(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6249989
(24)【登録日】2017年12月1日
(45)【発行日】2017年12月20日
(54)【発明の名称】ボール自動供給装置
(51)【国際特許分類】
A63B 69/40 20060101AFI20171211BHJP
【FI】
A63B69/40 511C
A63B69/40 511D
【請求項の数】4
【全頁数】8
(21)【出願番号】特願2015-106909(P2015-106909)
(22)【出願日】2015年5月27日
(65)【公開番号】特開2016-220714(P2016-220714A)
(43)【公開日】2016年12月28日
【審査請求日】2016年4月11日
(73)【特許権者】
【識別番号】392026121
【氏名又は名称】株式会社西野製作所
(74)【代理人】
【識別番号】100078673
【弁理士】
【氏名又は名称】西 孝雄
(72)【発明者】
【氏名】板坂 重和
(72)【発明者】
【氏名】酒井 祐一
【審査官】
東 治企
(56)【参考文献】
【文献】
実開昭54−060560(JP,U)
【文献】
米国特許出願公開第2013/0104870(US,A1)
【文献】
特開平06−190097(JP,A)
【文献】
実開昭58−018579(JP,U)
【文献】
実開昭51−080258(JP,U)
【文献】
実開昭63−120678(JP,U)
【文献】
特開昭58−163383(JP,A)
【文献】
米国特許第04207857(US,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A63B 69/00 − 69/40
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
底部に周壁と当該周壁の中間高さの位置で回転する回転円板とで形成される短円筒状の受皿を備えたホッパと、
当該回転円板の外周部に落し口を開口しかつ当該回転円板の外周方向に連通口を開口して受皿から落下した1個のボールを保持して当該回転円板と共に回転する平面U字形の旋回収納室と、
前記周壁の前記回転円板より下方の投球機側を向く位置に開口して前記旋回収納室にその回動範囲の1箇所で連通する供給路と、
前記受皿の周壁に固定されて前記旋回収納室が供給路に連通する箇所で受皿内のボールが旋回収納室に落下するのを阻止する遮蔽板と、
供給路が旋回収納室に連通する箇所で回転円板及びこれと一体の旋回収納室を一時停止させる回転駆動装置とを備え、
前記投球機の背後側の台車ないしフレームに基端を鉛直軸回りに回転可能に設けたクランク形ないし逆L字形の1本のステイで取り付けられている、ボール自動供給装置。
【請求項2】
前記遮蔽板が、旋回収納室が供給路に連通する箇所で落し口の受皿外周側の一部を遮蔽して受皿内のボールが旋回収納室に落下するのを阻止する、請求項1記載のボール自動供給装置。
【請求項3】
前記回転駆動装置が、供給路が旋回収納室に連通する箇所で一時停止した後の回転円板及びこれと一体の旋回収納室とを反転させる、請求項1又は2記載のボール自動供給装置。
【請求項4】
前記供給路にボールを検出するセンサを備え、当該センサがボール検出信号を出力するまで前記回転円板の反転回動を繰り返す、請求項3記載のボール自動供給装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、投球機(ピッチングマシン)にボールを1個ずつ供給する装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
投球機は、野球の打撃練習やテニスの練習に広く用いられている。投球機には色々な形式のものがあるが、回転するローラの周面でボールを加速して投球する投球機は、球速や球質(ボールに付与する回転)の異なる種々のボールを射出することができ、小型で投球用のスイングアームを有していないため、オープンスペースで使用でき、台車に搭載することで容易に移動可能な装置とすることができる。
【0003】
投球機には、投球信号を受けたとき、あるいは一定間隔でボールを1個ずつ供給する自動供給装置が必要である。投球機用のボールの自動供給装置として、ホッパに投入されたボールをコンベアで1個ずつ投球機に供給する構造の装置が知られているが、構造が複雑で設置に要する面積も大きくなるため、据付型の自動供給装置として用いられている。
【0004】
ホッパから連続して落下してくるボールを1個ずつ供給する装置には、後続のボールを一時停止させた状態で先頭の1個のボールを投球機へと送り出す間欠送り装置を設ける必要がある。この間欠送り装置は、通常、先頭のボールの移動を阻止する第1ストッパと先頭のボールと2番目のボールとの間に挿入されて2番目以降のボールの移動を阻止する第2ストッパとを設け、カムやソレノイドなどで第1と第2のストッパを交互にボール通路に進出させる構造である。
【0005】
特許文献1には、ホッパの底部付近に回転テーブルが設けられ、この回転テーブルに形成された3個のボール収容孔にボールが1個ずつ収容された状態で、回転テーブルの回転によりそのボールが順次ストッパユニットへ移動させられ、このストッパユニットでボールを一旦受けた後、回転テーブルに形成されたカムでストッパを開放して1個のボールが供給パイプに落下するようにしたボール供給装置が提案されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開平7−51419号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
フリースペースで使用する移動可能な投球機には、大がかりなボール供給装置を設けることができない。フリースペースで使用可能な野球やテニスの投球機は、屋外で使用されるので、ボールに付着した砂や土がボール供給装置の可動機構に付着することを考慮しなければならない。
【0008】
先頭と2番目のボールとを交互にボール通路に進出させるストッパを備えた従来のボール供給装置では、投球機の動作とタイミングを合わせて2個のストッパを交互動作させる間欠送り装置の構造が複雑になる。特許文献1で提案されている間欠送り装置は、ストッパが1個で良いという利点があるが、当該1個のストッパをカムやバネで開閉する可動機構が必要で、ボールに付着する砂や土などで可動機構の円滑な動きが阻害されたり、故障したりしやすいという問題がある。
【0009】
この発明は、台車に搭載されたコンパクトな投球機にボールを自動的に供給するための、小型で構造が簡単で故障が少ないボール自動供給装置を提供することを課題としており、台車に搭載した投球機に付設して投球機と共に移動することができる小型で安価なボール自動供給装置を提供することを課題としている。
【課題を解決するための手段】
【0010】
この発明のボール自動供給装置は、周壁23と当該周壁内で回転する回転円板24とで形成される短円筒状の受皿22を底部に備えたホッパ21と、回転円板24の外周部に落し口27を開口して受皿22から落下した1個のボールを保持して回転円板24と共に回転する旋回収納室26と、旋回収納室にその回動範囲の1箇所で連通する供給路31と、周壁23に固定されて旋回収納室26が供給路31に連通する箇所で受皿22内のボールが旋回収納室26に落下するのを阻止する遮蔽板41と、供給路31が旋回収納室26に連通する箇所で回転円板24及びこれと一体の旋回収納室26を一時停止させる回転駆動装置25とを備えている。
【0011】
ホッパ21内に投入されたボールは、内側のものから順に受皿22内へと移動する。回転円板24が回転すると、受皿22内のボールの1個が旋回収納室26へと落下する。受皿22内のボールの数が少なくなっても、回転円板24の回転によって、その上のボールは周壁23側へと移動し、かつ回転しない周壁の抵抗により、回転円板24より遅い速度で受皿22内を移動するので、旋回収納室26に落とし込むことができる。図の例では、この作用を助長するため、受皿22の上面に放射方向の突条37を設けている。
【0012】
旋回収納室26に落下したボールは、回転円板24と共に回転(旋回)して、旋回収納室26と供給路31とが連通して回転円板24が停止したときに、重力によって供給路31へと転がって、供給路31に接続された投球機1に供給される。ボールが供給路31へと転がると、旋回収納室26は空になるが、このとき遮蔽板41が受皿内のボールが旋回収納室26に落ち込むのを阻止しているので、2個以上のボールが供給路31に転がり込むことはない。
【0013】
遮蔽板41は、旋回収納室の開口27を一部塞いで受皿22内のボールが旋回収納室26に落ち込むのを阻止するように設ける。開口27を完全に塞ぐ大きさの遮蔽板を設けると、回転円板24の回転に伴う受皿22上のボールの移動が阻害され、回転円板24の駆動トルクが増大する。
【0014】
回転円板24が再び回転を開始すると、旋回収納室の開口27が遮蔽板41から離れ、受皿22内のボールが旋回収納室26に落ち込む。このようにして回転円板24が1回転(収納部を複数個設けたときは、その複数分の1回転)毎に1個のボールが供給路31に供給される。
【0015】
この発明のボール自動供給装置は、旋回収納室26を回転円板24の下方で外周側に開いたU字形と
し、供給路31を回転円板の下方の半径方向外側に連通させる構造と
している。これにより、ボール自動供給装置の高さを低くすることができ、供給装置が投球装置より高くなるのを防止することができる。
【0016】
この発明のボール自動供給装置は、投球装置の背後側にその台車14ないしフレームにクランク形ないし逆L字形の1本のステイ17で取り付
け、当該ステイの基端を中心に鉛直軸回りに回転して折り畳まれる構造と
している。これにより、投球機1と共に1台の台車14に搭載できると共に、台車14の移動時に折り畳んで移動作業を容易にすること
ができる。
【発明の効果】
【0017】
この発明により、フリースペースで使用できる小型で移動可能な投球機に付設して、当該投球機と一体に移動及び設置可能な安価で構造が簡単な投球機のためのボールの自動供給装置を提供することができる。回転円板24を反転させることにより、多数のボールがそれらの表面の摩擦力によって移動が阻害されて、ホッパ21に多数のボールが投入されたときに、ボールの供給が阻止される事態を防止することができる。
【図面の簡単な説明】
【0018】
【
図1】ボール自動供給装置を搭載した投球機の側面図
【発明を実施するための形態】
【0019】
以下、図面を参照してこの発明の実施形態を説明する。図に示した投球機1は、ボールを3方向から挟持する3個の回転ローラの摩擦力によって、投球機1の後方のパイプ11に供給されたボールを加速して射出口12から射出する構造で、ローラの回転速度により投球速度が変わり、3個のローラの回転数の差により、投球されるボールに種々の方向の回転を付与することができるようにしたものである。投球機1は、手押し用のハンドル13を備えた台車14に搭載されており、前方には打ち返されたボールが投球機1に当たるのを防止するための防護ネット16が設けられている。
【0020】
この発明のボール自動供給装置2は、投球機1の背後に設けられている制御箱15のケースに1本のクランク形のステイ17で支持されている。
【0021】
ボール自動供給装置2は、ボールを投入するホッパ21を備えている。ホッパ21の中心部には、短円筒状の受皿22が形成されている。受皿22は、円筒状の周壁23と、その中間高さに位置する回転円板24とで形成されている。回転円板24は、受皿22の底板となっている。回転円板24の中心は、減速機付きモータ25に連結され、正逆方向に回転駆動されるようになっている。
【0022】
回転円板24には、その外周部の下面1箇所にボールを1個収納する旋回収納室26が設けられている。旋回収納室26は、回転円板24の外周方向に開いたU字形の平面形状を備えており、その上方部分の回転円板24が切り欠かれて落し口27となる開口が形成されている。周壁23の下縁に接合されているホッパの底板29は、旋回収納室26に収容されたボールを受ける受板となっており、この底板29の中心に減速機付きモータ25が取り付けられている。
【0023】
回転円板24の旋回収納室26と180度反対の側に周壁23と同心円弧状に屈曲した逆台形形状のドグプレート28が取り付けられている。
【0024】
周壁23の前方、すなわち投球機1側を向く位置に投球機のパイプ11と連結される供給路31の基端が開口している。この供給路31の先端には、ジョイント32が設けられており、フレキシブルパイプ33で投球機のパイプ11と接続する。供給路31は、通過するボールを検出するセンサ34を備えている。
【0025】
周壁23の供給路31が開口する位置の180度反対の位置にドグプレート28を検出するセンサ35が上下方向の位置を調節自在にして設けられている。センサ35がドグプレート28の縁28a、28bを検出したときにモータ25に停止信号が与えられる。モータ25は、停止信号を受けて電源が切られた後、惰性で回転してドグプレート28の幅中心がセンサ35の位置に来たときに回転円板24が停止する。この停止位置は、旋回収納室26が供給路31に連通する位置である。
【0026】
ドグプレート28がV字形になっているので、センサ35の高さを調整することにより、惰性による回転円板の回転角に応じて、モータ25に停止指令を与えるタイミングを調整できる。
【0027】
供給路31の基端が開口する周壁23の回転円板24の上部に、この位置に回動してきた旋回収納室の落し口27の略半分を塞ぐように、遮蔽板41が周壁23に固定して設けられている。
【0028】
また、ホッパの底板29の供給路31の基端が開口する部分には、供給路31側に傾斜する凹溝36が設けられており、旋回収納室26が供給路31に連通したときに、収納されたボールが重力によって供給路31へと転がるようになっている。
【0029】
次に上記のように構成されたボール自動供給装置の動作を説明する。ホッパ21に多数のボールが投入されると、その中央部のボールは受皿22内に位置する。この状態で回転円板24が回動すると、受皿22内のボールの1個が落し口27から旋回収納室26へと落下する。回転円板24は、旋回収納室26に1個のボールを保持して回転を続け、センサ35がドグプレート28を検出した時点でモータ25の電源が遮断され、惰性で回転して旋回収納室26と供給路31とが連通する位置で停止する。
【0030】
旋回収納室26が供給路31に連通すると、旋回収納室26に収容されたボールは、供給路31へと転がり落ち、ボールが供給されたことが供給路に設けたセンサ34で検出される。旋回収納室26は空になるけれども、遮蔽板41により受皿22内のボールが旋回収納室26に落下するのが阻止されている。
【0031】
遮蔽板41は、受皿22の外周側で、落し口27の一部を塞いでいる。遮蔽板41で落し口27をどの程度塞ぐかは、受皿22の径やボールの種類によって調整する必要があるが、一般的には、塞いだ後の開口寸法がボールの半径程度となるようにする。
【0032】
投球機のパイプ11にはストッパが設けられており、供給路31に転がり落ちたボールは、このストッパによって待機させられる。投球機1が投球指令信号を受けると、ストッパが開き、ボールが射出される。
【0033】
投球機からボールの射出信号を受けると、モータ25の電源が投入され、回転円板24は逆方向に1回転する。この1回転の間に受皿内のボールの1個が旋回収納室26に落下し、回転円板24が1回転して旋回収納室26が供給路31に連通したときに、旋回収納室26のボールが供給路31へと供給される。
【0034】
旋回収納室26が供給路31に連通したにもかかわらず、供給路31のセンサ34がボールを検出しないとき、すなわち供給路31にボールが供給されなかったときは、回転円板24は直ちに回転を開始して、次のボールの供給動作を行う。受皿22にボールが残っているにもかかわらず、ボールの供給ミスが生じたときは、この回転円板の回転によって供給路31にボールが供給されることとなるが、ホッパが空になったときは、回転円板24の回転が繰り返されることになる。
【0035】
供給路のセンサ34によるボールの検出が行われないまま、回転円板24が設定器で設定した回数の回転を行ったときは、ホッパが空になったとしてボール切れ信号を発して装置を停止させる。
【符号の説明】
【0036】
1 投球機
2 ボール自動供給装置
17 ステイ
21 ホッパ
22 受皿
23 周壁
24 回転円板
25 回転駆動装置
26 旋回収納室
27 落し口
31 供給路
35 センサ
41 遮蔽板