特許第6249983号(P6249983)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6249983
(24)【登録日】2017年12月1日
(45)【発行日】2017年12月20日
(54)【発明の名称】加熱調理器
(51)【国際特許分類】
   F24C 1/00 20060101AFI20171211BHJP
   F24C 3/12 20060101ALI20171211BHJP
【FI】
   F24C1/00 370U
   F24C1/00 360G
   F24C1/00 370N
   F24C3/12 C
   F24C3/12 X
【請求項の数】3
【全頁数】14
(21)【出願番号】特願2015-82971(P2015-82971)
(22)【出願日】2015年4月15日
(65)【公開番号】特開2016-205630(P2016-205630A)
(43)【公開日】2016年12月8日
【審査請求日】2017年2月6日
(73)【特許権者】
【識別番号】000115854
【氏名又は名称】リンナイ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100111257
【弁理士】
【氏名又は名称】宮崎 栄二
(74)【代理人】
【識別番号】100110504
【弁理士】
【氏名又は名称】原田 智裕
(72)【発明者】
【氏名】瀧 啓東志
【審査官】 青木 良憲
(56)【参考文献】
【文献】 特開2015−017788(JP,A)
【文献】 実公昭63−022409(JP,Y2)
【文献】 特開2013−213649(JP,A)
【文献】 特開平06−221565(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
F24C 1/00
F24C 3/12
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
被加熱物を収容する加熱庫と、
熱気を生成する加熱手段と、
加熱手段を配する燃焼室と、
前記熱気を加熱庫内に循環させる循環ファンと、
循環ファンを回転駆動させるファンモータと、
ファンモータを配するモータ収容室と、
本体の外部空気をモータ収容室へ取り込む冷却ファンと、
加熱庫内の熱気を本体外部へ導く排気通路と、
モータ収容室に取り込まれた外部空気を排気通路の構成壁に沿って導通させる冷却通路と、
冷却通路に送り込まれた外部空気を燃焼室内へ導く帰還通路と、
燃焼室内の熱気導出経路の温度状態を検出する熱気温度検出部と、
ファンモータの回転数を制御するモータ制御部と、
ファンモータの駆動特性値を検出する駆動特性検出部と、
循環ファンによる帰還通路から燃焼室への引き込み風量と冷却ファンによる帰還通路から燃焼室への押し込み風量とを合算した正常時の循環風量に対応するファンモータの基準駆動特性値を記憶する記憶部と、
熱気温度検出部の検出温度が正常時の基準温度を超えたときの前記駆動特性値と基準駆動特性値とを比較する比較部と、
前記駆動特性値と基準駆動特性値との間に所定の差異があれば、ファンの回転不良と判定する異常判定部とを備えた、加熱調理器。
【請求項2】
請求項1に記載の加熱調理器において、
前記駆動特性値は、ファンモータの電流値であり、異常判定部は、前記駆動特性値が基準駆動特性値より低ければ、ファンの回転不良と判定する、加熱調理器。
【請求項3】
請求項1または2に記載の加熱調理器において、
ファンの回転不良と判定された場合に、ファンモータの回転数を正常時の基準回転数より高くする循環風量調整部を備えた、加熱調理器。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、加熱調理器、特に、加熱手段から放出された熱気を加熱庫内に循環させて被加熱物の加熱調理を行う加熱調理器に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、ガスバーナや電気ヒータ等の加熱手段から放出された熱気を循環ファンによって加熱庫内へ循環させ、食材等の被加熱物の加熱調理を行うオーブン機能を備えた加熱調理器が知られている。
【0003】
この種の加熱調理器は、被加熱物の内部まで均一に焼き上げると共に、表面に焦げ目も付けられるよう、280℃から300℃程度の高温の熱気を加熱庫内へ循環させるように構成されている。そのため、運転時、常に排気口から高温の熱気が排出される問題がある。また、循環ファンの収容部に導入される熱気の熱がファンモータの収容部にまで伝わると、ファンモータの過熱による故障を招く虞もある。
【0004】
従って、従来の加熱調理器において、モータ収容室から排気通路に沿って、本体の外部空気を導通させる冷却通路が設けられ、冷却ファンによって外部空気を上記モータ収容室に取り込み、さらに冷却通路を通じて本体の外部へ排出させることで、ファンモータの温度および排気口からの排気温度を下げるようにしたものが提案されている(例えば、特許文献1および2参照)。
【0005】
具体的には、図9に示すように、従来の加熱調理器7は、本体ケース71内に、被加熱物Fを収容する加熱庫70と、加熱手段73を配する燃焼室80とが区画分離して設けられている。また、本体ケース71内には、加熱庫70内に導入された熱気や被加熱物Fから放出された油煙等を本体ケース71の外部へ導出する排気通路90と、外部空気を排気通路90に沿って導通させる冷却通路97とが設けられている。さらに、本体ケース71内における加熱庫70の後部には、燃焼室80から加熱庫70内へ熱気を循環させる循環ファン74と、本体ケース71の外部空気をモータ収容室95へ取り込む冷却ファン76とが設けられている。
【0006】
このものでは、ファンモータ75を作動させることで、加熱手段73から燃焼室80内に放出された熱気が循環ファン74によって加熱庫70内へ送り込まれ、この熱気により被加熱物Fの加熱調理が行われる。また、それと同時に、本体ケース71の外部空気が冷却ファン76によって給気口950からモータ収容室95へ取り込まれ、ファンモータ75の熱を回収しつつ、冷却通路97に導通される。そしてさらに、冷却通路97に導通された外部空気は、加熱庫70内から排気通路90に導出された熱気中の熱を回収しつつ、本体ケース71の外部へ導出される。これにより、ファンモータ75が冷却され、且つ、排気温度も低下する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】特開2013−68406号公報
【特許文献2】特開2014−202382号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
上記従来の加熱調理器では、長期に亘って使用していると、冷却ファン76とファンモータ75との連結部の不具合により、冷却ファン76の空転や不安定回転などの回転不良を引き起こす場合がある。その結果、モータ収容室95への給気量が低下し、ファンモータ75の冷却および排気温度の低下が十分になされなくなる虞がある。
【0009】
そこで、ファンモータ75の表面または近傍位置に、ファンモータ75の温度を検出するためのモータ温度センサを設け、このモータ温度センサの検出温度が正常時より高くなれば、冷却ファン76の回転不良により外部空気がモータ収容室95へ正常に導入されていない状態であると判定する方法が考えられる。
【0010】
しかしながら、ファンモータ75の温度は、運転を開始してからある程度時間が経過した後でなければ安定しないため、上述のようにモータ温度センサの検出温度に基づいて冷却ファン76が回転不良状態であるか否かを判定するように構成されたものでは、ファンの異常の検出が遅れる可能性がある。しかも、このものでは、長期に亘って使用している間に、モータ収容室95に導入される外部空気中の油や埃等がモータ温度センサに付着蓄積して、ファンモータ75の温度を正確に検出できなくなる可能性もある。
【0011】
本発明は、上記課題を鑑みてなされたものであり、その目的は、加熱手段から放出された熱気を加熱庫内に循環させて被加熱物の加熱調理を行う加熱調理器において、ファンの異常検出精度の向上を図ることにある。
【課題を解決するための手段】
【0012】
本発明は、被加熱物を収容する加熱庫と、熱気を生成する加熱手段と、加熱手段を配する燃焼室と、前記熱気を加熱庫内に循環させる循環ファンと、循環ファンを回転駆動させるファンモータと、ファンモータを配するモータ収容室と、本体の外部空気をモータ収容室へ取り込む冷却ファンと、加熱庫内の熱気を本体外部へ導く排気通路と、モータ収容室に取り込まれた外部空気を排気通路の構成壁に沿って導通させる冷却通路と、冷却通路に送り込まれた外部空気を燃焼室内へ導く帰還通路と、燃焼室内の熱気導出経路の温度状態を検出する熱気温度検出部と、ファンモータの回転数を制御するモータ制御部と、ファンモータの駆動特性値を検出する駆動特性検出部と、循環ファンによる帰還通路から燃焼室への引き込み風量と冷却ファンによる帰還通路から燃焼室への押し込み風量とを合算した正常時の循環風量に対応するファンモータの基準駆動特性値を記憶する記憶部と、熱気温度検出部の検出温度が正常時の基準温度を超えたときの前記駆動特性値と基準駆動特性値とを比較する比較部と、前記駆動特性値と基準駆動特性値との間に所定の差異があれば、ファンの回転不良と判定する異常判定部とを備えた加熱調理器である。
【0013】
このものでは、循環ファンまたは冷却ファンに回転不良が生じると、燃焼室への外部空気の導入量が低下し、燃焼室内の熱気導出経路の温度が上昇する。また、それと共に、ファンモータに加わっていた負荷が変化して、ファンモータの駆動特性値が正常時の基準駆動特性値から外れる。そして、熱気温度検出部の検出温度が正常時の基準温度を超えた際に、ファンモータの駆動特性値と正常時の基準駆動特性値との間に所定の差異が生じていれば、ファンの回転不良であると判定する。即ち、燃焼室内の熱気導出経路の温度が上昇したときのファンモータの駆動特性値に基づいてファンが回転不良状態であるか否かを判定する。これにより、ファンの異常を早期に検出できるし、また、モータ収容室に導入される外部空気中の油や埃等の影響を受けてファンの異常の検出が阻害される虞も少ない。
【0014】
上記加熱調理器において、好ましくは、前記駆動特性値は、ファンモータの電流値であり、異常判定部は、前記駆動特性値が基準駆動特性値より低ければ、ファンの回転不良と判定するものとする。
【0015】
給気口などの閉塞により器具内の通気抵抗が増加し、ファンモータに負荷が加わると、ファンモータの電流値は上昇する。これに対して、ファンの回転不良により、ファンモータに加わっていた負荷が減少すれば、ファンモータの電流値は正常時の基準電流値より低くなる。従って、このように、ファンモータの電流値を用いることで、より正確にファンの異常を検出できる。
【0016】
上記加熱調理器において、好ましくは、ファンの回転不良と判定された場合に、ファンモータの回転数を正常時の基準回転数より高くする循環風量調整部を備える。
【0017】
ファンの回転不良が生じると、モータ収容室への外部空気の取り込み量が低下し、ファンモータの熱および加熱庫内から排気通路に導出された熱気中の熱(排気熱)が十分に回収されず、ファンモータの過熱による故障や排気口からの高温排気を防止できなくなる虞がある。しかしながら、このものでは、ファンの回転不良と判定された場合は、ファンモータの回転数を高くして、帰還通路から燃焼室への外部空気の導入量を増加させるから、モータ収容室への外部空気の取り込み量を維持することができる。よって、ファンモータの過熱による故障や排気口からの高温排気を抑制できる。
【発明の効果】
【0018】
以上のように、本発明によれば、加熱手段から放出された熱気を加熱庫内に循環させて被加熱物の加熱調理を行う加熱調理器において、ファンの異常検出精度が向上する。
【図面の簡単な説明】
【0019】
図1図1は、本発明の実施の形態に係る加熱調理器の側面視概略断面図である。
図2図2は、本発明の実施の形態に係る加熱調理器の平面視概略断面図である。
図3図3は、本発明の実施の形態に係る加熱調理器の後部概略斜視図である。
図4図4は、本発明の実施の形態に係る加熱調理器の燃焼室周辺の平面視概略断面図である。
図5図5は、本発明の実施の形態に係る加熱調理器の概略構成図である。
図6図6は、本発明の実施の形態に係る加熱調理器の制御回路を示すブロック図である。
図7図7は、本発明の実施の形態に係る加熱調理器のファンの異常判定動作を示すフローチャートである。
図8図8は、本発明の他の実施形態に係る加熱調理器のファンの異常判定動作を示すフローチャートである。
図9図9は、従来の加熱調理器の概略構成図である。
【発明を実施するための形態】
【0020】
次に、上記した本発明を実施するための形態について、添付図面を参照しながら詳述する。
【0021】
図1に示すように、本発明の実施の形態に係る加熱調理器1は、システムキッチンのカウンタトップKに開設された取付口K1に落とし込んだ状態で設置されるビルトイン式のガスコンロであって、加熱庫10内に循環供給させる熱気により食材等の被加熱物Fの加熱調理を行うオーブン機能を備えている。尚、本明細書では、本体ケース11の前面部111を加熱調理器1の正面とし、加熱調理器1を正面側から見たときの本体ケース11の奥行き方向を前後方向、幅方向を左右方向、高さ方向を上下方向という。
【0022】
本体ケース11の内部には、被加熱物Fを収容する加熱庫10と、加熱手段としてバーナ13を配する燃焼室20とが上下に区画分離して設けられている。また、加熱庫10の上部には、被加熱物Fから放出された油煙や臭気成分、加熱庫10内に送り込まれたバーナ13の燃焼排ガス(熱気)等を本体ケース11の上部後方に開設された排気口300へ導く排気通路30が設けられている。さらに、加熱庫10の後部には、加熱庫10や燃焼室20内の熱気を後述する循環ファンケース34へ導く熱気通路31が設けられている。
【0023】
加熱庫10は、上面を構成する上壁101と、底面を構成する底壁102と、左側面を構成する左側壁103と、右側面を構成する右側壁(図示せず)と、後面を構成する奥壁105とを有しており、前面が本体ケース11の前方へ開放する箱状に形成されている。また、加熱庫10の前面の開口部100は、本体ケース11の前面部111に設けられた前扉12により被閉されている。
【0024】
前扉12の後方で且つ本体ケース11の前面部(以下、「ケース前壁」という)111の下端寄りの位置には、燃焼室20内にバーナ13の燃焼用空気を取り込むための複数の空気取込口200が開設されている。また、本体ケース11の後面部(以下、「ケース後壁」という)115には、本体ケース11の外部空気を後述するモータ収容室35に取り込むための給気口350が開設されている。
【0025】
本体ケース11内における熱気通路31の後部には、バーナ13から燃焼室20内に放出された熱気や加熱庫10内に送り込まれた熱気を加熱庫10内へ循環させる循環ファン14と、本体ケース11の外部空気をファンモータ15の冷却空気としてモータ収容室35に取り込む冷却ファン16とが配設されている。循環ファン14および冷却ファン16は、ファンモータ15の駆動軸に同軸で連結固定されており、ファンモータ15を作動させることで、両ファン14,16は同時に回転駆動する。
【0026】
熱気通路31は、燃焼室20の上部で且つ加熱庫10と循環ファン14を収容する循環ファンケース34との間に設けられており、燃焼室20の上部に開設された熱気出口21を通じて燃焼室20内に繋がる一方、循環ファンケース34の前面部に開設された吸込口22を通じて循環ファンケース34の内部空間に繋がっている。
【0027】
加熱庫10の奥壁105の左右の側辺寄りの位置には、循環ファンケース34の図示しない吹出口に繋がる熱気吹出孔23が開設されている。また、加熱庫10の奥壁105の略中央位置には、熱気通路31に繋がる熱気吸込孔24が開設されている。従って、ファンモータ15を作動させると、バーナ13から燃焼室20内に放出された熱気が、循環ファン14によって熱気出口21から熱気通路31へ導出された後、循環ファンケース34に取り込まれ、熱気吹出孔23から加熱庫10内へ送出される。また、加熱庫10内に送出された熱気の一部は、熱気吸込孔24から熱気通路31へ導出された後、循環ファンケース34に取り込まれ、再び熱気吹出孔23から加熱庫10内へ送出される。
【0028】
加熱庫10の上壁101の後方寄りの位置には、排気通路30に繋がる排気導出孔25が開設されている。排気通路30は、排気導出孔25からモータ収容室35の上方を通って後方へ延設され、さらに後端部が排気口300へ向かって上方に延設されている。従って、循環ファン14によって加熱庫10内に送出された熱気の一部は、排気導出孔25から排気通路30を通って排気口300へ導かれ、本体ケース11の外部へ排出される。
【0029】
モータ収容室35は、ファンモータ15の駆動軸の周辺に開設された軸挿通孔26を通じて、冷却ファン16を収容する冷却ファンケース36の内部空間に繋がっている。従って、ファンモータ15を作動させると、本体ケース11の外部空気が、冷却ファン16によって給気口350からモータ収容室35内へ取り込まれ、ファンモータ15から放出される熱を回収した後、軸挿通孔26を通って冷却ファンケース36内へ導かれる。これにより、ファンモータ15の過熱が防止される。
【0030】
冷却ファンケース36の上部には、モータ収容室35に取り込まれた外部空気を排気通路30に沿って導通させる冷却通路37が形成されている。図1および図2に示すように、冷却通路37は、冷却ファンケース36の上部から排気通路30の底壁302に沿って後方へ延設され、さらに左側方へ向かって延設されている。また、冷却通路37の後端部は、後方へ向かって本体ケース11の後方まで延出し、冷却通路37に導入された外部空気を燃焼室20内へ導く帰還通路38に繋がっている。従って、モータ収容室35から冷却ファンケース36内に導入された外部空気は、冷却通路37を通り、排気通路30内を流れる熱気から底壁302に伝導される熱(排気熱)を回収した後、帰還通路38へ導出される。これにより、排気口300からの排気温度が低下する。
【0031】
図1から図3に示すように、帰還通路38は、冷却通路37の後端部から下方へ延出し、さらにケース後壁115の外側を、給気口350の上方を通って右方へ延出し、給気口350の右側まで延設される第1通路41と、第1通路41の右端部からケース後壁115の外側面に沿って右方へ延設され、右端部がケース後壁115に開設された連通孔27に連結される第2通路42と、連通孔27からケース後壁115の内側面に沿って下方へ延設される第3通路43と、第3通路43の下端部から本体ケース11の底面部(以下、「ケース底壁」という)112に沿って前方へ延設される第4通路44と、第4通路44の前端部からケース前壁111の下端前面に沿って左方へ延設され、空気取込口200に連結される第5通路45とで構成されている。
【0032】
図2に示すように、第3通路43は、加熱庫10の右側方に設けられた、制御回路5等を収容する制御室39の奥部に設けられ、第4通路44は、制御室39の底部に設けられている。また、図1に示すように、第5通路45は、ケース底壁112の前端部に立設形成された前端板116により本体ケース11の外部空間と分離されており、バーナ13の燃焼用の二次空気は、略全てが帰還通路38を通じて燃焼室20内に供給される。即ち、ファンモータ15を作動させた際に、給気口350を通じてモータ収容室35へ導入された外部空気は、ファンモータ15の熱および加熱庫10内からの排気熱を回収した後、ケース後壁115の外側を通って制御室39の奥部へ導かれ、さらに制御室39の底部に沿って前方へ導かれ、空気取込口200からバーナ13の燃焼用の二次空気として燃焼室20内に送り込まれる。これにより、オーブン加熱調理において加熱庫10内の温度を設定温度まで上昇させるのに必要な予熱時間が短縮されるし、バーナ13の燃焼効率も向上する。
【0033】
特に、このものでは、帰還通路38の下流端が空気取込口200に直結されているから、燃焼室20内の熱気を加熱庫10内に循環させるときの循環ファン14の吸気力によって、冷却通路37から帰還通路38に導出された外部空気がより積極的に燃焼室20内に取り込まれる。即ち、ファンモータ15の熱および加熱庫10内からの排気熱を回収した外部空気が、冷却ファン16の排気力と循環ファン14の吸気力との相乗によって積極的に燃焼室20内に導入される。よって、予熱時間が一層短縮されるし、バーナ13の燃焼効率も一層向上する。また、ファンモータ15の過熱をより確実に防止できると共に、排気温度をより確実に低下させることもできる。
【0034】
尚、冷却通路37は、排気通路30の底面および後面に沿って上端近傍まで延設されたものとしてもよい。また、帰還通路38の第1通路41および第2通路42は、何れも本体ケース11の内側に配設されたものとしてもよい。さらに、帰還通路38の第4通路44は、燃焼室20の底面に沿って、即ち、燃焼室20とケース底壁112との間隙に配設されたものとしてもよいし、燃焼室20の外側面に沿って配設されたものとしてもよい。
【0035】
図4に示すように、バーナ13は、左右に長い上方視略矩形状に形成されており、その後端面には、複数の炎孔131が左右方向へ所定の間隔を存して並設されている。一方、バーナ13の制御室39側の端部には、ガス供給口132が設けられている。また、制御室39内には、バーナ13へのガスの供給量を調整するガスバルブ130が組み込まれており、後述する点消火操作部191によってバーナ13の点火操作がなされた際、ガスバルブ130の図示しないガス噴出ノズルから噴出されるガスが、ガス供給口132周辺の空気と共にバーナ13の内部へ送り込まれ、各炎孔131を通じて後方へ向けて噴出され、点火プラグ133からの火花放電により着火される。
【0036】
燃焼室20内におけるバーナ13の後方で且つ炎孔131の近傍位置には、ガスの燃焼炎の有無を検知する炎検知センサ17が設けられている。さらに、燃焼室20内における炎孔131の形成部から熱気出口21に至る熱気導出経路200の中間部には、熱気導出経路200の温度状態を検知するための熱気温度検出部として、二つの熱気温度センサ18が燃焼室20の左右側壁寄りの位置にそれぞれ離間して設けられている。尚、熱気温度センサ18は、燃焼室20の後壁や上壁、底壁に一つ設けられたものとしてもよい。
【0037】
図5に示すように、ケース前壁111には、バーナ13を手動で点火および消火させるための点消火操作部191と、加熱調理器1の動作情報を音声にて報知する音声出力部192と、加熱調理器1の動作情報を表示する表示部193とが設けられている。尚、点消火操作部191は、バーナ13の火力を手動で設定するための火力調整機能を兼備している。
【0038】
また、図示しないが、ガスバルブ130は、点消火操作部191によって点火操作がなされれば開き、炎検知センサ17によりガスの燃焼炎が検知されなくなれば閉じる電磁開閉弁と、点消火操作部191によって点火操作がなされれば開き、消火操作がなされれば閉じる主弁と、点消火操作部191で設定された火力に合わせて開度調整される回転ディスクと、制御回路5からの指示に応じてバーナ13へのガスの供給量を切り替える火力切替弁とからなるバルブユニットであり、これら各弁によってバーナ13の火力が適宜調整される。
【0039】
ガスバルブ130、ファンモータ15、炎検知センサ17、熱気温度センサ18、点消火操作部191、音声出力部192、および、表示部193は、電気配線を通じて制御回路5に接続されている。また、点火プラグ133は、図示しないイグナイタを介して制御回路5に接続されている。
【0040】
制御回路5は、CPUやタイマ、メモリ等により構成された電子回路ユニットであり、図6に示すように、バーナ13の点火や消火、火力調整を行うバーナ制御部501、炎検知センサ17の出力値に基づいてバーナ13の点火や消火を判定する点消火判定部502、ファンモータ15の作動や停止、回転数調整を行うファン制御部503、ファンモータ15の駆動特性値としてモータ電流値E1を検出する駆動特性検出部504、循環ファン14による帰還通路38から燃焼室20への引き込み風量と冷却ファン16による帰還通路38から燃焼室20への押し込み風量とを合算した正常時の循環風量に対応するファンモータ15の基準駆動特性値として基準電流値Esを記憶する記憶部505、熱気温度センサ18の検出温度T1に基づいて燃焼室20への給気異常を判定する給気異常判定部506、モータ電流値E1に基づいてファン14,16の回転不良を判定するファン異常判定部507、給気異常の有無に応じてファンモータ15の回転数を調整する給気量調整部508、給気異常が生じたことを音声出力部192および表示部193から報知させる異常報知部509等の回路構成を有している。
【0041】
次に、制御回路5によるファン14,16の異常判定動作を、図7に従って説明する。尚、上記加熱調理器1では、ケース前壁111に設けられた図示しない電源スイッチを操作して主電源をオンにすることで、制御回路5の主な制御プログラムが起動し、以下に説明する制御動作が実行可能な状態となるように構成されている。
【0042】
点消火操作部191によって点火操作がなされると、ファンモータ15を設定回転数にて作動させると共に、点火プラグ133から火花放電させ、さらにガスバルブ130の電磁開閉弁および主弁を開く。また、上記点火操作に連動してガスバルブ130の回転ディスクの開度が所定の点火時開度に調整される。これにより、本体ケース11の外部空気が、冷却ファン16の排気力と循環ファン14の吸気力との相乗によって帰還通路38を通じて燃焼室20内へ供給される。また、バーナ13には設定量のガスがガス供給口132周辺の空気と共に供給され、管内で点火に適した濃度に混合された後、各炎孔131から熱気導出経路200へ向けて放出され、上記火花放電により着火される(ST1〜ST2)。
【0043】
尚、図示しないが、バーナ13が点火された後、点消火操作部191にて火力調整操作が行われた場合は、その操作に合わせてガスバルブ130の回転ディスクの開度が変更される。これにより、バーナ13の火力が調整される。また、バーナ13が点火された後、何らかの原因により失火し、炎検知センサ17によって燃焼炎が検知されなくなった場合は、ガスバルブ130の電磁開閉弁を閉じ、バーナ13へのガスの供給を強制的に停止させる。これにより、バーナ13からのガス漏れが防止される。
【0044】
ST2のステップにてバーナ13の点火およびファンモータ15の作動がなされてから、点消火操作部191によって消火操作がなされるまでの間、少なくとも何れか一方の熱気温度センサ18の検出温度T1が正常時の基準温度Ts(例えば、250℃)を超えたか否かの監視を行う(ST3〜ST4)。
【0045】
上記検出温度T1の何れもが基準温度Ts以下であれば(ST3のステップでNo)、給気口350や排気口300、冷却通路37、帰還通路38にごみ詰まりなどの閉塞が生じておらず、燃焼室20内へ正常に外部空気が導入されている状態であり、且つ、循環ファン14および冷却ファン16も正常に回転している状態であるとして、加熱調理運転を継続する。そしてその後、点消火操作部191により消火操作がなされた場合は(ST4のステップでYes)、ガスバルブ130の主弁を閉じてバーナ13へのガスの供給を遮断し、バーナ13を消火させた後、ファンモータ15を停止させ、ST1のステップに戻る(ST5)。
【0046】
一方、ST2のステップにてバーナ13の点火およびファンモータ15の作動がなされた後、検出温度T1の何れか一方でも基準温度Tsより高くなった場合は(ST3のステップでYes)、帰還通路38から燃焼室20内への外部空気の導入量が少なくなり、熱気導出経路200における熱気の流れが悪くなった状態であるとして、その時点におけるファンモータ15のモータ電流値E1が予め設定された正常時の基準電流値Es(例えば、0.35A)より低くなっているか否かを判定する(ST6)。
【0047】
その結果、上記モータ電流値E1が基準電流値Esより低くなっていない場合は(ST6のステップでNo)、燃焼室20に対する空気導入量の低下が給気口350や排気口300、冷却通路37、帰還通路38等の閉塞に起因するものであるとして、燃焼室20内への給気異常が生じている旨を音声出力部192から音声にて報知し且つ表示部193に表示させる給気異常報知動作を実行する(ST7)。
【0048】
そしてさらに、バーナ13が正常燃焼状態となるよう、バーナ13に対するガス供給量を正常時より所定量(例えば、10%)減少させるガス量調整動作を実行すると共に、ファンモータ15の回転数を正常時より所定回転数(例えば、5%)増加させる給気量調整動作を実行し、ガス供給量に対する燃焼室20内への二次空気の供給割合を調整する(ST8)。
【0049】
また、上記ガス量調整動作および給気量調整動作を実行してから所定時間(例えば、30秒)が経過するまでの間に、検出温度T1の何れもが基準温度Ts以下に戻ったか否かを監視する(ST9〜ST10)。
【0050】
上記所定時間が経過するまでの間に、検出温度T1の何れもが基準温度Ts以下になれば(ST10のステップでNo)、再び、点消火操作部191により消火操作がなされるまで加熱調理運転を継続する。そしてその後、点消火操作部191により消火操作がなされた場合は(ST4のステップでYes)、バーナ13を消火させると共にファンモータ15を停止させ、ST1のステップに戻る(ST5)。
【0051】
一方、ガス量調整動作および給気量調整動作を実行したにもかかわらず、所定時間が経過しても、検出温度T1の少なくとも何れか一方が基準温度Tsより高い場合は(ST9のステップでYes)、強制的にバーナ13を消火させると共にファンモータ15を停止させ、ST1のステップに戻る(ST5)。
【0052】
ST2のステップにてバーナ13の点火およびファンモータ15の作動がなされた後、検出温度T1の少なくとも何れか一方が基準温度Tsより高くなったときに、モータ電流値E1が基準電流値Esより低くなっている場合は(ST6のステップでYes)、燃焼室20に対する空気導入量の低下が循環ファン14或いは冷却ファン16の空転や不安定回転など、ファン14,16の回転不良に起因するものであるとして、ファン14,16に異常が生じている旨を音声出力部192から音声にて報知し且つ表示部193に表示させるファン異常報知動作を実行する(ST11)。
【0053】
そしてさらに、燃焼室20に対する空気導入量の低下を補うべく、上記ガス量調整動作と共に給気量調整動作を実行し、上述したST9以降のステップを行う(ST8)。
【0054】
このように、上記加熱調理器1によれば、熱気温度センサ18の検出温度T1が正常時の基準温度Tsを超えた際に、モータ電流値E1が正常時の基準電流値Esより低ければ、ファン14,16が回転不良状態であると判定するから、ファン14,16の異常を早期に検出できるし、また、モータ収容室35に導入される外部空気中の油や埃等の影響を受けてファン14,16の異常の検出が阻害される虞も少ない。よって、ファン14,16の異常検出精度が向上する。
【0055】
特に、上記加熱調理器1では、ファンモータ15の電流値E1に基づいてファン14,16の回転不良を判定する構成としたことで、燃焼室20に対する空気導入量の低下が、給気口350や排気口300、冷却通路37、帰還通路38等の閉塞に起因するものであるのか、ファン14,16の回転不良に起因するものであるのかをより正確に判定することができるから、ファン14,16の異常検出精度が一層向上する。
【0056】
また、上記加熱調理器1では、ファン14,16の回転不良と判定された場合に、ファンモータ15の回転数を高くして、循環ファン14による帰還通路38から燃焼室20への外部空気の導入量(引き込み風量)、或いは、冷却ファン16による帰還通路38から燃焼室20への外部空気の導入量(押し込み風量)を増加させるから、モータ収容室35への外部空気の取り込み量を維持することができる。よって、ファンモータ15の過熱による故障や排気口300からの高温排気を抑制できる。
【0057】
尚、上記実施の形態では、バーナ13が点火された後、検出温度T1が基準温度Tsより高くなった際に、モータ電流値E1が基準電流値Esより低ければ、ファン異常報知動作を実行すると共に、燃焼室20に対する空気導入量の低下を補うべく、ガス量調整動作および給気量調整動作を実行するように構成されたものを説明したが、図8に示すように、ST102のステップにてバーナ13の点火およびファンモータ15の作動がなされた後、検出温度T1が基準温度Tsより高くなった際に、モータ電流値E1が基準電流値Esより低ければ(ST106のステップでYes)、ファン14,16に異常が生じている旨を音声出力部192から音声にて報知し且つ表示部193に表示させるファン異常報知動作を実行した後、速やかにガスバルブ130の主弁を閉じてバーナ13へのガスの供給を遮断し、強制的にバーナ13を消火させた後、ファンモータ15を停止させる(ST111,ST105)ように構成されたものとしてもよい。
【0058】
このものでは、ファン14,16に異常が生じた状態で長時間使用され続けられないので、ファン14,16の異常の拡大を防止することができる。また、ファン14,16の異常を起因として他の二次的な不具合が発生するのも防止できる。
【0059】
また、上記実施の形態では、ファンモータ15の駆動特性値としてモータ電流値E1を用いてファン14,16の回転不良を判定するように構成されたものを説明したが、モータ電流値E1と同様、ファンモータ15の負荷に応じて変動するファンモータ15の駆動特性値であれば、モータ電力値やモータ電圧値などを用いてもよい。
【0060】
本発明は、被加熱物Fの加熱手段として、燃焼室20内にバーナ13が組み込まれた加熱調理器を説明したが、バーナ13に代えて、電気ヒータが組み込まれたものにも適用できる。
【符号の説明】
【0061】
1 加熱調理器
10 加熱庫
11 本体ケース
13 バーナ(加熱手段)
14 循環ファン
15 ファンモータ
16 冷却ファン
18 熱気温度センサ(熱気温度検出部)
20 燃焼室
30 排気通路
35 モータ収容室
37 冷却通路
38 帰還通路
5 制御回路
504 駆動特性検出部
505 記憶部
図1
図2
図3
図4
図5
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図7
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図9