【文献】
清水 康夫,麦茶の香気成分に関する研究,京都大学博士論文要旨 論農博第283号,1970年,p.783−784
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【発明を実施するための形態】
【0012】
以下において本発明を詳細に説明する。
本発明の焙煎茶エキスの製造に用いる原料茶葉は、ツバキ目ツバキ科ツバキ属の常緑樹である「チャノキ」であるCamellia sinensisの中国種(var.sinensis)、アッサム種(var.assamica)やそれらの雑種から得られる生葉や生茎、あるいはこれらを一次原料として製造された茶葉を焙煎した焙煎茶葉である。
例えば、煎茶、玉露、覆茶、番茶、茎茶、釜炒緑茶などの不発酵茶を焙煎した焙じ茶の他、不発酵茶に花の香りを移したジャスミン茶や桂花茶などの花茶、白茶などの弱発酵茶、烏龍茶などの半発酵茶、紅茶などの発酵茶、プアール茶などの微生物発酵茶を焙煎したものを原料茶葉として使用しても良い。
【0013】
茶葉を焙煎する焙煎方式、焙煎温度、焙煎時間などに特に制限はないが、焙煎方式は直火式、熱風式、半熱風式、遠赤外線式などで回転ドラムを有している形式のものが好ましい。好ましい焙煎温度は100〜350℃であり、より好ましくは120〜250℃である。好ましい焙煎時間は1〜30分であり、より好ましくは3〜15分である。
【0014】
本発明の焙煎茶エキスの製造では焙煎茶葉の水蒸気蒸留を行う。水蒸気蒸留は原料中の香気成分を水蒸気によって気相に引き出し、冷却することで留出液として香気成分を回収する方法である。具体的には、気密性の高いタンクやカラムに原料を充填し、原料に水蒸気を通じる方法であり、常圧水蒸気蒸留、加圧水蒸気蒸留、減圧水蒸気蒸留などの方法を採用することができる。水蒸気は、飽和水蒸気または過熱水蒸気のいずれを用いても良い。水蒸気の温度、回収する留出液量などは原料茶葉の種類に応じて任意に設定することができる。水蒸気の温度は40〜120℃、留出液量は原料茶葉1重量部に対して0.2〜3重量部などが例示できるが、この範囲に限定されるものではない。
【0015】
原料茶葉の水蒸気蒸留で得られる留出液と、水蒸気蒸留後の原料茶葉残渣を抽出して得られる抽出液の一部または全量を混合した混合液が本発明の焙煎茶エキスとなる。水蒸気蒸留後の原料茶葉残渣の抽出方法としては、ドリップ式抽出法、バッチ式抽出法、カラム式抽出法などの公知の方法が挙げられる。抽出の条件は原料茶葉の種類、風味などにより適宜選択され、抽出には水性媒体を用いる。ここでいう水性媒体とは水を主成分とする液体からなる媒体であり、水性媒体中には後述する食品添加物などを含有しても良い。水性媒体の量としては、水蒸気蒸留前の原料茶葉1重量部に対して1〜50重量部の水性媒体(通常、水、温水、熱水)を用いれば良いが、水性媒体の量が多いと不快な焦げ臭が強くなることがあるため、1.5〜10重量部が好ましく、2〜5重量部がより好ましい。2〜30重量部が抽出効率、製造コストおよび品質などの点で好ましい。抽出温度は特に制限されないが、40〜100℃が好ましく、50〜90℃がより好ましい。抽出時間は水性媒体の量や抽出温度にも依存するが、30秒〜6時間、好ましくは3分〜3時間、さらに好ましくは4分〜1時間が良い。抽出工程においては、茶抽出液の酸化を抑制するために、抽出時および/または抽出後の茶抽出液に酸化防止剤を添加しても良い。酸化防止剤としては、食品添加物として認められているアスコルビン酸、エリソルビン酸またはそれらの金属塩などが挙げられる。
【0016】
抽出工程の後には、カートリッジフィルター、ろ布、ろ過板、ろ紙、ろ過助剤を併用したフィルタープレスなどのろ過や遠心分離などにより固液分離して抽出液を得るようにすれば良い。また、抽出液の濁りや沈殿を取り除くために、抽出中や抽出後の抽出液に対し酵素処理を行っても良い。酵素処理においてはタンナーゼ、セルラーゼ、プロテアーゼなどの各種酵素に応じた条件で処理することができる。
【0017】
本発明の焙煎茶エキスは成分(A)2−メチルピラジン、2,5−ジメチルピラジン、2,6−ジメチルピラジン、2−エチルピラジン、2,3−ジメチルピラジン、2,3,5−トリメチルピラジン、2−エチル−3,5−ジメチルピラジン、2−エチル−3,6−ジメチルピラジン、2,3,5,6−テトラメチルピラジン、2,3−ジエチル−5−メチルピラジンおよび2−アセチルピラジンから選択される少なくとも1種のピラジン類:合計5mg/L以上、成分(B)3−ピリジノール:0.5mg/L以上および(C)グアイアコールを含有し、成分(A)と成分(B)の含有重量比率[(A)/(B)]が10以下かつ成分(A)と成分(C)の含有重量比率[(A)/(C)]が60以上である。水蒸気蒸留により得られた留出液と水蒸気蒸留後の原料茶葉残渣を抽出して得られた抽出液の一部または全量を混合し、特定の成分組成となるように調整して本発明の焙煎茶エキスを得ることができる。
【0018】
トップノートの焙煎香を賦与するために成分(A)ピラジン類の合計含有量は5mg/L以上であり、6mg/L以上が好ましく、7mg/L以上がより好ましい。ラストノートの焙煎香を賦与するために成分(B)3−ピリジノールは0.5mg/L以上であり、1mg/L以上が好ましく、2mg/L以上がより好ましい。成分(A)は留出液に多く含まれ、成分(B)は抽出液に多く含まれるため、留出液と抽出液の混合比率を調整して成分(A)と成分(B)の含有重量比率[(A)/(B)]を調整することができる。トップノートからラストノートまで発現する自然な焙煎香を賦与するために[(A)/(B)]は10以下に制御する。[(A)/(B)]が10を超えるとラストノートの焙煎香が弱くなる。[(A)/(B)]は1.1〜8がより好ましく、1.3〜6に調整するのがさらに好ましい。
【0019】
本発明の焙煎茶エキスには焦げ臭を有する成分(C)グアイアコールが含まれる。不快な焦げ臭を抑えるために留出液と抽出液の混合比率を調整することで、成分(A)と成分(C)の含有重量比率[(A)/(C)]を60以上に制御する。[(A)/(C)]は70以上が好ましく、80以上がより好ましい。成分(C)は留出液と抽出液のいずれにも含まれるため、抽出液の混合比率が高く焙煎茶エキスのBrixが7%を超えると[(A)/(C)]が60未満となることがあり、[(A)/(C)]が60未満では焦げ臭が強く感じられる。また、焦げ臭を抑えるために成分(C)は0.3mg/L以下が好ましく、0.2mg/L以下がより好ましく、0.15mg/L以下がさらに好ましい。
【0020】
本発明の焙煎茶エキスには綿菓子のような甘い香りを有する成分(D)4−ヒドロキシ−2,5−ジメチル−3(2H)−フラノンが含まれる。成分(D)の含有量に特に制限は無いが、焙煎による生成する甘い香りを賦与するために含有量は1.5mg/L以上が好ましく、2.5mg/L以上がより好ましく、3.5mg/L以上がさらに好ましい。
【0021】
本発明の焙煎茶エキスのBrixは0.5〜7%となるように調整するのが好ましく、1〜4%がより好ましい。Brixが0.5未満であるとラストノートの焙煎香が弱くなることがある。Brixが7を超えると不快な焦げ臭が目立つことがある。
【0022】
本発明の焙煎茶エキスのタンニン含有量に特に制限は無いが、飲食品に添加する際に不快な苦渋味や雑味を増大させないためにタンニン含有量は9200mg/L以下が好ましく、6500mg/L以下がより好ましく、5000mg/L以下がさらに好ましい。
【0023】
本発明の焙煎茶エキスのpHは25℃換算で4〜7が好ましい。pH7を超えるような塩基性条件下では茶ポリフェノールの劣化が著しく、pH4未満では茶ポリフェノールの凝集による沈殿が発生し易くなるため好ましくない。pHの調整には食品添加物として認められている重曹(炭酸水素ナトリウム)、炭酸カリウム、水酸化ナトリウムなどのpH調整剤を使用する。pH調整剤の添加量はその種類に応じて所望のpHになるように決定すれば良い。
【0024】
本発明の焙煎茶エキスは必要に応じて加熱殺菌しても良い。殺菌する場合には、高温長時間の加熱では香味のバランスが崩れるため、高温短時間の加熱(80〜135℃で3秒〜30分程度)が適当である。さらに加熱後は冷蔵または冷凍保存することにより香味の劣化を防ぐことができる。
【0025】
本発明の焙煎茶エキスは不快な苦渋味、雑味、焦げ臭を増大させず、トップノートからラストノートまで発現できる自然な焙煎香を飲食品に賦与することができる。最終製品である飲食品に対して焙煎茶エキスが通常0.01〜5重量%、好ましくは0.05〜2重量%、より好ましくは0.1〜1重量%の範囲において含有されるときに自然な焙煎香が発現される。0.01重量%未満においては効果が十分でないことがあり、5重量%を超えるときは焙煎香が強くなりすぎる傾向がみられる。本発明の焙煎茶エキスを茶飲料に対して添加する際は、茶飲料に対して0.05〜1重量%添加するのが好ましく、0.1〜0.5重量%がより好ましい。
【0026】
なお、茶飲料とは、「チャノキ」(Camellia sinensis var.sinensisやCamellia sinensis var.assamica、またはこれらの雑種)の生葉や生茎、あるいはこれらを一次原料として製造された茶葉(例えば、煎茶、玉露、覆茶、番茶、釜炒り緑茶などの不発酵茶、不発酵茶に花の香りを移したジャスミン茶や桂花茶などの花茶、白茶などの弱発酵茶、烏龍茶などの半発酵茶、紅茶などの発酵茶、プアール茶などの微生物発酵茶)を原料またはその一部として、抽出・加工された飲料を意味する。茶飲料は原料となる茶葉の他に、玄米、大麦、小麦、ハト麦、とうもろこし、アマランサス、キヌア、ナンバンキビ、モズク、甘草、ハス、シソ、マツ、オオバコ、ローズマリー、桑、ケツメイシ、大豆、昆布、霊芝、熊笹、柿、ゴマ、紅花、アシタバ、陳皮、グァバ、アロエ、ギムネマ、杜仲、ドクダミ、チコリー、月見草、ビワなどの各種植物の葉、茎、根などを併用して得られるものであっても良い。
【0027】
本発明の焙煎茶エキスを添加してなる茶飲料は製造工程のいずれかの段階で殺菌を行い、金属缶、金属箔やプラスチックフィルムと複合された紙容器、ポリエチレンテレフタレートを主成分とする成形容器(いわゆるペットボトル)、瓶などの通常の状態で提供することができる。金属缶や瓶のように容器に充填後、加熱殺菌できる場合は、レトルト殺菌(110〜140℃、1〜数十分間)により製造されるが、ペットボトルや紙容器のようにレトルト殺菌できないものについては、あらかじめレトルト殺菌と同等の殺菌条件、例えばプレート式熱交換機などで高温短時間殺菌(UHT殺菌:110〜150℃、1〜数十秒間)し、一定の温度まで冷却後、容器に充填するなどの方法が選択できる。
【0028】
本発明の焙煎茶エキスを添加する対象としては茶飲料の他、スポーツ飲料、炭酸飲料、果汁飲料、乳飲料、酒類などの飲料類、アイスクリーム類、シャーベット類、アイスキャンディー類などの冷菓類、和・洋菓子類、チューインガム類、チョコレート類、パン類、各種のスナック類などが挙げられる。
【実施例】
【0029】
以下に実施例を挙げ、本発明をさらに詳しく説明する。ただし、本発明はこれに限定されるものではない。
【実施例1】
【0030】
<発明品1の製造>
煎茶(二番茶80%、秋冬番茶20%)を焙煎した焙じ茶A 2kgを減圧下95℃で水蒸気蒸留を行い、留出液2kgを得た。水蒸気蒸留後の茶葉残渣を70℃の水5.6kgで24分間ドリップ抽出後、珪藻土ろ過を行い、抽出液2.3kg(Brix4.44%)を得た。留出液2kg、抽出液2kgとアスコルビン酸ナトリウム6gを混合し、102℃で14秒加熱して発明品1となる焙煎茶エキスを得た。
【0031】
<比較品1の製造>
焙じ茶A 2kgを70℃の水5.6kgで24分間ドリップ抽出後、珪藻土ろ過を行い、抽出液2.3kg(Brix5.00%)を得た。水2kg、抽出液2kgとアスコルビン酸ナトリウム6gを混合し、102℃で14秒加熱して比較品1となる焙煎茶エキスを得た。
【0032】
<発明品2および比較品2の製造>
煎茶(二番茶30%、秋冬番茶70%)を焙煎した焙じ茶B 2kgを減圧下95℃で水蒸気蒸留を行い、留出液2kgを得た。水蒸気蒸留後の茶葉残渣を75℃の水5.1kgで26分間ドリップ抽出後、スミチームTAN(新日本化学工業(株)製)0.4gを加えて30分間反応させ、珪藻土ろ過を行い、抽出液2.4kg(Brix4.99%)を得た。留出液1.7kg、抽出液1.7kgとアスコルビン酸ナトリウム5.1gを混合し、重曹を加えてpH5.4に調整後、105℃で23秒加熱して発明品2となる焙煎茶エキスを得た。
留出液300gと水300gを混合し、105℃で23秒加熱して比較品2となる焙煎茶エキスを得た。
【0033】
<発明品3、比較品3および4の製造>
焙じ茶B 2kgに30℃の水0.67kgを均一に散布した後、30分間静置して湿潤させた。湿潤完了後、常圧下100℃で水蒸気蒸留を行い、留出液1kgを得た。水蒸気蒸留後の茶葉残渣を80℃の水8kgで10分間ドリップ抽出後、珪藻土ろ過を行い、抽出液6kg(Brix5.06%)を得た。留出液300g、抽出液300gとアスコルビン酸1.2gを混合し、80℃で30秒加熱して発明品3となる焙煎茶エキスを得た。
留出液300gを80℃で30秒加熱して比較品3となる焙煎茶エキスを得た。
抽出液5.5kgに活性炭(「太閤S」フタムラ化学(株)製)を0.14kg投入し、5℃で1時間撹拌処理を行った後、遠心分離と珪藻土ろ過により活性炭を分離・清澄化させ、ロータリーエバポレーターで濃縮を行い、濃縮液0.8kg(Brix25.37%)を得た。留出液300g、濃縮液240g、水60gとアスコルビン酸1.2gを混合し、134℃で30秒加熱して比較品4となる焙煎茶エキスを得た。
【0034】
<比較品5の製造>
焙じ茶B 2kgに30℃の水0.67kgを均一に散布した後、30分間静置して湿潤させた。湿潤完了後、常圧下100℃で水蒸気蒸留を行い、留出液1kgを得た。水蒸気蒸留後の茶葉残渣を80℃の水16kgで10分間ドリップ抽出後、珪藻土ろ過を行い、抽出液9.7kg(Brix2.82%)を得た。ロータリーエバポレーターで抽出液を濃縮し、濃縮液0.57kg(Brix47.54%)を得た。留出液0.5kg、濃縮液0.4kg、水0.1kgとアスコルビン酸1gを混合し、80℃で30秒加熱して比較品5となる焙煎茶エキスを得た。
【0035】
<発明品4〜8および比較品6の製造>
煎茶(二番茶70%、秋冬番茶30%)を焙煎した焙じ茶C 2kgを減圧下95℃で水蒸気蒸留を行い、留出液2kgを得た。水蒸気蒸留後の茶葉残渣を60℃の水5.1kgで26分間ドリップ抽出後、スミチームTAN(新日本化学工業(株)製)0.4gを加えて30分間反応させ、珪藻土ろ過を行い、抽出液を得た。抽出液をロータリーエバポレーターで濃縮し、濃縮液1kg(Bx10.9%)を得た。留出液300gと水300gを混合し、100℃で45秒間加熱して比較品6となる焙煎茶エキスを得た。
留出液300gと濃縮液55gとアスコルビン酸ナトリウム0.9gを混合し、水を加えて600gに調整した後、重曹を加えてpH5.4に調整し、100℃で45秒間加熱して発明品4となる焙煎茶エキスを得た。
発明品4の製造における濃縮液量55gを138g、193g、249g、276gに変更した以外は発明品4と同様に処理を行い、それぞれ発明品5、発明品6、発明品7、発明品8となる焙煎茶エキスを得た。
【0036】
得られた焙煎茶エキスの成分分析を行った。各種成分の測定方法を以下に記す。
【0037】
<Brixの測定方法>
BrixはRX−5000α((株)アタゴ製)にて20℃で測定した。
【0038】
<タンニンの測定方法>
タンニンの定量は「五訂 日本食品標準成分分析マニュアルの解説」(日本食品分析センター編、中央法規、2001年7月)の252〜254ページに記載の酒石酸鉄吸光光度法に従って行った。
【0039】
<カフェインの測定方法>
カフェインの定量はHPLC分析法により次の条件で行った。
装置:Alliance HPLCシステム(ウォーターズ社製)
カラム:Poroshell 120 EC−C18(4.6×100mm、粒子径2.7μm、アジレント社製)
カラム温度:40℃
移動相:A液0.05%リン酸水/アセトニトリル=1000/25(体積比),B液メタノール
グラジエントプログラム:0〜1分,B0%→1〜11分,B0〜33%→11〜11.25分B33〜95%→11.25〜13.25分,B95%→13.25〜13.5分,B95〜0%→13.5〜15.5分,B0%
流速:1.5mL/分
検出:UV275nm
【0040】
<成分(A)〜(D)の分析>
焙煎茶エキス25mLをポラパックQ(ウォーターズ社製)2.5gを充填したカラムに通液した。次に超純水25mLを通液後、ジエチルエーテル:イソペンタン=6:4の混合溶媒25mLで香気成分を溶出させて香気抽出物を得た。香気抽出物に内部標準物質としてシクロペンタノール4μgを添加した後、無水硫酸ナトリウムにより脱水、窒素ガス気流により濃縮することで香気濃縮物を得た。得られた香気濃縮物をGC−MS分析に供した。GC−MS条件は以下の通りである。
装置:TRACE GC−ULTRA(サーモフィッシャーサイエンティフィック社製),TSQ QUANTUM XLS(サーモフィッシャーサイエンティフィック社製)
カラム:DB−WAX(0.25mmI.D.×30m,膜厚0.25μm,アジレント社製)
キャリアーガス:ヘリウム,流速1mL/分
注入口温度:250℃
スプリット比:20:1
注入量:2μL
オーブンプログラム:40℃(2分保持)→4℃/分→240℃(8分保持)
【0041】
成分分析の結果を表1に示す。
【0042】
【表1】
【0043】
発明品1〜8の焙煎茶エキスは、成分(A)ピラジン類を5mg/L以上、(B)3−ピリジノールを0.5mg/L以上、(C)グアイアコールを含有し、成分(A)と成分(B)の含有重量比率[(A)/(B)]が10以下かつ成分(A)と成分(C)の含有重量比率[(A)/(C)]が60以上であることが示された。水蒸気蒸留を行わず抽出した比較品1は成分(A)が1.16mg/Lと低かった。抽出液を含まない比較品2、3、6は成分(B)が0.05以下と低いため(A)/(B)は120以上であった。特許文献3に記載の比較品4は成分(B)が0.09mg/Lと低いため(A)/(B)は102.3と高い値を示した。比較品4の成分(B)は抽出液の活性炭処理により除去されたと推測される。特許文献3に記載の比較品5は成分(A)と成分(C)の含有重量比率[(A)/(C)]が41.3と低かった。
【実施例2】
【0044】
<発明品および比較品の官能評価>
実施例1で得られた発明品と比較品をイオン交換水で20倍に希釈し、パネリスト5名により焙煎香、焦げ臭、甘さおよび苦渋味について官能評価を行った。
【0045】
(トップノートの焙煎香の評価基準)
飲用してすぐ感じる焙煎香をトップノートの焙煎香とした。
評価点:4(良い)、3(やや良い)、2(やや悪い)1(悪い)
評価:5人の平均評価点が、3.4以上を◎、2.7〜3.3を○、1.7〜2.6を△、1.6以下を×とした。
【0046】
(ラストノートの焙煎香の評価基準)
飲用後に残る焙煎香をラストノートの焙煎香とした。
評価点:4(良い)、3(やや良い)、2(やや悪い)1(悪い)
評価:5人の平均評価点が、3.4以上を◎、2.7〜3.3を○、1.7〜2.6を△、1.6以下を×とした。
【0047】
(焙煎香のナチュラル感の評価基準)
人工的な香りを感じない自然な焙煎香をナチュラル感とした。
評価点:4(良い)、3(やや良い)、2(やや悪い)1(悪い)
評価:5人の平均評価点が、3.4以上を◎、2.7〜3.3を○、1.7〜2.6を△、1.6以下を×とした。
【0048】
(焦げ臭の評価基準)
飲用時に感じる木を燃やしたような臭いを焦げ臭とした。
評価点:4(感じられない)、3(あまり感じられない)、2(感じられる)1(強く感じられる)
評価:5人の平均評価点が、3.4以上を◎、2.7〜3.3を○、1.7〜2.6を△、1.6以下を×とした。
【0049】
(甘さの評価基準)
飲用時に感じる甘い香りを甘さとした。
評価点:4(良い)、3(やや良い)、2(やや悪い)1(悪い)
評価:5人の平均評価点が、3.4以上を◎、2.7〜3.3を○、1.7〜2.6を△、1.6以下を×とした。
【0050】
(苦渋味の評価基準)
飲用時に感じる不快な苦味や渋味を苦渋味とした。
評価点:4(感じられない)、3(あまり感じられない)、2(感じられる)、1(強く感じられる)
評価:5人の平均評価点が、3.4以上を◎、2.7〜3.3を○、1.7〜2.6を△、1.6以下を×とした。
【0051】
(総合評価)
焙煎香、焦げ臭、甘さ、苦渋味の評価で×が少なくとも一つある場合は×、×がなく△が少なくとも一つある場合は△、×および△がなく○が3つ以上ある場合は○、×および△がなく◎が4つ以上の場合は◎とした。
【0052】
評価結果を表2に示す。
【0053】
【表2】
【0054】
発明品1〜8では焦げ臭を感じず、トップノートからラストノートまでの自然な焙煎香が感じられ、苦渋味は無かった。比較品1ではトップノートとラストノートの焙煎香が不十分であり、比較品2〜4、6ではラストノートの焙煎香が十分に感じられなかった。比較品5は焦げ臭、苦渋味が強く感じられた。
【実施例3】
【0055】
<発明品または比較品を添加した煎茶飲料の製造と評価>
煎茶100gを60℃の水3000gに投入した。10分間の撹拌抽出後、生産用ろ紙(No.28,アドバンテック(株)製)でろ過を行い、抽出液を2380g得た。抽出液に所定量のアスコルビン酸を添加した後、タンニン濃度が600mg/L、アスコルビン酸濃度が300mg/Lとなるように抽出液を水で希釈した。この希釈した抽出液に対して0.2重量%となるように焙煎茶エキス(発明品1〜8、比較品1〜6)を加え、pH6.5となるように重曹を加えて調合液を調製した。調合液をレトルト殺菌(121℃、10分間)して煎茶飲料1〜14を得た。また、上記焙煎茶エキスを粉砕した焙じ茶Aに変更した以外は上記と同様に処理を行って煎茶飲料15を得た。上記焙煎茶エキスを2,3−ジエチル−5−メチルピラジンを2μg/Lとなるように添加に変更した以外は上記と同様に処理を行った飲料16を得た。
パネリスト5名により煎茶飲料の焙煎香、焦げ臭、甘さと苦渋味について実施例2の方法で官能評価を行った。
【0056】
評価結果を表3に示す。
【0057】
【表3】
【0058】
煎茶飲料1〜8では焦げ臭を感じず、トップノートからラストノートまで自然な焙煎香が感じられ、苦渋味は感じられなかった。煎茶飲料9では焙煎香が十分に感じられず、煎茶飲料10〜12、14の場合はラストノートの焙煎香が不十分であった。煎茶飲料13は焦げ臭と苦い渋味が強く感じられ、煎茶飲料15では苦渋味が感じられた。煎茶飲料16では人工的な焙煎香が感じられた。
【実施例4】
【0059】
<発明品または比較品を添加した玉露飲料の製造と評価>
玉露50gを55℃の水1500gに投入した。10分間の撹拌抽出後、生産用ろ紙(No.28,アドバンテック(株)製)でろ過を行い、抽出液を1202g得た。抽出液に所定量のアスコルビン酸を添加した後、タンニン濃度が700mg/L、アスコルビン酸濃度が300mg/Lとなるように抽出液を水で希釈した。この希釈した抽出液に対して0.3重量%となるように焙煎茶エキス(発明品1〜3、比較品1〜5)を加え、pH6.8となるように重曹を加えて調合液を調製した。調合液をレトルト殺菌(121℃、10分間)して玉露飲料1〜8を得た。
パネリスト5名により玉露飲料の焙煎香、焦げ臭、甘さと苦渋味について実施例2の方法で官能評価を行った。
【0060】
評価結果を表4に示す。
【0061】
【表4】
【0062】
玉露飲料1〜3は焦げ臭を感じず、トップノートからラストノートまで自然な焙煎香が感じられ、苦渋味は感じられなかった。玉露飲料4は焙煎香が不十分であった。玉露飲料5〜7はラストノートの焙煎香が不十分であった。玉露飲料8は焦げ臭と苦渋味が強かった。
【実施例5】
【0063】
<発明品または比較品を添加した烏龍茶飲料の製造と評価>
烏龍茶(水仙)50gを80℃の水1500gに投入した。10分間の撹拌抽出後、生産用ろ紙(No.28,アドバンテック(株)製)でろ過を行い、抽出液を1054g得た。抽出液に所定量のアスコルビン酸を添加した後、タンニン濃度が450mg/L、アスコルビン酸濃度が300mg/Lとなるように抽出液を水で希釈した。この希釈した抽出液に対して0.1%となるように焙煎茶エキス(発明品4〜8、比較品6)を加え、pH6.4となるように重曹を加えて調合液を調製した。調合液をレトルト殺菌(121℃、10分間)して烏龍茶飲料1〜6を得た。
パネリスト5名により烏龍茶飲料の焙煎香、焦げ臭、甘さと苦渋味について実施例2の方法で官能評価を行った。
【0064】
評価結果を表5に示す。
【0065】
【表5】
【0066】
烏龍茶飲料1〜5は焦げ臭を感じず、トップノートからラストノートまで自然な焙煎香が感じられ、苦渋味は感じられなかった。烏龍茶飲料6はラストノートの焙煎香が不十分であった。