【実施例1】
【0017】
<原子力発電プラント>
本発明による実施例に係る過マンガン酸の調製装置により得られる過マンガン酸を用いる廃液処理システムを、原子力発電プラントに適用した場合について、図面を参照して説明する。原子力発電プラントの原子炉は、軽水を原子炉冷却材及び中性子減速材として使用し、一次系全体にわたって沸騰しない高温高圧水とし、この高温高圧水を蒸気発生器に送って二次冷却材と熱交換させることにより蒸気を発生させ、この蒸気をタービン発電機へ送って発電する加圧水型原子炉(PWR:Pressurized Water Reactor)である。なお、本実施例は、PWRに限らず、これを改良した改良型加圧水型原子炉(APWR:Advanced Pressurized Water Reactor)または沸騰水型原子炉(BWR:Boiling Water Reactor)に適用することができる。また、放射線取扱い施設にも適用可能である。
【0018】
図1は、本発明の実施例に係る過マンガン酸の調製装置により得られる過マンガン酸を用いる廃液処理が適用される原子力発電プラントの一例を模式的に表した概略構成図である。
図1に示すように、原子力発電プラント100は、原子炉111を含む原子炉冷却系(以下、一次系ともいう)112と、原子炉冷却系112と熱交換するタービン系(以下、二次系ともいう)113とを有する。原子炉冷却系112には、原子炉冷却材(一次冷却水)が流通し、タービン系113には、二次冷却材(二次冷却水)が流通している。
【0019】
原子炉冷却系(一次系)112は、原子炉111と、コールドレグ115a及びホットレグ115bを介して原子炉111に接続された蒸気発生器116とを有している。また、ホットレグ115bには、加圧器117が介設され、コールドレグ115aには、原子炉冷却材ポンプ118が介設されている。そして、原子炉111、コールドレグ115a、ホットレグ115b、蒸気発生器116、加圧器117及び原子炉冷却材ポンプ118は、原子炉格納容器119に収容されている。
【0020】
原子炉111は、上記したように加圧水型原子炉であり、その内部は原子炉冷却材(一次冷却水)で満たされている。そして、原子炉111内は、多数の燃料集合体121を収容すると共に、燃料集合体121の燃料棒内の核燃料の核分裂を制御する多数の制御棒122が、各燃料集合体121に対し挿入可能に設けられている。
【0021】
制御棒122により核分裂反応を制御しながら燃料集合体121の燃料棒内の核燃料を核分裂させると、この核分裂により熱エネルギーが発生する。発生した熱エネルギーは原子炉冷却材を加熱し、加熱された原子炉冷却材は、ホットレグ115bを介して蒸気発生器116へ送られる。一方、コールドレグ115aを介して各蒸気発生器116から送られてきた原子炉冷却材は、原子炉111内に流入して、原子炉111内を冷却する。
【0022】
ホットレグ115bに介設された加圧器117は、高温となった原子炉冷却材を加圧することにより、原子炉冷却材の沸騰を抑制している。また、蒸気発生器116は、高温高圧となった原子炉冷却材(一次冷却水)を二次冷却材(二次冷却水)と熱交換させることにより、二次冷却材を蒸発させて蒸気を発生させ、かつ、高温高圧となった原子炉冷却材を冷却している。原子炉冷却材ポンプ118は、原子炉冷却系112において原子炉冷却材を循環させており、原子炉冷却材を蒸気発生器116からコールドレグ115aを介して原子炉111へ送り込むと共に、原子炉冷却材を原子炉111からホットレグ115bを介して蒸気発生器116へ送り込んでいる。
【0023】
原子炉冷却材は、原子炉111と蒸気発生器116との間を循環している。なお、原子炉冷却材は、冷却材及び中性子減速材として用いられる軽水である。
【0024】
タービン系(二次系)113は、蒸気管124を介して各蒸気発生器116に接続されたタービン125と、タービン125に接続された復水器126と、復水器126と各蒸気発生器116とを接続する給水管127に介設された給水ポンプ128と、を有している。そして、上記のタービン125には、発電機129が接続されている。
【0025】
この原子力発電プラント100のタービン系113における一連の動作について説明する。蒸気管124を介して蒸気発生器116から蒸気がタービン125に流入すると、タービン125は回転する。タービン125が回転すると、タービン125に接続された発電機129は、発電を行う。この後、タービン125から排出した蒸気は復水器126に流入する。復水器126は、その内部に冷却管130が配設されており、冷却管130の一方には冷却水(例えば、海水)を供給するための取水管131が接続され、冷却管130の他方には冷却水を排水するための排水管132が接続されている。そして、復水器126は、タービン125から流入した蒸気を冷却管130により冷却することで、蒸気を液体に戻している。液体となった二次冷却材は、給水ポンプ128により給水管127を介して蒸気発生器116に送られる。蒸気発生器116に送られた二次冷却材は、蒸気発生器116において原子炉冷却材と熱交換を行うことにより再び蒸気となる。
【0026】
このような原子力発電プラント100においては、原子炉機器や各種配管など原子炉設備を構成する部材は一般にステンレス鋼や炭素鋼などの鉄鋼材料で製作されている。これら原子炉設備を構成する部材は使用した際に原子炉機器や各種配管など原子炉設備を構成する部材内の表面は高温水(一次冷却水)との接触によって腐食作用を受け、酸化物の皮膜が形成される。皮膜は、放射性同位体(RI)、クロム(Cr)、鉄(Fe)、ニッケル(Ni)などの少なくとも1種類の金属又は酸化物などである。
【0027】
高温水(一次冷却水)に晒される原子炉機器や配管内表面の接液部位に形成される皮膜に炉水中の放射能が取り込まれ、被ばく線源となっている。このような原子炉機器や各種配管など原子炉設備の除染対象物は、本発明の実施例に係る過マンガン酸の調製装置により得られる過マンガン酸を除染処理薬剤として、除染される。なお、除染とは、原子炉設備の除染対象系統の配管や機器などの除染対象物に付着した放射性物質を除去することをいう。
なお、以下の実施例でも同様の除染対象物であるので、これらの説明は省略する。
【0028】
次に、
図2を参照しながら、本実施例に係る過マンガン酸の調製装置について説明する。
図2は、実施例1に係る過マンガン酸の調製装置の概略図である。
図2に示すように、本実施例に係る過マンガン酸の調製装置11Aは、過マンガン酸塩である例えば過マンガン酸バリウムと硫酸とを反応させ、過マンガン酸を調製する過マンガン酸反応槽12と、過マンガン酸を保管する過マンガン酸保管タンク13と、過マンガン酸反応槽12から前記過マンガン酸保管タンク13に過マンガン酸を導入する過マンガン酸送給ライン14と、過マンガン酸送給ライン14に設けられ、反応により得られた硫酸バリウムの沈殿物を除去する沈殿物捕集部15と、を備えるものである。
図2中、符号12aは、過マンガン酸反応槽12の攪拌部である。
なお、本実施例では、過マンガン塩として過マンガン酸バリウムを用いているが、過マンガン酸を製造するに際し、硫酸と反応して副生成物を沈殿として除くものであれば、これに限定されるものではない。
【0029】
本実施例では、過マンガン酸バリウム(Ba(MnO
4)
2)を水に溶かし、硫酸(H
2SO
4)を加え、過マンガン酸反応槽12において、過マンガン酸(HMnO
4)を以下の反応式(1)により調製する。なお、本実施例では、過マンガン酸バリウム(Ba(MnO
4)
2)を用いているが、以下の反応式(2)のように、過マンガン酸カルシウム(Ca(MnO
4)
2)を用いて同様に調整して、過マンガン酸を得るようにしてもよい。
【0030】
Ba(MnO
4)
2+H
2SO
4 → 2HMnO
4 +BaSO
4↓・・・(1)
Ca(MnO
4)
2+H
2SO
4 → 2HMnO
4 +CaSO
4↓・・・(2)
【0031】
ここで、反応式(1)の副生成物である硫酸バリウム(BaSO
4)は、沈殿となるため、過マンガン酸を送給する過マンガン酸送給ライン14に設けられた沈殿物捕集部15により除去する。
沈殿物捕集部15は、例えばフィルタ等の沈殿物を捕集する方法や、沈降槽による清澄方法、遠心分離方法等を挙げることができるが、これらに限定されるものではない。
【0032】
過マンガン酸の調製装置としては、過マンガン酸反応槽12のタンクと、沈殿物捕集部15のフィルタとを準備するだけで良いので、除染処理の現場において、調製が可能となり、非常に汎用性が高く、大規模の過マンガン酸の調製が可能となる。
【0033】
過マンガン酸は分解しやすいため、使用の直前に調製を行う必要がある。従来のイオン交換樹脂を用いてカリウムを分離する過マンガン酸の調製方法では、1バッチ毎調製していたため日数を要することから、工程上の制約が大きかった。
【0034】
これに対し、本実施例では、一度の調製が可能であり、工数低減が可能であるため、大量の過マンガン酸の製造の低廉化を図ることができる。
【0035】
また、本実施例では、製造原料の過マンガン酸バリウムは固体としての保管が可能であることから、保管庫に固体の過マンガン酸バリウムを準備し、過マンガン酸が必要なときに、その必要量を調製することが可能である。
【0036】
このように、簡易な過マンガン酸反応槽12を準備し、過マンガン酸バリウム(Ba(MnO
4)
2)と硫酸とからで過マンガン酸を調製でき、沈殿物である硫酸バリウムの沈殿物を沈殿物捕集部15で除去できるので、1度に大量に過マンガン酸を調製することが可能となる。
【実施例2】
【0037】
次に、本発明の実施例2に係る過マンガン酸の調製装置について、
図3を参照して説明する。
図3は、実施例2に係る過マンガン酸の調製装置の概略図である。なお、実施例1と同様の部材については、同一符号を付してその説明は省略する。
図3に示すように、本実施例に係る過マンガン酸の調製装置11Bは、過マンガン酸反応槽12において、調製した過マンガン酸中の、バリウム(Ba)や硫酸イオン(SO
42-)等の不純物の濃度を分析する分析部16を設けている。
【0038】
そして、反応中において、分析部16により、過マンガン酸中の、バリウム(Ba)や硫酸イオン(SO
42-)等の不純物の濃度を分析し、この分析の結果、バリウム(Ba)や硫酸イオン(SO
42-)のどちらかが過剰な場合は、過マンガン酸バリウム(Ba(MnO
4)
2)又は硫酸(H
2SO
4)を投入し、BaSO
4沈殿として、沈殿物捕集部15において、沈殿物を除去し、過マンガン酸の純度を高めるようにしている。
【実施例3】
【0039】
次に、本発明の実施例3に係る過マンガン酸の調製装置について、
図4を参照して説明する。
図4は、実施例3に係る過マンガン酸の調製装置の概略図である。なお、実施例1及び2と同様の部材については、同一符号を付してその説明は省略する。
図4に示すように、本実施例に係る過マンガン酸の調製装置11Cは、過マンガン酸反応槽12において、過マンガン酸を送給する過マンガン酸送給ライン14が、沈殿物捕集部15の後流側において、その過マンガン酸送給ライン14の他端が除染系統30に直接接続されるようにしている。
【0040】
これにより、過マンガン酸送給ライン14に介装された薬注ポンプPにより、化学除染を実施する除染系統30内へ直接過マンガン酸を注入することが可能である。
本実施例では、調製直後に除染系統30内に、そのまま過マンガン酸を注入することが可能であることから、過マンガン酸が分解せず、高効率に薬品の使用が可能である。
【0041】
また、実施例2のように、過マンガン酸の調製に際して、分析部16で調製するようにし、調製した過マンガン酸を直接除染系統30に注入することにより、不純物が低下した純度の高い過マンガン酸で除染処理することが可能となる。
【実施例4】
【0042】
次に、本発明の実施例4に係る過マンガン酸の調製装置について、
図5を参照して説明する。
図5は、実施例4に係る過マンガン酸の調製装置の概略図である。なお、実施例1及び2と同様の部材については、同一符号を付してその説明は省略する。
図5に示すように、本実施例に係る過マンガン酸の調製装置11Dは、過マンガン酸塩である過マンガン酸カリウム(KMnO
4)と水酸化バリウム(Ba(OH)
2)とからマンガン酸バリウム(BaMnO
4)を調製するマンガン酸バリウム反応槽21と、マンガン酸バリウム反応槽21で得られたマンガン酸バリウム(BaMnO
4)を保管するマンガン酸バリウム保管タンク22と、マンガン酸バリウム保管タンク22から供給されるマンガン酸バリウム(BaMnO
4)と硫酸(H
2SO
4)とを反応させ、過マンガン酸(HMnO
4)を調製する過マンガン酸反応槽23と、過マンガン酸を保管する過マンガン酸保管タンク24と、前記過マンガン酸反応槽23から前記過マンガン酸保管タンク24に過マンガン酸を導入する過マンガン酸送給ライン25と、過マンガン酸送給ライン25に設けられ、反応により得られた硫酸バリウムの沈殿物を除去する沈殿物捕集部26と、を備えている。
図5中、符号21a、23aは、攪拌部である。
なお、本実施例では、過マンガン塩として過マンガン酸カリウムを用いているが、水酸化バリウムと反応してマンガン酸バリウムを製造するものであれば、これに限定されるものではない。
【0043】
本実施例では、実施例1とは異なる別の経路で過マンガン酸の調製を行うようにしている。
【0044】
先ず、第1工程として、過マンガン酸カリウム(KMnO
4)から、反応式(2)によりマンガン酸バリウム(BaMnO
4)を製造する。
次に、第2工程として、得られたマンガン酸バリウム(BaMnO
4)と硫酸(H
2SO
4)から、反応式(3)により過マンガン酸(HMnO
4)を得る。
KMnO
4 + Ba
2+ → BaMnO
4・・・(2)
BaMnO
4 + H
2SO
4 →HMnO
4 + BaSO
4 + MnO
2・・・(3)
【0045】
上述した反応により、過マンガン酸を得ると共に、実施例1と同様に硫酸バリウムの沈殿を沈殿物捕集部26で除去することで、過マンガン酸の調製が可能となる。
【0046】
原料として、安価な水酸化バリウム(Ba(OH)
2)、過マンガン酸カリウム(KMnO
4)より調製することが可能であるので、過マンガン酸を安価に製造することができる。
【0047】
第1工程の中間体のマンガン酸バリウム(BaMnO
4)までの調製を実施し、マンガン酸バリウム(BaMnO
4)を固体として保管する。
そして、第2工程により、除染処理の使用直前に過マンガン酸に変換することで、過マンガン酸の分解を抑制し、高効率に過マンガン酸を調製することが可能となる。
【0048】
また、実施例2と同様に、分析部27で分析して過マンガン酸の純度を向上するようにしてもよい。
【0049】
また、実施例3と同じく、沈殿物捕集部26により沈殿物を除去した除去液を除染系統に直接注入することで、分解せずに過マンガン酸を合成し、供給することが可能である。