【実施例1】
【0017】
本発明の好適な一実施例ある実施例1のウォータージェットピーニング装置(以下、WJP装置と称する)を、
図1、
図3及び
図4を用いて説明する。本実施例のWJP装置は、加圧水型原子力プラントの原子炉圧力容器内で使用されるWJP装置の一例を示している。
【0018】
本実施例のWJP装置1は、着座部材2、旋回部3、昇降装置(第1昇降装置)12、、噴射ノズル19,20、首振り機構21、高圧ポンプ27A,27B及び高圧ホース28A,28Bを備えている。
【0019】
旋回部3は、着座部材2の上端部にベアリングを利用して旋回可能に取り付けられる。旋回部3は、フレーム部4、ケーシング6、円筒部材10及び旋回駆動装置(例えば、モータ)11を有する。ケーシング6は、筒状部材(例えば、横断面が正方形の筒状部材)44の下端部に底部部材7を取り付け、筒状部材44の上端部に頂部部材9を取り付けて構成される。空間8がケーシング6の筒状部材44内に形成される。上端部が封鎖された円筒部材10がケーシング6の頂部部材9の上面に設置される。旋回駆動装置11は、ケーシング6内の空間8内に配置され、頂部部材9の下面に取り付けられる。旋回駆動装置11の回転軸が円筒部材10内まで伸びており、旋回駆動装置11の回転軸に取り付けられたピニオン(図示せず)が、円筒部材10の内面の全周に亘って形成された歯車と噛み合っている。
【0020】
フレーム部4は、WJP装置1の軸方向に伸びる装置フレーム5及び板状の旋回支持部材30を有する。旋回支持部材30は、装置フレーム5の下端に設けられ、ベアリングを利用して着座部材2の上端部に旋回可能に取り付けられる。装置フレーム5は底部部材7の下面に取り付けられる。
【0021】
昇降装置12は、棒状の台形ネジ14、ノズルアーム(第1昇降部材)16及び昇降駆動装置(例えば、モータ)13を有する。台形ネジ14の下端部が装置フレーム5に取り付けられた支持部材15に回転可能に取り付けられ、台形ネジ(第1台形ネジ)14の上端部が装置フレーム5に取り付けられた支持部材59に回転可能に取り付けられる。昇降駆動装置(第1昇降駆動装置)13が、ケーシング6の空間8内に配置され、底部部材7の上面に取り付けられる。昇降駆動装置13の回転軸は、減速機(図示せず)を介して台形ネジ14に連結される。ノズルアーム16に設けられたナット(図示せず)が台形ネジ14と噛み合っている。ノズルアーム16は、ナットを介して台形ネジ14に移動可能に取り付けられている。
【0022】
内面用の噴射ノズル19及び外面用の噴射ノズル20がノズルアーム16に取り付けられる。噴射ノズル19が、ノズルアーム16に取り付けられた結合部材25に取り付けられ、結合部材25から下方に向かって伸びている。噴射ノズル19の下端部は、支持部材15に形成された貫通孔内に挿入されている。噴射ノズル19の上端部は、結合部材25内で高圧
ホース28Bに接続される。上端部がノズルアーム16に取り付けられた
ケーシング18は、ノズルアーム16から下方に向かって伸びている。本実施例では、噴射ノズル19及び噴射ノズル20において、旋回部3及び昇降装置12を共用している。
【0023】
首振り機構21がケーシング18の下端部に取り付けられる。首振り機構(スイーベルトユニット)21は、
図6に詳細に示すように、ケーシング60、モータ22、水受け部23及び回転軸24を有する。ケーシング60がケーシング18の下端部に設置され、水受け部23がケーシング60の側面に取り付けられる。回転軸24がケーシング60及び水受け部23に回転可能に取り付けられる。モータ22の回転軸が、減速機66を介して、回転軸24の、ケーシング60側の端部に連結される。噴射ノズル20が回転軸24に取り付けられる。水受け部23内には水流入領域(図示せず)が形成され、この水流入領域が水受け部23に接続された高圧ホース28Aに連絡される。水受け部23と回転軸24の間には、水漏れを防止するためのシールが施されている。回転軸24内に形成された高圧水供給通路67が、水受け部23内の水流入領域と噴射ノズル20を連絡している。
【0024】
ケーブルベア(登録商標)17が、ノズルアーム16の上端に取り付けられた支持部材26の上端部に設けられる。高圧ホース28A,28Bはケーブルベア17に保持されて、高圧ポンプ27A,27Bに別々に接続される。
【0025】
WJP装置1を用いた、加圧水型原子力プラントの原子炉圧力容器31の底部を貫通して手その底部に取り付けられた複数の炉内計装筒(管状体)32の内外面のそれぞれに対するWJPの施工方法を、
図2〜
図7を用いて説明する。
【0026】
加圧水型原子力プラントの運転が停止された後、原子炉圧力容器31の上蓋(図示せず)が取り外され、原子炉圧力容器31内に配置されている複数の燃料集合体及び炉内構造物が原子炉圧力容器31外に取り出され、所定の保管領域で保管される。作業台車52が、原子炉圧力容器31を取り囲む原子炉格納容器(図示せず)内で原子炉圧力容器31の上を跨いで配置され、原子炉格納容器内の上部に形成された運転床上に移動可能に設置される(
図2参照)。原子
炉圧力容器31内には、冷却水39が充填されている。
【0027】
WJP装置1は、円筒部材10の封鎖された下端に、ベアリング(図示せず)により頂部部材9と回転可能に取り付けられ、円筒部材10の上端に連結された複数のポール29により保持される。複数のポール29が順次連結されながら下方に向かって伸ばされることにより、WJP装置1は原子炉圧力容器31内を原子炉圧力容器31の底部に向かって下降される。1本のポール29の長さは、扱い易いように、2mになっている。最も上方に位置しているポール29の上端は、原子炉格納容器内に設置されたクレーン57に吊り下げられている。
【0028】
複数のポール29の相互の連結作業を説明する。まず、円筒部材10の上端に取り付けられたポール29(WJP装置1がWJP対象物である炉内計装筒32に着座されたときに最も下方に位置するポール29)がクレーン57に吊り下げられてWJP装置1が冷却水39内に浸漬される。このポール29と円筒部材10の結合は、ポール29の下端部のフランジ71を円筒部材10の上端部のフランジ72に取り付けることによって行われる(
図11参照)。保持装置(図示せず)が取り付けられた支持装置(図示せず)が作業台車52に取り付けられている。クレーン57に吊り下げられたポール29の上端部がその保持装置によって把持され、把持されたポール29がクレーン57から外される。保持装置に把持されているポール29の上端に別のポール29が連結され、連結されたポール29の上端部がクレーン57のフックに引っ掛けられる。この状態で、保持装置が把持しているポール29が把持装置から離される。クレーン57を操作して、クレーン57に吊り下げられているポール29を下降させる。このような操作を繰り返すことにより、複数のポール29が順次連結され、WJP装置1が原子炉圧力容器31内で下降される。なお、円筒部材10の上端部のフランジ72の側面の、噴射ノズル20の直上には、罫書き線47が描かれている(
図11参照)。ポール29の軸方向に伸びる1本の直線である罫書き線47が、ポール29のフランジ71の側面に描かれ(
図11参照)、さらに、ポール29の外面にも描かれている(
図4及び
図11参照)。ポール29と円筒部材10の結合作業では、ポール29のフランジ71の側面に描かれた罫書き線47及び円筒部材10のフランジ72の側面に描かれた罫書き線47が同じ方向を向くように、すなわち、フランジ71の側面に描かれた罫書き線47とフランジ72の側面に描かれた罫書き線47が一致するように、WJP装置1の円筒部材10とポール29が結合される。このため、噴射ノズル20を、最も上方に位置するポール29の側面に描かれた罫書き線47の方向(相対位置)に一致させることができる。WJP装置1に設けられた噴射ノズル20の向きは、後述するように、ポール29を回転させることによって遠隔で調節することができる。
【0029】
WJP装置1は、クレーン57の操作によりWJPを施工する炉内計装筒32の真上に位置しており、やがて、この炉内計装筒32の上端に着座する。
【0030】
WJP装置1が炉内計装筒32の上端に着座した状態で、連結された複数のポール29のうち最も上方に位置するポール29は、作業台車52の上部手摺り55及び下部手摺り56に取り付けられたポール保持装置40によって保持される。作業台車52は、床部材53、床部材53に設けられた柵を有する。この柵は、床部材53の上面で床部材53の周縁部に垂直に取り付けられた複数の棒部材54を有し、これらの棒部材54の上端部を上部手摺り部材55で連結し、各棒部材54の上下方向の中央部を下部手摺り部材56で連結した構成を有する。
【0031】
ここで、ポール保持装置40の構造を
図3及び
図4を用いて説明する。ポール保持装置40は、テーブル41、旋回保持部42及び手摺り取り付け部48を有する。テーブル41、旋回保持部42及び手摺り取り付け部48は、取り外し可能に互いに取り付けられている。テーブル41が、手摺り取り付け部48と一体化されたベース部49の上面に取り付けられる。旋回保持部42が旋回可能にテーブル41に取り付けられる。旋回角度目盛り43が旋回保持部42の側面に付けられている(
図4参照)。複数(例えば、2本)の締め付けネジ46が旋回保持部42に取り付けられる。一対のハンドル45が旋回保持部42に設けられる。手摺り取り付け部48はフレーム50及びアーム51を有する。フレーム50の上端部がベース部49に取り付けられ、アーム51がフレーム50の下端部に取り付けられる。
【0032】
ポール保持装置40のポール29及び作業台車52への取り付けを以下に説明する。半割構造の旋回保持部42が、クレーン57に吊り下げられている最も上方に位置するポール29に装着され、複数の締め付けネジ46を締め付けることによりこのポール29に固定される。このとき、旋回保持部42は、作業台車52の柵の上部手摺り部材55よりも上方に位置している。ベース部49が上部手摺り部材55に着座され、上部手摺り部材55が、手摺り取り付け部48と一体化されたベース部49の下面に形成された溝内に挿入されている。テーブル41をベース部49に設置する。このとき、テーブル41がベース部49に接触している。締め付けネジ46を緩めて旋回保持部42をポール29に沿って下降させ、旋回保持部42をテーブル41に着座させる。旋回保持部42がテーブル41に着座された後、手摺り取り付け部48のアーム51を下部手摺り部材56に固定する。
【0033】
旋回保持部42に取り付けられるポール29の外面には、ポール29の軸方向に伸びる1本の直線である罫書き線47が付けられている(
図4参照)。この罫書き線47と旋回保持部42の旋回角度目盛り43の0度を合せ、各締め付けネジ46を締め付けてポール29が旋回保持部42にクランプされる。この状態で、作業台車52の床部材53上に載っている作業者がハンドル45を回転させて、罫書き線47が位置する、旋回角度目盛り43の角度を見ながら、噴射ノズル20の向きを原子炉圧力容器31内で初期の基準位置(
図7の実線で示された噴射ノズル20の位置で、噴射ノズル20の噴射口が原子炉圧力容器31の中心を向いている)に合せる。このようにして、噴射ノズル20の噴射口が所定の向きに設定される。以上により、ポール保持装置40のポール29及び作業台車52への取り付けが終了する。その後、炉内計装筒32へのWJPが施工される。
【0034】
着座部材2がWJP対象物である炉内計装筒32の上端に着座されたとき、原子炉圧力容器31の底部に溶接された炉内計装筒32の上端部が、着座部材2内に形成された挿入孔34内に挿入されている(
図5参照)。炉内計装筒32の真上に位置している噴射ノズル19、及び噴射ノズル20を下降させる。
【0035】
昇降装置12の昇降駆動装置13を駆動して台形ネジ14を回転させる。このとき、台形ネジ14にナットで噛み合っているノズルアーム16が下降し、噴射ノズル19が着座部材2に形成された貫通孔33を通して、挿入孔34内に挿入されている炉内計装筒32内に挿入される。噴射ノズル20の噴射口は、原子炉圧力容器31内で炉内計装筒32の外側に位置しており、炉内計装筒32と原子炉圧力容器31の溶接部58の外面に対向している。昇降装置12により、噴射ノズル19と噴射ノズル20は同時に昇降される。首振り機構21のモータ22を駆動して回転軸24を回転させ、噴射ノズル20の噴射口が溶接部58の外面に対向するように噴射ノズル20の傾き角を調節する。このように、噴射ノズル20の噴射口の、原子炉圧力容器31の軸方向における位置は、昇降装置12及び首振り機構21により調節される。
【0036】
噴射ノズル20の噴射口から噴射される噴流36(
図5参照)の狙い位置が
図7に示すように溶接部外面の位置61Aであるとき、炉内計装筒32内に挿入された噴射ノズル19の噴射口から噴射される噴流35(
図5参照)の狙い位置が
図7に示すように炉内計装筒32の内面に対する位置62Aになっている。また、噴射ノズル20からの噴流36の狙い位置が、位置61Aから噴射ノズル20が180°旋回した後の
図7に示すように溶接部外面の位置61Bであるとき、噴射ノズル19からの噴流35の狙い位置が
図7に示すように炉内計装筒32の内面に対する位置62Bになっている。噴射ノズル20からの噴流36の狙い位置とこれに対応する噴射ノズル19からの噴流35の狙い位置の調節が可能なように、噴射ノズル19の下端が噴射ノズル20の下端よりも下方に位置しており、両者の位置の微調節は首振り機構21による噴射ノズル20の上下方向における回転により行われる。
【0037】
噴射ノズル19,20の原子炉圧力容器31の軸方向におけるそれそれぞれの位置が所定位置に設定された後、高圧ポンプ27A,27Bが駆動される。噴射ノズル20は、例えば、
図7に示す実線で示された位置に設定されている。高圧ポンプ27Aで昇圧された高圧水が、高圧ホース28Aを通って噴射ノズル20に供給される。この高圧水は、噴射ノズル20から噴流36となって原子炉圧力容器31内の冷却水39中で溶接部58の外面に向かって噴射される。噴流36には多数のキャビテーション気泡が含まれており、これらのキャビテーション気泡が崩壊することにより、衝撃波が発生する。この衝撃波が溶接部58の外面に衝突し、溶接部58の外面に対してWJPが施工され、圧縮残留応力がその外面に付与される。このようにして、溶接部58の外面の残留応力が改善される。
【0038】
高圧ポンプ27Aから噴射ノズル20に高圧水が供給されるとき、高圧ポンプ27Bで昇圧された高圧水が、高圧ホース28Bを通って炉内計装筒32内の噴射ノズル19に供給される。この高圧水は、噴射ノズル19から噴流35となって炉内計装筒32内の冷却水39中で溶接部58の内面に向かって噴射される。噴流35も多数のキャビテーション気泡を含んでおり、これらのキャビテーション気泡が崩壊することにより発生した衝撃波が溶接部58の内面に衝突し、溶接部58の内面に対してWJPが施工され、圧縮残留応力がその内面に付与される。このようにして、溶接部58の内面の残留応力が改善される。本実施例では、原子炉圧力容器31と炉内計装筒32の溶接部58の内外面に対して同時にWJPを施工することができる。なお、各炉内計装筒32の下端が封鎖されており、原子炉圧力容器31内の冷却水39が炉内計装筒32を通して外部に漏洩することが防止される。
【0039】
噴射ノズル19,20のそれぞれから噴流35,36を噴射しながら、旋回駆動装置11を駆動する。旋回駆動装置11の回転力は円筒部材10に伝えられて円筒部材10を円筒部材10の中心軸を中心にして旋回させる。円筒部材10の旋回により、着座部材2より上方のフレーム部4及びケーシング6、すなわち、旋回部3が旋回する。この結果、ノズルアーム16が旋回するため、噴射ノズル20が炉内計装筒32の周囲を例えば時計方向に180°旋回する。噴射ノズル19も炉内計装筒32内で同じ方向に旋回する。各噴流を噴射している、このような
噴射ノズル19,20の旋回により、溶接部58の内外面のそれぞれの180°の範囲にWJPが施工される。このような噴射ノズル20の旋回により、噴射ノズル20が
図7の実線の位置から点線の位置に移動する際において、ノズルアーム16が、その実線の位置から点線の位置に至る、原子炉圧力容器31の底部の曲面に合せて昇降装置12により下降される。
【0040】
上記のようにして溶接部58の内外面の180°の領域に対して、WJPが施工された後、旋回駆動装置11が逆回転され、炉内計装筒32の外面に沿って噴射ノズル20が反時計方向に旋回される。噴射ノズル20が
図7に示す実線の位置に戻された後、噴流35を噴射している噴射ノズル19、及び噴流36を噴射している噴射ノズル20が、旋回駆動装置11の駆動により、反時計方向において、噴射ノズル20が
図7において点線の位置に達するまで旋回される。
【0041】
したがって、噴射ノズル20等を旋回させることによって、溶接部58の内外面の全周に亘って、WJPを施工することができ、溶接部58の内外面の残留応力を改善することができる。
【0042】
噴射ノズル19,20からそれぞれ噴流を噴射することによって生じる上向きの反力は、WJP装置1の自重、及びポール29をポール保持装置40を用いて作業台車52の部手摺り部材55及び下部手摺り部材56に固定することにより、支えることができる。
【0043】
1本の炉内計装筒32における溶接部58の内外面へのWJPの施工が終了した後、高圧ポンプ27A,27Bの駆動を停止して、昇降装置12を駆動して噴射ノズル19,20を上昇させ、噴射ノズル19を炉内計装筒32の上端よりも上方の位置まで移動させる。各締め付けネジ46を緩めてクレーン57によりポール29を上昇させ、着座部材2を炉内計装筒32の上端よりも上方の位置まで移動させる。着座部材2が炉内計装筒32の上端よりも上方の位置に達したとき、クレーン57の操作を停止して、作業台車52を水平方向に移動させる。さらには、作業台車52上の作業者がベース部49を上部手摺り部材55に沿って水平方向に移動させることにより、噴射ノズル19を別の炉内計装筒32の真上に位置決めする。前述したように、クレーン57によりWJP装置1を下降させ、着座部材2を上記した別の炉内計装筒32の上端に着座させる。昇降装置12を駆動してノズルアーム16を下降させ、噴射ノズル19を貫通孔33を通して炉内計装筒32内に挿入する。その後、前述したように、各噴射ノズルから噴流を噴射し、この炉内計装筒32の溶接部58の内外面に対してWJPを施工する。
【0044】
このようにして、原子炉圧力容器31の底部に設けられた各炉内計装筒32の溶接部58の内外面に対して、順次、WJPが施工される。
【0045】
本実施例のWJP装置1は、管状体である炉内計装筒32の内外面のそれぞれに対してWJPを施工するために、内面用の噴射ノズル19及び外面用の噴射ノズル20を備え、これらの噴射ノズルを旋回部3に設けている。このため、噴射ノズル19を炉内計装筒32内に配置し、噴射ノズル20を炉内計装筒32外に配置することにより、炉内計装筒32の内面及び外面に対して同時にWJPを施工することができる。本実施例におけるWJPは、従来のように、内面用の噴射ノズルを有するWJP装置及び外面用の噴射ノズルを有する他のWJP装置を用いて炉内計装筒32の内外面のWJPを施工する場合に比べて、WJP装置を取り換える必要が無く、また、炉内計装筒32の内面へのWJPの後にその外面へのWJPを行う必要がないため、従来に比べて炉内計装筒32の内外にWJPを施工するために要する時間を著しく短縮させることができる。
【0046】
本実施例では、旋回部3に設けられた昇降装置12の昇降部材(ノズルアーム16)に噴射ノズル19,20が取り付けられており、噴射ノズル19,20の旋回部及び昇降装置が共用されている。この結果、噴射ノズル19,20を旋回しながら同時に昇降させることができる。このため、原子炉圧力容器31の底部の曲面部に取り付けられた炉内計装筒32の、原子炉圧力容器31の中心側の位置とこの位置と180°反対側の原子炉圧力容器31の外側の位置で溶接部58に高低差がある場合においても、噴射ノズル19,20を取り付けた昇降部材を上下動させることによって、これらの噴射ノズルを旋回させながら原子炉圧力容器31の底部の曲面に沿って各噴射ノズルを上下動させることができる。したがって、そのような溶接部58の内外面に対して原子炉圧力容器31の底部の曲面に沿ったWJPを適切に行うことができる。
【0047】
着座部材2に炉内計装筒32内に連通する貫通孔33を形成しているため、WJP装置1を下降させて着座部材2を炉内計装筒32の上端に着座させたとき、噴射ノズル19を、着座部材2に形成された貫通孔33を通して炉内計装筒32内に容易に挿入することができる。
【0048】
WJP装置1に取り付けられるポール29をポール保持装置40により作業台車52に取り付けるため、WJP施工時における噴射ノズル19,20からそれぞれ噴流を噴射するときに、WJP装置1が
噴射ノズル20の旋回方向、及び水平方向に動くことを防止することができる。WJP装置1の荷重はクレーン57によって保持される。
【0049】
ポール29の外面に直線の罫書き線47が付され、作業台車52に取り付ける旋回保持部42に旋回角度目盛り43が付されているので、その罫書き線47を旋回角度目盛り43の所定の目盛りに合せることによって、噴射ノズル20の噴射口の向きを容易に調節することができる。
【0050】
噴射ノズル19,20が、共用の旋回部3で旋回され、共用の昇降装置12に設けられているので、噴射ノズル19,20に対して別々に操作盤を設ける必要が無く、1つの操作盤により旋回部3の旋回動作、及び昇降装置12の昇降動作を制御することができるため、WJP装置1を小型化することができる。
【実施例2】
【0051】
本発明の他の好適な実施例である実施例2のウォータージェットピーニング装置を、
図8を用いて説明する。本実施例のWJP装置1Aは、加圧水型原子力プラントの原子炉圧力容器内で使用されるWJP装置の一例である。
【0052】
本実施例のWJP装置1Aは、実施例1のWJP装置1において、ノズルアーム16の、台形ネジ14と噛み合うナットが取り付けられる下方に突出した長いガイド部64、及びこのガイド部64に沿って上下方向に移動する昇降部材(第2昇降部材)63を設けた構造を有する。結合部材25は昇降部材63に取り付けられる。WJP装置1Aの他の構成は実施例1のWJP装置1と同じである。
【0053】
WJP装置1Aを用いた、原子炉圧力容器31の曲面を有する底部に取り付けられた炉内計装筒32の溶接部58の内外面へのWJPは、実施例1と同様に施工される。本実施例では、噴射ノズル19,20は昇降装置12によりノズルアーム(第1昇降部材)16を上下動させることにより一緒に上下動され、噴射ノズル19は昇降部材63によって単独で昇降させることができる。
【0054】
原子炉圧力容器31の底部が曲面を形成している関係上、炉内計装筒32の、原子炉圧力容器31の底部との溶接部58において、炉内計装筒32の、原子炉圧力容器31の中心側の位置とこの位置と180°反対側の原子炉圧力容器31の外側の位置で生じている高低差H(
図5及び
図7参照)は、原子炉圧力容器31の中心軸付近、及びこの中心軸から離れた原子炉圧力容器31の周辺部で異なっている。この高低差Hは、原子炉圧力容器31の中心軸から外側に離れるにしたがって大きくなる。高低差Hが小さいときには、首振り機構21による噴射ノズル20の上下方向における回転によって吸収することができる。しかしながら、その高低差Hが大きくなると、首振り機構21だけによっては吸収することができなくなる。
【0055】
本実施例では、原子炉圧力容器31の底部における炉内計装筒32の設置位置による高低差Hの違いを、昇降部材63で噴射ノズル19を昇降させることによって、吸収することができる。昇降部材63はノズルアーム16に設けられた昇降装置(第2昇降装置)70によって上下方向に移動される(
図9参照)。昇降装置70は、昇降装置(第1昇降装置)12と同様に、第2昇降駆動装置である昇降駆動装置(例えば、モータ)72、及び昇降駆動装置72に連結された棒状の台形ネジ(第2台形ネジ)73を有している。昇降駆動装置72はノズルアーム16の上面に取り付けられる。台形ネジ73は、台形ネジ14と平行に配置され、ノズルアーム16に回転可能に取り付けられる。台形ネジ73の上端部は昇降駆動装置72に連結され、台形ネジ73の下端部はノズルアーム16によって回転可能に支持される。昇降部材63に取り付けられたナット74が、台形ネジ73と噛み合っている。
【0056】
原子炉圧力容器31の中心軸付近に配置された炉内計装筒32よりも高低差Hが大きい、原子炉圧力容器31の周辺部に配置された炉内計装筒32の溶接部58に対してWJPを施工する場合には、ノズルアーム16に設けられた昇降駆動装置72を駆動して台形ネジ73を回転させ、この台形ネジ73の回転により、台形ネジ73と噛み合うナット74を含んでいる昇降部材63を、台形ネジ73の軸方向においてガイド部64に沿って下降させる。噴射ノズル19は昇降部材63と共に下降する。これにより、噴射ノズル19の下端の位置と噴射ノズル20の下端の間の、原子
炉圧力容器31の軸方向における距離を大きくする。昇降部材63による噴射ノズル19の下降は、噴射ノズル19が炉内計装筒32に挿入される前、及び挿入された後のいずれかで行われる。例えば、昇降部材63により噴射ノズル19の下端と噴射ノズル20の下端の間の距離を広げた後、噴射ノズル19,20が、昇降装置12によりノズルアーム16を下方に移動させて下降される。噴射ノズル19が炉内計装筒32内に挿入され、噴射ノズル20が炉内計装筒32の外側で溶接部58の外面に対向している。
【0057】
噴射ノズル19,20にそれぞれ高圧水を供給して噴流35,36を噴射しながら各ノズルを旋回させて、実施例1と同様に、溶接部58の内面及び外面のそれぞれの全周に亘ってWJPを施工する。
【0058】
その後、高低差Hが小さい原子炉圧力容器31の中心線付近に位置する炉内計装筒32の溶接部58に対してWJPを施工するときには、昇降駆動装置72によって昇降部材63を上昇させて噴射ノズル19の下端と噴射ノズル20の下端の間の距離を小さくする。これにより、高低差Hが小さい、原子炉圧力容器31の中心線付近に位置する炉内計装筒32の溶接部58の内外面に対してより良好なWJPを施工することができる。
【0059】
本実施例は実施例1で生じる各効果を得ることができる。本実施例は、共通の昇降部材であるノズルアーム16に保持される噴射ノズル19,20のうち、噴射ノズル19を昇降部材63及び昇降装置70により単独で昇降させることができるので、高低差Hが異なる溶接部58に対して、溶接部58の内外面へのWJPを良好に実施することができる。