(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、前記従来のすべり支承では、想定外に大きな地震が発生し、下部構造と上部構造との水平方向の相対変位量が許容の範囲を超える可能性がある。なおこの場合であって、上部構造が、凹状に形成された免震ピット内に配置されているときには、上部構造と免震ピットとが衝突して干渉し合い、例えば上部構造に損傷などが生じうる。
このような問題を解決するための一手段として、大型のすべり支承を採用することが考えられる。しかしながらこの場合、例えば、すべり支承のコストが増加し易い。またこの場合であって、上部構造が前記免震ピット内に配置されているときには、免震ピットも大型化する必要があり、コストがさらに増加し易くなる。
【0005】
本発明はこのような事情を考慮してなされたものであり、大型化を抑制して構造の簡素化を図りつつ、想定外の大きな震動が生じたときにも対応することができるすべり支承を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
前記課題を解決するために、本発明は以下の手段を提案している。
本発明に係るすべり支承は、下部構造に固定される下沓と、上部構造に固定され、前記下沓に対して水平方向に相対変位可能に配置される上沓と、前記下沓と前記上沓との間に位置し、前記下沓および前記上沓のうちの少なくとも一方に設けられたすべり面に、水平方向に滑動可能に配置されたスライダと、を備え、前記スライダは、前記下沓と前記上沓との水平方向への相対変位に伴って、前記すべり面上を水平方向に滑動するすべり支承であって、前記下沓および前記上沓のうちのいずれか一方には、これらの下沓および上沓が水平方向に相対変位したときに、いずれか他方に水平方向の外側から当接することで、前記下沓と前記上沓との更なる相対変位を規制するストッパが連結され
、前記下沓および前記上沓のうちのいずれか一方の前記スライダに対する水平方向への相対変位が規制され、いずれか他方に、前記すべり面と、前記スライダに水平方向の外側から当接可能な補助ストッパと、が設けられ、前記下沓と前記上沓との相対変位を規制した前記ストッパが、前記下沓または前記上沓により水平方向に塑性変形させられたときに、前記補助ストッパが前記スライダに当接することで、前記スライダの前記すべり面上での更なる滑動が規制され、前記ストッパおよび前記補助ストッパはいずれも、前記下沓または前記上沓に共通して設けられていることを特徴とする。
【0007】
この場合、想定内の振動が生じ、下沓と上沓とが水平方向に相対変位したときには、スライダがすべり面上を滑動し、免震性能が発揮される。
一方、想定外に大きな振動が生じたときには、スライダがすべり面上を滑動しつつ、下沓と上沓とが水平方向に大きく相対変位し、下沓または上沓にストッパが水平方向の外側から当接する。これにより、下沓と上沓との更なる相対変位が規制される。
【0009】
想定外に大きな振動が生じたときには、ストッパが下沓と上沓との水平方向の相対変位を規制した状態であっても、下沓と上沓とが水平方向に強制的に相対変位させられる可能性がある。この場合、下沓または上沓がストッパを水平方向に塑性変形させながら、スライダがすべり面上を更に滑動する。するとこのとき、補助ストッパがスライダに、水平方向の外側から当接し、スライダのすべり面上での更なる滑動が規制される。これにより、補助ストッパが、下沓と上沓との強制的な水平方向への相対変位を、スライダを介して規制する。
【0011】
この場合、ストッパおよび補助ストッパがいずれも、下沓または上沓に共通して設けられているので、下沓および上沓のうちのいずれか一方に、ストッパおよび補助ストッパを集約させ、下沓および上沓のうちのいずれか他方の構造を簡素化することができる。
【0012】
本発明に係るすべり支承は、下部構造に固定される下沓と、上部構造に固定され、前記下沓に対して水平方向に相対変位可能に配置される上沓と、前記下沓と前記上沓との間に位置し、前記下沓および前記上沓のうちの少なくとも一方に設けられたすべり面に、水平方向に滑動可能に配置されたスライダと、を備え、前記スライダは、前記下沓と前記上沓との水平方向への相対変位に伴って、前記すべり面上を水平方向に滑動するすべり支承であって、前記下沓および前記上沓のうちのいずれか一方には、これらの下沓および上沓が水平方向に相対変位したときに、いずれか他方に水平方向の外側から当接することで、前記下沓と前記上沓との更なる相対変位を規制するストッパが連結され、前記ストッパは、前記下沓と前記上沓とが水平方向に相対変位したときに前記ストッパに当接する前記下沓または前記上沓を、水平方向の外側から全周にわたって囲繞するリング材を備え
、前記リング材は、前記ストッパが連結される前記下沓または前記上沓に接続部を介して接続され、前記接続部は、前記リング材の周方向に間隔をあけて配置された複数のリブ材を備えていることを特徴とする。
【0013】
この場合、ストッパが、前記リング材を備えているので、下沓と上沓とが水平方向に沿って相対変位する向きによらず、リング材により、下沓と上沓との相対変位を規制することができる。
【0015】
この場合、接続部が、リング材の周方向に間隔をあけて配置された複数のリブ材を備えているので、例えば、接続部がリング材の周方向の全周にわたって連続して延びている場合などに比べて、接続部の軽量化を図ることができる。
【0016】
本発明に係るすべり支承は、下部構造に固定される下沓と、上部構造に固定され、前記下沓に対して水平方向に相対変位可能に配置される上沓と、前記下沓と前記上沓との間に位置し、前記下沓および前記上沓のうちの少なくとも一方に設けられたすべり面に、水平方向に滑動可能に配置されたスライダと、を備え、前記スライダは、前記下沓と前記上沓との水平方向への相対変位に伴って、前記すべり面上を水平方向に滑動するすべり支承であって、前記下沓および前記上沓のうちのいずれか一方には、これらの下沓および上沓が水平方向に相対変位したときに、いずれか他方に水平方向の外側から当接することで、前記下沓と前記上沓との更なる相対変位を規制するストッパが連結され、前記ストッパは、前記ストッパが連結される前記下沓または前記上沓に、着脱可能に連結されてい
ることを特徴とする。
【0017】
この場合、ストッパが、下沓または上沓に着脱可能に連結されているので、例えば、想定外に大きな振動が生じ、ストッパが下沓または上沓により塑性変形させられたとき等、ストッパに損傷が生じたときに、このストッパを、損傷がない新たなストッパに交換することができる。
【0018】
本発明に係る免震構造物は、上部構造および下部構造と、前記上部構造と前記下部構造との間に配置された前記すべり支承と、を備えていることを特徴とする。
【0019】
本発明
の参考例に係るすべり支承用のストッパは、下部構造に固定される下沓と、上部構造に固定され、前記下沓に対して水平方向に相対変位可能に配置される上沓と、前記下沓と前記上沓との間に位置し、前記下沓および前記上沓のうちの少なくとも一方に設けられたすべり面に、水平方向に滑動可能に配置されたスライダと、を備え、前記スライダは、前記下沓と前記上沓との水平方向への相対変位に伴って、前記すべり面上を水平方向に滑動するすべり支承に取り付けられるすべり支承用のストッパであって、前記下沓および前記上沓のうちのいずれか一方に連結され、これらの下沓および上沓が水平方向に相対変位したときに、いずれか他方に水平方向の外側から当接することで、前記下沓と前記上沓との更なる相対変位を規制することを特徴とする。
【0020】
この場合、想定内の振動が生じ、下沓と上沓とが水平方向に相対変位したときには、スライダがすべり面上を滑動し、免震性能が発揮される。
一方、想定外に大きな振動が生じたときには、スライダがすべり面上を滑動しつつ、下沓と上沓とが水平方向に大きく相対変位し、下沓または上沓にストッパが水平方向の外側から当接する。これにより、下沓と上沓との更なる相対変位が規制される。
【発明の効果】
【0021】
請求項1に係る発明によれば、想定外に大きな振動が生じたときに、下沓と上沓との水平方向の相対変位量を、ストッパにより一定に規制することができる。したがって、すべり支承にフェールセーフ機能を付加することが可能になり、下部構造と上部構造との水平方向に沿った過度な相対変位を規制しつつ、すべり支承の大型化を抑制して構造の簡素化を図ることができる。
またストッパが、下沓と上沓との水平方向に沿った相対変位を規制するときに、ストッパが下沓または上沓に、水平方向の外側から当接する。したがって、ストッパにより直接、下沓または上沓の水平方向への変位を規制することが可能になり、下沓と上沓との相対変位を効果的に規制することができる。
【0022】
請求項2に係る発明によれば、補助ストッパが、下沓と上沓との強制的な水平方向への相対変位を規制することができる。したがって、下部構造と上部構造との水平方向に沿った過度な相対変位を確実に規制することができる。
【0023】
請求項3に係る発明によれば、下沓および上沓のうちのいずれか一方に、ストッパおよび補助ストッパを集約させ、下沓および上沓のうちのいずれか他方の構造を簡素化することができる。したがって、すべり支承全体の構造を簡素化し易くすることができる。
【0024】
請求項4に係る発明によれば、下沓と上沓とが水平方向に沿って相対変位する向きによらず、リング材により、下沓と上沓との相対変位を規制することができる。したがって、すべり支承を多岐にわたって適用させ易くすることができる。
【0025】
請求項5に係る発明によれば、接続部の軽量化を図ることができるので、例えば、接続部を形成する材料の使用量を抑え、すべり支承の低コスト化を確実に図ること等ができる。
【0026】
請求項6に係る発明によれば、ストッパに損傷が生じたときに、このストッパを、損傷がない新たなストッパに交換することができる。したがって、すべり支承のメンテナンス性を向上させることができる。
【0027】
請求項7に係る発明によれば、上部構造と下部構造との間に前記すべり支承が配置されている。したがって、下部構造と上部構造との水平方向に沿った過度な相対変位を規制しつつ、免震構造物全体の大型化を抑制して構造の簡素化を図ることができる。
【0028】
請求項8に係る発明によれば、想定外に大きな振動が生じたときに、下沓と上沓との水平方向の相対変位量を、ストッパにより一定に規制することができる。したがって、すべり支承にフェールセーフ機能を付加することが可能になり、下部構造と上部構造との水平方向に沿った過度な相対変位を規制しつつ、すべり支承の大型化を抑制して構造の簡素化を図ることができる。
またストッパが、下沓と上沓との水平方向に沿った相対変位を規制するときに、ストッパが下沓または上沓に、水平方向の外側から当接する。したがって、例えば、下沓と上沓との水平方向の相対変位を、スライダが下沓と上沓とに水平方向の内側から各別に係合することで規制する場合などに比べて、下沓と上沓との相対変位を効果的に規制することができる。
またストッパを、既設のすべり支承に取り付けることで、施工済の免震構造物においても前述の作用効果を奏功させることができる。
【発明を実施するための形態】
【0030】
以下、図面を参照し、本発明の一実施形態に係る橋梁(免震構造物)10を説明する。
図1に示すように、橋梁10は、下部構造11と、上部構造12と、すべり支承20と、を備えている。図示の例では、橋梁10は、いわゆる鈑桁橋である。
【0031】
下部構造11は、水平方向のうち、この橋梁10が連続する方向(以下、「連続方向」という)に沿って間隔を隔てて設置された複数本の橋脚13を備えている。橋脚13は、例えば鉄筋コンクリート造、鉄骨鉄筋コンクリート造等であり、地盤中に構築された基礎上に立設されている。
【0032】
上部構造12は、いわゆる橋桁であり、複数本の橋脚13上に架け渡されている。上部構造12は、主桁14と、床版15と、を備えている。主桁14は、前記連続方向に延び、橋脚13上に架設されている。主桁14は、水平方向のうち、前記連続方向に直交する方向(以下、「直交方向」という)に間隔をあけて一対配置されている。主桁14は、例えば鉄骨造、鉄筋コンクリート造、鉄骨鉄筋コンクリート造等である。床版15は、この橋梁10の路面を形成している。床版15は、前記連続方向に延び、主桁14に支持されている。
【0033】
すべり支承20は、下部構造11と上部構造12との間に配置されている。すべり支承20は、複数の橋脚13上に各別に配置されている。すべり支承20は、前記直交方向に間隔をあけて2つ配置され、橋脚13と主桁14との間に配置されている。
【0034】
図2から
図5に示すように、すべり支承20は、下沓21と、上沓22と、スライダ23と、を備えている。下沓21は、下部構造11に固定されている。上沓22は、上部構造12に固定され、下沓21に対して水平方向に相対変位可能に配置されている。下沓21および上沓22は、いずれも円盤状に形成され、互いに同軸に配置されている。
【0035】
以下では、下沓21および上沓22の各中心軸線が通る共通軸を、すべり支承20の軸線Oという。軸線Oは、上下方向に延びている。このすべり支承20を上側から見た上面視において、軸線Oに直交する方向を径方向(リング材の径方向)といい、軸線O回りに周回する方向を周方向(リング材の周方向)という。
なお下沓21および上沓22は、例えば鋳鋼品や鋳鉄品、鍛造品などにより形成されていてもよく、SM材やSN材を切削したものにより形成してもよい。
【0036】
図5に示すように、すべり支承20は、いわゆるシングルペンデュラム構造であり、上沓22(下沓および上沓のうちのいずれか一方)のスライダ23に対する水平方向への相対変位が規制されている。下沓21(下沓および上沓のうちのいずれか他方)には、スライダ23が水平方向に滑動可能なすべり面24が設けられている。本実施形態では、下沓21には更に、補助ストッパ25と、フランジ部26と、が設けられている。
【0037】
補助ストッパ25は、下沓21から上側に向けて突出している。補助ストッパ25は、軸線Oと同軸に配置された筒状に形成されている。補助ストッパ25は、下沓21と同一材料で一体に形成されている。補助ストッパ25は、下沓21の外周縁部に配置されている。補助ストッパ25と上沓22との間には、上下方向の隙間があいている。
すべり面24は、下沓21において補助ストッパ25の内側に位置する部分の全域にわたって形成されている。すべり面24は、下側に向けて凹となる凹球面状に形成されている。すべり面24は、軸線Oと同軸に配置されている。
【0038】
図4に示すように、フランジ部26は、下沓21から径方向の外側に向けて突出している。フランジ部26は、周方向に間隔をあけて複数配置されている。複数のフランジ部26は、互いに同等の大きさでかつ同等の形状に形成されている。各フランジ部26は、前記上面視において径方向の外側に向けて凸となる三角形状に形成されている。フランジ部26は、周方向に偶数個、図示の例では6個、同等の間隔をあけて設けられている。
各フランジ部26は、図示しない下ボルトにより下部構造11に固定されている。前記下ボルトは、フランジ部26に上側から差し込まれる。下沓21は、フランジ部26を介して下部構造11に固定されている。
【0039】
図5に示すように、上沓22には、スライダ23を保持するハウジング28が設けられている。ハウジング28は、上沓22から下側に向けて延びている。ハウジング28は、軸線Oと同軸に配置された柱状に形成されている。ハウジング28の下端には、スライダ23が嵌合される凹部29が設けられている。凹部29の内面は、上側に向けて凹となる凹球面状に形成されている。凹部29は、軸線Oと同軸に配置されている。凹部29の内面の曲率は、すべり面24の曲率よりも大きくなっている。
上沓22は、図示しない上ボルトにより上部構造12に固定されている。前記上ボルトは、上沓22に下側から差し込まれる。前記上ボルトは、ハウジング28を径方向の外側から囲うように、周方向に間隔をあけて複数配置される。
【0040】
スライダ23は、すべり面24と凹部29の内面との間に挟み込まれている。スライダ23は、上側に向けて凸となる半球状に形成されている。スライダ23において上側を向く表面は、上側に向けて凸となる凸球面状に形成されている。スライダ23の表面の曲率は、凹部29の内面の曲率と同等となっている。スライダ23は、軸線Oと同軸に配置され、ハウジング28の凹部29内に嵌合されている。スライダ23が凹部29内に嵌合されることで、スライダ23の上沓22に対する水平方向の移動が規制されている。
【0041】
スライダ23は、凹部29内から下側に向けて突出している。スライダ23において下側を向く端面は、すべり面24に、水平方向に滑動可能に当接している。
スライダ23は、補助ストッパ25に、水平方向の内側から当接可能とされている。本実施形態では、スライダ23のうち、凹部29から下側に突出する部分(以下、「突出部分」という)が、補助ストッパ25に径方向の内側から当接可能となっている。補助ストッパ25は、スライダ23の前記突出部分を、水平方向の外側から全周にわたって囲繞している。
【0042】
そして本実施形態では、すべり支承20には、ストッパ31(すべり支承用のストッパ)が設けられている。ストッパ31は、補助ストッパ25と共通して下沓21に設けられている。
ストッパ31は、下沓21に着脱可能に連結されている。ストッパ31は、リング材32と、接続部33と、を備えている。これらのリング材32と接続部33とは、例えば、同一材料で一体に形成することができる。
【0043】
リング材32は、上沓22(下沓と上沓とが水平方向に相対変位したときにストッパに当接する下沓または上沓)を、水平方向の外側から全周にわたって囲繞する。
図4に示すように、リング材32は、円環状に形成され軸線Oと同軸に配置されている。リング材32は、上沓22よりも大径に形成されている。
【0044】
接続部33は、リング材32と下沓21とを接続する。接続部33は、周方向に間隔をあけて配置された複数のリブ材34を備えている。複数のリブ材34は、前記上面視において、軸線Oを中心とする放射状に配置されている。リブ材34は、周方向に偶数個、図示の例では6個設けられている。複数のリブ材34は、周方向に同等の間隔をあけて配置されている。各リブ材34は、下沓21のフランジ部26に対して周方向にずらされていて、リブ材34とフランジ部26とは上下方向に非重複となっている。
【0045】
複数のリブ材34は、互いに同等の形状で同等の大きさに形成されている。リブ材34は、径方向に直線状に延びている。リブ材34は、表裏面が上下方向を向く板状に形成されている。リブ材34の周方向の大きさは、このリブ材34の径方向の両側の端部で最も大きくなっていて、このリブ材34における径方向の中間部に向かうに従い徐々に小さくなっている。リブ材34は、前記上面視において、周方向の両側から、周方向の内側に向けて窪んでいる。
【0046】
リブ材34において径方向の外側に位置する外端部は、リング材32に、例えば溶接などにより固定されている。リブ材34において径方向の内側に位置する内端部は、下沓21に固定されている。
図5に示すように、この内端部は、固定板35を介して下沓21に固定されている。固定板35は、リブ材34の前記内端部から下沓21の外周面に沿って突出している。固定板35は、第1ボルト36により下沓21に離脱可能に固定されている。第1ボルト36は、固定板35に径方向の外側から差し込まれている。
【0047】
図2に示すように、リング材32は、周方向に複数に分割されている。リング材32を分割する分割面37は、リング材32のうち、リブ材34と連結される部分に対して周方向にずらされて配置されている。分割面37は、周方向に間隔をあけて2つ配置されていて、リング材32は、周方向に2つのリング分割体38に分割されている。2つのリング分割体38の周方向の端部同士は、第2ボルト39により分解可能に固定されている。リング分割体38の前記端部同士は、径方向に重ね合わされていて、第2ボルト39は、これらの端部同士に径方向の外側から差し込まれている。
なおリング材32およびリブ材34は、例えばSM材やSN材、LYP材などにより形成されている。リング材32は、例えばSM材やSN材、LYP材を曲げ加工して形成することができる。
【0048】
次に、橋梁10およびすべり支承20の作用について説明する。
【0049】
図6に示すように、地震が発生して橋梁10に振動が加えられると、下部構造11と上部構造12とが、例えば前記直交方向などの水平方向に振動する。すると
図7に示すように、スライダ23が、下沓21と上沓22との水平方向への相対変位に伴って、すべり面24上を水平方向に滑動する。なおこのとき、スライダ23は、すべり面24上を水平方向に滑動しながら、すべり面24の曲率中心回りに揺動する。またこのとき、スライダ23の表面が、凹部29の内面上を、スライダ23の表面の曲率中心回りに滑動する。
【0050】
ここで想定内の振動が生じ、下沓21と上沓22とが水平方向に相対変位したときには、スライダ23が前述のようにすべり面24上を滑動することで、免震性能が発揮される。つまり、スライダ23がすべり面24上を滑動するときに生じる摩擦により、振動エネルギーが吸収され、振動が減衰される。このときすべり支承20は、いわゆる球面摩擦振り子型の免震支承として機能する。
【0051】
一方、想定外に大きな振動が生じたときには、
図7に示すように、スライダ23がすべり面24上を滑動しつつ、下沓21と上沓22とが水平方向に大きく相対変位し、上沓22にストッパ31が水平方向の外側から当接する。これにより、下沓21と上沓22との更なる相対変位が規制される。
ところで、このように想定外に大きな振動が生じたときには、ストッパ31が下沓21と上沓22との水平方向の相対変位を規制した状態であっても、下沓21と上沓22とが水平方向に強制的に相対変位させられる可能性がある。この場合、上沓22がストッパ31を水平方向に塑性変形させながら、スライダ23がすべり面24上を更に滑動する。
【0052】
するとこのとき
図8に示すように、補助ストッパ25がスライダ23に、水平方向の外側から当接し、スライダ23のすべり面24上での更なる滑動が規制される。これにより、補助ストッパ25が、下沓21と上沓22との強制的な水平方向への相対変位を、スライダ23およびハウジング28を介して規制する。
なお前述のように、ストッパ31や補助ストッパ25が、下沓21と上沓22との水平方向の相対変位を規制することによっても、振動エネルギーが吸収される。したがって、前記すべり支承20では、3段階での振動エネルギーの吸収をすることができる。この3段階とは、スライダ23のすべり面24上での滑動と、下沓21と上沓22との相対変位のストッパ31による規制と、下沓21と上沓22との相対変位の補助ストッパ25による規制と、の3段階である。
【0053】
ここで前記すべり支承20について、
図9および
図10に示すようにシミュレーション解析を行った。
図9に示す荷重変位履歴ループは、下沓21と上沓22との水平方向の相対変位がストッパ31により十分に規制された場合であり、スライダ23と補助ストッパ25とが当接しない場合のものである。
図10に示す荷重変位履歴ループは、下沓21と上沓22との水平方向の相対変位がストッパ31では十分に規制されなかった場合であり、ストッパ31および補助ストッパ25の両方が、下沓21と上沓22との水平方向の相対変位を規制した場合のものである。
【0054】
図9に示すように、下沓21と上沓22との水平方向の相対変位量である水平変位の絶対値が小さいうちは、この水平変位が大きくなるに従い、下沓21と上沓22とを変位させるための荷重である水平反力が大きくなっている。このことから、スライダ23による振動減衰効果が発揮されていることが分かる(
図9中、一点鎖線Aの範囲)。
また、水平変位の絶対値が大きくなると、水平変位量の増大が規制され、水平反力が急激に大きくなっている。このことから、下沓21と上沓22との水平方向の相対変位がストッパ31により規制され、さらに、ストッパ31の塑性変形によって振動減衰効果が発揮されていることが分かる(
図9中、一点鎖線Bの範囲)。
そして
図10に示すように、水平変位の絶対値がさらに大きくなると、水平変位量の増大が一層規制され、水平反力がより急激に大きくなっている。このことから、下沓21と上沓22との水平方向の相対変位が補助ストッパ25により規制され、さらに、補助ストッパ25の塑性変形によって振動減衰効果が発揮されていることが分かる(
図10中、一点鎖線Cの範囲)。
【0055】
以上説明したように、本実施形態に係る橋梁10、すべり支承20およびストッパ31によれば、想定外に大きな振動が生じたときに、下沓21と上沓22との水平方向の相対変位量を、ストッパ31により一定に規制することができる。したがって、すべり支承20にフェールセーフ機能を付加することが可能になり、下部構造11と上部構造12との水平方向に沿った過度な相対変位を規制しつつ、すべり支承20の大型化を抑制して構造の簡素化を図ることができる。
【0056】
またストッパ31が、下沓21と上沓22との水平方向に沿った相対変位を規制するときに、ストッパ31が上沓22に、水平方向の外側から当接する。したがって、ストッパ31により直接、上沓22の水平方向への変位を規制することが可能になり、下沓21と上沓22との相対変位を効果的に規制することができる。
またストッパ31を、既設のすべり支承20に取り付けることで、施工済の免震構造物においても前述の作用効果を奏功させることができる。
【0057】
また補助ストッパ25が、下沓21と上沓22との強制的な水平方向への相対変位を規制することができる。したがって、下部構造11と上部構造12との水平方向に沿った過度な相対変位を確実に規制することができる。
【0058】
また、ストッパ31および補助ストッパ25がいずれも、下沓21に共通して設けられているので、下沓21に、ストッパ31および補助ストッパ25を集約させ、上沓22の構造を簡素化することができる。したがって、すべり支承20全体の構造を簡素化し易くすることができる。
【0059】
またストッパ31が、前記リング材32を備えているので、下沓21と上沓22とが水平方向に沿って相対変位する向きによらず、リング材32により、下沓21と上沓22との相対変位を規制することができる。したがって、すべり支承20を多岐にわたって適用させ易くすることができる。
【0060】
また接続部33が、リング材32の周方向に間隔をあけて配置された複数のリブ材34を備えているので、例えば、接続部33がリング材32の周方向の全周にわたって連続して延びている場合などに比べて、接続部33の軽量化を図ることができる。したがって、例えば、接続部33を形成する材料の使用量を抑え、すべり支承20の低コスト化を確実に図ること等ができる。
【0061】
またストッパ31が、下沓21に着脱可能に連結されているので、例えば、想定外に大きな振動が生じ、ストッパ31が上沓22により塑性変形させられたとき等、ストッパ31に損傷が生じたときに、このストッパ31を、損傷がない新たなストッパ31に交換することができる。したがって、すべり支承20のメンテナンス性を向上させることができる。
【0062】
なお、本発明の技術的範囲は前記実施形態に限定されるものではなく、本発明の趣旨を逸脱しない範囲において種々の変更を加えることが可能である。
【0063】
前記実施形態では、リング材32が、周方向に複数に分割されているが、本発明はこれに限られない。例えば、リング材32が、周方向の全周にわたって一体に形成されていてもよい。
前記実施形態では、接続部33が、複数のリブ材34を備えているが、本発明はこれに限られない。例えば、接続部33が、周方向の全周にわたって延びる環状に形成されていてもよい。
【0064】
前記実施形態では、ストッパ31が、リング材32および接続部33を備えているが、本発明では、ストッパ31を、下沓21に着脱可能に連結させた他の構成に適宜変更することが可能である。例えば、ストッパ31がリング材32のみを備える構成を採用してもよい。この場合、例えば、接続部33を下沓21に一体に形成し、リング材32を接続部33に着脱可能に連結させる構成を採用することができる。
【0065】
前記実施形態では、ストッパ31が、下沓21に着脱可能に連結されているが、ストッパ31が、下沓21に着脱不能に設けられていてもよい。下沓21とストッパ31とが溶接されていたり、下沓21とストッパ31とが一体成型されていたりしていてもよい。溶接の場合、例えばストッパ31をSM材やSN材の切断溶接により形成することができる。この場合における溶接部は、完全溶け込み溶接としてもよい。また下沓21およびストッパ31を、鍛造品や鋳造品により一体成型することも可能である。鍛造品の場合、下沓21およびストッパ31を、例えばS35CN材などにより形成することができる。鋳造品の場合、下沓21およびストッパ31を、例えばSCW480材などにより形成することができる。
【0066】
前記実施形態では、ストッパ31がリング材32を備えているが、本発明はこれに限られない。例えば、下沓21と上沓22とが、水平方向のうち、特定の一方向に限定して相対変位を許容されているすべり支承20において、前記一方向への相対変位を規制するような非リング状の構成を採用することができる。
【0067】
前記実施形態では、ストッパ31が、下沓21に設けられているが、本発明はこれに限られない。例えば、ストッパ31が上沓22に設けられ、下沓21および上沓22が水平方向に相対変位したときに、ストッパ31が下沓21に当接することで、下沓21および上沓22の更なる相対変位を規制してもよい。本発明は、下沓21および上沓22のうちのいずれか一方に、下沓21および上沓22が水平方向に相対変位したときに、いずれか他方に水平方向の外側から当接することで、下沓21と上沓22との更なる相対変位を規制するストッパ31が連結された他の構成に適宜変更することができる。
【0068】
前記実施形態では、上沓22のスライダ23に対する水平方向への相対変位が規制され、下沓21に、すべり面24が設けられているが、本発明はこれに限られない。例えば、上沓22にすべり面24を設け、下沓21のスライダ23に対する水平方向への相対変位が規制されていてもよい。本発明は、下沓21および上沓22のうちのいずれか一方のスライダ23に対する水平方向への相対変位が規制され、いずれか他方に、すべり面24が設けられた他の構成に適宜変更することができる。
【0069】
前記実施形態では、ストッパ31および補助ストッパ25がいずれも、下沓21に共通して設けられているが、本発明はこれに限られない。例えば、ストッパ31および補助ストッパ25がいずれも、上沓22に共通して設けられていてもよい。また、ストッパ31が上沓22に設けられ、補助ストッパ25が下沓21に設けられていてもよい。ストッパ31が上沓22に設けられている構成では、ストッパ31が下沓21に当接することで、下沓21と上沓22との水平方向の相対変位を規制することができる。
本発明では、補助ストッパ25がなくてもよい。
【0070】
前記実施形態では、下沓21および上沓22のうちのいずれか一方のスライダ23に対する水平方向への相対変位が規制され、いずれか他方に、すべり面24が設けられているが、本発明はこれに限られない。例えば、下沓21および上沓22の両方にすべり面24が設けられたいわゆるダブルペンデュラム構造であってもよい。
【0071】
前記実施形態では、すべり支承20として、球面摩擦振り子型の免震支承を示したが、本発明は他のすべり支承20に適用することができる。
【0072】
前記実施形態では、下部構造11や上部構造12の構造や形状、材質等については、何ら限定されるものではない。例えば、橋梁10として、橋脚13に鋼管を採用した構成などにも本発明を適用することが可能である。
【0073】
前記実施形態では、本発明を橋梁10に適用する例を示したが、橋梁10に限らず、高速道路、ビルディング等の各種土木構造物、建築構造物、プラント設備などに本発明のすべり支承20を適用することも可能である。
【0074】
その他、本発明の趣旨に逸脱しない範囲で、前記実施形態における構成要素を周知の構成要素に置き換えることは適宜可能であり、また、前記した変形例を適宜組み合わせてもよい。