【実施例1】
【0020】
(画像形成装置)
図1は、第一実施例の光走査装置1(1Y、1M、1C、1K)を有する電子写真画像形成装置(以下、画像形成装置という。)10の断面図である。本実施例では、画像形成装置10の一例として、複数色のトナーを用いて画像を形成するデジタルフルカラープリンターを用いる。まず、
図1を用いて、本実施例の画像形成装置10を説明する。
【0021】
画像形成装置10は、4つの画像形成部11(11Y、11M、11C、11K)を有する。画像形成部11Yは、イエロートナーを用いてイエロー画像を形成する。画像形成部11Mは、マゼンタトナーを用いてマゼンタ画像を形成する。画像形成部11Cは、シアントナーを用いてシアン画像を形成する。画像形成部11Kは、ブラックトナーを用いてブラック画像を形成する。
【0022】
図1中の参照符号の添字Y、M、C及びKは、それぞれイエロー、マゼンタ、シアン及びブラック画像形成部11Y、11M、11C及び11Kに対応することを示す。それぞれの画像形成部11Y、11M、11C及び11Kは、現像剤(トナー)の色を除いて同じ構造を有するので、特に必要な場合を除き、以下の説明では、参照符号の添字Y、M、C及びKを省略する。
【0023】
画像形成部11は、感光体(像担持体)としての感光ドラム2が備えられている。感光ドラム2の周りには、帯電装置3、光走査装置1、現像装置5、一次転写装置6及びドラムクリーニング装置4が配置されている。感光ドラム2の下方には、無端状の中間転写ベルト(中間転写体)7が配置されている。
【0024】
中間転写ベルト7は、駆動ローラ62、従動ローラ63及び従動ローラ65に張架されている。中間転写ベルト7は、画像形成中に、
図1の矢印Rで示す方向に回転する。一次転写装置6は、中間転写ベルト7を介して感光ドラム2に対向して設けられている。一次転写装置6は、感光ドラム2上のトナー像を中間転写ベルト7へ転写させる。
【0025】
二次転写ローラ(二次転写部材)66は、中間転写ベルト7を介して従動ローラ65に対向して配置されている。
【0026】
画像形成装置10の下部には、記録媒体Sを収容した給紙カセット78および79が配置されている。また、画像形成装置10の側部には、手差しトレイ70が配置されている。記録媒体Sは、給紙カセット78、給紙カセット79又は手差しトレイ70からそれぞれのピックアップローラ71により給送される。記録媒体Sは、搬送ローラ72及びレジストレーションローラ73により二次転写ローラ66へ搬送される。
【0027】
定着装置74は、記録媒体Sの搬送方向Aにおいて二次転写ローラ66の下流側に配置されている。記録媒体Sの搬送方向Aにおいて定着装置74の下流側には、画像が形成された記録媒体Sを積載する排出トレイ77が設けられている。
【0028】
(画像形成プロセス)
次に、画像形成装置10の画像形成プロセスを説明する。各画像形成部11における画像形成プロセスは同一である。ここでは、イエロー画像形成部11Yにおける画像形成プロセスを説明し、マゼンタ、シアン及びブラックの画像形成部11M、11C及び11Kにおける画像形成プロセスの説明を省略する。
【0029】
帯電装置3Yは、感光ドラム2Yの表面を均一に帯電する。光走査装置1Yは、イエロー成分の画像情報に従って変調された光ビームLYを、均一に帯電された感光ドラム2Yの表面に照射し、感光ドラム2Y上に静電潜像を形成する。現像装置5Yは、イエロートナー(現像剤)により静電潜像を現像して、イエロートナー像とする。一次転写装置6Yは、感光ドラム2Y上のイエロートナー像を中間転写ベルト7の表面上に一次転写する。一次転写後に感光ドラム2Y上に残ったトナーは、ドラムクリーニング装置4Yによって除去され、感光ドラム2Yは、次の画像形成に備える。
【0030】
同様にして、マゼンタ画像形成部11M、シアン画像形成部11C及びブラック画像形成部11Kにより、マゼンタトナー像、シアントナー像及びブラックトナー像が中間転写ベルト7上に順次重ねて転写される。その結果、中間転写ベルト7上に4色のトナー像が重ね合わされる。
一方、給紙カセット78、79又は手差しトレイ70から搬送された記録媒体Sは、レジストレーションローラ73により中間転写ベルト7上のトナー像にタイミングを合わせて二次転写ローラ66へ搬送される。中間転写ベルト7上に重ね合わされた4色のトナー像は、二次転写ローラ66により一括して記録媒体S上に二次転写される。
【0031】
トナー像が転写された記録媒体Sは、定着装置74へ搬送される。定着装置74は、記録媒体Sを加熱及び加圧してトナー像を記録媒体Sに定着させる。このようにしてカラー画像が形成された記録媒体Sは、排紙トレイ77上へ排出される。
【0032】
(光走査装置)
次に、
図2を用いて光走査装置1を説明する。
図2は、第一実施例の光走査装置1と感光ドラム2を模式的に表した斜視図である。なお、4つの光走査装置1Y、1M、1C及び1Kは、同様の構造を有するので、以下の説明においては、添え字Y、M、C及びKを省略する。
【0033】
以下の説明において、主走査方向Xとは、回転多面鏡211の回転軸及び結像光学系216の光軸に垂直な方向である。副走査方向とは、結像光学系216の光軸及び主走査方向Xに垂直な方向である。副走査断面とは、結像光学系216の光軸を含み主走査方向Xに垂直な断面である。
【0034】
光走査装置1は、光ビームLを出射する半導体レーザ(以下、光源という。)219、回転多面鏡(偏向装置)211、結像光学系216及び光走査装置1の外枠としての筐体220を有する。回転多面鏡211は、光源219からの光ビームLが感光ドラム2の表面を主走査方向Xに直線的に走査するように光ビームLを偏向する。結像光学系216は、回転多面鏡211により偏向された光ビームLを移動する光スポットとして感光ドラム2の表面上に結像させる。筐体220は、光源219、回転多面鏡211及び結像光学系216を保持する。結像光学系216は、トーリックレンズ(光学素子)212及び結像レンズ(光学素子)215を含む。
【0035】
筐体220には、偏向された光ビームが通過する開口部220aが設けられている。開口部220aには、開口部220aを密閉するように、防塵ガラス231が取り付けられている。
【0036】
光源219から出射された光ビームLは、コリメータレンズ218により平行光にされる。コリメータレンズ218により平行光にされた光ビームLは、副走査方向に所定の屈折力を有するシリンドリカルレンズ217を通過して、回転多面鏡211に到達する。回転多面鏡211によって偏向された光ビームLは、トーリックレンズ212、結像レンズ215及び防塵ガラス231を通過して、移動するスポットとして感光ドラム2の表面上に結像される。
【0037】
光走査装置1は、現像装置5に近接して配置されているので、現像装置5から舞い上がるトナーなどに晒されている。また、画像形成装置10内の温度上昇を抑制するために、ファン(不図示)によって画像形成装置10外の空気を吸引する場合がある。その際に、画像形成装置10外の空気中に存在する塵埃も画像形成装置10内に吸引する可能性がある。
【0038】
また、光走査装置1は、筐体220内の回転多面鏡211が毎分25000回転〜毎分40000回転(rpm)程度の速度で回転しており、比較的高速な空気流れを回転多面鏡211付近に発生させている。それによって、筐体220内が負圧となり、筐体220の隙間から空気の吸引作用が発生する。光走査装置1内に侵入したトナー等の塵埃は回転多面鏡211や各種レンズ等の光学有効面に付着すると、反射率や透過率が低下する。それに伴い、感光ドラム2上に到達する光ビームLの光量が低下し、画像濃度が薄くなるといった画像不良が発生する。そのため、光走査装置1内へのトナー等の異物の侵入を回避する必要がある。
【0039】
(弾性シール部材と蓋部材)
次に、
図3及び
図4を用いて、第一実施例の弾性シール部材241及び蓋部材242を詳しく説明する。
【0040】
図3は、第一実施例の光走査装置1を示す図である。
図3(a)は、光走査装置1の斜視図である。
図3(b)は、上方から見た光走査装置1の分解斜視図である。
図3(c)は、下方から見た光走査装置1の分解斜視図である。
【0041】
筐体220の上開口220bは、蓋部材242により密封される。本実施例において、蓋部材242は、略矩形状である。蓋部材242の四隅には、ねじ251を通す穴252が設けられている。筐体220の四隅には、ねじ251と係合するねじ穴254が設けられている。蓋部材242は、四本のねじ251により筐体220に固定される。蓋部材242は、板状の金属により形成されている。
【0042】
図4は、第一実施例の弾性シール部材241及び蓋部材242の説明図である。
図4(a)は、
図3(a)のIVA−IVA線に沿って取った光走査装置1の副走査断面図である。
図4(b)は、
図3(a)のIVB−IVB線に沿って取った断面図である。
図4(c)は、
図3(a)のIVC−IVC線に沿って取った断面図である。
図4(d)は、蓋部材242の弾性シール塗布面242aを示す図である。
【0043】
筐体220の側壁部(外周壁)220cと蓋部材242との間に弾性シール部材241が配置されている。本実施例において、弾性シール部材241は、ポレオレフィン系樹脂からなるが、これに限定されるものではない。金属板の蓋部材242に対して150〜180℃で溶解させた弾性シール部材241を塗布する。
【0044】
また、蓋部材242には、弾性シール塗布面242aと反対の外側面242bに凸となるように、複数の釣鐘型エンボス242dが形成されている。これによって、蓋部材242の弾性シール塗布面242aには複数の円形状の凹部242cが形成される(
図4(d))。凹部242cは、貫通穴ではなく、止まり穴である。釣鐘型エンボス242dは、必ずしも釣鐘型である必要はなく、その反対側の面に凹部242cが形成されれば、どのような突出部であってもよい。凹部242cの深さは、蓋部材242の厚さと同じ又は蓋部材242の厚さよりも大きくてもよい。凹部242cの深さが蓋部材242の厚さよりも小さい場合、エンボス加工せずに(エンボス242dを設けずに)切削加工により凹部242cを形成してもよい。
【0045】
弾性シール部材241を塗布する際に、弾性シール部材241の一部は、複数の凹部242cに充填される。弾性シール部材241が凹部242cを隙間無く満たすことにより、弾性シール部材241と蓋部材242との密着力が向上する。弾性シール部材241は、筐体220の側壁部220cに沿って塗布される。複数の不連続な(離散的な)凹部242cは、互いに間隔をあけて弾性シール部材241に沿って蓋部材242の弾性シール塗布面242aに設けられている。この凹部242cの効果については後述する。塗布後に弾性シール部材241が冷却されると、弾性シール部材241は、蓋部材242に固着する。
【0046】
弾性シール部材241が塗布された蓋部材242は、ねじ251によって筐体220に直接取り付けられる。蓋部材242は、弾性シール部材241を介して筐体220に対して押圧して固定される。弾性シール部材241は、蓋部材242と筐体220との間に挟持される。弾性シール部材241は、ねじ251によって蓋部材242を介して筐体220に対して押圧されることで適度に圧縮される。弾性シール部材241の圧縮量は、筐体220側のねじ用座面220d(
図4(c))と筐体の側壁部220cの頂部220eとの高さの差(距離H)と圧力をかけていない状態での弾性シール部材241の厚さとの関係で決まる。弾性シール部材241の圧縮率は、10〜50%の間で一般的に使用される。弾性シール部材241をある一定以上に圧縮させないのは、過圧縮によって発生する高い圧縮応力によって蓋部材242や筐体220が歪み光学性能が低下することがあるためである。
【0047】
図3に示すように、弾性シール部材241は、蓋部材242により閉じられる筐体220の上方に開放した開口部220bの周方向に対応して配置される。つまり、弾性シール部材241は、筐体220の側壁部220cに沿って周方向に延在する連続した環状体である。また、複数の凹部242cも筐体220の側壁部220cに沿って周方向に間隔をあけて離散的に設けられている。筐体220の材質は、金属でもよいし、樹脂でもよい。
【0048】
(蓋部材に設けられた凹部の効果)
次に、蓋部材242に設けられた凹部242cの効果について詳しく説明する。
弾性シール部材241は、光走査装置1に組み付け後は、蓋部材242と筐体220によって圧縮挟持される。その際に、弾性シール部材241は、平滑性の低い方によりくっつきやすい性質を持つ。
【0049】
本実施例では、蓋部材242は、板状の金属製であり、その表面は比較的平滑である。一方、筐体220は、表面の平滑性が比較的低い材料を用いている。特に、アルミダイカスト等の鋳物で筐体220を形成する場合は、筐体220の表面の平滑性が低い(表面粗さが大きい)。
【0050】
前述のとおり、画像形成装置のメンテナンスにおいて光走査装置1の蓋部材242を開閉する作業が発生する。そのため、弾性シール部材241の蓋部材242への密着強度を筐体220への密着強度より強くし、弾性シール部材241が安定して蓋部材242に保持されるようにする必要がある。
【0051】
図5は、蓋部材242を開く作業を説明する図である。
図5(a)は、蓋部材242を筐体220から取り外す際の様子を示す模式図である。
図5(b)は、凹部242cの拡大断面図である。
【0052】
蓋部材242を筐体220から取り外す際には、前述の表面性の違いから、弾性シール部材241は、筐体220にもくっつきやすい。そのため、蓋部材242を筐体220から取り外す際には、
図5(a)に示すように蓋部材242を撓ませながら取り外す。その際、
図5(b)に示すように凹部242c内の弾性シール部材241の突出部241aの左側部分241bが局所的に変形させられる。左側部分241bが変形することにより、凹部242c内の気密を維持し、凹部242c内を負圧にする。凹部242c内の負圧により、弾性シール部材241を蓋部材242に、より強くくっつけることが可能となる。
【0053】
凹部242cは、略円錐台形状をしている。しかし、凹部242cの形状は、これに限定されるものではなく、円筒形状、角柱形状、先細りの多角形状などであってもよい。
【0054】
図6は、第一実施例と
図8(b)に示すアンカー部が離脱した状態の従来技術との180°剥離試験結果の比較を示す図である。縦軸は、剥離強度(N)を示す。この結果から、
図8(b)に示すような従来技術の流路穴(貫通穴)42aには開口部があるため、蓋部材242を取り外す際に、本実施例のような効果が得られずに、十分な剥離強度(密着強度)を得られていないことがわかる。
【0055】
これに対して、本実施例では、蓋部材242に凹部(止まり穴)242cを設けているので、弾性シール部材241のアンカー部を蓋部材242の上面に露出させることがない。本実施例によれば、従来技術のように外的接触によりアンカー部が離脱するという問題が無いので、安定確実な防塵性能維持を可能とする光走査装置を提供することができる。
【0056】
(蓋部材に設けられた凹部の配置)
次に、
図4(d)を参照して、第一実施例の蓋部材242に設けられた複数の凹部242cの配置について説明する。
【0057】
複数の凹部242cは、蓋部材242を筐体220に取り付けるねじ251の近傍に比較的狭い間隔で蓋部材242に設けられている。蓋部材242のねじ穴(固定部)252の近傍に設けられた凹部242cの間隔D1は、ねじ穴(固定部)252の近傍以外の部分に設けられた凹部の間隔D2よりも小さい。すなわち、蓋部材242の隅部242eに設けられた凹部242cの間隔D1は、蓋部材242の辺部242fに設けられた凹部242cの間隔D2よりも小さい。これによって、弾性シール部材241の蓋部材242への密着強度をより高めることができる。
【0058】
光走査装置1の組み付け時に、蓋部材242は、ねじ251によって筐体220に押圧される。その際、ねじ251の近傍でない個所については、蓋部材242が撓み、比較的弾性シール部材241の圧縮応力が低く、筐体220への食いつきも比較的低い。一方、ねじ251の近傍は、ねじ251によって弾性シール部材241が確実に圧縮されているために、比較的圧縮応力が高く、筐体220にくっつきやすい。
【0059】
そのため、蓋部材242への弾性シール部材241の密着強度を効率的に高めるためには、ねじ固定部の近傍に狭い間隔で凹部242cを設けることが効果的である。
【実施例2】
【0060】
次に、
図7を参照して第二実施例を説明する。第二実施例において、第一実施例と同様の構造には同様の参照符号を付して説明を省略する。
【0061】
図7は、第二実施例の光走査装置301の蓋部材342の説明図である。
図7(a)は、第二実施例の光走査装置301の斜視図である。
図7(b)は、蓋部材342の弾性シール塗布面342aを示す図である。
【0062】
蓋部材342には、弾性シール塗布面342aと反対の外側面342bに凸となるように、複数の釣鐘型エンボス342dが形成されている。これによって、蓋部材342の弾性シール塗布面342aには複数の円形状の凹部342cが形成される(
図7(b))。
【0063】
第二実施例の光走査装置301は、蓋部材342に取手部343を設けている点で第一実施例の光走査装置1と相違する。取手部343は、蓋部材342の外側面342bと同じ平面上で、蓋部材342の辺部(側部)342hから外側へ延在している。本実施例において、取手部343は、一つの細長片の形状に形成されているが、これに限定されるものではない。半円形状部であっても良いし、複数の突出部であってもよい。使用者の指をかけやすい形状であればよい。
【0064】
蓋部材342に取手部343を設けることで、蓋部材342の取り外しの際に、弾性シール部材241が最初に筐体220から離れる箇所を明確にすることができる。また、取り外しの際に力が働く作用点(この場合は取手部343)の位置からの距離が短いほど、
図5(a)に示すような蓋部材342の撓みによる負圧の効果が得られにくくなる。そこで、それを補うために、取手部343の付近に複数の凹部342cを比較的狭い間隔D3で設けた。これによって、蓋部材342への弾性シール部材241の密着強度を効率的に高めることができる。
【0065】
蓋部材342の隅部342eに設けられた凹部342cの間隔D1は、蓋部材342の辺部342fに設けられた凹部342cの間隔D2よりも小さい。蓋部材342の取手部343に近接する部分342gに設けられた凹部342cの間隔D3は、取手部343に近接する部分342gを除く部分342e及び342fに設けられた凹部342cの間隔D1及びD2よりも小さい。
【0066】
なお、間隔D3は、間隔D1と同じであってもよいし、間隔D1より大きくてもよいが、間隔D2より小さい。
【0067】
本実施例によれば、蓋部材に設けられた複数の凹部に弾性シール部材が充填されて弾性シール部材が成形される。よって、外的接触による弾性シール部材と蓋部材との間の密着強度の低下を防止し、安定確実な防塵性能を維持する光走査装置を提供することができる。