特許第6249944号(P6249944)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6249944
(24)【登録日】2017年12月1日
(45)【発行日】2017年12月20日
(54)【発明の名称】注射製剤
(51)【国際特許分類】
   A61K 31/496 20060101AFI20171211BHJP
   A61K 9/10 20060101ALI20171211BHJP
   A61K 47/02 20060101ALI20171211BHJP
   A61K 47/26 20060101ALI20171211BHJP
   A61K 47/10 20060101ALI20171211BHJP
   A61P 25/18 20060101ALI20171211BHJP
   A61P 25/24 20060101ALI20171211BHJP
【FI】
   A61K31/496
   A61K9/10
   A61K47/02
   A61K47/26
   A61K47/10
   A61P25/18
   A61P25/24
【請求項の数】13
【全頁数】38
(21)【出願番号】特願2014-512621(P2014-512621)
(86)(22)【出願日】2013年4月23日
(86)【国際出願番号】JP2013061950
(87)【国際公開番号】WO2013161830
(87)【国際公開日】20131031
【審査請求日】2016年4月15日
(31)【優先権主張番号】61/636,932
(32)【優先日】2012年4月23日
(33)【優先権主張国】US
(31)【優先権主張番号】61/791,896
(32)【優先日】2013年3月15日
(33)【優先権主張国】US
(73)【特許権者】
【識別番号】000206956
【氏名又は名称】大塚製薬株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110000796
【氏名又は名称】特許業務法人三枝国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】佐藤 哲也
(72)【発明者】
【氏名】箕輪 卓也
(72)【発明者】
【氏名】星加 裕亮
(72)【発明者】
【氏名】豊福 秀一
【審査官】 伊藤 基章
(56)【参考文献】
【文献】 国際公開第2012/026562(WO,A1)
【文献】 特表2007−501236(JP,A)
【文献】 特表2009−508859(JP,A)
【文献】 国際公開第2012/129156(WO,A1)
【文献】 国際公開第2013/142205(WO,A1)
【文献】 特表2015−514751(JP,A)
【文献】 特表2010−535151(JP,A)
【文献】 特開2006−316052(JP,A)
【文献】 特表2007−509148(JP,A)
【文献】 米国特許第7807680(US,B2)
【文献】 米国特許第6656505(US,B2)
【文献】 米国特許第8952013(US,B2)
【文献】 米国特許第8722679(US,B2)
【文献】 米国特許第8030313(US,B2)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A61K9/00−9/72
A61K47/00−47/48
A61K31/496
CAplus/MEDLINE/EMBASE/BIOSIS(STN)
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
7−[4−(4−ベンゾ[b]チオフェン−4−イル−ピペラジン−1−イル)ブトキシ]−1H−キノリン−2−オン又はその塩、粒子結合剤、及び注射用水を含み、
前記粒子結合剤は、塩化ナトリウム、並びにポリオキシエチレンソルビタン脂肪酸エステル及びポリエチレングリコールからなる群より選択される少なくとも1種である、
注射製剤。
【請求項2】
粒子結合剤が、塩化ナトリウム及びポリエチレングリコールである、請求項1に記載の注射製剤。
【請求項3】
ポリエチレングリコールが、マクロゴール400又はマクロゴール4000である、請求項2に記載の注射製剤。
【請求項4】
更にポリオキシエチレンソルビタン脂肪酸エステルを含む、請求項2又は3に記載の注射製剤。
【請求項5】
ポリオキシエチレンソルビタン脂肪酸エステルが、ポリオキシエチレン(20)ソルビタンオレイン酸エステルである、請求項4に記載の注射製剤。
【請求項6】
7−[4−(4−ベンゾ[b]チオフェン−4−イル−ピペラジン−1−イル)ブトキシ]−1H−キノリン−2−オン又はその塩の粒子(一次粒子)が凝集してなる二次粒子を含み、前記二次粒子の平均粒子径(平均二次粒子径)が4〜17μmである、請求項1〜5のいずれか一項に記載の注射製剤。
【請求項7】
7−[4−(4−ベンゾ[b]チオフェン−4−イル−ピペラジン−1−イル)ブトキシ]−1H−キノリン−2−オン又はその塩の粒子の平均一次粒子径が1〜10μmである、請求項6に記載の注射製剤。
【請求項8】
注射製剤のpHが5〜8である、請求項のいずれかに記載の注射製剤。
【請求項9】
有効成分の治療有効血中濃度が少なくとも1週間以上持続するよう有効成分を放出する、請求項1〜8のいずれかに記載の注射製剤。
【請求項10】
7−[4−(4−ベンゾ[b]チオフェン−4−イル−ピペラジン−1−イル)ブトキシ]−1H−キノリン−2−オン又はその塩が、
7−[4−(4−ベンゾ[b]チオフェン−4−イル−ピペラジン−1−イル)ブトキシ]−1H−キノリン−2−オンの二水和物である、
請求項のいずれかに記載の注射製剤。
【請求項11】
統合失調症、双極性障害、又はうつの治療または再発予防用である、請求項〜10のいずれかに記載された注射製剤。
【請求項12】
筋肉内投与又は皮下投与用である、請求項1〜11に記載の注射製剤。
【請求項13】
請求項〜12のいずれかに記載の注射製剤がプレフィルドされた、プレフィルドシリンジ。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、7−[4−(4−ベンゾ[b]チオフェン−4−イル−ピペラジン−1−イル)ブトキシ]−1H−キノリン−2−オン又はその塩を含有する注射製剤に関する。
【背景技術】
【0002】
7−[4−(4−ベンゾ[b]チオフェン−4−イル−ピペラジン−1−イル)ブトキシ]−1H−キノリン−2−オン(以下、化合物(I)とも表記する)は、一般式(I):
【0003】
【化1】
で表されるベンゾチオフェン化合物であり、化合物(I)又はその塩は、ドパミンD受容体パーシャルアゴニスト作用(D受容体パーシャルアゴニスト作用)、セロトニン5−HT2A受容体アンタゴニスト作用(5−HT2A受容体アンタゴニスト作用)及びアドレナリンα受容体アンタゴニスト作用(α受容体アンタゴニスト作用)を有し、更にそれらの作用に加えてセロトニン取り込み阻害作用(あるいはセロトニン再取り込み阻害作用)を併有することが知られており(特許文献1)、中枢神経疾患(特に統合失調症)に対して広い治療スペクトラムを有している。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2006−316052号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
統合失調症等の中枢神経疾患において、長時間作用を有する薬物投与形態は、患者のコンプライアンスを増大させ、それによって治療における再発率を低下させることができる点で有用である。
【0006】
本発明は、化合物(I)又はその塩の長時間作用を有し、長期間保存後であっても安定で、簡便に注射することができる注射製剤を提供することを課題とする。当該注射製剤は、好ましくは少なくとも1週間、化合物(I)又はその塩の有効血中濃度を維持する、持続性を有する注射製剤を提供する。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明者が上記課題に鑑み鋭意検討を行ったところ、化合物(I)又はその塩を有効成分として含有する、特定の構成を有する注射製剤が、化合物(I)の沈降が起こっても、ハードケーキとなることはなく、穏やかに撹拌する等の簡単な操作で容易に再度分散して、好適に注射できることを見出した。そして、当該特定の構成を有する注射製剤が、化合物(I)又はその塩の長時間作用を有し得ることも見出した。特に、当該注射製剤は、少なくとも1週間、有効治療量で化合物(I)又はその塩を放出させる得ることを見出した。本発明は上記知見に基づきさらに検討を重ねた結果完成されたものであり、例えば下記の項に掲げるものを包含する。
項1.
7−[4−(4−ベンゾ[b]チオフェン−4−イル−ピペラジン−1−イル)ブトキシ]−1H−キノリン−2−オン又はその塩の粒子(一次粒子)が凝集してなる二次粒子を含み、
前記二次粒子の平均粒子径(平均二次粒子径)が1〜50μmであり、
前記二次粒子が、分散されて含まれる、
水性懸濁液。
項2.
前記7−[4−(4−ベンゾ[b]チオフェン−4−イル−ピペラジン−1−イル)ブトキシ]−1H−キノリン−2−オン又はその塩の粒子の平均一次粒子径が0.1〜20μmである、
項1に記載の水性懸濁液。
項3.
7−[4−(4−ベンゾ[b]チオフェン−4−イル−ピペラジン−1−イル)ブトキシ]−1H−キノリン−2−オンを0.1〜40重量%含有する、
項1又は2に記載の水性懸濁液。
項4.
項1〜3のいずれかに記載の水性懸濁液を含む注射製剤。
項5.
7−[4−(4−ベンゾ[b]チオフェン−4−イル−ピペラジン−1−イル)ブトキシ]−1H−キノリン−2−オン又はその塩、粒子結合剤、及び注射用水を含み、
前記粒子結合剤は、塩化ナトリウム、ポリオキシエチレンソルビタン脂肪酸エステル、エチレンオキサイド及びプロピレンオキサイドのブロックコポリマー、ポリエチレングリコール、トコフェロール、トコトリエノール及びそのエステル、酢酸トコフェロール、トコフェロールサクシネート、ベンジルアルコール、低水溶性ポリオキシエチレンジオールジ安息香酸エステル、低水溶性ポリオキシエチレンジオールジメチルスルホン酸及びそのエステル、並びに安息香酸ベンジルからなる群より選択される少なくとも1種である、
注射製剤。
項6.
7−[4−(4−ベンゾ[b]チオフェン−4−イル−ピペラジン−1−イル)ブトキシ]−1H−キノリン−2−オン又はその塩が、二次粒子を形成しており、
該二次粒子の平均二次粒子径が1〜50μmである、
項5に記載の注射製剤。
項7.
7−[4−(4−ベンゾ[b]チオフェン−4−イル−ピペラジン−1−イル)ブトキシ]−1H−キノリン−2−オン又はその塩が、注射用水に懸濁されて含まれる、
項5又は6に記載の注射製剤。
項8.
7−[4−(4−ベンゾ[b]チオフェン−4−イル−ピペラジン−1−イル)ブトキシ]−1H−キノリン−2−オン又はその塩が、沈殿して含まれる、
項5又は6に記載の注射製剤。
項9.
粒子結合剤が、塩化ナトリウム、ポリオキシエチレン(20)ソルビタンオレイン酸エステル、ポリオキシエチレン(160)ポリオキシプロピレン(30)グリコール、平均分子量200〜6000のポリエチレングリコール、ベンジルアルコール及び安息香酸ベンジルからなる群より選択される少なくとも1種である、項5〜8のいずれかに記載の注射製剤。
項10.
注射製剤のpHが5〜8である、項4〜9のいずれかに記載の注射製剤。
項11.
統合失調症、双極性障害、又はうつの治療または再発予防用である、項4〜10のいずれかに記載された注射製剤。
項12a.
7−[4−(4−ベンゾ[b]チオフェン−4−イル−ピペラジン−1−イル)ブトキシ]−1H−キノリン−2−オン又はその塩が、
7−[4−(4−ベンゾ[b]チオフェン−4−イル−ピペラジン−1−イル)ブトキシ]−1H−キノリン−2−オンの二水和物である、
項1〜3のいずれかに記載の水性懸濁液。
項12b.
7−[4−(4−ベンゾ[b]チオフェン−4−イル−ピペラジン−1−イル)ブトキシ]−1H−キノリン−2−オン又はその塩が、
7−[4−(4−ベンゾ[b]チオフェン−4−イル−ピペラジン−1−イル)ブトキシ]−1H−キノリン−2−オンの二水和物である、
項4〜11のいずれかに記載の注射製剤。
項13a.
粒子結合剤として、ポリオキシエチレンソルビタン脂肪酸エステル及びポリエチレングリコールからなる群より選択される少なくとも1種を含む、請求項12aに記載の水性懸濁液。
項13b.
粒子結合剤として、ポリオキシエチレンソルビタン脂肪酸エステル及びポリエチレングリコールからなる群より選択される少なくとも1種を含む、請求項12bに記載の注射製剤。
項14.
項4〜11、項12b及び項13bのいずれかに記載の注射製剤がプレフィルドされた、プレフィルドシリンジ。
項A.7−[4−(4−ベンゾ[b]チオフェン−4−イル−ピペラジン−1−イル)ブトキシ]−1H−キノリン−2−オン又はその塩を有効成分として含む注射製剤であって、該製剤は有効成分を治療有効血中濃度が少なくとも1週間以上持続するよう放出する、注射製剤。
項B.さらに結合剤を含有する項Aに記載の注射製剤。
項C.注射製剤のpHが5〜8である項A又はBに記載の注射製剤。
【0008】
本発明の注射製剤は、化合物(I)又はその塩を有効成分として含む。当該注射製剤は、当該化合物(I)又はその塩を有効成分として含有し、特定の組成を有することにより、沈殿が生じても、容易に再分散して好適に注射可能な状態に戻ることができる。さらには、化合物(I)又はその塩の有効血中濃度が少なくとも1週間以上持続する。なお、本発明の注射製剤は、投与時には、注射用水を含む懸濁液の形態で用いられる。
【0009】
また、本発明の注射製剤において、化合物(I)又はその塩は、二次粒子を形成しており、その二次粒子の平均粒子径(平均二次粒子径)は好ましくは1〜50μmである。そして、好ましくは(特に投与直前には)当該二次粒子は注射製剤中に懸濁されている。
【0010】
すなわち、本発明の注射製剤の最適態様の一つは、化合物(I)又はその塩の粒子(一次粒子)が凝集してなる二次粒子を含み、前記二次粒子の平均粒子径(平均二次粒子径)が好ましくは1〜50μmであり、前記二次粒子が懸濁されて含まれる、水性懸濁液からなる注射製剤である。
【0011】
当該二次粒子の平均粒子径(平均二次粒子径)はより好ましくは2〜30μmであり、さらに好ましくは3〜20μmであり、よりさらに好ましくは4〜17μmであり、なかでも好ましくは5〜15μmであり、特に好ましくは5〜12μmである。
【0012】
本発明の注射製剤は、7−[4−(4−ベンゾ[b]チオフェン−4−イル−ピペラジン−1−イル)ブトキシ]−1H−キノリン−2−オン(化合物(I))又はその塩という特定の成分を水に懸濁させることにより、また、これに加えてさらに特定の粒子結合剤を含むことにより、化合物(I)又はその塩の一次粒子が好ましく二次粒子を形成し得、また、上記平均二次粒子径を有する化合物(I)又はその塩の二次粒子を好ましく安定に含むことができる。ここでの特定の粒子結合剤とは、化合物(I)又はその塩の粒子(一次粒子)を凝集させて二次粒子を形成させることができる成分を意味する。
【0013】
なお、一般に、難水溶性化合物を水に懸濁させた場合、長時間が経過すると当該化合物の粒子が沈降して固く凝集してしまう(すなわちハードケーキを形成する)ことが、しばしばある。難水溶性の有効成分を水に懸濁させて製造した注射製剤においては、このようなハードケーキが形成されると、再度有効成分を懸濁することは容易ではない。有効成分が懸濁できなければ、十分な量の有効成分を注射することができず、また、通針性が悪くなる等、問題が生じる。従って、ハードケーキの形成防止は、注射製剤において重要な課題である。
【0014】
後に詳述するように、本発明の注射製剤は、化合物(I)又はその塩の沈降が起こっても、ハードケーキとなることはなく、穏やかに撹拌する等の簡単な操作で容易に再度分散するため、有利である。限定的な解釈をのぞむものではないが、本発明の注射製剤が当該有利な効果を有するのは、7−[4−(4−ベンゾ[b]チオフェン−4−イル−ピペラジン−1−イル)ブトキシ]−1H−キノリン−2−オン又はその塩という特定の成分が水に懸濁されることにより、また、これに加えてさらに特定の粒子結合剤を含むことにより、化合物(I)又はその塩の粒子が凝集して二次粒子を形成し、このために、化合物(I)又はその塩が沈降したとしても最密充填状態を形成しづらくなるためではないかと推測される。本発明は、化合物(I)又はその塩の二次粒子が沈降した状態の注射製剤も包含する。
【0015】
前記平均二次粒子径を有する化合物(I)又はその塩の二次粒子は、例えば、好ましくは約0.1〜20μm、より好ましくは約1〜10μm、さらに好ましくは約2〜5μmの平均一次粒子径を有する化合物(I)又はその塩を、後述のビヒクルとともに注射用水中で分散させることによって製造することができる。このような平均一次粒子径を有する化合物(I)又はその塩の原末を用いることにより、また、特定の粒子結合剤を用いることにより、水性懸濁液(注射製剤)としたときに、所望の平均粒子径を有するように凝集し、凝集した化合物(I)又はその塩の二次粒子が良好に分散される。
【0016】
ここで、“平均粒子径”とは、レーザー回折散乱法(laser diffraction-scattering)によって測定される場合の体積平均直径(volume mean diameter)をいう。粒度分布は、レーザー回折散乱法によって測定され、平均粒子径は、粒度分布から計算される。
【0017】
より詳細に説明すると、ここでの“平均一次粒子径”は、循環セルを使用し、媒体として水を使用し、水性懸濁液循環中に超音波照射を行ったうえで、レーザー回折散乱法によって測定される粒度分布から計算される体積平均直径値である。また、ここでの“二次粒子径”は、循環セルを使用し、媒体として水を使用し、水性懸濁液を循環させながら(超音波照射は行わない)、レーザー回折散乱法によって測定される粒度分布から計算される体積平均直径値である。
【0018】
本発明に用いる特定の粒子結合剤としては、例えば、塩化ナトリウム、ポリオキシエチレンソルビタン脂肪酸エステル、ポリエチレングリコール、エチレンオキサイド及びプロピレンオキサイドのブロックコポリマー等の水性粒子結合剤;トコフェロール、トコトリエノール及びそのエステル、酢酸トコフェロール、トコフェロールサクシネート、ベンジルアルコール、低水溶性ポリオキシエチレンジオールジ安息香酸エステル、低水溶性ポリオキシエチレンジオールジメチルスルホン酸及びそのエステル、安息香酸ベンジル等の安息香酸エステル等の油性粒子結合剤が挙げられる。
【0019】
ポリオキシエチレンソルビタン脂肪酸エステルの「脂肪酸」としては、炭素数12〜18の脂肪酸が好ましく、炭素数16〜18の脂肪酸がより好ましい。具体的には、ラウリン酸、ミリスチン酸、パルミチン酸、ステアリン酸、オレイン酸、リノール酸等が例示でき、特にオレイン酸が好ましい。ポリオキシエチレンソルビタン脂肪酸エステルの中でも、ポリオキシエチレン(20)ソルビタンラウリン酸エステル、ポリオキシエチレン(20)ソルビタンステアリン酸エステル、ポリオキシエチレン(20)ソルビタンオレイン酸エステルが好ましく、具体的にはポリソルベート20、ポリソルベート60、ポリソルベート80が例示できる。特にポリオキシエチレン(20)ソルビタンオレイン酸エステルが好ましい。
【0020】
ポリエチレングリコールとしては、平均分子量が200〜6000程度のポリエチレングリコールが好ましく、具体的には、例えばマクロゴール400及びマクロゴール4000等を用いることができる。
【0021】
エチレンオキサイド及びプロピレンオキサイドのブロックコポリマー(EO/POブロック・ランダム共重合体などともいう)としては、プロピレンオキサイドよりもエチレンオキサイドの重合重量割合が大きいものが好ましく、特にポリオキシエチレン(160)ポリオキシプロピレン(30)グリコール(例えば、プルロニックF68)が好ましい。
これらの粒子結合剤は、1種単独で用いてもよく、また2種以上を併用してもよい。2種以上を併用する場合においては、水性粒子結合剤から2種以上を併用するか、油性粒子結合剤から2種以上を併用することが、より好ましい。また、水性粒子結合剤のみを併用すること又は油性粒子結合剤のみを併用することが好ましい。
【0022】
また、中でも、塩化ナトリウム、ポリオキシエチレンソルビタン脂肪酸エステル(特にポリオキシエチレン(20)ソルビタンオレイン酸エステル)、ポリエチレングリコール、エチレンオキサイド及びプロピレンオキサイドのブロックコポリマー(特にポリオキシエチレン(160)ポリオキシプロピレン(30)グリコール)、ベンジルアルコール及び安息香酸ベンジルからなる群より選択される少なくとも1種を用いることが好ましく、少なくとも、塩化ナトリウム、ポリオキシエチレン(20)ソルビタンオレイン酸エステル、平均分子量200〜6000のポリエチレングリコール、ポリオキシエチレン(160)ポリオキシプロピレン(30)グリコール、又は安息香酸ベンジルを用いることがより好ましい。
【0023】
なかでも、塩化ナトリウムは、化合物(I)又はその塩を、特に好ましく二次粒子径へと凝集させ、二次粒子を安定に保ち得る。さらには、下述する通り、等張化剤としてもはたらく。よって、塩化ナトリウムを用いることは特に好ましい。
【0024】
また、ポリオキシエチレンソルビタン脂肪酸エステル、ポリエチレングリコール、エチレンオキサイド及びプロピレンオキサイドのブロックコポリマーには、特に注射製剤の通針性を良くする効果も奏するため、好ましい。
【0025】
本発明に用いる特定の粒子結合剤の濃度としては、用いる粒子結合剤の種類にもよるが、例えば、総注射製剤中、約0.01〜500mg/mLが好ましく、約0.05〜450mg/mLがより好ましく、約0.06〜300mg/mLがさらに好ましい。また、粒子結合剤は、化合物(I)又はその塩100重量部に対して、約0.01〜500重量部含まれることが好ましく、約0.05〜450重量部含まれることがより好ましく、約0.06〜300重量部含まれることがさらに好ましい。
【0026】
また、粒子結合剤として用いることができる各成分の注射製剤中の濃度について次に記載する。
【0027】
塩化ナトリウムは、注射製剤中に約0.1mg/mL以上の濃度で含まれることが好ましく、1mg/mL以上がより好ましい。より具体的には、約0.1〜400mg/mLの濃度で含まれることが好ましく、約1〜200mg/mLがより好ましく、約1〜100mg/mLがさらに好ましく、約1〜50mg/mLがよりさらに好ましく、約2〜40mg/mLが特に好ましい。また、化合物(I)又はその塩100重量部に対して、1〜100重量部含まれることが好ましく、1〜200重量部がより好ましく、1〜100重量部がさらに好ましく、1〜50重量部がよりさらに好ましく、2〜40重量部が特に好ましい。
【0028】
ポリエチレングリコールは、注射製剤中に約1〜40mg/mLの濃度含まれることが好ましく、約5〜40mg/mLがより好ましく、約10〜40mg/mLがさらに好ましく、約20〜40mg/mLがよりさらに好ましい。また、化合物(I)又はその塩100重量部に対して、ポリエチレングリコールが1〜40重量部含まれることが好ましく、5〜40重量部含まれることがより好ましく、10〜40重量部で含まれることがさらに好ましく、20〜40重量部含まれることがよりさらに好ましい。
【0029】
ポリオキシエチレンソルビタン脂肪酸エステルは、注射製剤中に約0.01〜10mg/mLの濃度で含まれることが好ましく、約0.1〜5mg/mL含まれることがより好ましく、約0.1〜1mg/mL含まれることがさらに好ましく、0.2〜0.5mg/mL含まれることがよりさらに好ましい。また、化合物(I)又はその塩100重量部に対して、ポリオキシエチレンソルビタン脂肪酸エステルが0.01〜10重量部で含まれることが好ましく、0.1〜5重量部含まれることがより好ましく、0.1〜1重量含まれることがさらに好ましく、0.2〜0.5重量部含まれることがよりさらに好ましい。
【0030】
安息香酸ベンジルは、注射製剤中に約0.1〜10mg/mLの濃度で含まれることが好ましく、約0.5〜5mg/mL含まれることがより好ましく、0.5〜3mg/mL含まれることがさらに好ましい。また、化合物(I)又はその塩100重量部に対して、安息香酸ベンジルが0.1〜10重量部含まれることが好ましく、0.5〜5重量部含まれることがより好ましく、0.5〜3重量部含まれることがさらに好ましい。
【0031】
なお、ここで「化合物(I)又はその塩100重量部」は、注射製剤中の化合物(I)又はその塩の量を化合物(I)量に換算したときの100重量部を意味する。
【0032】
化合物(I)の塩としては、薬理的に許容される塩であれば特に限定されず、例えば、アルカリ金属塩(例えばナトリウム塩、カリウム塩等);アルカリ土類金属塩(例えばカルシウム塩、マグネシウム塩等)等の金属塩;アンモニウム塩;炭酸アルカリ金属(例えば、炭酸リチウム、炭酸カリウム、炭酸ナトリウム、炭酸セシウム等);炭酸水素アルカリ金属(例えば、炭酸水素リチウム、炭酸水素ナトリウム、炭酸水素カリウム等);アルカリ金属水酸化物(例えば、水酸化リチウム、水酸化ナトリウム、水酸化カリウム、水酸化セシウム等)等の無機塩基の塩;トリ(低級)アルキルアミン(例えば、トリメチルアミン、トリエチルアミン、N−エチルジイソプロピルアミン等)、ピリジン、キノリン、ピペリジン、イミダゾール、ピコリン、ジメチルアミノピリジン、ジメチルアニリン、N−(低級)アルキル−モルホリン(例えば、N−メチルモルホリン等)、1,5−ジアザビシクロ[4.3.0]ノネン−5(DBN)、1、8−ジアザビシクロ[5.4.0]ウンデセン−7(DBU)、1,4−ジアザビシクロ[2.2.2]オクタン(DABCO)等の有機塩基の塩;塩酸塩、臭化水素酸塩、ヨウ化水素酸塩、硫酸塩、硝酸塩、リン酸塩等の無機酸の塩;ギ酸塩、酢酸塩、プロピオン酸塩、シュウ酸塩、マロン酸塩、コハク酸塩、フマル酸塩、マレイン酸塩、乳酸塩、リンゴ酸塩、クエン酸塩、酒石酸塩、炭酸塩、ピクリン酸塩、メタンスルホン酸塩、エタンスルホン酸塩、p−トルエンスルホン酸塩、グルタミン酸塩、パモ酸塩等の有機酸の塩;等が挙げられる。ここで、「(低級)アルキル」とは、「炭素数1〜6のアルキル」を意味する。
【0033】
また、「化合物(I)又はその塩」は、特に断らない限り、化合物(I)又はその塩の、無水物、溶媒和物(例えば、水和物、好ましくは二水和物)、これら無水物及び溶媒和物の各種結晶形態、並びにこれらの混合物を含む。「化合物(I)又はその塩」としては、好ましくは化合物(I)又はその塩の無水物又は水和物であり、より好ましくは化合物(I)又はその塩の水和物であり、さらに好ましくは化合物(I)又はその塩の二水和物である。なお、「化合物(I)又はその塩の無水物」とは、
化合物(I)の無水物又は化合物(I)の塩の無水物という意味であり、「化合物(I)又はその塩の溶媒和物(例えば水和物)」とは、化合物(I)の溶媒和物(例えば水和物)又は化合物(I)の塩の溶媒和物(例えば水和物)という意味である。
【0034】
これらの化合物(I)又はその塩は、1種単独で使用してもよいし、2種以上を組み合わせて(例えば混合して)使用してもよい。
【0035】
化合物(I)又はその塩の無水物は、例えば、特開2006−316052号公報の実施例1及び実施例42〜47に記載される方法によって得られる。当該公報の記載内容は、参照により本明細書に組み込まれる。 また、化合物(I)又はその塩の水和物の具体例としては、上記の通り二水和物が好ましく挙げられる。二水和物は、例えば、
(1)アルコール及び水混合溶液(好ましくはエタノール及び水混合溶液)中に、酸(好ましくは酢酸及び乳酸よりなる群から選ばれる少なくとも1種の有機酸)、及び化合物(I)を混合し、酸性の混合溶液を調製する工程、
(2)前記工程で得られた溶液を冷却する工程、及び
(3)工程(2)で冷却した溶液に、アルカリ(例えば水酸化ナトリウム、水酸化カリウム等)を配合してpH7以上に調整する工程
を含む製造方法によって得られる。より詳細には、化合物(I)の二水和物は、例えば以下の方法(A)又は(B)によって調製され得る。
【0036】
・調製方法(A)(次の工程を含む)
(a1)エタノール及び水混合溶液中に、酢酸、及び化合物(I)を混合し、酸性の混合溶液を調整する工程、(a2)工程(a1)で得られた溶液を4℃以下に冷却する工程、及び
(a3)冷却した溶液を、水酸化ナトリウム、水酸化カリウム等のアルカリを用いてpH7以上に調整する工程。
【0037】
・調製方法(B)(次の工程を含む)
(b1)エタノール及び水混合溶液中に、乳酸、及び化合物(I)を混合し、酸性の混合溶液を調製する工程、(b2)工程(b1)で得られた溶液を4℃以下に冷却する工程、並びに
(b3)冷却した溶液を、水酸化ナトリウム、水酸化カリウム等のアルカリを用いてpH7以上に調整する工程。
【0038】
一般式(I)で示されるベンゾチオフェン化合物又はその塩、の二水和物は、上記の工程(1)〜工程(3)によって製造され得る。工程(1)は、アルコール、水、酢酸及び乳酸よりなる群から選ばれる少なくとも1種の有機酸、及び化合物(I)を混合し、酸性の混合溶液を調製する工程(工程(1)’)であってもよい。 工程(1)は、特に好ましくは、エタノール−水混合溶液中に、酢酸及び乳酸よりなる群から選ばれる少なくとも1種の有機酸、並びに一般式(I)で示されるベンゾチオフェン化合物の無水物を混合し、酸性の溶液を調製する工程である。なお、有機酸として用いられる乳酸は、D体、L体、及びその混合物のいずれの乳酸であってもよい。
【0039】
工程(1)におけるエタノール−水混合溶液を調製する際のエタノールの含有割合は、95容量%程度以下が好ましく、70容量%程度以下がより好ましく、60容量%程度以下が更に好ましい。エタノールの含有割合を95容量%以下に設定することで、二水和物の形態の化合物(I)を得ることができる。また、エタノールの含有割合の限は、特に限定されるものではないが、例えば、20容量%程度が好ましく、30容量%程度がより好ましい。
【0040】
上記、エタノール−水混合溶液中における一般式(I)で示されるベンゾチオフェン化合物の濃度としては、0.1〜30重量%程度が好ましく、0.5〜20重量%程度がより好ましく、1〜10重量%程度がさらに好ましい。ここでの重量%はw/w%である。一般式(I)で示されるベンゾチオフェン化合物の濃度を上記の範囲に設定することで、エタノール−水混合溶液中に一般式(I)で示されるベンゾチオフェン化合物を十分に溶解させることができ、後述の工程(工程(2)及び(3))を行うことで、より純度の高い二水和物を得ることができる。
【0041】
配合される上記の有機酸の含有割合としては、系内が酸性条件下となるように配合すれば特に限定されるものではないが、例えば、エタノール−水混合溶液中、0.1〜20重量%程度が好ましく、0.3〜10重量%程度がより好ましく、0.5〜5重量%程度がさらに好ましい。
【0042】
また、前記有機酸の配合量は、系内が酸性条件下となるように配合すれば特に限定されるものではないが、例えば、一般式(I)で示されるベンゾチオフェン化合物100重量部に対して、5〜100重量部程度が好ましく、20〜80重量部程度がより好ましい。
【0043】
工程(1)における溶液を調製する際の温度としては、エタノール−水混合溶液、及び上記の有機酸を含む液中に、一般式(I)で示されるベンゾチオフェン化合物が溶解し得る温度であり、エタノール、水、又は上記の有機酸が揮発せず、さらに、当該一般式(I)で示されるベンゾチオフェン化合物が分解されない温度であれば、特に限定されない。具体的には、50〜120℃程度が好ましく、70〜100℃程度がより好ましく、還流温度(80℃程度)であればよい。 工程(2)は、前記工程(1)で得られた溶液を冷却する工程である。
【0044】
冷却温度としては、5℃以下であり、0℃程度以下が好ましく、−2℃程度以下がより好ましい。後の工程でアルカリを用いて溶液のpHを調整する際に発熱するため、冷却温度が5℃を超えると、一般式(I)で示されるベンゾチオフェン化合物又はその塩、の二水和物が十分に得られない傾向がある。なお、工程(2)における冷却温度の下限としては、特に限定されるものではないが、後の工程で、温度を昇温させる必要がある点、水が凍る等の観点から、−20℃程度が好ましく、−10℃程度がより好ましい。
【0045】
工程(3)は、前記工程(2)で冷却した溶液とアルカリを混合してpH7以上に調整する工程である。アルカリとしては、例えば、水酸化ナトリウム、水酸化カリウム等が挙げられる。
【0046】
なお、前記工程(2)で冷却した溶液アルカリを混合するに際しては、予めアルカリ水溶液を調製して、これを配合してもよい。アルカリ水溶液として用いる場合の濃度としては、例えば、0.1〜25重量%程度、好ましくは0.5〜10重量%程度の水溶液が挙げられる。
【0047】
また、上記のアルカリ(水溶液)を配合することによって系内の混合溶液の温度が急激に昇温することを避けるために、アルカリ(水溶液)を予め冷却しておくことが好ましい。アルカリ(水溶液)の温度としては、−5〜15℃程度が好ましく、−2〜5℃程度がより好ましい。
【0048】
アルカリの配合量としては、系内の溶液がpH7以上となるように配合できる量であれば、特に限定されるものではないが、例えば、工程(1)において溶液に配合した有機酸1重量部に対して、0.3〜10重量部程度が好ましく、0.5〜3重量部程度がより好ましい。
【0049】
工程(3)におけるアルカリを用いてpHを調整する際のpHとしては、7以上であり、7.5程度以上が好ましく、8程度以上がより好ましい。pHが7未満であると、一般式(I)で示されるベンゾチオフェン化合物又はその塩、の二水和物が十分に得られない傾向がある。なお、pHの上限としては、特に限定されるものではないが、例えば、析出した一般式(I)で示されるベンゾチオフェン化合物の二水和物を容易に洗浄することができる点、当該ベンゾチオフェン化合物が塩を形成する点等から、12程度が好ましく、10程度がより好ましい。
【0050】
上記工程(1)〜(3)によって、一般式(I)で示されるベンゾチオフェン化合物又はその塩、の二水和物が析出する。
【0051】
析出された一般式(I)で示されるベンゾチオフェン化合物又はその塩、の二水和物は、公知の方法によって、固液分離され、水を用いて洗浄することによって、精製される。
【0052】
得られる一般式(I)で示されるベンゾチオフェン化合物の二水和物は、さらに昇温することが好ましく、10℃程度以上が好ましく、10〜50℃程度がより好ましい。
【0053】
上記の製造方法で得られる一般式(I)で示されるベンゾチオフェン化合物の二水和物の理化学的性質を以下に示す。
【0054】
・X線粉末回折
一般式(I)で示されるベンゾチオフェン化合物の二水和物は、モノクロメーターを通したλ=1.5418Åの銅放射線を用いて測定されたX線粉末回折パターンによって同定される。前記X線粉末回折パターンにより、本発明の一般式(I)で示されるベンゾチオフェン化合物の二水和物は、図2に示されるピークを有し、下記に示す回折角(2θ)において特徴的なピークを有する。これらのピークは、公知の一般式(I)で示されるベンゾチオフェン化合物(無水物形態)についての前記X線粉末回折パターンで示されるピークと異なる特徴的なピークである。
【0055】
回折角(2θ)
8.1°
8.9°
15.1°
15.6°
24.4°
また、本発明の一般式(I)で示されるベンゾチオフェン化合物の二水和物は、上記のピーク以外にも、図2に示すように、下記に示す回折角(2θ)においてピークを有する。
【0056】
回折角(2θ)
11.6°,12.2°,14.0°,16.3°,18.1°,18.4°,18.9°,19.5°,20.5°,21.5°,22.6°,23.3°,25.0°,26.1°,26.4°,27.1°,28.1°,28.5°,28.9°,29.8°,30.4°,30.7°,31.6°,32.9°,33.9°,34.4°,35.2°,36.0°,36.7°,37.4°,38.3°
なお、前記の回折角(2θ)は、測定機器や測定条件等により、−0.2〜+0.2°の誤差が生じる可能性があるが、本発明においては、当該誤差は、許容範囲として含まれる。
【0057】
・赤外吸収測定
一般式(I)で示されるベンゾチオフェン化合物の二水和物は、臭化カリウム錠剤法によって測定された赤外吸収スペクトルによって同定される。前記赤外吸収スペクトルにおいて、本発明の一般式(I)で示されるベンゾチオフェン化合物の二水和物は、図3に示されるスペクトルを有し、下記に示す波数(cm−1)にピークを有する。
【0058】
波数
3509cm−1
2934cm−1
2812cm−1
1651cm−1
1626cm−1
1447cm−1
1223cm−1
839cm−1
また、本発明の一般式(I)で示されるベンゾチオフェン化合物の二水和物は、上記のピーク以外にも、図3に示すような波数においてピークを有する。
【0059】
なお、前記の波数(cm−1)は、測定機器や測定条件等により、−0.5〜+0.5cm−1の誤差が生じる可能性があるが、本発明においては、当該誤差は、許容範囲として含まれる。
【0060】
一般式(I)で示されるベンゾチオフェン化合物の二水和物は、ラマンスペクトルによって同定される。前記ラマンスペクトルにおいて、当該二水和物は、図4に示されるスペクトルを有し、下記に示す波数(cm−1)付近にピークを有する。
【0061】
波数
1497cm−1
1376cm−1
1323cm−1
1311cm−1
1287cm−1
1223cm−1
781cm−1
また、当該二水和物は、上記のピーク以外にも、図4に示すように、下記に示す波数付近においてピークを有する。
【0062】
波数
1656cm−1、1613cm−1、1563cm−1、1512cm−1、1468cm−1、1446cm−1、1241cm−1、1203cm−1、1145cm−1、1096cm−1、1070cm−1、971cm−1、822cm−1
・水分量
一般式(I)で示されるベンゾチオフェン化合物の二水和物の水分量は、6.5〜8.8重量%、より具体的には、7.3〜8.1重量%である。なお、水分量は、カールフィッシャー法の水分測定によって測定される。
【0063】
H−NMR測定
一般式(I)で示されるベンゾチオフェン化合物の二水和物は、H−NMR測定によって測定されたピークによって同定される。本発明の一般式(I)で示されるベンゾチオフェン化合物の二水和物は、図1に示されるH−NMRスペクトルを有し、下記実施例1において測定されたH−NMRのプロトンピークを有する。
【0064】
化合物(I)又はその塩の含有割合は、総注射製剤中、約0.1〜40重量%が好ましく、約1〜20重量%がより好ましく、約5〜15重量%がさらに好ましい。即ち、化合物(I)又はその塩は、総注射製剤に基づいて、好ましくは約0.1〜40%(w/v)、より好ましくは約1〜20%(w/v)、さらに好ましくは約2〜15重量%(w/v)、よりさらに好ましくは約5〜15%(w/v)、特に好ましくは5〜11%(w/v)の範囲内の量で、注射製剤中に存在する。より具体的には、例えば、約1〜400mg/mLが好ましく、約10〜200mg/mLがより好ましく、約20〜150mg/mLがさらに好ましく、約50〜110mg/mLがよりさらに好ましい。
【0065】
なお、本発明の注射製剤における、化合物(I)又はその塩の含有割合値又は含有量値は、化合物(I)換算の値である。
【0066】
化合物(I)又はその塩を比較的高濃度(具体的には、200mg/mL以上)含む本発明の注射製剤を調製するにあたっては、高粘性(泡のかみこみによる粘性の増加)により、注射液のハンドリングがしづらくなる場合がある。そのような場合は、調製工程中に脱泡工程を入れると好ましい。また、 粘性を抑制する懸濁化剤の使用や、さらに、撥水性バイアル(特にフッ素コート撥水性バイアル)を用いることも好ましい。撥水性バイアルを用いることにより、ハンドリングが向上し、泡の発生を抑制することができる。
【0067】
また、化合物(I)又はその塩の含有量は、総注射製剤中に約1〜400mgが好ましく、約10〜200mgがより好ましく、約50〜110mgがよりさらに好ましい。
【0068】
上記所望の一次粒子の平均粒子径を有する化合物(I)又はその塩の原末を調製する方法としては、メディアを用いる湿式ボールミリング法、メディアを用いない湿式粉砕(マントンゴーリー等)等の湿式粉砕法、ジェットミル粉砕法などの乾式粉砕法が使用される。また、液体窒素中や凍結下での凍結粉砕法が使用される。
【0069】
湿式粉砕手法は、好ましくは、湿式ボールミリング(wet ball milling)である。化合物(I)又はその塩の所望の一次粒子の平均粒子径が約1μmを超える場合、一次懸濁液(混合された化合物(I)又はその塩及びビヒクルを含む)は、約5〜約15L/時間、好ましくは約8〜約12L/時間、より好ましくは約10L/時間で、単一回(シングルパス)、湿式ボールミルを通過せしめられ、化合物(I)又はその塩の一次粒子の平均粒子径を所望の範囲内、例えば、約1〜約5μmに縮小させる。
【0070】
ボールミル(例えば、Dynoミル)に加えて、他の低エネルギーミル(例えば、ローラーミル)及び高エネルギーミルを使用することができ、そして高エネルギーミルとしては、例えば、Netzschミル、DCミル及びPlanetaryミルが使用される。
【0071】
使用可能な粒子径減少のための他の技術としては、制御された晶析法(aseptic controlled crystallization)、高剪断ホモジナイゼーション(high shear homogenization)、高圧ホモジナイゼーション(high pressure homogenization)及びマイクロフルイダイゼーション(microfluidization)が挙げられる。
【0072】
本発明の注射製剤は、上記特定の平均二次粒子径を有する、化合物(I)又はその塩の二次粒子を安定に含むことができる。
【0073】
化合物(I)又はその塩を有効成分として含む注射製剤においては、一次粒子のまま含む注射製剤に比べ、上記特定の平均二次粒子径を有する二次粒子として含む注射製剤の方が、投与後の持続性に優れる(具体的には、血中濃度の過剰な増大が見られず、且つ同等又はそれ以上の薬効の持続性を示す)。
【0074】
さらには、上記特定の平均二次粒子径を有する二次粒子径となった化合物(I)又はその塩を含む本発明の注射製剤は、長時間静置した際に当該二次粒子が沈殿するものの、当該沈殿はそのまま固く凝集してしまうことがなく、穏やかに撹拌する、あるいは手で軽く振るなどといった簡単な操作により、容易に当該二次粒子が懸濁され、もとの懸濁液に戻る。よって、本発明の注射製剤は、長時間保存後に沈殿が生じたとしても、簡単にもとの懸濁液に戻すことができ、そのまま好適に患者に注射することができる。
【0075】
なお、静置後に沈殿が生じる際、液面を1とした時の当該沈殿の高さ(Rf値)は、0.5以上が好ましく、0.6以上がより好ましく、0.7以上がさらに好ましく、0.8以上がよりさらに好ましい。当該Rf値は、注射製剤をよく撹拌し、室温で、5日間以上置いた後に測定した値である。Rf値が大きいほど、沈降した粒子が最密充填状態を形成しづらいと考えられ、従ってRf値が大きい製剤ほど、ハードケーキ形成防止効果が高い注射製剤である可能性が高いと考えられる。
【0076】
また、本発明の注射製剤は、浸透圧比が1に近く好ましい。具体的には、浸透圧比が好ましくは1〜2、より好ましくは1〜1.5、さらに好ましくは1〜1.2、よりさらに好ましくは1〜1.1である。
【0077】
本発明の化合物(I)又はその塩を含む注射製剤は、有効成分である化合物(I)又はその塩以外に、化合物(I)又はその塩のためのビヒクル、及び注射用水を含有することが好ましい。
【0078】
前記化合物(I)又はその塩のためのビヒクルとしては、例えば、粒子結合剤、分散剤(懸濁化剤)、等張化剤、安定化剤、緩衝剤、pH調整剤、溶剤等が挙げられる。特に、前述の通り、本発明の注射製剤は特定の粒子結合剤を含むことにより、化合物(I)又はその塩を凝集して二次粒子を形成させ、安定に当該二次粒子を含むことが好ましく可能となるため、特定の粒子結合剤を含むことは重要である。その他のビヒクルは、本発明の効果を損なわない範囲において、好適に用いることができる。
【0079】
分散剤(懸濁化剤(suspending agent))としては、例えば、カルボキシメチルセルロースナトリウム、ヒドロキシプロピルセルロース、カルボキシメチルセルロース、ヒドロキシプロピルエチルセルロース、ヒドロキシプロピルメチルセルロース、並びにCarbopol 934(登録商標)(Union Carbide))、塩化セチルピリジニウム、ゼラチン、カゼイン、レシチン(ホスファチド)、デキストラン、グリセロール、アカシアゴム、コレステロール、トラガカント、ステアリン酸、塩化ベンザルコニウム、ステアリン酸カルシウム、モノステアリン酸グリセロール、セトステアリルアルコール、セトマクロゴール乳化ワックス(cetomacrogol emulsifying wax)、ソルビタンエステル、ポリオキシエチレンアルキルエーテル(例えば、セトマクロゴール1000のようなマクロゴールエーテル)、ポリオキシエチレンヒマシ油誘導体(polyoxyethylene castor oil derivatives)、ドデシルトリメチルアンモニウムブロミド、ポリオキシエチレンステアレート、コロイダル二酸化ケイ素、ホスフェート、ドデシル硫酸ナトリウム、カルボキシメチルセルロースカルシウム(carboxymethylcellulose calcium)、ヒドロキシプロピルセルロース(例えば、HPC、HPC−SL、及びHPC−L)、メチルセルロース、ヒドロキシエチルセルロース、ヒドロキシプロピルセルロース、ヒドロキシプロピルメチル−セルロースフタレート、非結晶性セルロース(noncrystalline cellulose)、ケイ酸マグネシウムアルミニウム、トリエタノールアミン、ポリビニルアルコール(PVA)、エチレンオキサイド及びホルムアルデヒドとの4−(1,1,3,3−テトラメチルブチル)−フェノールポリマー(チロキサポール(tyloxapol)、スペリオン(superione)、及びトリトン(triton)としても公知);エチレンジアミンへのプロピレンオキサイド及びエチレンオキサイドの連続付加から誘導される四官能性ブロックコポリマー(ポロキサミン)(例えば、Tetronic 908(登録商標)、Poloxamine 908(登録商標)としても公知、これは、(BASF Wyandotte Corporation,Parsippany,N.J.));荷電リン脂質(charged phospholipid)、例えば、ジミリストイルホスファチジルグリセロール、ジオクチルスルホサクシネート(DOSS);Tetronic 1508(登録商標)(T−1508)(BASF Wyandotte Corporation)、スルホコハク酸ナトリウムのジアルキルエステル(例えば、Aerosol OT(登録商標)、これはスルホコハク酸ナトリウムのジオクチルエステルである(American Cyanamid));Duponol P(登録商標)、これはラウリル硫酸ナトリウムである(DuPont);Tritons X−200(登録商標)、これはアルキルアリールポリエーテルスルホネートである(Rohm and Haas);Crodestas F−110(登録商標)、これはスクロースステアレート及びスクロースジステアレートの混合物である(Croda Inc.);p−イソノニルフェノキシポリ−(グリシドール)、Olin−10G(登録商標)又はSurfactant 10−G(登録商標)としても公知(Olin Chemicals,Stamford,Conn.);Crodestas SL−40(登録商標)(Croda,Inc.);並びにSA9OHCO、これはC1837CH(CON(CH))−CH(CHOH)(CHOH)である(Eastman Kodak Co.);デカノイル−N−メチルグルカミド;n−デシル−β−D−グルコピラノシド;n−デシル−β−D−マルトピラノシド;n−ドデシル−β−D−グルコピラノシド;n−ドデシル−β−D−マルトシド;ヘプタノイル−N−メチルグルカミド;n−ヘプチル−β−D−グルコピラノシド;n−ヘプチル−β−D−チオグルコシド;n−ヘキシル−β−D−グルコピラノシド;ノナノイル−N−メチルグルカミド;n−ノニル−β−D−グルコピラノシド;オクタノイル−N−メチルグルカミド;n−オクチル−β−D−グルコピラノシド;オクチル−β−D−チオグルコピラノシド、メチオニン(D体、L体、及びラセミ体(DL体)のいずれであってもよい)、アラビアゴム、ポリビニルポリピロリドン等が挙げられる。これらの分散剤は1種単独で用いてもよく、2種以上を併用して用いてもよい。
【0080】
これらの分散剤の大部分は、公知の薬学的賦形剤であり、the American Pharmaceutical Association及びThe Pharmaceutical Society of Great Britainによって共同発行されたthe Handbook of Pharmaceutical Excipientsに詳細に記載されている(The Pharmaceutical Press, 1986)。また、これらの文献に記載される薬学的賦形剤を用いることもできる。分散剤は、市販されたものを用いてもよく、また、当該分野において公知の技術によって製造することができる。
【0081】
分散剤の濃度としては、総注射製剤中、約0.1〜45mg/mLが好ましく、約0.5〜40mg/mLがより好ましく、約0.6〜35mg/mLがさらに好ましい。分散剤の含有割合としては、総注射製剤中、約0.01〜10重量%が好ましく、約0.05〜8重量%がより好ましく、約0.06〜5重量%がさらに好ましい。また、分散剤の含有量は、化合物(I)又はその塩100重量部に対して、約0.01〜45重量部が好ましく、約0.1〜40重量部がより好ましく、約0.5〜35重量部がさらに好ましい。
【0082】
なお、分散剤が、他の添加剤としても機能を有する場合があり、その場合の濃度、含有割合、及び含有量は、各添加剤の濃度、含有割合、及び含有量の合計となる。
【0083】
等張化剤としては、例えば、マンニトール、スクロース、マルトース、キシリトール、グルコース、スターチ、ソルビトール、グリセリン、プロピレングリコール等の非電解質タイプの浸透圧調整剤;塩化ナトリウム、塩化カリウム、硫酸ナトリウム、塩化マグネシウム等の電解質タイプの浸透圧調整剤等が挙げられる。これらの等張化剤は、1種単独で用いてもよく、また、2種以上を併用して用いてもよい。
【0084】
さらに、前記粒子結合剤として油性粒子結合剤を用いる場合には、ソルビトールを用いることが好ましく、前記結合剤として水性粒子結合剤を用いる場合には、塩化ナトリウムを用いることが好ましい。
【0085】
なお、マンニトール、トレハロース、スクロース、マルトース、キシリトール、ソルビトール等の糖又は糖アルコールは、製造された注射製剤を冷凍保存するにあたり、製剤を安定化する働きが期待できる点でも好ましい。
【0086】
等張化剤の濃度としては、総注射製剤中、約0.1〜70mg/mLが好ましく、約0.5〜60mg/mLがより好ましく、約1〜55mg/mLがさらに好ましい。等張化剤の含有割合としては、総注射製剤中、約0.05〜10重量%が好ましく、約0.1〜7重量%がより好ましく、約0.2〜5重量%がさらに好ましい。また、等張化剤の含有量は、化合物(I)又はその塩100重量部に対して、約1〜70重量部が好ましく、約2〜60重量部がより好ましく、約4〜55重量部がさらに好ましい。
【0087】
なお、等張化剤が、他の添加剤としても機能を有する場合があり、その場合の濃度、含有割合、及び含有量は、各添加剤の濃度、含有割合、及び含有量の合計となる。
【0088】
安定化剤としては、例えば、アスコルビン酸、アスコルビン酸誘導体(例えば、エリスロビン酸、アスコルビン酸ナトリウム)、メチオニン等が挙げられる。なお、前記メチオニンは、D体、L体、及びラセミ体(DL体)のいずれであってもよい。
【0089】
安定化剤の濃度としては、総注射製剤中、約0.1〜5mg/mLが好ましく、約0.5〜4mg/mLがより好ましく、約1〜3mg/mLがさらに好ましい。安定化剤の含有割合としては、総注射製剤中、約0.01〜5重量%が好ましく、約0.05〜2重量%がより好ましく、約0.1〜0.5重量%がさらに好ましい。また、安定化剤の含有量は、化合物(I)又はその塩100重量部に対して、約0.1〜5重量部が好ましく、約0.5〜4重量部がより好ましく、約0.1〜3重量部がさらに好ましい。
【0090】
なお、安定化剤が、他の添加剤としても機能を有する場合があり、その場合の濃度、含有割合、及び含有量は、各添加剤の濃度、含有割合、及び含有量の合計となる。
【0091】
緩衝剤としては、例えば、リン酸ナトリウム、リン酸カリウム、TRIS緩衝剤、リン酸水素ナトリウム、リン酸二水素ナトリウム、リン酸三ナトリウム、又はその水和物等が挙げられ、より具体的には、リン酸二水素ナトリウム・二水和物、リン酸水素二ナトリウム・十二水和物等が挙げられる。これらの緩衝剤は、1種単独で用いてもよく、また2種以上併用して用いてもよい。
【0092】
緩衝剤の含有割合及び含有量は、化合物(I)又はその塩を含む注射製剤のpHを、後述するpH(好ましくは約4〜9、より好ましく約4.5〜8.5は、さらに好ましくは約5〜8)に調整する量で使用される。通常、緩衝剤の含有割合は、緩衝剤の種類等によって適宜変更されるが、例えば、総注射製剤中、約0.01〜10mg/mLが好ましく、約0.1〜7mg/mLがより好ましく、約0.2〜5mg/mLがさらに好ましい。総注射製剤中、約0.001〜5重量%が好ましく、約0.01〜1重量%がより好ましく、約0.02〜0.8重量%がさらに好ましい。また、緩衝剤の含有量についても、緩衝剤の種類等によって適宜変更されるが、例えば、化合物(I)又はその塩100重量部に対して、約0.01〜10重量部が好ましく、約0.1〜5重量部がより好ましく、約0.2〜3重量部がさらに好ましい。
【0093】
pH調整剤としては、例えば、注射製剤のpHが高く、pHを低く設定する場合には、酸性pH調整剤が用いられ、例えば、塩酸、酢酸、クエン酸等が用いられる。好ましくは塩酸が使用される。
【0094】
注射製剤のpHが低く、pHを高く設定する場合には、塩基性pH調整剤が用いられ、例えば、水酸化ナトリウム、水酸化カリウム、炭酸カルシウム、酸化マグネシウム又は水酸化マグネシウム等が用いられる。好ましくは水酸化ナトリウムが使用される。
【0095】
これらのpH調整剤は、1種単独で用いてもよく、また2種以上併用して用いてもよい。
【0096】
pH調整剤の含有割合及び含有量は、化合物(I)又はその塩を含む注射製剤のpHを、後述するpH(好ましくは約4〜9、より好ましく約4.5〜8.5は、さらに好ましくは約5〜8)に調整する量で使用され、前記所望のpHとするために、酸又は塩基が適宜選択される。
【0097】
上記化合物(I)又はその塩、及び該化合物(I)又はその塩のためのビヒクルを注射用水に懸濁させることによって、懸濁液が得られる。特に制限はされないが、まず当該ビヒクルを注射用水に溶解させて注射溶液を調製し、当該注射溶液に化合物(I)又はその塩を懸濁させることが好ましい。
【0098】
注射用水は、滅菌された水(純水)が用いられる。注射用水は、総注射製剤1mL中、約0.7〜1mLが好ましく、約0.8〜0.9mLがより好ましい。
【0099】
本発明の注射製剤は、上記懸濁液をそのまま注射製剤として用いることができる。
【0100】
得られた注射製剤のpHとしては、約4〜9が好ましく、約4.5〜8.5がより好ましく、約5〜8がさらに好ましい。pHを約5以上に設定することで、注射溶剤に溶解する薬物量を低下させた安定な懸濁液を好ましく調製できる。また、pHを約8以下に設定することで、刺激性を低下させた安定な懸濁液を好ましく調製できる。
【0101】
本発明の注射製剤に用いられる、化合物(I)又はその塩、及び該化合物(I)又はその塩のためのビヒクルは、凍結乾燥物であっても、粉末混合物であってもよい。凍結乾燥物である場合には、例えば、化合物(I)又はその塩、及び該化合物(I)又はその塩のためのビヒクルを、水に懸濁させた後、該懸濁液を凍結乾燥させることによって得られる。なお、凍結乾燥物又は粉末混合物中の化合物(I)又はその塩及びビヒクルの含有割合は、その後注射用水を加えることによって上記の含有割合となるように、適宜調整される。
【0102】
前記凍結乾燥物又は粉末混合物は、使用時に注射用水を加えることによって、注射製剤とすることもできる。
【0103】
本発明の注射製剤の製造方法としては、特に限定されるものではないが、例えば、粒子結合剤として水性粒子結合剤を用いる場合、ビヒクルを注射用水に溶解させ、注射溶液を得る工程、得られた注射溶液中に、さらに化合物(I)又はその塩を懸濁する工程によって製造され得る。
【0104】
また、粒子結合剤として油性粒子結合剤を用いる場合、例えば、ビヒクルを注射用水に溶解させ、滅菌済み親油性フィルターでろ過した油性粒子結合剤を添加し、注射溶液を得る工程、得られた注射溶液中に、さらに化合物(I)又はその塩を配合し、攪拌熱処理工程によって製造され得る。
【0105】
本発明の化合物(I)又はその塩を含む注射製剤は、患者にコンプライアンス問題を生じさせ難く、薬物を送達するために、好ましく投与することができる。
【0106】
本発明の化合物(I)又はその塩を含む注射製剤を製造する際には、製造工程全てが無菌状態であることが特に好ましい。すなわち、無菌の化合物(I)又はその塩及び無菌ビヒクルが無菌的に混合されて無菌懸濁液が形成されることが好ましい。
【0107】
無菌の化合物(I)又はその塩の原末を得る方法としては、電子線又はγ線による電離放射線照射、無菌晶析、UV照射、オートクレーブ等による滅菌、エチレンオキサイドもしくは過酸化水素によるガス滅菌、懸濁粒子ろ過滅菌、クリーンベンチ内での無菌操作等が使用される。
【0108】
ビヒクル(粒子結合剤、分散剤(懸濁化剤)、等張化剤、安定化剤、緩衝剤、pH調整剤、溶剤)及び水は、調製後、オートクレーブやろ過等により好ましく滅菌される。
【0109】
本発明の化合物(I)又はその塩を含む製剤は、ヒト患者における、統合失調症及び関連障害(例えば、双極性障害及び痴呆)を治療するために好ましく使用される。本発明の注射製剤のために使用される好ましい投薬量は、例えば、1ヶ月当たり化合物(I)又はその塩の量、約50〜150mg/mLを含有する単回注射又は複数注射である。注射製剤は、好ましくは筋肉内投与されるが、皮下注射も同様に許容される。
【0110】
本発明の注射製剤は、化合物(I)又はその塩の体内への持続放出期間が長いため、デポ剤(持効性注射製剤)として有用である。また、刺激性も小さく、安定性においても優れている。また、通針性が悪いと刺激性が大きくなるため、通針性が良好であることが好ましい。
【0111】
本発明の注射製剤によれば、治療が必要な患者へ、治療量の上述の持続性注射製剤を投与することができ、中枢神経疾患の治療を行うことができる。
【0112】
本発明のベンゾチオフェン化合物の二水和物を含む注射製剤の治療対象となる中枢神経疾患の具体例としては、統合失調症、治療抵抗性、難治性又は慢性統合失調症、感情障害、精神病性障害、気分障害、双極性障害(例えば、双極性I型障害及び双極性II型障害)、躁病、うつ病、内因性うつ病、大うつ病、メランコリー及び治療抵抗性うつ病、気分変調性障害、気分循環性障害、不安障害(例えば、パニック発作、パニック障害、広場恐怖、社会恐怖、強迫性障害、外傷後ストレス障害、全般性不安障害、急性ストレス障害)、身体表現性障害(例えば、ヒステリー、身体化障害、転換性障害、疼痛性障害、心気症)、虚偽性障害、解離性障害、性障害(例えば、性機能不全、性的欲求障害、性的興奮障害、勃起障害)、摂食障害(例えば、神経性無食欲症、神経性大食症)、睡眠障害、適応障害、物質関連障害(例えば、アルコール乱用、アルコール中毒及び薬物耽溺、覚醒剤中毒、麻薬中毒)、無快感症(例えば、医原性無快感症、心理的、精神的な原因での無快感症、うつ病に伴う無快感症、統合失調症に伴う無快感症)、せん妄、認知障害、アルツハイマー病、パーキンソン病、その他の神経変性疾患に伴う認知障害、認知症に伴うBPSD(Behavioral and Psychological Symptoms of Dementia)、統合失調症の認知障害、治療抵抗性、難治性又は慢性統合失調症に起因する認知障害、嘔吐、乗物酔い、肥満、偏頭痛、疼痛、精神遅滞、自閉性障害(自閉症)、トウレット障害、チック障害、注意欠陥多動性障害、行為障害及びダウン症候群等、中枢神経系の種々の障害があげられ、これらの中枢神経疾患の改善に極めて有効である。特に、統合失調症、双極性障害、又はうつの治療または再発予防のために好ましい。
【0113】
本発明の注射製剤の特に好ましい粒子結合剤の処方の一例としては、(i)塩化ナトリウムと、(ii)ポリオキシエチレンソルビタン脂肪酸エステル、エチレンオキサイド及びプロピレンオキサイドのブロックコポリマー、並びにポリエチレングリコールからなる群より選択される少なくとも1種、とを含む処方が挙げられる。ここでの(ii)としては、ポリオキシエチレンソルビタン脂肪酸エステル、及びポリエチレングリコールからなる群より選択される少なくとも1種であることがより好ましい。特に、化合物(I)の二水和物を用いる注射製剤においては、当該粒子結合剤の処方が好ましい。
【0114】
化合物(I)又はその塩、あるいは化合物(I)又はその塩及び塩化ナトリウムを含むことにより、化合物(I)又はその塩は好ましく二次粒子を形成し得るが、通針性がそれほど良好ではない。上記(ii)の成分は、通針性を良好とするはたらきがあり、このために粒子結合剤として(i)塩化ナトリウムと(ii)成分とを組み合わせて用いることが特に好ましい。
【0115】
なお、上述の通り、本発明の注射製剤は、長時間静置した際に化合物(I)又はその塩の二次粒子が沈殿するものの、そのまま固く凝集してしまうことがなく、穏やかに撹拌する、あるいは手で軽く振るなどといった簡単な操作により、容易に当該二次粒子が懸濁され、もとの懸濁液に戻るため、当該注射製剤を予めシリンジにプレフィルドしたプレフィルドシリンジは、特に臨床現場において有用である。すなわち、当該注射製剤をプレフィルドしたプレフィルドシリンジは、静置保存により沈殿が生じた場合であっても、手で軽く振る等することで容易にもとの懸濁液に戻るため、保存安定性がよく簡便なプレフィルドシリンジといえる。本発明は、このようなプレフィルドシリンジ、及び当該プレフィルドシリンジを備えるキットも包含する。
【発明の効果】
【0116】
本発明によれば、化合物(I)又はその塩の長時間作用を有する薬物投与形態として、少なくとも1週間、有効治療量で化合物(I)又はその塩を放出する、持続性注射製剤として有用である。また、本発明の注射製剤は、一次粒子のまま化合物(I)又はその塩を含む注射製剤に比べ、投与後の持続性に優れる(具体的には、血中濃度の過剰な増大は見られず、且つ、薬効の持続性は同等以上である)。さらに、長時間静置した際に化合物(I)又はその塩の二次粒子が沈殿したとしても、そのまま固く凝集してしまうことがなく、穏やかに撹拌する、あるいは手で軽く振るなどといった簡単な操作により、容易に当該二次粒子が懸濁され、もとの懸濁液に戻る。よって、本発明の注射製剤は、長時間(例えば5日又はそれ以上)保存後に沈殿が生じたとしても、簡単にもとの懸濁液に戻すことができ、そのまま好適に患者に注射することができる。
【図面の簡単な説明】
【0117】
図1】製造例1で合成した一般式(I)で示されるベンゾチオフェン化合物のH−NMRスペクトルである。
図2】製造例1で合成した一般式(I)で示されるベンゾチオフェン化合物の二水和物のX線粉末回折パターンである。
図3】製造例1で合成した一般式(I)で示されるベンゾチオフェン化合物の二水和物の赤外吸収スペクトルである。
図4】製造例1で合成した一般式(I)で示されるベンゾチオフェン化合物の二水和物のラマンスペクトルである。
図5】製造例2で合成した一般式(I)で示されるベンゾチオフェン化合物のH−NMRスペクトルである。
図6】製造例2で合成した一般式(I)で示されるベンゾチオフェン化合物の二水和物のX線粉末回折パターンである。
図7】製造例2で合成した一般式(I)で示されるベンゾチオフェン化合物の二水和物の赤外吸収スペクトルである。
図8】製造例2で合成した一般式(I)で示されるベンゾチオフェン化合物の二水和物のラマンスペクトルである。
図9】製造例3で合成した一般式(I)で示されるベンゾチオフェン化合物の二水和物のラマンスペクトルである。
図10】製造例4で合成した一般式(I)で示されるベンゾチオフェン化合物の無水物のH−NMRスペクトルである。
図11】製造例4で合成した一般式(I)で示されるベンゾチオフェン化合物の無水物のX線粉末回折パターンである。
図12】製造例4で合成した一般式(I)で示されるベンゾチオフェン化合物の無水物の赤外吸収スペクトルである。
図13】試験例1において、実施例1及び2の化合物(I)を有効成分とする各注射製剤をラットにそれぞれ注射した際の平均血中濃度対時間プロファイルを示すグラフである。
図14】試験例2において、実施例3及び4の化合物(I)を有効成分とする各注射製剤をラットにそれぞれ注射した際の平均血中濃度対時間プロファイルを示すグラフである。
図15】試験例3において、実施例A及びB並びに比較例A及びBの各注射製剤をラットにそれぞれ注射した際の平均血中濃度対時間プロファイルを示すグラフである。
図16】試験例4において、実施例C〜Fの各注射製剤をラットにそれぞれ注射した際の平均血中濃度対時間プロファイルを示すグラフである。
図17】試験例5において、各実施例のRf値を測定した結果を示すグラフである。
【発明を実施するための形態】
【実施例】
【0118】
以下、実施例及び試験例を挙げて本発明をさらに詳細に説明するが、本発明はこれらに限定されるものではない。
【0119】
製造例1(化合物(I)二水和物の調製)
メタノール149L、7−ヒドロキシ−1H−キノリン−2−オン14.87kg、及び水酸化カリウム6.21kgを混合し、得られた混合物を攪拌した。溶解後、1−ブロモ−4−クロロブタン47.46kgを配合し、還流下7時間攪拌した。その後、10℃で1時間攪拌した。析出晶を遠心分離し、メタノール15Lで洗浄後、wet晶を取り出しタンクに仕込んだ。水149Lを加え、室温で攪拌した。遠心分離し、水30Lで洗浄後、wet晶を取り出しタンクに仕込んだ。メタノール74Lを加え、還流下1時間攪拌した後、10℃に冷却し攪拌した。析出晶を遠心分離し、メタノール15Lで洗浄した。分離晶は60℃で乾燥し、7−(4−クロロブトキシ)−1H−キノリン−2−オン15.07kgを得た。
【0120】
次いで、水20L、炭酸カリウム1.84kg、1−ベンゾ[b]チオフェン−4−イル−ピペラジン塩酸塩3.12kg、エタノール8Lを混合し、50℃で攪拌し、ここへ7−(4−クロロブトキシ)−1H−キノリン−2−オン2.80kgを混合し、還流下9時間攪拌した。溶媒を常圧で8L濃縮後、90℃ で1時間攪拌した。その後、9℃まで冷却後析出晶を遠心分離し、水8L、及びエタノール6Lで順次洗浄した。分離晶は60℃で乾燥し、粗生成物を得た。粗生成物4.82kg、エタノール96Lを混合し、酢酸4.8Lを流入した。還流下1時間攪拌し溶解をした。塩酸1.29kgを流入した後、10℃に冷却した。再度加熱し1時間還流させた後7℃まで冷却した。析出晶を遠心分離しエタノール4.8Lで洗浄した。分離晶は60℃で乾燥し、7−[4−(4−ベンゾ[b]チオフェン−4−イル−ピペラジン−1−イル)−ブトキシ]−1H−キノリン−2−オン・塩酸塩5.09kgを得た。得られた7−[4−(4−ベンゾ[b]チオフェン−4−イル−ピペラジン−1−イル)−ブトキシ]−1H−キノリン−2−オン・塩酸塩5.00kg、エタノール45L、水30Lを混合し、還流下攪拌し溶解させた。活性炭500g、水5Lを加え、還流下30分間活性炭処理を行った。熱時ろ過後、ろ液を還流下攪拌しながら水酸化ナトリウム511gを水1.5Lに溶解した溶液を流入した。還流下30分間攪拌後、水10L流入した後、40℃付近まで冷却後、析出晶を遠心分離し、水125Lで洗浄した。分離晶は80℃で乾燥し、7−[4−(4−ベンゾ[b]チオフェン−4−イル−ピペラジン−1−イル)−ブトキシ]−1H−キノリン−2−オン3.76kgを得た。
【0121】
得られた7−[4−(4−ベンゾ[b]チオフェン−4−イル−ピペラジン−1−イル)−ブトキシ]−1H−キノリン−2−オン3.2kg、エタノール64L、水74L、酢酸1.77kgを混合し、酸性の混合液を調製した後、攪拌しながら還流することにより溶解させた(還流温度:84℃)。−5℃まで冷却した後、0℃に冷却した25%水酸化ナトリウム5.9kg、水54Lの溶液に攪拌しながら30分かけて流入し、pH10の混合液を調製した。その後、5℃以下で1時間攪拌した後、20℃〜30℃に昇温し、さらに7時間攪拌し、固液分離した。得られた固形物中のアルカリがなくなるまで(具体的には、濾液のpHが7になるまで)、水(320L)で洗浄した。恒量になるまで(すなわち、それ以上重量が変化しない状態になるまで)風乾し、白色固体として7−[4−(4−ベンゾ[b]チオフェン−4−イル−ピペラジン−1−イル)−ブトキシ]−1H−キノリン−2−オン二水和物(未粉砕品)3.21kgを得た。
【0122】
上記方法により調製した二水和物のH−NMRスペクトル(DMSO−d,TMS)のH−NMRスペクトル(DMSO−d,TMS)を図1に示す。図1に示すように、H−NMRスペクトル(DMSO−d,TMS)は、1.64ppm(tt,J=7.4Hz,J=7.4Hz,2H),1.80ppm(tt,J=7.0Hz,J=7.0Hz,2H),2.44ppm(t,J=7.5Hz,2H),2.62ppm(br,4H),3.06ppm(br,4H),3.32ppm(s,4H+HO),4.06ppm(t,J=6.5Hz,2H),6.29ppm(d,J=9.5Hz,1H),6.80ppm(d,J=2.5Hz,1H),6.80ppm(dd,J=2.5Hz,J=9.0Hz,1H),6.88ppm(d,J=7.5Hz,1H),7.27ppm(dd,J=7.8Hz,J=7.8Hz,1H),7.40ppm(dd,J=0.5Hz,J=5.5Hz,1H),7.55ppm(d,J=9.0Hz,1H),7.61ppm(d,J=8.0Hz,1H),7.69ppm(d,J=5.5Hz,1H),7.80ppm(d,J=9.5Hz,1H),11.57ppm(s,1H)にピークを認めた。
【0123】
また、上記方法により調製された二水和物について、Bruker AXS社製のX線回折装置(D8 ADVANCE)を用いて、粉末X線回折を測定した。図2に粉末X線回折スペクトルを示す。図2に示すように、粉末X線回折スペクトルは、2θ=8.1°,8.9°,15.1°,15.6°、及び24.4°に回折ピークを認めた。それ以外のピークとしては2θ=11.6°,12.2°,14.0°,16.3°,18.1°,18.4°,18.9°,19.5°,20.5°,21.5°,22.6°,23.3°,25.0°,26.1°,26.4°,27.1°,28.1°,28.5°,28.9°,29.8°,30.4°,30.7°,31.6°,32.9°,33.9°,34.4°,35.2°,36.0°,36.7°,37.4°,38.3°に回折ピークを認めた。
【0124】
また、上記方法により調製された二水和物のIR(KBr)スペクトルを測定した。図3にIR(KBr)スペクトルを示す。図3に示すように、IR(KBr)スペクトルは、波数3509cm−1、2934cm−1、2812cm−1、1651cm−1、1626cm−1、1447cm−1、1223cm−1及び839cm−1付近に吸収を認めた。
【0125】
また、上記方法により調製された二水和物のラマンスペクトルを測定した。図4にラマンスペクトルを示す。図4に示すように、ラマンスペクトルは、波数1497cm−1、1376cm−1、1323cm−1、1311cm−1、1287cm−1、1223cm−1、及び781cm−1付近に吸収を認めた。
【0126】
また上記の波数以外にも、1656cm−1、1613cm−1、1563cm−1、1512cm−1、1468cm−1、1446cm−1、1241cm−1、1203cm−1、1145cm−1、1096cm−1、1070cm−1、971cm−1、822cm−1付近に吸収を認めた。
【0127】
さらに、上記方法により調製された二水和物を(株)三菱化学アナリテック製の水分測定装置(CA−100)を用いて、カールフィッシャー法により、水分量を測定した。その結果、得られた二水和物の水分量は、7.79重量%であった。
【0128】
製造例2(二水和物の微粉砕物の調製)
製造例1で得られた二水和物結晶2.73kgをジェットミルを使って粉砕した。この時、エアー圧5kgf/cm、供給機送り回転数を20rpmに設定した。7−[4−(4−ベンゾ[b]チオフェン−4−イル−ピペラジン−1−イル)−ブトキシ]−1H−キノリン−2−オン二水和物の微粉砕品2.61kg(95.6%)を得た。
【0129】
このようにして得られた二水和物(微粉砕品)の平均粒子径は、5.5μmであった。なお、平均粒子径は、日機装マイクロトラックHRAにより測定した。
【0130】
上記方法により調製した二水和物のH−NMRスペクトル(DMSO−d,TMS)のH−NMRスペクトル(DMSO−d,TMS)を図5に示す。図5に示すように、H−NMRスペクトル(DMSO−d,TMS)は、1.64ppm(tt,J=7.3Hz,J=7.3Hz,2H),1.80ppm(tt,J=6.9Hz,J=6.9Hz,2H),2.44ppm(t,J=7.3Hz,2H),2.62ppm(br,4H),3.06ppm(br,4H),3.32ppm(s,4H+HO),4.06ppm(t,J=6.5Hz,2H),6.29ppm(d,J=9.5Hz,1H),6.80ppm(d,J=2.5Hz,1H),6.80ppm(dd,J=2.3Hz,J=9.3Hz,1H),6.88ppm(d,J=7.5Hz,1H),7.27ppm(dd,J=8.0Hz,J=8.0Hz,1H),7.40ppm(d,J=5.5Hz,1H),7.55ppm(d,J=9.5Hz,1H),7.61ppm(d,J=8.0Hz,1H),7.69ppm(d,J=5.5Hz,1H),7.80ppm(d,J=9.5Hz,1H),11.57ppm(s,1H)にピークを認めた。
【0131】
また、上記方法により調製された二水和物の粉末X線回折を製造例1と同様の方法により測定した。図6に粉末X線回折スペクトルを示す。図6に示すように、粉末X線回折スペクトルは、2θ=8.2°、8.9°、15.2°、15.7°及び24.4°に回折ピークを認めた。
【0132】
それ以外のピークとしては2θ=6.8°、12.2°、14.0°、14.5°、17.4°、18.1°、18.5°、19.0°、19.2°、19.6°、20.3°、20.6°、21.5°、22.7°、23.4°、25.0°、26.1°、27.1°、28.6°、29.0°、30.4°、34.0°、34.5°、35.3°、36.7°に回折ピークを認めた。
【0133】
また、上記方法により調製された二水和物のIR(KBr)スペクトルを製造例1と同様の方法により測定した。図7にIR(KBr)スペクトルを示す。図7に示すように、IR(KBr)スペクトルは、波数3507cm−1、2936cm−1、2812cm−1、1651cm−1、1626cm−1、1447cm−1、1223cm−1及び839cm−1付近に吸収を認めた。
【0134】
また、上記方法により調製された二水和物のラマンスペクトルを測定した。図8にラマンスペクトルを示す。図8に示すように、ラマンスペクトルは、波数1496cm−1、1376cm−1、1323cm−1、1311cm−1、1286cm−1、1223cm−1、及び781cm−1付近に吸収を認めた。
【0135】
また上記の波数以外にも、1656cm−1、1614cm−1、1563cm−1、1512cm−1、1467cm−1、1446cm−1、1241cm−1、1203cm−1、1145cm−1、1095cm−1、1069cm−1、971cm−1、822cm−1付近に吸収を認めた。
【0136】
さらに、上記方法により調製された二水和物を(株)三菱化学アナリテック製の水分測定装置(CA−100)を用いて、カールフィッシャー法により、水分量を測定した。その結果、得られた二水和物の水分量は、6.74重量%であった。
【0137】
製造例3(7−[4−(4−ベンゾ[b]チオフェン−4−イル−ピペラジン−1−イル)−ブトキシ]−1H−キノリン−2−オン水和物の調製)
7−[4−(4−ベンゾ[b]チオフェン−4−イル−ピペラジン−1−イル)−ブトキシ]−1H−キノリン−2−オン5.0kg、エタノール100L、水115L、DL乳酸2.29kgを混合し、酸性の混合液を調製した後、攪拌しながら還流することにより溶解させた(還流温度:82℃)。−5℃まで冷却した後、1℃に冷却した水酸化ナトリウム1.48kg、水135Lの溶液に攪拌しながら約15分かけて流入し、pH11の混合液を調製した。その後、約2〜5℃で3時間攪拌した後、45℃に昇温し、45〜50℃でさらに2時間攪拌し、固液分離した。得られた固形物中のアルカリがなくなるまで(具体的には、濾液のpHが7になるまで)、水(200L)で洗浄した。さらにエタノール15Lと水20Lの混合液で洗浄した。恒量になるまで室温で風乾し、白色固体として7−[4−(4−ベンゾ[b]チオフェン−4−イル−ピペラジン−1−イル)−ブトキシ]−1H−キノリン−2−オン二水和物(未粉砕品)5.11kgを得た。
【0138】
得られた水和物は、製造例1と同様の化合物であった。
【0139】
また、上記方法により調製された水和物のラマンスペクトルを測定した。図9にラマンスペクトルを示す。図9に示すように、ラマンスペクトルは、波数1497cm−1、1376cm−1、1323cm−1、1311cm−1、1287cm−1、1223cm−1、及び782cm−1付近に吸収を認めた。
【0140】
また上記の波数以外にも、1656cm−1、1614cm−1、1563cm−1、1512cm−1、1468cm−1、1446cm−1、1241cm−1、1203cm−1、1145cm−1、1126cm−1、1096cm−1、1070cm−1、972cm−1、822cm−1付近に吸収を認めた。
【0141】
製造例4(化合物(I)無水物の製造)
前記製造例1で得られた7−[4−(4−ベンゾ[b]チオフェン−4−イル−ピペラジン−1−イル)−ブトキシ]−1H−キノリン−2−オン700g、エタノール14L、酢酸1.4Lを混合した後、還流温度(76℃)まで加熱し溶解させた。濃塩酸158mLを混合し、攪拌しながら10℃まで冷却した。その後、再度加熱し還流下1時間攪拌した後、10℃以下になるまで冷却した。析出する固体を吸引濾過し、エタノール0.7Lで洗浄した。恒量になるまで60℃で乾燥し、白色固体として7−[4−(4−ベンゾ[b]チオフェン−4−イル−ピペラジン−1−イル)−ブトキシ]−1H−キノリン−2−オン塩酸塩814gを得た。7−[4−(4−ベンゾ[b]チオフェン−4−イル−ピペラジン−1−イル)−ブトキシ]−1H−キノリン−2−オン塩酸塩800g、エタノール7.2L、水4.8Lを混合し、攪拌しながら還流温度(80℃)まで加熱した。熱時ろ過した後溶解させた。ここへ水酸化ナトリウム81.6gを水240mlに溶解した溶液を流入し、還流下30分攪拌した。水2.4Lを流入し攪拌しながら40℃まで冷却した。析出する固体をろ取し、水16Lで洗浄した。80℃で乾燥し白色固体として7−[4−(4−ベンゾ[b]チオフェン−4−イル−ピペラジン−1−イル)−ブトキシ]−1H−キノリン−2−オン無水物637gを得た。
【0142】
上記で得られた無水物のH−NMRを製造例1と同様の方法により測定した。H−NMRスペクトル(DMSO−d,TMS)を図10に示す。図10に示すように、H−NMRスペクトル(DMSO−d,TMS)は、1.63ppm(tt,J=7.3Hz,J=7.1Hz,2H),1.80ppm(tt,J=7.3Hz,J=6.3Hz,2H),2.44ppm(t,J=7.1Hz,2H),2.61ppm(m,4H),3.05ppm(m,4H),4.05ppm(t,J=6.3Hz,2H),6.29ppm(d,J=9.5Hz,1H),6.80ppm(d,J=2.5Hz,1H),6.80(dd,J=9.4Hz,J=2.5Hz,1H),6.88ppm(dd,J=7.8Hz,0.8Hz,1H),7.27ppm(dd,J=7.8Hz,J=7.8Hz,1H),7.39ppm(dd,J=5.6Hz,0.8Hz,1H),7.55ppm(d,J=9.4Hz,1H),7.61ppm(d,J=7.8Hz,1H),7.69ppm(d,J=5.6Hz,1H),7.80ppm(d,J=9.5Hz,1H),11.60(s,1H)にピークを認めた。
【0143】
また、上記で得られた無水物の粉末X線回折を製造例1と同様の方法により測定した。粉末X線回折スペクトルを図11に示す。図11に示すように、粉末X線回折スペクトルは、2θ=14.4°、19.1°、20.2°、21.3°、及び23.3°に回折ピークを認めた。
【0144】
また、上記方法により調製された無水物のIR(KBr)スペクトルを製造例2と同様の方法により測定した。図12にIR(KBr)スペクトルを示す。図12に示すように、上記で得られた7−[4−(4−ベンゾ[b]チオフェン−4−イル−ピペラジン−1−イル)−ブトキシ]−1H−キノリン−2−オンのIR(KBr)スペクトルにおいて、波数2941cm−1、2818cm−1、1655cm−1、1624cm−1、1449cm−1、1221cm−1、及び833cm−1付近に吸収を認めた。
【0145】
さらに、上記方法により調製された無水物の水分測定を製造例2と同様の方法により測定した。得られた無水物の水分量は、0.04重量%であった。
【0146】
<注射製剤>
上記方法により調製された、化合物(I)二水和物(製造例1で得たものを適宜粉砕した)、及び化合物(I)無水物、並びに次に示す各成分を用いて、下記に示す各実施例の注射製剤を調製した。特に記載が無い限り、化合物(I)二水和物、及び化合物(I)無水物は、適宜2〜6μmに粉砕したものを使用した。粒子径測定は(株)島津製作所製のレーザー回折式粒度分布測定装置(Laser Diffraction Particle Size Analyzer SALD−3000J又はSALD−3100)にて行った。なお、1mL中、化合物(I)二水和物が108mgの割合で含まれる注射製剤は、化合物(I)換算では100mg含まれる。
【0147】
・ポリエチレングリコール400(和光純薬工業(株)製のマクロゴール400)
・塩化ナトリウム(ナカライテスク(株)製)
・リン酸二水素ナトリウム・二水和物(ナカライテスク(株)製)
・リン酸水素二ナトリウム・十二水和物(和光純薬工業(株)製)
・ポリオキシエチレンソルビタンモノ脂肪酸エステル(ポリソルベート80)(日油(株)製のポリソルベート80)
・DL−メチオニン(和光純薬(株)製)
・ポリオキシエチレン(160)ポリオキシプロピレン(30)グリコール(BASFジャパン(株)製のPluronic F68)
・水酸化ナトリウム(和光純薬(株)製)
・ソルビトール(和光純薬工業(株)製のD(−)−ソルビトール)
・カルボキシメチルセルロースナトリウム(Hercules Chemical Co., Ltd.製の
Sodium carboxymethyl cellulose)
・安息香酸ベンジル(ナカライテスク(株)製)
【0148】
実施例1(水性粒子結合剤を用いた化合物(I)無水物を有効成分とする注射製剤の調製)
ビヒクルとして、ポリエチレングリコール400(8640mg)、ポリオキシエチレン(160)ポリオキシプロピレン(30)グリコール(300mg)、塩化ナトリウム(12000mg)、DL−メチオニン(750mg)、リン酸二水素ナトリウム・二水和物(226mg)、リン酸水素二ナトリウム・十二水和物(176mg)、及びポリソルベート80(90mg)を秤量し、500mLビーカーに加えた。注射用水を240mL添加し、スターラーを用いて溶解させた。前記ビヒクルが注射用水に溶解したことを確認した後に、得られた溶液をクリーンベンチ内(バイオクリーンベンチ、MCV−B161F、バイオメディック(株)製)でポリエチレンスルホン(polyethersulfone)(PES)フィルター(Millipore Express PLUS high flow rate、73mm/0.22μm、SCGP U11 RE、日本ミリポア(株)製)に通液した。クリーンベンチ内でフィルターに通過させた溶液に化合物(I)無水物を30000mg添加し、スターラーを用いて懸濁し、さらに、PESフィルターを通過させた1又は5N水酸化ナトリウムを用いてpHを約7に調整した。メスシリンダーにて得られた溶液の容量を測定し、その一部(0.5mL)を採取した。HPLC法により化合物(I)の含量を測定後、化合物(I)濃度が100 mg/mLになるように注射用水にて調整した。
【0149】
その後、バイアル(φ23×35、口径13mm、岩田硝子工業(株))に充填し、オートクレーブ処理(121℃、20分)を行い、注射製剤を得た。なお、得られた注射製剤のpHは6.54であった。
【0150】
得られた注射製剤中の化合物(I)無水物の粒子径測定を(株)島津製作所製のレーザー回折式粒度分布測定装置(Laser Diffraction Particle Size Analyzer SALD−3000J又はSALD−3100)により行った。より具体的には、循環セルを使用し、媒体として水を使用し、循環させながら測定した平均粒子径を平均二次粒子径とし、同様の条件に加えて測定時に測定媒体に超音波照射を行って測定した平均粒子径を平均一次粒子径とした。(以下も同様とした。)化合物(I)無水物の平均二次粒子径は10.480μmであり、化合物(I)無水物の粒子が凝集し、二次粒子を形成していることが確認できた。
【0151】
実施例2(水性粒子結合剤を用いた化合物(I)二水和物を有効成分とする注射製剤の調製)
化合物(I)無水物に代えて化合物(I)二水和物を用いたこと、及びオートクレーブ処理を行わなかったこと、以外は、実施例1と同様の方法で注射製剤を得た。なお、得られた注射製剤のpHは7.08であった。
【0152】
また、得られた注射製剤中の化合物(I)二水和物の粒子径測定を実施例1と同様の方法により測定した。化合物(I)二水和物の平均粒子径は、9.819μmであり、化合物(I)二水和物の粒子が凝集し、二次粒子を形成していることが確認できた。
【0153】
実施例1及び2によって得られた注射製剤の処方、及び処方量(すなわち、該注射製剤の組成)を表1に示す。
【0154】
【表1】
なお、実施例2を再度同様の方法で調製し直し(実施例2b)、さらに同時に、塩化ナトリウム量を5mg/mLではなく、10mg/mLに変更した注射製剤(実施例2c)、さらに当該例からポリエチレングリコールを省いた注射製剤(実施例2a)を調製した。すなわち、次の表2のような製剤(実施例2a、2b、及び2c)を調製した。さらに、実施例2a、2b、2cについて、60℃で1ヶ月間静置して分散性及び再分散性を検討した。また、静置前後で平均一次粒子径及び平均二次粒子径を測定した。これらの結果も併せて表2に示す。
【0155】
【表2】
なお、表中、「分散性(60℃/1M、Rf)」欄に記載される値は、各注射製剤を調製後に60℃で1ヶ月静置させた際、生じた沈殿の高さが液面の高さの何倍に当たるかを示す。すなわち、液面を1とした時の沈殿の高さの割合を示す。(60℃/1Mが、60℃で1ヶ月間静置したことを示す。)
また、「再分散性(60℃/1M)」欄に記載の「○」は、いずれの注射製剤も、60℃で1ヶ月静置させ沈殿が生じた後、軽く手で振るだけで容易に再分散してもとの懸濁液に戻ったことを示す。
【0156】
実施例3(油性粒子結合剤を用いた化合物(I)無水物を有効成分とする注射製剤の調製)
カルボシキメチルセルロースを秤量(15000mg)し、300mLビーカーに加えた。注射用水を120mL添加し、ホモジナイザー(OMNI TH, OMNI International)を用いて50℃にて溶解させた。次いで、ソルビトール(75000mg)、リン酸二水素ナトリウム・二水和物(117mg)、及びポリソルベート80(150mg)を秤量し、300mLビーカーに加え充分に攪拌した。溶解確認後、クリーンベンチ内(バイオクリーンベンチ、MCV−B161F、バイオメディック、バイオメディック(株)製)でPES(polyethersulfone)フィルター(Millipore Express PLUS high flow rate,73mm/0.22μm, SCGP U11 RE,日本ミリポア(株)製)を通した。一方、クリーンベンチ内で、風袋重量を測定した10mLのメスフラスコの秤線までに、予めエチレンオキサイドにより滅菌処理済みのPTFE(polytetrafluoroethylene)フィルター(Millex(登録商標) FG 0.2 μm、25mm、日本ミリポア(株))を通した安息香酸ベンジルを加え、メスフラスコの重量を秤量した。秤量結果から算出した密度を基に、添加する安息香酸ベンジルを見積もり、添加必要量の安息香酸ベンジルをPESフィルターに通した溶液に加え、十分に混合した。クリーンベンチ内で秤量した化合物(I)無水物(16215mg)をさらに添加し、PESフィルターを通過させた1もしくは5N水酸化ナトリウムを用いてpHを約7に調整した。メスシリンダーにて容量を測定し、その一部(0.5mL)を採取した。HPLC法により化合物(I)の含量を測定後、化合物(I)の濃度が, 100 mg/mLになるように注射用水にて容量を調整した。なお、得られた注射製剤のpHは6.95であった。
【0157】
また、注射製剤中の化合物(I)無水物の粒子径測定を実施例1と同様の方法により測定した。化合物(I)無水物の平均粒子径は、13.237μmであり、化合物(I)無水物の粒子が凝集し、二次粒子を形成していることが確認できた。
【0158】
実施例4(油性粒子結合剤を用いた化合物(I)二水和物を有効成分とする注射製剤の調製)
化合物(I)無水物に代えて、化合物(I)二水和物を用いた以外は、実施例3と同様の方法で注射製剤を得た。なお、得られた注射製剤のpHは7.06であった。
【0159】
また、注射製剤中の化合物(I)二水和物の粒子径測定を実施例1と同様の方法により測定した。化合物(I)二水和物の平均粒子径は、8.025μmであり、化合物(I)二水和物の粒子が凝集し、二次粒子を形成していることが確認できた。
【0160】
実施例3及び4によって得られた注射製剤の処方、及び処方量を表3に示す。
【0161】
【表3】
なお、実施例4を再度同様の方法で調製し直し(実施例4b)、さらに同時に、安息香酸ベンジル使用量を0.8mg/mLではなく、0.6mg/mL(実施例4a)又は1.0mg/mL(実施例4c)に変更し、それ以外の条件は同様にして注射製剤を調製した。すなわち、次の表4のような製剤(実施例4a、4b、及び4c)を調製した。さらに、実施例4a、4b、4cについて、60℃で1ヶ月間静置して分散性及び再分散性を検討した。また、静置前後で平均一次粒子径及び平均二次粒子径を測定した。これらの結果も併せて表2に示す。
【0162】
【表4】
なお、表中の欄の記載は、表2について説明したのと同様である。
【0163】
またさらに、実施例1及び実施例3についても再度調製し直して(実施例1a及び3a)それらの平均粒子径を測定したところ、実施例1aは平均一次粒子径が5.0μm、平均二次粒子径が10.3μmであり、実施例3aは平均一次粒子径が3.9μm、平均二次粒子径が15.1μmであった。
【0164】
実施例5
化合物(I)無水物に代えて、化合物(I)二水和物を用いた点、及び、安息香酸ベンジル0.3mg/mLの代わりにベンジルアルコール10mg/mLとなるようにした点以外は、実施例3と同様にして、注射製剤を調製した。当該注射製剤における化合物(I)二水和物の平均二次粒子径は6.9μmであり、また、平均一次粒子径は2.3μmであった。よって、化合物(I)二水和物の粒子が凝集し、二次粒子を形成していることが確認できた。さらに、当該注射製剤を室温で4日静置したところ、沈殿が生じたが、手で軽く振るだけで、容易にもとの懸濁液に戻った。
【0165】
試験例1及び2
実施例1〜4において調製された化合物(I)無水物又は化合物(I)二水和物を有効成分として含む各注射製剤を、25mg/kgの用量で、雄性ラットの下腿筋中へ注射した。投与後の化合物(I)の血中移行性評価のために、血液サンプルを投与後0.25、1、3、6、9、14、21及び28日後に採取し、血中における化合物(I)の濃度をそれぞれ測定した。
【0166】
図13に実施例1及び2で調製した注射製剤を投与した結果得られた、平均血中濃度−時間プロファイルを示し、図14に実施例3及び4で調製した注射製剤を投与した結果得られた、平均血中濃度−時間プロファイルを示す。図13及び図14より、化合物(I)無水物及び二水和物を用いたいずれの注射製剤を投与した場合においても、少なくとも28日は、化合物(I)の血中濃度が持続することがわかった。特に、試験例2(図14)の結果から、実施例4の化合物(I)二水和物を用いて得られた注射製剤を投与した場合、血中濃度の過剰な増大は見られず、安定した血中濃度を示すことがわかった。
【0167】
試験例3
以下の表5に示す処方の注射製剤(実施例A及び実施例B)を、それぞれ実施例3及び4と同様にして調製した。
【0168】
【表5】
さらに、以下の表6に示す処方の凍結乾燥注射製剤(比較例A及び比較例B)を、特開2012−232958号公報の実施例に記載される方法にて調製した。(当該公報の内容は参照により本明細書に組み込まれる。)なお、調製は100mLのスケールで行った。
【0169】
【表6】
そして、実施例A及びB並びに比較例A及びBを、化合物(I)25mg/kgの用量で、雄性ラットの下腿筋中へ注射した。投与後の化合物(I)の血中移行性評価のために、血液サンプルを投与後0.25、1、3、6、9、14、21、及び28日後に採取し、血中における化合物(I)の濃度をそれぞれ測定した。なお、比較例A及びBの凍結乾燥注射製剤は、化合物(I)又はその塩が二次粒子径を形成していない製剤である。
【0170】
図15に得られた結果をグラフ化して示す。図15から、化合物(I)又はその塩が特定の粒子径の二次粒子を形成している本発明の注射製剤であれば、二次粒子径を形成しない場合に比べて、投与開始後のバーストが低く抑えられ、且つ、薬効の持続性も良好であることがわかった。
【0171】
試験例4
以下の表7に示す処方の注射製剤(実施例C〜実施例F)を、実施例2と同様にして調製した。
【0172】
【表7】
そして、実施例実施例C〜Fを、化合物(I)25mg/kgの用量で、雄性ラットの下腿筋中へ注射した。投与後の化合物(I)の血中移行性評価のために、血液サンプルを投与後0.25、1、3、6、9、14、21、及び28日後に採取し、血中における化合物(I)の濃度をそれぞれ測定した。
【0173】
図16に得られた結果をグラフ化して示す。また、表8に、各実施例を投与した際のCmax及びAUC28dayを表7に示す。
【0174】
【表8】
これらの結果から、実施例C〜Fは、いずれも、投与から1ヶ月間、化合物(I)の血中濃度が維持されることが確認できた。
【0175】
試験例5
実施例2と同様に、各ビヒクル成分を注射用水に溶解し、得られた注射溶液に化合物(I)二水和物を懸濁して、表9〜12に記載の処方を有する各注射製剤(実施例G−1〜G−6、実施例H−1〜H−6、実施例I−1〜I−6、及び実施例J−1〜J−6)を調製した。
【0176】
【表9】
【0177】
【表10】
【0178】
【表11】
【0179】
【表12】
各実施例のRf値(液面を1とした時の沈殿の高さ)を測定した結果を表13に示す。当該Rf値は、各実施例を室温にて振動を与えながら5日間置いた時の値である。当該検討に用いた試験管及び振動試験機は次の通りである。
<各実施例を充填した試験管>
ねじ口試験管NR-10 (株式会社マルエム)
材質(本体):硼珪酸ガラス、
長さ:105mm、
形状:丸底、
容量:12mL、
胴径(φ)×全高:φ16.5mm×105mm
<各試験管を設置した振動試験機>
新晃工業株式会社 空調機 DH-14(当該空調機の上に注射製剤を充填した試験管を設置することにより、振動機として利用した。)
振動レベル計(リオン株式会社 振動レベル計 VM-53A)を用いて当該空調機の振動を測定したところ、X軸方向:68dB、 Y軸方向:76dB、 Z軸方向:90dB の振動があった。
【0180】
なお、振動を与えることより、沈殿が密になってハードケーキ形成を促進すると考えられることから、当該Rf値測定条件は静置に比べて厳しい条件であるといえる。
【0181】
またさらに、表13をグラフ化した図を図17に示す。表13及び図17では、PS80はポリソルベート80を、PEGはマクロゴール400を、F68はポリオキシエチレン(160)ポリオキシプロピレン(30)グリコール(Pluronic F68)を、それぞれ示す。また、各成分の後ろに記載される(+)は当該成分が含まれていることを、(−)は当該成分が含まれていないことを、それぞれ示す。以下の表14も同様である。
【0182】
【表13】
試験例6
実施例G−1〜G−6、実施例H−1〜H−6、実施例I−1〜I−6、及び実施例J−1〜J−6の注射製剤について、次のようにして通針性を検討した。
【0183】
調製後5日間振動させながら置いた実施例G−1〜G−6、実施例H−1〜H−6、実施例I−1〜I−6、及び実施例J−1〜J−6を転倒混和して沈殿を再分散させた。なお、いずれの注射製剤も、一度転倒混和するだけで沈殿は良好に再分散した。
【0184】
そして、27G×1.5inch(テルモ株式会社)注射針をつけたシリンジに各実施例の注射製剤を500μLずつ充填し、摘出筋肉(鶏モモ肉)に注射可能かを検討した。結果を表14に示す。なお、表14では、全量が注射可能であった(すなわち通針性が良好であった)注射製剤をaで、針が詰まって全量注射ができなかった注射製剤をbで示す。
【0185】
【表14】
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12
図13
図14
図15
図16
図17