(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
前記回転力伝達手段は、前記内管体の内周において前記外管体の軸心に沿って螺旋状となるように配置された板状の部材である羽根板で構成されることを特徴とする請求項1に記載の極低温液体用ポンプ。
【背景技術】
【0002】
従来から、液化天然ガス(LNG)、液体窒素、液体水素及び液体ヘリウムなど、沸点が約100K(ケルビン)以下の極低温の液化ガス(極低温液体)を液体の状態で移送するポンプとして、サブマージド型ポンプとキャンドポンプの2種類のポンプが存在する。
サブマージド型ポンプは、ポンプとモータを一体として収納用のポッドに浸漬するタイプのポンプであり、地上設置型のLNG用ポンプでは主流である。また、キャンドポンプは、モータ全体を液化ガスに浸漬するのではなく、ステータの内周側にあるステータキャンでステータと液化ガスを隔離し、ロータのみを液化ガスに浸漬するタイプのポンプである。
【0003】
特許文献1は、これら2種類のポンプのうち、サブマージド型ポンプを開示している。
特許文献1に開示のサブマージドポンプは、内部にポンプ本体を収納した有底筒状の内槽及び該内槽の周囲を覆う有底筒状の外槽からなる上部が開口したケーシング本体と、該ケーシング本体の上部開口を閉塞する蓋部材と、前記ポンプ本体の吐出口から前記蓋部材を貫通して外部に延出した吐出配管と、前記外槽を貫通して内槽内に連通した吸入配管とを備え、前記内槽と外槽との間に断熱層を形成したサブマージドポンプにおいて、前記内槽の上端部外周に設けたフランジの下面外周部に前記外槽の上端縁を固着するとともに、外槽固着部よりも内周側のフランジ上面に蓋部材固定用の植え込みボルトを植設し、該植え込みボルトを蓋部材外周のフランジ部に設けたボルト孔に挿通し、該ボルト孔から突出する植え込みボルトにナットを螺着して前記蓋部材を前記内槽の上部に着脱可能に取り付けたことを特徴とするものである。
【0004】
特許文献2は、もう1種類のポンプであるキャンドポンプを開示している。
特許文献2に開示の低温液化ガス用ポンプは、低温液化ガスを、上下に延びる回転軸の下部に設けられる下側羽根車を回転駆動することによって輸送するポンプ本体と、ポンプ本体の上部に取付けられ、回転軸にロータが固定され、ステータの内周側にロータおよび回転軸と隙間をあけて外囲するようにステータキャンが挿設けされるキャンドモータと、ステータキャンの上方で、回転軸の上部に設けられる上側羽根車と、上側羽根車によって昇圧された低温液化ガスを、ポンプ本体の吐出側に注入する注入管路とを含むことを特徴とするものである。
【0005】
また、特許文献3は、サブマージド型ポンプ及びキャンドポンプとは異なる種類のハイブリッドポンプを開示している。
特許文献3に開示のハイブリッドポンプは、内部を液体が流通可能な配管と、該配管内で回転自在に支持されている羽根車と、該羽根車に固定され一体となって回転自在のロータと、配管外に設置したステータコイル装置とを具備し、前記ロータとステータコイル装置との間の電磁的相互作用により羽根車を回転駆動することを特徴とするものである。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
上述のように、極低温の液化ガス(極低温液体)を移送するポンプとして、特許文献1に開示されるサブマージド型ポンプと特許文献2に開示されるキャンドポンプが主流である。しかし、どちらのポンプにも解決が望まれる問題点が存在する。
サブマージド型ポンプでは、モータが液化ガス中にあるため、モータの発熱が液化ガスに加わって当該液化ガスを気化させてしまう。従って、気化した液化ガスを大気中に放出してしまえば液化ガスが無駄になるという問題が生じ、気化してしまった液化ガスを該ポンプの吸込口側に戻す配管を別途設ければ、サブマージド型ポンプの構造が複雑になるという問題が生じる。
【0008】
また、キャンドポンプでは、モータの冷却や軸受け部分の潤滑のためのキャンドモータ循環流として移送対象である液化ガス自体を使用する。従って、キャンドモータ循環流として使用した液化ガスを該ポンプの吸込口側に戻す必要があるキャンドポンプは、液化ガスの移送効率を向上させるには不向きな構造であるという問題がある。
また、キャンドモータ循環流の流量はキャンドポンプの吐出流量によって変化するので、キャンドポンプの動作中にモータの冷却能力や軸受け部分の潤滑条件が変化するという問題もある。さらに、キャンドポンプはモータの冷却に液化ガスを使用するので、モータの発熱が液化ガスに加わって当該液化ガスを気化させてしまい、液化ガスの移送効率が低下してしまう。
【0009】
上述のサブマージド型ポンプ、キャンドポンプのいずれのポンプも、モータの発熱で気化した液化ガスを放出する又は該ポンプの吸込口側に戻すための配管が必要となり、ポンプの構造が複雑になるという問題を有している。
また、特許文献3のハイブリッドポンプは、サブマージド型ポンプともキャンドポンプとも異なる構成を有するポンプであり、配管外にステータコイル装置を備えている。従って、ステータコイル装置が設けられた部分が配管の径に比べて大きく肥大した形状となるので、このハイブリッドポンプは扱いにくく設置場所を選ぶ構成を有しているといえる。また、このハイブリッドポンプは、ステータコイル装置の煩雑な構造が肥大した配管のさらに外側に露出しているので、さらに扱いにくい。加えて、特許文献3に開示されていないが、ハイブリッドポンプのステータコイル装置を冷却するための冷却機構が必要であると考えられるため、ハイブリッドポンプはより煩雑な構成となってさらに扱いにくくなるという問題がある。
【0010】
そこで本発明は、上記問題点に鑑み、液化ガスを効率良く移送することができ、簡易でメンテナンスの手間も掛からない信頼性の高い構造を有する極低温液体用ポンプを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0011】
上述の目的を達成するため、本発明においては以下の技術的手段を講じた。
本発明による極低温液体用ポンプは、超電導線が超電導転移する温度以下の液体を移送する極低温液体用ポンプであって、両端に開口を有する筒状の外管体と、前記外管体の内周に沿って設けられ、前記超電導線が巻回された界磁コイルを有するステータ装置と、前記外管体に同軸状となるように遊嵌されていて、磁力を発する磁力発生体を有し、前記磁力発生体が発する磁力と前記ステータ装置の界磁コイルが発する磁力との相互作用によって前記外管体の軸心回りに回転する筒状の内管体と、前記内管体の内周に設けられ、且つ当該内管体の回転力を前記内管体内の液体に伝達して該液体を前記外管体の一方の開口側から他方の開口側へ流動させる回転力伝達手段と、を備えることを特徴とする。
【0012】
ここで、前記回転力伝達手段は、前記内管体の内周において前記外管体の軸心に沿って螺旋状となるように配置された板状の部材である羽根板で構成されるとよい。
また、前記内管体を磁力によって前記外管体内の所定の位置に保持する磁気軸受を備え、前記磁気軸受が、前記内管体を保持する磁気を前記超電導線が巻回された超電導コイルによって発するとよい。
【0013】
また、前記外管体が、該外管体の内周において内径を拡大することで形成された内径拡張部を有し、前記ステータ装置が、前記内径拡張部に配置されるとよい。
さらに、前記内管体に備えられた磁力発生体が、永久磁石であるとよい。
または、前記内管体に備えられた磁力発生体が、酸化物超電導体であるとよい。
ここで、前記液体が、液体窒素、液体酸素、液体水素、液体ネオン、又は液体ヘリウムであるとよい。
【0014】
また、前記ステータ装置の界磁コイルが、前記液体と直接に接触するとよい。
なお、好ましくは、前記界磁コイルは、当該界磁コイルの磁気軸が前記外管体の軸心と平行となるように、前記外管体の内周面に沿うように配備され、前記磁気発生体は、当該磁気発生体の磁気軸が前記外管体の軸心と平行となるように、前記内管体に取り付けられているとよい。
【0015】
なお、好ましくは、前記界磁コイルは、当該界磁コイルの磁気軸が前記外管体の軸心と垂直となるように、前記外管体の内周面に配備され、前記磁気発生体は、当該磁気発生体の磁気軸が前記外管体の軸心と垂直となるように、前記内管体に取り付けられているとよい。
なお、本発明にかかる極低温液体用ポンプの最も好ましい形態は、超電導線が超電導転移する温度以下の液体を移送する極低温液体用ポンプであって、両端に開口を有する筒状の外管体と、前記外管体の内周に沿って設けられ、前記超電導線が巻回された界磁コイルを有するステータ装置と、前記外管体に同軸状となるように遊嵌されていて、磁力を発する磁力発生体を有し、前記磁力発生体が発する磁力と前記ステータ装置の界磁コイルが発する磁力との相互作用によって前記外管体の軸心回りに回転する筒状の内管体と、前記内管体の内周に設けられ、且つ当該内管体の回転力を前記内管体内の液体に伝達して該液体を前記外管体の一方の開口側から他方の開口側へ流動させる回転力伝達手段と、を備えるものであって、前記内管体を磁力によって前記外管体内の所定の位置に保持する磁気軸受を備え、前記磁気軸受が、前記内管体を保持する磁気を前記超電導線が巻回された超電導コイルによって発することを特徴とする。
【発明の効果】
【0016】
本発明の極低温液体用ポンプによれば、液化ガスを効率良く移送することができ、簡易でメンテナンスの手間も掛からない信頼性の高い構造を有する極低温液体用ポンプを実現することができる。
【発明を実施するための形態】
【0018】
「第1実施形態」
以下、図面を参照し、本発明の実施形態を説明する。
図1は、本発明の第1実施形態による極低温液体用ポンプ1の断面構成を示す図である。第1実施形態による極低温液体用ポンプ1は、液化天然ガス(LNG)、液体窒素、液体酸素、液体水素、液体ネオン及び液体ヘリウムなど、沸点が約100K(ケルビン)以下の極低温の液化ガス(極低温液体)を液体の状態で移送するためのポンプである。
図1は、管状の外観形状を有する極低温液体用ポンプ1を、該管状の極低温液体用ポンプ1の軸心を通る平面で切断したときの断面を示す。
【0019】
図2は、第1実施形態による極低温液体用ポンプ1のもう一つの断面構成を示す図である。
図2は、
図1に示す管状の極低温液体用ポンプ1のA−A断面図であり、該極低温液体用ポンプ1の軸心に垂直な平面で切断したときの断面を示す。
極低温液体用ポンプ1は、上述のように約100K(ケルビン)以下といった、超電導線が超電導転移する温度の沸点を有する極低温液体を移送するものである。
【0020】
極低温液体用ポンプ1は、両端に開口を有する管状(筒状)の外管体2、界磁コイル3を有するステータ装置4、外管体2の軸心C回りに回転する筒状の内管体5、極低温液体を外管体2の一方の開口側から他方の開口側へ流動させる回転力伝達手段6、及び内管体5を外管体2内の所定の位置に保持する磁気軸受7を備える。ステータ装置4、内管体5(以下、ロータ5という)、回転力伝達手段6(以下、インペラ6という)、及び磁気軸受7は、外管体2の管内(筒内)に備えられる。
【0021】
図1及び
図2を参照し、外管体2は、上述のとおり両端に開口を有する管状(筒状)の部材であって、例えばステンレス鋼などの鋼管で構成されている。具体的には、互いに径の異なる2つの管状(筒状)の鋼管を有しており、これら2つの鋼管のうち径の小さな鋼管である小径管2aの周りを、径の大きな鋼管である大径管2bが取り囲んで覆っている。大径管2bと小径管2aは、互いに接触しないように間隔を保持して設けられており、例えば、管状(筒状)の形状における互いの軸心を一致させた同心状となるように設けられる。
【0022】
小径管2aの両端に形成された開口の周囲には、小径管2aの軸心に直交する方向に延びる、図示しないフランジ(鍔)が形成されており、大径管2bの両端は、溶接等によって小径管2aのフランジと接続されている。つまり、外管体2は、小径管2aと、小径管2aの開口の周囲に形成されたフランジと、フランジに接続された大径管2bとが一体となることで構成される。
【0023】
従って、外管体2は、大径管2bと小径管2aの間の間隔がフランジによって密閉されて真空に保持された空間(真空断熱層)8を有している。この真空断熱層8は、小径管2aの管内と大径管2bの管外、つまり、外管体2の管内と管外を断熱するための空間であり、外管体2の管外から該外管体2の管内を流れる極低温液体への熱の侵入を防ぐ。
図1に示すように、上述の構成を有する外管体2は、その全長の中央近傍において、外管体2内の内周の径(内径)を拡大して形成された内径拡張部9を有している。
図1に示すとおり、内径拡張部9は、外管体2の管内から見れば、大径管2b及び小径管2aが管外に向かって凹むことで形成された窪みである。この内径拡張部9は、外管体2の軸心に沿って所定の長さを有するように形成されており、この内径拡張部9に、後述するステータ装置4及びロータ5が設けられる。
【0024】
ステータ装置4及びロータ5を有する外管体2は、その両端に設けられたフランジによって、極低温液体を移送する配管に接続されて組み込まれる。
ステータ装置4は、超電導線が巻回された界磁コイル3、界磁コイル3が発する磁力線を集中させるための鉄心である鉄ヨーク10、及び後述するロータ5を磁力によって保持する磁気軸受7を有する。
【0025】
界磁コイル3は、外管体2の軸心に沿った内径拡張部9の長さよりも若干短い巻径のコイルとなるように酸化物超電導線を巻回することで得られる。この界磁コイル3は、内径拡張部9の内周面に沿って、該界磁コイル3の巻径の長手方向の向きが外管体2の軸心方向とほぼ平行となるように配置される。
図2に示すように、第1実施形態では、上述の構成及び配置の界磁コイル3を6個用いて、これら6個の界磁コイル3を内径拡張部9の周方向に沿ってほぼ等間隔に配置する。
【0026】
ここで、界磁コイル3を形成する酸化物超電導線には、Bi(ビスマス)系と呼ばれる高温超電導線が用いられる。このビスマス系の高温超電導線は、100K程度以下の温度で超電導状態になることを特徴とするため、この高温超電導線を使って構成される界磁コイル3は、外管体2内を移送される極低温液体によって超電導状態に転移する。
ここで、
図2を参照して、上述のように内径拡張部9の内周面に沿って配置された6個の界磁コイル3の開口のそれぞれには、鉄ヨーク10が設けられる。鉄ヨーク10は、隣り合う2個の界磁コイル3それぞれの開口に配置され、巻径の長手方向に沿った所定の長さと、界磁コイル3の開口をほぼ垂直に貫く高さとを有する鉄心部10aを有する。さらに、鉄ヨーク10は、鉄心部10aと同一材質の接続部10bによって、隣り合う2個の界磁コイル3の開口に別々に配置された2個の鉄心部10aを、当該2個の界磁コイル3と内径拡張部9の内周面との間でつなぐ。
【0027】
つまり、鉄ヨーク10は、隣り合う2個の界磁コイル3の開口において、巻径の長手方向に沿って界磁コイル3の開口をほぼ垂直に貫く2個の鉄心部10aと、これら2個の鉄心部10aと同一の材質であって、該2個の鉄心部10aを界磁コイル3と内径拡張部9の内周面との間で内径拡張部9の内周面の曲面に合わせて湾曲した板状の部材である接続部10bとで構成される。
【0028】
図1の断面図には、極低温液体用ポンプ1の軸心を通る平面で切断したときの鉄ヨーク10の接続部10bの断面が示されており、界磁コイル3よりも若干短い接続部10bが、界磁コイル3と内径拡張部9の内周面の間に設けられている。また、
図2の断面図には、極低温液体用ポンプ1の軸心に垂直な平面で切断したときの鉄ヨーク10の断面が示されており、2個の界磁コイル3と内径拡張部9の内周面の間で一方の界磁コイル3の開口から他方の界磁コイル3の開口へ架け渡された接続部10bの両端から界磁コイル3の開口を垂直に貫くように鉄心部10aが設けられている。
【0029】
図2を参照しながら上述の構成を別の視点から見ると、次のように説明することができる。つまり、内径拡張部9の内周面に沿って配置された鉄ヨーク10の2つの鉄心部10aのそれぞれに、各鉄心部10aを取り囲むように界磁コイル3が配置されている。このように、1個の鉄ヨーク10と2個の界磁コイル3とで1組の超電導磁場発生部と見て、3組の超電導磁場発生部が内径拡張部9の内周面に沿って配置されている。
【0030】
さらに、
図1を参照して、外管体2の軸心方向において内径拡張部9の両端には、後述するロータ5を、外管体2内の所定の位置である内径拡張部9に磁力によって非接触で回転自在に保持する磁気軸受7が設けられている。
磁気軸受7は、電磁石が発する磁気(吸引力)を用いてロータ5を非接触で保持するものでありその構成は周知であるが、本実施形態による磁気軸受7は、界磁コイル3と同様の超電導線が巻回された超電導コイルによって磁気(吸引力)を発生し、ロータ5を保持する。
【0031】
上述の界磁コイル3、鉄ヨーク10及び磁気軸受7を有するステータ装置4は、外管体2の軸心に向かう界磁コイル3の端面、及び同じく外管体2の軸心Cに向かう磁気軸受7の超電導コイルの端面が、外管体2の内径拡張部9に隣接する小径管2aの内周面とほぼ同一の面上に並んだ面一と呼ばれる状態となるように、内径拡張部9に配置される。その上で、内径拡張部9内に含浸樹脂Rを注入すると、注入された含浸樹脂Rは、界磁コイル3、鉄ヨーク10及び磁気軸受7の各部材間に流入すると共に、当該各部材と内径拡張部9の間にも流入する。このように流入した含浸樹脂Rが固化することで、界磁コイル3、鉄ヨーク10及び磁気軸受7が内径拡張部9内で固定され一体化する。
【0032】
このとき含浸樹脂Rは、外管体2の軸心に向かう界磁コイル3の端面、及びロータ5と対向する磁気軸受7の受面を覆ってしまわない程度に注入される。このように、内径拡張部9において界磁コイル3の端面、磁気軸受7の受面及び含浸樹脂Rの表面で形成される、ステータ装置4の内周の径(内径)は、小径管2aの内径拡張部9に隣接する部分の内径以上である。
【0033】
なお、ステータ装置4を構成する各部材を一体化するための含浸樹脂Rとして、エポキシ樹脂を用いている。一般にエポキシ樹脂は熱硬化性樹脂であり、強固な接着力を有している。また、特性を改善するための改質材をさまざまなフィラーとして混合したエポキシ樹脂が市販されており、本実施形態では、熱伝導特性を向上させる目的で、アルミ粉末をフィラーとして混入したエポキシ樹脂を用いている。このエポキシ樹脂は、熱収縮量が金属に近くなっており、低温でもひび割れなどを起こさないことが知られている。
【0034】
ステータ装置4は、上述のように内径拡張部9に配置されるので、外管体2の小径管2aに極低温液体が流入すると、ステータ装置4の界磁コイル3及び磁気軸受7の超電導コイルが、流入した極低温液体と直接に接触し冷却される。
図1及び
図2を参照して、内管体(ロータ)5は、両端に開口を有する管状(筒状)の部材であって、外管体2と同様に、例えばステンレス鋼などで構成されている。
図1に示すように、管状(筒状)のロータ5の軸心方向に沿った全長は、ステータ装置4の2つの磁気軸受7,7の間隔以上であり、また、
図2に示すように、ロータ5の外周の径(外径)は、内径拡張部9に配置されたステータ装置4の内径未満である。
【0035】
ロータ5は、その外周面に、磁力を発する磁力発生体11を有しており、本実施形態では永久磁石を有している。磁力発生体11は、ロータ5の外周面の周方向に沿って長尺かつ湾曲しており、ロータ5の軸心方向における複数の位置において、ロータ5の外周を取り囲むように複数の磁力発生体11が設けられている。
本実施形態では、
図1に示すように、ロータ5の軸心方向における6つの位置のそれぞれにおいて、
図2に示すように、6つの磁力発生体11がロータ5の外周を取り囲むように設けられている。従って、ロータ5は、ロータ5の外周面の周方向に沿って6つの磁力発生体11が直線状に整列すると共に、ロータ5の軸心方向に沿って6つの磁力発生体11が直線状に整列するように、複数の磁力発生体11を有している。
【0036】
本実施形態による磁力発生体11である永久磁石は、できる限り強い磁力を発する磁石が望ましく、ここではNd-Fe-Bからなるネオジウム系の焼結体永久磁石を用いる。なお、ロータ5に設けられた複数の磁力発生体11の極性は、ロータ5をステータ装置4の内周側に配置したときに、配置されたロータ5が磁気軸受7によって支持されて外管体2に同軸状となるように遊嵌されると共に、該支持されたロータ5がステータ装置4の界磁コイル3が発する磁力との相互作用によって外管体2の軸心C回りに回転するPMモータを構成するように決定される。ここで、PMモータとは、周知のPM(Permanent Magnet
)モータ又はPMSM(Permanent Magnet Synchronous Motor)モータのことである。
【0037】
ロータ5の内周面には、回転力伝達手段6として、雌ねじのねじ山のように、ロータ5の軸心方向に沿って連続的に螺旋状に設けられた板状の部材である羽根板(インペラ)が設けられている。この回転力伝達手段6は、ロータ5の軸心方向に沿って断続的に螺旋状に配置された複数の羽根板(インペラ)によって構成されていてもよい。以下、回転力伝達手段6をインペラ6と表す。
【0038】
ロータ5の内周(内周面)に設けられたインペラ6は、ロータ5の内周面から突出するように設けられており、該突出方向に沿ったロータ5の内周面からの高さは、例えばロータ5の内径の半分未満である。従ってインペラ6は、ロータ5の軸心周りに、ロータ5の全長にわたって空間を形成している。この空間は、インペラ6の干渉を受けない空間であるため、この空間を通して、インペラ6によって遮られることなくロータ5の一方の開口から他方の開口にわたって見通すことができる。
【0039】
このような構成のインペラ6を有するロータ5がステータ装置4の内周側に配置されて回転すると、該インペラ6がロータ5の回転力をロータ5内の極低温液体に伝達し該極低温液体を外管体2の一方の開口側から他方の開口側へ流動させる。
繰り返すが、上述のインペラ6を有するロータ5をステータ装置4の内周側に配置することで、配置されたロータ5が磁気軸受7によって支持されて外管体2に同軸状となるように遊嵌された極低温液体用ポンプ1が構成される。図示しないが、ステータ装置4は交流電源装置に接続されており、交流電源装置からステータ装置4に電源を供給することで、ロータ5は、周知のPMモータの原理により外管体2の軸心C回りに回転する。
【0040】
回転力伝達手段であるインペラ6はロータ5と一体に回転するので、ロータ5の回転力がインペラ6を介して極低温液体に伝わって、極低温液体が外管体2の一方の開口側(吸込口)から他方の開口側(吐出口)へ流動する。このとき、交流電源装置からステータ装置4に流す交流電流の電流値や周波数はサイリスタ制御により容易に変更することができるので、これら電流値や周波数を変更することによりロータ5(極低温液体用ポンプ1)の回転数を自由に制御することができる。
【0041】
上述した構成を有する本実施形態の極低温液体用ポンプ1によれば、極低温液体を移送する原動力を発するモータ(特に、ステータ装置4)に超電導線を使用しているのでモータの電気抵抗がゼロとなり、モータはほとんど発熱しない。従って、本実施形態の極低温液体用ポンプ1は、従来のポンプに比べて、モータの冷却に費やされる極低温液体の量を大幅に減少させることができるので、ポンプ効率を大幅に向上させることができる。
【0042】
また、モータに使用する超電導線の超電導状態は、約100K(ケルビン)以下といった一定温度以下の状態で実現される現象であり、一般的にはモータを冷却するために専用の冷却システムが必要になる。しかし、本実施形態の極低温液体用ポンプ1では、モータに使用されている超電導線が、移送される極低温液体によって約100K(ケルビン)以下といった一定温度以下に冷却されるため、専用の冷却システムが不要になる。
【0043】
さらに、本実施形態の極低温液体用ポンプ1の構成ではモータの発熱がほとんどないので、モータの熱によっては極低温液体はほとんど気化しない。従って、従来のポンプでは気化してガス化した極低温液体を放出するための配管が必須となっていたが、本実施形態の極低温液体用ポンプ1では、ガス化した極低温液体を放出するための配管が不要となる。これによって極低温液体用ポンプ1の構造を簡素にすることができ、該ポンプの製作に要する部品点数を削減することができる。
【0044】
最後に、本実施形態の極低温液体用ポンプ1では、機械式のベアリングを用いずに超電導線のコイルで構成される磁気軸受7を用いてロータ5を支持しているので、ロータ5とステータ装置4が完全に非接触であり、且つ磨耗する部品を用いていない。従って、機械的な摩耗等による故障が少なく、定期的なメンテナンスをほぼ省略することができる。
「第1実施形態の変形例」
図3は、第1実施形態の変形例の極低温液体用ポンプ1について、断面構造を示したものである。
【0045】
上述した第1実施形態では
図2に示すように鉄ヨーク10が外管体2の内側に配備された例を挙げた。しかし、鉄ヨーク10は、
図3に示すように、外管体2の外側に配備されていても良い。
すなわち、この変形例の鉄ヨーク10は、外管体2の外径よりも径が大きな円環状の環状部10cを有している。この環状部10cは、鉄などのように内部に磁路を形成可能な金属で円環状に形成されており、外管体2の外周面から一定の距離をあけつつ外管体2の外周面に沿うように配備されている。この環状部10cと外管体2との間には、径方向に沿って両者を連結する連結部10dが形成されている。この連結部10dは、界磁コイル3の周方向の設置箇所に対応して、周方向に複数設けられている。なお、
図3の例では、界磁コイル3は周方向にほぼ等間隔をあけて6つ配備されているため、環状部10cと外管体2とは6箇所の連結部10dを介して連結するようになっている。
【0046】
上述した変形例に示すように、環状部10cと連結部10dとで形成された鉄ヨーク10を外管体2の外周側に配備すれば、鉄ヨーク10を界磁コイル3から引き離して配備することが可能となり、界磁コイル3の含浸樹脂による含浸作業が簡単になるメリットがある。つまり、鉄ヨーク10が界磁コイル3を貫通している
図2の例では、鉄ヨーク10が邪魔になって樹脂の含浸が十分に行われなくなる可能性があり、含浸作業が難しくなるが、界磁コイル3のみを含浸すればよい変形例では、含浸作業も極めて容易となる。
「第2実施形態」
次に、第2実施形態の極低温液体用ポンプ1について、
図4を用いて説明する。
【0047】
図4に示すように、第2実施形態の極低温液体用ポンプ1は、第1実施形態と同様に界磁コイル3と磁力発生体11とを備えたものであるが、これら両部材の取付方向が第1実施形態と異なっている。
すなわち、
図1や
図2に示す第1実施形態では、界磁コイル3は、この界磁コイル3の磁気軸(界磁コイル3のN極とS極とを結ぶ軸線、磁気ポール)が径方向を向くように外管体2の内周面に取り付けられており、また永久磁石からなる磁力発生体11も、この磁力発生体11の磁気軸が径方向を向くように取り付けられていた。言い換えれば、第1実施形態では、界磁コイル3は、当該界磁コイル3の磁気軸が外管体2の軸心と垂直となるように、外管体2の内周面に取り付けられており、磁気発生体11は、当該磁気発生体11の磁気軸が外管体2の軸心と垂直となるように、内管体5に取り付けられていた。
【0048】
これに対し、
図4に示す第2実施形態では、界磁コイル3は、当該界磁コイル3の磁気軸が外管体2の軸心と平行となるように、超電導線を外管体2の内周面に沿うように巻回して形成されており、また磁気発生体11は、当該磁気発生体11の磁気軸が外管体2の軸心と平行となるように、内管体5に取り付けられたものとなっている。
具体的には、第2実施形態の界磁コイル3は、外管体2の内周面に沿って周方向に超電導線を巻回して形成されており、巻回により形成された各界磁コイル3の断面形状は内周面から径内側にフランジ状に突出したような断面形状となっている。一方、第2実施形態の磁気発生体11は、内管体5の外周面から径外側に向かって起立状に取り付けられており、軸方向に一定の間隔をあけて複数配備されている。そして、軸方向に間隔をあけて隣接する磁気発生体11の間に、上述した界磁コイル3が挟み込まれるようにして、界磁コイル3と磁力発生体11とが配設されている。
【0049】
このような第2実施形態の極低温液体用ポンプ1では、界磁コイル3と磁気発生体11との間の距離を第1実施形態に比べて短くできるため、軸方向に隣接する界磁コイル3の磁場を有効に用いて強い駆動力を発生することができ、ポンプの効率も良くなる。
なお、今回開示された各実施形態は、すべての点で例示であって制限的なものではないと考えられるべきである。特に、今回開示された各実施形態において、明示的に開示されていない事項、例えば、運転条件や操業条件、各種パラメータ、構成物の寸法、重量、体積などは、当業者が通常実施する範囲を逸脱するものではなく、通常の当業者であれば、容易に想定することが可能な値を採用している。
【0050】
例えば、ロータ(内管体)5に設ける磁力発生体11として、永久磁石に代えて酸化物超電導体を用いてもよい。周知の通り、酸化物超電導体には、磁束線を捕捉する強いピン止め効果を持つという特徴がある。この特徴によって、酸化物超電導体は、磁力発生体11としてロータ(内管体)に設けられたときに永久磁石と同様の機能を発揮するので、酸化物超電導体が設けられたロータ5も、永久磁石が設けられたロータ5と同様の原理で回転する。
【0051】
また、界磁コイル3の形状及び寸法は、ロータ5の形状や寸法に応じて任意に選択され得る。
さらに、上述の実施形態では、外管体2に形成された内径拡張部9にステータ装置4を設けたが、内径拡張部9が設けられていない一様な内径を有する外管体2の管内にステータ装置4及びロータ5を設けても良い。その場合、ステータ装置4が設けられた部分だけ外管体2の内径が小さくなるが、内径拡張部9が無いので一様な外径を有する外管体2を実現することができる。このような、一様な外径の外管体2を有する極低温液体用ポンプ1であれば、極低温液体を移送する配管に接続する際に、該接続箇所の周辺の配管との干渉を回避することができ、設置の自由度の高い極低温液体用ポンプ1を得ることができる。