特許第6249831号(P6249831)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6249831
(24)【登録日】2017年12月1日
(45)【発行日】2017年12月20日
(54)【発明の名称】ハチ忌避方法
(51)【国際特許分類】
   A01N 53/02 20060101AFI20171211BHJP
   A01N 53/06 20060101ALI20171211BHJP
   A01N 25/20 20060101ALI20171211BHJP
   A01P 17/00 20060101ALI20171211BHJP
   A01M 1/20 20060101ALI20171211BHJP
   A01M 29/12 20110101ALI20171211BHJP
【FI】
   A01N53/00 502C
   A01N53/00 506Z
   A01N25/20 101
   A01P17/00
   A01M1/20 S
   A01M29/12
【請求項の数】5
【全頁数】9
(21)【出願番号】特願2014-49574(P2014-49574)
(22)【出願日】2014年3月13日
(65)【公開番号】特開2015-174822(P2015-174822A)
(43)【公開日】2015年10月5日
【審査請求日】2017年2月28日
(73)【特許権者】
【識別番号】000207584
【氏名又は名称】大日本除蟲菊株式会社
(72)【発明者】
【氏名】川崎 倫久
(72)【発明者】
【氏名】浅井 洋
(72)【発明者】
【氏名】中山 幸治
【審査官】 山本 昌広
(56)【参考文献】
【文献】 特開2011−144151(JP,A)
【文献】 特開2009−173608(JP,A)
【文献】 特開2012−144476(JP,A)
【文献】 特開平11−209201(JP,A)
【文献】 特開2010−13381(JP,A)
【文献】 特開2014−31362(JP,A)
【文献】 国際公開第2012/147421(WO,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A01N 1/00−65/48
A01P 1/00−23/00
A01M 1/00−1/24
A01M 29/00−29/34
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
(a)ピレスロイド系殺虫成分、(b)線香基材、(c)沸点が200℃以上のパラフィン系溶剤、および(d)沸点が250℃以上400℃以下の香料を含有するハチ用線香を燃焼させることを特徴とするハチ忌避方法であって、
前記(a)ピレスロイド系殺虫成分がアレスリン、トランスフルトリン、メトフルトリン、プラレトリンの少なくとも1種であり、さらに
前記(d)沸点が250℃以上400℃以下の香料が、
ガラクソリド、ムスクケトン、ヘキシルシンナミックアルデヒド、エチレンブラシレート、アンブロキサン、インドール、メチルセドリルケトン、メチルジヒドロジャスモネート、クマリン、バニリン、スチラックスレジノイド、及びイソ−イ−スーパー(7−アセチル−1,2,3,4,5,6,7,8−オクタヒドロ−1,1,6,7−テトラメチルナフタレン)から選ばれた少なくとも1種であることを特徴とするハチ忌避方法
【請求項2】
前記(c)沸点が200℃以上のパラフィン系溶剤を、ハチ用線香の全量に対して0.1〜20質量%含有するものであることを特徴とする請求項に記載のハチ忌避方法。
【請求項3】
前記(c)沸点が200℃以上のパラフィン系溶剤が、少なくともノルマルパラフィンを含有するものであることを特徴とする請求項1又は請求項2に記載のハチ忌避方法。
【請求項4】
前記(c)沸点が200℃以上のパラフィン系溶剤に対する前記(a)ピレスロイド系殺虫成分の配合比が0.020〜0.043の範囲であることを特徴とする請求項1から請求項3のいずれか一項に記載のハチ忌避方法。
【請求項5】
前記(b)線香基材が、植物性粉末としての除虫菊抽出粕粉、柑橘類の表皮粉、茶粉末、ココナッツシェル粉末、及び/又は植物性粘結剤としてのタブ粉から選ばれた少なくとも1種を含有することを特徴とする請求項1から請求項4のいずれか一項に記載のハチ忌避方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、線香を用いたハチ忌避方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
ハチは日本では約3000種類が知られ、そのうち、刺咬性の強いハチは約20種類と言われている。近年、都市周辺の丘陵地帯等の宅地化が進み、刺咬性の強いハチによる人的被害が増大しており、それに伴って、エアゾール剤等のハチ防除用製品が多く市販されている。
従来から、ハチの駆除に際しては、種々の検討が行われてきた。特に、速効性を有する薬剤の使用が求められ、例えば、4−メトキシメチル−2,3,5,6−テトラフルオロベンジル 3−(2−シアノ−1−プロペニル)−2,2−ジメチルシクロプロパンカツボキシラートを有効成分とするハチ行動停止剤が提案されている(特許文献1)。またそのほかにも速効性を有するハチ防除用組成物として、メトフルトリンとテトラメトリンを有効成分とした組成物が開示されるが、いずれも速効性を目的とするものである(特許文献2)。
このような駆除をメインに考える製品では、一見ハチを積極的に殺虫してしまうということからは一般の使用者の方から使い易いと受け取られる反面、ハチからの逆襲という危険も伴うため、一般の人が実施する方法としては必ずしもよい方法と言えない部分もあった。
そのため、ハチに対して積極的な方法で駆除するのではなく、むしろハチが寄ってこないような空間を作るような方法の方が一般の人にも望まれているとも考えられた。
このような状況の中で、本出願人は、屋外での使用に適した蚊取線香として、特定の燃焼基材と特定の蒸気圧を用いた有効成分を含有した渦巻状の線香を開示している(引用文献3)。この蚊取線香では、広い空間や屋外において使用する製品が開示されており、基本的には蚊等の害虫に対して優れた効果を発揮するが、ハチのようなより大きな害虫に対しての効果的な使用方法についてはより踏み込んだ検討が必要であると考えられた。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2011―144151号公報
【特許文献2】特開2009―173608号公報
【特許文献3】特開2012―144476号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
本発明は、ハチの忌避を目的とし、主として屋外において線香を用いたハチ忌避方法を提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明者は、ハチ類に対してより高い寄り付き防止効果を発揮する線香を用いたハチ忌避方法について検討した結果、ピレスロイド系殺虫成分と線香基材と沸点が200℃以上のパラフィン系溶剤を含む線香を用いて、これを燃焼させることでハチの周囲への寄り付きを防止するハチ忌避方法を見出し、本発明に至ったものである。
【0006】
すなわち、本発明は以下の構成が前記目的を達成するために優れた効果を発揮することを見出したものである。
(1)(a)ピレスロイド系殺虫成分、(b)線香基材、(c)沸点が200℃以上のパラフィン系溶剤、および(d)沸点が250℃以上400℃以下の香料を含有するハチ用線香を燃焼させるハチ忌避方法であって、
前記(a)ピレスロイド系殺虫成分がアレスリン、トランスフルトリン、メトフルトリン、プラレトリンの少なくとも1種であり、さらに
前記(d)沸点が250℃以上400℃以下の香料が、ガラクソリド、ムスクケトン、ヘキシルシンナミックアルデヒド、エチレンブラシレート、アンブロキサン、インドール、メチルセドリルケトン、メチルジヒドロジャスモネート、クマリン、バニリン、スチラックスレジノイド、及びイソ−イ−スーパー(7−アセチル−1,2,3,4,5,6,7,8−オクタヒドロ−1,1,6,7−テトラメチルナフタレン)から選ばれた少なくとも1種であるハチ忌避方法
(2)前記(c)沸点が200℃以上のパラフィン系溶剤を、ハチ用線香の全量に対して0.1〜20質量%含有するものである(1)に記載のハチ忌避方法。
(3)前記(c)沸点が200℃以上のパラフィン系溶剤が、少なくともノルマルパラフィンを含有するものであることを特徴とする(1)又は(2)に記載のハチ忌避方法。
(4)前記(c)沸点が200℃以上のパラフィン系溶剤に対する前記(a)ピレスロイド系殺虫成分の配合比が0.020〜0.043の範囲である(1)から(3)のいずれか一項に記載のハチ忌避方法。
(5)前記(b)線香基材が、植物性粉末としての除虫菊抽出粕粉、柑橘類の表皮粉、茶粉末、ココナッツシェル粉末、及び/又は植物性粘結剤としてのタブ粉から選ばれた少なくとも1種を含有する(1)から(4)のいずれか一に記載のハチ忌避方法。
【発明の効果】
【0007】
本発明のハチ忌避方法を用いることで、その場所の周囲にいるハチを寄せ付けないばかりでなく、使用時及び使用後においても一定時間に渡ってハチの忌避したい場所を提供することが出来、その実用性は極めて高い。
【発明を実施するための形態】
【0008】
本発明で用いられるピレスロイド系殺虫成分としては、いずれのピレスロイド化合物も使用することが出来る。ピレスロイド系殺虫成分としては、イミプロトリン、フェノトリン、シフェノトリン、ぺルメトリン、シペルメトリン、シフルトリン、トラロメトリン、フタルスリン、レスメトリン、アレスリン、プラレトリン、フラメトリン、トランスフルトリン、メトフルトリン、プロフルトリン、エトフェンプロックス等が挙げられる。
これらの中でも、アレスリン、トランスフルトリン、メトフルトリン、プラレトリンの少なくとも1種を含有することが好ましい。これらの化合物は、他のピレスロイド系殺虫成分と比較すると揮散性がより高く、本発明で使用される線香に適している。
また、これらのピレスロイド系殺虫成分は、その分子内に各種の立体異性体や幾何異性体を含む場合があるが、これらいずれの異性体も本発明に含まれるのは勿論である。
ピレスロイド系殺虫成分の濃度は、通常の蚊取線香で用いられる濃度でもよいが、より高い設定の方が効力面からも好ましい。一般的な蚊取線香では、有効成分の種類によって適宜変更されるものの、0.01〜1.0質量%の濃度で用いられる。本発明で用いられる有効成分の濃度としては、0.02〜2.0質量%であることが好ましい。
【0009】
本発明で用いられる線香基材としては、通常の線香で用いられる線香基材はいずれも用いることが出来る。これらの線香基材としては、除虫菊抽出粕粉、モミ、トガ、ヒノキ、チャ、ココナッツシェル粉末、タブ粉、柑橘類の表皮の植物粉、ケイソウ土、クレー、カオリン、タルク等の鉱物粉、あるいは素灰等が例示される。
【0010】
沸点200℃以上のパラフィン系溶剤としては、各種のパラフィン系溶剤が使用出来、ノルマルパラフィンやイソパラフィンのいずれも使用可能であるが、本発明ではノルマルパラフィンがより好ましい。ノルマルパラフィンは、線香を燃焼した際の燃焼性に優れるとともに、線香を製造する際の成形性にもより優れている。
本発明で言うノルマルパラフィンは液状のものや固形状のもののいずれであっても使用可能であるが、液状のノルマルパラフィンはより好適に用いられる。ノルマルパラフィンでは、流動パラフィンや軽質流動パラフィンが例示されるが、特にこれらに限定されるものではない。
パラフィン系溶剤の線香への配合量は、燃焼性や発生する煙の量に応じて適宜必要に応じて決定することが出来る。ただ、線香の燃焼性の観点からは、使用量が多すぎると立ち消えの可能性が高まることから、線香への配合量は、線香中に0.1〜20質量%の量が好ましく、更には3〜12質量%がより好ましい。これらの濃度以下では、煙の発生の効果に乏しく、これ以上の量を配合しても、煙の発生が望めないばかりか、立ち消えや線香の成型性に問題が出てくる可能性がある。
また、ピレスロイド系殺虫成分とパラフィン系溶剤のハチ用線香への配合比率もその効果を発揮する上で重要なファクターであり、両成分の比率は、ピレスロイド系殺虫成分/パラフィン系溶剤が、0.01〜1.0程度であることが好ましい。この比率より低いと煙が出てもその中のピレスロイド系殺虫成分が低いため効果が望みにくく、多くても拡散性や付着効果が低くなる可能性がある。
【0011】
さらに、本発明で用いられる線香には、沸点が250℃以上400℃以下の各種の香料成分を配合することが出来る。香料を配合することによりパラフィン系溶剤の揮散性能を高めるだけでなく、燃焼時に香料が拡散することで、有効成分であるピレスロイド系殺虫成分のハチに対する忌避効果を増強及び持続させることが出来る。
沸点が250℃以上400℃以下の各種の香料成分としては、いずれも使用可能である。沸点が250℃以上400℃以下の各種の香料成分としては、特にガラクソリド、ムスクケトン、ヘキシルシンナミックアルデヒド、エチレンブラシレート、メチルアトラレート、ヘキシルサリシレート、トリシクロデセニルアセテート、オレンジャークリスタル、アンブロキサン、キャシュメラン、カロン、ヘリオトロピン、ジヒドロインデニル−2,4−ジオキサン、インドール、メチルセドリルケトン、メチルβ−ナフチルケトン、メチルジヒドロジャスモネート、ローズフェノン、クマリン、バニリン、スチラックスレジノイド、イソ−イ−スーパー(7−アセチル−1,2,3,4,5,6,7,8−オクタヒドロ−1,1,6,7−テトラメチルナフタレン)、ベンジルベンゾエート、ベンジルサリチレート、イオノン、リリーアルデヒド、及びイソロンギホラノンから選ばれた少なくとも1種であることが好ましい。
これらの香料成分は、単独で用いることも可能であるが、2種以上混合して用いることも可能である。
また、必要に応じて、本発明の目的を損なわない程度に沸点が250℃未満の香料成分を更に加え、上記香料成分の揮散性を調整することも出来る。
【0012】
これらの各種の香料成分は、線香に配合すると燃焼の際に有効成分であるピレスロイド系殺虫成分の拡散性向上や付着性の向上に寄与することで壁面等へのハチ類の係留を防止することが認められた。
【0013】
これらの香料成分の配合量については特に限定はされないが、0.01〜5質量%であることが好ましい。0.01質量%未満では上記の効果が認められず、5質量%を超えて使用しても効果が望めないばかりか、線香の立ち消えに繋がる恐れがある。
また、前記パラフィン系溶剤と香料成分の使用は、ピレスロイド系殺虫成分の使用量との関係にもよるが、両成分の合計使用量として、0.1〜25質量%であることが好ましく、さらに3〜15質量%であることがより好ましい。使用量が少ないとこれらの効果が認められず、使用量が多すぎると立ち消えや、線香の表面温度が下がり、ピレスロイド系殺虫成分が十分に揮散しないことが考えられる。
【0014】
本発明で用いられるハチ用線香には、効果に対して影響を与えない程度で、各種の成分を添加することも可能である。例えば、共力剤、色素、防腐剤、安定剤、界面活性剤、分散剤などの成分がある。共力剤としては、N−(2−エチルヘキシル)−ビシクロ[2,2,1]ヘプタ−5−エン−2,3−ジカルボキシイミド、ピペロニルブトキサイド等が示される。色素としては、マラカイトグリーンや各種食用色素、各種法定色素などが用いられる。防腐剤としては、例えば、ソルビン酸、デヒドロ酢酸、パラヒドロキシ安息香酸エステル類やそれらの塩類などが代表的である。
【0015】
界面活性剤や分散剤は有効成分の分散等の目的のために適宜用いられ、例えば、ポリオキシエチレンアルキルエーテル類、ポリオキシエチレンアルキルフェニルエーテル類、ポリオキシエチレンポリオキシプロピレンアルキルエーテル類、ポリオキシエチレンアルキルアミノエーテル類などのエーテル類、ポリエチレングリコール脂肪酸エステル類、ポリオキシエチレンソルビタン脂肪酸エステル類、ポリオキシエチレングリセリン脂肪酸エステル類などの脂肪酸エステル類、ポリオキシエチレンスチレン化フェノール、脂肪酸のポリアルカロールアミドなどの非イオン系界面活性剤や、例えば、ポリオキシエチレン(POE)スチリルフェニルエーテル硫酸塩、ポリオキシエチレン(POE)アルキルエーテル硫酸塩、ドデシルベンゼン硫酸塩などのアニオン系界面活性剤が挙げられる。
【0016】
また、安定剤としては、一般に酸化防止剤として知られるジ−t−ブチル−フェノール系安定剤や、前記炭素粉末に対する安定剤としてのポリエチレングリコール等があげられ、特に、沸点が250℃以上のジ−t−ブチル−フェノール系安定剤を添加することは好ましい。かかる安定剤には、2,6−ジ−ターシャリーブチル−4−メチルフェノール(BHT)、2,2’−メチレンビス(4−メチル−6−ターシャリーブチルフェノール)、2,2’−メチレンビス(4−エチル−6−ターシャリーブチルフェノール、4,4’−ブチリデンビス(3−メチル−6−ターシャリーブチルフェノール、4,4’−チオビス(3−メチル−6−ターシャリーブチルフェノール)、2−ターシャリーブチル−6−(3−ターシャリーブチル−2−ヒドロキシ−5−メチルベンジル)−4−メチルフェニル アクリレート、2,4−ジ−ターシャリーブチルフェニル 3,5−ジ−ターシャリーブチル−4−ヒドロキシベンゾエート等が挙げられる。
【0017】
本発明で用いられるハチ用の線香は、通常の渦巻の形状をした線香とすることも出来るが、その特性を発揮するため必要に応じて、各種の形状とすることも出来る。例えば、棒状や板状として成型してもよいし、これらのものの内部を空洞とした形状としたりすることも出来る。
また、断面積としては、一般的に製品で販売されている線香が20〜25mmである。
本発明のハチ用線香では、通常の太さのものでも問題はないが、さらに断面積を太くすれば、煙の量を増やすことが出来、より好ましい。
本発明では、30〜50mmが好ましく、特に40〜50mmであれば、より好ましい。
【0018】
本発明に係わるハチ用線香を調製するにあたっては、公知の製造方法を採用できる。例えば、プレミックス粉(殺虫成分、効力増強剤、パラフィン系溶剤及び香料などを線香用基材の一部に含有させたもの)と残部の線香用基材及び粘結剤を混合したものに水を加えて混練し、続いて、押出機、打抜機によって成型後、乾燥して蚊取線香を製造すればよい。また、粘結剤及び線香用基材のみを用いて成型後、これに殺虫成分等を含む液剤をスプレーあるいは塗布または含浸して製造しても構わない。
【0019】
これらの線香を屋外の中でも、ハチが寄ってきそうな場所としてハチが出入りする周辺、例えば、屋根裏、軒下、屋根瓦の下、木の枝、樹木の空隙などや玄関の周囲に置いて使用することが出来る。また、農作業中や山道、公園などで線香皿を携帯して使用することも出来る。
このような場所で本発明に記載のハチ用線香を使用するとパラフィン系溶剤が燃焼の際に煙を多く出すことの効果により、ハチが寄り付きにくくなるばかりでなく、ピレスロイド系殺虫成分を含む煙が放散し、壁などの場所へのピレスロイド系殺虫成分の付着によりハチがその壁になどの場所に留まるのを阻止する効果をも期待できる。
【0020】
また、本発明に記載の香料成分を配合した場合には、パラフィン系溶剤による壁などへの付着効果及び拡散性向上のみならず、ピレスロイド系殺虫成分との効果により、更にピレスロイド系殺虫成分の効力を増強並びに持続する効果をも期待できる。
【0021】
本発明で対象とするハチ類については、通常に屋外で見られるハチであれば、特に限定はされないが、ハチ類としては、ミツバチ、クマバチ、フタモンアシナガバチ、セグロアシナガバチ、キアシナガバチ、コガタスズメバチ、モンスズメバチ、ヒメスズメバチ、オオスズメバチ、キイロスズメバチ、チャイロスズメバチなどがあげられる。
また、本発明に記載のハチ用線香を使用した場合には、周囲の空間にピレスロイド系殺虫成分が揮散することが期待されるため、同時に各種の飛翔害虫や、匍匐害虫に対する効果も期待できる。飛翔害虫としては、各種の蚊類、ユスリカ類、イエバエ、チョウバエ、ショウジョウバエ等のコバエ類など、匍匐害虫としては、ゴキブリ類、アリ類、マダニなどにも効果が期待できる。
【0022】
本発明で用いられるハチ用線香は、通常の燻焼をさせれば効果は得られるものの、ピレスロイド系薬剤の付着効果を期待するためには、一定時間の燻焼時間があった方がより好ましい。燻焼時間は、特に限定はされないものの、1時間〜5時間程度を目安として使用すればよい。その使用時間は、2時間程度を目安としてもよい。その使用場所での状況により適宜変更することは可能である。
軒下や縁側などでは、2時間程度を目安にすれば、持続性の効果をも期待することが出来る。
【0023】
次に、具体的な実施例に基づき。本発明に用いられるハチ用線香とこれを用いるハチ忌避方法について更に詳細に説明するが、本発明は、これらの実施例の内容に限定されるものではない。
【実施例1】
【0024】
dl・d−T80−アレスリンを0.3部、支燃剤・増量剤として、除虫菊抽出粕粉(植物性粉末)を33部、木粉(モミ由来の植物性粉末)を25部及びタルク(鉱物粉)を8部、糊剤として、タブ粉(植物性粘結剤)を12部とタピオカ粉を12部、沸点が200℃以上のパラフィン系溶剤として、流動パラフィンを8部、香料として、ガラクソリド、ヘキシルシンナミックアルデヒド等を含む香料成分(沸点が250℃以上400℃以下)を1.0部と、リナロール等を含む香料成分(沸点が250℃未満)を0.3部含有する混合粉に、着色剤(法定色素)を0.15部、防黴剤としてのソルビン酸カリウムを0.25部及び水100部を加えて混練後、押出機にかけて板状シートとし、打抜機によって打抜き、水分率7〜10%程度にまで乾燥してハチ用線香を製造した。
【0025】
実施例1に準じて、表1に示す各種のハチ用線香(着色剤、防黴剤、水の配合は実施例1と同じ)を作製し、以下の試験方法に基づき性能を評価した。結果を表2に示す。
セグロアシナガバチが営巣行動を始めた初期段階の巣の表面に見られる成虫の数を計測した後、巣から2m離れた位置から各供試線香を1時間燻煙し、燻煙終了直後とその3日後に巣の表面に見られる成虫の数を計測した。さらに2週間後に営巣の進行状況を観察し、結果は、営巣が殆ど進んでいないもの:○、僅かに進んだもの:△、大きく進んだもの:×、で示した。
なお、表中の本発明5および12については参考例として示す。
【0026】
[表1]
【0027】
[表2]
【0028】
試験の結果、ピレスロイド系殺虫成分、線香基材、及びパラフィン系溶剤を含有する本発明の線香は、使用方法や使用場所を問わず、ハチに対して優れた忌避効果を発揮し、巣作りも防止する効果があった。
ピレスロイド系殺虫成分としてdl・d−T80−アレスリンやトランスフルトリンを用いた実施例1〜実施例4では沸点200℃以上のパラフィン系溶剤を用いたものであるが、いずれもハチに対する忌避効果が認められた。また、2週間後の営巣防止効果も高かった。
また、実施例6〜実施例10でも同様であった。
これに対して、パラフィン系溶剤を用いていない比較例1〜4では、沸点250℃以上400℃以下の香料を使用した場合でも、効力は低く、営巣防止効果は認められなかった。

【産業上の利用可能性】
【0029】
本発明のハチ忌避方法は、通常の蚊取線香を用いた場合の蚊などの殺虫方法や忌避方法にも適用することが出来る。