(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6250015
(24)【登録日】2017年12月1日
(45)【発行日】2017年12月20日
(54)【発明の名称】牛タン加工食品及びその製造方法
(51)【国際特許分類】
A23L 13/00 20160101AFI20171211BHJP
【FI】
A23L13/00 A
【請求項の数】2
【全頁数】6
(21)【出願番号】特願2015-229905(P2015-229905)
(22)【出願日】2015年11月25日
(65)【公開番号】特開2017-35070(P2017-35070A)
(43)【公開日】2017年2月16日
【審査請求日】2016年9月29日
(31)【優先権主張番号】特願2015-165237(P2015-165237)
(32)【優先日】2015年8月6日
(33)【優先権主張国】JP
【早期審査対象出願】
(73)【特許権者】
【識別番号】315016952
【氏名又は名称】福山 良爾
(74)【代理人】
【識別番号】100194124
【弁理士】
【氏名又は名称】吉川 まゆみ
(74)【代理人】
【識別番号】100131026
【弁理士】
【氏名又は名称】藤木 博
(72)【発明者】
【氏名】福山 良爾
【審査官】
西村 亜希子
(56)【参考文献】
【文献】
特開昭61−152262(JP,A)
【文献】
特開2004−229550(JP,A)
【文献】
特開2005−065548(JP,A)
【文献】
特開2010−104283(JP,A)
【文献】
特開昭63−313541(JP,A)
【文献】
特開2009−100693(JP,A)
【文献】
特開2002−017302(JP,A)
【文献】
特開平07−008164(JP,A)
【文献】
《柔らかジューシー!》厚切り牛タンのステーキ ,Nadia,2015年 3月18日,[2017年3月1日検索]インターネット,<URL:https://oceans-nadia.com/user/22084/recipe/126054>
【文献】
牛タンのスモーク,cookpad[online],2013年12月24日,[2016年11月11日検索]インターネット<URL:http://cookpad.com/recipe/2073869>
【文献】
簡単!牛たんのささっと塩麹焼き♪,cookpad[online],2012年 8月 4日,[2016年11月11日検索]インターネット<URL:http://cookpad.com/recipe/1902658>
【文献】
柔らかさ倍増!牛タンの塩麹漬♪ レシピ・作り方,楽天レシピ[online],2012年 2月21日,[2016年11月11日検索]インターネット<URL:http://recipe.rakuten.co.jp/recipe/1740004524/>
【文献】
ヨーグルトメーカーで肉を煮る,デイリーポータルZ:@nifty,2015年 2月 7日,Internet Archive Wayback Machine,[2017年3月24日検索],http://portal.nifty.com/kiji/150203192686_4.htmを検索,インターネット<URL:http://web.archive.org/web/20150207064327/http://portal.nifty.com/kiji/150203192686_4.htm>
【文献】
【新関西笑談】私のイタリアン(8)オーナーシェフ 山根大助さん,産経新聞,2007年 8月21日,大阪夕刊,p.2,日経テレコン[online][2017年3月24日検索]
【文献】
(おいしさ発見)魚を低温の油で煮る 油はソースとの相性で 料理人:谷昇,朝日新聞,2006年10月14日,朝刊,p.20,日経テレコン[online][2017年3月24日検索]
【文献】
肉,パル,2015年 8月15日,Internet Archive Wayback Machine,[2017年3月24日検索],http://negineesan.hatenablog.com/entry/2015/08/15/213408を検索,インターネット<URL:http://web.archive.org/web/20150815153110/http://negineesan.hatenablog.com/entry/2015/08/15/213408>
【文献】
牛タン丸ごと一本使用 300g♪(陣中 本社前店 トレーラーショップ),食べログ[online],2014年12月 3日,[2016年11月11日検索]インターネット<URL:https://tabelog.com/miyagi/A0401/A040102/4013975/dtlrvwlst/>
【文献】
牛タンの低温調理。,和浦,2015年 7月 9日,[2017年3月1日検索]インターネット<URL:http://waura.co.jp/%E7%89%9B%E3%82%BF%E3%83%B3%E3%81%AE%E4%BD%8E%E6%B8%A9%E8%AA%BF%E7%90%86%E3%80%82/>
【文献】
おもてなしに☆炊飯器でローストビーフ ,cookpad[online],2015年 9月 2日,[2017年3月1日検索]インターネット<URL:https://cookpad.com/recipe/3373523>
【文献】
レバーの低温調理手順をご紹介します,静岡「石川総研」ブログ,2012年 7月14日,[2017年3月1日検索]インターネット<URL:https://ameblo.jp/ishikawasouken/entry-11302156102.html>
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A23L 13/
A23L 35/
JSTPlus/JST7580(JDreamIII)
G−Search
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
牛タンに麹を付けて熟成させた後、蒸気または湯とうにより牛タンの中心温度が50℃以上65℃以下となるように加熱し、この加熱温度に到達してからの保持時間を0秒以上580分以下とすることにより、乾燥及びスモークをすることなく得られ、麹を付けずに加熱してタンパク質が熱変性した後の食感よりも柔らかい食感をえることができ、かつ、加熱調理することなくお刺身の食感で食することができることを特徴とする牛タン加工食品。
【請求項2】
牛タンに麹を付ける工程と、
牛タンに麹を付けたのち熟成する工程と、
牛タンを熟成したのち、蒸気または湯とうにより牛タンの中心温度が50℃以上65℃以下となるように加熱し、この加熱温度に到達してからの保持時間を0秒以上580分以下とする工程とを含み、
乾燥工程及びスモーク工程を含まないことにより、
麹を付けずに加熱してタンパク質が熱変性した後の食感よりも柔らかい食感をえることができ、かつ、加熱調理することなくお刺身の食感で食することができる
ことを特徴とする牛タン加工食品の製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、牛肉の一部位である牛タンを用い、生食を思わせるお刺身感覚で食することができる牛タン加工食品及びその製造方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
現在、牛肉の一部位である牛タンを加工した牛タン加工食品としては、様々なものが販売されている。例えば、お土産用としては、スライスした牛タンをプラスチックフィルムで包装したものが知られている(例えば、特許文献1参照)。このような牛タン加工食品は、お土産として持ち帰り、自宅においても手軽に食することができるという特徴を有している。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2002−19827号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、仙台発祥の味付け牛タンは、生食用として販売されているものではないため、お土産として購入した場合には、自宅において加熱調理して食さなければならない。自宅で調理する場合、炭焼き以外の方法、例えば、フライパンを使って直に焼く、又は、オーブントースター等を使って加熱するという個人により差が生じにくい方法であっても、火の通り方にばらつきが生じ、程よく美味しく仕上げることが難しいという問題があった。
【0005】
なお、飲食店では、鮮度の良い牛タンを使って火を通さずにお刺身として提供している事例はあるが、お土産の場合、加熱して安全性を担保する必要があり生食は難しい。
【0006】
本発明は、このような問題に基づきなされたものであり、生食を思わせるお刺身感覚で食することができる牛タン加工食品及びその製造方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明の牛タン加工食品は、牛タンに麹を付けて熟成させた後、加熱することにより得られ、タンパク質が熱変性した後の食感よりも柔らかい食感を得ることができ、かつ、加熱調理することなく食することができるものである。
【0008】
本発明の牛タン加工食品の製造方法は、牛タンに麹を付ける工程と、牛タンに麹を付けたのち熟成する工程と、牛タンを熟成したのち加熱する工程とを含むものである。
【発明の効果】
【0009】
本発明によれば、牛タンに麹を付けて熟成させた後に加熱しているので、牛タンの食感をタンパク質が熱変性した後の食感よりも柔らかくすることができ、牛タン独自の食感を損なわずに、生食を思わせるお刺身感覚の食感で食することができる。
【0010】
また、加熱処理したものであるので、加熱調理することなくそのまま食することができる。よって、加熱による失敗がなく、加熱調理の仕方により味が損なわれずに、美味しく食することができ、また、調理できない人でも、美味しく食することができる。更に、そのまま食するだけでなく、加熱調理をして、レアやウェルダン等の好みの焼き加減で食することもできる。
【図面の簡単な説明】
【0011】
【
図1】本発明の一実施の形態に係る牛タン加工食品の製造工程を表す流れ図である。
【発明を実施するための形態】
【0012】
以下、本発明の実施の形態について、図面を参照して詳細に説明する。
【0013】
図1は、本発明の一実施の形態に係る牛タン加工食品の製造工程を表す流れ図である。本実施の形態の牛タン加工食品は、本実施の形態の牛タン加工食品の製造方法により得られるものである。
【0014】
本実施の形態に係る牛タン加工食品の製造方法では、例えば、まず、中心温度を10℃以下に保たせた牛タンの塊を用意し、塩分濃度が1.0質量%〜30.0質量%以内の塩水に漬ける(ステップS101)。
【0015】
次いで、例えば、牛タンを塩水から取り出し、麹を加えた漬け液に漬け込んで、牛タンに麹を付ける(ステップS102)。漬け液には麹のみを加えるようにしてもよいが、味付け等のための添加物に麹を加えるようにしてもよい。添加物としては、例えば、塩、糖類、昆布、椎茸などから抽出したエキス、調味料、及び、香辛料からなる群のうちの少なくとも1種が挙げられる。調味料としては、例えば、クルタミン酸ナトリウム、醤油、生姜、及び、オニオンが挙げられ、香辛料としては、例えば、バジル、及び、コショウが挙げられる。麹としては、例えば、米麹が挙げられる。添加物は、予めこれらを纏めて用いてもよく、また、順に個別に加えるように、或いは、いくつかに分けて加えるようにしてもよい。
【0016】
添加物を予め纏めておく場合には、例えば、水1.0リットルから150リットルに予めネットなどで保護したバジル1gから1Kgを入れ、30℃から100℃までの中で加熱したのち、糖類1gから10.0Kg、椎茸などから抽出したエキス1gから5.0Kg、昆布エキス1gから5.0Kg、オニオンパウダー1gから5.0Kg、生姜ペースト1gから5.0Kg、及び、塩1gから15Kgを加えて、再び30℃から100℃までの中で加熱し、その後冷却して添加物とすることが好ましい。
【0017】
この纏めた添加物を用いる場合には、例えば、纏めた添加物7gから81.0Kgに対し、水1.0リットルから150リットル、麹を1gから5.0Kg加えて漬け液とし、牛タン100Kgに対しこの漬け液を1Kgから50Kg(1質量%から50質量%)加えて漬け込む。その際、タンブラーを使う場合は、タンブラーに牛タンと漬け液を入れ、1秒から24時間真空にしたのち1秒から24時間回転させてなじませ、次いで、専用の容器に
牛タンと漬け液を移し替え、0℃から10℃の冷蔵庫内で1秒から60時間寝かせる。また、タンブラーを使わない場合は、専用の容器に牛タンと漬け液を入れて、0℃から10℃の冷蔵庫内で48時間から120時間漬け込む。この時、冷蔵庫内温度と漬け込み時間は反比例する。
【0018】
漬け込みの完了は、例えば、塩分濃度計を使い、漬け液の塩分濃度の測定値が0.1質量%から20.0質量%以内であれば完了とする。漬け液の漬け込みが完了したのち、牛タンを新たな容器に並べ、その上に食品シートを重ね、冷蔵庫内で熟成保管する(ステップS103)。熟成時間は、例えば、漬け込み完了から0.1時間以上240時間以下とすることが好ましく、24時間以上120時間以下とすればより好ましい。
【0019】
熟成させたのち、例えば、牛タンを1本ずつ真空包装する(ステップS104)。その際、真空包装に使う包材はバリヤー性の高いものを使うことが望ましい。次いで、例えば、真空包装した牛タンを蒸気または湯とうにより加熱する(ステップS105)。その際、加熱温度は、50℃以上72℃以下の範囲内とすることが好ましく、牛タンの中心温度が50℃以上65℃以下の範囲内となるようにすればより好ましい。この温度範囲内において、牛タンの食感を柔らかく保ちつつ、食品の安全性を確保することができるからである。
【0020】
加熱温度における保持時間は、50℃以上72℃以下の加熱温度に到達してから0秒以上580分以下とすることが好ましい。すなわち、加熱温度に到達してからその温度に保持しなくてもよい。なお、保持時間は、加熱温度が高い場合(例えば、72℃に近い場合)には短く、低い場合(例えば、50℃に近い場合)には長くすることが好ましい。より好ましくは、牛タンの中心温度が50℃以上65℃以下に到達してから0秒以上580分以下とすることが好ましい。
【0021】
続いて、例えば、加熱した牛タンを氷水で1分から24時間冷却する(ステップS106)。そののち、必要に応じて、冷却した牛タンを所定の厚さにカットし(ステップS107)、包装して(ステップS108)、冷蔵又は冷凍する(ステップS109)。これにより、本実施の形態に係る牛タン加工食品が得られる。なお、この牛タン加工食品は、麹を付けて熟成させた後、加熱しているので、タンパク質が熱変性した後の食感よりも柔らかい食感を得ることができ、かつ、加熱調理することなく食することができる。
【0022】
このように本実施の形態によれば、牛タンに麹を付けて熟成させた後に加熱しているので、牛タンの食感をタンパク質が熱変性した後の食感よりも柔らかくすることができ、牛タン独自の食感を損なわずに、生食を思わせるお刺身感覚の食感で食することができる。
【0023】
また、加熱処理したものであるので、加熱調理することなくそのまま食することができる。よって、加熱による失敗がなく、加熱調理の仕方により味が損なわれずに、美味しく食することができ、また、調理できない人でも、美味しく食することができる。更に、そのまま食するだけでなく、加熱調理をして、レアやウェルダン等の好みの焼き加減で食することもできる。
【実施例】
【0024】
(実施例)
まず、牛タンの塊を塩水に漬け(ステップS101)、次いで、麹を加えた漬け液に漬け込み(ステップS102)、続いて、熟成させ(ステップS103)、次に、1本ずつ真空包装をし(ステップS104)、蒸気又は湯とうにより50℃から72℃の加熱温度において保持時間を0秒から580分として加熱したのち(ステップS105)、冷却し(ステップS106)、所定の厚みにカットし(ステップS107)、包装し(ステップS108)、冷蔵又は冷凍により3日間保存した(ステップS109)。
【0025】
得られた牛タン加工食品について、冷蔵したものは加熱調理せずにそのまま食し、冷凍したものは加熱調理せずに解凍して食したところ、タンパク質が熱変性した後の食感よりも柔らかい食感を得ることができ、お刺身感覚で美味しく食することができた。また、得られた牛タン加工食品について、加熱調理して食したところ、好みの焼き加減で美味しく食することができた。更に、上記製造工程で製造することにより、いままでの冷凍で販売されている生の牛タンよりも加熱歩留まりが良くなることも分かった。
【0026】
(比較例1)
漬け液に麹を加えないことを除き、他は実施例と同様にして牛タン加工食品を製造した。比較例1で得られた牛タン加工食品についても実施例と同様に食したところ、タンパク質が熱変性した後の食感となり、お刺身感覚で食することはできなかった。
(比較例2)
熟成後に加熱せずに包装し、冷蔵により3日間保存したことを除き、他は実施例と同様にして牛タン加工食品を製造した。比較例2で得られた牛タン加工食品を包装から取り出して観察したところ、肉全体が腐敗に近い状態の柔らかさになり、においもきつくなっていた。また、加熱調理して食したところ、牛タン本来の食感に欠け、実施例の牛タン加工食品に比べて味も低下していた。
【0027】
以上、実施の形態を挙げて本発明を説明したが、本発明は上記実施の形態に限定されるものではなく、種々変形可能である。例えば、上記実施の形態では、各工程について具体的に説明したが、全ての工程を含んでいなくてもよく、また、他の工程を含んでいてもよい。
【産業上の利用可能性】
【0028】
牛タン加工食品に用いることができる。