(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6249977
(24)【登録日】2017年12月1日
(45)【発行日】2017年12月20日
(54)【発明の名称】映像ホログラムおよび映像ホログラム再生装置
(51)【国際特許分類】
G03H 1/22 20060101AFI20171211BHJP
G03H 1/16 20060101ALI20171211BHJP
【FI】
G03H1/22
G03H1/16
【請求項の数】29
【外国語出願】
【全頁数】12
(21)【出願番号】特願2015-58246(P2015-58246)
(22)【出願日】2015年3月20日
(62)【分割の表示】特願2013-54064(P2013-54064)の分割
【原出願日】2003年11月11日
(65)【公開番号】特開2015-156029(P2015-156029A)
(43)【公開日】2015年8月27日
【審査請求日】2015年4月20日
(31)【優先権主張番号】102 53 292.3
(32)【優先日】2002年11月13日
(33)【優先権主張国】DE
【前置審査】
(73)【特許権者】
【識別番号】505176523
【氏名又は名称】シーリアル、テクノロジーズ、ゲーエムベーハー
【氏名又は名称原語表記】SEEREAL TECHNOLOGIES GMBH
(74)【代理人】
【識別番号】100076428
【弁理士】
【氏名又は名称】大塚 康徳
(74)【代理人】
【識別番号】100115071
【弁理士】
【氏名又は名称】大塚 康弘
(74)【代理人】
【識別番号】100112508
【弁理士】
【氏名又は名称】高柳 司郎
(74)【代理人】
【識別番号】100116894
【弁理士】
【氏名又は名称】木村 秀二
(74)【代理人】
【識別番号】100130409
【弁理士】
【氏名又は名称】下山 治
(74)【代理人】
【識別番号】100170667
【弁理士】
【氏名又は名称】前田 浩次
(72)【発明者】
【氏名】アルミン、シュベルトナー
【審査官】
小西 隆
(56)【参考文献】
【文献】
国際公開第01/095016(WO,A1)
【文献】
特表2003−536297(JP,A)
【文献】
特開2002−149045(JP,A)
【文献】
特開2000−122514(JP,A)
【文献】
特表平11−502095(JP,A)
【文献】
特開2000−059822(JP,A)
【文献】
特開2002−182548(JP,A)
【文献】
特開平06−027864(JP,A)
【文献】
特開平08−262962(JP,A)
【文献】
特表2006−506660(JP,A)
【文献】
特開2010−146019(JP,A)
【文献】
特開2013−156646(JP,A)
【文献】
米国特許出願公開第2004/0021768(US,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G03H 1/00 − 5/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
見る対象となる3次元シーンのホログラフィック再構成を生成する、ビデオホログラフィのためのディスプレイ装置であって、
ホログラムで符号化されるホログラム記録媒体であって、観察者の左眼および右眼のために共通して用いられる前記ホログラム記録媒体を照明するための、光源と、光学系とを含み、
前記ディスプレイ装置は、前記観察者の前記左眼のために、そしてその後に当該観察者の前記右眼のために、前記ホログラム記録媒体においてホログラムを時系列で再符号化するように動作可能なコンピュータプロセッサを含み、前記ホログラム記録媒体はセルを含み、前記ホログラムは、前記コンピュータプロセッサによって生成されるホログラム値を含み、前記ホログラム値が前記ホログラム記録媒体の前記セルに符号化される、
ことを特徴とするディスプレイ装置。
【請求項2】
前記ホログラフィック再構成は、前記ホログラムと、像平面に形成されるビューイングウィンドウとにより定まる体積内に発生し、
前記観察者は、前記ビューイングウィンドウを介して前記再構成を見ることを要求される、
ことを特徴とする請求項1に記載のディスプレイ装置。
【請求項3】
前記光源の像平面に位置するように制約される少なくとも1つのビューイングウィンドウが生成される、
ことを特徴とする請求項1に記載のディスプレイ装置。
【請求項4】
ビューイングウィンドウの少なくとも1つは、前記ホログラム記録媒体より小さい、
ことを特徴とする請求項1又は2に記載のディスプレイ装置。
【請求項5】
前記観察者の眼のそれぞれのための、別個のビューイングウィンドウがある、
ことを特徴とする請求項1又は2に記載のディスプレイ装置。
【請求項6】
各ビューイングウィンドウは、1cm×1cm以下である、
ことを特徴とする請求項5に記載のディスプレイ装置。
【請求項7】
観察者の目の位置が追跡され、当該観察者の頭が動いたときにも当該観察者が各ビューウィングウィンドウを介した光景を維持することができるように、前記ビューイングウィンドウの位置を変動させる、
ことを特徴とする請求項5に記載のディスプレイ装置。
【請求項8】
前記3次元シーンは複数の点を含み、
前記ホログラム記録媒体における前記ホログラムは、前記3次元シーンにおける前記複数の点の1つを再構成するのに必要な情報を有する領域を含み、
前記点は特定の観察位置から見ることができ、
前記領域は、(a)再構成される前記3次元シーンにおける前記点のための情報で符号化され、(b)当該点のための情報で符号化される前記ホログラムにおける唯一の領域であり、(c)前記ホログラムの全体の一部分を形成するための大きさが、高次回折に起因する前記点の複数の再構成を前記特定の観察位置において見ることができないように限られる、
ことを特徴とする請求項1に記載のディスプレイ装置。
【請求項9】
前記領域は位置及び大きさが可変であり、当該領域の当該位置及び大きさは前記点の位置と前記特定の観察位置の配置とによって決まる、
ことを特徴とする請求項8に記載のディスプレイ装置。
【請求項10】
前記3次元シーンは複数の離散的な点で構成され、
前記ディスプレイ装置は、
(a)再構成すべき前記3次元シーンにおける点を選択し、
(b)再構成された3次元シーンが見られるビューイングウィンドウを定め、
(c)前記ビューイングウィンドウのエッジから、選択された前記点を経て、前記ホログラム記録媒体の部分のみを形成する領域上へのピラミッド形をトレースし、
(d)選択された前記点のホログラフィック再構成を生成するために必要なホログラフィック情報を、前記ホログラム記録媒体の前記領域においてのみ生成する、
ことを特徴とする請求項1に記載のディスプレイ装置。
【請求項11】
前記ホログラム記録媒体は、観察者の眼が前記光源の像平面に位置する場合にのみビデオホログラフィック再構成を見ることができるように、コンピュータプロセッサにより生成されるホログラムの系列を用いて符号化され、
前記3次元シーンの前記ホログラフィック再構成は、前記光源の前記像平面から空間的に離間している、
ことを特徴とする請求項1に記載のディスプレイ装置。
【請求項12】
前記ディスプレイ装置は、前記ホログラフィック再構成が、前記ホログラムのフーリエ変換ではなく、前記ホログラムのフレネル変換であるように動作可能である、
ことを特徴とする請求項1に記載のディスプレイ装置。
【請求項13】
前記ディスプレイ装置は、前記光学系を用いて、像平面において前記ホログラムのフーリエ変換を生成するように動作可能である、
ことを特徴とする請求項1に記載のディスプレイ装置。
【請求項14】
複数の観察者が3次元シーンを見ることができるように、追加の光源をオンにすることにより、追加のビューイングウィンドウを生成する、
ことを特徴とする請求項1に記載のディスプレイ装置。
【請求項15】
前記光源は、複数の光源、少なくとも1つの仮想光源、少なくとも1つの線状の光源、及び少なくとも1つの点光源の、少なくともいずれかを含む、
ことを特徴とする請求項1に記載のディスプレイ装置。
【請求項16】
前記ホログラム記録媒体は、TFTフラットスクリーンである、
ことを特徴とする請求項1に記載のディスプレイ装置。
【請求項17】
前記ディスプレイ装置は、テレビ受像機、マルチメディアデバイス、ゲーミングデバイス、医療画像表示装置、又は軍事情報表示装置である、
ことを特徴とする請求項1に記載のディスプレイ装置。
【請求項18】
前記ホログラム記録媒体のフーリエ変換の周期性間隔で前記光源の像平面にビューイングウィンドウが形成され、
当該ビューイングウィンドウは、観察者が前記3次元シーンを表す前記ホログラフィック再構成を見るために少なくとも一方の眼を配置する位置であり、
当該ビューイングウィンドウの大きさは、前記ホログラム記録媒体により回折した光の1つの回折次数より大きくない、
ことを特徴とする請求項1に記載のディスプレイ装置。
【請求項19】
2つのビューイングウィンドウが前記光源の像平面において生成されるように前記光学系を用いた照明が与えられ、
前記ホログラム記録媒体におけるホログラムがビューイングウィンドウの起動と同期して再符号化されるか、2つのビューイングウィンドウが2つの光源を用いて同時に生成される、
ことを特徴とする請求項1に記載のディスプレイ装置。
【請求項20】
前記観察者の片眼又は両眼の位置を追跡する位置センサを有する、
ことを特徴とする請求項1に記載のディスプレイ装置。
【請求項21】
前記ホログラム記録媒体のセルは、マトリクス状に又はその他の規則的なパターンに配置されると共に少なくとも1つの開口を有し、
前記開口は、少なくとも1つの前記光源の光の位相または振幅を変調するために制御可能である、
ことを特徴とする請求項1に記載のディスプレイ装置。
【請求項22】
ビデオホログラムがカラーで再構成され、
前記再構成は、セルごとに3原色を表現する少なくとも3つの開口を用いて実行され、
前記開口は、少なくとも1つの前記光源の光の位相または振幅を変調するために制御可能であり、
前記開口は、前記原色のそれぞれに対して個別に符号化される、
ことを特徴とする請求項21に記載のディスプレイ装置。
【請求項23】
ビデオホログラムがカラーで再構成され、
原色のそれぞれに対して、少なくとも3つの再構成が次々と実行される、
ことを特徴とする請求項1又は21に記載のディスプレイ装置。
【請求項24】
前記ホログラム記録媒体は、位相又は振幅を制御することを特徴とする請求項1に記載のディスプレイ装置。
【請求項25】
観察者の左眼および右眼のために共通して用いられるホログラム記録媒体を照明するための光源と光学系とを含むディスプレイ装置と、コンピュータプロセッサとを用いて、3次元シーンのホログラフィック再構成を生成する方法であって、
前記ディスプレイ装置は、前記観察者の前記左眼のために、そしてその後に当該観察者の前記右眼のために、前記ホログラム記録媒体においてホログラムを時系列で再符号化するように動作可能なコンピュータプロセッサを含み、前記ホログラム記録媒体はセルを含み、前記ホログラムは、前記コンピュータプロセッサによって生成されるホログラム値を含み、前記ホログラム値が前記ホログラム記録媒体の前記セルに符号化される、
ことを特徴とする方法。
【請求項26】
請求項25に記載の方法によりホログラフィック再構成を生成するためのホログラムを符号化することを特徴とするコンピュータ。
【請求項27】
見る対象となる3次元シーンのホログラフィック再構成を生成するディスプレイ装置のホログラム記録媒体であって、
前記ディスプレイ装置は、ホログラムで符号化される前記ホログラム記録媒体であって、観察者の左眼および右眼のために共通して用いられる前記ホログラム記録媒体を照明するための光源と光学系とを含み、
前記ディスプレイ装置は、前記観察者の前記左眼のために、そしてその後に当該観察者の前記右眼のために、前記ホログラム記録媒体においてホログラムを時系列で再符号化するように動作可能なコンピュータプロセッサを含み、前記ホログラム記録媒体はセルを含み、前記ホログラムは、前記コンピュータプロセッサによって生成されるホログラム値を含み、前記ホログラム値が前記ホログラム記録媒体の前記セルに符号化される、
ことを特徴とするホログラム記録媒体。
【請求項28】
見る対象となる3次元シーンのホログラフィック再構成を生成するディスプレイ装置のホログラム記録媒体に符号化されるビデオホログラムであって、
前記ディスプレイ装置はホログラムで符号化されるホログラム記録媒体であって、観察者の左眼および右眼のために共通して用いられる前記ホログラム記録媒体を照明するための光源と光学系とを含み、
前記ディスプレイ装置は、前記観察者の前記左眼のために、そしてその後に当該観察者の前記右眼のために、前記ホログラム記録媒体においてホログラムを時系列で再符号化するように動作可能なコンピュータプロセッサを含み、前記ホログラム記録媒体はセルを含み、前記ホログラムは、前記コンピュータプロセッサによって生成されるホログラム値を含み、前記ホログラム値が前記ホログラム記録媒体の前記セルに符号化される、
ことを特徴とするビデオホログラム。
【請求項29】
ネットワークを介して請求項28に記載のビデオホログラムを送信する方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、映像ホログラムと、少なくとも1台の光源、レンズ、および、マトリックスまたはその他の規則的なパターンに配置されたセルからなり、1セルごとに少なくとも1個の開口を備え、上記開口の位相または振幅が制御可能である映像ホログラムにより構成された光学系、並びに、光源の像平面に位置するビューイング平面を具備する映像ホログラム再生装置とに関する。
【背景技術】
【0002】
音響光学変調器(AOM)を使用して映像ホログラムを再生する装置は従来技術(Stephen A. Benton、Joel S.KollinによるThree dimensional displaysystem、米国特許第5,172,251号)で知られている。このような音響光学変調器は電気信号を光波面に変換し、光波面は2次元ホログラフィック領域を形成するため偏向ミラーを使用して映像フレームにおいて再生される。観察者の目に見えるシーンはさらなる光学素子を用いて個々の波面から再生される。レンズおよび偏向素子のような使用される光学手段は再生されたシーンの寸法を有する。それらの奥行きは深いので、これらの素子は、嵩張って重い。それらを小型化することは困難であるので、それらの応用の範囲が制限される。
【0003】
大型映像ホログラムを生成する別の可能性は、コンピュータ生成ホログラム(CGH)を使用する、いわゆる「タイリング方法」である。国際公開第00/75698号A1パンフレットおよび米国特許第6,437,919号から知られるこの方法では、小さいピッチを有する小型CGHは光学系を用いて作成される。このため、第1ステップにおいて、必要情報が小さいピッチを有する高速マトリックス(一般にEASLM(電気アドレス型空間光変調器))に書き込まれ、次に、マトリックスは適当なホログラフィック媒体の上に再現され、大型映像ホログラムを形成するため構成される。一般に、光アドレス型空間光変調器(OASLM)はホログラフィック媒体として使用される。第2ステップにおいて、構成された映像ホログラムは透過中または反射中のコヒーレント光を用いて再生される。
【0004】
たとえば、国際公開第01/95016号A1パンフレット、または、フカヤらによる「Eye−position tracking typeelectro−holographic display using crystal devices」、Proceedings of EOSTopical Meeting on DiffractiveOptics、1997から知られる、制御可能な開口がマトリックスまたはそれ以外の規則的なパターンの形で配置されたCGHにおいて、小型開口上の回折はシーンを符号化するため巧みに利用される。開口から出現する波面は、観察者に到達する前に3次元シーンの物点に集まる。ピッチがより小さくなると、したがって、CGHの開口がより小さくなると、回折角、すなわち、視野角がより広くなる。その結果として、これらの従来の方法によれば、視野角を拡大することは解像度を高めることを意味する。
【0005】
一般的に知られているように、フーリエホログラムにおいて、シーンは平面内におけるホログラムのフーリエ順変換またはフーリエ逆変換として再生される。この再生はある周期性間隔で周期的に継続され、上記周期性間隔の延長はホログラム内のピッチに反比例する。
【0006】
フーリエホログラムの再生物の寸法が周期性間隔を上回るならば、隣接する回折次数が重なり合う。解像度は徐々に減少すると共に、すなわち、開口のピッチが増大すると共に、再生物のエッジの歪みはより高次の回折次数を重ね合わせることにより増大するであろう。したがって、使用可能な再生物の範囲は徐々に制限される。
【0007】
より大きい周期性間隔、すなわち、より広い視野角が達成されるならば、ホログラムに要求されるピッチは光の波長により近づく。したがって、CGHは大型シーンを再生可能であるために十分に大きくする必要がある。これらの二つの条件は、多数の開口を有する大型CGHを要求する。しかし、これは、現在のところ、制御可能な開口を備えたディスプレイの形では実施できない(欧州特許第0992163号を参照)。制御可能な開口を備えたCGHは1〜数インチだけを測定し、ピッチは依然として実質的に1μmよりも大きい。
【0008】
ピッチとホログラムサイズの二つのパラメータは、ホログラム内の開口の数としてのいわゆる空間的帯域幅積(SBP)によって特徴付けられる。50cmの幅を有する制御可能な開口を備えたCGHの再生物が生成され、観察者が1mの距離で、50cm幅の水平ビューイングウィンドウにおいてシーンを見ることができるならば、水平方向のSBPは約0.5×1
06である。これはCGH内の1μmの距離での500000個の開口に対応する。アスペクト比を4:3と仮定すると、375000個の開口が垂直方向に必要とされる。その結果として、3色のサブピクセルが考慮されるならば、CGHは3.75×1
011個の開口を具備する。制御可能な開口を備えたCGHは一般には振幅に影響を与えることだけが許容されることを考慮すると、この数は3倍になるであろう。位相はいわゆる迂回位相効果を巧く利用して符号化され、1サンプリング点ごとに少なくとも3個の等間隔の開口を必要とする。このような多数の制御可能な開口を有するSLMはこれまでに知られていない。
【0009】
ホログラム値は再生されるシーンから計算しなければならない。3原色のそれぞれについて1バイトの色深度と50Hzのフレームレートを仮定すると、CGHが必要とする情報フローレートは50×1
012=0.5×1
014バイト/秒である。この大きさのデータフローのフーリエ変換は現代のコンピュータの能力を遙かに上回るので、ホログラムがローカルコンピュータに基づいて計算される余地はない。しかし、このような量のデータをデータネットワーク経由で送信することは一般のユーザにとって現在実施不可能である。
【0010】
非常に多数の計算を削減するため、ホログラム全体を計算するのではなく、ホログラムの中で観察者が直接的に見る部分だけ、または、変化する部分だけを計算することが提案されている。上記の「タイリングホログラム」のようにアドレス可能なサブ領域により構成されるようなホログラムは、上記の国際公開第01/95016号A1パンフレットの特許明細書に開示されている。計算の開始点は、いわゆる有効出射瞳であり、その位置は観察者の目の瞳と一致させることが可能である。像は、観察者の位置が変化するとき、新たな観察者の位置のための像を生成するホログラム部分の連続的な再計算によって追跡される。しかし、これは計算の回数の削減を部分的に無効にする。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0011】
従来の方法の欠点を要約すると次の通りである。音響光学変調器を備えた配置は非常に嵩張り、最新式のフラットディスプレイで知られている寸法まで縮小できない。タイリング方法を用いて生成された映像ホログラムは、膨大な技術的努力を必要とし、容易にはデスクトップの寸法まで縮小できない2段階のプロセスである。制御可能な開口を備えたSLMに基づく配置は非常に小さいので大型シーンを再生できない。現在、大型の制御可能なSLMであって、そのために非常に小さいピッチを備えたSLMは存在せず、このテクノロジーは今日利用可能なコンピュータ性能およびデータネットワーク帯域幅によってさらに制限される。
【0012】
本発明の目的は上記の欠点を回避し、広視野角の映像ホログラムの拡張リアルタイム再生を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0013】
本発明によれば、上記目的は、請求項1に記載された特徴を有する映像ホログラムおよび映像ホログラム再生装置によって進歩的な態様で解決される。本発明の好ましい実施形態は請求項2から10に提示される。
【0014】
本発明による制御可能な開口を備えた映像ホログラムおよび映像ホログラム再生装置は、ビューイング平面において、少なくとも一つのビューイングウィンドウが映像ホログラムのフーリエ順変換または逆変換として周期性間隔で形成され、上記ビューイングウィンドウによって観察者が3次元シーンの再生を見ることが可能にされることを特徴とする。ビューイングウィンドウの最大範囲は、光源の像平面におけるフーリエ逆変換の平面内の周期性間隔に一致する。円錐台がホログラムとビューイングウィンドウとの間に広がり、上記円錐台は映像ホログラムのフレネル変換として3次元シーン全体を格納する。
【0015】
本発明におけるビューイングウィンドウは、一方の目、観察者の瞳距離、または、その他の適当な領域にほぼ制限され、関連して位置付けられる。
【0016】
次に、本発明では別のビューイングウィンドウが観察者のもう一方の目のため設けられる。これは、光学系に一対の光源を形成するため、観測された光源が移動させられるか、または、第2の現実または仮想の適切なコヒーレント光が別の適当な位置に付加されることによって実現される。この配置は、関連付けられたビューイングウィンドウを通して両方の目で3次元シーンを見ることを可能にさせる。映像ホログラムの内容は、第2のビューイングウィンドウの起動と同期した目位置に応じて、変更可能であり、すなわち、再符号化可能である。複数の観察者がシーンを見るならば、より多数のビューイングウィンドウがさらなる光源をオンにすることにより生成される。
【0017】
映像ホログラム再生装置の本発明の別の態様に関して、光学系およびホログラム記録媒体は、映像ホログラムのより高次の回折次数が第2のビューイングウィンドウの位置で第1のビューイングウィンドウに対するゼロ点、または、強度最小値を有するように配置される。これは一方の目に対するビューイングウィンドウがその観察者のもう一方の目または他の観察者の目とクロストークすることを防止する。このように、ホログラム記録媒体の開口の有限幅、および/または、強度分布の最小値を原因とするより高次の回折次数へ向かう光の強度の減少が巧く利用される。矩形状開口の強度分布は、たとえば、振幅が急速に減少するsinc2関数であり、距離の増大と共に減少するsin2関数を形成する。
【0018】
ディスプレイ内の開口の個数は、映像ホログラムに対して計算すべき値の最大個数を決定する。コンピュータからの、または、ネットワークを経由した、映像ホログラムを表現するディスプレイへのデータの送信は、同じ値の個数に制限される。そのデータフローレートは、今日使用されている典型的なディスプレイで知られているデータフローレートと実質的に差異がない。次に、このことについて実施例を用いて説明する。
【0019】
ビューイングウィンドウが、たとえば、実質的に低解像度のディスプレイを選ぶことにより50cm(水平)×37.5cm(垂直)から1cm×1cmへ縮小されるならば、ホログラム内の開口の個数は1/1875まで低下する。所要帯域幅は、ネットワーク経由のデータ送信と同じように削減される。従来の方法で作成された映像ホログラムは1
012個の開口を必要とし、一方、この個数は本実施例では5×1
08画素に削減される。シーンは残りのビューイングウィンドウを通して完全に見ることができる。空間的帯域幅積によるこれらのピッチおよびホログラムサイズの必要条件は今日入手可能なディスプレイによって既に満たされる。このため、大型ビューイングウィンドウのための大ピッチを有するディスプレイ上に大型リアルタイム映像ホログラムを低コストで実現することが可能である。
【0020】
ビューイングウィンドウは、可動ミラーを使用することにより、または、他の方法で適切に位置付けられた光源を使用することにより、光源を機械的または電気的に移動させることにより追跡される。ビューイングウィンドウは光源像の変位に応じて移動させられる。観察者が移動するならば、(1台または複数台の)光源は空間的に動かされるので、ビューイングウィンドウは(一人または複数の)観察者の目を追跡する。これは、観察者が再生された3次元シーンも見ることが可能であり、その結果として、観察者の移動の自由度が制限されないことを保証するためである。観察者の位置を検出する複数のシステムが知られ、たとえば、磁気センサに基づくシステムはこのため役立つように利用できる。
【0021】
本発明は、また、カラーで効率的に映像ホログラムを再生できるようにする。この場合、再生は1セルごとに、3原色を表現する少なくとも3個の開口を用いて実行され、上記開口の振幅または位相は制御可能であり、上記開口は原色のそれぞれに対して個別に符号化される。カラーで映像ホログラムを再生するため、本発明の装置を使用して、次々に、すなわち、個別の原色に、少なくとも3回の再生を実行することも可能である。
【0022】
本発明は、TFTフラットスクリーンのような制御可能なディスプレイによって、リアルタイムで、広視野角を提供する空間的に拡大されたシーンのホログラフィック再生物を効率的に生成することを可能にする。これらの映像ホログラムは、TV、マルチメディア、ゲームおよび設計アプリケーションにおいて、医療および軍事部門において、並びに、経済および社会の多数のその他の分野において有利に使用される。3次元シーンはコンピュータを用いて、または、その他の方法によって生成することが可能である。
【0023】
本発明の一実施形態が例示され、添付図面を参照して後述される。
【図面の簡単な説明】
【0024】
【
図1】回折次数の生成およびビューイングウィンドウの位置を表す映像ホログラムおよび映像ホログラム再生装置の概略的な説明図である。
【
図2】ビューイングウィンドウを通して見ることができる3次元シーンを表すホログラム再生装置の概略的な説明図である。
【
図3】映像ホログラムの一部分における3次元シーンの符号化を表すホログラム再生装置の概略的な説明図である。
【
図4】回折次数に応じてビューイング平面内の光強度分布を表す図である。
【
図5】クロストークを防止するため回折次数に関して観察者の両目に対するビューイングウィンドウの位置を表す映像ホログラム再生装置の概略的な説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0025】
映像ホログラム再生装置は、ホログラム記録媒体と、十分にコヒーレントな、現実または仮想の、点若しくは線光源と、光学系とを具備する。映像ホログラム記録媒体自体は、マトリックスまたはその他の場合には規則的なパターンに配置されたセルにより構成され、1セル当たりに少なくとも1個の開口があり、上記開口の位相または振幅は制御可能である。映像ホログラムを再生する光学系は、点若しくは線レーザー、または、十分にコヒーレントな光源を含む技術的に知られた光学イメージングシステムによって実現可能である。
【0026】
図1は映像ホログラムの一般的な配置およびその再生を表す。光源1、レンズ2、ホログラム記録媒体3およびビューイング平面4は、伝搬光の方向で見たときに次々に配置される。ビューイング平面4は、(複数の)回折次数をもつ映像ホログラムの逆変換のフーリエ平面に一致する。
【0027】
光源1は、レンズ2によって表された光学系を通してビューイング平面4に結像する。ホログラム記録媒体3が挿入されるならば、それはフーリエ逆変換としてビューイング平面4に再生される。周期的な開口を備えたホログラム記録媒体3はビューイング平面4に等距離で変位させられた回折次数を作成し、高次の回折次数へのホログラフィック符号化が、たとえば、いわゆる迂回位相効果を用いて行われる。光強度は高次の回折次数へ向かって減少するので、+1次または1次の回折次数はビューイングウィンドウ5として使用される。明示的に断らない限り、1次回折次数は本発明のさらなる説明において基本であると考えられる。
【0028】
再生の寸法は、この場合、ビューイング平面4内の1次回折次数の周期性間隔の寸法と一致するように選択される。その結果として、高次回折次数は、ギャップを形成することなく、しかし同時に重なり合うことなく置かれる。
【0029】
フーリエ変換であるならば、選択された1次回折次数はホログラム記録媒体3の再生を形成する。しかし、それは実際の3次元シーン6を表現しない。それはビューイングウィンドウ5としてのみ使用され、このビューイングウィンドウを通して3次元シーン6が観察される(
図2を参照)。実際の3次元シーン6は、1次の回折次数の光束の内側に円の形で示される。シーンは、このようにして、ホログラム記録媒体3とビューイングウィンドウ5との間に広がる再生円錐台の内側に位置付けられる。シーン6はホログラム記録媒体3のフレネル変換として表され、一方、ビューイングウィンドウ5はフーリエ変換の一部分である。
【0030】
図3は対応するホログラフィック符号化を表す。3次元シーンは離散点によって構成される。ビューイングウィンドウ5が底面であり、シーン6内で選択された点7が頂点であるピラミッド形は、この点を通過して延長され、ホログラム記録媒体3上に投影される。投影領域8はホログラム記録媒体3に作成され、その点は上記投影領域内でホログラフ的に符号化される。点7からホログラム記録媒体3のセルまでの距離は位相値を計算するため決定可能である。この再生はビューイングウィンドウ5のサイズが周期性間隔によって制約されることを可能にする。しかし、点7がホログラム伝送媒体3の全体に符号化されるならば、再生は周期性間隔を超えるであろう。隣接する回折次数からのビューイングゾーンは重なり合い、その結果として、観察者は点7の周期的な連続を見るであろう。このようにして符号化された表面の輪郭は多数の重なり合いのため不鮮明に見える。
【0031】
高次回折次数へ向かう強度減少は、他のビューイングウィンドウへのクロストークを抑制するため巧く利用される。
図4は回折次数に対する光強度分布を概略的に表し、上記分布はCGH内の開口の幅によって決められる。横軸は回折次数を表す。1次の回折次数は左目用のビューイングウィンドウ5、すなわち、左ビューイングウィンドウを表現し、この左ビューイングウィンドウを通して3次元シーンを見ることができる。右目用のビューイングウィンドウへのクロストークは、高次回折次数方向での光強度の減少によって抑制され、さらには、強度分布のゼロ点によって抑制される。
【0032】
勿論、観察者は両方の目でホログラム3のシーン6を見ることができる(
図5を参照)。右目の場合、光源1’の−1次回折次数によって表現された右ビューイングウィンドウ5’が選択される。図から分かるように、この光が左目に与える影響は非常に低強度である。この場合、それは−6次回折次数に対応する。
【0033】
左目の場合、光源1の位置に対応する1次回折次数が選択される。左ビューイングウィンドウ5が同様に形成される。本発明によれば、対応する3次元シーン6および6’(図示せず)は、目に対して固定位置に光源1および1’を使用して再生される。このため、ホログラム3は、光源1および1’がオンにされるときに再符号化される。或いは、2台の光源1および1’は、2個のビューイングウィンドウ5および5’にホログラム3を同時に再生可能である。
【0034】
観察者が移動するならば、光源1および1’が追跡され、2個のビューイングウィンドウ5および5’は観察者の目にとどまったままである。同様のことが法線方向の移動、すなわち、映像ホログラムに対して垂直の移動にも適用される。
【0035】
さらに、さらなるビューイングウィンドウがさらなる光源がオンにされることにより作成されるならば、複数の観察者が3次元シーンを見ることができる。