特許第6250863号(P6250863)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6250863
(24)【登録日】2017年12月1日
(45)【発行日】2017年12月20日
(54)【発明の名称】受光器および携帯型電子機器
(51)【国際特許分類】
   G01J 1/02 20060101AFI20171211BHJP
   G01J 1/42 20060101ALI20171211BHJP
   H01L 31/10 20060101ALI20171211BHJP
【FI】
   G01J1/02 B
   G01J1/02 G
   G01J1/02 S
   G01J1/42 A
   G01J1/42 J
   H01L31/10 A
【請求項の数】5
【全頁数】29
(21)【出願番号】特願2017-504557(P2017-504557)
(86)(22)【出願日】2015年9月30日
(86)【国際出願番号】JP2015077659
(87)【国際公開番号】WO2016143178
(87)【国際公開日】20160915
【審査請求日】2017年5月15日
(31)【優先権主張番号】特願2015-47419(P2015-47419)
(32)【優先日】2015年3月10日
(33)【優先権主張国】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】000005049
【氏名又は名称】シャープ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110000338
【氏名又は名称】特許業務法人HARAKENZO WORLD PATENT & TRADEMARK
(72)【発明者】
【氏名】佐藤 秀樹
(72)【発明者】
【氏名】清水 隆行
【審査官】 蔵田 真彦
(56)【参考文献】
【文献】 特開2013−140098(JP,A)
【文献】 特開2013−50422(JP,A)
【文献】 特開2013−197243(JP,A)
【文献】 特開2012−104656(JP,A)
【文献】 米国特許出願公開第2012/0312990(US,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G01J 1/00−1/60
H01L 31/10
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
入射光の強度に応じて光電流を流す第1及び第2受光素子と、第1波長領域の光の透過率が上記第1波長領域外の光の透過率より低い光学フィルタと、を備えた受光器であって、
上記第1受光素子には、上記光学フィルタを透過した上記入射光が入射し、
上記第1及び第2受光素子は、隣接配置され、上記第1波長領域の光に感度を有する第1状態と、上記第1波長領域外の光に感度を有する第2状態とに切り替えでき、
上記第2状態である上記第1及び第2受光素子の光電流の和である第1値と、上記第2状態である上記第1又は第2受光素子の光電流である第2値との比を上記入射光の偏りの値として算出することを特徴とする受光器。
【請求項2】
第1の期間において、上記第1受光素子は上記第1波長領域外の第2波長領域の光に対して感度を有し、上記第2受光素子は上記第1波長領域外の第3波長領域の光に対して感度を有し、
第2の期間において、上記第1受光素子は上記第3波長領域の光に対して感度を有し、上記第2受光素子は上記第2波長領域の光に対して感度を有し、
第3の期間において、上記第1及び第2受光素子の少なくとも一方が上記第2波長領域の光に対して感度を有し、
上記第1値が、上記第1の期間の上記第1受光素子及び上記第2の期間の上記第2受光素子の光電流の和であり、
上記第2値が、上記第3の期間において上記第2波長領域の光に対して感度を有する、上記第3の期間の上記第1又は第2受光素子の光電流であることを特徴とする請求項1に記載の受光器。
【請求項3】
上記第1状態である上記第1及び第2受光素子の上記光電流が、上記偏りの値に基づき補正されることを特徴とする請求項1又は2に記載の受光器。
【請求項4】
上記第1波長領域が、紫外線領域であることを特徴とする請求項1〜3の何れか1項に記載の受光器。
【請求項5】
請求項1〜4の何れか1項に記載の受光器を備えることを特徴とする携帯型電子機器。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、受光器および携帯型電子機器に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、カメラ、近接センサ、方位センサ、加速度センサ、角速度センサ、及び照度センサ等の小型化により、スマートフォン等の携帯型電子機器に上記各種センサが搭載されている。特に、液晶パネルを有する電子機器では、照度センサにより周囲の明るさを測定し、周囲の明るさに応じてバックライトの輝度を適切に調整することができる。視感度に近い分光感度特性での照度測定を実現するために、照度センサに、複数の異なる分光感度特性のフォトダイオードを設け、それぞれのフォトダイオードの光電流を演算する技術が知られている。
【0003】
また、スマートフォンのサブ端末として、腕時計型の端末やメガネ型の携帯型電子機器も実用化されており、常に携帯者の心拍数や運動量等の生体情報をモニタして管理できる環境が整っている。さらに、野外使用されるこれらの携帯型電子機器に紫外線センサを搭載し、太陽光に含まれる紫外線強度を測定することにより、日焼けの防止を促したり、日中に受けた紫外線の積算量を記録したりすることができる。これにより、携帯型電子機器を用いて使用者の健康情報を管理することが可能となる。
【0004】
特許文献1は、UVセンサ用と照度センサ用とに別々に、受光器と電圧検出回路と光センサ窓とを備える紫外線測定装置を開示している。また、特許文献2は、SOI基板を用いて可視光センサと紫外線センサを集積した光センサを開示している。
【0005】
照度センサと紫外線センサとを備える携帯型電子機器において、光センサ窓をできるだけ少なくしてデザイン性を向上させるために、紫外線センサのセンサ窓と照度センサのセンサ窓とを共通化する試みがなされている。また、一般的に、紫外線を検出するためには、GaN系やZnO系等の化合物半導体やSOI基板を使ったフォトダイオードが使われてきた。しかし、これらを用いた場合、信号処理用ICとの同一チップ上での集積化が困難で高コストになる。
【0006】
異なる分光感度特性を有する複数の接合フォトダイオードが縦方向に配列された構造の受光素子が2つ配置され、一方の受光素子の上部にUV(紫外線)カットフィルタを配置し、2つの受光素子の信号強度の差分をとることで紫外線の強度および照度を測定する方式がある。
【0007】
上記差分方式は、低コストで紫外線受光器を実現することができる。紫外線を受光するには、紫外線領域に感度のある最表面のPN接合フォトダイオードを使用する。UVカットフィルタを可視光と赤外光とが透過するため、可視光領域または赤外線領域に感度のある深い位置のPN接合フォトダイオードを用いることにより、照度を測定することも可能となる。
【0008】
また、上記差分方式は、汎用のシリコン基板を用いることが可能なため、シリコンCMOS(相補型金属酸化膜半導体)プロセスで形成されたセンサ回路と同一チップ上に集積化することにより低コスト化することが可能となる。さらに、紫外線と照度を上記複数の接合フォトダイオードが縦方向に配列された構造の受光素子で検出することになり、スマートフォン等の携帯型電子機器の紫外線センサと照度センサの光センサ窓を共通化することができる。
【0009】
一方、差分方式でない、紫外線領域の光を透過させるフィルタを用いた受光器の場合、400nm以上の波長で感度を完全にゼロにすることは通常難しい。さらに、紫外線領域の光を透過させるフィルタとして、干渉膜フィルタを用いた場合、UVカットフィルタと比較して層数が増え高コストになる。
【0010】
このような差分方式でない場合は、紫外線領域の光のみを透過させるフィルタを用いるため、可視光領域の光は殆ど通さない。このため、照度センサ用に400nm〜700nmの波長領域の可視光を検出する場合、照度センサ用の光センサ窓を紫外線センサ用の光センサ窓とは別に準備する必要がある。
【0011】
照度センサの分野では、視感度に近い分光特性を実現するために、複数の異なる分光特性のフォトダイオードの光電流を演算する方式は一般的に行われている。上記方式の従来の照度センサの断面図を図24に示し、従来の照度センサの分光感度特性を図25に示す。
【0012】
図24に示すように、照度センサは、分光感度の異なる2つの受光素子(PD1、PD2)を備えている。受光素子PD1及び受光素子PD2は、P型拡散層(P+)/N型ウェル層(N−Well)/P型基板(P−Sub)の3層構造で、PN接合からなる2つのフォトダイオード(PD_vis、PD_ir)を備えている。受光素子PD1はP+層とP−Subとが接地(GND)されており、受光素子PD2は、P−Subが接地されており、P+層とN−Well層とが互いに接続されている。
【0013】
これにより、図25に示すように、受光素子PD1により、PD_clear(PD_vis+PD_ir)の分光感度特性が得られ、受光素子PD2により、PD_irの分光感度特性が得られる。PD1(PD_clear)−PD2(PD_ir)の演算を行うことにより、PD_visに相当する分光感度特性を得ることができ、ピーク感度が視感度に近い特性になり、照度を測定することができる。
【0014】
上述のような差分方式の紫外線センサと照度センサとにおいては、複数の受光素子に均等に光が入射することが理想的である。
【0015】
受光素子を平面的に均等に分布するように配置することで、照射される光の角度による照射光の偏りをある程度は低減することができる。しかし、受光素子の配置は固定である為、照射される光の角度およびセンサを樹脂封止した際のパッケージ表面状態などにより、照射光が偏り、分光感度特性にバラツキが生じる。例えば、図24に示す照度センサの場合、受光素子PD1、PD2の出力電流の減算により照度を演算しているため、受光素子PD1、PD2への照射光に偏りがある場合、照度測定が偏り、分光感度特性にばらつきが生じる。
【0016】
特許文献3は、所定位置に配置された2つの受光素子の分光特性を測定中に入れ替えることで、測定結果の偏りと感度バラツキとを生じることなく測定する方法を開示している。例えば、第1の測定時間では、受光素子PD1をPD_irの分光特性とし、受光素子PD2をPD_clearの分光特性とし、第2の測定時間では、受光素子PD1をPD_clearの分光特性とし、受光素子PD2をPD_irの分光特性とする。
【0017】
特許文献4は、紫外線強度測定において、補正用フォトダイオードを用いて、測定の偏り、感度バラツキの補正を行う手法を開示している。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0018】
【特許文献1】日本公開特許公報「特開2010−112714(2010年5月20日公開)」
【特許文献2】日本特許公報「特許第5189391号(2013年04月24日発行)」
【特許文献3】日本公開特許公報「特開2013−50422(2013年3月14日公開)」
【特許文献4】日本公開特許公報「特開2014−112048(2014年6月19日公開)」
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0019】
受光素子の配置は固定である為、照射される光の角度およびセンサを樹脂封止した際のパッケージ表面状態などにより、照射光が偏り、分光感度特性にバラツキが生じる。上記特許文献3及び上記特許文献4は、このような問題を改善するための試みを開示しているが、以下のような問題がある。
【0020】
上記特許文献3に記載されている照度センサの構成は、所定位置に配置された2つの受光素子に入射される光の波長分布が同じである場合にのみ適用可能である。すなわち、所定位置に配置された2つの受光素子の両方に光学フィルタが設けられていない場合及び両方に同じ光学フィルタが設けられている場合にのみ適用可能である。
【0021】
従って、一方の受光素子にのみUVカットフィルタを配置した差分方式の紫外線センサには適用できない。なぜならば、一方の受光素子の上部にUVカットフィルタを配置し、2つの受光素子の信号強度の差分をとることにより紫外線の強度を測定する方式であり、第1の測定時間から第2の測定時間に切り替わる際に、UVカットフィルタの位置を入れ替えることができないからである。
【0022】
また、上記特許文献4に記載されている紫外線センサの構成は、紫外線測定用のフォトダイオードとは別に、補正用のフォトダイオードを設ける必要がある。このため、コストの増加や光センサの形成面積の増加を招いてしまう。
【0023】
本発明の目的は、コストの増加及び受光素子の形成面積の増加を抑制できるとともに、入射光の偏りを算出できる受光器を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0024】
本発明の受光器は、入射光の強度に応じて光電流を流す第1及び第2受光素子と、第1波長領域の光の透過率が上記第1波長領域外の光の透過率より低い光学フィルタと、を備えた受光器であって、上記第1受光素子には、上記光学フィルタを透過した上記入射光が入射し、上記第1及び第2受光素子は、隣接配置され、上記第1波長領域の光に感度を有する第1状態と、上記第1波長領域外の光に感度を有する第2状態とに切り替えでき、上記第2状態である上記第1及び第2受光素子の光電流の和である第1値と、上記第2状態である上記第1又は第2受光素子の光電流である第2値との比を上記入射光の偏りの値として算出することを特徴とする。
【0025】
上記構成によれば、上記第1及び第2受光素子は、上記第1波長領域外の光に感度を有する第2状態で、上記入射光の強度を測定できる。このため、上記第1波長領域外における、上記第1及び第2受光素子への入射光の偏りを算出することができる。
【0026】
また、上記第1及び第2受光素子は、上記第1波長領域の光に感度を有する第1状態と、上記第1波長領域外の光に感度を有する第2状態とで、上記入射光の強度を測定できる。このため、上記入射光の強度を測定するための受光素子とは別に、上記入射光の偏りを測定するための受光素子を設ける必要がない。これにより、コストの増加及び受光素子の形成面積の増加を抑制することができる。
【発明の効果】
【0027】
本発明の一態様によれば、コストの増加及び受光素子の形成面積の増加を抑制できるとともに、入射光の偏りを算出できる受光器を実現できる。
【図面の簡単な説明】
【0028】
図1】実施形態1に係る受光器の構成を示すブロック図である。
図2図1に示した受光部の平面図である。
図3図1に示した受光部の断面図である。
図4】受光素子の各フォトダイオードの分光感度特性を示す図である。
図5】フォトダイオードPD_uvの光電流を取り出すときのスイッチの開閉状態を示す受光素子の断面図である。
図6】フォトダイオードPD_clearの光電流を取り出すときのスイッチの開閉状態を示す受光素子PDの断面図である。
図7】フォトダイオードPD_irの光電流を取り出すときのスイッチの開閉状態を示す受光素子PDの断面図である。
図8】A/Dコンバーターの構成を示すブロック図である。
図9】A/Dコンバーターの動作の一例を示すタイミングチャートである。
図10】フォトダイオードPD_uvの分光感度特性を示す図である。
図11】UVカットフィルタの分光透過率特性を示す図である。
図12】UVカットフィルタを透過した光に対するフォトダイオードPD_uvの分光感度特性を示す図である。
図13】実施形態1にかかる受光器全体における分光感度特性を示す図である。
図14】補正用測定を行うときの受光部の断面図である。
図15】変形例1に係る受光部の平面図である。
図16】変形例1に係るUVカットフィルタを透過した光と透過していない光とに対するフォトダイオードPD_uvの分光感度特性を示す図である。
図17】変形例1に係る受光器全体における分光感度特性を示す図である。
図18】変形例2に係る受光部の平面図である。
図19】別の補正用測定を行うときの受光部の断面図である。
図20】実施形態3に係る受光器の構成を示すブロック図であり、(a)は、スイッチの第1の開閉状態を示し、図20の(b)は、スイッチの第2の開閉状態を示す。
図21】第1補正用測定の第1の測定時間であるときの受光部の断面図である。
図22】第1補正用測定の第2の測定時間であるときの受光部の断面図である。
図23】変形例3に係る受光器の構成を示すブロック図である。
図24】従来の照度センサの断面図である。
図25】従来の照度センサの分光感度特性を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0029】
以下、本発明の実施の形態について図1図23に基づいて詳細に説明する。ただし、この実施の形態に記載されている構成部品の寸法、材質、形状、その相対配置などはあくまで一実施形態に過ぎず、これらによりこの発明の範囲が限定解釈されるべきではない。
【0030】
〔実施形態1〕
以下、本発明の一実施形態について、図1図18に基づいて説明する。
【0031】
図1は、本実施形態の受光器1の構成を示すブロック図である。受光器1は、光が入射することにより光電流を流す受光部10と、光電流に基づいて光の強度を検出するセンサ回路部20とを備えている。受光器1は、スマートフォン等の携帯型電子機器に搭載することができる。
【0032】
<受光部>
図2は、図1に示した受光部10の平面図である。受光部10は、平面視において互いに隣接して配置された第1受光素子PD1及び第2受光素子PD2と、第1受光素子PD1の上部に設けられたUVカットフィルタ11(紫外線カットフィルタ,光学フィルタ)とを備えている。第1受光素子PD1は、入射した光の強度に応じて光電流Iin1を流し、第2受光素子PD2は、入射した光の強度に応じて光電流Iin2を流す。
【0033】
図3は、図1に示した受光部10の断面図である。図3に示すように、受光部10は、第1受光素子PD1と、第2受光素子PD2と、UVカットフィルタ11と、遮蔽部12とを備えている。これにより、第1受光素子PD1には、UVカットフィルタ11を透過した光が入射する。
【0034】
第1受光素子PD1及び第2受光素子PD2は同じ断面構造を有しており、それぞれ、P型基板P‐Sub(基板)と、P型基板P‐Sub上に形成されたN型ウェル層N‐Well(第3層)と、N型ウェル層N‐Well上に形成されたP型ウェル層P‐Well(第2層)と、P型ウェル層P‐Well上に形成されたN型拡散層N(第1層)とを備えている。また、第1受光素子PD1及び第2受光素子PD2は同じスイッチング構造を有しており、それぞれ5つのスイッチSW1〜5を備えている。
【0035】
(受光素子の断面構造)
第1受光素子PD1及び第2受光素子PD2は、それぞれ3つのPN接合(フォトダイオード接合)を有しており、P型基板P‐SubとN型ウェル層N‐WellとのPN接合により構成されたフォトダイオードPD_irと、N型ウェル層N‐WellとP型ウェル層P‐WellとのPN接合により構成されたフォトダイオードPD_visと、P型ウェル層P‐WellとN型拡散層NとのPN接合により構成されたフォトダイオードPD_uvとを備えている。
【0036】
UVカットフィルタ11は、紫外線の波長領域(波長400nm以下)の光の透過率が、当該紫外線の波長領域外の光の透過率よりも低い光学フィルタである。UVカットフィルタ11は、紫外線の波長領域(第1波長領域)の光を遮断するものであることが好ましい。
【0037】
遮蔽部12は、第1受光素子PD1及び第2受光素子PD2の上面に、最上層であるN型拡散層Nを露出させるように設けられている。これにより、外部からの光がN型拡散層Nに入射する。
【0038】
(受光素子のスイッチング構造)
第1受光素子PD1及び第2受光素子PD2のスイッチSW1〜5は、第1受光素子PD1及び第2受光素子PD2の各層の接続関係(各フォトダイオードのアノード及びカソードの接続関係)を変更することにより、第1受光素子PD1及び第2受光素子PD2の分光感度特性を変更するためのスイッチである。スイッチSW1〜5を制御することにより、フォトダイオードPD_ir、フォトダイオードPD_visおよびフォトダイオードPD_uvの何れかから光電流を取り出すことができる。
【0039】
スイッチSW1は、一方の端子が出力端子OUTに接続されており、他方の端子がN型拡散層Nに接続されている。
【0040】
スイッチSW2は、一方の端子が出力端子OUT及びスイッチSW1の一方の端子に接続されており、他方の端子がN型ウェル層N‐Wellに接続されている。
【0041】
スイッチSW3は、一方の端子がGND(グランド,0V)に接続されており、他方の端子がスイッチSW1の他方の端子及びN型拡散層Nに接続されている。
【0042】
スイッチSW4は、一方の端子がGND及びスイッチSW3の一方の端子に接続されており、他方の端子がP型ウェル層P‐Wellに接続されている。
【0043】
スイッチSW5は、一方の端子がスイッチSW4の他方の端子及びP型ウェル層P‐Wellに接続されており、他方の端子がスイッチSW2の他方の端子及びN型ウェル層N‐Wellに接続されている。
【0044】
第1受光素子PD1及び第2受光素子PD2のスイッチSW1〜5の開閉は、図示しない外部の制御部等により独立的(個別的)に制御される。
【0045】
(受光素子の分光感度特性)
図3に示した第1受光素子PD1及び第2受光素子PD2は、UVカットフィルタ11の影響を無視すると、スイッチSW1〜5の開閉状態が同じとき、同じ分光感度特性を有している。
【0046】
受光素子PD(第1受光素子PD1・第2受光素子PD2)の構成及び動作を、図4図7を参照して説明する。
【0047】
図4は、受光素子PDの各フォトダイオードの分光感度特性(PD_uv,PD_vis,PD_ir,PD_clear=PD_vis+PD_ir)を示す図である。
【0048】
図5は、フォトダイオードPD_uvの光電流を取り出すときのスイッチSW1〜5の開閉状態を示す受光素子PDの断面図である。図5に示すように、スイッチSW1,SW4,SW5をオンし、スイッチSW2,SW3をオフすることにより、受光素子PDは、紫外線領域の光に対して感度を有する状態(第1状態)となる。このとき、受光素子PDから、フォトダイオードPD_uvの光電流を取り出すことができる。このときの受光素子PDの分光感度特性は、図4中のPD_uvで示す曲線のようになる。
【0049】
図6は、フォトダイオードPD_vis及びフォトダイオードPD_irを合わせたフォトダイオードPD_clearの光電流を取り出すときのスイッチSW1〜5の開閉状態を示す受光素子PDの断面図である。図6に示すように、スイッチSW2〜4をオンし、スイッチSW1,SW5をオフすることにより、受光素子PDは、可視光領域及び赤外線領域の光に対して感度を有する状態(第2状態)となる。このとき、受光素子PDから、フォトダイオードPD_clear(PD_vis+PD_ir)の光電流を取り出すことができる。このときの受光素子PDの分光感度特性は、図4中のPD_clear(PD_vis+PD_ir)で示す曲線のようになる。
【0050】
図7は、フォトダイオードPD_irの光電流を取り出すときのスイッチSW1〜5の開閉状態を示す受光素子PDの断面図である。図7に示すように、スイッチSW1,SW2,SW5をオンし、スイッチSW3,SW4をオフすることにより、受光素子PDは、赤外線領域の光に対して感度を有する状態(第2状態)となる。このとき、受光素子PDから、フォトダイオードPD_irの光電流を取り出すことができる。このときの第1受光素子PD1の分光感度特性は、図4中のPD_irで示す曲線のようになる。
【0051】
なお、フォトダイオードPD_visの光電流を取り出す必要がある場合には、センサ回路部において、フォトダイオードPD_vis及びフォトダイオードPD_irから取り出した光電流を変換して得られたデジタル出力値から、フォトダイオードPD_irから取り出した光電流を変換して得られたデジタル出力値を差し引くことにより、フォトダイオードPD_visから取り出した光電流に対応するデジタル出力値を演算することができる。
【0052】
以上のように、受光素子PDのスイッチSW1〜5の開閉を制御することにより、3つのフォトダイオードのそれぞれの分光感度特性に基づいて光の強度を測定することができる。
【0053】
従って、第1受光素子PD1及び第2受光素子PD2は所定波長領域の光に対して、分光感度を有す状態及び有さない状態に切り替え可能である。
【0054】
なお、第1受光素子PD1及び第2受光素子PD2がN型拡散層/P型ウェル層/N型ウェル層/P型基板の4層構造を有する場合を上述において説明したが、P型拡散層/N型ウェル層/P型ウェル層/N型基板の4層構造を有してもよい。
【0055】
また、第1受光素子PD1及び第2受光素子PD2が同一の層構造を有する場合について説明したが、第1受光素子PD1及び第2受光素子PD2は同一の層構造を有さなくてよい。当業者は、互いに異なる積層構造を有し、同一の分光感度特性を有する第1受光素子及び第2受光素子を適宜用いてよい。
【0056】
<センサ回路部>
図1に示すように、センサ回路部20は、第1A/DコンバーターADC1と、第2A/DコンバーターADC2とを備えている。また、センサ回路部20は、図示しない演算部を備えている。
【0057】
A/DコンバーターADC1は、第1受光素子PD1に接続されており、光電流Iin1をデジタル信号に変換してデジタル出力値ADCOUNT1を出力する。デジタル出力値ADCOUNT1は、第1受光素子PD1に入射した光の強度に対応する。
【0058】
A/DコンバーターADC2は、第2受光素子PD2に接続されており、光電流Iin2をデジタル信号に変換してデジタル出力値ADCOUNT2を出力する。デジタル出力値ADCOUNT2は、第2受光素子PD2に入射した光の強度に対応する。
【0059】
A/DコンバーターADC1・ADC2は、同じ構成を有している。A/DコンバーターADC(ADC1・ADC2)の構成及び動作を、図8および図9を参照して説明する。
【0060】
(A/Dコンバーターの構成)
図8は、A/Dコンバーターの構成を示すブロック図である。
【0061】
図8に示すように、A/DコンバーターADCは、入力端子INと、出力端子OUTと、充電回路22と、比較回路23と、制御回路24と、放電回路25とを備えている。
【0062】
充電回路22は、光電流Iinにより充電される回路であり、アンプ回路AMP1と、光電流Iinに応じた電荷を蓄えるコンデンサC1とにより構成されている。アンプ回路AMP1は、反転入力端子が入力端子INに接続され、非反転入力端子がGNDに接続され、出力端子が比較回路23に接続されている。コンデンサC1は、アンプ回路AMP1の反転入力端子と出力端子との間に設けられている。これにより、アンプ回路AMP1及びコンデンサC1は、積分回路を構成している。
【0063】
比較回路23は、充電回路22の出力電圧と基準電圧Vrefとを比較する回路であり、コンパレータCMP1、スイッチSW31、及び基準電源V1により構成されている。コンパレータCMP1は、非反転入力端子が充電回路22に接続され、反転入力端子がスイッチSW31を介して充電回路22に接続されるとともに基準電源V1に接続され、出力端子が制御回路24に接続されている。スイッチSW31は、外部からの切替信号に応じて開閉(オン/オフ)し、充電回路22とコンパレータCMP1の反転入力端子及び基準電源V1との電気的接続を導通/遮断する。基準電源V1は、基準電圧VrefをコンパレータCMP1の反転入力端子に印加している。
【0064】
制御回路24は、比較回路23の出力(比較結果)に基づいて、測定時間に放電回路25が放電を行った回数を数え、当該回数に応じたデジタル値ADCOUNTを出力するものであり、フリップフロップ(FF)241及びカウンタ242により構成されている。FF241は、入力部が比較回路23に接続され、出力部がカウンタ242に接続されるとともに、放電回路25に接続されている。カウンタ242の出力部は、出力端子OUTに接続されている。
【0065】
放電回路25は、充電回路22の出力電圧が基準電圧Vrefを超えたときに充電回路22を放電させる(コンデンサC1に蓄えられた電荷を放電させる)ものであり、電流源IREF及びスイッチSW32により構成されている。スイッチSW32は、一方の端子が電流源IREFに接続され、他方の端子が充電回路22及び入力端子INに接続されている。スイッチSW32は、切替信号(FF241の出力信号CHARGE)に応じて開閉(オン/オフ)し、両者の電気的接続を導通/遮断する。
【0066】
(A/Dコンバーターの動作)
図9は、図8に示したA/DコンバーターADCの動作の一例を示すタイミングチャートである。図9中、CLKはクロック信号を示し、SW31はスイッチSW31の開閉状態を示し、SW32はスイッチSW32の開閉状態を示し、Vrefは基準電源V1の電圧を破線により示し、VSIGは充電回路22の出力を実線により示し、COMPは比較回路23の出力を示し、CHARGEはスイッチSW32の開閉に用いる制御回路24の出力(FF241の出力)を示す。
【0067】
変換動作開始前は、スイッチSW31が閉じている。これにより、充電回路22(積分回路)の出力VSIGは、基準電源V1の電圧Vrefに充電されている。
【0068】
A/DコンバーターADCは、スイッチSW31が開くことにより、光電流IinでコンデンサC1に充電を行うことが可能となり、AD変換動作を行う。スイッチSW31の開放期間がデータ変換期間(充電期間,t_conv)となっており、測定時間に対応する。
【0069】
データ変換期間では、まず、スイッチSW32を閉じて、放電回路25により、コンデンサC1から一定の電荷(IREF×t_clk)を放電させる(プリチャージ動作)。続いて、スイッチSW32を開いて、受光素子PDからの光電流Iinにより充電回路22が充電され、その出力VSIGが上昇する。出力VSIGが電圧Vrefを超えると、比較回路23の出力COMPがロー電圧からハイ電圧に切り替わる。これにより、FF241の出力、すなわち制御回路24の出力CHARGEがロー電圧からハイ電圧に切り替わって、スイッチSW32がオンとなり、放電回路25により一定の電荷(IREF×t_clk)が放電される。
【0070】
続いて、放電により充電回路22の出力VSIGが下降し、出力VSIGが電圧Vrefを下回ると、比較回路23の出力COMPがハイ電圧からロー電圧に切り替わる。これにより、FF241の出力、すなわち制御回路24の出力CHARGEがハイ電圧からロー電圧に切り替わって、スイッチSW32がオフとなり放電が停止する。
【0071】
その後は、受光素子PDからの光電流Iinにより再び充電回路22が充電され、上述と同様に動作する。
【0072】
一方、データ変換期間(t_conv)の間、カウンタ242が、FF241の出力がハイ電圧となった時間、すなわち放電時間の回数を数えており、このカウント値が、入力された電荷量に応じた値としてデジタル出力される。カウンタ242の出力は、A/DコンバーターADCの出力ADCOUNTとなる。
【0073】
A/DコンバーターADCでは、光電流Iinにより充電された電荷量と、(IREF×t_clk)により放電された電荷量とが等しくなるように動作するので、「充電電荷量(Iin×t_conv)=放電電荷量(IREF×t_clk×count)」により、下記の(式1)が成り立つ。
【0074】
count=(Iin×t_conv)/(IREF×t_clk)………(式1)
count:放電時間をカウントした値
Iin:入力電流値
IREF:基準電流値
t_conv:充電時間
t_clk:クロック周期
故に、放電時間をカウントした値(count)の最小分解能は、(IREF×t_clk)で決定されることがわかる。
【0075】
<紫外線測定の原理>
次に、図1に示した受光器1において紫外線強度を検出する原理について説明する。
【0076】
図10は、フォトダイオードPD_uvの分光感度特性を示す図である。図10に示すように、フォトダイオードPD_uvの分光感度特性のピーク波長は約450nmである。より詳しく述べると、波長420〜430nmにフォトダイオードPD_uvの分光感度特性のピーク波長がある。なお、受光素子におけるPN接合の接合深さを調整することにより、このピーク波長を調整することができる。
【0077】
図11は、図3に示したUVカットフィルタ11の分光透過率特性を示す図である。UVカットフィルタ11は400nm以下の波長の光の透過率が低く、400nm以上の波長の光の透過率は、ほぼ100%である。
【0078】
図12は、UVカットフィルタ11を透過した光に対するフォトダイオードPD_uvの分光感度特性を示す図である。
【0079】
図1に示した受光器1のセンサ回路部20においてデジタル出力値ADCOUNT1、ADCOUNT2が出力される。
【0080】
図示しない演算部が、デジタル出力値ADCOUNT2とデジタル出力値ADCOUNT1との差分を演算する。上記差分は、第2受光素子PD2に入射した光の強度から、第1受光素子PD1に入射した光の強度を差し引いたものとなる。
【0081】
そのため、第1受光素子PD1及び第2受光素子PD2においてともに、スイッチSW1〜5の開閉状態が図5のようであるとき、受光部10全体における分光感度特性は、図13に示す分光感度特性とみなすことができる。
【0082】
これにより、受光部10は、波長が400nm以下の紫外線領域のみに感度を持つため、受光器1は、紫外線強度を正確に測定することができる。
【0083】
<測定と補正>
図1に示した受光器1は、上述の原理により紫外線強度を検出する紫外線測定を行う前に、補正用測定を行う。そして、図示しない演算部が、受光部10に入射する照射光(入射光)の偏りの値を演算する。紫外線測定を行った後に、上記偏りの値により上記演算部が、紫外線測定を補正する。
【0084】
(補正用測定)
(PD_vis+PD_ir)
図14は、受光器1が補正用測定を行うときの受光部10の断面図である。第1フォトダイオードPD1及び第2フォトダイオードPD2のスイッチSW1〜5の開閉状態が、共に図6に示した開閉状態であるので、第1フォトダイオードPD1及び第2フォトダイオードPD2は、共にフォトダイオードPD_clear(PD_vis+PD_ir)から光電流を取り出す。
【0085】
図2に示したように第1フォトダイオードPD1及び第2フォトダイオードPD2は、隣接して配置されている。また、図4に示したようにフォトダイオードPD_clearの分光感度特性は、波長が400nm以上の領域にほぼ存在する。また、図11に示したように第1フォトダイオードPD1の上部に設けられたUVカットフィルタ11の分光透過率は、波長が400nm以上の領域においてほぼ100%である。
【0086】
故に、図14に示した第1フォトダイオードPD1及び第2フォトダイオードPD2の接続状態で、第1フォトダイオードPD1及び第2フォトダイオードPD2に入射する照射光の偏りを測定することができる。
【0087】
(照射光の偏りの値)
第1フォトダイオードPD1及び第2フォトダイオードPD2が図14に示した接続状態であるときの、図1に示したデジタル出力値ADCOUNT1,ADCOUNT2をそれぞれADC1_clear,ADC2_clearとする。第1受光素子PD1及び第2受光素子PD2の照射光の偏りの値を、それぞれBias1及びBias2とすると、下記の(式2)及び(式3)が成り立つ。
【0088】
Bias1=2×ADC1_clear/(ADC1_clear+ADC2_clear)………(式2)
Bias2=2×ADC2_clear/(ADC1_clear+ADC2_clear)………(式3)
一般に、同一光源からの照射光の偏りは、異なる波長領域において相関関係にある。故に、補正用測定において測定する波長領域は紫外線測定において測定する波長領域と異なるにも関わらず、補正用測定から演算した照射光の偏りの値Bias1・Bias2を紫外線測定において検出する紫外線強度の補正に用いることができる。
【0089】
紫外線測定における主な測定対象光源である太陽光は、紫外線領域〜赤外線領域にわたる広い分光特性を有している。故に、可視光及び/又は赤外線領域において照射光の偏りを測定することができる。さらに、補正用測定において可視光領域および赤外線領域の広い分光感度特性を有するフォトダイオードPD_clear(PD_vis+PD_ir)を使用することにより、高い受光感度が得られ、照射光の偏りの値Bias1,Bias2の精度を向上させることができる。
【0090】
また、上記(式2)のBias1の分母及び上記(式3)のBias2の分母は、UVカットフィルタ11が備えられた第1受光素子PD1を接続した際の出力値とUVカットフィルタ11が備えられていない第2受光素子PD2を接続した際の出力値との和を用いている。これは、第1受光素子PD1及び第2受光素子PD2の全体で光を受けた際の出力値と等価であることから、第1受光素子PD1及び第2受光素子PD2への入射光の偏り、第1受光素子PD1及び第2受光素子PD2の感度ばらつき、及びUVカットフィルタ11の影響を平均化し、分散することができる。
【0091】
(紫外線測定)
受光器1が紫外線強度を検出する紫外線測定を行う。このとき、第1受光素子PD1及び第2受光素子PD2のスイッチSW1〜5は共に図5に示した開閉状態である。紫外線測定時の、図1に示したデジタル出力値ADCOUNT1,ADCOUNT2をそれぞれADC1_uv,ADC2_uvとする。
【0092】
(紫外線測定の補正)
図示しない演算部は、デジタル出力値ADC1_uv,ADC2_uvに、照射光の偏りの値Bias1・Bias2の逆数を掛けて紫外線測定を補正する。デジタル出力値ADC1_uv,ADC2_uvを補正したデジタル値をそれぞれADC1_uv_correct,ADC2_uv_correctとすると、下記の(式4)及び(式5)が成り立つ。
【0093】
ADC1_uv_correct=ADC1_uv/Bias1………(式4)
ADC2_uv_correct=ADC2_uv/Bias2………(式5)
そして、下記の(式6)より、図示しない演算部は照射光の偏りを補正した精度の高い紫外線強度を演算する。
【0094】
ADC2_uv_correct−ADC1_uv_correct………(式6)
これにより、受光部10は波長が400nm以下の紫外線領域のみに感度を持ち、演算部が紫外線強度を補正するため、受光器1は紫外線強度を正確に測定することができる。
【0095】
<照度測定>
図1に示した受光器1は、可視光の照度を測定する照度測定も行うことができる。
【0096】
例えば、第1受光素子PD1のスイッチSW1〜5の開閉状態を図7のようして、第1受光素子PD1のフォトダイオードPD_irから光電流を取り出して、A/DコンバーターADC1に入力する。同時に、第2受光素子PD2のスイッチSW1〜5の開閉状態を図6のようして、第2受光素子PD2のフォトダイオードPD_clearから光電流を取り出して、A/DコンバーターADC2に入力する。
【0097】
フォトダイオードPD_clearは可視光領域および赤外線領域の分光感度特性を有し、フォトダイオードPD_irは赤外線領域の分光感度特性を有する。このため、演算部はデジタル出力値ADCOUT1,ADCOUNT2の差分から、可視光の照度を演算することができる。
【0098】
なお、このような照度測定においても、照射光の偏りの値Bias1,Bias2を用いて、上述した紫外線測定の補正と同様の補正を行うことで、より正確な照度測定を行うことができる。
【0099】
<変形例1>
本実施形態の変形例について、図15図17に基づいて説明すれば、以下のとおりである。
【0100】
図15は、本変形例に係る受光部110の平面図である。図1に示した受光器1は、受光部10の代わりに、受光部110を備えてよい。そして、受光器1と同様に、受光部110を備えた受光器は、補正用測定,受光部110に入射する照射光の偏りの値の演算,紫外線測定,紫外線測定の補正,および照度測定を行う。
【0101】
図15に示すように、受光部110は、平面視において互いに隣接して配置された第1受光素子PD1及び第2受光素子PD2を備えている。そして、第1受光素子PD1の上部の一部には、UVカットフィルタ111が設けられている。
【0102】
UVカットフィルタ111は、紫外線の波長領域内の光の透過率、紫外線の波長領域外の光の透過率、素材などについては、図2および図3に示したUVカットフィルタ11と同じであるが、第1受光素子PD1の上部での配置において異なる。
【0103】
具体的には、UVカットフィルタ111は、N型拡散層Nの一部分を覆うように第1受光素子PD1の上部に設けられている。N型拡散層Nの上部にUVカットフィルタ111が有る領域にはUVカットフィルタ111を透過した光が入射し、N型拡散層Nの上部にUVカットフィルタ111が無い領域には、入射光がそのまま入射する。
【0104】
図16は、本変形例に係るUVカットフィルタを透過した光と透過していない光とに対するフォトダイオードPD_uvの分光感度特性を示す図である。
【0105】
受光部110では、N型拡散層Nの一部分を覆うように第1受光素子PD1の上部にUVカットフィルタ111が設けられている。そのため、図5に示した接続状態である第1受光素子PD1の分光感度特性は、図16に示す分光感度特性となる。
【0106】
一方で、第2受光素子PD2の上部にはUVカットフィルタ111が設けられていないため、図5に示した接続状態である第2受光素子PD2の分光感度特性は、図10に示す分光感度特性となる。
【0107】
そのため、第1受光素子PD1及び第2受光素子PD2においてともに、スイッチSW1〜5の開閉状態が図5のようであるとき、受光部110全体における分光感度特性は、図17に示す分光感度特性とみなすことができる。
【0108】
本変形例の受光部110によれば、UVカットフィルタ111が第1受光素子PD1の上面の全部を覆わなくてもよい。このため、受光部110および受光部110を備える受光器の設計の自由度を増すことができる。
【0109】
<変形例2>
本実施形態の別の変形例について、図18に基づいて説明すれば、以下のとおりである。
【0110】
図18は、本変形例の受光部210の平面図である。図1に示した受光器1は、受光部10の代わりに、受光部210を備えていてよい。そして、受光器1と同様に、受光部210を備えた受光器は、補正用測定,受光部210に入射する照射光の偏りの値の演算,紫外線測定,紫外線測定の補正,および照度測定を行う。
【0111】
図18に示すように、受光部210は、2つの第1受光素子PD1及び2つの第2受光素子PD2を備えている。第1受光素子PD1及び第2受光素子PD2は、1つの四角形を+字に沿って4分割するように、対角に配置されている。
【0112】
本変形例の受光部210によれば、第1受光素子PD1及び第2受光素子PD2が対角に配置されているため、入射する照射光の偏りや受光素子の感度のばらつきを低減させることができる。このため、受光部210を備える受光器はより高精度な補正用測定、紫外線測定及び照度測定をすることができる。
【0113】
なお、本実施の形態においては、第1受光素子PD1上にUVカットフィルタ11が設けられており、第1受光素子PD1及び第2受光素子PD2が可視光領域及び赤外線領域に感度がある状態において、補正用測定を行う場合を例に挙げて説明したが、第1受光素子PD1及び第2受光素子PD2が、第1受光素子PD1上に設けられた光学フィルタによってカット(遮断)されない波長領域の光に感度がある状態で補正用測定をできるのであれば、第1受光素子PD1上に設けられる光学フィルタの種類や第1受光素子PD1及び第2受光素子PD2の状態及び分光感度特性はこれに限定されることはない。
【0114】
また、本実施の形態においては、第1受光素子PD1及び第2受光素子PD2が、それぞれ3つのPN接合(3つのフォトダイオードPD_uv,PD_vis,PD_ir)を有している場合を例に挙げて説明したが、これに限定されることはなく、補正用測定と照射光の偏りの値Bias1,Bias2を反映させる測定を行えるように、第1受光素子PD1及び第2受光素子PD2は、それぞれ2つ以上のPN接合(2つ以上のフォトダイオード)を備えていればよい。
【0115】
〔実施の形態2〕
本発明の他の実施形態について、図19に基づいて説明すれば以下のとおりである。なお、説明の便宜上、前記実施形態にて説明した部材と同じ機能を有する部材については、同じ符号を付記し、その説明を省略する。
【0116】
<補正>
図1に示した受光器1は、上記実施の形態1において説明した補正用測定とは異なる波長領域を用いて、補正用測定を行うことができる。
【0117】
(補正用測定)
(PD_ir)
図19は、図1に示した受光器1が異なる波長領域を用いて補正用測定を行うときの受光部10の断面図である。第1フォトダイオードPD1及び第2フォトダイオードPD2のスイッチSW1〜5の開閉状態が、共に図7に示した開閉状態であるので、第1フォトダイオードPD1及び第2フォトダイオードPD2は、共にフォトダイオードPD_irから光電流を取り出す。
【0118】
図2に示したように第1フォトダイオードPD1及び第2フォトダイオードPD2は、隣接して配置されている。また、図4に示したようにフォトダイオードPD_irの分光感度特性は、波長が400nm以上の領域にほぼ存在する。また、図11に示したように第1フォトダイオードPD1の上部に設けられたUVカットフィルタ11の分光透過率は、波長が400nm以上の領域においてほぼ100%である。
【0119】
故に、図19に示した第1フォトダイオードPD1及び第2フォトダイオードPD2の接続状態で、第1フォトダイオードPD1及び第2フォトダイオードPD2に入射する照射光の偏りを測定することができる。
【0120】
(照射光の偏りの値)
第1フォトダイオードPD1及び第2フォトダイオードPD2が図19に示した接続状態であるときの、図1に示したデジタル出力値ADCOUNT1,ADCOUNT2をそれぞれADC1_ir,ADC2_irとする。第1受光素子PD1及び第2受光素子PD2の照射光の偏りの値を、それぞれBias1及びBias2とすると、下記の(式7)及び(式8)が成り立つ。
【0121】
Bias1=2×ADC1_ir/(ADC1_ir+ADC2_ir)………(式7)
Bias2=2×ADC2_ir/(ADC1_ir+ADC2_ir)………(式8)
そして、上記実施の形態1と同様に、受光器1は紫外線測定および紫外線測定の補正を行う。これにより、受光部10は波長が400nm以下の紫外線領域のみに感度を持ち、演算部が紫外線強度を補正するため、受光器1は紫外線強度を正確に測定することができる。
【0122】
〔実施の形態3〕
本発明の他の実施形態について、図20図23に基づいて説明すれば以下のとおりである。なお、説明の便宜上、前記実施形態にて説明した部材と同じ機能を有する部材については、同じ符号を付記し、その説明を省略する。
【0123】
図20は、本実施形態にかかる受光器101の構成を示すブロック図であり、図20の(a)は、スイッチSW11,12,21,22の第1の開閉状態を示し、図20の(b)は、スイッチSW11,12,21,22の第2の開閉状態を示す。
【0124】
図20に示すように、本実施形態の受光器101は、受光部10と、光電流に基づいて光の強度を検出するセンサ回路部120とを備える。
【0125】
センサ回路部120は、4つのスイッチSW(SW11,SW12,SW21,SW22)を備えている。これにより、第1受光素子PD1及び第2受光素子PD2と、A/DコンバーターADC1及びA/DコンバーターADC2との接続を切り替えることができる。また、センサ回路部120は、図示しない演算部を備えている。
【0126】
例えば、図20の(a)に示した第1の開閉状態のように、スイッチSW11,SW22をオンにし、スイッチSW12,SW21をオフにする状態のとき、第1受光素子PD1及び第2受光素子PD2はそれぞれA/DコンバーターADC1及びADC2に接続される。また、図20の(b)に示した第2の開閉状態のように、スイッチSW12,SW21をオンにし、スイッチSW11,SW22をオフにする状態のとき、第1受光素子PD1及び第2受光素子PD2はそれぞれA/DコンバーターADC2及びADC1に接続される。
【0127】
<測定と補正>
受光器101は、上記実施形態1において説明した補正用測定とは異なる方法により、補正用測定を行い、紫外線測定の補正を行うことができる。
【0128】
補正用測定を第1補正用測定と第2補正用測定とに分け、さらに第1補正用測定の測定時間を、図9に示すように、第1の測定時間と第2の測定時間とに分ける。
【0129】
(第1補正用測定)
(分母)
図21は、受光器101が第1補正用測定の第1の測定時間(第1の期間)であるときの受光部10の断面図である。第1フォトダイオードPD1のスイッチSW1〜5の開閉状態が、図6に示した開閉状態であり、第2フォトダイオードPD2のスイッチSW1〜5の開閉状態が、図7に示した開閉状態である。同時に、センサ回路部120のスイッチSW11,12,21,22は、図20(a)に示した第1の開閉状態である。
【0130】
故に、第1受光素子PD1のフォトダイオードPD_clearから光電流を取り出し、A/DコンバーターADC1に入力する。また、第2受光素子PD2のフォトダイオードPD_irから光電流を取り出し、A/DコンバーターADC2に入力する第1の測定時間の間に、A/DコンバーターADC1,ADC2が数える放電時間の回数を、それぞれADC1_part1_clear1,ADC2_part1_ir2とする。
【0131】
図22は、受光器101が第1補正用測定の第2の測定時間(第2の期間)であるときの受光部10の断面図である。第1フォトダイオードPD1のスイッチSW1〜5の開閉状態が、図7に示した開閉状態であり、第2フォトダイオードPD2のスイッチSW1〜5の開閉状態が、図6に示した開閉状態である。同時に、センサ回路部120のスイッチSW11,12,21,22は、図20(b)に示した第2の開閉状態である。
【0132】
故に、第1受光素子PD1のフォトダイオードPD_irから光電流を取り出し、A/DコンバーターADC2に入力する。また、第2受光素子PD2のフォトダイオードPD_clearから光電流を取り出し、A/DコンバーターADC1に入力する。第2の測定時間の間に、A/DコンバーターADC1,ADC2が数える放電時間の回数を、それぞれADC1_part2_clear2,ADC2_part2_ir1とする。
【0133】
第1補正用測定におけるA/DコンバーターADC1,ADC2のデジタル出力値ADCOUNT1,ADCOUNT2を、それぞれADC1_1st_clear,ADC2_1st_irとすると、下記の(式9)及び(式10)が成り立つ。
【0134】
ADC1_1st_clear=ADC1_part1_clear1+ADC1_part2_clear2………(式9)
ADC2_1st_ir=ADC2_part1_ir2+ADC2_part2_ir1………(式10)
ADC1_1st_clear及びADC2_1st_irは、第1の測定時間及び第2の測定時間において、A/DコンバーターADC1・ADC2への第1受光素子PD1及び第2受光素子PD2の接続を入れ替えることにより、第1受光素子PD1及び第2受光素子PD2の両方を使用している。このため、第1の測定時間と第2の測定時間とが同一である場合、第1補正用測定において第1受光素子PD1及び第2受光素子PD2の全体で光を受けた際の出力値の半分の値と等価である。
【0135】
従って、可視光及び赤外線領域における、第1受光素子PD1及び第2受光素子PD2への照射光の偏り、及び第1受光素子PD1及び第2受光素子PD2の感度のばらつき、を平均化し分散することができる。また、第1受光素子PD1は、UVカットフィルタ11に覆われているが、UVカットフィルタ11の影響を平均化して分散することができる。その結果、UVカットフィルタ11の有無を含む第1受光素子PD1及び第2受光素子PD2の差異による影響を低減することができる。
【0136】
さらに、演算部はADC1_1st_clear−ADC2_1st_irにより、可視光の照度を演算することができる。また、ADC1_1st_clearは可視光及び赤外線領域の照射光の強度であり、ADC2_1st_irは赤外線領域の照射光の強度である。従って、受光器101は第1補正用測定において、可視光及び/又は赤外線領域の照射光の強度を精度良く測定できる。なお、第1の測定時間及び第2の測定時間の順番は前後してよい。
【0137】
(第2補正用測定)
(分子)
受光器101が第2補正用測定(第3の期間)を行うとき、センサ回路部120は図20(a)に示した第1の開閉状態であり、受光部10は図21に示した接続状態である。
【0138】
故に、第1受光素子PD1のフォトダイオードPD_clearから光電流を取り出し、A/DコンバーターADC1に入力する。また、第2受光素子PD2のフォトダイオードPD_irから光電流を取り出し、A/DコンバーターADC2に入力する。
【0139】
第2補正用測定におけるA/DコンバーターADC1,ADC2のデジタル出力値ADCOUT1,ADCOUNT2を、それぞれADC1_2nd_clear1,ADC2_2nd_ir2とする。
【0140】
(照射光の偏りの値)
第1受光素子PD1及び第2受光素子PD2の照射光の偏りの値を、それぞれBias1及びBias2とすると、下記の(式11)及び(式12)が成り立つ。
【0141】
Bias1=ADC1_2nd_clear1/ADC1_1st_clear………(式11)
Bias2=ADC2_2nd_ir2/ADC2_1st_ir………(式12)
なお、本実施の形態において第1補正用測定における第1の測定時間及び第2の測定時間を合わせた時間は、第2補正用測定における測定時間と等しい。
【0142】
上述に限らず、第1補正用測定における第1の測定時間及び第2の測定時間を合わせた時間は、第2補正用測定における測定時間と異なってもよい。異なる場合、上記(式11)及び(式12)に、第1の測定時間及び第2の測定時間の比率を掛けて、照射光の偏りの値Bias1,Bias2を補正する。
【0143】
(紫外線測定)
受光器101が紫外線測定を行うとき、センサ回路部120は図20(a)に示した第1の開閉状態であり、受光部10の第1フォトダイオードPD1及び第2フォトダイオードPD2のスイッチSW1〜5は共に図5に示した開閉状態である。紫外線測定時の、図1に示したデジタル出力値ADCOUNT1,ADCOUNT2をそれぞれADC1_uv,ADC2_uvとする。
【0144】
(紫外線測定の補正)
図示しない演算部は、上記実施の形態1と同様に、デジタル出力値ADC1_uv,ADC2_uvに、照射光の偏りの値Bias1・Bias2の逆数を掛けて紫外線測定を補正する。そして、図示しない演算部は照射光の偏りを補正した精度の高い紫外線強度を演算する。
【0145】
これにより、受光部10は波長が400nm以下の紫外線領域のみに感度を持ち、演算部が紫外線強度を補正するため、紫外線強度を正確に測定することができる。
【0146】
<変形例3>
本実施形態の変形例について、説明すれば、以下のとおりである。
【0147】
本変形例において、図20に示す受光器101が第2補正用測定を行うとき、第1受光素子PD1及び第2受光素子PD2に入射する照射光の偏りの値を演算するために、同じ波長領域を使用する。
【0148】
(第2補正用測定)
(分子)
例えば、受光器101が第2補正用測定を行うとき、センサ回路部120は図20(a)に示した第1の開閉状態であり、受光部10の第1フォトダイオードPD1及び第2フォトダイオードPD2のスイッチSW1〜5は共に図6に示した開閉状態である。
【0149】
故に、第1受光素子PD1及び第2受光素子PD2のフォトダイオードPD_clearから光電流を取り出し、A/DコンバーターADC1,ADC2に入力する。
【0150】
第2補正用測定におけるA/DコンバーターADC1,ADC2のデジタル出力値ADCOUT1,ADCOUNT2を、それぞれADC1_2nd_clear1,ADC2_2nd_clear2とする。
【0151】
(照射光の偏りの値)
第1受光素子PD1及び第2受光素子PD2の照射光の偏りの値を、それぞれBias1及びBias2とすると、下記の(式13)及び(式14)が成り立つ。
【0152】
Bias1=ADC1_2nd_clear1/ADC1_1st_clear………(式13)
Bias2=ADC2_2nd_clear2/ADC1_1st_clear………(式14)
本変形例の受光器101によれば、第2補正用測定において広い波長領域を用いるため、受光器101はより高精度な補正用測定及び紫外線測定をすることができる。
【0153】
<変形例4>
本実施形態の変形例について、図23に基づいて説明すれば、以下のとおりである。
【0154】
図23は、本変形例に係る受光器201のブロック図であり、図20の(a)は、スイッチSW11,12,21,22の第1の開閉状態を示し、図20の(b)は、スイッチSW11,12,21,22の第2の開閉状態を示す。
【0155】
図23に示すように、本変形例の受光器201は、受光部210と、センサ回路部120とを備える。図1に示した受光器1と同様に、受光器201は、補正用測定,受光部210に入射する照射光の偏りの値の演算,紫外線測定,紫外線測定の補正,及び照度測定を行う。
【0156】
本変形例の受光器201によれば、第1受光素子PD1及び第2の受光素子PD2が対角に2つずつ配置されているため、入射する照射光の偏りや受光素子の感度のばらつきを低減させることがでる。このため、受光器201はより高精度な補正用測定及び紫外線測定をすることができる。
【0157】
〔実施の形態4〕
本発明の他の実施形態について、図20および図22に基づいて説明すれば以下のとおりである。なお、説明の便宜上、前記実施形態にて説明した部材と同じ機能を有する部材については、同じ符号を付記し、その説明を省略する。
【0158】
<補正>
図20に示した受光器101は、上記実施の形態3において説明した第2補正用測定とは異なる方法を用いて、第2補正用測定を行うことができる。
【0159】
(第1補正用測定)
(分母)
受光器101は上記実施の形態3と同様に、第1補正用測定を行う。第1補正用測定におけるA/DコンバーターADC1,ADC2のデジタル出力値ADCOUT1,ADCOUNT2を、それぞれADC1_1st_clear,ADC2_1st_irとする。
【0160】
(第2補正用測定)
(分子)
受光器101が第2補正用測定を行うとき、センサ回路部120は図20(b)に示した第2の開閉状態であり、受光部10は図22に示した接続状態である。
【0161】
故に、第1受光素子PD1のフォトダイオードPD_irから光電流を取り出し、A/DコンバーターADC2に入力する。また、第2受光素子PD2のフォトダイオードPD_clearから光電流を取り出し、A/DコンバーターADC1に入力する。
【0162】
第2補正用測定におけるA/DコンバーターADC1,ADC2のデジタル出力値ADCOUT1,ADCOUNT2を、それぞれADC1_2nd_clear2,ADC2_2nd_ir1とする。
【0163】
(照射光の偏りの値)
第1受光素子PD1及び第2受光素子PD2の照射光の偏りの値を、それぞれBias1及びBias2とすると、下記の(式15)及び(式16)が成り立つ。
【0164】
Bias1=ADC2_2nd_ir1/ADC2_1st_ir………(式15)
Bias2=ADC1_2nd_clear2/ADC1_1st_clear………(式16)
(紫外線測定)
(紫外線測定の補正)
受光器101は上記実施形態3と同様に、紫外線測定及び紫外線測定の補正を行う。
【0165】
これにより、受光部110は波長が400nm以下の紫外線領域のみに感度を持ち、演算部が紫外線強度を補正するため、紫外線強度を正確に測定することができる。
【0166】
〔まとめ〕
本発明の態様1における受光器は、入射光の強度に応じて光電流を流す第1及び第2受光素子と、第1波長領域の光の透過率が上記第1波長領域外の光の透過率より低い光学フィルタと、を備えた受光器であって、上記第1受光素子には、上記光学フィルタを透過した上記入射光が入射し、上記第1及び第2受光素子は、隣接配置され、上記第1波長領域の光に感度を有する第1状態と、上記第1波長領域外の光に感度を有する第2状態とに切り替えでき、上記第2状態である上記第1及び第2受光素子の光電流の和である第1値と、上記第2状態である上記第1又は第2受光素子の光電流である第2値との比を上記入射光の偏りの値として算出することを特徴とする。
【0167】
上記構成によれば、上記第1及び第2受光素子は、上記第1波長領域外の光に感度を有する第2状態で、上記入射光の強度を測定できる。このため、第1波長領域外における、第1及び第2受光素子への入射光の偏りを算出することができる。
【0168】
また、上記第1及び第2受光素子は、上記第1波長領域の光に感度を有する第1状態と、上記第1波長領域外の光に感度を有する第2状態とで、上記入射光の強度を測定できる。このため、測定用の受光素子とは別に、上記入射光の偏りを測定するための受光素子を設ける必要がない。これにより、コストの増加や受光素子の形成面積の増加を抑制することができる。
【0169】
また、上記第1値は、第2状態である上記第1及び第2受光素子の光電流の和であるので、第1及び第2受光素子への入射光の偏りを平均化している。上記第1値はさらに、第1及び第2受光素子の感度のばらつき、及び上記光学フィルタの影響(第1波長領域外)を平均化している。したがって、上記入射光の偏りの値は、第1及び第2受光素子の感度のばらつき、及び上記光学フィルタの影響(第1波長領域外)を含む。つまり、第1及び第2受光素子への入射光の偏り、第1及び第2受光素子の感度のばらつき、及び光学フィルタの影響を併せて算出することができる。
【0170】
さらに、第1波長領域外における、第1及び第2受光素子への入射光の強度を測定することができる。
【0171】
本発明の態様2は、態様1に記載の受光器であって、第1の期間において、上記第1受光素子は上記第1波長領域外の第2波長領域の光に対して感度を有し、上記第2受光素子は上記第1波長領域外の第3波長領域の光に対して感度を有し、第2の期間において、上記第1受光素子は上記第3波長領域の光に対して感度を有し、上記第2受光素子は上記第2波長領域の光に対して感度を有し、第3の期間において、上記第1及び第2受光素子の少なくとも一方が上記第2波長領域の光に対して感度を有し、上記第1値が、上記第1の期間の上記第1受光素子及び上記第2の期間の上記第2受光素子の光電流の和であり、上記第2値が、上記第3の期間において上記第2波長領域の光に対して感度を有する、上記第3の期間の上記第1又は第2受光素子の光電流であることが好ましい。
【0172】
上記構成によれば、上記第1値は、第1の期間の第1受光素子及び第2の期間の第2受光素子の光電流の和であるので、第2波長領域における、第1及び第2受光素子への入射光の偏りを平均化している。上記第1値はさらに、第2波長領域における、第1及び第2受光素子の感度のばらつき、及び上記光学フィルタの影響(第2波長領域)を平均化している。したがって、上記入射光の偏りの値は、第1及び第2受光素子の感度のばらつき、及び上記光学フィルタの影響(第2波長領域)を含む。つまり、第2波長領域における、第1及び第2受光素子への入射光の偏り、第1及び第2受光素子の感度のばらつき、及び光学フィルタの影響を併せて算出することができる。
【0173】
さらに、第1及び第2の期間において、第2波長領域における、第1及び第2受光素子への入射光の強度を測定することができる。
【0174】
本発明の態様3は、態様1又は2に記載の受光器であって、上記第1状態である上記第1及び第2受光素子の上記光電流が、上記偏りの値に基づき補正されることが好ましい。
【0175】
上記構成によれば、各受光素子へ光が偏って入射した場合でも、第1波長領域の光の強度を測定するために必要な各状態の検出結果(光量)を、第1波長領域外の光の強度の測定から、補正することが可能となる。したがって、各受光素子へ光が一様に入射か否かに関らず、第1波長領域の光の強度をより精度よく測定することができる。
【0176】
また、第1及び第2受光素子の感度のばらつき、及び上記光学フィルタの影響(第1波長領域外)がある場合でも、第1波長領域の光の強度を測定するために必要な各状態の検出結果(光量)を、第1波長領域外の光の強度の測定から、補正することが可能となる。したがって、各受光素子の感度が一様か否かに関らず、また、第1波長領域外における上記光学フィルタの影響に関らず、第1波長領域の光の強度をより精度よく測定することができる。
【0177】
本発明の態様4は、態様3に記載の受光器であって、上記偏りの値に基づく補正が、上記第1状態である上記第1及び第2受光素子の上記光電流に、上記偏りの値の逆数を掛けることであることが好ましい。
【0178】
上記構成によれば、第1波長領域の光の強度の補正を容易にすることができる。
【0179】
本発明の態様5は、態様1〜4の何れか1態様に記載の受光器であって、上記第1及び第2受光素子は、2つ以上のフォトダイオードを備えており、上記第1及び第2状態の切り替えは、上記2つ以上のフォトダイオードの選択的駆動によって行われることが好ましい。
【0180】
上記構成によれば、第1及び第2受光素子は、半導体製造工程で製造できる。
【0181】
本発明の態様6は、態様1〜5の何れか1態様に記載の受光器であって、上記第1及び第2受光素子が、同一の層構造を有することが好ましい。
【0182】
上記構成によれば、製造工程が簡単になり、製造コストを低減することができる。
【0183】
本発明の態様7は、態様6に記載の受光器であって、上記層構造は、第1層と第2層と第3層と基板との4層構造であることが好ましい。
【0184】
上記構成によれば、第1及び第2受光素子は、第1層と第2層と,第2層と第3層と,及び第3層と基板との3つのフォトダイオード接合を同一の受光面に備えることができる。これにより第1及び第2受光素子が小型化し、本態様の受光器を備える機器の設計の自由度が増し、デザイン性が向上する。
【0185】
本発明の態様8は、態様7に記載の受光器であって、上記4層構造が、N型拡散層とP型ウェル層とN型ウェル層とP型基板、又は、P型拡散層とN型ウェル層とP型ウェル層とN型基板であることが好ましい。
【0186】
上記構成によれば、半導体製造工程での製造を行うことができる。
【0187】
本発明の態様9は、態様7又は8に記載の受光器であって、上記第1状態の時の上記第1及び第2受光素子の光電流は、上記第1層と上記第2層とのフォトダイオード接合から、取り出すことが好ましい。
【0188】
上記構成によれば、第1波長領域を波長の短い波長領域にすることができる。
【0189】
本発明の態様10は、態様7〜9の何れか1態様に記載の受光器であって、上記第2状態の第1及び第2受光素子の光電流は、上記第2層と上記第3層とのフォトダイオード接合、及び/又は、上記第3層と上記基板とのフォトダイオード接合から、取り出すことが好ましい。
【0190】
上記構成によれば、第2及び第3波長領域を波長の長い波長領域にすることができる。
【0191】
本発明の態様11は、態様1〜10の何れか1態様に記載の受光器であって、上記第1波長領域が、紫外線領域であることが好ましい。
【0192】
上記構成によれば、紫外線の強度を測定することができる。
【0193】
本発明の態様12は、態様2に記載の受光器であって、上記第2波長領域が、可視光領域及び/又は赤外線領域であり、上記第3波長領域が、可視光領域及び/又は赤外線領域であり、上記第2及び第3波長領域が互いに異なる波長領域であることが好ましい。
【0194】
上記構成によれば、紫外線,可視光,及び赤外線の強度を測定することができる。
【0195】
本発明の態様13は、態様1〜12の何れか1態様に記載の受光器であって、複数の上記第1及び第2受光素子が、対角に配置されていることが好ましい。
【0196】
上記構成によれば、第1及び第2受光素子が交互に配置されているため、入射光の入射の偏りを平均化できる。
【0197】
本発明の態様14は、態様1〜13の何れか1態様に記載の受光器であって、上記光学フィルタが、上記第1受光素子の受光面の全部又は一部を覆っていることが好ましい。
【0198】
上記構成によれば、上記光学フィルタが、上記第1受光素子の受光面の全部を覆わなくてもよいので、受光器の設計の自由度を増すことができる。
【0199】
本発明の態様15における携帯型電子機器は、態様1〜14の何れか1態様に記載の受光器を備えることが好ましい。
【0200】
上記構成によれば、コストの増加や受光素子の形成面積の増加を抑制できるとともに、入射光の偏りを算出できる携帯型電子機器を実現できる。
【0201】
尚、本発明は、上述した各実施形態に限定されるものではなく、請求項に示した範囲で種々の変更が可能であり、異なる実施形態にそれぞれ開示された技術的手段を適宜組み合わせて得られる実施形態についても本発明の技術的範囲に含まれる。さらに、各実施形態にそれぞれ開示された技術的手段を組み合わせることにより、新しい技術的特徴を形成することができる。
【産業上の利用可能性】
【0202】
本発明は、スマートフォン等の携帯型電子機器に搭載する受光器として好適に用いることができる。
【符号の説明】
【0203】
1、101、201 受光器
10、110、210 受光部
11、111 UVカットフィルタ(光学フィルタ)
12 遮蔽部
20、120 センサ回路部
22 充電回路
23 比較回路
24 制御回路
25 放電回路
241 フリップフロップ、FF
242 カウンタ
Iin、Iin1、Iin2 光電流
IN 入力端子
ADC、ADC1、ADC2 A/Dコンバーター
ADCOUNT、ADCOUNT1、ADCOUNT2 デジタル出力値
N N型拡散層(第1層)
N‐Well N型ウェル層(第3層)
OUT 出力端子
PD 受光素子
PD1 第1受光素子
PD2 第2受光素子
PD_clear、PD_ir、PD_uv、PD_vis フォトダイオード(フォトダイオード接合)
P‐Sub P型基板(基板)
P‐Well P型ウェル層(第2層)
P+ P型拡散層
SW1〜5、SW11〜12、SW21〜22、SW31〜32 スイッチ
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12
図13
図14
図15
図16
図17
図18
図19
図20
図21
図22
図23
図24
図25