特許第6249984号(P6249984)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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特許6249984ベルト式レール頭部削正機および自走式レール頭部削正装置
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6249984
(24)【登録日】2017年12月1日
(45)【発行日】2017年12月20日
(54)【発明の名称】ベルト式レール頭部削正機および自走式レール頭部削正装置
(51)【国際特許分類】
   E01B 31/17 20060101AFI20171211BHJP
   B24B 27/00 20060101ALI20171211BHJP
   B24B 21/16 20060101ALI20171211BHJP
【FI】
   E01B31/17
   B24B27/00 E
   B24B21/16
【請求項の数】3
【全頁数】14
(21)【出願番号】特願2015-87819(P2015-87819)
(22)【出願日】2015年4月22日
(65)【公開番号】特開2016-204980(P2016-204980A)
(43)【公開日】2016年12月8日
【審査請求日】2016年12月20日
(73)【特許権者】
【識別番号】597110995
【氏名又は名称】株式会社レールテック
(73)【特許権者】
【識別番号】391030125
【氏名又は名称】保線機器整備株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100121496
【弁理士】
【氏名又は名称】中島 重雄
(74)【代理人】
【識別番号】100074192
【弁理士】
【氏名又は名称】江藤 剛
(72)【発明者】
【氏名】坂元 一美
(72)【発明者】
【氏名】佐藤 登志勝
(72)【発明者】
【氏名】細川 誠二
(72)【発明者】
【氏名】水野 仁志
(72)【発明者】
【氏名】佐藤 友昭
【審査官】 西田 光宏
(56)【参考文献】
【文献】 特開2014−037744(JP,A)
【文献】 実開昭50−017894(JP,U)
【文献】 特開平06−008129(JP,A)
【文献】 特表2010−531240(JP,A)
【文献】 特開2003−053655(JP,A)
【文献】 特開2010−201584(JP,A)
【文献】 米国特許第04768312(US,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B24B 21/00
B24B 21/04
B24B 21/16
B24B 27/00
E01B 31/17
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
レールの頭部を削正するベルト式レール頭部削正機であって、
削正機本体に所定間隔を空けて設けた一対の研削ベルト回転用プーリー間に掛け渡した研削ベルトの内側に、レールの頭部の断面形状にほぼ合致させたレール頭部形状押付け面を有する押付けローラーと、レールの長手方向に所定長さを有する平板状の平板状押付け面を有する押付け板とを設けると共に、
前記押付けローラーと前記押付け板とを相対的に昇降させることにより、前記押付け板の平板状押付け面または前記押付けローラーのレール頭部形状押付け面で前記研削ベルトをレールの頭部に押付けて研削する押付け板・ローラー昇降機構部を設けたことを特徴とするベルト式レール頭部削正機。
【請求項2】
請求項1記載のベルト式レール頭部削正機において、
前記押付け板の板状押付け面におけるレールの長手方向の所定長さは、レール頭部の踏面に形成される波状磨耗の凸凹のピッチ間隔以上にしたことを特徴とするベルト式レール頭部削正機。
【請求項3】
レールの間隔より狭いフレームを有し、そのフレームの前後に設けられた両側の車輪によりレール上をそれぞれ走行する台車本体と、
その台車本体の少なくとも一方の側方にスライド機構部を介しレールに対し直角方向にスライド可能に設けられた請求項1または請求項2に記載のベルト式レール頭部削正機とを備えた自走式レール頭部削正装置であって、
そのベルト式レール頭部削正機の前後に、さらに、
削正すべきレール頭部の両側に当たりながらそのレールに対し当該ベルト式レール頭部削正機を追従させるレール追従ローラーと、
レールの長手方向に密接して並べた複数の回転ローラーのいずれかがレール頭部に当ることにより、そのレール頭部に対し当該ベルト式レール頭部削正機を常に一定の高さに保持する高さ保持ローラーとを有することを特徴とする自走式レール頭部削正装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、レールの頭部を削正するベルト式レール頭部削正機および自走式レール頭部削正装置に関する。
【背景技術】
【0002】
レール頭部に発生する波状摩耗やレール継ぎ目の段差は振動や騒音の原因となるため、これらを研磨して除去する目的で従来から各種のベルト式レール頭部削正機および自走式レール頭部削正装置が提案されている。
【0003】
自走式レール頭部研削装置は、ベルト式レール頭部削正機を搭載してレール上を自走するもので、レール上を低速で走行しつつベルト式レール頭部削正機の研削砥石によってレール頭部を研削して波状摩耗やレール継ぎ目の段差等を除去するものである。ところで、レールの曲線(カーブ)部においては、車両の通過を容易にするため、外軌レールを内軌レールより高くするカントや、レール幅を通常(直進部)より広くするスラックが設けられているため、波状摩耗が発生し易い。そのため、自走式レール頭部研削装置として、フランジ付きの案内車輪と研削砥石とを備えた研削ユニットを、車体の幅方向にスライド自在に設ける。研削ユニットと車体との間に押圧機構を設け、案内車輪のフランジが常にそれぞれのレールの内側面に接触するように研削ユニットを押圧して、レールの曲線部等においても研削砥石を常にレールの真上に位置させつつレール研削ができるようにしたレール頭部研削装置が提案されている(例えば、特許文献1参照。)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2003−53655号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかし、前記特許文献1の自走式レール頭部削正装置は、波状磨耗を削正する荒削り後、レールの頭部の形状を復元する仕上げ研削を行う場合、ベルト状砥石を研削付勢手段の平面状の押付け面によりレールの頭部に押付けて研削するため、時間を要するという問題がある。
【0006】
特に、レールの踏面には、カーブや走行速度、さらには列車の車輪の走行差等によって波状磨耗が発生する。波状磨耗の凹凸は、50mmピッチから大きいものでは新幹線などでは1mを超える場合がある。
【0007】
しかし、この特許文献1の自走式レール頭部削正装置では、その図4等に示すように押付け面と保持部との間にスプリング等の弾性部材が設けられているため、押付け面が波状磨耗の凹凸に追従して上下動してしまい、的確に波状磨耗を削正できない。
【0008】
そこで、本発明は、これらの問題点等に着目してなされたもので、レールの長手方向に回転する研削ベルトを使用してレール頭部の削正作業を一台のレール頭部削正機により効率良く実行することができるベルト式レール頭部削正機、およびそのようなベルト式レール頭部削正機を利用した自走式レール頭部削正装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
前記課題を解決するため、本発明のベルト式レール頭部削正機は、レールの頭部を削正するベルト式レール頭部削正機であって、削正機本体に所定間隔を空けて設けた一対の研削ベルト回転用プーリー間に掛け渡した研削ベルトの内側に、レールの頭部の断面形状にほぼ合致させたレール頭部形状押付け面を有する押付けローラーと、レールの長手方向に所定長さを有する平板状の平板状押付け面を有する押付け板とを設けると共に、前記押付けローラーと前記押付け板とを相対的に昇降させることにより、前記押付け板の平板状押付け面または前記押付けローラーのレール頭部形状押付け面で前記研削ベルトをレールの頭部に押付けて研削する押付け板・ローラー昇降機構部を設けたことを特徴とする。
ここで、前記押付け板の板状押付け面におけるレールの長手方向の所定長さは、レール頭部の踏面に形成される波状磨耗の凸凹のピッチ間隔以上にしたことにある。
また、本発明に係る自走式レール頭部削正装置は、レールの間隔より狭いフレームを有し、そのフレームの前後に設けられた両側の車輪によりレール上をそれぞれ走行する台車本体と、その台車本体の少なくとも一方の側方にスライド機構部を介しレールに対し直角方向にスライド可能に設けられた上述のいずれか一のベルト式レール頭部削正機とを備えた自走式レール頭部削正装置であって、そのベルト式レール頭部削正機の前後に、さらに、削正すべきレール頭部の両側に当たりながらそのレールに対し当該ベルト式レール頭部削正機を追従させるレール追従ローラーと、レールの長手方向に密接して並べた複数の回転ローラーのいずれかがレール頭部に当ることにより、そのレール頭部に対し当該ベルト式レール頭部削正機を常に一定の高さに保持する高さ保持ローラーとを有することを特徴とする。
【発明の効果】
【0010】
本発明のベルト式レール頭部削正機および自走式レール頭部削正装置によれば、表面に研磨部が設けられた研削ベルトの内側に、レールの頭部の断面形状にほぼ合致させたレール頭部形状押付け面を有する押付けローラーと、レールの長手方向に所定長さを有する平板状の平板状押付け面を有する押付け板とを設け、押付けローラーと押付け板とを相対的に昇降させることにより、押付け板の平板状押付け面または押付けローラーのレール頭部形状押付け面により研削ベルトをレールの頭部に押付けて研削する。
そのため、本発明によれば、例えば、平板状押付け面により研削ベルトをレールに押付けることにより研削した後、押付けローラーにより研削ベルトをレールに押付けることにより仕上げ研削等を行うことが可能となり、レール頭部の削正作業を一台のレール頭部削正機および自走式レール頭部削正装置により効率良く実行することができる。
また、本発明の自走式レール頭部削正装置によれば、スライド機構部やレール追従部、高さ保持ローラー等を有するので、レールにスラックや蛇行があっても簡単な構成でそのスラックや蛇行に自動的に追従して自走式で削正を行うことができる。
【図面の簡単な説明】
【0011】
図1】本発明に係る実施形態の自走式レール頭部削正装置全体の平面図である。
図2】本発明に係る実施形態の自走式レール頭部削正装置全体の正面図である。
図3】本発明に係る実施形態の自走式レール頭部削正装置全体の背面図である。
図4】本発明に係る実施形態の自走式レール頭部削正装置におけるレール頭部削正機の押付け板により研削ベルトをレールに押付けてレールの頭部を研削している状態を示す右側面図である。
図5】本発明に係る実施形態の自走式レール頭部削正装置におけるレール頭部削正機の押付け板により研削ベルトをレールに押付けてレールの頭部を研削している状態を示す主要部の拡大右側面図である。
図6】本発明に係る実施形態の自走式レール頭部削正装置におけるレール頭部削正機の押付けローラーにより研削ベルトをレールに押付けてレールの頭部を研削している状態を示す右側面図である。
図7】本発明に係る実施形態の自走式レール頭部削正装置におけるレール頭部削正機の押付けローラーにより研削ベルトをレールに押付けてレールの頭部を研削している状態を示す主要部の拡大右側面図である。
図8】本発明に係る実施形態の自走式レール頭部削正装置におけるレール頭部削正機の押付け板により研削ベルトをレールに押付けてレールの頭部の踏面を研削している状態を示す主要部の拡大断面正面図である。
図9】本発明に係る実施形態の自走式レール頭部削正装置におけるレール頭部削正機の押付け板により研削ベルトをレールに押付けてレールの頭部の左側角部を研削している状態を示す主要部の拡大断面正面図である。
図10】本発明に係る実施形態の自走式レール頭部削正装置におけるレール頭部削正機の押付け板により研削ベルトをレールに押付けてレールの頭部の右側角部を研削している状態を示す主要部の拡大断面正面図である。
図11】本発明に係る実施形態の自走式レール頭部削正装置におけるレール頭部削正機の押付けローラーにより研削ベルトをレールに押付けてレールの頭部の踏面を研削している状態を示す主要部の拡大断面正面図である。
【発明を実施するための形態】
【0012】
次に、本発明に係る実施形態の自走式レール頭部削正装置1、およびこの自走式レール頭部削正装置1を搭載したベルト式レール頭部削正機2について説明する。
【0013】
<自走式レール頭部削正装置1全体の構成>
図1に示すように、実施形態の自走式レール頭部削正装置1は、自走してレールRの頭部を削正するもので、台車本体10と、台車本体10の少なくとも一方の側方にスライド・倒伏機構部14a,14bを介し、レールRに対し直角方向にスライド可能に設けられレールRの頭部を削正するベルト式レール頭部削正機2とを備える。なお、図1に示す状態では、台車本体10の一方側(図上、下側)にのみベルト式レール頭部削正機2が設けているが、台車本体10の他方側(図上、上側)にベルト式レール頭部削正機2を設けても良いし、さらには台車本体10の両側(図上、上下両側)にそれぞれ同じベルト式レール頭部削正機2を設けるようにしても良い。なお、図1には図示していないが、台車本体10には、発電機が搭載されており、台車本体10の駆動部13やベルト式レール頭部削正機2に駆動電流を供給する。
【0014】
台車本体10は、レールRの間隔より狭いフレーム11を有し、その前後両側には、前輪12a,12aと、後輪12b,12bを有し、第1モーター13aを内蔵した駆動部13によりフレーム11の前方または後方に設けた車輪12a,12a、12b,12bを回転させてレールR上をそれぞれ走行する。尚、ここでは、フレーム11の前方に設けた前輪12a,12aを駆動しているが、本発明では、これに限らない。
【0015】
台車本体10のフレーム11は、レールRの長手方向に対し平行な両側(図上、上下両側)の左側フレーム材11aおよび右側フレーム材11bと、レールRの長手方向に対し垂直な前後(図上右左側)の前側フレーム材11c,11cおよび後側フレーム材11dとを有する。ここで、第1モーター13aを内蔵した駆動部13は、後側フレーム材11dに設けられており、車軸15により連結された車輪12a,12cを回転させて台車本体10を往復動させる。つまり、駆動部13は、正回転および逆回転可能であり、台車本体10は前進および後進が可能である。なお、後側の車輪12a,12cと、前側の車輪12b,12dとは、ぞれぞれ、図4に示すように車軸15により連結されている。
【0016】
右側フレーム材11bの前後には、それぞれ、ベルト式レール頭部削正機2をレールRに対し垂直方向にスライド可能に設置するためのスライド機構部14a,14bを有する。尚、左側フレーム材11a側にもスライド機構部14a,14bを設けても良い。
【0017】
スライド機構部14a,14bは、それぞれ、右側フレーム材11bに固定されるボルトやネジ等により固定台座14a1,14b1と、その固定台座14a1,14b1に対しローラー(図示せず。)等を介してレールRに対し垂直方向にスライド可能に設けられたスライド板14a2,14b2とからなる。各スライド板14a2,14b2には、図9図11に示すように回転軸14a3,14b3を介しベルト式レール頭部削正機2をレール2に対し起伏させるための起伏自在アーム14a4,14b4と、その起伏自在アーム14a4,14b4の先端にベルト式レール頭部削正機2を固定するための固定ボルト14a5,14b5とを有する。
【0018】
<ベルト式レール頭部削正機2の構成>
次に、本実施形態のベルト式レール頭部削正機2の構成を説明する。
本実施形態のベルト式レール頭部削正機2は、その前後両側に、ベルト式レール頭部削正機2の前後端部それぞれの下側に設けられ、削正すべきレールRの両側に当たりながら回転しレールRに対しベルト式レール頭部削正機2を追従させるレール追従ローラー21a,21bと、ベルト式レール頭部削正機2の前後端部それぞれの下側に設けられ、レールRの方向に密接させて並べた複数の回転ローラー22a1,22b1のいずれかがレール頭部に当ることにより、そのレールRの頭部に対しベルト式レール頭部削正機2を常に一定の高さに保持する高さ保持ローラー22a,22bと、レール追従ローラー21a,21bや高さ保持ローラー22a,22bが取り付けられた角度調整設定板23a,23bと、角度調整設定板23a,23bの間に取り付けられ、レールRの頭部(踏面)を削正する削正機本体24とを有する。
【0019】
角度調整設定板23a,23bは、ぞれぞれ、図1等に示すようにベルト式レール頭部削正機2の前後に設けられるもので、ベルト式レール頭部削正機2の両側横方向に張り出した右側張り出し部23a1,23b1および左側張り出し部23a2,23b2を有していると共に、レールRに対し平行に突出して設けられた芯出しピン25a1,25b1が挿入され、レールRの頭部中心を中心とする半径の円弧状の角度設定通し孔23a3,23b3が形成されている。
【0020】
そして、角度調整設定板23a,23bのうちいずれか一方の、例えば、角度調整設定板23bの右側張り出し部23b1および左側張り出し部23b2の先端にはそれぞれネジ棒支持板23b11,23b21が設けられており、ネジ棒支持板23b11,23b21には外周にネジ溝が形成された角度調整ネジ23b4が回転可能に取り付けられている。
【0021】
また、その角度調整ネジ23b4の一端には、角度調整ネジ23b4を回転させるための角度調整ハンドル23b5が設けられている。これにより、角度調整ハンドル23b5を回転させれば、角度調整ネジ23b4が回転して、後述する図8図10に示すように、角度調整ネジ23b4に螺合している芯出しナット25b3が移動し、芯出しナット25b3が取り付けられている芯出し棒25b2の角度が変わるので、レールRに対する削正機本体24の削正角度を設定や調整することができる。
【0022】
また、スライド機構部14a,14bの各スライド板14a2,14b2には、回転軸14a3,14b3を介し起伏自在アーム14a4,14b4が起伏可能に設けられているので、ベルト式レール頭部削正機2が取り付けられたスライド機構部14a,14bの起伏自在アーム14a4,14b4をリフトアップすると、ベルト式レール頭部削正機2をレール2から離すことができる。そのため、ベルト式レール頭部削正機2がレール2から離れるので、ベルト式レール頭部削正機2を取外したり、あるいは装着するベルト式レール頭部削正機2の着脱作業や、ベルト式レール頭部削正機2をメンテナンス作業が容易になる。また、レールRを削正しない場合には、ベルト式レール頭部削正機2をレールRからリフトアップさせたまま台車本体10を走行させることにより、レールRとの摩擦抵抗が0になるので、移動の際などに非常に便利となる。
【0023】
削正機本体24は、図4図5等に示すように、レールRの長手方向に延びる長方形状のケーシング24aと、発電機(図示せず。)からの駆動電流により回転する第2モーター24bと、レールRの長手方向に所定間隔を空けて配置され、その第2モーター24bにより駆動プーリー24b1および駆動ベルト24b2等を介して回転する一対の研削ベルト回転用プーリー24c1,24c2とを有し、その研削ベルト回転用プーリー24c1,24c2の外側に研削ベルト24dを掛け渡している。
【0024】
研削ベルト24dの外側表面には、研磨材(研削材)や微小な砥石が塗布または貼り付けられて研磨部が設けられており、その研磨部がレールRの長手方向で、かつ、この自走式レール頭部削正装置1の走行方向とは逆方向に回転し、かつ、後述するように押付け板・ローラー昇降機構部24gが押付け板24eまたは押付けローラー24fを相対的に昇降させて押付け板24eまたは押付けローラー24fのいずれか一方で研削ベルト24dの内側からレールRの頭部の方へ押付けてレールRの頭部(踏面)を研削する。
【0025】
押付け板・ローラー昇降機構部24gは、リンク機構を利用してケーシング24aに対し押付け板24eを昇降させる押付け板昇降部24g1と、弓なりゲージ24g21を利用してケーシング24aに対し押付けローラー24fを昇降させる押付けローラー昇降部24g2とを有する。
【0026】
押付け板昇降部24g1は、図5図7等に示すように、2つのL字型リンク24g11,24g12の上端部を水平リンク24g13で回動可能に連結する一方、2つのL字型リンク24g11,24g12の下端部は押付け板24eがスプリングを介さずにボルトおよびナットやネジ等により固定された昇降フレーム24a1に固定されており、水平リンク24g13の両側をワイヤ24g14で連結し、そのワイヤ24g14を第3モーター24g15により回転するワイヤ用プーリー24g15,24g16で引っ張ることにより、昇降フレーム24a1に固定された押付け板24eを昇降させるように構成されている。
【0027】
昇降フレーム24a1は、削正機本体24のケーシング24aに対し昇降可能に取り付けられている。そして、昇降フレーム24a1や押付け板24eは、それ自体が重い鋼材等から構成されているため、それらの重量で研削ベルト24dを裏面側から押すことにより研削できる。
【0028】
押付けローラー昇降部24g2は、昇降フレーム24a1にレールRの長手方向に延びる弓なりゲージ24g21を取り付けると共に、その昇降フレーム24a1の前後に回転プーリー24g22,24g22を設け、その回転プーリー24g22,24g22間に押付けローラー24fをレールRの長手方向に移動させ格納(退避)位置24A2と研削位置24A3との間を移動させて、弓なりゲージ24g21の案内面に下から当接することにより案内されて上下動させる移動用ベルト(チェーン)24g23を設けている。
【0029】
そのため、この削正機本体24では、押付けローラー24fを回転可能に支持したローラー支持部24f1の基部を回動可能に支持した押付けローラーベース部24f2を移動用ベルト(チェーン)24g23に取り付けると共に、移動用ベルト(チェーン)24g23を第4モーター24g24が回転プーリー24g25〜24g27に掛け渡したベルト24g28を介して一方の回転プーリー24g22を回転させることにより移動させる。
【0030】
移動用ベルト(チェーン)24g23が回転プーリー24g22,24g22によって回転すると、ローラー支持部24f1の中間部に弓なりゲージ24g21の案内面を下から当接することによりローラー支持部24f1を揺動(スイング)させて押付けローラー24fを上下動させる。
【0031】
<自走式レール頭部削正装置1およびベルト式レール頭部削正機2の動作>
次に、以上のように構成された本実施形態の自走式レール頭部削正装置1およびベルト式レール頭部削正機2の動作について説明する。
【0032】
<押付け板24eにより研削ベルト24dをレールRに押付けてレールRの頭部を研削する場合>
【0033】
ベルト式レール頭部削正機2の押付け板24eにより研削ベルト24dをレールRに押付けてレールRの頭部を研削する場合、図4および図5に示すように、押付け板昇降部24g1および押付けローラー昇降部24g2により、押付け板24eの板状押付け面24e1を、押付けローラー24fのレール頭部形状押付け面24f4よりも低く、すなわちレールRの頭部側に突出させることにより、押付け板24eの板状押付け面24e1が研削ベルト24dの内側をレールRの方へ押して、研削ベルト24dの外側の研削面をレールRに対し押付けて研削する。
【0034】
具体的には、押付けローラー昇降部24g2は、図5に示すように、第4モーター24g24の回転により回転プーリー24g25〜24g27に掛け渡したベルト24g28を回転させて、押付けローラー24fを弓なりゲージ24g21の案内面に従って案内しながら格納(退避)位置24A2に移動させ、押付けローラー24fのレール頭部形状押付け面24f4を、押付け板24eの板状押付け面24e1よりも高く、すなわち押付け板24eの板状押付け面24e1の方をレールRの頭部に近付ける。
【0035】
一方、押付け板昇降部24g1は、第3モーター24g15の回転により図5上、第3モーター24g15の右側より左側のワイヤ24g14の長さを長くして水平リンク24g13を左側に移動させて、昇降フレーム24a1や押付け板24eはそれ自体の自重で研削ベルト24dを裏面側から押してレールRの頭部を研削できる。
【0036】
ここで、図8図9に示すように、角度調整設定板23bの角度調整ハンドル23b5を回転すると、角度調整ネジ23b4が回転して、角度調整ネジ23b4に螺合している芯出しナット25b3が左右に移動して、芯出しナット25b3が取り付けられている芯出し棒25b2の角度設定取り付け板25bの上部が移動するので、レールRに対する削正機構部24の削正角度を設定や調整して、図8に示すように押付け板24eが研削ベルト24dを裏面側から押してレールRの頭部の踏面を研削したり、図9図10に示すように押付け板24eが研削ベルト24dを裏面側から押してレールRの頭部の左側角部や右側角部を研削できる。
【0037】
ここで、研削ベルト24dは、第2モーター24bが駆動プーリー24b1およびベルト24b2等を介して一対の回転プーリー24c1,24c2を回転させることにより回転するが、その回転方向は、自走式レール頭部削正装置1の走行方向とは逆方向になるように回転してレールRの頭部を研削して、その研削により自走式レール頭部削正装置1にブレーキ(抵抗)がかかるようにする。
【0038】
つまり、図4および図5上、自走式レール頭部削正装置1が右方向に進む場合は、研削ベルト24dは反時計周りに回転する一方、走式レール頭部削正装置1が左方向に進む場合は、研削ベルト24dは反時計周りに回転して、研削ベルト24dにより自走式レール頭部削正装置1にブレーキ(抵抗)がかかるようにする。
【0039】
そのため、自走式レール頭部削正装置1によれば、レールRが逸走しないように確実に研削することができる、
【0040】
また、押付け板24eは、平板状の平板状押付け面24e1を有しており、平板状押付け面24e1のレールRの長手方向の所定長さLは、レールRに生じる波状磨耗の凸凹のピッチ、すなわち山(凸)の頂点から次の山(凸)の頂点までの間隔以上の長さとしている。
【0041】
例えば、レールRの長手方向に生じる波状磨耗の凸凹のピッチの50mm〜200mmの場合、押付け板24eのレールRの長手方向の長さLは、発生する波状磨耗の凸凹の最大ピッチである200mm以上の長さとする。
【0042】
従って、本実施形態の自走式レール頭部削正装置1およびベルト式レール頭部削正機2では、押付け板24eのレールRの長手方向の長さLを、レールRに発生する波状磨耗の凸凹の最大ピッチ以上としているため、波状磨耗の凸凹のピッチが長い場合でも、押付け板24eの平板状押付け面24e1が波状磨耗の凸凹に追従して上下動することなく、確実に波状磨耗を研削することができる。
【0043】
また、本実施形態の自走式レール頭部削正装置1およびベルト式レール頭部削正機2では、上述の特許文献1に記載のベルト式レール頭部削正機とは異なり、押付け板24eをフレーム11に対しスプリング等の弾性部材を介さずにネジ14b等によって昇降フレーム24a1に直接固定している。
【0044】
そのため、この点でも、本実施形態の自走式レール頭部削正装置1およびベルト式レール頭部削正機2では、押付け板24eの平板状押付け面24e1が波状磨耗の凸凹に追従して上下動することを防止でき、確実にレールRの頭部の波状磨耗を研削することができる。
【0045】
<押付けローラー24fにより研削ベルト24dをレールRに押付けてレールRの頭部を研削する場合>
【0046】
ベルト式レール頭部削正機2の押付けローラー24fにより研削ベルト24dをレールRに押付けてレールRの頭部を研削する場合、図6および図7に示すように、押付け板昇降部24g1および押付けローラー昇降部24g2により、押付けローラー24fのレール頭部形状押付け面24f4を、押付け板24eの板状押付け面24e1よりも低く、すなわちレールRの頭部側に突出させることにより、押付けローラー24fのレール頭部形状押付け面24f4が研削ベルト24dの内側をレールRの方へ押して、研削ベルト24dの外側の研削面をレールRに対し押付けて研削する。
【0047】
具体的には、押付け板昇降部24g1は、第3モーター24g15の回転により図7上、第3モーター24g15の右側と左側のワイヤ24g14の長さをほぼ同じにして水平リンク24g13を図5の場合よりも右側に移動させて、押付け板24eの平板状押付け面24e1をレールRの頭部上昇、すなわち遠ざける。
【0048】
その一方、押付けローラー昇降部24g2は、図7に示すように、第4モーター24g24の回転により回転プーリー24g25〜24g27に掛け渡したベルト24g28を回転させて、押付けローラー24fを弓なりゲージ24g21の案内面に従って案内しながら研削(削正)位置に移動して、押付けローラー24fのレール頭部形状押付け面24f4を、押付け板24eの板状押付け面24e1よりも低く、すなわちレールRの頭部に近付ける。
【0049】
従って、本実施形態の自走式レール頭部削正装置1およびベルト式レール頭部削正機2によれば、押付けローラー24fのレール頭部形状押付け面24f4が押付け板24eの板状押付け面24e1よりもレールRの頭部側に突出するので、押付けローラー24fのレール頭部形状押付け面24f4が研削ベルト24dの内側をレールRの方へ押して、研削ベルト24dの外側の研削面をレールRに対し押付けて研削できる。
【0050】
ここで、押付けローラー24fのレール頭部形状押付け面24f4は、断面形状がレールRの頭部の断面形状にほぼ合致して形成されているので、本実施形態の自走式レール頭部削正装置1およびベルト式レール頭部削正機2によれば、図4図5および図8図10に示すようにして押付け板24eの平板状押付け面24e1により研削ベルト24dの内側をレールRの方へ押してレールRの頭部の波状磨耗を研削後、図6および図7図11に示すようにして押付けローラー24fのレール頭部形状押付け面24f4によって研削ベルト24dの内側をレールRの頭部の方へ押してレールRの頭部の形状を復元するため仕上げ研削を行うことができる。
【0051】
その結果、レールRの頭部の削正作業を一台の自走式レール頭部削正装置1およびベルト式レール頭部削正機2によって効率良く実行することができる。
【0052】
また、本実施形態の自走式レール頭部削正装置1は、本実施形態のベルト式レール頭部削正機2の前後にスライド機構部14a,14bやレール追従ローラー21a,21b、高さ保持ローラー22a,22b等を設けたので、レールRにスラックや蛇行があっても簡単な構成でそのスラックや蛇行に自動的に追従して自走式で削正を行うことができる。
【符号の説明】
【0053】
1 自走式レール頭部削正装置
2 ベルト式レール頭部削正機
10 台車本体
11 フレーム
12a,12b 車輪
13 駆動部
13a 第1モーター
14a,14b スライド機構部
15 車軸
21a,21b レール追従ローラー
22a,22b 高さ保持ローラー
23a,23b 角度調整設定板
23b1 右側張り出し部
23b2 左側張り出し部
23b3 角度設定通し孔
23b4 角度調整ネジ
23b5 角度調整ハンドル
24 削正機構部
24a 削正機本体
24a1 昇降フレーム
24A2 格納(退避)位置
24A3 研削位置
24b 第2モーター
24c1,24c2 回転プーリー
24d 研削ベルト
24e 押付け板
24e1 平板状押付け面
24f 押付けローラー
24f4 レール頭部形状押付け面
24g 押付け板・ローラー昇降機構部
24g1 押付け板昇降部
24g15 第3モーター
24g2 押付けローラー昇降部
24g21 弓なりゲージ
24g24 第4モーター
25a,25b 角度設定取り付け板
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11