特許第6249862号(P6249862)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6249862
(24)【登録日】2017年12月1日
(45)【発行日】2017年12月20日
(54)【発明の名称】キャリアシート及び積層体
(51)【国際特許分類】
   B32B 27/00 20060101AFI20171211BHJP
   C09J 7/02 20060101ALI20171211BHJP
   C09J 183/04 20060101ALI20171211BHJP
【FI】
   B32B27/00 M
   C09J7/02 Z
   C09J183/04
   B32B27/00 101
【請求項の数】9
【全頁数】14
(21)【出願番号】特願2014-72659(P2014-72659)
(22)【出願日】2014年3月31日
(65)【公開番号】特開2015-193162(P2015-193162A)
(43)【公開日】2015年11月5日
【審査請求日】2017年1月4日
(73)【特許権者】
【識別番号】000102980
【氏名又は名称】リンテック株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100108833
【弁理士】
【氏名又は名称】早川 裕司
(74)【代理人】
【識別番号】100162156
【弁理士】
【氏名又は名称】村雨 圭介
(72)【発明者】
【氏名】倉田 雄一
(72)【発明者】
【氏名】安齋 剛史
(72)【発明者】
【氏名】大橋 仁
【審査官】 春日 淳一
(56)【参考文献】
【文献】 特開平01−199867(JP,A)
【文献】 特開2006−052384(JP,A)
【文献】 米国特許出願公開第2006/0008662(US,A1)
【文献】 特開2011−102336(JP,A)
【文献】 米国特許出願公開第2011/0111217(US,A1)
【文献】 特開2012−149192(JP,A)
【文献】 特開2015−140375(JP,A)
【文献】 特開2009−279349(JP,A)
【文献】 特開2008−167787(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B32B1/00−43/00
C09J1/00−201/10
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
粘着性を有する粘着面と粘着性を有しない非粘着面とを有する被キャリア体に積層されるキャリアシートであって、
基材と、
前記基材の少なくとも一方の面側に設けられ、前記被キャリア体の前記粘着面及び前記非粘着面の両者に剥離可能に密着する密着層と
を備え、
前記密着層は、シリコーン系微粘着剤から構成される
ことを特徴とするキャリアシート。
【請求項2】
前記基材は、樹脂フィルムを主体とすることを特徴とする請求項1に記載のキャリアシート。
【請求項3】
前記シリコーン系微粘着剤は、シリコーンゴムを含有する材料を硬化させたものであることを特徴とする請求項1又は2に記載のキャリアシート。
【請求項4】
前記密着層の厚さは、1〜100μmであることを特徴とする請求項1〜3のいずれか一項に記載のキャリアシート。
【請求項5】
前記被キャリア体の前記粘着面は、アクリル系粘着剤、ウレタン系粘着剤又はゴム系粘着剤から構成されることを特徴とする請求項1〜4のいずれか一項に記載のキャリアシート。
【請求項6】
前記被キャリア体の前記粘着面に対する剥離力は、10〜2000mN/50mmであり、
前記被キャリア体の前記非粘着面に対する粘着力は、10〜2000mN/50mmである
ことを特徴とする請求項1〜5のいずれか一項に記載のキャリアシート。
【請求項7】
粘着性を有する粘着面と粘着性を有しない非粘着面とを有する被キャリア体と、
請求項1〜6のいずれか一項に記載のキャリアシートと
を積層してなる積層体であって、
前記キャリアシートの前記密着層は、前記被キャリア体の前記粘着面及び前記非粘着面の両者に密着している
ことを特徴とする積層体。
【請求項8】
前記被キャリア体は、シート状となっており、
前記被キャリア体の少なくとも一方の面側に、前記粘着面及び前記非粘着面の両者が存在する
ことを特徴とする請求項7に記載の積層体。
【請求項9】
前記被キャリア体及び前記キャリアシートは、長尺のシートであることを特徴とする請求項8に記載の積層体。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、キャリアシート、及びキャリアシートと被キャリア体とを積層してなる積層体に関するものである。
【背景技術】
【0002】
近年、携帯電子機器等に用いられる電子部品材料の薄型化や低コスト化が進んでいる。これに伴い、電子部品の構成や組み立ての簡略化を目的として、粘着性を有する粘着面と粘着性を有しない非粘着面とを有する材料が使用されることがある。かかる材料においては、粘着面にゴミなどが付着するおそれがあるため、粘着面をむき出しにしたまま搬送や加工を行うことができない。そのため、当該材料を被キャリア体とし、その被キャリア体の粘着面を覆い保護するためのキャリアシートが使用される。
【0003】
上記のようなキャリアシートとしては、一般的には剥離シートが使用される。例えば、特許文献1には、粘着剤層及び非粘着剤層に積層された剥離シート(剥離紙)が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2000−44903号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、特許文献1の剥離シートは、粘着性を有する粘着剤層とは密着しても、粘着性を有しない非粘着剤層とは密着しない。そのため、被キャリア体の非粘着剤層は、剥離シートに固定されず、加工工程や搬送時に、被キャリア体や剥離シートの折れ、剥がれ等の不具合が生じるおそれがある。
【0006】
一方、剥離シートの替わりに通常の粘着シートを使用した場合には、粘着シートの粘着剤層と被キャリア体の粘着剤層との粘着力が大きく、両者を剥離することが困難となる。
【0007】
本発明は、このような実情に鑑みてなされたものであり、粘着性を有する粘着面と粘着性を有しない非粘着面とを有する被キャリア体との密着性及び剥離性に優れたキャリアシートを提供することを目的とする。また、加工工程や搬送時に折れ、剥がれ等の不具合の生じにくい、キャリアシートと被キャリア体とを積層してなる積層体を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記目的を達成するために、第1に本発明は、粘着性を有する粘着面と粘着性を有しない非粘着面とを有する被キャリア体に積層されるキャリアシートであって、基材と、前記基材の少なくとも一方の面側に設けられ、前記被キャリア体の前記粘着面及び前記非粘着面の両者に剥離可能に密着する密着層とを備え、前記密着層は、シリコーン系微粘着剤から構成されることを特徴とするキャリアシートを提供する(発明1)。なお、本明細書において、「シート」にはテープの概念及びフィルムの概念が含まれるものとする。
【0009】
上記発明(発明1)に係るキャリアシートは、その密着層がシリコーン系微粘着剤から構成されることにより、被キャリア体の粘着面のみならず、粘着性を有しない非粘着面に対しても密着するため、被キャリア体との密着性に優れている。したがって、積層体の加工時や搬送時に、キャリアシートまたは被キャリア体が折れたり剥がれたりする不具合が生じにくい。また、キャリアシートが不要になった段階で、キャリアシートは被キャリア体から(被キャリア体はキャリアシートから)弱い剥離力で容易に剥離することができる。
【0010】
上記発明(発明1)において、前記基材は、樹脂フィルムを主体とすることが好ましい(発明2)。
【0011】
上記発明(発明1,2)において、前記シリコーン系微粘着剤は、シリコーンゴムを含有する材料を硬化させたものであることが好ましい(発明3)。
【0012】
上記発明(発明1〜3)において、前記密着層の厚さは、1〜100μmであることが好ましい(発明4)。
【0013】
上記発明(発明1〜4)において、前記被キャリア体の前記粘着面は、アクリル系粘着剤、ウレタン系粘着剤又はゴム系粘着剤から構成されることが好ましい(発明5)。
【0014】
上記発明(発明1〜5)において、前記被キャリア体の前記粘着面に対する剥離力は、10〜2000mN/50mmであり、前記被キャリア体の前記非粘着面に対する粘着力は、10〜2000mN/50mmであることが好ましい(発明6)。
【0015】
第2に本発明は、粘着性を有する粘着面と粘着性を有しない非粘着面とを有する被キャリア体と、前記キャリアシート(発明1〜6)とを積層してなる積層体であって、前記キャリアシートの前記密着層は、前記被キャリア体の前記粘着面及び前記非粘着面の両者に密着していることを特徴とする積層体を提供する(発明7)。
【0016】
上記発明(発明7)において、前記被キャリア体は、シート状となっており、前記被キャリア体の少なくとも一方の面側に、前記粘着面及び前記非粘着面の両者が存在することが好ましい(発明8)。
【0017】
上記発明(発明8)において、前記被キャリア体及び前記キャリアシートは、長尺のシートであることが好ましい(発明9)。
【発明の効果】
【0018】
本発明に係るキャリアシートは、粘着性を有する粘着面と粘着性を有しない非粘着面とを有する被キャリア体との密着性及び剥離性に優れている。また、本発明に係る積層体は、加工工程や搬送時に、折れ、剥がれ等の不具合が生じにくい。
【図面の簡単な説明】
【0019】
図1】本発明の一実施形態に係るキャリアシートの断面図である。
図2】本発明の一実施形態に係る積層体の断面図である。
図3】本発明の他の実施形態に係る積層体の断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0020】
以下、本発明の実施形態について説明する。
〔キャリアシート〕
本発明の一実施形態に係るキャリアシート1は、図1に示すように、基材10と、基材10の一方の面側(図1では上側)に設けられた密着層11とから構成され、本実施形態では長尺のシートとなっている。このキャリアシート1は、粘着性を有する粘着面と粘着性を有しない非粘着面とを有する被キャリア体(図2及び図3参照)に積層されるものである。
【0021】
(1)基材
本実施形態に係るキャリアシート1の基材10としては、密着層11を積層することができ、被キャリア体を保持、搬送等することができるものであれば、特に制限はなく、従来公知のものの中から任意のものを適宜選択して用いることができる。
【0022】
このような基材10としては、例えば、樹脂フィルム、金属フィルム、金属を蒸着させた樹脂フィルム、それらの積層体等を主体とするものが好ましく、特に、樹脂フィルムを主体とするものが好ましい。なお、「主体とする」とは、それらよりも薄い所望の層を備えていてもよいことを意味する。
【0023】
樹脂フィルムとしては、例えば、ポリエチレン、ポリプロピレン等のポリオレフィン、ポリエチレンテレフタレート、ポリブチレンテレフタレート、ポリエチレンナフタレート等のポリエステル、ポリ塩化ビニル、ポリスチレン、ポリウレタン、ポリカーボネート、ポリアミド、ポリイミド、ポリエーテルイミド、ポリ(メタ)アクリル酸エステル、ポリブテン、ポリブタジエン、ポリメチルペンテン、アクリルウレタン、エチレン酢酸ビニル共重合体、エチレン(メタ)アクリル酸共重合体、エチレン(メタ)アクリル酸エステル共重合体、ABS樹脂、アイオノマー樹脂、各種熱可塑性エラストマーなどの樹脂からなるフィルム、発泡フィルム、又はそれらの積層フィルム、合成紙等を使用することができる。上記の中でも、機械的強度や経済性に優れたポリオレフィンフィルム及びポリエステルが好ましく、特にポリエチレンテレフタレートフィルムが好ましい。
【0024】
樹脂フィルムにおいては、その表面に設けられる密着層11との密着性を向上させる目的で、所望により密着層11が設けられる面に、酸化法や凹凸化法などによる表面処理、あるいはプライマー処理を施すことができる。上記酸化法としては、例えばコロナ放電処理、プラズマ放電処理、クロム酸化処理(湿式)、火炎処理、熱風処理、オゾン、紫外線照射処理などが挙げられ、また、凹凸化法としては、例えばサンドブラスト法、溶射処理法などが挙げられる。これらの表面処理法は、樹脂フィルムの種類に応じて適宜選ばれるが、一般にコロナ放電処理法が効果及び操作性の面から好ましく用いられる。
【0025】
基材10の厚さは、特に限定されないが、10〜250μmであることが好ましく、特に25〜150μmであることが好ましく、さらには38〜125μmであることが好ましい。
【0026】
(2)密着層
本実施形態に係るキャリアシート1の密着層11は、被キャリア体の粘着面及び非粘着面の両者に剥離可能に密着する層であり、シリコーン系微粘着剤から構成される。なお、本明細書において、「微粘着」とは、タックを有し、被着体との濡れが起ることにより、被着体との界面での密着が可能となるもののうち、非常に弱い剥離抵抗を示すものをいう。
【0027】
密着層11は、シリコーン系微粘着剤から構成されることにより、被キャリア体の粘着面及び非粘着面の両者に剥離可能に密着する。すなわち、本実施形態に係るキャリアシート1は、被キャリア体の粘着面のみならず、粘着性を有しない非粘着面に対しても密着するため、被キャリア体との密着性に優れている。したがって、加工時や搬送時に、キャリアシート1が折れたり剥がれたりする不具合が生じにくい。
【0028】
また、密着層11がシリコーン系微粘着剤から構成されていることにより、キャリアシート1が不要になった段階で、キャリアシート1は被キャリア体から(被キャリア体はキャリアシート1から)弱い剥離力で容易に剥離することができる。
【0029】
上記のシリコーン系微粘着剤は、シリコーンゴムを含有する材料を硬化させたものであることが好ましい。また、シリコーンゴムは、平均単位式
SiO(4−a) ・・・(1)
(式(1)中、Rは互いに同一又は異種の炭素数1〜12の非置換又は置換の1価炭化水素基であり、aは1.5〜2.05の範囲の正数である。)
で示され、かつ分子中に少なくとも2個のアルケニル基を有するオルガノポリシロキサン及びオルガノハイドロジェンポリシロキサンからなる付加型オルガノポリシロキサン100質量部に対して0〜100質量部の分子中に3官能性又は4官能性のシロキサン単位を含むポリオルガノシロキサン(シリコーンレジン)並びに0.01〜10質量部の白金触媒を含むシリコーンゴム(以下「シリコーンゴムS」という場合がある。)であることが好ましい。
【0030】
密着層11がシリコーンゴム、特にシリコーンゴムSを含有する材料を硬化させたものであると、被キャリア体の粘着面及び非粘着面の両者に対する密着性及び剥離性がより優れたものとなり、非粘着面に対する粘着力及び粘着面に対する剥離力が、取扱い上好適な範囲となる。
【0031】
シリコーンゴムSにおける上記式(1)で示されるオルガノポリシロキサン中のRで示される1価炭化水素基の炭素数は、1〜12であり、好ましくは1〜8である。当該1価炭化水素基としては、具体的には、ビニル基、アリル基、プロペニル基、イソプロペニル基、ブテニル基、ヘキセニル基、シクロヘキセニル基、オクテニル基等のアルケニル基、メチル基、エチル基、プロピル基、イソプロピル基、ブチル基、イソブチル基、tert−ブチル基、ペンチル基、ネオペンチル基、ヘキシル基、シクロヘキシル基、オクチル基、ノニル基、デシル基等のアルキル基、フェニル基、トリル基、キシリル基、ナフチル基等のアリール基、ベンジル基、フェニルエチル基、フェニルプロピル基等のアラルキル基や、これらの基の水素原子の一部又は全部をフッ素、臭素、塩素等のハロゲン原子、シアノ基等で置換したもの、例えばクロロメチル基、クロロプロピル基、ブロモエチル基、トリフルオロプロピル基、シアノエチル基等が挙げられる。
【0032】
式(1)中のaは、1.5〜2.05の範囲の正数であり、好ましくは1.8〜2.5の範囲、特に好ましくは1.95〜2.05の範囲の正数である。
【0033】
上記オルガノポリシロキサンが有するアルケニル基としては、硬化時間の短さ及び生産性の点から、ビニル基が好ましい。
【0034】
オルガノハイドロジェンポリシロキサンは、分子中にSiH基を有しており、シロキサン結合を主骨格としアルケニル基を有するオルガノポリシロキサンのアルケニル基との間で付加反応し、シリコーンゴムが硬化する。
【0035】
白金触媒としては、白金黒、塩化第2白金、塩化白金酸、塩化白金酸と1価アルコールとの反応物、塩化白金酸とオレフェン類との錯体、白金ビスアセトアセテート等を例示することができる。
【0036】
白金触媒は、付加型オルガノポリシロキサン100質量部に対して、0.01〜10質量部の範囲で使用し、0.05〜6質量部の範囲で使用するのが好ましい。白金触媒の使用量が0.01質量部未満では、硬化不足のため剥離力が大きくなりすぎるおそれがある。白金触媒の使用量が10質量部を超えると、粘着力が小さくなる傾向があり、また、付加反応によるゲル化が速く、塗布が困難になるおそれがある。
【0037】
3官能性又は4官能性のシロキサン単位を含むポリオルガノシロキサン(シリコーンレジン)は、粘着力を高める効果がある。当該ポリオルガノシロキサンは、付加型オルガノポリシロキサン100質量部に対して、100質量部以下で使用し、好ましくは0〜90質量部、より好ましくは40〜70質量部の範囲で使用する。このポリオルガノシロキサンの使用量が100質量部を超えると、剥離力が大きくなりすぎるおそれがある。
【0038】
密着層11の厚さは、1〜100μmであることが好ましく、特に3〜60μmであることが好ましく、さらには20〜40μmであることが好ましい。密着層11の厚さが1μm以上であると、密着層11としての機能が十分に発揮され得る。また、密着層11の厚さが1μm未満であると、非粘着面に対する粘着力が十分に得られないおそれがある。一方、密着層11の厚さが100μmを超えると、経済的に不利になるとともに、密着層中に溶媒が残存したり、表面の平滑性が低下するおそれがある。
【0039】
(3)物性
被キャリア体の粘着面に対するキャリアシート1の剥離力は、10〜2000mN/50mmであることが好ましく、特に40〜1000mN/50mmであることが好ましく、さらには200〜500mN/50mmであることが好ましい。剥離力が10mN/50mm以上であると、被キャリア体の粘着面をしっかりと保持することができる。また、剥離力が2000mN/50mm以下であると、キャリアシート1は使用後に容易に剥離することができる。
【0040】
また、被キャリア体の非粘着面に対するキャリアシート1の粘着力は、10〜2000mN/50mmであることが好ましく、特に20〜500mN/50mmであることが好ましく、さらには40〜300mN/50mmであることが好ましい。粘着力が10mN/50mm以上であると、被キャリア体の非粘着面をしっかりと保持することができる。また、粘着力が2000mN/50mm以下であると、キャリアシート1は使用後に容易に剥離することができる。
【0041】
なお、被キャリア体の粘着面に対するキャリアシート1の剥離力と、被キャリア体の非粘着面に対するキャリアシート1の粘着力との差は、500mN/50mm以下であることが好ましく、特に300mN/50mm以下であることが好ましく、さらには200mN/50mm以下であることが好ましい。これにより、被キャリア体からキャリアシート1を剥離するときに、一定の力で容易に剥離することができ、ハンドリングの観点から好ましいものとなる。
【0042】
(4)製造方法
キャリアシート1の一製造例としては、基材10の一方の面に、密着層11を構成するシリコーン系微粘着剤及び所望により希釈剤を含有する塗布液を塗布した後、乾燥させる(場合によっては硬化させる)ことにより、密着層11を形成する。塗布液の塗布は、例えば、バーコーター、ダイコーター、グラビアコーター、ロールコーター、ナイフコーター等の塗工機を用いて行うことができる。
【0043】
上記希釈剤としては特に制限はなく、様々なものを用いることができる。例えば、メチルエチルケトン、トルエン、酢酸エチル、キシレン及びこれらの混合物等が用いられる。
【0044】
塗布したシリコーン系微粘着剤は、熱硬化させることが好ましい。この場合の加熱温度は90〜180℃であることが好ましく、加熱時間は1〜5分程度であることが好ましい。
【0045】
〔積層体〕
本実施形態に係る積層体は、粘着性を有する粘着面と粘着性を有しない非粘着面とを有する被キャリア体と、上記本実施形態に係るキャリアシート1とを積層してなるものである。被キャリア体としては、粘着面と非粘着面とを有するものであれば特に限定されないが、少なくとも一方の面側に、粘着面及び非粘着面の両者が存在するものが好ましい。
【0046】
被キャリア体の用途は特に限定されるものではなく、例えば、電子部品を構成する部材、電子部品を組み立てるための材料、電子部品そのもの、ディスプレイを構成するための光学部品等が挙げられる。
【0047】
かかる被キャリア体とキャリアシート1とを積層してなる積層体の一例を図2及び図3に示す。
【0048】
まず図2に示す積層体3Aについて説明する。
本実施形態に係る積層体3Aは長尺のシート状となっており、図2は積層体3Aの幅方向の断面図である。図2に示すように、積層体3Aの被キャリア体2Aは、基材21Aと、基材21Aの一方の面(図2では下側の面)の全体に積層された粘着剤層22と、粘着剤層22の基材21Aとは反対側の面(図2では下側の面)の幅方向中央部に積層された非粘着性のシート23とから構成される。
【0049】
被キャリア体2Aの上記シート23が存在する側の面(図2では下側の面)においては、粘着剤層22の基材21Aとは反対側の面であって、シート23が積層されていない部分は粘着面220となっており、シート23の粘着剤層22とは反対側の面は非粘着面230となっている。
【0050】
本実施形態に係る積層体3Aにおいては、キャリアシート1の密着層11と、被キャリア体2Aの粘着面220及び非粘着面230とが密着するように、キャリアシート1と被キャリア体2Aとが積層されている。
【0051】
次に、図3に示す積層体3Bについて説明する。
本実施形態に係る積層体3Bは長尺のシート状となっており、図3は積層体3Bの幅方向の断面図である。図3に示すように、積層体3Bの被キャリア体2Bは、基材21Bと、基材21Bの一方の面(図3では下側の面)の幅方向両側部に積層された両面粘着シート24とから構成される。
【0052】
被キャリア体2Bの上記両面粘着シート24が存在する側の面(図3では下側の面)においては、両面粘着シート24の基材21Bとは反対側の面は粘着面240となっており、基材21Bの両面粘着シート24が存在する側の面であって、両面粘着シート24が積層されていない部分(幅方向中央部)は非粘着面210となっている。
【0053】
本実施形態に係る積層体3Bにおいては、キャリアシート1の密着層11と、被キャリア体2Bの粘着面240及び非粘着面210とが密着するように、キャリアシート1と被キャリア体2Bとが積層されている。
【0054】
被キャリア体2Aの粘着面220及び被キャリア体2Bの粘着面240を構成する粘着剤は、アクリル系粘着剤、ウレタン系粘着剤又はゴム系粘着剤であることが好ましく、特にアクリル系粘着剤であることが好ましい。密着層11はシリコーン系微粘着剤から構成されており、当該シリコーン系微粘着剤と接触する粘着剤が例えばシリコーン系粘着剤であると、両者間の結合力が過度に大きくなり、剥離しにくくなるおそれがある。粘着面220,240を構成する粘着剤がアクリル系粘着剤、ウレタン系粘着剤又はゴム系粘着剤、特にアクリル系粘着剤であると、シリコーン系微粘着剤から構成される密着層11による剥離性が効果的に発揮される。
【0055】
被キャリア体2Aの非粘着面230及び被キャリア体2Bの非粘着面210を構成する材料は、非粘着性のものであれば特に限定されない。例えば、プラスチック、金属、セラミックス、ガラス、グラファイト、紙、織布、不織布、それらの複合材料等が挙げられる。中でも比較的平滑性の高い材料、例えば、プラスチック、金属、セラミックス、ガラス、グラファイト等が好ましい。シリコーン系微粘着剤から構成される密着層11は、これらの材料に対して密着し、剥離可能な粘着力を効果的に発揮する。
【0056】
ここで、被キャリア体2Aにおける非粘着性のシート23の厚さは、粘着面220と非粘着面230との高さの差(段差)を生じさせ、被キャリア体2Bにおける両面粘着シート24の厚さは、粘着面240と非粘着面210との高さの差(段差)を生じさせる。キャリアシート1又は密着層11の段差追従性を考慮すると、シート23及び両面粘着シート24の厚さは、200μm以下であることが好ましく、特に100μm以下であることが好ましく、さらには50μm以下であることが好ましい。
【0057】
被キャリア体2A及び被キャリア体2Bは、常法によって製造することができる。被キャリア体2Aと、キャリアシート1とを、被キャリア体2Aの粘着面220及び非粘着面230と、キャリアシート1の密着層11とが密着するように貼り合せることにより、積層体3Aが得られる。また、被キャリア体2Bと、キャリアシート1とを、被キャリア体2B粘着面240及び非粘着面210と、キャリアシート1の密着層11とが密着するように貼り合せることにより、積層体3Bが得られる。
【0058】
キャリアシート1は、その密着層11がシリコーン系微粘着剤から構成されることにより、被キャリア体2A,2Bの粘着面220,240のみならず、粘着性を有しない非粘着面210,230に対しても密着するため、被キャリア体2A,2Bとの密着性に優れている。したがって、積層体3A,3Bの加工時や搬送時に、キャリアシート1または被キャリア体2A,2Bが折れたり剥がれたりする不具合が生じにくい。
【0059】
また、キャリアシート1が不要になった段階で、キャリアシート1は被キャリア体2A,2Bから(被キャリア体2A,2Bはキャリアシート1から)弱い剥離力で容易に剥離することができる。
【0060】
以上説明した実施形態は、本発明の理解を容易にするために記載されたものであって、本発明を限定するために記載されたものではない。したがって、上記実施形態に開示された各要素は、本発明の技術的範囲に属する全ての設計変更や均等物をも含む趣旨である。
【0061】
例えば、キャリアシート1は、基材10と密着層11との間、または基材10の密着層11とは反対側の面に、他の層を備えていてもよい。また、被キャリア体2A,2Bは、長手方向に粘着面及び非粘着面を有していてもよいし、長尺のシート状でなく、キャリアシート1上に断続的に保持されていてもよい。また、被キャリア体2A,2Bの形状は、フィルムやフィルム積層品に限らず、押し出し成型等によって作製された三次元形状品などであってもよい。
【実施例】
【0062】
以下、実施例等により本発明をさらに具体的に説明するが、本発明の範囲はこれらの実施例等に限定されるものではない。
【0063】
〔実施例1〕
シロキサン結合を主骨格としビニル基を有するオルガノポリシロキサン及びオルガノハイドロジェンポリシロキサンからなる付加型オルガノポリシロキサン(信越化学工業社製,KS−847H,以下「材料A」という)30質量部(固形分換算;以下同じ)に、3官能性又は4官能性のシロキサン単位を含むオルガノポリシロキサン(シリコーンレジン;東レ・ダウシリコーン社製,SD4584,以下「材料B」という)18質量部と、白金触媒(信越化学工業社製,「PL−50T」)1.6質量部とを加え、トルエンにて固形分濃度約30質量%に希釈し、シリコーンゴム溶液を得た。
【0064】
得られたシリコーンゴム溶液を、基材としての易接着剤層を有するポリエチレンテレフタレート(PET)フィルム(東洋紡社製,コスモシャインA4100,厚さ100μm)の易接着剤層上に、硬化後の厚さが8μmとなるようにアプリケーターによって塗布し、130℃で2分間加熱し硬化させて、密着層を形成した。その密着層に、剥離フィルムとしてのPETフィルム(東レ社製,ルミラーT60,厚さ38μm)を貼合し、キャリアシート(剥離フィルム付き)を得た。
【0065】
〔実施例2〕
密着層の厚さが3μmとなるようにシリコーンゴム溶液を塗布した以外は、実施例1と同様にしてキャリアシートを作製した。
【0066】
〔実施例3〕
密着層の厚さが12μmとなるようにシリコーンゴム溶液を塗布した以外は、実施例1と同様にしてキャリアシートを作製した。
【0067】
〔実施例4〕
密着層の厚さが25μmとなるようにシリコーンゴム溶液を塗布した以外は、実施例1と同様にしてキャリアシートを作製した。
【0068】
〔実施例5〕
密着層の厚さが40μmとなるようにシリコーンゴム溶液を塗布した以外は、実施例1と同様にしてキャリアシートを作製した。
【0069】
〔実施例6〕
シリコーンゴム溶液における材料Bの配合割合を9質量部とした以外は、実施例1と同様にしてキャリアシートを作製した。
【0070】
〔実施例7〕
シリコーンゴム溶液における材料Bの配合割合を27質量部とした以外は、実施例1と同様にしてキャリアシートを作製した。
【0071】
〔実施例8〕
シリコーンゴム溶液における材料Bの替わりに、3官能性又は4官能性のシロキサン単位を含むオルガノポリシロキサン(シリコーンレジン;東レ・ダウシリコーン社製,SD4587L,以下「材料C」という)を18質量部配合した以外は、実施例1と同様にしてキャリアシートを作製した。
【0072】
〔実施例9〕
シリコーンゴム溶液における材料Cの質量割合を30質量部とした以外は、実施例8と同様にしてキャリアシートを作製した。
【0073】
〔実施例10〕
シリコーンゴム溶液に材料Bを配合せず、密着層の厚さが22μmとなるようにシリコーンゴム溶液を塗布した以外は、実施例1と同様にしてキャリアシートを作製した。
【0074】
〔実施例11〕
密着層の厚さが40μmとなるようにシリコーンゴム溶液を塗布した以外は、実施例10と同様にしてキャリアシートを作製した。
【0075】
〔実施例12〕
シリコーンゴム溶液における材料Aの替わりに、シロキサン結合を主骨格としビニル基を有するオルガノポリシロキサン及びオルガノハイドロジェンポリシロキサンからなる付加型オルガノポリシロキサン(東レ・ダウシリコーン社製,LTC310,以下「材料D」という)を30質量部配合した以外は、実施例1と同様にしてキャリアシートを作製した。
【0076】
〔実施例13〕
シリコーンゴム溶液に材料Bを配合せず、密着層の厚さが25μmとなるようにシリコーンゴム溶液を塗布した以外は、実施例12と同様にしてキャリアシートを作製した。
【0077】
〔実施例14〕
シリコーンゴム溶液に材料Bを配合せず、密着層の厚さが45μmとなるようにシリコーンゴム溶液を塗布した以外は、実施例12と同様にしてキャリアシートを作製した。
【0078】
〔比較例1〕
アクリル酸2−エチルヘキシル92.8質量%と、アクリル酸2−ヒドロキシエチル7.0質量%と、アクリル酸0.2質量%とを共重合して調製したアクリル酸エステル共重合体40質量部に、架橋剤としてのヘキサメチレンジイソシアネート系イソシアヌレート(日本ポリウレタン工業社製,コロネートHX)3.5質量部と、可塑剤としてのアセチルクエン酸トリブチル(ATBC)(田岡化学工業社製)5質量部とを加え、トルエンにて固形分濃度約30質量%に希釈し、アクリル粘着剤溶液を得た。
【0079】
得られたアクリル粘着剤溶液を、基材としての易接着剤層を有するポリエチレンテレフタレート(PET)フィルム(東洋紡社製,コスモシャインA4100,厚さ100μm)の易接着剤層に、硬化後の厚さが15μmとなるようにアプリケーターによって塗布し、90℃で1分間加熱し硬化させて、粘着剤層を形成した。その粘着剤層に、PETフィルムの片面がシリコーン剥離剤によって剥離処理された剥離フィルム(リンテック社製,SP-PET381031,厚さ38μm)の剥離処理面を貼合し、40℃にて7日間加熱促進することでアクリル粘着シート(剥離フィルム付き)を得た(アクリル粘着シート1)。
【0080】
〔比較例2〕
アクリル粘着ポリマー(綜研化学社製,SKダイン1491H)30質量部に、架橋剤としてのトリメチロールプロパンのトリレンジイソシアネート付加物(日本ポリウレタン工業社製,コロネートL)1.1質量部を配合し、トルエンにて固形分濃度約30質量%に希釈し、アクリル粘着剤溶液を得た。このアクリル粘着剤溶液を使用し、比較例1と同様にしてアクリル粘着シートを作製した(アクリル粘着シート2)。
【0081】
〔比較例3〕
PETフィルムの片面にシリコーン系剥離剤からなる剥離剤層(厚さ0.1μm)が形成された剥離フィルム(リンテック社製,SP−PET751031,厚さ75μm)を使用した。
【0082】
〔試験例1〕(剥離力測定)
実施例1〜14で作製したキャリアシート及び比較例1,2で作製したアクリル粘着シートから剥離フィルムを剥がし、密着層及び粘着剤層を露出させた。上記キャリアシートの密着層、上記アクリル粘着シートの粘着剤層及び比較例3で用意した剥離フィルムの剥離剤層に対し、アクリル粘着テープ(日東電工社製,31Bテープ)を2kgのハンドローラーによって貼り合せた。
【0083】
23℃、50%RHの条件下で24時間保管した後、長さ250mm、幅50mmに裁断し、引張試験機を用いて180°の剥離角度、300mm/分の剥離速度でアクリル粘着テープ側を剥離し、剥離するのに必要な力(剥離力;mN/50mm)を測定した。結果を表1に示す。
【0084】
〔試験例2〕(粘着力測定)
実施例1〜14で作製したキャリアシート及び比較例1,2で作製したアクリル粘着シートから剥離フィルムを剥がし、密着層及び粘着剤層を露出させた。上記キャリアシートの密着層、上記アクリル粘着シートの粘着剤層及び比較例3で用意した剥離フィルムの剥離剤層に対し、PETフィルム(東レ社製,PET25T−61M,厚さ25μm)を2kgのハンドローラーによって貼り合せた。
【0085】
23℃、50%RHの条件下で24時間保管した後、長さ250mm、幅50mmに裁断し、引張試験機を用いて180°の剥離角度、300mm/分の剥離速度でPETフィルム側を剥離し、剥離するのに必要な力(粘着力;mN/50mm)を測定した。なお、上記PETフィルムが貼り付かなかったものは0mN/50mmとした。結果を表1に示す。
【0086】
【表1】
【0087】
表1から分かるように、実施例で得られたキャリアシートは、粘着面及び非粘着面のいずれに対しても保持可能な粘着力を示し、粘着面及び非粘着面のいずれからも低い剥離力で剥離可能であった。これに対し、比較例1及び2のアクリル粘着シートは、粘着面に対する粘着力が強く、加工工程上、剥離不可能なものであった。また、比較例3の剥離フィルムは、非粘着面に貼付することができず、非粘着面を保持することができないものであった。
【符号の説明】
【0088】
1…キャリアシート
10…基材
11…密着層
2A,2B…被キャリア体
21A,21B…基材
23…非粘着性のシート
24…両面粘着シート
220,240…粘着面
210,230…非粘着面
3A,3B…積層体
図1
図2
図3