセルが運動するとき、前記カプセルが前記少なくとも1つの壁に繰り返し衝突するように構成され、前記衝突センサが、前記カプセル容器壁への前記カプセルの前記衝突を検出し、各衝突を示す衝突信号を発生することができるように、前記吸入器に配置されている、吸入器。
【請求項2】
前記吸入器が、後の読出しのために、1つまたは複数の空気流れ発生に関する前記カプセル信号を記憶するメモリをさらに備える、請求項1に記載の吸入器。
【請求項3】
前記吸入器が、出力装置をさらに備え、前記カプセル信号またはメモリ内容に前記出力装置からアクセスすることができる、請求項1に記載の吸入器。
【請求項4】
前記プロセッサが、カプセル信号を生成するために、ピーク検出アルゴリズムを使用して前記センサからの前記衝突信号を解析し、前記計算されたピーク周波数が所定の限界内にあるか否かを判定する、請求項1に記載の吸入器。
【請求項5】
前記プロセッサが、カプセル信号を生成するために、周波数域識別アルゴリズムを使用して前記センサからの前記衝突信号を解析し、2つの異なる所定の周波数領域間の信号強度の比が、所定の限界内にあるか否かを判定する、請求項1に記載の吸入器。
【請求項6】
前記プロセッサが、カプセル信号を生成するために、前記衝突信号を特徴付ける2つの統計変数を計算し、一方の変数の他方の変数に対する散布図上の所定の領域に、前記計算された統計量が入るか否かを判定する2変数統計的アルゴリズムを使用して、前記センサからの前記衝突信号を解析する、請求項1に記載の吸入器。
【請求項7】
前記計算される変数が尖度および分散である、請求項に記載の吸入器。
【請求項8】
前記計算される変数が、前記衝突信号の2乗または大きさのピーク対平均比、および分散である、請求項に記載の吸入器。
【請求項9】
前記プロセッサが、少なくとも2つの異なるアルゴリズムを使用して前記センサからの前記衝突信号を解析する、請求項1に記載の吸入器。
【請求項10】
前記第1のセンサがマイクロフォンまたは圧電素子である、請求項1に記載の吸入器。
【請求項11】
前記カプセルハウジングが、当該カプセルハウジングの中に収容されるカプセルより大きい直径、および前記カプセルの直径より大きいが、前記カプセルの長さより小さい高さを有する実質的に円筒形である部分を備え、前記空気流路が、前記カプセルハウジング内で前記カプセルをスピンさせるように構成されている、請求項1に記載の吸入器。
【請求項12】
前記吸入器が、開口要素に前記吸入器内のカプセルを開口させるために使用者によって作動させることができる少なくとも1つのアクチュエータを備え、前記吸入器が、前記アクチュエータの作動を感知し、作動信号を発生するアクチュエータセンサをさらに備え、前記プロセッサが、前記作動信号を受信するように構成されている、請求項1に記載の吸入器。
【請求項13】
前記プロセッサが、前記吸入器の正しい使用シーケンスに使用者が従ったか否かを示す服用信号を生成するように構成され、前記プロセッサが、前記カプセル信号および前記作動信号、それら信号が生成された順序、ならびに信号間の時間に基づいて前記服用信号を生成する、請求項12に記載の吸入器。
【請求項14】
前記第1のセンサは、前記カプセルハウジングの外側で前記カプセルハウジングに対向するように配置される、前記請求項1に記載の吸入器。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、吸入器、特にカプセルに基づく吸入器に関する。
【背景技術】
【0002】
使用者がそれを介して吸い込んでその中に入っている薬剤を摂取することができる多くのタイプの吸入器が存在する。一部の吸入器は、使用者が順次アクセスすることができる複数の薬剤の服用量を収容し、他方、別の吸入器は、カプセルに基づいており、各供給(放出)に対して使用者が少なくとも1つのカプセルを装置内に挿入する必要がある。一部の使用者が彼らの使用法に正確に従っていないとき、直接監視していないと、使用者が装置を使用する仕方を正確にチェックすることは困難であり得る。これは、処方者には明らかにならない治療計画との齟齬を来し、それによって、症状が長引く原因が明らかでなくなることがあり得る。使用者が摂った服用の数を使用者または第3者が調べることを可能にするディスペンサが提案されてきたが、これは、使用者が実際に摂った正しい服用の数に必ずしも正確に対応していない。たとえば、カプセルを、ディスペンサから送り出すことはできたが、吸入器内に入れることができなかったり、または吸入器には入ったが、何らかの理由で薬剤が放出されなかったりする。
【発明の概要】
【0003】
本発明は、薬剤カプセルを収容するカプセルハウジングと、少なくとも1つの空気入口から出口へ、空気流れ発生中、空気がそれを通って流れる空気流路であり、カプセルハウジングの中を通る空気流路と、第1のセンサと、プロセッサと、プロセッサを駆動する電源とを備える吸入器であって、カプセルハウジングは、少なくとも1つの壁によって画成され、カプセルハウジング内にカプセルが配置され、空気流路に沿ってカプセルハウジングを通って十分な空気が流れるとき、カプセルがカプセルハウジング内で運動するように、構成され、第1のセンサが、カプセルハウジング内でのカプセルの運動を検出し、前記運動を示す第1の信号を発生することができるように、吸入器に配置され、プロセッサが、第1のセンサから第1の信号を受け取り、前記第1の信号を使用して、空気流れ発生中、第1の信号がカプセルハウジング内のカプセルの存在を示しているか、または不在を示しているか判定し、それを示すカプセル信号を生成する、吸入器を提供する。
【0004】
吸入器は、カプセルから患者の気道、たとえば肺への薬剤の配出を可能にするように意図される。薬剤は、乾燥紛体、液体、または他の適切な調剤でよく、1つまたは複数の病状を治療するための1つまたは複数の作用成分を含み得る。薬剤は、調剤を安定化させ、1塊にし、あるいは調剤の1つまたは複数の特性を変化させるための1つまたは複数の非作用成分を含み得る。薬剤は、作用成分を全く含んでいないこともあり、たとえば、薬剤が偽薬のこともある。
【0005】
空気流路は、空気が空気流路に入ることができる入口を備える。空気という用語は、たとえば、患者に供給され得、空気と同一でない組成を有するガス、たとえば酸素富化ガスなど、任意の適切なガスを含むものと理解されたい。空気流路からの出口は、使用者が、カプセルからの薬剤を摂取するために、それを通して吸入するマウスピースまたはノーズピースであり得る。
【0006】
空気流れ発生とは、空気が空気流路を通って流れるときのことである。これは、使用者が吸入器を通して吸入する、たとえばマウスピースまたはノーズピースを通して吸入することによって生じさせることができ、または、圧力源が、空気または他のガスを、入口から出口へそして使用者内へ空気流路を通して流すことによって生じさせることができる。通常、吸入器を通る空気流は、1分当たり15〜150リットルの範囲内にある。
【0007】
プロセッサは電子回路でもよく、たとえばそのプロセッサには、1つまたは複数のアナログもしくはディジタル集積回路、ディスクリート回路、またはプログラム可能ディジタルプロセッサを含み得る。プロセッサは、電源、たとえば機能するための電力源を必要とし得る。センサは、電子回路であっても、機能するための電力源をやはり必要としても、または、センサは受動型センサでもよい。
【0008】
センサおよび/またはプロセッサによって生成される信号は電磁的でもよく、たとえば波形など時間変数信号でもよく、あるいは、電子的オン/オフもしくは高/低信号または他の適切ないかなる信号の形でもよい。
【0009】
センサは、カプセルが吸入器内に存在するか否かの判定を行うために処理することができる信号を発生することができる適切ないかなるタイプのセンサでもよい。たとえば、光学的センサを、カプセルハウジングを監視するために配置することができ、前記センサからの信号を処理して、その信号が、カプセルハウジング内でのカプセルの運動を示しているか否かを判定することができる。基本的アルゴリズムおよび試行錯誤によって、そのような信号を処理する適切な方式を策定することができると考えられる。
【0010】
一実施形態では、吸入器は、衝突センサである第1のセンサを備え、第1の信号は衝突信号である。カプセルハウジングは、少なくとも1つの壁によって画成され、カプセルハウジング内でカプセルが運動するとき、カプセルが少なくとも1つの壁に繰り返し衝突するように、構成されている。衝突センサは、カプセルハウジング壁へのカプセルの衝突を検出し、各衝突を示す衝突信号を発生することができるように、吸入器に配置されている。
【0011】
第1のセンサは、カプセルハウジング内でのカプセルの運動を検出することができるように、吸入器に配置されている。第1のセンサは、たとえば光学的センサがカプセルの運動を視認することによって、運動を直接検出することができる。代替実施形態では、センサは、たとえば壁とのカプセルの衝突、またはカプセルが空気入口または出口を横切って移動するときの空気流パターンの変化など、カプセルの運動に結び付く特性の存在または不在を判定するために解析することができるパラメータを感知することによって、運動を間接的に検出することができる。
【0012】
たとえば光学的センサに勝る衝突センサの利点は、空気流路内に配設する必要がある部分が衝突センサに無く、それにより、空気流路の構造を簡単化することができ、また、その種のセンサを既存の吸入器設計に組み込むことをより容易にすることができることである。光学的センサは、それを通してカプセルハウジングの中を「見」て信号を発生することができる少なくとも1つのウィンドウを空気流路内に必要とし、その結果、吸入器はその信号を処理して吸入器内のカプセルを検出することができる。衝突センサは、たとえば圧力変換器、マイクロフォン、または圧電素子など、適切ないかなるセンサでもよい。
【0013】
一実施形態では、センサは、カプセルハウジング壁へのカプセルの衝突をセンサによって「聞く」または「感じる」ことができる位置で吸入器内に配置されたマイクロフォンである。適切な衝突信号を生成するために、2つ以上のタイプのセンサからの出力を組み合させることができる。センサによってカプセルをより容易に検出できるようにするために、カプセルを変更することができ、たとえば、カプセルが、適切なセンサによって検出することができる金属または磁気部分を備えることができることにも留意されたい。別の実施形態では、センサは、カプセルハウジング壁へのカプセルの衝突をセンサによって「聞く」または「感じる」ことができる位置で吸入器内に配置された圧電素子である。
【0014】
吸入器は、後の読出しのために、1つまたは複数の空気流れ発生に関するカプセル信号を記憶するメモリをさらに備える。これは、任意の適切な形態のメモリであってもよく、消去可能メモリでも永久メモリでもよい。たとえば、メモリは、電子的に読取り可能ならびに/または書込み可能および/もしくは再書込み可能であってもよく、フラッシュメモリ、RAM、EPROMを含み得る。メモリはまた、第1の信号、信号が生成された時間に関するデータ、および他の任意のデータを記録することができる。吸入器は、処方者としての使用者に使用データを提供することができる追加のセンサを備え得、そのようなデータを後の読出しのためにメモリに記憶することができる。データは、特定の空気流れ発生と関連付けることができる。
【0015】
吸入器は、コンピュータなどの外部装置によってカプセル信号および/またはメモリ内容にそこからアクセスすることができる出力装置をさらに備え得る。出力装置は、通信ケーブルを挿入することができるソケットを備え得る。それに加えて、またはその代わりに、出力装置は、外部受信器が受信することができる無線信号を生成し発信する信号発生器を備え得る。出力装置は、無線発信器、たとえばWiFi(登録商標)発信器でもよい。
【0016】
プロセッサは、1つまたは複数の異なるアルゴリズムを使用して第1の信号を解析することができる。プロセッサは、カプセル信号を生成するために、ピーク発見アルゴリズムを使用してセンサからの第1の信号を解析し、計算されたピーク周波数が所定の限界内にあるか否かを判定することができる。それら限界は、吸入器の形状内で予想される流速での典型的なスピン(回転)するカプセルの周波数に基づいて決定される。空気流れ発生中、カプセルがカプセルハウジングの壁に衝突する周波数は、実質的に一定であり、したがって、適切な限界を設定することができることが判明している。ピーク発見アルゴリズムは、衝突イベント検出上の信号ノイズの影響を低減するのに使用され、計算が比較的複雑でない。
【0017】
プロセッサは、カプセル信号を生成するために、周波数域識別アルゴリズムを使用してセンサからの衝突信号を解析し、2つの異なる所定の周波数領域間での信号強度の比が、所定の限界内にあるか否かを判定することができる。空気流れ発生中、カプセルが存在する信号とカプセルが存在しない信号との間では、特定の周波数範囲において、衝突信号が異なることが判明している。2つの異なる所定の周波数範囲間での信号強度の比を比較することによって、信号ノイズの影響が低減される。
【0018】
プロセッサは、カプセル信号を生成するために、衝突信号を特徴付ける2つの統計変数を計算し、一方の変数の他方の変数に対する散布図上の所定の領域に、計算された統計量が入るか否かを判定する2変数統計的アルゴリズムを使用して、センサからの衝突信号を解析することができる。
【0019】
衝突信号を特徴付ける統計変数を計算する統計解析を行うことによって、衝突信号のある種の尺度が、カプセルが存在する信号とカプセルが存在しない信号とに関して異なることが判明している。
【0020】
尖度は、この目的のために潜在的に有効な統計変数である。特定の変数(x)に対する確率の図上で、変数xがガウス分布である場合、k=0である。他方、K>0であれば、中央のピークが削られて分布の裾野が厚くなる。逆に、K<0であれば、分布は、裾野が薄くなり、ピークが太く広くなる。このように、Kは、ガウス分布からの乖離の2方向尺度である。
【0021】
尖度(K)は、カプセルの衝突過渡応答を検出するのに使用することができ、その理由は、これらイベントは、目で見てそれと分かるほどにサンプル分布の裾野を外側に押し広げる傾向があり、その結果、明瞭に非ガウス分布になるからである。呼吸ノイズのみでは、まさにガウス分布であるからである。他方で、吸入器が、それを通して吸入されていないときのバックグラウンドノイズは、極めて低いパワー(したがって比較的低い分散(σ))を有し、極めて高い尖度を有し得、その理由は、過渡応答は、たとえ極めて小さくても、信号の末尾に衝突の大きな部分を有し得るからである。これは、区別を必要とする2つのタイプの信号をもたらす。すなわち、
カプセル不在の呼吸ノイズ(低いK、低から中程度のσ)、
カプセルが存在する呼吸ノイズ(中程度のK、低から高のσ
である。
【0022】
無カプセル信号は、高いピーク(衝突イベント)がより少なく、したがって平均に対するピークの比がより低くなる傾向があるので、信号自体または信号の2乗のいずれのピーク対平均比を使用することもできる。
【0023】
計算される変数は、尖度および分散でもよく、あるいは衝突信号の2乗または大きさのピーク対平均比、および分散でもよい。
【0024】
これら全てのアルゴリズムに関して、信号タイプを「カプセルが存在する」と「カプセルが存在しない」とに分類するために使用することができる限界は、吸入器タイプそれぞれで異なり、簡単な試行錯誤方法を用いて決定することができる。同じタイプの吸入器同士では差異は微小であると考えてよく、したがって、これら限界は、吸入器タイプごとに容易に計算することができる。
【0025】
カプセルハウジングは、センサが適切な信号を発生することができるようにカプセルがその内部で十分に運動することができる適切ないかなる形状でもよい。カプセルハウジングは、カプセルを1つまたは複数の以下の態様、すなわち、長手方向に前後に、半径方向に、または、完全な回転もしくは限られた角度範囲内で回転して運動させることができる。カプセルハウジングは、その中に収容されるカプセルの長さより大きい直径、およびカプセルの直径より大きいが、カプセルの長さより小さい高さを有する実質的に円筒形である部分を備え得、空気流路は、カプセルハウジング内でカプセルをスピンさせるように構成されている。この構成は、カプセルを、実質的にその直径を通る軸の周りにスピンさせることができる。スピンは、他の軸の周りに空気流によって生じる実質的にランダムな揺動にさらに加わり得る。
【0026】
吸入器は、開口要素に吸入器内のカプセルを開口させるために使用者が作動させることができる少なくとも1つのアクチュエータを備え得る。吸入器は、アクチュエータの作動を感知し、作動信号を発生するアクチュエータセンサをさらに備え得る。プロセッサは、作動信号を受信するように構成され得る。アクチュエータは、開口部材に結合されたボタンでもよく、その開口部材は、たとえば、カプセルの中に入っている薬剤にアクセスすることができるようにカプセルに開口を生じるように適合されている穿孔要素または切断刃である。連係する開口要素をそれぞれが有し、その結果カプセルに2つの開口を設けることができる2つのアクチュエータがあってもよい。アクチュエータセンサは、押しボタンスイッチでもよい。各アクチュエータが、アクチュエータセンサと連係してもよいが、これは必須ではない。アクチュエータセンサは、ボタンを押すことが、装置を通して吸入する直前に使用者によって行われる操作である筈なので、残りの電子機器を「起こす」ために使用することができる。
【0027】
プロセッサは、吸入器の正しい使用シーケンスに使用者が従ったか否かを示す服用信号を生成するように構成され得る。プロセッサは、カプセル信号および作動信号、それら信号が生成された順序、ならびに信号間の時間に基づいて服用信号を生成することができる。
【0028】
これら例のいずれにおいても、前記または各センサからの信号に1つまたは複数のフィルタを適用した後に、アルゴリズムの1つまたは複数をそれら信号に適用することができる。フィルタには、ハイパスフィルタ、ローパスフィルタ、ノイズ除去フィルタ、または他の任意の適切なフィルタの1つまたは複数が含まれ得る。
【0029】
吸入器は、国際公開第2005/113042号パンフレット記載のカプセル吸入器に実質的に類似、または実質的にそれと同じでよい。
【0030】
この明細書を通して、また添付の特許請求の範囲において、別段文脈により必要とされない限り、用語「comprise(備える/含む)」、または「comprises」もしくは「comprising」などの変化形は、言及された整数もしくはステップ、または整数もしくはステップのグループを含んでいることを意味するものと理解されたい。
【0031】
次いで、本発明が、添付図面を参照して、単なる例としてさらに説明される。
【図面の簡単な説明】
【0032】
図1】吸入器を示す図である。
図2】分散に対する尖度の散布図である。
図3】分散に対するピーク対平均比の散布図である。
図4】周波数域識別装置解析の例のグラフである。
図5a】ピーク保持解析の例を示すグラフである。
図5b】ピーク保持解析の例を示すグラフである。
図6】ディジタル処理に基づく電子機器ハードウェアの例を示す図である。
図7】信号処理アルゴリズムの例を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0033】
図1は、薬剤カプセル4を収容するカプセルハウジング2を備える吸入器1を示す。吸入器1は、空気流れ発生中、空気がその中を流れる空気流路6を備える。空気流路6は、少なくとも1つの空気入口8から出口10まで延在し、カプセルハウジング2を貫通する。入口8は、中心線から離れたところでカプセルハウジング2に入る。この例では、カプセルハウジング2の上部10の部分は実質的に円筒形であり、空気入口8はカプセルハウジング2へ実質的に接線方向に入り、それによって、空気をカプセルハウジング2内でスピンさせる。カプセルハウジング2の上部10は、その中に収容されるカプセル4の長さより大きい直径、および、カプセルの直径より大きいが、カプセル4の長さより小さい高さを有する実質的に円筒形である。カプセルハウジング2は、底部12または収納部を有し、その中に、カプセル4が最初に載置される。カプセル4には、乾燥紛体製剤14が入っている。
【0034】
吸入器1は、カプセルハウジング2の底部12に隣接して配置されたセンサ16、この場合はマイクロフォンをさらに備える。センサ16は、電源20、この場合はバッテリによって駆動されるプロセッサ18に結合されている。
【0035】
カプセルハウジング2は、少なくとも1つの壁22によって画成されており、カプセル4がカプセルハウジング2内に配置され、十分な空気が空気流路6に沿って流れるとき、カプセル4が、カプセルハウジング2の上部10に引き入れられ、空気流中でスピンするように、構成されている。カプセル4がスピンするとき、カプセル4が壁22に繰り返し衝突し、センサ16が、カプセルハウジング2内のそれら衝突を検出することができるように配置されている。センサ16は、衝突を示す信号を発生する。プロセッサ18が、センサ16から信号を受け取る。
【0036】
吸入器1は、また、穿孔部材26に結合されている1対のアクチュエータボタン24を備える。ボタン24は、穿孔部材26に、カプセルハウジング2の底部12に配置されたカプセル4の両端に孔を開けさせるために、使用者が押すことができる。アクチュエータボタン24が押されたか否かについて示す作動信号を生成することができる作動センサ28が存在する。
【0037】
プロセッサ18は、センサ16、28から信号を受け取り、空気流れ発生中のカプセルの存在、作動ボタン24の操作、吸入器の正しい使用(正しいシーケンスおよび操作のタイミング、ならびに空気流れ発生中にカプセルが存在していること)の1つまたは複数を示すことができる出力信号を生成する。プロセッサ18からの出力、および/またはセンサからの生の出力は、メモリ30に記憶され、出力装置32、この場合は無線送信器を使用してアクセスすることができる。
【0038】
マイクロフォンセンサでは、所望の衝突イベントの検出に加えて、かなりの量のノイズが検出され得ることに注目すべきである。ノイズは、環境的なものであり得、または吸入器を通る空気流によって生じ得る。このノイズは、大きさおよびタイプにおいて著しく変化し得るので、衝突を示す信号とそのような衝突を示さない信号とを区別する何らかの方策が必要である。
【0039】
装置を正しく使用するために、使用者は、カプセルを吸入器に装填し、ボタンを押してカプセルに孔を開け、次いで、装置を通して吸入する必要があり、それによって、カプセルが空気流中で激しく動かされスピンし、その結果、カプセル内の紛体薬剤が、カプセルから放出され、空気流中を患者まで連行される。
【0040】
吸入器の電子機器が作動する方式は以下の通りである。すなわち、
1.使用者が、ボタンを押し込み、作動信号がプロセッサによって受信される。
2.プロセッサが、所定の時間だけ第1のセンサからのデータのサンプリングを開始する。データは、本明細書に説明される1つまたは複数のアルゴリズムに従って、オンラインで処理される。中間データが記憶される。
3.中間データが妥当性をチェックされる。必要なら、複数のアプローチによるデータが比較される。
4.後の伝送のために結果が記憶される。
【0041】
プロセッサが衝突信号を処理することができる方式のいくつかの例が以下に説明される。
【0042】
カプセルを入れた吸入器からの信号において衝突を検出する一方式は、信号を特定の閾値と比較することである。たとえば、低から中間の呼吸流速に対して、カプセルの衝突は、信号において、ある閾値を適用し、その閾値を超えるそれぞれはカプセルの衝突によって生じたと想定することによって識別することができる。信号処理中に十分な数の衝突が見付かれば、その信号は、カプセルの存在を示すものと判断することができる。衝突の数は、吸入器の設計に依存するカプセルのスピン回数に応じ、それぞれの吸入器のタイプに対して較正する必要がある。
【0043】
センサからの信号を解析する別の方法は、信号を特徴付けるために統計変数を計算する統計的手法である。吸入器内のカプセルは、低周波数で高い信号スパイクを有する極めて明瞭な衝突騒音を生じる。これは、信号において特有の振幅分布を生じる。
【0044】
この解析のために、信号は、最初に、式(1)のz変換によるハイパスフィルタ(HPF)に通される。
【0045】
【数1】

これは、(i)低周波ノイズおよびあらゆるDC偏移を減らし、(ii)高周波ノイズおよびカプセル衝突過渡信号を強調するという2重の効果を有する。
【0046】
次いで、スライディングウィンドウアルゴリズムが実行されて、Nサンプルのデータ(通常、N=2048)上で作動し、節約のために1度にNサンプルに跳ぶ(ホップする)。各ウィンドウで、尖度Kおよび分散σが、式(2)および(3)を使用して計算される。最大パワーを有するスライディングウィンドウ(経験的に使用サイクル上の最大「情報」に結び付く)が、必要な(K、σ)検出装置出力を生成する。HPF後、データは平均値0と見なせるので、加算は、平均値を予め知ることなく即座に行うことができる。
【0047】
【数2】
【0048】
【数3】
【0049】
前述のように、尖度は、すなわち、ガウス分布からの乖離の2方向尺度である。ランダム変数xがガウス分布であれば、K=0である。他方、K>0であれば、中央のピークを削って分布の裾野が厚くなる。逆に、K<0であれば、分布は、裾野が薄くなり、ピークが太く広くなる。
【0050】
尖度は、カプセルの衝突イベントを検出するのに適しており、その理由は、これらイベントは、目で見てそれと分かるほどにサンプル分布の裾野を外側に押し広げる傾向があり、その結果、明瞭に非ガウス分布になるからである。呼吸ノイズのみでは、より遥かにガウス分布である。
【0051】
これは、区別を必要とする2つのタイプの信号をもたらす。すなわち、
カプセル不在の呼吸ノイズ(低いK、低から中程度のσ)、
カプセルが存在する呼吸ノイズ(中程度のK、低から高のσ
である。
【0052】
シミュレーション試験が、2つのクラス(H1=呼吸ノイズ+カプセルの存在、H0=否H1)の1つに属するとして入力信号を分類することができることを目的として実施された。いくつかの結果例が、図2の散布図に示されている。
【0053】
その散布図は、1つの例示的マイクロフォンタイプを使用して記録された全てのデータセットを示す。散布図に2つの別個の結果の領域を認めることができる。それらの間には、結果が入ってこない領域がある。2つの領域は、カプセルのスピンを伴う呼吸ノイズ、および呼吸ノイズのみを表す。
【0054】
既述の通り、環境ノイズは低めの尖度を有する。そのような信号が、カプセル+呼吸ノイズ信号に加わると、全体の尖度が小さくなる。したがって、データ点は、散布図内で低い方へ移動する。
【0055】
分散および尖度を計算した後、結果の分類の判定を行わなければならない。これは、図2の線によって描かれた3つの領域のどれにデータ点が入るか調べることによって行われる。
【0056】
上側の線「C」より上に来るものはいずれも、カプセルが存在することを示す信号を表す。下側の線「D」よりに下に来るものはいずれも、呼吸ノイズのみを表す。2つの線の間に来るものはいずれも、ノイズを伴うカプセルを表す。
【0057】
極めて高いレベルの環境ノイズはカプセルノイズを覆い隠し得、したがって、データ点を、カプセル領域から無カプセル領域へ押しやることが注目される。そのような問題点を検出するために、以降説明される技法を使用することができる。
【0058】
このアルゴリズムは、強力であり、さほど計算が複雑でなく、メモリの必要性が低いので有用である。尖度の計算は、2乗および2乗の2乗を計算することになるので極めて大きいダイナミックレンジを必要とすることに留意されたい。
【0059】
この技法は、数キロヘルツほどの低さのサンプルレートで働く。ピークをそれでも採取することができる限り、ナイキストサンプリングは必要とされない。
【0060】
既述の高次の統計的方法は単純化することができる。その方法の目的は、信号の大部分がかなり低い中で、信号中に存在する高いピークを検出することである。これは、尖度を計算することによって行われる。潜在的により簡単な方法は、信号の2乗のピーク対平均比を使用することである。
【0061】
この方法では、信号が、式(1)に記載されたハイパスフィルタにやはり通される。次いで、やはり分散が、通常2048サンプルのウィンドウについて計算される。また、各ウィンドウについて、信号サンプルの最大2乗が記録される。その値を、平均値によって割ることによって、ピーク対平均比を得る。
【0062】
分散およびピーク対平均比が、この場合、前述の分散および尖度として使用される。これが、図3に示されている。
【0063】
諸データ点が散布図上のそれらの領域に従って分類される前述と同じ処理が実施される。
【0064】
この方法は、より高次の統計的方法と同じ少メモリ要件を有する。さらに、その方法は、より少ない計算しか必要とせず、ダイナミックレンジがより小さい。これは、固定小数点計算しか通常提供しない安価で小さい低パワープロセッサ上で簡単に実行できる。
【0065】
センサからの信号を解析するために使用することができる別のアルゴリズムは、周波数域識別装置解析である。図4は、カプセルが存在する線A、および存在しない線Bによる、吸入器内の空気流れ発生(50(l/min))からの信号の解析の比較を示す。充満カプセルおよび無カプセルのデータによる周波数スペクトルは、周波数帯域1kHz〜2.5kHzにおける振幅は同様であるが、吸入器内でのカプセル衝突からの特有の信号により、4kHzから上の周波数では極めて異なる。
【0066】
このアルゴリズムでは、1〜2.5kHzの信号エネルギーを3kHz以上の信号エネルギーと比較する。これは、高速フーリエ変換を行い、様々な帯域で、またはより簡単には、バンドパスフィルタとハイパスフィルタとの組合せの使用を介して時間域で、エネルギーを合算することによって実施することができる。これらフィルタおよびそれに続くエネルギーの比較は、アナログまたはディジタル技法を使用して実現することができる。このアルゴリズムは、フィルタを使用して時間域で実行される場合、計算がさほど複雑でないので有用である。
【0067】
様々な流速ならびに模擬ノイズおよび呼吸プロフィールでの試験から、この方法は、高いレベルのノイズが存在していても、吸入器内にカプセルが存在することを検出するかなり強力な方法を提供することが判明した。試験された環境ノイズのスペクトル成分の大部分は1000Hz以下であり、したがって、ここで実施されるエネルギー比の計算には影響しないことが認められた。
【0068】
別の方法は、ピーク検出アルゴリズムを適用することであり、そのアルゴリズムは、カプセルの衝突によって生じた信号の全てのピークを識別することを目的とする。再び、信号は、式(1)のようなハイパスフィルタを掛けられる。アルゴリズムの残りは、フィルタを掛けた信号の2乗サンプル、またはフィルタを掛けただけの信号自体について実行することができる。信号は、時間経過によるプロフィールを計算することができるようにスライディングウィンドウ式に処理することができるが、これは必須ではない。
【0069】
このアルゴリズムでは、サンプルの振幅またはその2乗がピーク保持値と比較される。そのサンプルがピーク保持値より大きい場合、新しいピーク保持イベントが生じたと見なされる。この場合、ピークカウンタが進められ、ピーク保持値がそのサンプルの値に設定される。他方、次のサンプルが、振幅でピーク保持値より小さい場合、ピーク保持イベントは記録されず、その時点のピーク保持値が、それに適切な減衰係数(この場合、適切な値は約0.99である)を乗算することによって、単純に減らされる。このアルゴリズムに対する疑似コードが以下に示され、そのコードでは、d(k)はk番目のデータサンプルであり、pk_holdはピーク保持値である。
【0070】
IF d(k)>pk_hold
pk_hold=d(k)
peak_counter=peak_counter+1
peak_event(k)=1;
ELSE
pk_hold=0.999*pk_hold
END
【0071】
疑似コードに示されていないのは、このアルゴリズムの一実施形態では、次のピーク保持値が生じたと見なすことができる前に、少なくとも20のサンプルを処理する必要があることである。これにより、1つのカプセル衝突イベントの発生の周りに生じるピーク保持イベントの群がりを防止し、確実に各衝突を単に1回と数えることができる。
【0072】
また、閾値を用いて低レベルのノイズを除去することができる。閾値より上のサンプル値のみが有効ピークであると見なされる。これにより、実際のカプセル衝突ではない多数の極めて小さいピークを数えることが回避される。
【0073】
ピーク保持イベントを見出すと、アルゴリズムは各イベント間の時間を測定し、その時間から、基本周波数が計算され得る。次いで、10Hz帯域内ごとの個々の基本周波数の発生回数が数えられる。現在の吸入器タイプによる試験の結果は、確実に形成されたカプセル衝突イベントによれば、充満カプセルの測定からの衝突信号は、高周波数成分より多くの低周波数成分を有し、したがって、110Hz以下の信号エネルギーを300Hz以上の信号エネルギーと比較すると、これが、充満カプセルイベントと無カプセルイベントとを区別する適切な測定法になる。
【0074】
図5aおよび5bは、充満カプセルおよび無カプセルの測定値それぞれに関するピーク保持処理の結果を示す。両試験とも、吸入器を通る20(l/min)の流れで行われ、グラフは、垂直軸上に信号の振幅、および水平軸に沿ってサンプルの数を示す。
【0075】
「o」の記号は、ピーク保持イベントを表し、「o」に交わる線は、これらイベントのそれぞれの間でピーク保持イベントが減衰する様子を示す。図から、充満カプセルの測定では、カプセル衝突の突出したピークが位置を占めているが、無カプセルの測定では、アルゴリズムは、ノイズ的波形の特性による間隔の近接したピークのみを標すことに留意されたい。
【0076】
より高い流速(150(l/min))での試験は、個々の衝突ピークが互いにより接近し、それゆえ、充満カプセルの測定値にはより多くの高周波成分が存在し、したがって、300〜1000Hzに対する110Hz以下のエネルギーの比率は、より低流速での測定値に関する比率ほどには大きくないが、それでも有用であることを示した。
【0077】
今まで説明した全てのアルゴリズムは、理想的、静的状態では良好な成果をもたらすが、環境ノイズまたは吸入器の取扱いによって生じるノイズが、誤った結果を生じることがある。
【0078】
誤った結果を回避するために、以下の技法を使用することができる。
【0079】
取扱いノイズは、信号中に個々の高ピークを生じ得る。これらは、カプセルの衝突によって生じるピークによく似ている。ただし、たとえば吸入器を硬い面上に落としたり、それにぶつけたりすることでは、極めて限られた数のピークしか生じない。統計的アルゴリズムまたは周波数域識別装置は、そのようなイベントをカプセルイベントから識別することはできないが、それら方法は、ピーク保持方法によって補足することができる。カプセルが存在する信号の類別は、時間ウィンドウ内に十分な数のピークがある場合にのみ有効と見なすことができる。他の場合には、結果はノイズとして類別される。
【0080】
大きなバックグラウンドノイズは、様々なアルゴリズムを使用するカプセルの検出に用いられる信号ピークを覆い隠す可能性がある。呼吸は限られた時間しか継続しないので、カプセルおよび呼吸ノイズが期待されない時間が呼吸の前後にある。したがって、ボタンが押し込まれた後の信号の最初の部分(通常、ボタン押込み後の0.1〜0.5秒)、および信号を評価するために停止する前の最後の部分(通常、10〜30秒後)は、バックグラウンド環境ノイズのレベルを点検するために使用することができる。それらが、用いられるカプセル検出アルゴリズム(複数可)を信頼できなくするあるレベル以上であれば、ノイズの結果が生成される。
【0081】
図6は、本例に使用されたハードウェアを示す。マイクロフォン16からの信号が、1kHzの3dB周波数を有する簡単な1次RCフィルタであるアナログハイパスフィルタ50に通される。そこから、信号は、9.6kHzでサンプルし、12ビットの分解能を有するアナログ−ディジタル変換器(ADC)52へ通される。ADCは、マイクロプロセッサチップ54に組み込んでもよい。
【0082】
図7は、一旦サンプルがマイクロプロセッサ54に送られた後、それらサンプルに実行することができるアルゴリズムの組合せの例を示す。先ず、ウィンドウ生成工程56において、信号を長さ2048サンプルのウィンドウに分割する。
【0083】
これらウィンドウを、簡易ハイパスフィルタ58によって処理する。最も簡単な手段は、現サンプルから前のサンプルを減ずることである。これにより、ADC内の回路上の問題により存在し得るあらゆるDC偏移が除去される。一例示的信号では、信号の始めに、休止時間がそれに続く約2秒の持続時間の吸入があり得る。カプセルの穿孔と吸入との間に使用者がかける時間が分かっていないので、検査ウィンドウは、1呼吸より遥かに長い必要がある。
【0084】
次いで、信号が2乗され60、2乗サンプルの平均が、ウィンドウの2048サンプルに関して計算される62。これが、図7のアルゴリズム構成図の最上部の岐路で行われる。また、最高2乗値が、中央分岐で記録される64。これは、2乗を計算しながら、または、それらがメモリに記憶されているなら2乗サンプル全体を調べることによって行うことができる。全てのサンプルの2乗およびそれらの平均を計算し、それらサンプルの2乗のピーク値を見付けた後、ピーク対平均比が計算される66。2乗の平均(分散)およびピーク対平均比は、このウィンドウに対して、後の分類のために記憶される。
【0085】
図7のアルゴリズム構成図の下側の分岐では、ウィンドウ内のピークを数える68。先ず、ノイズによって生じた小さなピークを除去するために、閾値が使用される。次いで、カプセルの衝突によって生じたピークを見付けるために、ピーク検出アルゴリズムが適用される。
【0086】
このプロセスが、全てのウィンドウが処理されるまで、各ウィンドウについて繰り返される。ほぼ零分散でピーク対平均比が低い一群の結果があることが予想される。これらは、たとえば吸入後の、環境ノイズのみを含むウィンドウからの結果である。吸入中のウィンドウは、より高い分散およびピーク対平均比を有する結果を生じる傾向にある。
【0087】
分類70は、最高の分散を有するウィンドウを探すことによって始まる。このウィンドウは最大の信号エネルギーを含むので、このウィンドウは、他のノイズの存在状態での最も信頼できる情報をもたらす。最適な信頼性を達成するために、最高のエネルギーを有するウィンドウの連続セットを探すような他の措置もまた可能である。最高の分散を有するウィンドウについて、それに属するピーク対平均比をその結果で調べる。
【0088】
ここで、結果を、一連の閾値と比較することによって、分類する必要がある。それら閾値は、様々な流速に対してカプセルの有り無しの多数の実験を行うことによって求められた。これら実験の散布図(分散プロット(scatter plot))は、通常、4つの領域に分割することができる。
1.「カプセル」が通常上部にある。これは、カプセルによるスパイクに起因する高いピーク対平均比(PMR)の領域である。
2.「無音(サイレンス)」。この領域は、極めて低い分散および低PMRを有する。
3.「無カプセル」。この領域は、低い分散および低PMRを有する。カプセルの衝突が無いとノイズレベルは増加され得ないので、最大分散は、カプセルに関して到達する最大分散より遙かに低くなる。
4.「ノイズを有するカプセル」。この領域は、「カプセル」と「無カプセル」との間に生じる。カプセル信号が高レベルの環境ノイズを受けた場合に、結果がこの領域に来る。環境レベルノイズは、カプセルノイズより低いPMRを有するので、全体PMRを低下させる。
【0089】
最後に、これまで行われた処理から生じることのある2つの問題に対して点検が行われる。たとえば硬い面上に吸入器を誤って落とすなど、吸入器の取扱いによるノイズ72は、信号に大きなスパイクを生じる。これらは、分散を際立たせ、極めて高いPMRを生じることがある。これは、「カプセル」として誤った分類に至る。そのような取扱いノイズイベントは、スピンするカプセルが1ウィンドウ当たり10以上のピークを示すのに対して、通常、僅か2〜4ピークしか示さない。また、呼吸の継続時間により、カプセルは少なくとも1秒間スピンする。したがって、5つの連続するウィンドウ内のピークの数が合計される。この合計が50より大きい場合、「カプセル」の分類が確認される。他の場合には、分類判定は、「ノイズ」に修正される。
【0090】
ある場合には、静かなカプセル信号が、大きな環境ノイズによって覆い隠されることがある。低PMRのために、これは、「無カプセル」領域に入ってくる。この状況を見分けるために、最後に処理されたウィンドウの分散が点検される74。その分散が無音閾値の約2倍より大きい場合、分類判定は「ノイズ」に変更される。これは、確実に、誤った否定的結果が全くまたは極めて僅かしか報告されないようにするのに役立つ。
【0091】
本発明が、単に例として上記に説明されており、特許請求の範囲から逸脱することなく細部の修正を加えることができることを理解されたい。
【符号の説明】
【0092】
1 吸入器
2 カプセルハウジング
4 薬剤カプセル
6 空気流路
8 空気入口
10 出口
12 底部
14 乾燥紛体製剤
16 センサ
18 プロセッサ
20 電源
22 壁
24 アクチュエータボタン
26 穿孔部材
28 作動センサ
30 メモリ
32 出力装置
図1
図2
図3
図4
図5a
図5b
図6
図7