(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
静電気を帯びた指などがカバーパネルの表面に接近すると、指などとカバーパネルとの間に電位差が形成されるが、この電位差が低圧のときは、カバーパネルの表面に帯電が発生する程度である。しかし、静電気による電位差が例えば8kV以上の高圧になると、指などからカバーパネルに向けて放電現象が発生し、この放電は、カバーパネルの表面に留まることなく、カバーパネルの表面を伝わる沿面放電となりやすい。この沿面放電が、高いエネルギーを保ったままカバーパネルの下側まで移動すると、引出配線パターンや検出電極パターンに短時間で大電流が流れるようになり、引出配線パターンや検出電極パターンが焼損する問題が生じる。
【0006】
特に、引出配線パターンや検出電極パターンが導電性ナノワイヤーで形成されていると、導電性ナノワイヤーは低抵抗であるが電流容量が小さいために、大電流によって焼損を生じやすい。
【0007】
特許文献1に記載されたタッチパネルは、カバーパネルの下側にシールドパターンが対向しているが、カバーパネルとシールドパターンとの間の比較的広い領域に空気層が設けられているため、シールドパターンによって沿面放電を効率よく遮蔽するのは困難である。
【0008】
また、シールドパターンは透明粘着層の外周にあって透明電極層と重ならないように形成されているため、低温環境下などにおいて、主に樹脂からなる透明粘着層が収縮すると、透明粘着層とシールドパターンとの間、ならびに透明粘着層とカバーパネルとの間に隙間が形成されやすくなる。沿面放電による電流が前記隙間に入り込むと、引出配線パターンや検出電極パターンに過大な電流が流れ、パターンの焼損が生じやすくなる。特に、冬の季節や寒冷地では空気が乾燥して静電気が発生しやすくなるため、この問題が顕著である。
【0009】
本発明は上記従来の課題を解決するものであり、沿面放電が発生したときに、この放電が検出電極層や配線層に至るのを抑制でき、ESD耐性の向上を図ったタッチパネルを提供することを目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明は、複数の検出電極層
およびそれぞれの前記検出電極層に接続された複数の配線層が形成された基板と、前記基板の前方に位置する操作パネルと、前記基板と前記操作パネルとの間に形成された接着剤層とを有するタッチパネルにおいて、
前記基板に、前記配線層を覆う絶縁層が形成され、前記絶縁層の上に、前記配線層を互いに導通させるジャンパー層と、前記ジャンパー層と同一の材料で且つ同一の製造工程で形成された導電層とが、設けられており、
前記導電層
は、前記接着剤層で覆われているとともに、その一部が前記接着剤層の側縁部から突出していることを特徴とするものである。
【0011】
本発明のタッチパネルによれば、基板と操作パネルとを接合している接着剤層に覆われた導電層が、接着剤層の側縁部から突出しているため、操作パネルの表面を伝わる放電が前記導電層に逃げやすくなり、検出電極層や配線層に短時間に大電流が流れるのを阻止できるようになる。導電層はその一部が接着剤層の内部に入り込んでいるため、低温環境下などで接着剤層が収縮して、基板と接着剤層と間や、操作パネルと接着剤層との間に隙間が形成され、操作パネルの表面を伝達した放電が前記隙間内に入り込もうとしても、この放電が、接着剤層内に入り込んでいる導電層に引き込まれるようになって、放電が検出電極層や配線層に伝達されにくくなる。
【0012】
本発明のタッチパネルでは、前記
接着剤層の側縁部から突出している前記導電層の一部が、前記操作パネルの側端面の直下まで延びているか、または前記側端面の直下よりも側方へ延び出ていることが好ましい。
【0014】
上記構造のタッチパネルでは、前記導電体を形成するための独立した製造工程が不要であり、製造工程の簡素化が図れる。
【0015】
本発明のタッチパネルは、前記基板にアース配線層が設けられており、前記導電層が前記アース配線層と導通しているものが好ましい。
【0017】
本発明は、前記検出電極層は、導電性ナノワイヤー材料で形成されているものに有効である。
【発明の効果】
【0018】
本発明のタッチパネルは、接着剤層で覆われている導電層の一部が接着剤層の側縁部から突出しているため、操作パネルの表面を伝わった放電が導電層に逃げやすくなる。また、導電層は接着剤層に入り込んでいるため、放電が基板と接着剤層の隙間などに入る前に導電層に伝達されやすくなり、検出電極層や配線層に大電流が発生するのを防止しやすくなる。
【発明を実施するための形態】
【0020】
本発明のタッチパネルは、光透過型であって携帯電話やその他の携帯用情報端末、家電製品、車載用電子機器などに使用される。なお、本発明のタッチパネルは、光透過型に限られず、光非透過型として構成することもできる。
【0021】
図1と
図2には、本発明の実施の形態として光透過型のタッチパネル1を示している。
このタッチパネル1には、透明基板10が設けられている。透明基板10は、検出電極層および配線層を形成するのに適した強度と耐熱性を有する合成樹脂であるPET(ポリエチレンテレフタレート)で形成される。またはCOP(環状ポリオレフィン)なども使用可能である。
【0022】
図1に示すように、透明基板10は検出基板部11と配線基板部12とに区分される。検出基板部11は長方形状であり、配線基板部12は前記検出基板部11よりも幅寸法が小さく、検出基板部11の前縁11aから一体に延び出ている。
【0023】
検出基板部11の表面に、透明導電材料からなる複数の第1の検出電極層21と第2の検出電極層31が形成されている。
図5に示すように、検出基板部11の表面には、それぞれの第1の検出電極層21から延び出ている第1の配線層22a,22b,22c,・・・、およびそれぞれの第2の検出電極層31から延び出ている第2の配線層32,32,・・・が形成されている。
【0024】
複数本設けられている第1の配線層22a,22b,22cの一部のものは、検出基板部11の表面から配線基板部12の表面まで連続して延び出ており、第2の配線層32,32,・・・も検出基板部11の表面から配線基板部12の表面まで連続して延び出ている。
【0025】
第1の検出電極層21と第2の検出電極層31は、導電性ナノワイヤーで形成されており、導電性ナノワイヤーはバインダーによって透明基板10の表面に定着されている。導電性ナノワイヤーは、銀ナノワイヤーなどの金属ナノワイヤーやカーボンナノチューブなどである。第1の配線層22a,22b,22cと第2の配線層32,32,・・・も、導電性ナノワイヤーで形成されている。
【0026】
なお、本発明では、第1の検出電極層21と第2の検出電極層31がITO(Indium Tin Oxide)で形成されていてもよく、第1の配線層22a,22b,22cと第2の配線層32,32,・・・が、ITOと金属層との積層体で形成されていてもよい。または、第1の配線層22a,22b,22cと第2の配線層32,32,・・・が、銀ペーストなどで形成されていてもよい。
【0027】
図1に示すように、検出基板部11では、第1の検出電極層21と第2の検出電極層31が形成されている領域を囲むようにガードアース層35が形成されている。ガードアース層35は、検出基板部11の各辺のすぐ内側において各辺に平行に形成されている。ガードアース層35は銅や銀などで形成されており、好ましくは銀ペーストで形成されている。
【0028】
図1に示すように、ガードアース層35の両端部にはアース配線層36,36が連続して形成されており、アース配線層36,36は、配線基板部12の表面に延び出ている。アース配線層36,36は、ガードアース層35と同じ導電材料で形成されている。
【0029】
図2に示すように、透明基板10の表面に絶縁層15が形成されている。検出基板部11では、第1の検出電極層21と第2の検出電極層31が絶縁層15で覆われている。また、検出基板部11と配線基板部12では、第1の配線層22a,22b,22c,・・・と第2の配線層32およびアース配線層36,36が絶縁層15で覆われている。絶縁層15は有機絶縁材料で形成されている。
【0030】
図4に示すように、少なくともパネル後端部では、ガードアース層35が絶縁層15で覆われておらず、パネル後端部ではガードアース層35の一部が、放電を受けるための後方導電層35aとして機能できるようになっている。なお、パネル後端部以外では、ガードアース層35が絶縁層15で覆われていてもよい。
【0031】
図1に示すように、検出基板部11では、絶縁層15の上にジャンパー配線領域40が設けられている。
図5と
図6にはジャンパー配線領域40の配線構造が模式的に示されている。
【0032】
第1の検出電極層21は、X1、X2、X3,・・・X6の各行に沿って一定間隔で配置されている。さらに、第1の検出電極層21は列方向(Y方向)に沿って複数列(実施の形態では4列)に配列している。
【0033】
X1行に位置する複数の第1の検出電極層21,21,・・・からは第1の配線層22a,22a,・・・が延び出ており、X2行に位置する複数の第1の検出電極層21,21,・・・からは第1の配線層22b,22b,・・・が延び出ており、X3行に位置する複数の第1の検出電極層21,21,・・・からは第1の配線層22c,22c,・・・が延び出ている。
【0034】
透明基板10の表面には、X1、X2、X3、X4行、X5行、X6行の各行に位置する複数の第1の検出電極層21から延びる第1の配線層22a,22b,22c,・・・が形成されている。ただし、
図5では、図面での表現を簡潔化するために、X4行、X5行、X6行のそれぞれの第1の検出電極層21から延び出る第1の配線層の図示を省略している。
図1では、第1の検出電極層21が、Y方向に沿って4列に配列しているが、
図5では、3列の第1の検出電極層21から延び出ている第1の配線層22a,22b,22cのみを示し、他の1列の第1の検出電極層21から延び出ている第1の配線層の図示を省略している。さらに、
図5では、2個の第2の検出電極層31から延び出る第2の配線層32のみを示し、他の2個の第2の検出電極層31から延び出る第2の配線層の図示は省略している。
【0035】
図6に示すように、ジャンパー配線領域40では、絶縁層15の上にジャンパー配線層41が形成されている。ジャンパー配線層41は銀ペーストなどを用い印刷工程で形成されている。絶縁層15にスルーホール15aが形成されており、スルーホール15aにジャンパー配線層41の一部が充填されて、X1行に位置する全ての第1の配線層22a,22a,・・・がジャンパー配線層41を介して導通させられて、X1行に位置する全ての第1の配線層22a,22a,・・・が1本の第1の配線層に集約されている。
【0036】
同様にして、ジャンパー配線層42によって、X2行に位置する全ての第1の配線層22b,22b・・・が1本の第1の配線層に集約され、ジャンパー配線層43によって、X3行に位置する全ての第1の配線層22c,22c・・・が1本の第1の配線層に集約されている。ジャンパー配線領域40にはさらに他のジャンパー配線層が形成されており、X4,X5,X6の各行に位置する第1の配線層が行毎に1本に集約されている。
【0037】
図1に示すように、透明基板10の検出基板部11と配線基板部12との境界部に、放電を受けるための前方導電層45が形成されている。前方導電層45は絶縁層15の表面において、前記ジャンパー配線層41,42,43,・・・と同じ材料で同じ製造工程で形成される。例えば、前方導電層45は銀ペーストを用いて印刷工程で形成される。前方導電層45はジャンパー配線層41,42,43,・・・と同じ材料で同じ製造工程で形成されるため、前方導電層45を形成するための特別の工程は不要である。
【0038】
図7の断面図に示すように、前方導電層45は、絶縁層15に形成されたスルーホール15b,15bを介して、透明基板10の表面に形成されたアース配線層36,36と導通している。
【0039】
図2に示すように、透明基板10の前方(
図2の上方)に操作パネル3が配置されており、絶縁層15と操作パネル3とが高透明性接着剤(OCA)などの透明接着剤層5を介して接着固定されている。操作パネル3は、透光性のアクリル系などの合成樹脂材料であり、例えばPMMA(ポリメタクリル酸メチル)で形成されている。またはガラス板で形成されている。
【0040】
図2に示すように、操作パネル3の下面に、加飾層4が形成されている。加飾層4は、操作パネル3に印刷されて形成されており、またはフィルムが貼り合わされて形成されている。加飾層4は光非透過性であり、その下の構造が操作パネル3の前方から見えないようになっている。加飾層4は枠形状であり、その内縁部4aで囲まれた領域は、光透過性であり、表示・操作領域6となっている。
図1では、加飾層4の内縁部4aが破線で示されている。
【0041】
操作パネル3は、
図2と
図3に示す前方の側端面3aおよび
図2と
図4に示す後方の側端面3bを有している。透明接着剤層5は、
図2と
図3に示す前方の側縁部5aおよび
図2と
図4に示す後方の側縁部5bを有している。
【0042】
図3に示すように、透明接着剤層5の前方の側縁部5aは、操作パネル3の側端面3aよりも内方へ後退して位置している。
図4に示すように、透明接着剤層5の後方の側縁部5bは、操作パネル3の側端面3bよりも内方へ後退している。ただし、透明接着剤層5の側縁部5a,5bが、操作パネル3の側端面3a,3bと一致する位置に形成されていてもよい。
【0043】
図3に示すように、前方導電層45は、透明接着剤層5で覆われているが、その一部は透明接着剤層5の側縁部5aよりも前方へ露出している。また、側縁部5aから露出している前方導電層45の一部は、操作パネル3の前方の側端面3aの直下よりもさらに前方へ突出している。
【0044】
図4に示すように、ガードアース層35の一部分である後方導電層35aは、透明接着剤層5で覆われているが、その一部は透明接着剤層5の側縁部5bよりも後方へ露出している。また、側縁部5bから露出している後方導電層35aの先端部は、操作パネル3の後方の側端面3bの直下に位置している。すなわち、後方導電層35aの先端部と側端面3bは、パネルの厚さ方向において一致している。
【0045】
このように、接地電位とされている導電層45,35aは、透明接着剤層5に覆われているとともにその一部が透明接着剤層5から突出して、操作パネル3の側端面3a,3bの直下まで延びているか、直下よりもさらに外側へ延び出ていることが好ましい。また、透明接着剤層5の側縁部5a,5bは、操作パネル3の側端面3a,3bと同一面上に位置しているか、またはそれよりも内方へ後退した位置に形成されていることが好ましい。
【0046】
次に、前記構造のタッチパネル1の動作について説明する。
このタッチパネル1は、相互容量検出方式で駆動される。第1の検出電極層21と第2の検出電極層31のいずれか一方が駆動電極として使用され、他方が検出電極として使用される。例えば、第1の検出電極層21に対してX1,X2,X3,・・・行ごとに順番に矩形波の電圧が一定周期で印加され、第2の検出電極層31が検出電極として使用され、Y1,Y2,Y3,・・・の順に検出回路に接続される。あるいは、第2の検出電極層31に対してY1,Y2,Y3,・・・の順番で矩形波の電圧が一定周期で印加され、第1の検出電極層21がX1,X2,X3,・・・行の順番で検出回路に接続される。
【0047】
駆動電極である第1の検出電極層21または第2の検出電極層31に電圧が印加されると、矩形波の立ち上がりと立下りのタイミングで、検出電極である第1の検出電極層21または第2の検出電極層31に電流が流れる。このときの電流量は、各検出電極層間の静電容量によって決められる。指や手が操作パネル3の前方に接近すると、指または手と検出電極層との間に大きな静電容量が形成されるため、駆動電極に電圧を印加したときに検出電極に流れる電流が変化する。どの駆動電極に電圧を印加しているかの情報と、検出された電流量とから、操作パネル3のどの部分に指または手が接近しているのかを制御部で判別することができる。
【0048】
なお、このタッチパッド1は自己容量検出方式で駆動することもできる。自己容量検出方式では、第1の検出電極層21と第2の検出電極層31のそれぞれの1つの電極が、駆動電極と検知電極の双方の動作を行う。
【0049】
前記操作パネル3の表面に帯電した指などが接近すると、指などと操作パネル3との間に放電Aが発生する。指などと操作パネル3との電位差が大きく例えば8kV程度になると、操作パネル3に与えられた放電が、矢印Bで示す沿面放電となって操作パネル3の表面に沿って移動する。
【0050】
図3に示すタッチパネル1の前方においては、沿面放電Bが、操作パネル3の表面を経て、側端面3aと透明接着剤層5の側縁部5aの表面に沿って進行し、前方導電層45を介してアース部へ逃がされる。前方導電層45は前記側端面3aよりも前方へ突出しているため、放電が前方導電層45に伝達されやすくなる。放電が前方導電層45に効果的に伝達されるためには、前記側端面3aと前記側縁部5aとがほぼ同一面に位置し、操作パネル3と前方導電層45との間に大きな空間が介在していないことが好ましい。
【0051】
また、前方導電層45はその一部が透明接着剤層5に覆われているため、絶縁層15と透明接着剤層5との間に隙間が形成されていたとしても、放電が透明接着剤層5の内部に入り込むことがなく、前方導電層45に移行しやすくなる。さらに、透明接着剤層5と操作パネル3との間に放電が入り込もうとしても、透明接着剤層5の内部の下方に前方導電層45が対向しているため、放電は、透明接着剤層5の側縁部5aを伝わって前方導電層45に移行しやすくなる。
【0052】
図4に示すタッチパネル1の後端部では、ガードアース層35の一部である後方導電層35aが、操作パネル3の後方の側端面3bの直下まで延びているため、放電が後方導電層35aに逃げやすくなる。後方導電層35aの先端部が側端面3bの直下に位置しているときには、透明接着剤層5の側縁部5bが操作パネルの側端面3bよりも内方へやや後退していることが好ましい。この構成により、後方導電層35aを透明接着剤層5の側縁部5bから露出させることができ、放電を後方導電層35aに逃がしやすくなる。
【0053】
本発明では、検出電極層や配線層が導電性ナノワイヤーで形成されている場合に特に有効である。導電性ナノワイヤーは低抵抗であるが、電流容量が小さいため、放電による大電流で焼損を生じやすいが、前記実施の形態では、放電を前方導電層45や後方導電層35aに逃がしやすいので、前記焼損が生じにくくなる。
【0054】
なお、前記実施の形態では、前方導電層45と後方導電層35aが銀ペースト(銀インク)で形成されているが、これら導電層は、銅、カーボンインクなどで形成されていてもよい。また銀ペーストなどで形成する場合には、腐食を防止するために、表面にカーボンインクなどの不活性インクをコーティングしてもよい。