(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6249993
(24)【登録日】2017年12月1日
(45)【発行日】2017年12月20日
(54)【発明の名称】高圧流体を扱うのに適した雌型継手部材及びそれを備える管継手
(51)【国際特許分類】
F16L 37/30 20060101AFI20171211BHJP
F16K 37/00 20060101ALI20171211BHJP
【FI】
F16L37/30
F16K37/00 B
【請求項の数】11
【全頁数】12
(21)【出願番号】特願2015-121694(P2015-121694)
(22)【出願日】2015年6月17日
(65)【公開番号】特開2016-27280(P2016-27280A)
(43)【公開日】2016年2月18日
【審査請求日】2016年9月21日
(31)【優先権主張番号】特願2014-130854(P2014-130854)
(32)【優先日】2014年6月26日
(33)【優先権主張国】JP
【新規性喪失の例外の表示】特許法第30条第2項適用 FC EXPO 2014 第10回国際水素・燃料電池展 平成26年2月26日から平成26年2月28日まで開催
(73)【特許権者】
【識別番号】000227386
【氏名又は名称】日東工器株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100083895
【弁理士】
【氏名又は名称】伊藤 茂
(74)【代理人】
【識別番号】100175983
【弁理士】
【氏名又は名称】海老 裕介
(72)【発明者】
【氏名】上村 義斗
(72)【発明者】
【氏名】青木 一憲
【審査官】
杉山 豊博
(56)【参考文献】
【文献】
特開2003−113981(JP,A)
【文献】
特開2010−054041(JP,A)
【文献】
特開平11−336143(JP,A)
【文献】
特表2013−530014(JP,A)
【文献】
特開2007−139139(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
F16L 37/30
F16K 37/00
F16L 37/28
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
雄型継手部材が連結される一端と、流体源からの流体供給管に連結される他端とを有する筒状のハウジングであって、該一端に連結された雄型継手部材と該他端に連結された流体供給管との間を連通する流体通路、及び第1窓部を有するハウジングと、
該流体通路を開放する開位置と、該流体通路を閉止する閉位置との間で変位可能な弁部材と、
弁開放状態表示部と弁閉止状態表示部とを有し、該ハウジング内に設けられ、該弁部材の変位に連動して変位する弁開閉状態表示部材であって、該弁部材が該開位置にあるときには、該弁開放状態表示部が該第1窓部と半径方向で整合して該第1窓部を通して該ハウジングの外部から視認できるようにされ、該弁部材が該閉位置にあるときには、該弁閉止状態表示部が該第1窓部と半径方向で整合するように変位して該第1窓部を通して該ハウジングの外部から視認できるようにされた、弁開閉状態表示部材と、
該ハウジングに取り付けられ、該ハウジングの該一端から挿入される雄型継手部材に係合して該雄型継手部材を該ハウジングに連結する施錠位置と、該雄型継手部材から外れて該雄型継手部材の該ハウジングとの連結を解除する施錠解除位置との間で変位可能な第1施錠部材と、
該第1施錠部材を該施錠解除位置に保持する保持位置と、該ハウジング内に挿入される該雄型継手部材によって該第1施錠部材が該施錠位置に変位するのを許容する変位許容位置との間で変位可能な保持部材と、
該ハウジングに取り付けられ、該第1施錠部材が該施錠位置になるのを許容する待機位置と、該第1施錠部材を該施錠位置に抑える抑え位置との間で変位可能とされた抑え部材であって、該待機位置にあるときに、該第1窓部を外側から覆い、該ハウジングの外部から該第1窓部が見えないようにする抑え部材と、
を有する雌型継手部材。
【請求項2】
該抑え部材が、該ハウジングの外周面上で変位可能とされた外側部材と、該ハウジングの内部に設けられて該外側部材と一体的に連結された内側部材とを有し、該抑え部材が、該待機位置にあるときには該外側部材が該第1窓部を外側から覆う位置となると共に該内側部材は該第1施錠部材が該施錠解除位置になるのを許容する位置となり、該抑え位置にあるときには該外側部材が該第1窓部を該外部に露出する位置となると共に該内側部材が該第1施錠部材と係合して該第1施錠部材を該施錠位置に抑える位置となるようにされている請求項1に記載の雌型継手部材。
【請求項3】
該外側部材及び該内側部材が筒状とされている請求項2に記載の雌型継手部材。
【請求項4】
該ハウジングは、その外周面に該ハウジングの長手方向で間隔をあけて設けられた接続状態表示部及び離脱状態表示部を有し、
該抑え部材の外側部材は、当該抑え部材が該待機位置と該抑え位置にあるときに、それぞれ当該ハウジングの半径方向で該接続状態表示部及び離脱状態表示部に整合して該接続状態表示部及び離脱状態表示部が当該雌型継手部材の外側から視認可能とする第2窓部を有する請求項2又は3に記載の雌型継手部材。
【請求項5】
該弁部材は、該流体通路内に該流体通路の長手方向で変位可能に設定された可動弁座部材及び弁体を有し、該可動弁座部材の弁座部に係合することにより該流体通路を閉止し、該可動弁座部材が該弁体に対して相対的に変位することにより該弁体の該弁座部との係合を解除して該流体通路を開放するようになされており、
該弁開閉状態表示部材は、該可動弁座部材の該長手方向での変位に連動して変位するようにされている請求項1乃至4のいずれか一項に記載の雌型継手部材。
【請求項6】
雄型継手部材が連結される一端と、流体源からの流体供給管に連結される他端とを有する筒状のハウジングであって、該一端に連結された雄型継手部材と該他端に連結された流体供給管との間を連通する流体通路を有するハウジングと、
該流体通路を開放する開位置と、該流体通路を閉止する閉位置との間で変位可能な弁部材と、
弁開放状態表示部と弁閉止状態表示部とを有し、該ハウジング内に設けられ、該弁部材の変位に連動して変位する弁開閉状態表示部材であって、該弁部材が該開位置及び該閉位置にあるとき該弁開放状態表示部及び該弁閉止状態表示部がそれぞれ該ハウジングの外部から視認できるようにされている弁開閉状態表示部材と、を有し、
該弁部材は、該流体通路内に該流体通路の長手方向で変位可能に設定された可動弁座部材及び弁体を有し、該可動弁座部材の弁座部に係合することにより該流体通路を閉止し、該可動弁座部材が該弁体に対して相対的に変位することにより該弁体の該弁座部との係合を解除して該流体通路を開放するようになされており、
該弁開閉状態表示部材は、該可動弁座部材の該長手方向での変位に連動して変位するようにされている、雌型継手部材。
【請求項7】
該ハウジングが第1窓部を有し、
該弁開閉状態表示部材が、該弁部材が該開位置にあるときには該弁開放状態表示部が該第1窓部と半径方向で整合し、該閉位置にあるときには該弁閉止状態表示部が該第1窓部と半径方向で整合するように変位して、該第1窓部を通して該弁開放状態表示部及び該弁閉止状態表示部がそれぞれ外部から視認可能とされている、請求項6に記載の雌型継手部材。
【請求項8】
更に、該弁部材よりも該ハウジングの該一端側の位置で該弁部材に対して該流体通路の長手方向で整合して該長手方向で変位可能に設けられ、該雌型継手部材に挿入され連結された該雄型継手部材によって該弁部材の方向に変位された係止位置とされる係止用部材を有し、
該可動弁座部材及び該弁体は、該ハウジングの該他端に連結された該流体供給管によって供給される加圧流体の流体圧によって該ハウジングの該他端方向に変位され、このとき、該係止位置にある該係止用部材は該弁体と係合して該弁体の変位を停止し、該可動弁座部材が該停止した弁体に対して相対的に変位するようにして該流体通路を開放するようにした請求項5乃至7のいずれか一項に記載の雌型継手部材。
【請求項9】
更に該弁部材と該抑え部材との間に設けられ、該抑え部材が該待機位置にあるときに該流体供給管から加圧流体が供給された状態では、該加圧流体によって該開位置に向けて変位される該弁部材によって押圧され変位されるが、該弁部材が該開位置に到る前に該抑え部材に係合して変位が阻止され、それにより、該弁部材が該開位置に到るのを阻止するとともに該抑え部材が該抑え位置に変位するのを阻止し、該抑え部材が該抑え位置にあるときには該抑え部材との係合がなされずに該弁部材が該開位置まで変位するのを許容する第2施錠部材を有する請求項1乃至5のいずれか一項に記載の雌型継手部材。
【請求項10】
更に、該ハウジングの該一端の端面に設けられた赤外線の送受信端子と、該送受信端子から該ハウジングの他端へ延びる信号線とを有する請求項1乃至9のいずれか一項に記載の雌型継手部材。
【請求項11】
請求項1乃至10のいずれか一項に記載の雌型継手部材と、
該雌型継手部材の該一端から挿入されて連結される雄型継手部材と
を有する管継手。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、管継手に関する。より具体的には、水素ガスなどの高圧流体を扱うのに適した雌型継手部材及びそれを備える管継手に関する。
【背景技術】
【0002】
水素ガスを使用した燃料電池を動力源とする車両が実用化されている。このような車両においては、一般的なガソリン車両に対するガソリンスタンドと同様の水素ガス供給ステーションでの水素ガスの供給が必要となる。この場合、車両内の水素ガス貯留タンクの入口に取り付けられる雄型管継手に対して、スタンド側の水素ガス貯留タンクから水素ガスを排出供給するためのホースの出口に取り付けられた雌型管継手を連結し、その供給が行われることになる。
【0003】
水素ガス貯留タンクから車両へ供給される水素ガスは、通常は70MP程度に加圧されている。したがって、雄型及び雌型の管継手から水素が漏れるなどの事故が発生しないよう万全の対策が求められる。特許文献1及び2は、水素ガス源に流体連通されていない状態でだけ雄型継手部材との連結を可能とし、雄型継手部材が完全に連結された状態でのみ高圧水素ガスを流すことを可能とした雌型継手部材を開示している。また、この雌型継手部材では、弁部材が開位置で水素ガス供給がされている状態では、操作者が雄型継手部材を雌型継手部材から誤って外すことがないようにされている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】WO2009/133630A1
【特許文献2】WO2009/133932A1
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかし、上記特許文献の雌型継手部材は、水素ガスが供給されているか否かを作業者が管継手の状態から判別することができなかった。
【0006】
本発明は、このような点に鑑み、使用者が高圧流体をより安全に取り扱うことができる雌型継手部材及びそれを備える管継手を提供することを目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0007】
すなわち本発明に係る雌型継手部材は、
雄型継手部材が連結される一端と、流体源からの流体供給管に連結される他端とを有する筒状のハウジングであって、該一端に連結された雄型継手部材と該他端に連結された流体供給管との間を連通する流体通路を有するハウジングと、
該流体通路を開放する開位置と、該流体通路を閉止する閉位置との間で変位可能な弁部材と、
弁開放状態表示部と弁閉止状態表示部とを有し、該ハウジング内に設けられ、該弁部材の変位に連動して変位する弁開閉状態表示部材であって、該弁部材が該開位置及び該閉位置にあるとき該弁開放状態表示部及び該弁閉止状態表示部がそれぞれ該ハウジングの外部から視認できるようにされている弁開閉状態表示部材と
を有する。
【0008】
具体的には、
該ハウジングが第1窓部を有し、
該弁開閉状態表示部材が、該弁部材が該開位置にあるときには該弁開放状態表示部が該第1窓部と半径方向で整合し、該閉位置にあるときには該弁閉止状態表示部が該第1窓部と半径方向で整合するように変位し、該第1窓部を通して該弁開放状態表示部及び該弁閉止状態表示部がそれぞれ外部から視認可能とすることができる。
【0009】
この雌型継手部材は、更に、該ハウジングに取り付けられ、該ハウジングの該一端から挿入される雄型継手部材に係合して該雄型継手部材を該雌型継手部材に連結する施錠位置と、該雄型継手部材から外れて該雄型継手部材の該雌型継手部材との連結を解除する施錠解除位置との間で変位可能な第1施錠部材と、
該第1施錠部材を該施錠解除位置に保持する保持位置と、該ハウジング内に挿入される該雄型継手部材によって該第1施錠部材が該施錠位置に変位するのを許容する変位許容位置との間で変位可能な保持部材と、
該ハウジングに取り付けられ、該第1施錠部材が該施錠位置になるのを許容する待機位置と、該第1施錠部材を該施錠位置に抑える抑え位置との間で変位可能とされた抑え部材であって、該待機位置にあるときに、該第1窓部を外側から覆い、該ハウジングの外部から該第1窓部が見えないようにする抑え部材と
を有するようにすることができる。
【0010】
この場合、該抑え部材が、該ハウジングの外周面上で変位可能とされた外側部材と、該ハウジングの内部に設けられて該外側部材と一体的に連結された内側部材とを有し、該抑え部材が、該抑え位置にあるときに該外側部材が該第1窓部を外側から覆うようにされ、該内側部材が該第1施錠部材と係合して該第1施錠部材を該施錠位置に抑えるようにすることができる。該外側部材及び該内側部材は筒状とすることができる。
【0011】
該ハウジングは、その外周面に該ハウジングの長手方向で間隔をあけて設けられた接続状態表示部及び離脱状態表示部を有し、
該抑え部材の外側部材は、当該抑え部材が該待機位置と該抑え位置にあるときに、それぞれ当該ハウジングの半径方向で該接続状態表示部及び離脱状態表示部に整合して該接続状態表示部及び離脱状態表示部が当該雌型継手部材の外側から視認可能とする第2窓部を有するようにすることができる。
【0012】
該弁部材は、該流体通路内に該流体通路の長手方向で変位可能に設定された可動弁座部材及び弁体とを有し、該可動弁座部材の弁座部に係合することにより該流体通路を閉止し、該可動弁座部材が該弁体に対して相対的に変位することにより該弁体の該弁座部との係合を解除して該流体通路を開放するようにされ、
該弁開閉状態表示部材は、該可動弁部材の該長手方向での変位に連動して変位するようにすることができる。
【0013】
この雌型継手部材は、更に、該弁部材よりも該ハウジングの該一端側の位置で該弁部材に対して該流体通路の長手方向で整合して該長手方向で変位可能に設けられ、該雌型継手部材に挿入され連結された該雄型継手部材によって該弁部材の方向に変位された係止位置とされる係止用部材を有し、
該可動弁座部材及び該弁体は、該ハウジングの該他端に連結された該流体供給管によって供給される加圧流体の流体圧によって該ハウジングの該他端方向に変位され、このとき、該係止位置にある該係止用部材は該弁体と係合して該弁体の変位を停止し、該可動弁座部材が該停止した弁体に対して相対的に変位するようにして該流体通路を開放するようにすることができる。
【0014】
この雌型継手部材は更に、該弁部材と該抑え部材との間に設けられ、該抑え部材が該待機位置にあるときに該流体供給管から加圧流体が供給された状態では、該加圧流体によって該開位置に向けて変位される該弁部材によって押圧され変位されるが、該弁部材が該開位置に到る前に該抑え部材に係合して変位が阻止され、それにより、該弁部材が該開位置に到るのを阻止するとともに該抑え部材が該抑え位置に変位するのを阻止し、該抑え部材が該抑え位置にあるときには該抑え部材との係合がなされずに該弁部材が該開位置まで変位するのを許容する第2施錠部材を有するようにすることができる。
【0015】
この雌型継手部材は、更に、該ハウジングの該一端の端面に設けられた赤外線の送受信端子と、該送受信端子から該ハウジングの他端へ延びる信号線とを有するようにすることができる。
【0016】
本発明は更に、上記の雌型継手部材と、
該雌型継手部材の該一端から挿入されて連結される雄型継手部材と
を有する管継手を提供する。
【0017】
以下、本発明に係る高圧流体をより安全に扱うのに適した管継手の実施形態を添付図面に基づき説明する。
【図面の簡単な説明】
【0018】
【
図1】本発明の一実施例に係る雌型継手部材の縦断面図であり、雄型継手部材が連結されず且つ図示しない高圧流体源に流体連通されて高圧の流体圧力がかけられている状態を示している。
【
図2】
図1と同様の図であり、当該雌型継手部材が高圧流体源との流体連通が遮断された状態で、雄型継手部材が挿入され始めた状態を示している。
【
図3】
図2の状態から更に雄型継手部材が挿入され、雄型継手部材との連結が完了した状態の雌型継手部材を示す縦断面図である。
【
図4】雄型継手部材との連結が完了した後に高圧流体源に流体連通されたときの雌型継手部材の状態を示す縦断面図である。
【
図5】
図3の状態にある雌型継手部材における弁開閉状態表示部材と第1窓部とを示す拡大図である。
【
図6】
図4の状態にある雌型継手部材における弁開閉状態表示部材と第1窓部とを示す拡大図である。
【
図7】上記実施例の変形例に係る雌型継手部材の縦断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0019】
本発明の一実施例に係る管継手10は、
図2乃至4に示すような雄型継手部材12と雌型継手部材14とからなる。
【0020】
雌型継手部材14は、
図1乃至4に示すように、雄型継手部材12を受け入れ該雄型継手部材12と連結される一端(
図1では右端)と水素ガス供給ステーションなどの図示しない高圧流体源から延びる流体供給管に連結される他端(
図1では左端)とを有する筒状のハウジング16を有する。このハウジング16は、多数の部品16−1乃至16−8をネジ結合などで組み合わせて構成されており、中心軸線Lに沿って延びる流体通路14−1が形成されている。
【0021】
ハウジング16の右端近くには、コレットチャック型の第1施錠部材18が設けられている。この第1施錠部材18は、ハウジング16の一端側から挿入される雄型継手部材12に係合して雄型継手部材12をハウジング16に連結する施錠位置(
図3及び4)と、雄型継手部材12から係合解除されてハウジング16と雄型継手部材12との連結を解除する施錠解除位置(
図1及び2)との間で、第1施錠部材18の内側に設けた筒状の支点部材20を支点として揺動可能に支持されている。
【0022】
ハウジング16は、第1施錠部材18及び支点部材20の内側に筒状の保持部材22を備えており、保持部材22は、第1施錠部材18を施錠解除位置に保持する保持位置(
図1及び2)と、ハウジング16内に挿入される雄型継手部材12によって押し込まれて第1施錠部材18が施錠位置に変位するのを許容する変位許容位置(
図3及び4)との間で変位可能とされている。保持部材22は、第1コイルバネS1によって変位許容位置から保持位置へ向かって付勢されているが、その外周面が支点部材20と係合することでハウジング16内から飛び出さないようになっている。
【0023】
ハウジング16内には弁部材24が設けられており、弁部材24は雄型継手部12が雌型継手部材14に連結されていない状態で且つ高圧流体が掛けられているときになる閉止位置(
図1)と、雄型継手部材12を雌型継手部材14に挿入して連結するために高圧流体が掛けられていないときになる閉位置(
図2及び
図3)と、雄型継手部12が雌型継手部材14に連結された後に高圧流体が掛けられてなる開位置(
図4)との間で変位可能とされている。
【0024】
具体的には、弁部材24は、ハウジング16の中心軸線L方向で変位可能とされた弁体26と可動弁座部材28とから構成されている。弁体26は弁頭部26−1、筒状部26−2及び筒状部26−2と弁頭部26−1の間で筒状部26−2の内部孔から斜めに貫通する流路26−3を備えており、第2コイルバネS2によって図で見て右方へ付勢されている。可動弁座部材28は、ハウジング16の流体通路14−1と中心軸線L方向で整合している貫通孔28−1を有し、該貫通孔28−1には弁体26が摺動可能に収納されている。可動弁座部材28は、第3コイルバネS3によって図で見て左方へ付勢された筒状の連結部材30によって係合されて左方へ付勢されている。第3コイルバネS3は、第2コイルバネS2よりもバネ力が大きく、流体通路14−1に高圧流体が供給されない状態では、可動弁座部材28を弁体26と共に
図2及び
図3に示す左方の位置に変位し、弁体26の弁頭部26−1が可動弁座部材28の弁座部28−2に密封係合して流体通路を閉止するようになっている。
【0025】
連結部材30の可動弁座部材28と係合している側とは反対側の端部には階段状に半径方向外側に延びる筒状の弁開閉状態表示部材32が係合されており、可動弁座部材28の変位に合わせて中心軸線Lの方向で変位するようになっている。
図5及び6に示すように、弁開閉状態表示部材32には弁開放状態表示部34と弁閉止状態表示部36とが形成されている。ハウジング16には、この2つの表示部を雌型継手部材14の外部から使用者が視認できるようにするための第1窓部38が設けられている。後述するように、この第1窓部38は雄型継手部材12が雌型継手部材14に連結された
図3及び
図4に示す状態では当該雌型継手部材14の外部に露出した状態となり、可動弁座部材28が
図4に示す弁部材24としての開位置にあるときには弁開放状態表示部34が、
図3に示す閉位置にあるときには弁閉止状態表示部36が当該第1窓部38を通して雌型継手部材14の外部から視認できるようになっている。なお、本実施例においては、弁開放状態表示部34が赤色に、弁閉止状態表示部36が青色に塗られ、使用者が一目で弁部材24の開閉状態を認識できるようになっている。
【0026】
ハウジング16の右端と弁体26との間には、中心軸線Lに沿って延び右方にバネ付勢された細長い筒状の係止用部材40が設けられており、雌型継手部材14に挿入される雄型継手部材12によって押し込まれるようにされている。係止用部材40はその中心軸線Lに沿って延び左端近くで分枝して側面に開口する孔40−1が形成されており、この孔は流体通路14−1の一部を構成している。
【0027】
また、ハウジング16には筒状の抑え部材42が設けられている。抑え部材42は、ハウジング16の外周面上で摺動可能な外側筒状部材44とハウジング16の内部に設定されネジ45により外側筒状部材44に一体的に連結された内側筒状部材46とから構成されており、第1施錠部材18が施錠解除位置となるのを許容する待機位置(
図1及び2)と、第1施錠部材18を施錠位置に抑える抑え位置(
図3及び4)との間で変位可能とされている。抑え部材42は、付勢部材としての第4コイルバネS4により待機位置から抑え位置に向けて付勢されており、第1施錠部材18が施錠解除位置にあるときは第1施錠部材18によって待機位置に保持され、第1施錠部材18が施錠位置にあるときは第4コイルバネS4によって抑え位置に変位される。
【0028】
抑え部材42の外側筒状部材44には第2窓部52が設けられており、抑え部材42が待機位置(
図1及び
図2)及び抑え位置(
図3及び
図4)になったときにそれぞれ、ハウジング16の外表面に形成された離脱状態表示部48及び接続状態表示部50と半径方向で重なり、これら表示部を雌型継手部材14の外部から使用者が視認できるようになっている。なお、本実施例においては、離脱状態表示部48は「OPEN」の文字が、接続状態表示部50は「SHUT」の文字が表示されており、使用者が一目で雄型継手部材12と雌型継手部材14との接続状態を認識できるようになっている。
【0029】
可動弁座部材28とハウジング16を構成している固定筒状部材53との間には第2施錠部材54が設けられている。第2施錠部材54は、図示の通りの断面とされ可動弁座部材28の円錐形面28−3と摺動可能に係合する左側傾斜面54−1と、固定筒状部材53に摺動可能に係合する、中心軸線Lに直交するように延びる右側側面54−2とを有し、3又は4の第2施錠部材54が円周方向で相互に間隔をあけて配置され、それぞれ半径方向で変位可能にされている。
【0030】
流体通路14−1から雌型継手部材14の外側への隙間には適宜シール部材が設けられており、流体通路から流体が流出しないようにされている。
【0031】
図2に示すように、雄型継手部材12は、上述のとおり、雌型継手部材14内に挿入されることによって保持部材22を押し込んで変位許容位置(
図3、
図4)とし、同時に係止用部材40を押し込むような形状とされている。また、その外周面には、第1施錠部材18が係合される環状凹部56が形成されている。
【0032】
以上のとおり雌型継手部材14及び雄型継手部材12の構造の概略を説明したが、以下に、高圧流体の供給や雄型継手部材12と雌型継手部材14との連結にともなう詳細な動きについて説明する。
【0033】
図1に示すように、雌型継手部材14に雄型継手部材12が連結されていない状態で流体源から雌型継手部材14に高圧流体が供給されている状態では、弁体26及び可動弁座部材28はその高圧流体の流体圧により第3コイルバネS3と第4コイルバネS4とのバネ力に抗して図で見て右方に変位する。このため、可動弁座部材28と固定筒状部材53との間にある第2施錠部材54は半径方向外側に変位させられるが、抑え部材42の内側筒状部材46に形成された凹部58に係合してその変位が停止される。このため可動弁座部材28の右方への変位は停止され、弁体26の弁頭部26−1は第3コイルバネS3のバネ力により、可動弁座部材28の弁座部28−2に密封係合して、流体通路14−1は閉止状態に保たれる。この状態で雄型継手部材12を雌型継手部材14に挿入すると、把持部材22が押し込まれて変位許容位置となるが、第2施錠部材54が抑え部材42の内側筒状部材46に形成された凹部58に係合しているために抑え部材42は抑え位置へ変位せず待機位置に保持される。従って、高圧流体が雌型継手部材14に供給されているときは、雄型継手部材12と雌型継手部材14との第1施錠部材18による施錠がされることはない。また、雄型継手部材12を雌型継手部材14内に挿入して係止部材40を押し込んでも該係止部材40に形成されている段部40−2が、固定筒状部材53に係合して、係止部材40の左端が弁体26と係合するまで押し込まれることはなく、従って流体通路14−1を開状態とすることはできない。
【0034】
図1及び2に示すように、第1施錠部材18による雄型継手部材12と雌型継手部材14との連結がされていないときは、抑え部材42は待機位置にあり、外側筒状部材44の後端部分60が第1窓部38を覆い弁開閉状態表示部材32を使用者が外部から視認できないようになっている。このとき、第2窓部52は離脱状態表示部48と半径方向で整合し使用者から視認できるようになる。すなわち、使用者は、第2窓部52を通じて離脱状態表示部48が視認できることで、雄型継手部材12と雌型継手部材14との連結がなされていないことを確認することができる。
【0035】
雄型継手部材12を雌型継手部材14に連結する場合には、雌型継手部材14への高圧流体の供給は遮断して、弁部材24に高圧の流体圧が掛からないようにする。
図2はその状態を示している。すなわち、
図1におけるような高圧流体が弁部材24に掛からないために第3コイルバネS3及び第4コイルバネS4の作用により、弁部材24は
図1の位置よりも左方へ変位され、このため、
図2に示すように上側にある第2施錠部材54は重力により半径方向内側に変位して押さえ部材42の凹部58から外れる。この状態で雄型継手部材12を
図3の位置まで挿入すると、保持部材22が押し込まれて変位許容位置となり、それに伴って抑え部材42が第4コイルバネS4によって
図2に示す待機位置から
図3に示す抑え位置に変位され、第1施錠部材18が施錠位置とされ雄型継手部材12の環状凹部56と係合する。このとき、凹部58に係合していた下側の第2施錠部材54は凹部58の左側の傾斜側面によって該凹部58から半径方向外側に押し出されて抑え部材42の右方への変位の障害にはならない。また、係止用部材40も雄型継手部材12によって押し込まれ、中心軸線L方向で左方に変位する。
【0036】
抑え部材42の変位にともなって、その後端部分60に覆われていた第1窓部38が露出され、該第1窓部38を通して弁閉止状態表示部36(
図5及び6)を使用者が視認できるようになる。また、第2窓部52を通して接続状態表示部50を使用者が視認できるようになる。このとき、離脱状態表示部48は、後端部分60によって覆われて使用者が視認できないようになる。
【0037】
以上で、雄型継手部材12と雌型継手部材14との連結が完了となる。このとき、使用者は、第2窓部52を通じて接続状態表示部50が視認できることで雄型継手部材12と雌型継手部材14との連結がなされていることを確認し、更には、第1窓部38を通じて弁閉止状態表示部36が視認できることで流体通路が閉止されていることを確認することができる。
【0038】
雄型継手部材12と雌型継手部材14との接続が完了した後に高圧流体源から雌型継手部材14への高圧流体の供給を開始すると、弁部材24はそれに加わる高圧の流体圧により右方に変位されるが、弁体26は係止部材40の左端部と係合して右方への変位が阻止され、この状態で可動弁座部材28が更に右方に変位することにより、弁体26の弁頭部26−1は可動弁座部材28の弁座部28−2から離れて、高圧流体が流体通路14−1を通して雄型継手部材12の流体通路12−1に通されるようになる。
【0039】
流体圧によって弁部材24が右方へ変位させられ、可動弁座部材28と係合している第2施錠部材54が
図3に示す第1位置から
図4に示す第2位置へと変位させられ、抑え部材42が抑え位置から待機位置へ変位するのを阻止する。可動弁座部材28の変位に伴い連結部材30を介して弁開閉状態表示部材32が右方へ変位され、使用者が弁開放状態表示部34を第1窓部38を通して視認できるようになる。また、上述のとおり第2施錠部材54によって、高圧流体が雌型継手部材14に供給されているときには抑え部材42が待機位置へ変位しないようになっているため、雄型継手部材12と雌型継手部材14との連結を解除することができないようになっている。
【0040】
図7は、上述の雌型継手部材14に赤外線通信のための送受信端子64を取り付けた変形例を示している。すなわち、この雌型継手部材14は、雄型継手部材12が連結される側の端面に赤外線の送受信のための端子64が埋設されており、該端子からハウジング16内を通して高圧流体源に向けて信号線66が設けられている。図示しないが、同様の送受信端子を雄型継手部材の端面にも取り付けて、雌型継手部材側及び雄型継手部側の間で情報の交換を行い、それに基づく所要の機能を付加するようにすることが可能となる。例えば、水素ステーションにおいて、ステーション側の雌型継手部材を燃料電池車の雄型継手部材に連結し燃料電池車の水素タンクに水素を供給する場合、水素タンク内での貯留水素量を雌型継手部材側が受信し、所要の供給量で水素供給を停止したり、水素タンク側の何らかの不具合を雌型継手部材側が受信して水素供給を停止したりできる。
【0041】
以上のとおり本発明に係る実施形態を説明したが、本発明はこの実施形態に限定されるものではない。例えば、弁開放状態表示部34と弁閉止状態表示部36とはそれぞれ赤色、青色の色が塗られて識別されているが、色ではなく文字による識別など、種々の識別方法が考えられる。また、離脱状態表示部48と接続状態表示部50とはそれぞれ「OPEN」、「SHUT」の文字表示による識別とされているが、文字ではなく色による識別など、種々の識別方法が考えられる。第1窓部38と第2窓部52とは、アクリル樹脂などで形成された透明な部材で覆ってもよいし、単に孔としてもよい。
【符号の説明】
【0042】
管継手10;雄型継手部材12;流体通路12−1;雌型継手部材14;流体通路14−1;ハウジング16;部品16−1〜16−8;第1施錠部材18;支点部材20;保持部材22;弁部材24;弁体26弁頭部26−1;筒状部26−2;流路26−3;可動弁座部材28;貫通孔28−1;弁座部28−2;円錐形面28−3;連結部材30;弁開閉状態表示部32;弁開放状態表示部34;弁閉止状態表示部36;第1窓部38;係止用部材40孔40−1;段部40−2;抑え部材42;外側筒状部材44;ネジ45;内側筒状部材46;離脱状態表示部48;接続状態表示部50;第2窓部52固定筒状部材53;第2施錠部材54;左側傾斜面54−1;右側側面54−2;環状凹部56;凹部58;後端部分60;後端62;中心軸線L;第1コイルバネS1;第2コイルバネS2;第3コイルバネS3;第4コイルバネS4;