特許第6250432号(P6250432)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2015.5.11 β版

知財求人 - 知財ポータルサイト「IP Force」

▶ チタン工業株式会社の特許一覧
特許6250432チタンニオブ複合酸化物電極用活物質及びそれを用いたリチウム二次電池
<>
  • 特許6250432-チタンニオブ複合酸化物電極用活物質及びそれを用いたリチウム二次電池 図000004
  • 特許6250432-チタンニオブ複合酸化物電極用活物質及びそれを用いたリチウム二次電池 図000005
  • 特許6250432-チタンニオブ複合酸化物電極用活物質及びそれを用いたリチウム二次電池 図000006
  • 特許6250432-チタンニオブ複合酸化物電極用活物質及びそれを用いたリチウム二次電池 図000007
  • 特許6250432-チタンニオブ複合酸化物電極用活物質及びそれを用いたリチウム二次電池 図000008
< >
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6250432
(24)【登録日】2017年12月1日
(45)【発行日】2017年12月20日
(54)【発明の名称】チタンニオブ複合酸化物電極用活物質及びそれを用いたリチウム二次電池
(51)【国際特許分類】
   H01M 4/485 20100101AFI20171211BHJP
   H01M 4/36 20060101ALI20171211BHJP
   C01G 33/00 20060101ALN20171211BHJP
【FI】
   H01M4/485
   H01M4/36 C
   !C01G33/00 A
【請求項の数】6
【全頁数】12
(21)【出願番号】特願2014-32601(P2014-32601)
(22)【出願日】2014年2月24日
(65)【公開番号】特開2015-159010(P2015-159010A)
(43)【公開日】2015年9月3日
【審査請求日】2016年12月2日
(73)【特許権者】
【識別番号】000109255
【氏名又は名称】チタン工業株式会社
【住所又は居所】山口県宇部市大字小串1978番地の25
(73)【特許権者】
【識別番号】000003078
【氏名又は名称】株式会社東芝
【住所又は居所】東京都港区芝浦一丁目1番1号
(74)【代理人】
【識別番号】100140109
【弁理士】
【氏名又は名称】小野 新次郎
(74)【代理人】
【識別番号】100075270
【弁理士】
【氏名又は名称】小林 泰
(74)【代理人】
【識別番号】100101373
【弁理士】
【氏名又は名称】竹内 茂雄
(74)【代理人】
【識別番号】100118902
【弁理士】
【氏名又は名称】山本 修
(74)【代理人】
【識別番号】100112634
【弁理士】
【氏名又は名称】松山 美奈子
(72)【発明者】
【氏名】中原 清
【住所又は居所】山口県宇部市大字小串1978番地の25 チタン工業株式会社内
(72)【発明者】
【氏名】関 敏正
【住所又は居所】山口県宇部市大字小串1978番地の25 チタン工業株式会社内
(72)【発明者】
【氏名】石岡 秀憲
【住所又は居所】山口県宇部市大字小串1978番地の25 チタン工業株式会社内
(72)【発明者】
【氏名】三野 航
【住所又は居所】山口県宇部市大字小串1978番地の25 チタン工業株式会社内
(72)【発明者】
【氏名】原田 康宏
【住所又は居所】東京都港区芝浦一丁目1番1号 株式会社東芝内
(72)【発明者】
【氏名】高見 則雄
【住所又は居所】東京都港区芝浦一丁目1番1号 株式会社東芝内
(72)【発明者】
【氏名】稲垣 浩貴
【住所又は居所】東京都港区芝浦一丁目1番1号 株式会社東芝内
【審査官】 冨士 美香
(56)【参考文献】
【文献】 特開2013−164934(JP,A)
【文献】 特表2013−535787(JP,A)
【文献】 特開2009−245762(JP,A)
【文献】 特開2010−287496(JP,A)
【文献】 国際公開第2013/072059(WO,A1)
【文献】 特開2012−099287(JP,A)
【文献】 特開2012−199146(JP,A)
【文献】 中国特許出願公開第103594693(CN,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01M 4/48
H01M 4/36
C01G 33/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
TiNb(2+5x/2)(Xは1.90以上2.00未満)で示される単斜晶系のチタンニオブ複合酸化物を主成分とすることを特徴とする電極用活物質であって、
前記チタンニオブ複合酸化物は、(−110)面のX線回折線の半価幅から求めた結晶子径が85nm以上であり、
前記チタンニオブ複合酸化物は1.0重量%以上5.0重量%以下の炭素被覆を有し、粉体比抵抗が1.0×10Ω・cm以下であり、
前記チタンニオブ複合酸化物は一次粒子が集合した球状或いは塊状形態の二次粒子を形成しており、前記二次粒子の平均粒径が1μm以上50μm以下である、上記電極用活物質
【請求項2】
金属Liを対極とするリチウム二次電池を作製した際に、活物質1g当たり54mAで1.0Vから3.0Vの範囲で行った充放電試験における1サイクル目の放電容量が280mAh/g以上であり、5サイクル目に対する100サイクル後の放電容量維持率が90%以上であることを特徴とする請求項1記載の電極用活物質。
【請求項3】
請求項1または2に記載の電極用活物質を正極または負極活物質として含む電池用電極。
【請求項4】
請求項に記載の電池用電極を含むリチウム二次電池。
【請求項5】
チタン原料及びニオブ原料をNb/Tiモル比率で1.90以上2.00未満となるように混合して原料混合物を調製する混合工程と、
当該原料混合物を酸化性雰囲気中1000℃以上1300℃以下で焼成して焼成物とする焼成工程と、
前記焼成物と、有機物と、を混合して混合物とする炭素源添加工程と、
当該混合物を加熱して有機物を分解炭化して、チタンニオブ複合酸化物の紛体比抵抗が1.0×10Ω・cm以下となるようにチタンニオブ複合酸化物粒子表面に炭素被覆を形成する炭素被覆形成工程と、
を含むことを特徴とする、請求項1または2に記載の電極用活物質の製造方法。
【請求項6】
前記炭素被覆形成工程における加熱において、当該混合物を非酸化性雰囲気中650℃以上800℃以下に加熱する、請求項に記載の電極用活物質の製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、リチウム二次電池の活物質として有用なチタンニオブ複合酸化物及びそれを用いたリチウム二次電池に関する。
【背景技術】
【0002】
リチウム二次電池はそのエネルギー密度の高さから携帯電話やノートパソコン用の電源として進歩してきたが、近年のIT技術の進歩により携帯端末機器の小型、軽量化に伴って、その電源である電池にも更に小型、高容量化が求められるようになってきた。またエネルギー密度の高さを生かし電気自動車やハイブリッド自動車用としての電源や電力貯蔵用電源として注目され始めている。
【0003】
従来、リチウム電池の負極材料としてはカーボン系負極が一般的であり、それを用いたリチウム二次電池は放電時の電圧が大きくエネルギー密度が高いという特徴がある。しかし、負極の電位が低いために、急速充電を行うとリチウム金属が析出して内部短絡が起きる危険性が増し、更に内部短絡により発火に至る危険性が内在している。そこで、高電位負極を用いることによって内部短絡時の発熱を減少させ、更に電解液の分解を抑制することで安全性が高く長寿命なリチウム電池が検討されている。中でも、LiTi12はリチウム基準で1.5Vの電位を有し、充放電に際して体積変化が無くサイクル特性が極めて良好なことから、LiTi12を使用したコイン電池が実用化されている。
【0004】
しかしながら、LiTi12の理論容量は175mAh/gであり、一般的に負極材料として使用されているカーボンに比べ、その電気容量は約半分と小さく、LiTi12を使用したリチウム二次電池のエネルギー密度も小さくなる欠点がある。そこで、安全性や長寿命の観点からリチウム基準で1.0〜1.5Vの電圧を有し、電気容量の大きい負極材料が望まれている。
このような状況の中、チタンニオブ複合酸化物が、リチウム基準で1.0〜2.0Vの電圧を有し、電気容量の大きい電極材料として注目されている。
【0005】
リチウム二次電池を負極材料として用いた場合、チタンニオブ複合酸化物は、Ti4+とNb5+のレドックスにより、リチウムイオンの挿入脱離に対して、結晶の電気的中性を保つことが可能であるため、エネルギー密度を高くできる。
【0006】
チタンニオブ複合酸化物の応用例としては、TiOとNbを混合して焼成する固相法により、TiNb7、TiNb1029及びTiNb2462が検討されており、比表面積が0.18m/g以上のチタンニオブ複合酸化物において228〜277mAh/gの高い電気容量が得られている(特許文献1)。また、ゾル−ゲル法によりTiとNbの均一混合を行った後焼成して得られたTiNbまたはTi1−yNbNbに導電性向上とNb(IV)の原子価状態を安定化するために炭素被覆を行ったC−TiNbまたはC−Ti1−yNbNbは1.0〜2.5Vの充放電において285mAh/gの高い電気容量が得られことが見出だされている(非特許文献1、特許文献2)。また、固相法において[001]方向に結晶子を成長させたTiNbを含んだ単斜晶系型複合酸化物を負極材料として用いたリチウムイオン二次電池では、初回放電容量が261〜279mAh/gである(特許文献3)。
【0007】
しかしながら、固相法で得られるチタンニオブ複合酸化物は、粉砕によって粒子を小さくすると、充放電容量は向上するが、サイクル特性が低下するという課題があった。この原因として、粉砕により結晶構造が一部崩れ、Nbの原子価状態が不安定化するためと考えられた。また、ゾル−ゲル法では焼成温度が低くでき、微粒子のチタンニオブ複合酸化物が得られるが、結晶性が低いためサイクル特性が悪い。そのため、炭素被覆処理および電極を作成する際の導電剤量を増やすことによりサイクル特性を向上させているものの、必ずしも十分な効果が得られていない。その上、ゾル−ゲル法は、原料が高価であるため製造コストが高いという欠点がある。
【先行技術文献】
【非特許文献】
【0008】
【非特許文献1】Jian−Tao,Yun−Hui Huang,J.B.Goodenough,Chemistry of materials,23(2011)2027−2029
【特許文献】
【0009】
【特許文献1】特開2010−287496号公報
【特許文献2】特開2013−535787号公報
【特許文献3】特許第5230713号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
本発明の目的は、安価な固相法により電気容量が高く、サイクル容量維持率の優れたチタンニオブ複合酸化物を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0011】
本発明者らは、安価な固相法で得られるチタンニオブ複合酸化物に関して組成、製法について検討した結果、チタン(TiO)とニオブ(Nb)の等モル比よりもチタン過剰の組成で電気容量が高くなり、更に、炭素被覆をすることによりサイクル容量維持率の優れたチタンニオブ複合酸化物が得られることを見いだし、本発明を完成した。
【0012】
本願発明の電極用活物質は、TiNb(2+5x/2)(Xは1.90〜2.00)で示される単斜晶系のチタンニオブ複合酸化物を主成分とする。チタンニオブ複合酸化物ではNb成分が多い組成のチタンニオブ複合酸化物の方が電気容量的に有利と考えられるが、実用的な製造法である酸化チタンとNb(OH)を乾式混合して焼成する固相法においては、ニオブが多い組成の場合、3Nb・TiOの中間生成物が残存し易く、電気容量向上に寄与しない。むしろチタンが多い組成において、電気容量が高くなる結果となった。これは、チタンが多い組成においてルチル型酸化チタンが残存しても、電気容量への影響が小さいためと考えられる。
【0013】
更に、当該チタンニオブ複合酸化物をX線粉末回折法で測定した場合、(−110)面の回折線の半価幅から求めた結晶子径が85nm以上であれば、結晶構造が堅固となるため、サイクル容量維持率が優れた電極用活物質となる。
【0014】
また、本発明のチタンニオブ複合酸化物と有機物とを混合し、非酸化性雰囲気下の加熱により有機物を分解炭化することにより、炭素含有量1.0〜5.0重量%の炭素被覆処理を行ない、粉体比抵抗が1.0×10Ω・cm以下になると、サイクル容量維持率が一層向上する。特に、電極用塗料として用いる場合には、一次粒子が集合した球状或いは塊状形態であり、集合体(二次粒子)の平均粒径が1μm以上、50μm以下であることが取り扱い上好ましい。
【0015】
本発明のチタンニオブ複合酸化物を主成分とする電極用活物質を用いて、金属Liを対極としてリチウム二次電池を作製した際に、活物質1g当たり54mAで行った充放電試験における1サイクル目の放電容量が280mAh/g以上となる。当該チタンニオブ複合酸化物を正極または負極活物質として用いた電池用電極に用いることができ、特に、リチウム二次電池に優れた特性を有する。
【発明の効果】
【0016】
本発明のチタン(TiO)とニオブ(Nb)のモル比においてチタン成分が多い組成となるチタンニオブ複合酸化物を主成分とする電極用活物質をリチウム二次電池に用いると、高い充放電容量を有すると共に優れたサイクル容量維持率を有する。
【図面の簡単な説明】
【0017】
図1】粉体比抵抗測定の模式図である。
図2】電池評価を行ったコイン電池の模式図である。
図3】実施例1(試料1)のX線回折図である。
図4】実施例1及び比較例3の粒度分布図である。
図5】実施例2、比較例2及び比較例3のサイクル特性である。
【発明を実施するための形態】
【0018】
以下、本発明のチタンニオブ複合酸化物を主成分とする電極用活物質及びそれを用いたリチウム二次電池について詳しく説明する。
【0019】
(組成)
本発明で用いるチタンニオブ複合酸化物の結晶構造は、リチウムイオンの移動に有利な構造と考えられている単斜晶系であり、その組成を化学式TiNb(2+5x/2)で表した場合、チタン(TiO)とニオブ(Nb)の等モル比よりもチタン過剰の組成となるXが1.90以上2.00未満のときに電気容量が最も高くなる。Xがこの範囲よりも小さい場合にはルチル型酸化チタンの生成が明確に見られるようになり、Xが小さくなるほど電気容量が低下する傾向が現れる。一方、Xが大きい場合には3Nb・TiOが生成し、Xが大きくなるほど電気容量が低下する傾向が現れる。
【0020】
(結晶性)
チタンニオブ複合酸化物は、単一組成の化合物を得るためには1000℃以上の高温での焼成が必要であり、得られる産物は高結晶であるが非常に堅い凝結体となる。リチウム電池の電極活物質として用いるには、塗膜の厚みや塗布のための機器に適するように一次粒子のサイズを小さくする必要がある。通常、粉砕機により強い力を加えられた粒子の表面はアモルファス化し、サイクル特性が極めて悪くなるが、本発明では、再加熱することにより再度粒子表面の結晶性を向上させることが出来、粒度の揃った高結晶のチタンニオブ複合酸化物を得ることが可能である。
結晶性は、X線回折法で測定して得られた回折線からシェラーの式で結晶子径を計算して表すことが出来、Cu−Kα線源を用いたX線回折装置で当該チタンニオブ複合酸化物を測定した場合、2θ=23.9°±0.2°の(−110)面から求める結晶子径が85nmよりも大きければサイクル容量維持率が優れた電極用活物質となる。なお、本発明において「サイクル容量維持率」とは、リチウム二次電池における充放電サイクルを100回繰り返した場合の100回目の放電容量の5回目の放電容量に対する比率である。
【0021】
(粉体比抵抗)
チタンニオブ複合酸化物は、粉体比抵抗が1×10Ω・cm以上と電気伝導性が非常に乏しく、電極材料として利用した場合に電子の移動が速やかに成されず、クーロン効率が低くなり、その結果サイクル特性が悪くなる。それを補うために、本願発明のチタンニオブ複合酸化物には炭素被覆処理を行うと良い。炭素含有量を1.0重量%以上5.0重量%以下とし、粉体比抵抗を1.0×10Ω・cm以下とするとサイクル特性が更に向上する。また、被覆された炭素は、チタンニオブ複合酸化物の高活性な粒子表面と電解液との直接的な接触を緩和し、電解液の分解が抑制され電池寿命の向上にも寄与することが出来る。
【0022】
(粒子径)
チタンニオブ複合酸化物の一次粒子が集合した球状或いは塊状形態となるが、炭素被覆処理に噴霧乾燥法を用いると、極めて均一な炭素被覆が可能でありサイクル特性向上への寄与が大きい。球状或いは塊状で1〜50μmに集合した粒子は、見掛け密度が0.8g/cm以上であり、ハンドリングが良好で且つ塗膜の充填性に有利となる。
【0023】
[製造方法]
次に本発明のチタンニオブ複合酸化物を主成分とする電極活物質に関する製造方法を詳しく説明する。
【0024】
(原料)
チタン原料には、アナターゼ及びルチル型酸化チタン、含水酸化チタン(メタチタン酸)、水酸化チタンが使用できるが、反応性の良いアナターゼ型酸化チタンまたは含水酸化チタンを使用することが好ましい。ニオブ原料には、水酸化ニオブ及び五酸化ニオブが使用できる。
【0025】
(混合)
チタン原料及びニオブ原料を混合し、原料混合物を作製する。チタンとニオブの混合割合は、Nb/Tiモル比率で1.90以上2.00未満で行う。混合機は、ヘンシェルミキサー、振動ミル、遊星ボールミル及び擂潰機などの一般的な粉砕混合器が使用でき、又、原料を水系に戻してスラリー化し、スプレードライヤー等の噴霧乾燥又は噴霧熱分解法等でドライアップするか、或いはブフナーロート、フィルタープレス或いは遠心分離器で固液分離した後乾燥することで原料混合物を調製できる。なお、後者の湿式での原料混合の場合は、ボールミル等で予め原料同士を粉砕・混合することにより、反応性を高めることができる。
【0026】
(焼成)
原料混合物を1000〜1300℃の範囲で、大気中で焼成する。焼成時間は、焼成温度、炉への仕込み量により適宜調整できる。冷却は、炉内で自然冷却するか、炉外に排出し放冷すればよく、特に限定されない。得られた焼成物はX線回折により構成相を確認することで評価が可能で、主成分は単斜晶系で空間群I2/mのチタンニオブ複合酸化物であり、Nb過剰相である3Nb・TiOが無いことが好ましい。なお、Ti比率が多い場合にはルチル相に帰属される回折線が現れるが当該Nb/Tiモル比率の範囲であれば電池特性に及ぼす影響は小さい。
【0027】
(粉砕)
焼成物は必要に応じて圧密粉砕機、振動ミル、ハンマーミル、ジェットミル或いはビーズミル等の乾式粉砕機及び湿式粉砕機を1機種以上の粉砕機を用いて1回以上粉砕する。粒子サイズに合わせて2機種以上の粉砕機を組みあわせて使用するとより効果が大きい。
【0028】
(炭素被覆)
炭素被覆は、チタンニオブ複合酸化物粒子と、炭素を含有する有機物と、を乾式混合するか、あるいは水戻ししてスラリーをスプレードライヤーで噴霧乾燥することにより、チタンニオブ複合酸化物粒子と有機物との混合物を作製し、この混合物を非酸化性雰囲気下で650℃以上800℃以下に加熱して有機物を分解炭化することで、均一にチタンニオブ複合酸化物粒子表面に形成することができる。有機物としては、炭素、又は炭素、水素及び酸素で構成された有機物はすべて使用することが出来るが、噴霧乾燥法等によって混合物を作製する場合はブドウ糖、マルトース等の水溶性の糖類やPVAなどの水溶性のアルコール類が好ましい。これらの有機物であれば、焼成温度650℃以上で粉体比抵抗が1.0×10Ω・cm以下で、1サイクル目の放電容量が280mAh/g以上、100サイクル容量維持率90%以上、10C/0.2C容量維持率50%以上の特性が得られるが、焼成温度650℃未満であれば粉体比抵抗は1.0×10Ω・cm以上で、放電容量は同等であるが、100サイクル容量維持率及び10C/0.2C容量維持率が共に低下する。炭素被覆はチタンニオブ複合酸化物粒子に対して1.0重量%以上5.0重量%以下、好ましくは1.5重量%以上3.6重量%以下とすることで良好な電池特性が得られる。炭素被覆の含有量、焼成条件が同じであれば有機物の添加量で制御が可能である。当該炭素被覆法によれば、粒子表面に均一に炭素被覆できるため、電池を作成する際に導電剤を加えて混合する場合よりも少ないカーボン量で同等の導電性を付与することができる。電池を作成する際に導電剤を加えて混合しても上述の電池性能の向上と同様な効果は得られない。
【0029】
(電極活物質)
本発明の電極活物質は、上記チタンニオブ複合酸化物粒子、好ましくは炭素被覆チタンニオブ複合酸化物粒子を主成分として含み、一般的な電極活物質と同様の導電剤およびバインダーを含むことができる。導電剤としては、カーボンブラック、アセチレンブラック、グラファイト、カーボンナノチューブ又は炭素繊維などの炭素材料を挙げることができる。バインダーとしては、ポリアクリロニトリル、ポリフッ化ビニリデン、ポリビニルピロリドン、ポリメタクリル酸メチルなどのポリマーを挙げることができる。チタンニオブ複合酸化物粒子又は炭素被覆チタンニオブ複合酸化物粒子と、導電剤と、バインダーと、の比率は、90:5:5〜70:15:15(重量%)が好ましい。
【0030】
(電極および二次電池)
通常の手法に従い、本発明の電極活物質を含む電極および当該電極を含む二次電池を製造することができる。電極活物質を有機溶媒に添加してスラリーを調製し、電極基板に所定厚みとなるように塗布することで電極活物質層を有する電極を製造することができる。有機溶媒としては、N−メチルピロリドンなどの環状アミド類、N,N−ジメチルホルムアミド、N,N−ジメチルアセトアミドなどの直鎖状アミド類、アニソール、トルエン、キシレンなどの芳香族炭化水素類、ブタノール、シクロヘキサノールなどのアルコール類を挙げることができる。スラリー中の電極活物質の濃度は、導電剤およびバインダーを含む固形分濃度として30重量%以上70重量%以下であることが好ましい。上限を超えると電極活物質が凝集しやすくなり、下限を下回ると電極活物質が沈降しやすくなる。
二次電池としては、対極にLiを含む非水電解質リチウム二次電池が好適である。対極としては制限無く通常のLi電極を用いることができる。また、電解質としては、制限無く通常の非水電解質を用いることができる。
【実施例】
【0031】
以下に実施例を挙げて本発明を更に詳細に説明する。以下に挙げる例は単に例示のために記すものであり、発明の範囲がこれによって制限されるものではない。
【0032】
[実施例1]
アナターゼ型酸化チタン粉末と水酸化ニオブ粉末をモル比換算でTi:Nb=1:1.99になるように秤量し、振動ボールミルに投入し9時間粉砕及び混合を行った。混合物を取り出し、箱形電気炉にて1100℃で12時間焼成した。焼成物をハンマーミルで粉砕した後、スラリー化し、粉末状のマルトースをスラリー中固形分に対して10重量%加えて、スプレードライヤーで噴霧乾燥した。得られた粉末を回転式電気炉に入れ、非酸化性雰囲気下700℃で3時間の条件で熱処理を行い、2.2重量%の炭素が被覆されたチタンニオブ複合酸化物粒子である試料1を得た。
【0033】
蛍光X線分析装置(島津製、商品名XRF−1700)を用いて、得られた試料1のNb及びTiの強度を測定し、解析ソフトによりNb/Tiモル比を算出したところ1.99であった。また、X線回折装置(リガク製、商品名RINT−TTR III)によりX線回折パターンを測定し、解析ソフトにより構成相を確認したところTiNbの単相であることが確認できた。X線回折パターンの2θ=23.9°±0.2°の(−110)面の回折線の半価幅からシェラーの式を用いて結晶子径を計算したところ、97nmであった。また、試料1を5g秤取り、図1に示すようにステンレス製電極(A)で試料1の粉末を挟み、油圧プレス器で223kg/cmで圧縮した後、LCRメーターにて抵抗R(Ω)を測定し、試料1の粉末の圧縮後の厚みL(mm)を計測し、R×電極の面積(mm)/Lで粉体比抵抗を計算したところ、100Ω・cmであった。二次粒子の粒径の平均値は、被覆されている炭素を大気中600℃で1時間熱処理して除去した後、粒度分布測定装置(日機装製、商品名マイクロトラックHRA)にて測定したところ9.7μmであった。
【0034】
次に、試料1の粉末82重量%、アセチレンブラック9重量%及びポリフッ化ビニリデン9重量%を混合した後、N−メチル−2−ピロリドンに対して固形分濃度30重量%となるように添加し、ハイシェアーミキサーにより15分間混練し、塗料を作製した。この塗料をアルミ箔上にドクターブレード法で塗布した。110℃で真空乾燥後、初期電極合剤の厚みに対して80%の厚みとなるようにロールプレスした。塗料を塗布した電極合剤を0.95cmの円形に打ち抜き、図2に示すコイン型電池の正極3とした。図2において負極4としては金属リチウム板を使用し、電解液としてはエチレンカーボネートとジメチルカーボネートの等容量混合物にLiPFを1mol/Lで溶解したものを使用し、セパレーター5としてはグラスフィルターを使用した。上記により作製したコイン型電池を用いて、活物質1g当たり54mAで1.0Vまで放電させた後、電流を変化させながら1.0Vを計10時間保持した。その後、54mAの一定電流で3.0Vまで充電し、この0.2Cに相当する電流量での充放電サイクルを3回繰り返した。次に、電流を270mAにして1.0Vまで放電後、電流を変化させながら1.0Vを3時間保持した。その後、270mAhの一定電流で3.0Vまで充電した。この1Cの電流量に相当する充放電サイクルを97回繰り返した。その結果、1サイクル目(0.2C)の放電容量は288mAh/g、5サイクル目(1C)の放電容量は264mAh/g、100サイクル目(1C)の放電容量は237mAh/gであった。また、5サイクル目に対する100サイクル後の放電容量維持率は90%と良好なサイクル安定性を示した。なお、Liが挿入する過程を放電とし、Liが脱離する過程を充電とした。
【0035】
レート特性の指標になる10C/0.2C維持率の評価は、同コイン型電池を活物質1g当たり54mAの0.2Cに相当する一定電流量で3サイクル充放電した後、4サイクル目は電流量を10Cに相当する2700mAにして一定電流で1.0Vまでに放電し、その後54mAで充電して行った。3サイクル目の0.2Cでの放電容量をC(0.2C)とし、4サイクル目の10Cでの放電容量C(10C)とし、C(10C)/C(0.2C)×100から求めた値を10C/0.2C維持率とした。試料1の10C/0.2C維持率は55%であった。
【0036】
[実施例2]
アナターゼ型酸化チタン粉末と酸化ニオブ粉末をモル比換算でTi:Nb=1:1.92にする以外は、実施例1と同様にして2.1重量%の炭素が被覆されたチタンニオブ複合酸化物粒子である試料2を作製した。実施例1と同様に分析したところ、試料2のNb/Tiモル比は1.92であり、結晶子径は100nm、粉体比抵抗は85Ω・cm、二次粒子の平均粒子径は12.5μmであった。また、試料2のコイン型電池を作製し電池性能の評価を行ったところ、1サイクル目(0.2C)の放電容量は286mAh/g、5サイクル目(1C)の放電容量は266mAh/g、100サイクル目(1C)の放電容量は246mAh/g、5サイクル目に対する100サイクル後の放電容量維持率は92%であった。また、10C/0.2C維持率は59%であった。
【0037】
[実施例3]
最終的な熱処理工程を非酸化性雰囲気下650℃で3時間熱処理する以外は、実施例1と同様にして2.1重量%の炭素が被覆されたチタンニオブ複合酸化物粒子である試料3を作製した。実施例1と同様に分析したところ、試料3のNb/Tiモル比1.99であり、結晶子径は96nm、粉体比抵抗は1230Ω・cm、二次粒子の平均粒子径は8.9μmであった。また、試料3のコイン型電池を作製し電池性能の評価を行ったところ、1サイクル目(0.2C)の放電容量は284mAh/g、5サイクル目(1C)の放電容量は262mAh/g、100サイクル目(1C)の放電容量は244mAh/g、5サイクル目に対する100サイクル後の放電容量維持率は93%であった。また、10C/0.2C維持率は51%であった。
【0038】
[実施例4]
炭素源となるマルトースの添加量を6.5重量%にする以外は、実施例1と同様にして1.5重量%の炭素が被覆されたチタンニオブ複合酸化物粒子である試料4を作製した。実施例1と同様に分析したところ、試料4のNb/Tiモル比1.99であり、結晶子径は96nm、粉体比抵抗は96Ω・cm、二次粒子の平均粒子径は7.7μmであった。また、試料4のコイン型電池を作製し電池性能の評価を行ったところ、1サイクル目(0.2C)の放電容量は286mAh/g、5サイクル目(1C)の放電容量は267mAh/g、100サイクル目(1C)の放電容量は241mAh/g、5サイクル目に対する100サイクル後の放電容量維持率は90%であった。また、10C/0.2C維持率は49%であった。
【0039】
[実施例5]
炭素源となるマルトースの添加量を20重量%にする以外は、実施例1と同様にして3.6重量%の炭素が被覆されたチタンニオブ複合酸化物粒子である試料5を作製した。実施例1と同様に分析したところ、試料5のNb/Tiモル比1.94であり、結晶子径は94nm、粉体比抵抗は39Ω・cm、二次粒子の平均粒子径は9.0μmであった。また、試料5のコイン型電池を作製し電池性能の評価を行ったところ、1サイクル目(0.2C)の放電容量は286mAh/g、5サイクル目(1C)の放電容量は264mAh/g、100サイクル目(1C)の放電容量は250mAh/g、5サイクル目に対する100サイクル後の放電容量維持率は95%であった。また、10C/0.2C維持率は55%であった。
【0040】
[比較例1]
アナターゼ型酸化チタン粉末と酸化ニオブ粉末をモル比換算でTi:Nb=1:1.85とした以外は、実施例1と同様にして2.1重量%の炭素が被覆されたチタンニオブ複合酸化物粒子である試料6を作製した。実施例1と同様に分析したところ、試料6のNb/Tiモル比は1.85であり、結晶子径は98nm、粉体比抵抗は72Ω・cm、二次粒子の平均粒子径は8.1μmであった。また、試料6のコイン型電池を作製し電池性能の評価を行ったところ、1サイクル目(0.2C)の放電容量は280mAh/g、5サイクル目(1C)の放電容量は263mAh/g、100サイクル目(1C)の放電容量は225mAh/gであり、5サイクル目に対する100イクル後の放電容量維持率は86%であった。また、10C/0.2C維持率は53%であった。
【0041】
[比較例2]
アナターゼ型酸化チタン粉末と酸化ニオブ粉末をモル比換算でTi:Nb=1:2.05とした以外は、実施例1と同様にして2.2重量%の炭素が被覆されたチタンニオブ複合酸化物粒子である試料7を作製した。実施例1と同様に分析したところ、試料7のNb/Tiモル比は2.05であり、結晶子径は100nm、粉体比抵抗は86Ω・cm、二次粒子の平均粒子径は7.9μmであった。また、試料7のコイン型電池を作製し電池性能の評価を行ったところ、1サイクル目(0.2C)の放電容量は281mAh/g、5サイクル目(1C)の放電容量は267mAh/g、100サイクル目(1C)の放電容量は221mAh/gであり、5サイクル目に対する100サイクル後の放電容量維持率は83%であった。また、10C/0.2C維持率は53%であった。
【0042】
[比較例3]
二次粒子平均粒径9.7μmの試料1を石川式擂潰機で粉砕して集合体を崩し、2.1重量%の炭素が被覆されたチタンニオブ複合酸化物粒子である試料8を作製した。実施例1と同様に分析したところ、試料8のNb/Tiモル比は1.99であり、結晶子径は85nm、粉体比抵抗は150Ω・cm、二次粒子の平均粒子径は0.9μmであった。また、試料8のコイン型電池を作製し電池性能の評価を行ったところ、1サイクル目(0.2C)の放電容量は281mAh/g、5サイクル目(1C)の放電容量は31mAh/g、100サイクル目(1C)の放電容量は246mAh/gであり、5サイクル目に対する100サイクル後の放電容量維持率は53%であった。また、10C/0.2C維持率は35%であった。
【0043】
[比較例4]
最終的な熱処理工程を非酸化性雰囲気下600℃で3時間熱処理する以外は、実施例1と同様にして2.1重量%の炭素を含む層で被覆されたチタンニオブ複合酸化物粒子である試料9を作製した。試料9は、焼成温度が低いため炭化が進行せず、被覆中には未炭化のマルトース粉末が残存していた。実施例1と同様に分析したところ、試料9のNb/Tiモル比は1.99であり、結晶子径は98nm、粉体比抵抗は20800Ω・cm、二次粒子の平均粒子径は9.5μmであった。また、試料9のコイン型電池を作製し電池性能の評価を行ったところ、1サイクル目(0.2C)の放電容量は281mAh/g、5サイクル目(1C)の放電容量は256mAh/g、100サイクル目(1C)の放電容量は222mAh/gであり、5サイクル目に対する100サイクル後の放電容量維持率は87%であった。また、10C/0.2C維持率は43%であった。
【0044】
表1及び表2に試料1〜9の組成、結晶子径、粉体比抵抗、二次粒子の平均粒径、放電容量、5サイクル目に対する100サイクル放電容量維持率並び10C/0.2C維持率をまとめた。
【0045】
【表1】
【0046】
【表2】
図1
図2
図3
図4
図5