(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【背景技術】
【0002】
従来より、伸線加工や圧造加工などの冷間加工が円滑に行われるように、熱間加工された鋼線材に対してはリン酸塩被膜処理が行われる。このリン酸塩被膜処理は、鋼線材をリン酸塩の溶液が貯留された被覆液槽に浸漬させて線材表面に被膜を形成するものであり、一般にはコイル状態のままバッチ方式で線材を処理するものとなっている。つまり、リン酸塩被膜処理を行う鋼線材は、コイル状態に巻き取られたまま、まず酸洗槽に浸漬され、酸洗槽での酸洗浄においてリン酸塩被膜の形成に邪魔となるスケールが除去(デスケーリング)される。その後、デスケーリングされた鋼線材のコイルは被覆液槽に浸漬させられ、この被覆液槽でリン酸塩被膜処理が行われる。
【0003】
このようなバッチ方式の処理は、大量生産が可能で処理コストも低廉であるという長所を有する反面、大量の排液を廃液処理しなくてはならなくなったり、線材と線材が接触している部分には酸洗液や被膜液が入り込まず酸洗や被膜の処理ムラが発生するといった問題を有している。上記の問題点を解決する方法として、ストランド状態にした鋼線材を連続的に、デスケーリング工程、被膜処理工程、冷間加工などを行うインライン方式が検討されている。
【0004】
このインライン方式は、コイルから巻き出された鋼線材に対して、ショットブラストなどを用いた物理的なデスケーリングをまず行い、その後に被覆液槽内に通過させ被膜を形成するものであり、バッチ方式で問題となる処理ムラなどを効果的に抑制することができる。しかし、リン酸塩被膜は、化成反応により形成されるために処理時間が長く、線速を高めて生産能力を高めるには、大きな設備スペースが必要となるといった問題がある。
【0005】
このようなインライン方式の処理の問題を解決するために、特許文献1〜特許文献3に示すような技術が開発されている。
例えば、特許文献1には、線材に鉄・亜鉛粒によるブラストを行い、線材の表面に鉄・亜鉛合金層を形成させ、その後にリン酸塩被膜を形成させることで、鋼線材の通線速度を向上させることを可能とする技術が開示されている。
【0006】
また、特許文献2には、粒径が5μm以下とされたMnのリン酸塩粒子を少なくとも0.001〜30g/Lの濃度で含み、アルカリ金属塩もしくはアンモニウム塩またはこれらの混合物を含有し、pHが4〜13に調整された表面調整用前処理液を用いて、リン酸塩被膜処理前に前処理を行うことで、リン酸塩被膜の結晶微細化を可能とする技術が開示されている。
【0007】
さらに、特許文献3には、ブラスト処理や表面調整剤の代わりに、超高圧のウォータージェットで砥粒を水と一緒に線材に投射し、好適な鋼線材表面形状を形成し、短時間にリン酸塩被膜を形成させる鋼材の表面処理方法が提案されている。
【発明を実施するための形態】
【0015】
以下、本発明の連続表面処理方法の実施形態を、図面に基づき詳しく説明する。
図1に示すように、本発明の連続表面処理方法は、鋼線材(条鋼線材)に対して伸線などの冷間加工を行う製造ライン1(伸線ラインや圧造ライン)で行われるものである。具体的には、本実施形態の連続表面処理方法では、伸線加工の際にダイスと鋼線材との間に潤滑を確保できるように潤滑剤の下地としてリン酸塩被膜が形成され、潤滑性を高めるために上記リン酸塩被膜の上に金属石けんなどを含む潤滑剤が被覆される。
【0016】
より詳しく説明すれば、
図1に示すように、本実施形態の連続表面処理方法は、(1)巻出し、(2)矯正、(3)デスケーリング、(4)予熱(線材予熱)、(5)被膜処理、(6)潤滑処理、(7)乾燥、(8)伸線、(9)巻取りから構成されている。
つまり、(1)に示す「巻出し」で、サプライスタンド2のコイルから鋼線材が巻き出される。次に(2)に示す「矯正」で、巻き出された鋼線材が矯正機3により直線状に矯正される。また、(3)に示す「デスケーリング」で、鋼線材の表面に付着するスケールが除去される。さらに、(5)に示す「被膜処理」で、予熱後の鋼線材に対して被覆液槽でリン酸塩被膜が形成され、(6)に示す「潤滑処理」で、被膜処理後の鋼線材に対して金属石けんなどの潤滑剤が被覆される。このようにして鋼線材の表面に被覆された潤滑剤により、(8)に示す「伸線」において潤滑状態で冷間加工が行われる。伸線などの冷間加工後の鋼線材は(9)に示す「巻取り」で巻き取られる。
【0017】
なお(3)「デスケーリング」と(5)「被膜処理」の間に、例えば、デスケーリング後の線材を予熱する(4)「予熱」の工程が含まれていてもよい。また(6)「潤滑処理」で用いられる潤滑剤が液体の場合、(6)「潤滑処理」と(8)「伸線」との間に、例えば、潤滑剤を乾燥させる(7)「乾燥」の工程が含まれていてもよい。
次に、連続表面処理方法で表面処理される鋼線材、及びこの連続表面処理方法を構成する各工程の内容について説明する。
【0018】
本実施形態の連続表面処理方法で処理される鋼線材は、鋼やステンレス鋼などを熱間圧延機で長尺の線状に圧延したものであり、線径が5.0mm〜55mmの線状に形成されている。この鋼線材は、熱間圧延機で所定の線径に圧延された後、コイルとして巻き取られている。圧延後、鋼線材の組織や機械的特性などを調整するために、バッチ炉や連続炉にて焼なましなどの熱処理が加えられることもある。
【0019】
「巻出し」は、サプライスタンド2に配置された鋼線材のコイルを、ライン状に巻き出す工程である。このサプライスタンド2は、熱間圧延後の鋼線材のコイルを、その軸心が
上下方向または水平方向を向くように支持する設備であり、「巻出し」では鋼線材をコイルの上方または製造ラインの下流側に向かって引き抜くように巻き解くか、コイル自体を水平面内に回転させながら、鋼線材を巻き出せるようになっている。
【0020】
「矯正」は、矯正機3を用いて鋼線材の巻き癖を矯正する工程である。この「矯正」に用いる矯正機3は、サプライスタンド2から巻き出された鋼線材の巻き癖を矯正する複数の矯正ロール4を備えている。具体的には、熱間圧延後にコイル状に巻き取った鋼線材は、矯正機3の複数の矯正ロール4を順番に通過させることで巻き癖が矯正される。矯正機3で直線状に矯正された鋼線材は、「デスケーリング」の工程に送られる。
【0021】
「デスケーリング」は、矯正機3で直線状に矯正された鋼線材の表面からスケール取り除く工程である。本実施形態の「デスケーリング」では、グリット状の研磨粒子を含むスラリーを噴射するウェットブラストを用いてスケールの除去が行われており、このウェットブラストをデスケーリングに用いている点が、本発明の連続表面処理方法の特徴となっている。なお、デスケーリング工程の内容については、後ほど詳しく説明する。
【0022】
「予熱」は、「デスケーリング」された後の鋼線材を、リン酸塩被膜処理の前に予熱する工程である。具体的には、「予熱」は、スケールが除去された鋼線材に対して、加熱された水や蒸気を吹き付ける、あるいは高周波誘導加熱などによって鋼線材を直接加熱して、鋼線材をリン酸塩被膜処理温度と同程度の温度まで予熱する。このようにすれば、予熱の後に行われるリン酸塩被膜を形成する際の化成反応が促進され、リン酸塩被膜の形成速度を高くすることが可能となる。なお、この予熱についても詳しい説明は後ほど述べる。
【0023】
「被膜処理」は、リン酸塩被膜液に鋼線材を浸漬させ、鋼線材の表面にリン酸塩被膜を形成させる工程である。被膜は上記した伸線などの冷間加工において潤滑剤をダイス内に引込むキャリアーの役目をもち、潤滑剤として用いられる石灰石けんや金属石けんなどの下地層として形成させる。
リン酸塩被膜は、化学反応により形成され、処理温度が高いほど反応が促進され、被膜処理液も線材予熱と同程度である60℃〜80℃に上昇しておくと被膜反応が促進されるので好ましい。全酸度を高くすることでエッチング反応が促進されるため、被膜反応も促進されると考えられる。よって全酸度を高くすることは被膜処理時間短縮化の手段として有効である。
【0024】
「潤滑処理」は、上述した「被膜処理」によりリン酸塩被膜が被覆された鋼線材に対して、石灰石けんのような金属石鹸を含む潤滑剤が被覆される工程である。潤滑剤が液体の場合、「乾燥」において被覆された潤滑剤を乾燥させる。潤滑剤が被覆された鋼線材に対して、「伸線」のような冷間加工が加工機(図例では伸線機5)で行われる。このようにして被覆された潤滑剤を用いれば、鋼線材を潤滑しつつ冷間加工することが可能となり、鋼線材の加工をスムーズに行うことが可能となる。
【0025】
ところで、本発明の連続表面処理方法は、被膜の前処理として、鋼線材に対してグリット状の研磨粒子を含むスラリーを噴射するデスケーリング工程を行うことを特徴としている。また、この連続表面処理方法では、被膜処理工程の前に、上述した予熱工程を行うのが好ましい。
このようなスケーリング工程や予熱工程を行えば、鋼線材の表面に対する加工変質を抑えつつ、鋼線材に対して短時間で生産性良くリン酸塩被膜を形成することができるようになる。次に、本発明の特徴である「デスケーリング工程」及び「予熱工程」について、詳しく説明する。
【0026】
本発明の「デスケーリング工程」は、グリット状の研磨粒子を含むスラリーを噴射するウェットブラストを用いてスケールの除去を行うものとなっている。
具体的には、ウェットブラストは、水と硬質粒子とを混合した混合物(以降では、この混合物をスラリーという)を、高圧のエアで対象物に向けて複数のノズルから噴射するものであり、複数のノズルから噴射されたスラリーが鋼線材の表面に衝突することでスケールを削りとることが可能となっている。
【0027】
これらのノズルは、周方向に少なくとも2本以上、好ましくは3本以上配備されており、鋼線材の周方向(軸心回り)にほぼ均等角度をあけて配備されており、鋼線材の表面を
全周に亘ってカバーできるようになっている。また、これらのノズルは、鋼線材の搬送方向に沿って、複数設けられており、それぞれのノズルからの噴射が干渉し合わないように配備されている。具体的には、これら複数のノズルは、金属線材の搬送方向(軸心方向)に沿って千鳥状(鋼線材の軸心に対して垂直となる方向に沿った断面を見た際に、周方向に沿って、左右交互にノズルが配備されている状況)または螺旋状に配置されている。
【0028】
このウェットブラストは、噴射した研磨材が対象物へ与える衝撃を小さく抑えることができるものであり、ショットブラストやウォータージェット(噴射圧100MPa程度)と比較すれば対象物にとってマイルドな表面加工方法となっている。
つまり、液体を用いない乾式のショットブラストや、水は用いていても
噴射圧が大きなウォータージェットでは、鋼線材の表面に生成される加工変質層は厚くなる傾向があり、鋼線材の割れやダイスの焼付きなどの加工不良を冷間加工時に招く可能性がある。ところが、水と硬質粒子とのスラリーを用いるウェットブラストをデスケーリングに使用する場合には、ショットブラストやウォータージェットと比較して鋼線材の表面に生成する加工変質層を薄くすることができ、研磨材の衝突により硬化する鋼線材表面の加工硬化量や加工硬化深さなどを小さくすることができる。そのため、後述するリン酸塩被膜の処理の後の冷間加工をしても、鋼線材の割れやダイスの焼付きなどの加工不良を起こす心配がない。
【0029】
なお、上述したウェットブラストに用いられる砥粒は、グリット状の研磨粒子となっている。このグリット状の研磨粒子とは、JIS Z 0311にブラスト処理用金属系研磨材として規定されるグリットを意味し、使用前の状態で稜角をもつ角ばった形状であって、丸い部分がその粒子の1/2未満の粒子を指す。このグリット状の研磨粒子は、JIS Z 0311で規定されたショット処理用金属系研磨材、すなわち「使用前の状態で稜角、破砕面又は他の鋭い表面欠陥がなく、長径が短径の2倍以内の球形状の粒子」とは、大きく形状が異なるものである。
【0030】
このようなグリット状の研磨粒子を用いることにより、鋼線材の表面に多数の凹凸を形成することができる。その結果、グリット状の研磨粒子の角部による微細な表面切削により鋼線材の表面に新生面が得られるため、後に続くリン酸塩被膜処理において化成反応が促進され、短時間でリン酸塩被膜を得ることができる。
なお、グリット状の研磨粒子に用いる金属の種類は問わないが、デスケーリングの加工効率の観点からは、処理される鋼線材の硬度よりも硬度の高い粒子を用いることが好ましい。具体的には、グリット状の研磨粒子には、鋼線材表面への刺込み残留を防止する観点などから、靭性に優れる鋼またはステンレス鋼が好ましくは用いられる。
【0031】
一方、本発明の「予熱工程」は、リン酸塩被膜処理に用いるリン酸塩被覆液に近い温度まで鋼線材を予熱することで、リン酸塩被膜を形成する際の化成反応を促進するものであるため、この予熱の処理条件も連続表面処理の効率に大きく影響する。
例えば、予熱において鋼線材を加熱する温度を60℃未満とすれば、予熱の効果が小さくなって、リン酸塩被膜の形成が不十分となる。また、鋼線材を80℃を超える温度まで加熱して予熱を行うと、リン酸塩被覆液の液温が上昇し、加水分解が起こったり、被膜処理液が変質したりするため、生産性やコストの面から逆に好ましくない。
【0032】
なお、ウェットブラストで湿れた状態になっている鋼線材を予熱のために乾燥状態にすると、予熱時に鋼線材の表面に酸化被膜が形成され、リン酸塩被膜の形成処理で反応の阻害が起きる可能性がある。しかし、本発明の予熱工程では、予熱自体を80℃未満の低温度で行い、かつ予熱の時間も60秒を超えない程度であるので、予熱中に酸化被膜が厚くまで形成されることは殆どない。そのため、リン酸塩被膜の形成の際に予熱中に生成した酸化被膜により反応の阻害が起きることはなく、予熱により化成反応が促進されるという優れた効果を得ることが可能となる。
【0033】
上述した連続表面処理方法に用いられるウェットブラストは、鋼線材の表面に生成する加工変質層や鋼線材表面の加工硬化量、加工硬化深さなどを、乾式のショットブラストやウォータージェットと比較して小さくすることができる。そのため、鋼線材の表面に対する加工変質を抑えることが可能なものとなっている。
また、上述した連続表面処理方法では、ウェットブラストにグリット状の研磨粒子が用いられているため、グリット状の研磨粒子の角部による微細な表面切削により鋼線材の表面に新生面が得られるため、後に続くリン酸塩被膜処理において化成反応が促進され、短時間でリン酸塩被膜を得ることができる。
【0034】
さらに、上述した予熱工程を被膜処理工程の前に行うと、リン酸塩被覆液に近い温度まで鋼線材を予熱することができ、リン酸塩被膜を形成する際の化成反応を促進することができる。そのため、鋼線材に対してより短時間で生産性良くリン酸塩被膜を形成することが可能となる。
【実施例】
【0035】
次に、実施例及び比較例を用いて、本発明の連続表面処理方法の作用効果をさらに詳しく説明する。
実施例及び比較例は、鋼(SUJ2)製の鋼線材(φ11.0mm)に対して、球状化焼鈍を施したのち、連続表面処理、伸線、圧造を順に行ったものである。なお、連続表面処理は、ウェットブラストに引き続いて、予熱、リン酸塩被膜処理、石灰石けんを用いた潤滑、乾燥などを行っている。
【0036】
なお、詳細な実験条件は以下の通りである。
・スケール:化学組成(Fe3O4(60%)、Fe2O3(40%))、厚み:2μm
・ウェットブラスト:マコー(株)製 汎用ウェットブラスト装置
研磨材:VULKAN INOX GmbH.製 GRITTAL GH10、
平均砥粒半径:0.113μm
エア圧力:0.4Mpa、線材とノズル角度:90℃付近、
線材とノズルの距離:100mm、スラリー中の砥粒濃度:15%
・予熱:温水、温度:40〜80℃、処理時間:60s
・リン酸塩被膜 : 日本パーカライジングPB-3670X、全酸度:90pt、
被膜液温度:40〜80℃、処理時間10s
※全酸度に用いる「pt」は、リン酸塩被膜処理液の濃度単位で、
リン酸塩被膜処理液10mlを中和するのに要する0.1NのNaOH のml数のことである。
【0037】
・石灰石けん : 井上石灰工業MAC-A20、処理温度:40℃〜80℃、処理時間10s
・伸線 : 減面率12%(φ11 →φ10.3)
・圧造 : 前方押し出し加工、減面率50%
上述した実験の結果を表1に示す。
なお、「伸線結果」や 「圧造結果」において、「×」はすぐに焼き付きや割れが発生したものであり、「○」は焼き付きや割れがなく冷間加工が可能であったものを示している。また、「△」は焼き付きが生じないまでもダイスの寿命が若干短くなったり、焼き付きの兆候が見られたりしたものである。この実験では、「伸線結果」及び「圧造結果」のいずれにも×がない場合に、十分な性能を有することを本願発明者らは確認しており、本発明では好ましい実験例(判断が「good」の評価、実施例)として取り扱っている。
【0038】
【表1】
【0039】
表1の実験例1〜実験例5に着目すると、デスケーリングに球状の研磨粒子を用いた実験例1〜3の被膜付着量が2.7g/m
2〜3.2g/m
2であるのに対し、グリット状の研磨粒子を用いた実験例4、5では、被膜付着量が5.0g/m
2、5.2g/m
2となっており、被膜付着量が大幅に増加していることが分かる。このことから、デスケーリングにグリット状の砥粒(研磨粒子)を用いることにより、生産性が大幅に向上できることが分かる。
【0040】
また、表1の実験例4、実験例5に着目すると、ウォータジェット(WJ)を用いてデスケーリングを行った実験例4と、ウェットブラスト(WB)を用いてデスケーリングを行った実験例5とでは、被膜付着量はほぼ同じとなっている。ところが、「伸線結果」や「圧造結果」を見ると、ウェットブラスト(WB)の方がウォータジェット(WJ)より優れた伸線性や圧造性を示している。このことから、デスケーリングをウェットブラストで行うことにより、鋼線材の表面に対する加工変質を抑え、伸線や圧造といった加工性が大幅に向上できることが分かる。
【0041】
一方、表1の実験例6〜実験例8に着目すると予熱温度を高くするにつれて被膜付着量が増加し、伸線性と加工性が良くなったことが分かる。予熱温度40℃の実験例6は、被膜付着量が4.2g/m2であり、圧造後のサンプルに焼き付きの兆候を示す光沢は見られるのに対し、60℃や80℃の実験例8、実験例9では被膜付着量が5.0g/m
2〜6.4g/m
2となり圧造後の表面もより好ましい状態となる。このことから、被膜処理に先だって予熱を行うこと、望ましくは60℃〜80℃の予熱を行うことにより、処理線速を向上させることができ、生産性が大幅に向上できることが分かる。
【0042】
加えて、グリット状の砥粒の材質を鋼とした実験例8に対して、砥粒の材質をアルミナとした実験例9では、被膜付着量はほぼ同じであるのに、ダイス寿命が若干短くなったため、「伸線結果」や 「圧造結果」は△の評価となっている。これはアルミナは鋼に比べ靱性が劣るため、デスケーリング中に線材に刺込み残存して、後工程の伸線加工や圧造加工時に焼付きが発生したためであると考えられる。このことから、グリット状の砥粒の材質は、靱性の高い鋼が望ましいと考えられる。
【0043】
なお、今回開示された実施形態はすべての点で例示であって制限的なものではないと考えられるべきである。特に、今回開示された実施形態において、明示的に開示されていない事項、例えば、運転条件や操業条件、各種パラメータ、構成物の寸法、重量、体積などは、当業者が通常実施する範囲を逸脱するものではなく、通常の当業者であれば、容易に想定することが可能な値を採用している。