【実施例1】
【0019】
図1ないし
図5は本発明の実施例1に係る工作機械のワーク加工制御装置,該装置を用いたワーク加工方法及び加工プログラムを説明するための図である。
【0020】
図において、1は機械本体、2はワーク加工制御装置である。前記機械本体1は、ワークWを回転駆動する主軸装置3と、工具Tを、X軸方向(ワーク径方向)に移動させる切り込み装置4と、Z軸方向(ワーク軸方向)に移動させる送り装置5とを備えている。
【0021】
前記主軸装置3は、ワークWを把持するワーク主軸3aと、該ワーク主軸3aを回転駆動する主軸モータ3bとを有する。
【0022】
前記切り込み装置4は、工具Tを、X軸方向に移動させるX軸ボールねじ4aと、該X軸ボールねじ4aを回転駆動するX軸駆動サーボモータ4bを有する。
【0023】
また前記送り装置5は、工具Tを、Z軸方向に移動させるZ軸ボールねじ5aと、該Z軸ボールねじ5aを回転駆動するZ軸駆動サーボモータ5bとを有する。
【0024】
前記ワーク加工制御装置2は、前記主軸モータ3bを、ワークWの回転速度が指令値となるように制御するワーク回転制御部6と、X軸駆動サーボモータ4bを、工具Tの切り込み量や切り込み速度が所望状態となるように制御する工具切り込み制御部7と、Z軸駆動サーボモータ5bを、工具TのZ軸方向送り速度や送り量が所望状態となるようにワークと工具との相対位置を制御する相対送り制御部8とを備えている。
【0025】
前記相対送り制御部8による工具TとワークWとの相対送り制御を、
図2を参照しつつより詳細に説明する。
【0026】
この相対送り制御では、イグザクトストップモードで前進送り制御(第1ブロック)と後退送り制御(第2ブロック)とを交互に繰り返すように構成されている。
【0027】
前記前進送り制御では、工具を前進方向に第1加速度α1で加速して最高前進速度Vfmaxとし、この速度を所定時間保持した後、第1減速度β1で減速して速度ゼロ、具体的にはZ 軸駆動サーボモータ5bの回転速度がゼロとなったことが確認され、所定の前進送り距離Lfが確保される(第1ブロック)。
【0028】
前記Z 軸駆動サーボモータ5bの回転速度がゼロとなったときに指令された位置に到達したことが確認されると、続いて後退送り制御が開始され、該サーボモータ5bが逆方向に加速回転して前記工具Tを後退方向に第2加速度α2で加速して最高後退速度Vbmaxとし、この速度を所定時間保持した後、第2減速度β2で減速して速度ゼロのときに指令された位置に到達したことが確認され、所定の後退送り距離Lbが確保される(第2ブロック)。
【0029】
そして前記後退送り制御では、前記後退送り距離Lbが、前記前進送り制御における加速時に移動する加速距離Lα1又は減速時に移動する減速距離Lβ1より大きく、かつ該減速距離Lβ1と加速距離Lα1と所定距離Lbminの和Lbより小さく設定されている。
【0030】
ここで、前記第1ブロックと第2ブロックは、
図3に示すように、実質送り距離Le(=前進送り距離Lf −後退送り距離Lb)が加工全長に達するまで交互に繰り返される。
【0031】
また、前記第1加速度α1と第2加速度α2、及び第1減速度β1と第2減速度β2とは通常同じ値に設定される。また、最高後退速度Vbmaxは、最高前進速度Vfmaxと同じかこれよりも低く設定される。さらにまた、前記所定距離Lbminは、難削材等の切屑が分断し難い材料の旋削に設定される。
【0032】
図4は、前記
図3におけるワーク加工方法を実行するワーク加工プログラムを説明するための図である。
【0033】
このワーク加工プログラムは、前記ワーク加工制御装置2のコンピュータを、ワークW
の回転を制御するワーク回転制御部6として、工具の切り込みを制御する工具切り込み制御部7として、及びイグザクトストップモードでZ軸駆動サーボモータ5bによる前進送り制御と後退送り制御とを繰り返し実行し、前記後退送り制御における後退送り距離Lbを、前記前進送り制御における加速時に移動する加速距離Lα1又は減速距離L β1より大きく、かつ該減速距離Lβ1と加速距離Lα1と所定距離Lbminiとの和より小さくする相対送り制御部8として機能させるためのプログラムである。
【0034】
具体的には、
図4において、♯は加工条件(設定値)を表すコードで、Gは加工内容を指令するコードを表しており、詳細は例えば以下の通りである。
【0035】
♯1=0.45 により、前進送り距離=0.45 mmが、
♯2=0.03により、後退送り距離=0.03 mmが、
♯102=0.15により、前進送り量=0.15mm/revが、
♯103=0.2(BACK FEED)により、後退送り量=0.2mm/revが
それぞれ設定される。
【0036】
そして、 G09G1W-♯1F♯102により、前進送り指令=Z 軸負方向に♯1=0.45mmと前進送り量♯102=0.15mm/revとが指令され、
またG09G1W♯2F♯103により、後退送り指令=Z 軸正方向に♯2=0.03mmと後退送り量♯103=0.2mm/revとが指令される。なお、本実施例においては、
図1に示すように、工具の前進送りは左方向(Z軸負方向)となる。
【0037】
本実施例によれば、イグザクトストップモードで前進送り制御と後退送り制御を繰り返して実行したので、具体的には前進送り制御における最高前進速度Vfmaxを第1減速度β1で減速して速度ゼロとなったときに指令された位置に到達したことが確認された後に後退送り制御を開始すると共に、該後退送り制御における後退送り距離Lbを前進送り制御における減速距離Lβ1より大きく設定したので、切屑を確実に分断でき、連続した長い切屑が発生するのを防止でき、その結果、工具寿命を延長できる。ちなみに、後退送り距離Lbが前進送り制御における減速距離Lβ1より小さい場合は、切屑が十分に分断されず、連続した長い切屑が発生し易い。
【0038】
また、後退送り距離Lbを、前進送り制御における加速距離Lα1と減速距離Lβ1と所定距離Lbminとの和より小さく設定したので、切屑を確実に分断しつつ加工時間の延長を抑制することができる。
【0039】
ここで、従来方法で難削材を加工した場合、
図5(b)に示すように、工具Tの切れ刃T′の先端aに比較して、該先端aより少し基端側(同図左側)に位置するワークと切れ刃とが接触する部分と接触しない部分との境界部bの磨耗が大きくなる。これに対して本発明方法では、後退する際にワークと切れ刃T′とが離れてその隙間に切削油が入り込むことで、冷却効果及び潤滑効果が得られ、
図5(c)に示すように、前記境界部bの磨耗を抑制できる。なお、
図5(a)は加工前の切れ刃T′を示す。
【0040】
また、工具Tが後退する際にワークに擦れている距離が長くなるほど切れ刃T′の寿命が短くなるが、本発明方法では、確実に停止してから反転するため後退する距離を必要以上に長くしないので、切れ刃Tの寿命を長くできる。