(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
前記制御部は、前記出口の温度上昇値に比例して、前記ミスト噴射部が前記乾燥装置の内部に噴射する前記ミストの量を増大するように、前記ミスト噴射部を制御する、請求項1〜4何れか1項に記載の汚泥乾燥装置。
前記制御ステップにおいて、前記制御部は、前記ミキサーへ前記乾燥汚泥および前記脱水汚泥の投入が中止されてから所定時間経過後に、前記第2制御から第3制御に制御を切り替え、
前記第3制御において、前記制御部は、
前記出口の温度が前記第1目標温度以上になった場合に、前記ミスト噴射部が前記乾燥装置の内部に前記ミストを噴射し、前記出口の温度が前記第1目標温度となるように、前記ミスト噴射部を制御する、請求項8に記載の汚泥乾燥方法。
前記制御ステップにおいて、前記制御部は、前記出口の温度上昇値に比例して、前記ミスト噴射部が前記乾燥装置の内部に噴射する前記ミストの量を増大するように、前記ミスト噴射部を制御する、請求項6〜9何れか1項に記載の汚泥乾燥方法。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ところで、ドラム型乾燥装置を用いた汚泥乾燥装置においては、例えば、汚泥の供給量が所定量を下回った場合や、汚泥の含水率が所定値より小さかった場合、これは、設備へ、特にドラム型乾燥装置へ熱量が過剰に供給される状態を引き起こす。これにより、被乾燥物が過乾燥される可能性がある他、設備が異常高温状態になる可能性がある。これに対する対策として、燃焼炉を制御することによりドラム型乾燥装置に温度制御を施すことが考えられるが、この方法による制御は一般に応答が遅いため、より適切な対策に対するニーズがある。
【0005】
そこで、本発明は上記に鑑みてなされたもので、乾燥装置の温度を適切に制御することが可能な汚泥乾燥装置および汚泥乾燥方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記課題を解決するために、本発明の汚泥乾燥装置は、乾燥汚泥および脱水汚泥を元に形成された造粒汚泥を、乾燥ガスを用いて乾燥することにより、固形燃料を製成する乾燥装置と、前記乾燥ガスを加熱し、当該加熱後の乾燥ガスを前記乾燥装置に供給する熱交換器と、前記熱交換器が前記乾燥ガスを加熱するための熱源を供給する燃焼炉と、前記乾燥装置の出口の温度を検出する乾燥装置出口温度検出部と、前記乾燥装置の内部にミストを噴射するミスト噴射部と、前記出口の温度に基づき、前記ミスト噴射部が前記乾燥装置の内部に前記ミストを噴射するように、前記ミスト噴射部を制御する制御部と、を備える。
【0007】
また、本発明の汚泥乾燥方法は、乾燥汚泥および脱水汚泥を元に形成された造粒汚泥を、乾燥ガスを用いて乾燥することにより、固形燃料を製成する乾燥装置と、前記乾燥ガスを加熱し、当該加熱後の乾燥ガスを前記乾燥装置に供給する熱交換器と、前記熱交換器が前記乾燥ガスを加熱するための熱源を供給する燃焼炉と、を備える汚泥乾燥装置において、乾燥装置出口温度検出部が、前記乾燥装置の出口の温度を検出する乾燥装置出口温度検出ステップと、ミスト噴射部が、前記乾燥装置の内部にミストを噴射するミスト噴射ステップと、制御部が、前記出口の温度に基づき、前記ミスト噴射部が前記乾燥装置の内部に前記ミストを噴射するように、前記ミスト噴射部を制御する制御ステップと、を備える。
【0008】
このような本発明の汚泥乾燥装置および汚泥乾燥方法によれば、乾燥装置の出口の温度に基づき、ミスト噴射部が乾燥装置の内部にミストを噴射するように制御される。例えば、汚泥の供給量が所定量を下回った場合や、汚泥の含水率が所定値より小さかった場合に、乾燥装置の出口の温度が上昇したことが検出されると、ミスト噴射部が乾燥装置の内部にミストを直接噴射するように制御される。乾燥装置の内部にミストを直接噴射することにより、乾燥装置の乾燥能力を低減でき、例えば燃焼炉を制御して乾燥装置の温度を制御する場合と比べて、応答性良く、乾燥装置の温度を制御することができる。このため、汚泥の供給量や含水率が急激に変化した場合でも短時間で適切な対応が可能となる。更に、ミストは乾燥装置内部で蒸発しやすいことから、例えば乾燥装置に水を供給する場合と比べて、バランスの良い制御が可能であり、応答も速く、更に蒸発しないで乾燥装置内部で溜まった水による不具合も防止できる。
【0009】
また、本発明の汚泥乾燥装置は、前記乾燥装置の前記出口側に配置されたバグフィルタを更に備え、前記制御部は、前記出口の温度が予め設定された第1目標温度以上になった場合に、前記ミスト噴射部が前記乾燥装置の内部に前記ミストを噴射し、前記出口の温度が前記第1目標温度となるように、前記ミスト噴射部を制御し、且つ、前記出口の温度が予め設定された第2目標温度となるように、前記燃焼炉を昇温する、第1制御を行い、前記第1目標温度および前記第2目標温度は、前記乾燥装置におけるバグフィルタ結露回避温度以上、且つ前記バグフィルタの耐熱温度以下の範囲で設定され、前記第2目標温度は、前記第1目標温度より高い温度であっても良い。
【0010】
また、本発明の汚泥乾燥方法においては、前記汚泥乾燥装置が、前記乾燥装置の前記出口側に配置されたバグフィルタを更に備え、前記制御ステップにおいて、前記制御部は、前記出口の温度が予め設定された第1目標温度以上になった場合に、前記ミスト噴射部が前記乾燥装置の内部に前記ミストを噴射し、前記出口の温度が前記第1目標温度となるように、前記ミスト噴射部を制御し、且つ、前記出口の温度が予め設定された第2目標温度となるように、前記燃焼炉を昇温する、第1制御を行い、前記第1目標温度および前記第2目標温度は、前記乾燥装置におけるバグフィルタ結露回避温度以上、且つ前記バグフィルタの耐熱温度以下の範囲で設定され、前記第2目標温度は、前記第1目標温度より高い温度であっても良い。
【0011】
これらの発明によれば、制御部による制御の具体的手法が提供される。すなわち、制御部は、第1目標温度を基準にミスト噴射部を制御し、且つ第2目標温度を基準に燃焼炉を制御するという第1制御を行う。第1制御において、第1目標温度および第2目標温度は、乾燥装置におけるバグフィルタ結露回避温度以上、且つバグフィルタの耐熱温度以下の範囲で設定される。このため、乾燥装置の出口の温度が第1目標温度および第2目標温度を保つように制御されれば、汚泥乾燥を開始するための準備または開始が可能であり、かつ、バグフィルタの破損を防止することができる。
【0012】
また、第1制御において、第2目標温度は第1目標温度より高い温度に設定されている。これにより、第2目標温度による制御が始まる前に、第1目標温度による制御が始まるため、実際には、第1目標温度に基づくミスト噴射部による制御がメインに行われ、その間に、燃焼炉が、乾燥装置の出口の温度が第2目標温度にならない範囲で、昇温される。燃焼炉が昇温しても、乾燥装置は第1目標温度で制御されるため、燃焼炉の昇温にかかわらず、バグフィルタの破損を防止することができる。言い換えれば、第2目標温度が第1目標温度より高いことから、第1制御においてミスト噴射部により噴射されるミストは汚泥に代わる熱負荷として機能することとなる。これにより、燃焼炉を昇温する間に、バグフィルタを損傷させることなく、乾燥装置の温度制御を安全に行うことができる。一方、ミストの代わりに例えば水を供給した場合には、供給された水が熱負荷として適切に機能できず、乾燥装置の温度上昇により、バグフィルタを損傷させてしまう可能性がある。これは特に、水の供給タイミングが熟練した作業者等により適切に選ばれなかった場合に起きる可能性がある。このように、水を供給する場合は、作業者の技量への依存度が高いが、本発明によると、作業者の技量に依存することなく、乾燥装置の温度制御を安全に行うことができる。
【0013】
また、本発明の汚泥乾燥装置は、前記燃焼炉の炉内温度を検出する燃焼炉内温度検出部を更に備え、前記制御部は、前記燃焼炉の昇温が開始され、前記炉内温度が前記燃焼炉における脱臭開始可能温度に至るまでに、前記第1制御を行っても良い。
【0014】
また、本発明の汚泥乾燥方法においては、前記汚泥乾燥装置が、前記燃焼炉の炉内温度を検出する燃焼炉内温度検出部を更に備え、前記制御ステップにおいて、前記制御部は、前記燃焼炉の昇温が開始され、前記炉内温度が前記燃焼炉における脱臭開始可能温度に至るまで、前記第1制御を行っても良い。
【0015】
本発明における第1制御は、本発明の汚泥乾燥装置が稼動を始め、燃焼炉の炉内温度が脱臭開始可能温度に至るまでに行われても良い。この場合には、本発明により、汚泥乾燥装置の稼動開始から、燃焼炉の炉内温度が脱臭開始可能温度に至るまでにおける制御の具体的手法が提供される。言い換えれば、これらの発明によれば、脱臭開始可能温度に至るまで燃焼炉の温度上昇を待っている間に、ミスト噴射部が乾燥装置の内部にミストの噴射を開始する。これにより、ミスト噴射部により噴射されるミストが汚泥に代わる熱負荷として機能され、燃焼炉を昇温する間に、バグフィルタを損傷させることなく、乾燥装置の温度制御を安全に行うことができる。なお、燃焼炉の炉内温度が脱臭開始可能温度に至ったことを条件に汚泥を投入する場合には、これらの発明により、汚泥乾燥装置の稼動開始から汚泥投入までにおける制御の具体的手法が提供される。
【0016】
また、本発明の汚泥乾燥装置は、前記乾燥汚泥および前記脱水汚泥を元に前記造粒汚泥を形成するミキサーを更に備え、前記制御部は、前記乾燥汚泥および前記脱水汚泥が前記ミキサーに投入されてから所定時間経過後に、前記第1制御から第2制御に制御を切り替え、前記第2制御において、前記制御部は、前記燃焼炉が前記熱源を供給する際に、前記出口の温度が前記第2目標温度となるように、前記燃焼炉を制御し、且つ前記出口の温度が予め設定された第3目標温度以上になった場合に、前記ミスト噴射部が前記乾燥装置の内部に前記ミストを噴射し、前記出口の温度が前記第3目標温度となるように、前記ミスト噴射部を制御し、前記第3目標温度は、前記第1目標温度および前記第2目標温度より高い温度であるとともに、前記乾燥装置におけるバグフィルタ結露回避温度以上、且つ前記バグフィルタの耐熱温度以下の範囲で設定されても良い。
【0017】
また、本発明の汚泥乾燥方法においては、前記汚泥乾燥装置が、前記乾燥汚泥および前記脱水汚泥を元に前記造粒汚泥を形成するミキサーを更に備え、前記制御ステップにおいて、前記制御部は、前記乾燥汚泥および前記脱水汚泥が前記ミキサーに投入されてから所定時間経過後に、前記第1制御から第2制御に制御を切り替え、前記第2制御において、前記制御部は、前記燃焼炉が前記熱源を供給する際に、前記出口の温度が前記第2目標温度となるように、前記燃焼炉を制御し、且つ前記出口の温度が予め設定された第3目標温度以上になった場合に、前記ミスト噴射部が前記乾燥装置の内部に前記ミストを噴射し、前記出口の温度が前記第3目標温度となるように、前記ミスト噴射部を制御し、前記第3目標温度は、前記第1目標温度および前記第2目標温度より高い温度であるとともに、前記乾燥装置におけるバグフィルタ結露回避温度以上、且つ前記バグフィルタの耐熱温度以下の範囲で設定されても良い。
【0018】
これらの発明によれば、乾燥汚泥および脱水汚泥がミキサーに投入されてから所定時間経過後における、制御部による制御の具体的手法が提供される。すなわち、制御部は、汚泥がミキサーに投入されてから所定時間経過後に、制御の仕方を切り替え、第2目標温度を基準に燃焼炉を制御し、且つ第3目標温度を基準にミスト噴射部を制御するという第2制御を行う。第2制御において、第3目標温度は、乾燥装置におけるバグフィルタ結露回避温度以上、且つバグフィルタの耐熱温度以下の範囲で設定される。このため、乾燥装置の出口の温度が第2目標温度および第3目標温度を保つように制御されれば、汚泥乾燥を開始または進行中でありながらも、バグフィルタの破損を防止することができる。
【0019】
また、第2制御において、第3目標温度は第2目標温度より高い温度に設定されている。これにより、第3目標温度による制御が始まる前に、第2目標温度による制御が始まるため、実際には、第2目標温度に基づく燃焼炉による制御がメインに行われることとなる。しかし、第2目標温度による制御がうまくいかず、乾燥装置の出口の温度が第3目標温度以上となったような緊急且つ異常の場合には、ミスト噴射部による制御が始まり、乾燥装置の出口の温度が適切な温度に保たれ、バグフィルタの破損を防止することができる。言い換えれば、第3目標温度が第2目標温度より高いことから、第2制御においては基本的には汚泥が熱負荷として機能するが、例えば汚泥の量が少ない、あるいは、含水率が低く、乾燥装置の出口の温度が第3目標温度以上となったような緊急且つ異常の場合には、ミスト噴射部により噴射されるミストが熱負荷として更に機能することとなる。これにより、乾燥装置による乾燥処理中に、バグフィルタを損傷させることなく、乾燥装置の温度制御を安全に行うことができる。一方、ミストの代わりに例えば水を供給した場合には、供給された水が熱負荷として適切に機能できず、乾燥装置の温度上昇により、バグフィルタを損傷させてしまう可能性がある。これは特に、水の供給タイミングが熟練した作業者等により適切に選ばれなかった場合に起きる可能性がある。このように、水を供給する場合は、作業者の技量への依存度が高くなるが、本発明によると、作業者の技量に依存することなく、乾燥装置の温度制御を安全に行うことができる。
【0020】
また、本発明の汚泥乾燥装置において、前記制御部は、前記ミキサーへ前記乾燥汚泥および前記脱水汚泥の投入が中止されてから所定時間経過後に、前記第2制御から第3制御に制御を切り替え、前記第3制御において、前記制御部は、炉温を緩やかに降温しつつ、前記出口の温度が前記第1目標温度以上になった場合に、前記ミスト噴射部が前記乾燥装置の内部に前記ミストを噴射し、前記出口の温度が前記第1目標温度となるように、前記ミスト噴射部を制御しても良い。
【0021】
また、本発明の汚泥乾燥方法においては、前記制御ステップにおいて、前記制御部は、前記ミキサーへ前記乾燥汚泥および前記脱水汚泥の投入が中止されてから所定時間経過後に、前記第2制御から第3制御に制御を切り替え、前記第3制御において、前記制御部は、前記出口の温度が前記第1目標温度以上になった場合に、前記ミスト噴射部が前記乾燥装置の内部に前記ミストを噴射し、前記出口の温度が前記第1目標温度となるように、前記ミスト噴射部を制御しても良い。
【0022】
これらの発明によれば、ミキサーへ乾燥汚泥および脱水汚泥の投入が中止されてから所定時間経過後における、制御部による制御の具体的手法が提供される。すなわち、制御部は、汚泥のミキサーへの投入が中止されてから所定時間経過後に、第2制御から第3制御に制御の仕方を切り替える。第1制御と第3制御において、実質的に行われる制御は、ミスト噴射部を用いて乾燥装置の出口の温度が第1目標温度となるように制御することで同等である。したがって、汚泥投入中止後の制御と、汚泥投入開始前の制御が同等になり、汚泥投入を一旦中止してから再開するような場合に、制御を別途切り替えることなく、円滑に対応することができる。また、操業を中止する場合は、その後、燃焼炉を降温する。
【0023】
また、本発明の汚泥乾燥装置において、前記制御部は、前記出口の温度上昇値に比例して、前記ミスト噴射部が前記乾燥装置の内部に噴射する前記ミストの量を増大するように、前記ミスト噴射部を制御しても良い。
【0024】
また、本発明の汚泥乾燥方法においては、前記制御ステップにおいて、前記制御部は、前記出口の温度上昇値に比例して、前記ミスト噴射部が前記乾燥装置の内部に噴射する前記ミストの量を増大するように、前記ミスト噴射部を制御しても良い。
【0025】
これらの発明によれば、乾燥装置の出口の温度が上昇すればするほど、大量のミストが噴射される。これにより、温度上昇値に比例した減温制御が可能となり、更に、例えば乾燥装置の異常高温時に、ミスト噴射量を大量に増やすことにより、緊急減温制御を行うことができる。
【発明の効果】
【0026】
本発明によれば、乾燥装置の温度を適切に制御することが可能な汚泥乾燥装置および汚泥乾燥方法を提供することができる。
【発明を実施するための形態】
【0028】
以下、添付図面を参照して本発明にかかる汚泥乾燥装置および汚泥乾燥方法の好適な実施形態を詳細に説明する。なお、図面の説明において同一の要素には同一の符号を付し、重複する説明を省略する。また、以下に説明する図面は本発明の汚泥乾燥装置および汚泥乾燥方法を説明するための例示的なものに過ぎず、図示される各部の寸法等は、実際の汚泥乾燥装置および汚泥乾燥方法における寸法等と異なる場合がある。
【0029】
(汚泥乾燥造粒システム100の全体構成および乾燥造粒の基本原理)
まず、本発明の実施形態に係る汚泥乾燥造粒システム100(汚泥乾燥装置)の全体構成について、
図1を参照しながら説明する。
図1は、汚泥乾燥造粒システム100の構成概要図である。
図1に示すように、汚泥乾燥造粒システム100の全体構成は、乾燥ドラム10(乾燥装置)とバグフィルタ20を主軸に、リサイクルサイロ31、二軸ミキサー32、振動篩33、粉砕器34等により構成される汚泥系30と、熱交換器41、燃焼炉42、排気筒43、コンデンサ44等により構成され、閉回路循環方式となっている乾燥ガス系40と、出口温度検出部51(乾燥装置出口温度検出部)、炉内温度検出部52(燃焼炉内温度検出部)、2流体ノズル53(ミスト噴射部)、および制御部54(制御部)により構成される制御系50との3系統に大別される。
【0030】
図1に示したような構成を有する汚泥乾燥造粒システム100では、汚泥を次の基本原理で乾燥造粒する。
(1)二軸ミキサー32に投入されたリサイクルペレット(乾燥汚泥)および脱水汚泥に対し、混合処理、混練処理、切り崩し処理等が行われ、造粒汚泥が形成される。
(2)形成された造粒汚泥は、続く乾燥ドラム10にて並流する乾燥ガスと直接接触されることにより乾燥され、乾燥ペレット(固形燃料)となる。
(3)乾燥ペレットと蒸気を含んだ混合ガスとは、続くバグフィルタ20でそれぞれ分離される。
(4)バグフィルタ20からの乾燥ペレットの一部は二軸ミキサー32へ循環される一方で、他は製品として排出される。
(5)一方、バグフィルタ20からの混合ガスは、熱交換器41で加熱され、再び乾燥ガスとして乾燥ドラム10へ循環される。また、混合ガスの一部については、コンデンサ44で水分が分離された後、燃焼炉42で焼却される。
【0031】
(乾燥ドラム10、バグフィルタ20および汚泥系30の詳細)
以下、汚泥乾燥造粒システム100の各構成要素について詳細に説明する。最初に、乾燥ドラム10、バグフィルタ20および汚泥系30について、詳細に説明する。
【0032】
リサイクルサイロ31は、振動篩33からのリサイクルペレットを一時貯留し、それを二軸ミキサー32に供給するものである。
【0033】
二軸ミキサー32は、リサイクルペレット(乾燥汚泥)および脱水汚泥を元に、造粒汚泥を形成するものである。脱水設備(図示せず)から供給され、含水率が例えば65〜85%程度の脱水汚泥は、二軸ミキサー32で、リサイクルペレットと混合、混練、および切り崩しの処理をされ、造粒汚泥が形成される。二軸ミキサー32で形成される造粒汚泥の含水率は、例えば25〜35%の範囲に調整されても良い。造粒汚泥の含水率が例えば25〜35%の場合には、振動篩33で分級され、製品サイロ60とリサイクルサイロ31へ送られる乾燥ペレット量のバランスが安定する。
【0034】
乾燥ドラム10は、ドラム型の乾燥装置であって、乾燥ガスを用いて造粒汚泥を乾燥することにより、固形燃料(乾燥ペレット)を製成するものである。乾燥ドラム10は、含水率が例えば8%程度の乾燥ペレットを製成しても良い。乾燥ドラム10では、二軸ミキサー32から送られた造粒汚泥に対して、二種類のかき上げ板によるかき上げおよび落下が繰り返されるとともに、並流する乾燥ガスにより造粒汚泥が迅速に乾燥されながら、造粒汚泥が乾燥ドラム10の出口11に向かって移送される。乾燥ドラム10から出た乾燥ペレットおよび混合ガスはバグフィルタ20に入る。
【0035】
バグフィルタ20は、乾燥ドラム10の出口11側に配置され、乾燥ドラム10から入った乾燥ペレットおよび混合ガスをそれぞれ別々に分離するものである。この分離処理は、例えばバグフィルタ20が備えるろ布により行われても良い。バグフィルタ20にて分離された乾燥ペレットは振動篩33に送られる一方、当該分離された混合ガスは熱交換器41またはコンデンサ44に送られる。
【0036】
振動篩33は、バグフィルタ20にて分離された乾燥ペレットを例えば2枚のスクリーンを用いて3種類に分級するものである。3種類とは、例えば、製品として適切な中間サイズの粒、粗粒、および細粒である。中間サイズのペレットは製品として製品サイロ60へ送られる一方で、細粒は直接リサイクルサイロ31へ送られ、粗粒は粉砕器34にて粉砕されてからリサイクルサイロ31へ送られる。粉砕器34は、振動篩33で粗粒として分級された乾燥ペレットを粉砕するものである。
【0037】
(乾燥ガス系40の詳細)
乾燥ガス系40は、熱交換器41、燃焼炉42、排気筒43、コンデンサ44等により構成され、乾燥ガス等を閉回路内で循環させる構成となっている。なお、当該閉回路には、乾燥ドラム10、バグフィルタ20、汚泥系30、および乾燥ガス系40が含まれる。
【0038】
熱交換器41は、乾燥ガスを加熱し、当該加熱後の乾燥ガスを乾燥ドラム10に供給するものである。乾燥ドラム10内で汚泥中に含まれる水分が蒸発し、蒸気を吸収した混合ガスが熱交換器41に戻り、熱交換器41で加熱され、再び乾燥ドラム10に供給される。熱交換器41は例えばプレート式で、乾燥ガスを例えば120℃から450℃に燃焼ガスにより間接加熱するようなものでも良い。燃焼炉42は、熱交換器41が乾燥ガスを加熱するための熱源を供給するためのものであり、都市ガス、LPG、消化ガス、重油等を燃料とするものであっても良い。燃焼に必要な空気は、バグフィルタ20でろ過された空気が用いられても良い。なお、燃焼炉42では、コンデンサ44で除湿されたガスも燃焼脱臭される。汚泥乾燥造粒システム100では、乾燥ガスが閉鎖系で循環されることから、汚泥の乾燥時に発生する臭気成分を含むガスが汚泥乾燥造粒システム100の外部へ漏洩することがなく、燃焼によって最終的に分解処理(燃焼脱臭)された後に、排気筒43を通じて外部に排出される。
【0039】
コンデンサ44は、バグフィルタ20にて分離された混合ガス中の水分を冷却水により凝縮させるものである。汚泥乾燥造粒システム100内で循環する混合ガス中の蒸気量が一定に維持されるように、常に混合ガスの一部がコンデンサ44に引き抜かれる。コンデンサ44にて混合ガス中の水分が凝縮されることにより、混合ガス中には常に一定量の蒸気が含まれることとなる。また、酸素濃度を例えば8%以下に維持させることにより、乾燥ドラム10内で汚泥が燃焼してしまうことを防止でき、更に粉塵爆発等に対する安全性を保つことができる。
【0040】
なお、汚泥乾燥造粒システム100にて発生する粉塵は、負圧にしたバグフィルタ20内の集塵回路で集められる。また、バグフィルタ20で集められた粉塵は、二軸ミキサー32に循環投入される。これにより、粉塵が汚泥乾燥造粒システム100の外部へ飛散してしまうことを防止できる。
【0041】
以上で説明した汚泥乾燥造粒システム100の構成により、バグフィルタ20による粉塵除去、汚泥乾燥で発生する蒸気を用いた酸素濃度制御、臭気成分の燃焼脱臭の機能がシステム化され、装置の安全性と無公害化を図ることができる。
【0042】
また、以上で説明した汚泥乾燥造粒システム100により生成された乾燥ペレットは、含水率が例えば6〜10%で、吸湿しても形状が変わりにくい。このため、二軸ミキサー32で脱水汚泥と混合、混練等しても、乾燥ペレットは混合汚泥の核となり得る。従って、二軸ミキサー32での造粒が達成できる。なお、リサイクルペレットに対する脱水汚泥の混合割合は、固形分重量にして例えば10〜30%程度であっても良い。
【0043】
(制御系50の詳細)
制御系50は、出口温度検出部51、炉内温度検出部52、2流体ノズル53、および制御部54等により構成され、乾燥ドラム10の温度を適切に制御するためのものである。 出口温度検出部51は、乾燥ドラム10の出口11側に設置され、温度を検出できるものであれば、様々なものを使用することができる。炉内温度検出部52は、燃焼炉42の内部または近傍に設置され、温度を検出できるものであれば、様々なものを使用することができる。
【0044】
2流体ノズル53は、例えば乾燥ドラム10の乾燥ガスダクト内に配置され、乾燥ドラム10の内部にミストを噴射するためのものであり、ミストを噴射できるものであれば、様々なものを使用することができる。
図2は、2流体ノズル53の模式図である。
図2に示されるように、2流体ノズル53は、二つの空気の入り口531A,531B、二つの液体の入り口532A,532B、二つのノズル本体部533A,533B、二つのミストの出口534A,534Bを含んで構成される。空気の入り口531Aおよび液体の入り口532Aから導入された空気および液体がノズル本体部533Aを通過しながらミストになり、ミストの出口534Aから放出される。同様に、空気の入り口531Bおよび液体の入り口532Bから導入された空気および液体がノズル本体部533Bを通過しながらミストになり、ミストの出口534Bから放出される。なお、ミストとは、空気と液体が混ざってなるものを言い、液体が水である場合の水滴の粒子径は例えば0.1mm以下のものであっても良い。
【0045】
図1に示す制御部54は、熱交換器41、燃焼炉42、出口温度検出部51、炉内温度検出部52、および2流体ノズル53とデータ通信可能に構成され、例えば通常のコンピュータシステムとして構成することができる。
図3は制御部54のハードウェア構成図の一例である。
図3に示すように、制御部54は、物理的には、例えば、CPU541、ROM542及びRAM543等の主記憶装置、キーボード及びマウス等の入力デバイス544、ディスプレイ等の出力デバイス545、熱交換器41、燃焼炉42、出口温度検出部51、炉内温度検出部52、および2流体ノズル53との間でデータの送受信を行うためのネットワークカード等の通信モジュール546、ハードディスク等の補助記憶装置547などを含む通常のコンピュータシステムとして構成される。後述する制御部54の各機能は、CPU541、ROM542、RAM543等のハードウェア上に所定のコンピュータソフトウェアを読み込ませることにより、CPU541の制御の元で入力デバイス544、出力デバイス545、通信モジュール546を動作させると共に、主記憶装置542,543や補助記憶装置547におけるデータの読み出し及び書き込みを行うことで実現される。
【0046】
図1に戻り、乾燥ドラム10の出口11側に設置される出口温度検出部51は、乾燥ドラム10の出口11の温度を検出し、当該温度検出値を制御部54に出力する(乾燥装置出口温度検出ステップ)。燃焼炉42の内部または近傍に設置される炉内温度検出部52は、燃焼炉42の炉内温度を検出し、当該温度検出値を制御部54に出力する。2流体ノズル53は、制御部54の制御に基づき、乾燥ドラム10の内部にミストを噴射する(ミスト噴射ステップ)。制御部54は、出口温度検出部51が検出した乾燥ドラム10の出口11の温度に基づき、2流体ノズル53が乾燥ドラム10の内部にミストを噴射するように、2流体ノズル53を制御する(制御ステップ)。制御部54は、乾燥ドラム10の出口11の温度上昇値に比例して、2流体ノズル53が乾燥ドラム10の内部に噴射するミストの量を増大するように、2流体ノズル53を制御しても良い。
【0047】
制御部54は、第1制御を行う。第1制御において、制御部54は、乾燥ドラム10の出口11の温度が予め設定された第1目標温度以上になった場合に、2流体ノズル53が乾燥ドラム10の内部にミストを噴射し、乾燥ドラム10の出口11の温度が第1目標温度となるように、2流体ノズル53を制御する。また、制御部54は、、乾燥ドラム10の出口11の温度が予め設定された第2目標温度となるように、燃焼炉42を昇温する。この第1制御は、燃焼炉42の昇温が開始され、炉内温度が燃焼炉42における脱臭開始可能温度に至るまで、制御部54により行われる。ここで、第1目標温度および第2目標温度は、乾燥ドラム10におけるバグフィルタ結露回避温度以上、且つバグフィルタ20の耐熱温度以下の範囲で設定される。また、第2目標温度は、第1目標温度より高い温度である。
【0048】
制御部54は、乾燥汚泥および脱水汚泥が二軸ミキサー32に投入されてから所定時間経過後に、第1制御から第2制御に制御の仕方を切り替る。第2制御において、制御部54は、燃焼炉42が熱源を供給する際に、乾燥ドラム10の出口11の温度が第2目標温度となるように、燃焼炉42を制御する。また、制御部54は、乾燥ドラム10の出口11の温度が予め設定された第3目標温度以上になった場合に、2流体ノズル53が乾燥ドラム10の内部にミストを噴射し、乾燥ドラム10の出口11の温度が第3目標温度となるように、2流体ノズル53を制御する。ここで、第3目標温度は、第1目標温度および第2目標温度より高い温度であるとともに、乾燥ドラム10におけるバグフィルタ結露回避温度以上、且つバグフィルタ20の耐熱温度以下の範囲で設定される。
【0049】
制御部54は、二軸ミキサー32へ乾燥汚泥および脱水汚泥の投入が中止されてから所定時間経過後に、第2制御から第3制御に制御の仕方を切り替える。第3制御において、制御部54は、乾燥ドラム10の出口11の温度が第1目標温度以上になった場合に、2流体ノズル53が乾燥ドラム10の内部にミストを噴射し、乾燥ドラム10の出口11の温度が第1目標温度となるように、2流体ノズル53を制御する。
【0050】
(制御部54による制御の詳細)
以下、制御部54の制御動作について、図面を参照しながらより具体的に説明する。
図4および
図5は、制御部54の制御動作を説明するための図である。
図4は、汚泥乾燥造粒システム100の稼動開始から汚泥乾燥処理進行中の状態を示す。
図5は、汚泥乾燥処理進行中の状態から汚泥乾燥造粒システム100の稼動停止までの状態を示す。
図4および
図5において、グラフG1は、乾燥ドラム10の出口11の温度[℃]を示す。グラフG2は、2流体ノズル53の温度設定値[℃]を示す。グラフG3は、2流体ノズル53の開度[%]を示す。グラフG4は、汚泥の供給量[×0.1t/h]を示す。
図4および
図5において、横軸は時刻を示し、縦軸は温度、開度、汚泥の供給量のそれぞれを示す。
【0051】
(区間P1:第1制御)
区間P1は、汚泥乾燥造粒システム100の稼動開始に伴い、燃焼炉42を昇温している状態に相当する。グラフG1で示されるように、乾燥ドラム10の出口11の温度も燃焼炉42を昇温に伴い昇温している。この区間P1において、上述の第1制御が行われる。上述したように、第1制御において、制御部54は、乾燥ドラム10の出口11の温度が予め設定された第1目標温度以上になった場合に、2流体ノズル53が乾燥ドラム10の内部にミストを噴射し、乾燥ドラム10の出口11の温度が第1目標温度となるように、2流体ノズル53を制御する。また、制御部54は、燃焼炉42が昇温される間に、乾燥ドラム10の出口11の温度が予め設定された第2目標温度となるように、燃焼炉42を制御する。
図4の例において、第1目標温度は一例として120℃である。第1目標温度は、グラフG2が示す第1制御における2流体ノズル53の温度設定値[℃]のことである。なお、後述するように、第2目標温度は一例として123℃である。
【0052】
区間P1においてグラフG1が示すように、乾燥ドラム10の出口11の温度は2流体ノズル53の設定温度(第1目標温度)以下であるため、グラフG3が示すように2流体ノズル53の開度は0%のままである。第1制御における2流体ノズル53の設定温度は、乾燥ドラム10におけるバグフィルタ結露回避温度以上、且つバグフィルタ20の耐熱温度以下の範囲で設定される。バグフィルタ結露回避温度は、バグフィルタ20内に結露を生じない温度を言い、本実施形態では例えば約105℃である。バグフィルタ20の耐熱温度は、バグフィルタ20が破損しない臨界温度を言い、本実施形態では例えば約140℃である。つまり、第1制御における2流体ノズル53の設定温度は、約105℃から約140℃の範囲で適宜設定される。
【0053】
本実施形態において2流体ノズル53の設定温度を120℃にしている理由は、本実施形態では、「乾燥ドラム10の出口11の温度→乾燥ドラム10の入口の温度→燃焼炉42のバーナーの開度」間のカスケード制御を利用して燃焼炉42を昇温しているからである。つまり、乾燥ドラム10の出口11の温度が例えば123℃の場合、2流体ノズル53の働きで乾燥ドラム10の出口11の温度が120℃に保たれるため、カスケード制御では乾燥ドラム10の出口11の温度が123℃に未達のため燃焼炉42のバーナーを炊く方向に制御が行われ、この間に燃焼炉42が昇温する。これは、上述したように、第1制御において制御部54が、乾燥ドラム10の出口11の温度が予め設定された第2目標温度となるように、燃焼炉42を昇温制御するということと同等であり、ここで第2目標温度は、カスケード制御において燃焼炉42を昇温する際の、乾燥ドラム10の出口11の目標温度であり、本実施形態では123℃である。この第2目標温度の123℃は、乾燥ドラム10におけるバグフィルタ結露回避温度以上、且つバグフィルタ20の耐熱温度以下の範囲内で設定され、第1目標温度の120℃より高い温度である。
【0054】
なお、以上のような方法において、第1制御における2流体ノズル53の設定温度(第1目標温度)は、カスケード制御において燃焼炉42を昇温する際の乾燥ドラム10の出口11の目標温度(第2目標温度)である123℃未満であれば成立する。しかし、燃焼炉42の急激な昇温を防止し、後述の区間P3における汚泥供給後の設定値切り替えにおける温度変動を少なくするために、本実施形態では第1目標温度を120℃としている。第1制御における第1目標温度および第2目標温度は、例えば下記のような式(1)を満たすようにそれぞれ設定されても良い。
0.02<(第2目標温度―第1目標温度)/第1目標温度<0.05…(1)
【0055】
(区間P2:第1制御)
区間P2は、乾燥ドラム10の出口11の温度は既にバグフィルタ結露回避温度(例えば約105℃)に到達したが、燃焼炉42の炉内温度が脱臭開始可能温度に到達していないため、燃焼炉42の更なる昇温を待っている状態に相当する。脱臭開始可能温度は、乾燥ドラム10、バグフィルタ20、汚泥系30、および乾燥ガス系40により構成された閉回路内で発生した悪臭や埃等を、燃焼炉42が除去できる温度を言い、本実施形態では例えば約800℃である。この区間P2において、上述の第1制御が行われる。区間P2において、燃焼炉42は昇温を続けるが、グラフG3が示すように2流体ノズル53の開度も次第に開き、ミストが乾燥ドラム10の内部に直接噴射され、グラフG1が示すように乾燥ドラム10の出口11の温度は120℃に保たれている。乾燥ドラム10の出口11の温度が上昇を続けず120℃を保っている理由は、区間P2において、2流体ノズル53が供給するミストが汚泥に代わる熱負荷として連続的に機能したからである。
【0056】
なお、乾燥ドラム10の内部にミストを直接噴射しないで、水を供給する場合には、決め打ちで供給された水量の全てが熱負荷として機能するとは限らず、区間P2の段階で熟練した作業者がタイミング良く汚泥供給を始めなければ、乾燥ドラム10の出口11の温度が昇温を続け、バグフィルタ20を焼損する可能性がある。一方、乾燥ドラム10の内部にミストを直接噴射する本実施形態では、作業者の技量への依存度を抑えることができる。
【0057】
(区間P3:第1制御から第2制御に切り替え)
区間P3は、乾燥汚泥および脱水汚泥が二軸ミキサー32に投入されてから所定時間経過後に、制御部54が制御の仕方を第1制御から第2制御に切り替え、乾燥ドラム10内では汚泥の乾燥処理が進行中である状態に相当する。上述したように、第2制御において、制御部54は、燃焼炉42が熱源を供給する際に、乾燥ドラム10の出口11の温度が第2目標温度となるように、燃焼炉42を制御する。また、制御部54は、乾燥ドラム10の出口11の温度が予め設定された第3目標温度以上になった場合に、2流体ノズル53が乾燥ドラム10の内部にミストを噴射し、乾燥ドラム10の出口11の温度が第3目標温度となるように、2流体ノズル53を制御する。
図4の例において、上述したように第1目標温度および第2目標温度は一例としてそれぞれ120℃および123℃である。第3目標温度は、グラフG2が示す第2制御における2流体ノズル53の温度設定値[℃]のことである。第2制御における2流体ノズル53の設定温度(第3目標温度)は、第1目標温度および第2目標温度より高い温度であるとともに、乾燥ドラム10におけるバグフィルタ結露回避温度(例えば約105℃)以上、且つバグフィルタ20の耐熱温度(例えば約140℃)以下の範囲で設定される。
図4の例において、第3目標温度は一例として126℃である。
【0058】
第3目標温度は、第1目標温度および第2目標温度より高い温度であるため、第1制御から第2制御に制御を切り替え、2流体ノズル53の温度設定値を120℃から126℃に変更することで、熱負荷を2流体ノズル53が噴射するミストから汚泥に切り替えることができる。つまり、第2制御では、2流体ノズル53の温度設定値を、カスケード制御の乾燥ドラム10の出口11の温度設定値(第2目標温度)の123℃に対して+3度としている。これにより、乾燥ドラム10の出口11の温度が123℃+3℃未満である間は、燃焼炉42を制御することにより乾燥ドラム10の出口11の温度を制御し、乾燥ドラム10の出口11の温度が123℃+3℃以上になったときからは、燃焼炉42を用いた制御に加え、2流体ノズル53を用いてミストを噴射することにより乾燥ドラム10の出口11の温度を制御する。言い換えれば、123℃+3℃未満までの通常の場合には燃焼炉42を対象としたカスケード制御が行われ、123℃+3℃以上の温度急上昇の異常事態には2流体ノズル53を更に用いた制御が行われる。つまり、第2制御において、2流体ノズル53は緊急冷却用になり、第1制御と比べてその用途が異なる。
【0059】
制御の切り替えは、二軸ミキサー32に汚泥供給が開始された後に、汚泥やリサイクルペレットが乾燥ドラム10に到達するまでの時間(所定時間)が経過した時点で行われる。この時間は、汚泥乾燥造粒システム100の構成、特に二軸ミキサー32の構成により異なる時間であり、例えば試運転等で値を決めることができる。本実施形態では、二軸ミキサー32への汚泥供給開始後に例えば5分が経過した時点で制御の切り替えが行われる。
図4の例においては、時刻T1で二軸ミキサー32へ汚泥の供給が開始され(グラフG4参照)、5分経過した時刻T2で制御が第1制御から第2制御に切り替えられる(グラフG2参照)。
【0060】
なお、以上のような方法において、第2制御における2流体ノズル53の設定温度(第3目標温度)は、カスケード制御において燃焼炉42が熱源を供給する際の乾燥ドラム10の出口11の目標温度(第2目標温度)である123℃より高ければ成立する。しかし、燃焼炉42の急激な昇温を防止し、区間P3における汚泥供給後の設定値切り替えにおける温度変動を少なくするために、本実施形態では第3目標温度を126℃としている。第2制御における第2目標温度および第3目標温度は、例えば下記のような式(2)を満たすようにそれぞれ設定されても良い。
バグフィルタ耐熱温度―第3目標温度>14℃…(2)
【0061】
(区間P4:第2制御)
図5に移り、区間P4は、汚泥乾燥処理進行中の状態から、汚泥投入停止直後の状態までに相当する。区間P4において、上述の第2制御が行われる。時刻T3にて乾燥汚泥および脱水汚泥の二軸ミキサー32への投入が停止したため、乾燥ドラム10での熱負荷(汚泥)が無くなり、乾燥ドラム10の出口11の温度が急上昇して時刻T4には126℃以上となり、時刻T5には140℃まで上がっている。ここで、第2制御により、制御部54は、乾燥ドラム10の出口11の温度が予め設定された第3目標温度(126℃)以上になったことをきっかけに、時刻T4にて、2流体ノズル53が乾燥ドラム10の内部にミストを噴射し、乾燥ドラム10の出口11の温度が第3目標温度となるように、2流体ノズル53を制御する。
図5のグラフG1が示すように、時刻T4から時刻T6までの短時間で乾燥ドラム10の出口11の温度が正常に戻っている。
【0062】
(区間P5:第2制御から第3制御に切り替え)
区間P5は、汚泥投入停止後、設備が冷却するまで2流体ノズル53で乾燥空気を冷却している状態に相当する。区間P5で制御部54は、二軸ミキサー32へ乾燥汚泥および脱水汚泥の投入が中止されてから所定時間経過後に、第2制御から第3制御に制御の仕方を切り替える。第3制御において、制御部54は、乾燥ドラム10の出口11の温度が第1目標温度以上になった場合に、2流体ノズル53が乾燥ドラム10の内部にミストを噴射し、乾燥ドラム10の出口11の温度が第1目標温度となるように、2流体ノズル53を制御する。
図5の例において、時刻T7が、第2制御から第3制御に制御の仕方が切り替わったタイミングである。時刻T7において、2流体ノズル53の温度設定値は126℃から120℃に変わっている。
【0063】
時刻T3から時刻T7までの時間は、汚泥投入停止後に、二軸ミキサー32に残っていた汚泥が概ね排出されるまでにかかる時間(所定時間)である。この時間は、汚泥乾燥造粒システム100の構成、特に二軸ミキサー32の構成により異なる時間であり、例えば試運転等で値を決めることができる。本実施形態では、二軸ミキサー32への汚泥投入停止後に例えば15分が経過した時点で制御の切り替えが行われる。第3制御に制御の仕方が切り替わった後は、燃焼炉42が消火され、系内の温度はグラフG1が示すように徐々に下がっていく。2流体ノズル53の開度もグラフG3が示すように温度設定値の120℃を守りながら徐々に閉じていく。
【0064】
なお、2流体ノズル53の設定温度を126℃から120℃へ下げる理由は、汚泥乾燥造粒システム100には汚泥供給を一旦停止して再供給する機能があるからである。すなわち、第1制御における温度設定値と第3制御における温度設定値を同じ温度にすることにより、汚泥供給を一旦停止したときの制御を汚泥供給開始前の制御と同じくすることができ、汚泥投入を一旦中止してから再開するような場合に、制御を別途切り替える必要がなくなる。
【0065】
続いて、本実施形態にかかる汚泥乾燥造粒システム100の作用及び効果について説明する。本実施形態の汚泥乾燥造粒システム100によれば、乾燥ドラム10の出口11の温度に基づき、2流体ノズル53が乾燥ドラム10の内部にミストを噴射するように制御される。例えば、汚泥の供給量が所定量を下回った場合や、汚泥の含水率が所定値より小さかった場合に、乾燥ドラム10の出口11の温度が上昇したことが検出されると、2流体ノズル53が乾燥ドラム10の内部にミストを直接噴射するように制御される。乾燥ドラム10の内部にミストを直接噴射することにより、乾燥ドラム10の乾燥能力を低減でき、例えば燃焼炉42を制御して乾燥ドラム10の温度を制御する場合と比べて、応答性良く、乾燥ドラム10の温度を制御することができる。このため、汚泥の供給量や含水率が急激に変化した場合でも短時間で適切な対応が可能となる。更に、ミストは乾燥ドラム10内部で蒸発しやすいことから、例えば乾燥ドラム10に水を供給する場合と比べて、バランスの良い制御が可能であり、応答も速く、更に蒸発しないで乾燥ドラム10内部で溜まった水による不具合も防止できる。
【0066】
また、本実施形態によれば、制御部54による制御の具体的手法が提供される。すなわち、制御部54は、第1目標温度を基準に2流体ノズル53を制御し、且つ第2目標温度を基準に燃焼炉42を制御するという第1制御を行う。第1制御において、第1目標温度および第2目標温度は、乾燥ドラム10におけるバグフィルタ結露回避温度以上、且つバグフィルタ20の耐熱温度以下の範囲で設定される。このため、乾燥ドラム10の出口11の温度が第1目標温度および第2目標温度を保つように制御されれば、汚泥乾燥を開始するための準備または開始が可能でありながらも、バグフィルタ20の破損を防止することができる。
【0067】
また、第1制御において、第2目標温度は第1目標温度より高い温度に設定されている。これにより、第2目標温度による制御が始まる前に、第1目標温度による制御が始まるため、実際には、第1目標温度に基づく2流体ノズル53による制御がメインに行われ、その間に、燃焼炉42が、乾燥ドラム10の出口11の温度が第2目標温度に未達のため、昇温される。燃焼炉42が昇温しても、乾燥ドラム10は第1目標温度で制御されるため、燃焼炉42の昇温にかかわらず、バグフィルタ20の破損を防止することができる。言い換えれば、第2目標温度が第1目標温度より高いことから、第1制御において2流体ノズル53により噴射されるミストは汚泥に代わる熱負荷として機能することとなる。これにより、燃焼炉42を昇温する間に、バグフィルタ20を損傷させることなく、乾燥ドラム10の温度制御を安全に行うことができる。一方、ミストの代わりに例えば水を供給した場合には、供給された水が熱負荷として適切に機能できず、乾燥ドラム10の温度上昇により、バグフィルタ20を損傷させてしまう可能性がある。これは特に、水の供給タイミングが熟練した作業者等により適切に選ばれなかった場合に起きる可能性がある。このように、水を供給する場合は、作業者の技量への依存度が高いが、本実施形態によると、作業者の技量に依存することなく、乾燥ドラム10の温度制御を安全に行うことができる。
【0068】
本実施形態における第1制御は、本実施形態の汚泥乾燥造粒システム100が稼動を始め、燃焼炉42の炉内温度が脱臭開始可能温度に至るまでに行われても良い。この場合には、本実施形態により、汚泥乾燥造粒システム100の稼動開始から、燃焼炉42の炉内温度が脱臭開始可能温度に至るまでにおける制御の具体的手法が提供される。言い換えれば、本実施形態によれば、脱臭開始可能温度に至るまで燃焼炉42の温度上昇を待っている間に、2流体ノズル53が乾燥ドラム10の内部にミストの噴射を開始する。これにより、2流体ノズル53により噴射されるミストが汚泥に代わる熱負荷として機能され、燃焼炉42を昇温する間に、バグフィルタ20を損傷させることなく、乾燥ドラム10の温度制御を安全に行うことができる。なお、燃焼炉42の炉内温度が脱臭開始可能温度に至ったことを条件に汚泥を投入する場合には、本実施形態により、汚泥乾燥造粒システム100の稼動開始から汚泥投入までにおける制御の具体的手法が提供される。
【0069】
また、本実施形態によれば、乾燥汚泥および脱水汚泥が二軸ミキサー32に投入されてから所定時間経過後における、制御部54による制御の具体的手法が提供される。すなわち、制御部54は、汚泥が二軸ミキサー32に投入されてから所定時間経過後に、制御の仕方を切り替え、第2目標温度を基準に燃焼炉42を制御し、且つ第3目標温度を基準に2流体ノズル53を制御するという第2制御を行う。第2制御において、第3目標温度は、乾燥ドラム10におけるバグフィルタ結露回避温度以上、且つバグフィルタ20の耐熱温度以下の範囲で設定される。このため、乾燥ドラム10の出口11の温度が第2目標温度および第3目標温度を保つように制御されれば、汚泥乾燥を開始または進行中でありながらも、バグフィルタ20の破損を防止することができる。
【0070】
また、第2制御において、第3目標温度は第2目標温度より高い温度に設定されている。これにより、第3目標温度による制御が始まる前に、第2目標温度による制御が始まるため、実際には、第2目標温度に基づく燃焼炉42による制御がメインに行われることとなる。しかし、第2目標温度による制御がうまくいかず、乾燥ドラム10の出口11の温度が第3目標温度以上となったような緊急且つ異常の場合には、2流体ノズル53による制御が始まり、乾燥ドラム10の出口11の温度が適切な温度に保たれ、バグフィルタ20の破損を防止することができる。言い換えれば、第3目標温度が第2目標温度より高いことから、第2制御においては基本的には汚泥が熱負荷として機能するが、例えば汚泥の量が少ない、あるいは、含水率が低く、乾燥ドラム10の出口11の温度が第3目標温度以上となったような緊急且つ異常の場合には、2流体ノズル53により噴射されるミストが熱負荷として更に機能することとなる。これにより、乾燥ドラム10による乾燥処理中に、バグフィルタ20を損傷させることなく、乾燥ドラム10の温度制御を安全に行うことができる。一方、ミストの代わりに例えば水を供給した場合には、供給された水が熱負荷として適切に機能できず、乾燥ドラム10の温度上昇により、バグフィルタ20を損傷させてしまう可能性がある。これは特に、水の供給タイミングが熟練した作業者等により適切に選ばれなかった場合に起きる可能性がある。このように、水を供給する場合は、作業者の技量への依存度が高くなるが、本実施形態によると、作業者の技量に依存することなく、乾燥ドラム10の温度制御を安全に行うことができる。
【0071】
また、本実施形態によれば、二軸ミキサー32へ乾燥汚泥および脱水汚泥の投入が中止されてから所定時間経過後における、制御部54による制御の具体的手法が提供される。すなわち、制御部54は、汚泥の二軸ミキサー32への投入が中止されてから所定時間経過後に、第2制御から第3制御に制御の仕方を切り替える。第1制御と第3制御において、実質的に行われる制御は、2流体ノズル53を用いて乾燥ドラム10の出口11の温度が第1目標温度となるように制御することで同等である。したがって、汚泥投入中止後の制御と、汚泥投入開始前の制御が同等になり、汚泥投入を一旦中止してから再開するような場合に、制御を別途切り替えることなく、円滑に対応することができる。なお、この効果については、汚泥の供給が一旦停止し、再稼働する場合と、設備そのものが停止(燃焼炉の降温)する場合とで、同じ効果が奏される。つまり、汚泥の供給が一旦停止し、再稼働する場合も、設備そのものが停止(燃焼炉の降温)する場合も、汚泥投入中止後の制御と、汚泥投入開始前の制御が同等であるため、制御を別途切り替えることなく、円滑に対応することができる。なお、設備そのものが停止する場合は、最初に汚泥投入が中止され、次に系内の汚泥が排出され、2流体ノズル53から噴射されたミストの乾燥負荷のみで温度が安定してから、燃焼炉42の降温に入る。この間に設備が再稼働をする場合は、再度、汚泥の投入から作業が開始されるが、この場合に、汚泥投入中止後の制御と、汚泥投入開始前の制御が同等であるため、制御を別途切り替えることなく、円滑に対応することができる。
【0072】
また、本実施形態によれば、乾燥ドラム10の出口11の温度が上昇すればするほど、大量のミストが噴射される。これにより、温度上昇値に比例した減温制御が可能となり、更に、例えば乾燥ドラム10の異常高温時に、ミスト噴射量を大量に増やすことにより、緊急減温制御を行うことができる。
【0073】
以上、本発明の好適な実施形態について説明したが、本発明が上記実施形態に限定されないことは言うまでもない。
【0074】
例えば、本実施形態においては、乾燥ドラム10の内部にミストを噴射するためのものとして2流体ノズル53を例示しているが、これに限らず、ノズルは1本でも、3本以上でも良い。