(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6249848
(24)【登録日】2017年12月1日
(45)【発行日】2017年12月20日
(54)【発明の名称】美爪料
(51)【国際特許分類】
A61K 8/73 20060101AFI20171211BHJP
A61K 8/81 20060101ALI20171211BHJP
A61Q 3/02 20060101ALI20171211BHJP
【FI】
A61K8/73
A61K8/81
A61Q3/02
【請求項の数】5
【全頁数】10
(21)【出願番号】特願2014-60893(P2014-60893)
(22)【出願日】2014年3月24日
(65)【公開番号】特開2015-182976(P2015-182976A)
(43)【公開日】2015年10月22日
【審査請求日】2016年11月16日
(73)【特許権者】
【識別番号】000145862
【氏名又は名称】株式会社コーセー
(74)【代理人】
【識別番号】110000109
【氏名又は名称】特許業務法人特許事務所サイクス
(72)【発明者】
【氏名】川島 佑介
【審査官】
松元 麻紀子
(56)【参考文献】
【文献】
特公昭60−033362(JP,B1)
【文献】
特開平03−170409(JP,A)
【文献】
特開平06−279240(JP,A)
【文献】
特開2004−352718(JP,A)
【文献】
特開2000−143447(JP,A)
【文献】
特開平01−305015(JP,A)
【文献】
特開平02−164809(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A61K 8/73
A61K 8/81
A61Q 3/02
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
次の成分(a)〜(c);
(a)平均分子量10000〜35000、ガラス転移点(Tg)110〜150℃である酢酸酪酸セルロース
(b)平均分子量35000〜100000、ガラス転移点(Tg)130〜170℃ある酢酸酪酸セルロース
(c)アクリル樹脂
を含有することを特徴とする美爪料。
【請求項2】
成分(a)の含有量が0.5〜30質量%であることを特徴とする請求項1に記載の美爪料。
【請求項3】
成分(b)の含有量が0.5〜20質量%であることを特徴とする請求項1または2に記載の美爪料。
【請求項4】
成分(c)の含有量が0.5〜30質量%であることを特徴とする請求項1〜3の何れかに記載の美爪料。
【請求項5】
成分(c)のアクリル樹脂が、平均分子量20000〜100000、ガラス転移点(Tg)10〜110℃であることを特徴とする請求項1〜4の何れかに記載の美爪料。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、本発明は特定の酢酸酪酸セルロースとアクリル樹脂とを含有することにより、ツヤと乾きの速さに優れ、経時での傷やヒビ割れ、剥れに強い、高い化粧持ち効果を有し、経時安定性に優れる美爪料に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来のネイルエナメルに用いられる皮膜形成剤としてはニトロセルロースが最適とされ、一般的に用いられている。これはニトロセルロースがツヤや付着性、化粧持ちなど、ネイルエナメルに求められる機能に優れているためである。一方でニトロセルロースは非常に引火性が強いため、製造において取り扱いに注意が必要であり、また合成には生体や環境に有害な硝酸を用いるため、環境負荷が非常に高い。さらにニトロセルロースは日光や高温下において変色をきたしやすく、ネイルエナメルの色調を損ねてしまうとともに、微量に含有される酸によって、紫外線吸収剤等の安定性に影響を与えてしまうという課題があった。
かかる見地から、皮膜形成剤としてのニトロセルロースの代替品あるいは使用量を低減する試みが行われてきた。例えば、メタクリル酸エステル・アクリル酸エステル共重合体とのアクリル樹脂混合物を皮膜形成剤として含有する技術や(例えば、特許文献1参照)、酢酸酪酸セルロース、ポリエステル樹脂、アクリル樹脂、アクリレートシリコーンなどを皮膜形成剤とする技術の検討がされてきたが、いまだにニトロセルロースが主体の美爪料が市場の殆どを占めているのが現状である。
【0003】
また最近は、ジェルネイルといわれる紫外線硬化樹脂を用いた美爪料を施してネイルアートを楽しむ傾向にあり、厚みやツヤが非常に高い美爪料が好まれている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特公昭60−33362号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
環境負荷の低減や製剤の安定性を確保するためには、ネイルエナメルにおける皮膜形成剤をニトロセルロースから他の皮膜形成剤で代用する必要があった。しかし単純に代用となる皮膜形成剤を用いるだけでは、ニトロセルロースには及ばず、乾きの速さとツヤ及び硬さに優れ、経時でのヒビ割れや剥がれに強い、高い化粧持ちを具現化することは困難であった。
また、ジェルネイルで使用される紫外線硬化樹脂は、消費者個人で扱うことは困難であり、除去するにも、専門店で行う必要があった。そこで、簡便にジェルネイルのような、厚みがあり、ツヤが非常に高い美爪料の開発が望まれていた。
【課題を解決するための手段】
【0006】
かかる実情に鑑み、本発明者は、鋭意検討した結果、異なる分子量及びガラス転移点(Tg)をもつ2種以上の酢酸酪酸セルロースとアクリル樹脂を組み合わせることによって、ジェルネイルを施したような膜厚感が得られ、乾きの速さとツヤ及び硬さに優れ、経時でのヒビ割れや剥がれに強い、高い化粧持ちを有し、顔料を含有した際には顔料分散性に優れる美爪料が得られることを見出し、本発明を完成するに至った。
【0007】
すなわち、本発明は
(1)次の成分(a)〜(c);
(a)平均分子量10000〜35000、ガラス転移点(Tg)110〜150℃である酢酸酪酸セルロース
(b)平均分子量35000〜100000、ガラス転移点(Tg)130〜170℃ある酢酸酪酸セルロース
(c)アクリル樹脂
を含有することを特徴とする美爪料、
(2)成分(a)の含有量が0.5〜30質量%であることを特徴とする前記(1)に記載の美爪料、
(3)成分(b)の含有量が0.5〜20質量%であることを特徴とする前記(1)または(2)に記載の美爪料、
(4)成分(c)の含有量が0.5〜30質量%であることを特徴とする前記(1)〜(3)の何れかに記載の美爪料、
(5)成分(c)のアクリル樹脂が、平均分子量20000〜100000、ガラス転移点(Tg)10〜110℃であることを特徴とする前記(1)〜(4)の何れかに記載の美爪料、
を提供するものである。
【発明の効果】
【0008】
本発明は、異なる分子量及びガラス転移点(Tg)をもつ2種以上の酢酸酪酸セルロースとアクリル樹脂とを含有することにより、ジェルネイルを施したような膜厚感が得られ、乾きの速さとツヤ及び硬さに優れ、経時でのヒビ割れや剥がれに強い、高い化粧持ち効果を有し、経時安定性に優れる美爪料に関するものである。
【発明を実施するための最良の形態】
【0009】
以下、本発明を詳細に説明する。
本発明において、ガラス転移点(Tg)は、既知の示差走査熱量分析(DSC)法を用いて、サンプル10mg、上昇温度20℃/minで測定されたガラス転移温度を指す。
また、分子量は、数平均分子量既知の単分散ポリスチレンのゲル浸透クロマトグラフ(GPC)測定結果を用いて試料樹脂のポリスチレン換算数平均分子量を求めることにより、数平均分子量とした。
【0010】
本発明における成分(a)平均分子量10000〜35000、ガラス転移点(Tg)110〜150℃である酢酸酪酸セルロースは、部分的にアセチル化したセルロースの酪酸エステルであり、例えば、木材パルプもしくはコットンリンター由来のセルロールに、酸、酸無水物、触媒等を加えエステル化してセルローストリエステルとした後、一部加水分解して得ることができる。
また、例えば、ブチリル基の含量が35〜55質量%(以下、単に「%」と示す。)、アセチル基の含量が2〜15%のものが挙げられる。
【0011】
本発明において成分(a)は、その1種又は2種以上を用いることができ、含有量は、特には制限されないが、塗布しやすく、化粧膜の柔軟性や厚みに優れる点において、好ましくは0.5〜30%、更に好ましくは1〜20%である。
【0012】
本発明における成分(b)平均分子量35000〜100000、ガラス転移点(Tg)130〜170℃ある酢酸酪酸セルロースは、成分(a)と同様に、部分的にアセチル化したセルロースの酪酸エステルであり、例えば、木材パルプもしくはコットンリンター由来のセルロールに、酸、酸無水物、触媒等を加えエステル化してセルローストリエステルとした後、一部加水分解して得ることができる。ブチリル基の含量が35〜55%、アセチル基の含量が2〜15%のものが挙げられるが、成分(a)に比べ、分子量は大きく、ガラス転移点(Tg)は一部重複するが、高い範囲のものである。
【0013】
尚、本発明において、平均分子量が35000でガラス転移点(Tg)が110〜150℃は成分(a)となり、平均分子量が35000でガラス転移点(Tg)が150℃を超えて170℃までは、成分(b)となる。
【0014】
本発明において成分(b)は、その1種又は2種以上を用いることができ、含有量は、特には制限されないが、化粧膜の硬さや経時でのヒビ割れの抑制、ツヤに優れる点において、好ましくは0.5〜20%、更に好ましくは1%〜15%である。
【0015】
本発明における成分(c)のアクリル樹脂は、アクリル酸およびその誘導体を重合したものを総称し、アクリル酸の誘導体は、アクリル酸エステル、メタクリル酸およびそのエステルを包含するものであり、美爪料に用いられるものであれば、使用することができる。
例えば、主として、アクリル酸アルキル(炭素数1〜12)、メタクリル酸アルキル(炭素数1〜12)、アクリル酸及びメタクリル酸の中の2種以上を組み合わせて構成される共重合体であると、ツヤ及び硬さに優れ、経時でのヒビ割れや剥がれに強いものが得られる点において好ましい。尚、アルキルは直鎖状、分岐状、環状のいずれでも良い。
メタクリル酸アルキルの例を挙げれば、メタクリル酸メチル、メタクリル酸エチル、メタクリル酸プロピル、メタクリル酸ブチル、メタクリル酸オクチル、メタクリル酸2−エチルヘキシル、メタクリル酸ドデシル、メタクリル酸シクロヘキシル等であり、アクリル酸アルキルの例を挙げれば、アクリル酸メチル、アクリル酸エチル、アクリル酸プロピル、アクリル酸ブチル、アクリル酸オクチル、アクリル酸2−エチルヘキシル、アクリル酸ドデシル、アクリル酸シクロヘキシル等である。
アクリル樹脂を構成するメタクリル酸アルキルおよびアクリル酸アルキル、メタクリル酸、アクリル酸以外に、例えばアクリロニトリル、スチレン等の他のモノマーを含有することもできる。
アクリル樹脂は、一般的な製造法で合成される。例えば、重合体および共重合体を構成するモノマーをラジカル重合で重合することによって得ることができる。
アクリル樹脂の分子量は、ツヤ及び硬さに優れ、経時での剥がれに強いものが得られる点において、平均分子量20000〜100000、ガラス転移点(Tg)10〜110℃であることが好ましい。
【0016】
本発明において成分(c)は、その1種又は2種以上を用いることができ、含有量は、特には制限されないが、膜厚感が得られ、乾きの速さとツヤ及び硬さに優れ、経時でのヒビ割れや剥がれに強い、高い化粧持ち効果が得られる点において、好ましくは0.5〜30%、更に好ましくは2〜20%である。
【0017】
また、本発明の美爪料には、本発明の目的を損なわない範囲で、上記必須成分の他に、通常の美爪料に使用される溶剤、皮膜形成剤、有機変性粘土鉱物、無水ケイ酸、可塑剤、粉体、パール剤、ラメ等が含有される。さらに、希釈剤、粘度調整剤、油剤、界面活性剤、紫外線吸収剤、褪色防止剤、酸化防止剤、消泡剤、保湿剤、薬剤、香料、水、無機酸、有機酸等も適量含有することができる。
【0018】
本発明における溶剤としては、トルエン、キシレン等の芳香族炭化水素以外の有機溶剤を好ましく使用することができる。例えば、酢酸−n−ブチル、酢酸イソブチル、酢酸エチル、メチルエチルケトン、アセトン、n−ブタノール、イソプロピルアルコール、エチルアルコール等が例として挙げられ、これらの1種又は2種以上を用いることができる。
【0019】
上記のうち、成分(A)〜(C)以外の皮膜形成剤としては、通常の美爪料に用いられているものであれば特に限定されないが、例えば、フタル酸系アルキッド樹脂、シリコーン含有樹脂、トルエンスルホンアミド樹脂、安息香酸ショ糖エステル、(無水フタル酸/無水トリメリト酸/グリコールズ)コポリマー、トルエンスルホンアミドエポキシ樹脂、ポリ酢酸ビニル、ポリビニルアルコール、ポリビニルピロリドン等、及びこれらのエマルションが挙げられ、これらの1種又は2種以上を用いることができる。
【0020】
上記成分のうち、有機変性粘土鉱物としては、例えば、市販品としてベントン27、ベントン38(NLインダストリ−社製)等が挙げられ、また、無水ケイ酸としては、例えば、市販品としてアエロジル200、300、380、380S、R972、R974、R976S(日本アエロジル社製)、ニップシールE−220(日本シリカ工業社製)、サイリシア250、310(富士シリシア社製)等が挙げられる。
【0021】
可塑剤としては、ジブチルフタレート、ジオクチルフタレート等のフタル酸エステル系化合物、クエン酸トリブチル、クエン酸アセチルトリブチル等のクエン酸エステル系化合物、カンフル等も、本発明の効果を損なわない範囲で適宜、含有できる。
【0022】
また、本発明の美爪料において使用される粉体は、球状、板状、針状等の形状、煙霧状、微粒子、顔料級等の粒子径、多孔質、無孔質等の粒子構造等により特に限定されず、無機粉体類、光輝性粉体類、有機粉体類、色素粉体類、金属粉体類、複合粉体類等が挙げられる。具体的に例示すれば、酸化チタン、酸化亜鉛、酸化セリウム、硫酸バリウム等の白色無機顔料、酸化鉄、カーボンブラック、酸化クロム、水酸化クロム、紺青、群青等の有色無機顔料、タルク、白雲母、金雲母、紅雲母、黒雲母、合成雲母、絹雲母(セリサイト)、合成セリサイト、カオリン、炭化珪素、ベントナイト、スメクタイト、酸化アルミニウム、酸化マグネシウム、酸化ジルコニウム、酸化アンチモン、珪ソウ土、ケイ酸アルミニウム、メタケイ酸アルミニウムマグネシウム、ケイ酸カルシウム、ケイ酸バリウム、ケイ酸マグネシウム、炭酸カルシウム、炭酸マグネシウム、ヒドロキシアパタイト、窒化ホウ素等の白色体質粉体、酸化チタン被覆雲母、酸化チタン被覆ガラス末、酸化チタン被覆オキシ塩化ビスマス、酸化鉄雲母チタン、紺青処理雲母チタン、カルミン処理雲母チタン、オキシ塩化ビスマス、魚鱗箔、ポリエチレンテレフタレート・アルミニウム・エポキシ積層末、ポリエチレンテレフタレート・ポリメチルメタクリレート積層末、ポリエチレンテレフタレート・ポリオレフィン積層末、等の光輝性粉体、ポリアミド系樹脂、ポリエチレン系樹脂、ポリアクリル系樹脂、ポリエステル系樹脂、フッ素系樹脂、セルロース系樹脂、ポリスチレン系樹脂、スチレン−アクリル共重合樹脂等のコポリマー樹脂、ポリプロピレン系樹脂、シリコーン樹脂、ウレタン樹脂等の有機高分子樹脂粉体、ステアリン酸亜鉛、N−アシルリジン等の有機低分子性粉体、澱粉、シルク粉末、セルロース粉末等の天然有機粉体、赤色201号、赤色202号、赤色205号、赤色226号、赤色228号、橙色203号、橙色204号、青色404号、黄色401号等の有機顔料粉体、赤色3号、赤色104号、赤色106号、橙色205号、黄色4号、黄色5号、緑色3号、青色1号等のジルコニウム、バリウム又はアルミニウムレーキ等の有機顔料粉体あるいは更にアルミニウム粉、金粉、銀粉等の金属粉体、微粒子酸化チタン被覆雲母チタン、微粒子酸化亜鉛被覆雲母チタン、硫酸バリウム被覆雲母チタン、酸化チタン含有二酸化珪素、酸化亜鉛含有二酸化珪素等の複合粉体等が挙げられる。これら粉体はその1種又は2種以上を用いることができ、更に複合化したものを用いても良い。なお、これら粉体は、フッ素系化合物、シリコーン系化合物、金属石鹸、レシチン、水素添加レシチン、コラーゲン、炭化水素、高級脂肪酸、高級アルコール、エステル、ワックス、ロウ、界面活性剤等の1種又は2種以上を用いて表面処理を施してあってもよい。
【0023】
本発明の美爪料は、常法に従い、上記した各成分を適宜含有し、例えば、ディスパーやホモミキサー等の機器を用いて均一に混合、分散することによって調製される。
以上のようにして得られた本発明の美爪料は、ネイルエナメル、トップコート、ベースコートなどを挙げることができる。
【0024】
次に実施例を挙げ、本発明をより詳しく説明するが、本発明はこれらの実施例等により何ら制約されるものではない。
【実施例】
【0025】
実施例1〜6及び比較例1〜3:ネイルエナメル
表1に示す処方のネイルエナメルを下記製造方法にて調製し、塗布のしやすさ、乾きの速さ、ツヤ、膜の硬さ、膜厚さ.化粧持ち(ヒビ割れのなさ)、(剥れのなさ)経時安定性(変色)について評価した結果を併せて表1に示す。
【0026】
【表1】
【0027】
*1:分子量:20000、Tg:123℃
*2:分子量:70000、Tg:141℃
*3:(メタクリル酸メチル/メタクリル酸n−ブチル)共重合体、分子量:60000、Tg:20℃
【0028】
(製造方法)
成分(1)〜(9)をディスパーにて均一に混合分散したものを容器に充填し、ネイルエナメルを得た。
【0029】
(評価項目)
イ.塗布のしやすさ
ロ.乾きの速さ
ハ.ツヤ
ニ.膜の硬さ
ホ.膜厚さ
ヘ.化粧持ち(ヒビ割れのなさ)
ト.化粧持ち(剥れのなさ)
チ.経時安定性(変色)
【0030】
(評価方法)
10名の化粧料専門パネルに、上記の実施例及び比較例のネイルエナメルを使用してもらい、各々に対して、前記評価項目の「塗布しやすさ」、「乾きの速さ」、「ツヤ」、「膜の硬さ」、「膜厚さ」、「化粧持ち(ヒビ割れのなさ)」「化粧持ち(剥れのなさ)」の各評価項目について、下記の評価基準に基づき7段階評価し、各パネルの評点の平均点より、下記判定基準に従って判定した。尚、「化粧持ち(ヒビ割れのなさ)」「化粧持ち(剥れのなさ)」については各試料を爪に塗布し、通常の生活を行い72時間後の塗布状態について評価した。
(評価基準)
(評価) :(評点)
非常に良好:6
良好 :5
やや良好 :4
普通 :3
やや不良 :2
不良 :1
非常に不良:0
(判定基準)
(評点の平均点) :(判定)
5点以上 :◎:かなり優れる
3.5点以上5点未満 :○:優れる
1.5点以上3.5点未満:△:劣る
1.5点未満 :×:かなり劣る
【0031】
評価項目の経時安定性については、経時での変色を評価した。
50℃の恒温槽に1ヶ月放置後の状態について、外観を目視にて観察し、室温保存品と比較して、以下の基準にて判定した。
(変色状態) :(判定)
変色の差が全くわからない :◎:かなり優れる
変色の差がわずかにわかる程度で気にならない:○:優れる
変色の差がややわかる :△:劣る
変色の差がはっきりわかる :×:かなり劣る
【0032】
表1に示す評価結果より、本発明である実施例は「塗布しやすさ」、「乾きの速さ」、「ツヤ」、「膜の硬さ」、「膜厚さ」「化粧持ち(ヒビ割れのなさ)」「化粧持ち(剥れのなさ)」、の項目において比較例より優れたものが得られた。また、「経時安定性」の項目である変色に関しては、実施例も比較例も良いものであった。
比較例1の成分(a)の酢酸酪酸セルロースを含有しない場合では特にツヤや化粧持ち(ヒビ割れのなさ)の項目が劣り、成分(b)の酢酸酪酸セルロースを含有しない比較例2では特に塗布のしやすさや化粧持ち(剥れのなさ)の項目が劣り、比較例3のアクリル樹脂を含有しない場合では、特に経時で収縮して厚みがなくなり、化粧持ちにも劣るものであった。
【0033】
実施例7:ネイルエナメル
(成分) (%)
1.(酢酸/酪酸)セルロース*4 2
2.(酢酸/酪酸)セルロース*2 3
3.酢酸エチル 20
4.酢酸ブチル 残量
5.アクリル樹脂*3 12
6.ヘプタン 2
7.イソプロピルアルコール 5
8.クエン酸アセチルトリブチル 5
9.安息香酸スクロース 1
10.ジエチルアミノヒドロキシベンゾイル安息香酸ヘキシルの
メトキシケイヒ酸エチルヘキシル溶液*5 0.2
11.ステアラルコニウムヘクトライト 3
12.パーフルオロオクチルトリエトキシシラン
(5%)処理酸化チタン 2
13.パーフルオロオクチルトリエトキシシラン
(5%)処理黄酸化鉄 3
14.赤色226号 0.05
15.メチルポリシロキサン(3%)処理雲母チタン 2
16.パーフルオロオクチルトリエトキシシラン
(3%)処理ガラスフレーク 1
17.アクリル−シリコーン系グラフト共重合体溶液*6 5
*4:分子量:30000、Tg:130℃
*5:ユビナール A Plus B(BASF社製)
*6:シリコンKP−543(メタクリル変性メチルポリシロキサン50%、酢酸ブチル50%溶液 信越化学工業社製)
(製造方法)
成分14〜16を成分1〜4に添加しディスパーにて溶解し、さらにこれら以外の成分を添加しディスパーにて均一に混合分散したものを容器に充填し、ネイルエナメルを得た。
本発明のネイルエナメルについて、実施例1〜6で使用した評価方法と同様に評価を行った結果、「塗布しやすさ」、「乾きの速さ」、「ツヤ」、「膜の硬さ」、「膜厚さ」「化粧持ち(ヒビ割れのなさ)」「化粧持ち(剥れのなさ)」、「経時安定性」の全ての項目において優れたものであった。
【0034】
実施例8:エナメルベースコート
(成分) (%)
1.(酢酸/酪酸)セルロース*4 4
2.(酢酸/酪酸)セルロース*7 3
3.酢酸エチル 18
4.酢酸ブチル 残量
5.アクリル樹脂*8 10
6.ヘプタン 2
7.イソプロピルアルコール 5
8.クエン酸アセチルトリブチル 6
9.安息香酸スクロース 2
10.イソ酪酸酢酸セルロース 4
11.オキシベンゾン 0.2
12.ステアラルコニウムヘクトライト 1
13.パーフルオロオクチルトリエトキシシラン
(5%)処理酸化チタン 1
14.パーフルオロオクチルトリエトキシシラン
(5%)処理黄酸化鉄 0.2
15.パーフルオロオクチルトリエトキシシラン
(5%)処理赤酸化鉄 0.4
*7:分子量:40000、Tg:133℃
*8:(メタクリル酸シクロヘキシル/メタクリル酸エチルヘキシル)コポリマー(分子量:28000、Tg:48℃)40%水添ポリイソブテン溶液
(製造方法)
成分13〜15を成分1〜4に添加しディスパーにて溶解し、さらにこれら以外の全成分を添加しディスパーにて均一に混合分散したものを容器に充填し、エナメルベースコートを得た。
本発明のエナメルベースコートについて、実施例1〜6で使用した評価方法と同様に評価を行った結果、「塗布しやすさ」、「乾きの速さ」、「ツヤ」、「膜の硬さ」、「膜厚さ」「化粧持ち(ヒビ割れのなさ)」「化粧持ち(剥れのなさ)」、「経時安定性」の全ての項目において優れたものであった。また、ベースコートを塗布後に、市販のネイルエナメルを塗布した場合も膜厚に塗布することができ、ネイルエナメルの持つ効果を損ねることはなかった。
【0035】
実施例9:トップコート
(成分) (%)
1.(酢酸/酪酸)セルロース*4 4
2.(酢酸/酪酸)セルロース*2 4
3.酢酸エチル 25
4.酢酸ブチル 残量
5.シロキサン基含有(メタ)アクリル酸系共重合体溶液*9 6
6.アクリル樹脂*3 12
7.ヘプタン 8
8.安息香酸スクロース 4
9.イソプロピルアルコール 5
10.クエン酸アセチルトリブチル 5
11.カンフル 2
12.オキシベンゾン 0.2
13.パーフルオロオクチルトリエトキシシラン
(3%)処理ガラスフレーク 0.5
*9:(アクリレーツ/メタクリル酸トリス(トリメチルシロキシ)シリルプロピル)コポリマー25%酢酸ブチル溶液
(製造方法)
成分1〜13をディスパーにて均一に混合分散したものを容器に充填し、トップコートを得た。
本発明のトップコートについて、実施例1〜6で使用した評価方法と同様に評価を行った結果、「塗布しやすさ」、「乾きの速さ」、「ツヤ」、「膜の硬さ」、「膜厚さ」「化粧持ち(ヒビ割れのなさ)」「化粧持ち(剥れのなさ)」、「経時安定性」の全ての項目において優れたものであった。また、ベースコートを塗布後に、市販のネイルエナメルの上に塗布した場合もこれらの効果を得ることができ、ネイルエナメルの持つ効果を損ねることはなかった。