(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
前記目標圧設定部は、前記指示目標圧を前記操作目標圧よりも前記実圧側に近づける際の前記操作目標圧と前記実圧との偏差が大きいほど、前記指示目標圧をより一層前記実圧側に近づける請求項1に記載の車両用制動装置。
前記目標圧設定部は、前記実圧が前記指示目標圧に近づく変化を開始した時点を起点として第1時間だけ遡った時点からの前記操作目標圧の変化又は同操作目標圧の変化に相関する変化を、前記実圧が前記指示目標圧に近づく変化を開始した時点からの前記指示目標圧の変化として設定する請求項1〜3の何れか一項に記載の車両用制動装置。
前記目標圧設定部は、前記実圧が前記指示目標圧に近づく変化を開始した時点を起点として第1時間だけ遡った時点からの前記操作目標圧の変化又は同操作目標圧の変化に相関する変化を、前記実圧が前記指示目標圧に近づく変化を開始した時点からの前記指示目標圧の変化とした場合の当該指示目標圧の液圧値と、前記操作目標圧との偏差が第2差圧以下である場合に、前記操作目標圧を前記指示目標圧として設定する請求項4に記載の車両用制動装置。
前記目標圧設定部は、前記操作目標圧と前記実圧の偏差と前記第1差圧との比較を、前記操作目標圧の変化開始からそれに対応する前記実圧の変化開始までの時間に基づいて行う請求項1〜7の何れか一項に記載の車両用制動装置。
【発明を実施するための形態】
【0009】
以下、本発明の実施形態について図に基づいて説明する。なお、以下の各実施形態相互において、互いに同一もしくは均等である部分には、図中、同一符号を付してある。また、説明に用いる各図は概念図であり、各部の形状は必ずしも厳密なものではない場合がある。
【0010】
図1に示すように、本実施形態の車両用制動装置は、車輪5FR,5FL,5RR,5RLに液圧制動力を発生させる液圧制動力発生装置BFと、液圧制動力発生装置BFを制御するブレーキECU6と、を備えている。
【0011】
(液圧制動力発生装置)
液圧制動力発生装置BFは、
図1に示すように、マスタシリンダ1と、反力発生装置2と、第一制御弁22と、第二制御弁23と、サーボ圧発生装置4と、アクチュエータ53と、ホイールシリンダ541〜544と、各種センサ71〜76等により構成されている。
【0012】
(マスタシリンダ)
マスタシリンダ1は、ブレーキペダル10の操作量に応じて作動液(「フルード」に相当する)をアクチュエータ53に供給する部位であり、メインシリンダ11、カバーシリンダ12、入力ピストン13、第1マスタピストン14、および第2マスタピストン15等により構成されている。ブレーキペダル10は、運転手がブレーキ操作可能なブレーキ操作手段であれば良い。
【0013】
メインシリンダ11は、前方が閉塞されて後方に開口する有底略円筒状のハウジングである。メインシリンダ11の内周側の後方寄りに、内向きフランジ状に突出する内壁部111が設けられている。内壁部111の中央は、前後方向に貫通する貫通孔111aとされている。また、メインシリンダ11の内部の内壁部111よりも前方に、内径がわずかに小さくなっている小径部位112(後方)、113(前方)が設けられている。つまり、小径部位112、113は、メインシリンダ11の内周面から内向き環状に突出している。メインシリンダ11の内部には、小径部位112に摺接して軸方向に移動可能に第1マスタピストン14が配設されている。同様に、小径部位113に摺接して軸方向に移動可能に第2マスタピストン15が配設されている。
【0014】
カバーシリンダ12は、略円筒状のシリンダ部121、蛇腹筒状のブーツ122、およびカップ状の圧縮スプリング123で構成されている。シリンダ部121は、メインシリンダ11の後端側に配置され、メインシリンダ11の後側の開口に同軸的に嵌合されている。シリンダ部121の前方部位121aの内径は、内壁部111の貫通孔111aの内径よりも大とされている。また、シリンダ部121の後方部位121bの内径は、前方部位121aの内径よりも小とされている。
【0015】
防塵用のブーツ122は蛇腹筒状で前後方向に伸縮可能であり、その前側でシリンダ部121の後端側開口に接するように組み付けられている。ブーツ122の後方の中央には貫通孔122aが形成されている。圧縮スプリング123は、ブーツ122の周りに配置されるコイル状の付勢部材であり、その前側がメインシリンダ11の後端に当接し、後側はブーツ122の貫通孔122aに近接するように縮径されている。ブーツ122の後端および圧縮スプリング123の後端は、操作ロッド10aに結合されている。圧縮スプリング123は、操作ロッド10aを後方に付勢している。
【0016】
入力ピストン13は、ブレーキペダル10の操作に応じてカバーシリンダ12内を摺動するピストンである。入力ピストン13は、前方に底面を有し後方に開口を有する有底略円筒状のピストンである。入力ピストン13の底面を構成する底壁131は、入力ピストン13の他の部位よりも径が大きくなっている。入力ピストン13は、シリンダ部121の後方部位121bに軸方向に摺動可能かつ液密的に配置され、底壁131がシリンダ部121の前方部位121aの内周側に入り込んでいる。
【0017】
入力ピストン13の内部には、ブレーキペダル10に連動する操作ロッド10aが配設されている。操作ロッド10aの先端のピボット10bは、入力ピストン13を前側に押動できるようになっている。操作ロッド10aの後端は、入力ピストン13の後側の開口およびブーツ122の貫通孔122aを通って外部に突出し、ブレーキペダル10に接続されている。ブレーキペダル10が踏み込み操作されたときに、操作ロッド10aは、ブーツ122および圧縮スプリング123を軸方向に押動しながら前進する。操作ロッド10aの前進に伴い、入力ピストン13も連動して前進する。
【0018】
第1マスタピストン14は、メインシリンダ11の内壁部111に軸方向に摺動可能に配設されている。第1マスタピストン14は、前方側から順番に加圧筒部141、フランジ部142、および突出部143が一体となって形成されている。加圧筒部141は、前方に開口を有する有底略円筒状に形成され、メインシリンダ11の内周面との間に間隙を有し、小径部位112に摺接している。加圧筒部141の内部空間には、第2マスタピストン15との間にコイルばね状の付勢部材144が配設されている。付勢部材144により、第1マスタピストン14は後方に付勢されている。換言すると、第1マスタピストン14は、設定された初期位置に向けて付勢部材144により付勢されている。
【0019】
フランジ部142は、加圧筒部141よりも大径で、メインシリンダ11の内周面に摺接している。突出部143は、フランジ部142よりも小径で、内壁部111の貫通孔111aに液密に摺動するように配置されている。突出部143の後端は、貫通孔111aを通り抜けてシリンダ部121の内部空間に突出し、シリンダ部121の内周面から離間している。突出部143の後端面は、入力ピストン13の底壁131から離間し、その離間距離は変化し得るように構成されている。
【0020】
ここで、メインシリンダ11の内周面、第1マスタピストン14の加圧筒部141の前側(前端面、内周面)、および第2マスタピストン15の後側により、「第1マスタ室1D」が区画されている。また、メインシリンダ11の内周面(内周部)と小径部位112と内壁部111の前面、および第1マスタピストン14の外周面により、第1マスタ室1Dよりも後方の後方室が区画されている。第1マスタピストン14のフランジ部142の前端部および後端部は後方室を前後に区分しており、前側に「第二液圧室1C」が区画され、後側に「サーボ室(出力室)1A」が区画されている。さらに、メインシリンダ11の内周部、内壁部111の後面、シリンダ部121の前方部位121aの内周面(内周部)、第1マスタピストン14の突出部143(後端部)、および入力ピストン12の前端部により「第一液圧室1B」が区画されている。
【0021】
第2マスタピストン15は、メインシリンダ11内の第1マスタピストン14の前方側に、小径部位113に摺接して軸方向に移動可能に配置されている。第2マスタピストン15は、前方に開口を有する筒状の加圧筒部151、および加圧筒部151の後側を閉塞する底壁152が一体となって形成されている。底壁152は、第1マスタピストン14との間に付勢部材144を支承している。加圧筒部151の内部空間には、メインシリンダ11の閉塞された内底面111dとの間に、コイルばね状の付勢部材153が配設されている。付勢部材153により、第2マスタピストン15は後方に付勢されている。換言すると、第2マスタピストン15は、設定された初期位置に向けて付勢部材153により付勢されている。メインシリンダ11の内周面、内底面111d、および第2マスタピストン15により、「第2マスタ室1E」が区画されている。
【0022】
マスタシリンダ1には、内部と外部を連通させるポート11a〜11iが形成されている。ポート11aは、メインシリンダ11のうち内壁部111よりも後方に形成されている。ポート11bは、ポート11aと軸方向の同様の位置に、ポート11aに対向して形成されている。ポート11aとポート11bは、メインシリンダ11の内周面とシリンダ部121の外周面との間の環状空間を介して連通している。ポート11aおよびポート11bは、配管161に接続され、かつリザーバ171(低圧力源)に接続されている。
【0023】
また、ポート11bは、シリンダ部121および入力ピストン13に形成された通路18により第一液圧室1Bに連通している。通路18は入力ピストン13が前進すると遮断され、これによって第一液圧室1Bとリザーバ171とが遮断される。
【0024】
ポート11cは、内壁部111より後方かつポート11aよりも前方に形成され、第一液圧室1Bと配管162とを連通させている。ポート11dは、ポート11cよりも前方に形成され、サーボ室1Aと配管163とを連通させている。ポート11eは、ポート11dよりも前方に形成され、第二液圧室1Cと配管164とを連通させている。
【0025】
ポート11fは、小径部位112の両シール部材91、92の間に形成され、リザーバ172とメインシリンダ11の内部とを連通している。ポート11fは、第1マスタピストン14に形成された通路145を介して第1マスタ室1Dに連通している。通路145は、第1マスタピストン14が前進するとポート11fと第1マスタ室1Dが遮断される位置に形成されている。ポート11gは、ポート11fよりも前方に形成され、第1マスタ室1Dと配管51とを連通させている。
【0026】
ポート11hは、小径部位113の両シール部材93、94の間に形成され、リザーバ173とメインシリンダ11の内部とを連通させている。ポート11hは、第2マスタピストン15の加圧筒部151に形成された通路154を介して第2マスタ室1Eに連通している。通路154は、第2マスタピストン15が前進するとポート11hと第2マスタ室1Eが遮断される位置に形成されている。ポート11iは、ポート11hよりも前方に形成され、第2マスタ室1Eと配管52とを連通させている。
【0027】
また、マスタシリンダ1内には、適宜、Oリング等のシール部材(図面黒丸部分)が配置されている。シール部材91、92は、小径部位112に配置され、第1マスタピストン14の外周面に液密的に当接している。同様に、シール部材93、94は、小径部位113に配置され、第2マスタピストン15の外周面に液密的に当接している。また、入力ピストン13とシリンダ部121との間にもシール部材95、96が配置されている。
【0028】
ストロークセンサ71は、運転者によりブレーキペダル10が操作された操作量(ストローク)を検出するセンサであり、検出信号をブレーキECU6に送信する。ブレーキストップスイッチ72は、運転者によるブレーキペダル10の操作の有無を2値信号で検出するスイッチであり、検出信号をブレーキECU6に送信する。
【0029】
(反力発生装置)
反力発生装置2は、ブレーキペダル10が操作されたとき操作力に対抗する反力を発生する装置であり、ストロークシミュレータ21を主にして構成されている。ストロークシミュレータ21は、ブレーキペダル10の操作に応じて第一液圧室1Bおよび第二液圧室1Cに反力液圧を発生させる。ストロークシミュレータ21は、シリンダ211にピストン212が摺動可能に嵌合されて構成されている。ピストン212は圧縮スプリング213によって前方に付勢されており、ピストン212の前面側に反力液圧室214が形成される。反力液圧室214は、配管164およびポート11eを介して第二液圧室1Cに接続され、さらに、反力液圧室214は、配管164を介して第一制御弁22および第二制御弁23に接続されている。
【0030】
(第一制御弁)
第一制御弁22は、非通電状態で閉じる構造の電磁弁であり、ブレーキECU6により開閉が制御される。第一制御弁22は、配管164と配管162との間に接続されている。ここで、配管164はポート11eを介して第二液圧室1Cに連通し、配管162はポート11cを介して第一液圧室1Bに連通している。また、第一制御弁22が開くと第一液圧室1Bが開放状態になり、第一制御弁22が閉じると第一液圧室1Bが密閉状態になる。したがって、配管164および配管162は、第一液圧室1Bと第二液圧室1Cとを連通するように設けられている。
【0031】
第一制御弁22は通電されていない非通電状態で閉じており、このとき第一液圧室1Bと第二液圧室1Cとが遮断される。これにより、第一液圧室1Bが密閉状態になって作動液の行き場がなくなり、入力ピストン13と第1マスタピストン14とが一定の離間距離を保って連動する。また、第一制御弁22は通電された通電状態では開いており、このとき第一液圧室1Bと第二液圧室1Cとが連通される。これにより、第1マスタピストン14の進退に伴う第一液圧室1Bおよび第二液圧室1Cの容積変化が、作動液の移動により吸収される。
【0032】
圧力センサ73は、第二液圧室1Cおよび第一液圧室1Bの反力液圧を検出するセンサであり、配管164に接続されている。圧力センサ73は、第一制御弁22が閉状態の場合には第二液圧室1Cの圧力を検出し、第一制御弁22が開状態の場合には連通された第一液圧室1Bの圧力も検出することになる。圧力センサ73は、検出信号をブレーキECU6に送信する。
【0033】
(第二制御弁)
第二制御弁23は、非通電状態で開く構造の電磁弁であり、ブレーキECU6により開閉が制御される。第二制御弁23は、配管164と配管161との間に接続されている。ここで、配管164はポート11eを介して第二液圧室1Cに連通し、配管161はポート11aを介してリザーバ171に連通している。したがって、第二制御弁23は、第二液圧室1Cとリザーバ171との間を非通電状態で連通して反力液圧を発生させず、通電状態で遮断して反力液圧を発生させる。
【0034】
(サーボ圧発生装置)
サーボ圧発生装置4は、減圧弁41、増圧弁42、圧力供給部43、およびレギュレータ44等で構成されている。減圧弁41は、非通電状態で開く常開型の電磁弁(常開弁)であり、ブレーキECU6により流量(又は圧力)が制御される。減圧弁41の一方は配管411を介して配管161に接続され、減圧弁41の他方は配管413に接続されている。つまり、減圧弁41の一方は、配管411、161、およびポート11a、11bを介してリザーバ(低圧力源)171に連通している。減圧弁41は、閉弁することで、後述する第1パイロット室4Dから作動液が流出することを阻止する。なお、配管411は、リザーバ171ではなく、後述するリザーバ434に接続されていても良い。この場合、リザーバ434が低圧力源に相当する。また、リザーバ171とリザーバ434が同一のリザーバであっても良い。
【0035】
増圧弁42は、非通電状態で閉じる常閉型の電磁弁(常閉弁)であり、ブレーキECU6により流量(又は圧力)が制御されている。増圧弁42の一方は配管421に接続され、増圧弁42の他方は配管422に接続されている。
【0036】
ここで、減圧弁41に用いられる常開型の電磁弁の一例を、模式的に説明する。電磁弁(減圧弁41)は、
図2に示すように、弁部材aと、弁座bと、弁部材aを開弁側(弁座bから離れる方向)に付勢するスプリングcと、電流が導通することで弁部材aを閉弁側に押す電磁駆動力を発生するコイル(ソレノイド)dと、を備えている。コイルdに流れる電流が閉弁電流未満の場合には、スプリングcの付勢力により弁部材aと弁座bとが離間しており、電磁弁は開弁状態となっている。コイルdに閉弁電流以上の電流が流れると、コイルdに発生する弁部材aを閉弁側に押す電磁駆動力が、スプリングcの付勢力と、電磁弁の出入口間の差圧に応じた差圧作用力との和よりも大きくなり、弁部材aが弁座bに当接し、電磁弁が閉弁する。閉弁電流(閉弁させるための最小の制御電流)は、電磁弁の出入口間の差圧で決まる。
【0037】
このように、減圧弁41及び増圧弁42は、コイルdに電流を流すことにより発生する電磁駆動力と、スプリングcの付勢力と、電磁弁の出入口間の差圧に応じた差圧作用力とのつりあい関係により開閉が決まり、コイルdに供給される電流(制御電流)により制御される。なお、付勢力と電磁駆動力の向きは、電磁弁の構造(常開弁や常閉弁等)により様々である。
【0038】
圧力供給部43は、レギュレータ44に主に高圧の作動液を供給する部位である。圧力供給部43は、アキュムレータ(高圧力源)431、液圧ポンプ432、モータ433、およびリザーバ434等で構成されている。
【0039】
アキュムレータ431は、高圧の作動液を蓄積するタンクである。アキュムレータ431は、配管431aによりレギュレータ44および液圧ポンプ432に接続されている。液圧ポンプ432は、モータ433によって駆動され、リザーバ434に貯留された作動液を、アキュムレータ431に圧送する。配管431aに設けられた圧力センサ75は、アキュムレータ431のアキュムレータ液圧を検出し、検出信号をブレーキECU6に送信する。アキュムレータ液圧は、アキュムレータ431に蓄積された作動液の蓄積量に相関する。
【0040】
アキュムレータ液圧が所定値以下に低下したことが圧力センサ75によって検出されると、ブレーキECU6からの指令に基づいてモータ433が駆動される。これにより、液圧ポンプ432は、アキュムレータ431に作動液を圧送して、アキュムレータ液圧を所定値以上に回復する。
【0041】
レギュレータ(調圧装置)44は、
図3に示すように、シリンダ441、ボール弁442、付勢部443、弁座部444、制御ピストン445、およびサブピストン446等で構成されている。
【0042】
シリンダ441は、一方(図面右側)に底面をもつ略有底円筒状のシリンダケース441aと、シリンダケース441aの開口(図面左側)を塞ぐ蓋部材441bと、で構成されている。シリンダケース441aには、内部と外部を連通させる複数のポート4a〜4hが形成されている。蓋部材441bも、略有底円筒状に形成されており、筒状部の複数のポート4a〜4hに対向する各部位に各ポートが形成されている。
【0043】
ポート4aは、配管431aに接続されている。ポート4bは、配管422に接続されている。ポート4cは、配管163に接続されている。配管163は、サーボ室1Aと出力ポート4cとを接続している。ポート4dは、配管414を介して配管161に接続されている。ポート4eは、配管424に接続され、さらにリリーフバルブ423を経由して配管422に接続されている。ポート4fは、配管413に接続されている。ポート4gは、配管421に接続されている。ポート4hは、配管51から分岐した配管511に接続されている。なお、配管414は、配管161ではなく、リザーバ434に接続されていても良い。
【0044】
ボール弁442は、ボール型の弁であり、シリンダ441内部のシリンダケース441aの底面側(以下、シリンダ底面側とも称する)に配置されている。付勢部443は、ボール弁442をシリンダケース441aの開口側(以下、シリンダ開口側とも称する)に付勢するバネ部材であって、シリンダケース441aの底面に設置されている。弁座部444は、シリンダケース441aの内周面に設けられた壁部材であり、シリンダ開口側とシリンダ底面側を区画している。弁座部444の中央には、区画したシリンダ開口側とシリンダ底面側を連通させる貫通路444aが形成されている。弁座部444は、付勢されたボール弁442が貫通路444aを塞ぐ形で、ボール弁442をシリンダ開口側から保持している。貫通路444aのシリンダ底面側の開口部には、ボール弁442が離脱可能に着座(当接)する弁座面444bが形成されている。
【0045】
ボール弁442、付勢部443、弁座部444、およびシリンダ底面側のシリンダケース441aの内周面で区画された空間を「第1室4A」とする。第1室4Aは、作動液で満たされており、ポート4aを介して配管431aに接続され、ポート4bを介して配管422に接続されている。
【0046】
制御ピストン445は、略円柱状の本体部445aと、本体部445aよりも径が小さい略円柱状の突出部445bとからなっている。本体部445aは、シリンダ441内において、弁座部444のシリンダ開口側に、同軸的且つ液密的に、軸方向に摺動可能に配置されている。本体部445aは、図示しない付勢部材によりシリンダ開口側に付勢されている。本体部445aのシリンダ軸方向略中央には、両端が本体部445a周面に開口した径方向(図面上下方向)に延びる通路445cが形成されている。通路445cの開口位置に対応したシリンダ441の一部の内周面は、ポート4dが形成されているとともに、凹状に窪んでいる。この窪んだ空間を「第3室4C」とする。
【0047】
突出部445bは、本体部445aのシリンダ底面側端面の中央からシリンダ底面側に突出している。突出部445bの径は、弁座部444の貫通路444aよりも小さい。突出部445bは、貫通路444aと同軸上に配置されている。突出部445bの先端は、ボール弁442からシリンダ開口側に所定間隔離れている。突出部445bには、突出部445bのシリンダ底面側端面中央に開口したシリンダ軸方向に延びる通路445dが形成されている。通路445dは、本体部445a内にまで延伸し、通路445cに接続している。
【0048】
本体部445aのシリンダ底面側端面、突出部445bの外周面、シリンダ441の内周面、弁座部444、およびボール弁442によって区画された空間を「第2室4B」とする。第2室4Bは、突出部445bとボール弁442とが当接していない状態で、通路445d,445c、および第3室4Cを介してポート4d、4eに連通している。
【0049】
サブピストン446は、サブ本体部446aと、第1突出部446bと、第2突出部446cとからなっている。サブ本体部446aは、略円柱状に形成されている。サブ本体部446aは、シリンダ441内において、本体部445aのシリンダ開口側に、同軸的且つ液密的、軸方向に摺動可能に配置されている。
【0050】
第1突出部446bは、サブ本体部446aより小径の略円柱状であり、サブ本体部446aのシリンダ底面側の端面中央から突出している。第1突出部446bは、本体部445aのシリンダ開口側端面に当接している。第2突出部446cは、第1突出部446bと同形状であり、サブ本体部446aのシリンダ開口側の端面中央から突出している。第2突出部446cは、蓋部材441bと当接している。
【0051】
サブ本体部446aのシリンダ底面側の端面、第1突出部446bの外周面、制御ピストン445のシリンダ開口側の端面、およびシリンダ441の内周面で区画された空間を「第1パイロット室4D」とする。第1パイロット室4Dは、ポート4fおよび配管413を介して減圧弁41に連通し、ポート4gおよび配管421を介して増圧弁42に連通している。
【0052】
一方、サブ本体部446aのシリンダ開口側の端面、第2突出部446cの外周面、蓋部材441b、およびシリンダ441の内周面で区画された空間を「第2パイロット室4E」とする。第2パイロット室4Eは、ポート4hおよび配管511、51を介してポート11gに連通している。各室4A〜4Eは、作動液で満たされている。圧力センサ74は、サーボ室1Aに供給されるサーボ圧を検出するセンサであり、配管163に接続されている。圧力センサ74は、検出信号をブレーキECU6に送信する。
【0053】
このように、レギュレータ44は、第1パイロット室4Dの圧力(「パイロット圧」とも称する)に対応する力とサーボ圧に対応する力との差によって駆動される制御ピストン445を有し、制御ピストン445の移動に伴って第1パイロット室4Dの容積が変化し、第1パイロット室4Dに流入出する液体の流量が増大すると、パイロット圧に対応する力とサーボ圧に対応する力とが釣り合っている平衡状態における制御ピストン445の位置を基準とする同制御ピストン445の移動量が増大して、サーボ室1Aに流入出する液体の流量が増大するように構成されている。
【0054】
レギュレータ44は、アキュムレータ431から第1パイロット室4Dに流入する液体の流量が増大するほど、第1パイロット室4Dが拡大するとともにアキュムレータ431からサーボ室1Aに流入する液体の流量が増大し、第1パイロット室4Dからリザーバ171に流出する液体の流量が増大するほど、第1パイロット室4Dが縮小するとともにサーボ室1Aからリザーバ171に流出する液体の流量が増大するように構成されている。
【0055】
また、制御ピストン445は、第1パイロット室4Dに面する壁部にダンパ装置(図示せず)を有している。ダンパ装置は、ストロークシミュレータのような構成であり、付勢部材で第1パイロット室4Dに向けて付勢されたピストン部を有する。ダンパ装置が設けられることで、第1パイロット室4Dの剛性はパイロット圧に応じて変化する。
【0056】
(アクチュエータ)
マスタシリンダ液圧(マスタ圧)を発生する第1マスタ室1D、第2マスタ室1Eには、配管51、52、アクチュエータ53を介してホイールシリンダ541〜544が連通されている。ホイールシリンダ541〜544は、車輪5FR〜5RLのブレーキを構成している。具体的には、第1マスタ室1Dのポート11g及び第2マスタ室1Eのポート11iには、それぞれ配管51、52を介して、アクチュエータ53が連結されている。アクチュエータ53には、車輪5FR〜5RLを制動するブレーキを作動させるホイールシリンダ541〜544が連結されている。
【0057】
液圧制動力発生装置BFは、車輪速度を検出する車輪速度センサ76を各輪に備えている。車輪速度センサ76により検出された車輪速度(車速)を示す検出信号はブレーキECU6に出力されるようになっている。
【0058】
このように構成されたアクチュエータ53において、ブレーキECU6は、マスタ圧、車輪速度の状態、及び前後加速度に基づき、各保持弁、減圧弁の開閉を切り換え制御し、モータを必要に応じて作動して各ホイールシリンダ541〜544に付与するブレーキ液圧すなわち各車輪5FR〜5RLに付与する制動力を調整するABS(アンチロックブレーキシステム)制御を実行する。アクチュエータ53は、マスタシリンダ1から供給された作動液を、ブレーキECU6の指示に基づいて、量やタイミングを調整して、ホイールシリンダ541〜544に供給する装置である。
【0059】
後述する「ブレーキ制御」では、サーボ圧発生装置4のアキュムレータ431から送出された液圧が増圧弁42及び減圧弁41によって制御されてサーボ圧がサーボ室1Aに発生することにより、第1マスタピストン14及び第2マスタピストン15が前進して第1マスタ室1D及び第2マスタ室1Eが加圧される。第1マスタ室1D及び第2マスタ室1Eの液圧はポート11g、11iから配管51、52及びアクチュエータ53を経由してホイールシリンダ541〜544へマスタ圧として供給され、車輪5FR〜5RLに液圧制動力が付与される。
【0060】
(ブレーキECU6)
ブレーキECU6は、電子制御ユニットであり、マイクロコンピュータを有している。マイクロコンピュータは、バスを介してそれぞれ接続された入出力インターフェース、CPU、RAM、ROM、不揮発性メモリー等の記憶部を備えている。
【0061】
ブレーキECU6は、各電磁弁22、23、41、42、及びモータ433等を制御するため、各種センサ71〜76と接続されている。ブレーキECU6には、ストロークセンサ71から運転者によりブレーキペダル10の操作量(ストローク量)が入力され、ブレーキストップスイッチ72から運転者によるブレーキペダル10の操作の有無が入力され、圧力センサ73から第二液圧室1Cの反力液圧又は第一液圧室1Bの圧力(又は反力液圧)が入力され、圧力センサ74からサーボ室1Aに供給されるサーボ圧が入力され、圧力センサ75からアキュムレータ431のアキュムレータ液圧が入力され、車輪速度センサ76から各車輪5FR,5FL,5RR,5RLの速度が入力される。圧力センサ73の圧力は、ブレーキペダル10に対する操作力(以下「ペダル操作力」と称する)に対応する。
【0062】
(ブレーキ制御)
ここで、ブレーキECU6のブレーキ制御(通常のブレーキ制御)について説明する。ブレーキ制御は、通常の液圧制動力の制御である。すなわち、ブレーキECU6は、第一制御弁22に通電して開弁し、第二制御弁23に通電して閉弁した状態とする。第二制御弁23が閉状態となることで第二液圧室1Cとリザーバ171とが遮断され、第一制御弁22が開状態となることで第一液圧室1Bと第二液圧室1Cとが連通する。このように、ブレーキ制御は、第一制御弁22を開弁させ、第二制御弁23を閉弁させた状態で、減圧弁41及び増圧弁42を制御してサーボ室1Aのサーボ圧を制御するモードである。減圧弁41及び増圧弁42は、第1パイロット室4Dに流入出させる作動液の流量を調整する弁装置ともいえる。このブレーキ制御において、ブレーキECU6は、ストロークセンサ71で検出されたブレーキペダル10の操作量(入力ピストン13の移動量)またはブレーキペダル10の操作力から、運転者の要求制動力を算出する。そして、要求制動力に基づいて目標サーボ圧(「指示目標圧」に相当する)が設定され、圧力センサ74で測定されたサーボ圧である実サーボ圧(「実圧」に相当する)を目標サーボ圧に近づけるように減圧弁41及び増圧弁42が制御される。通常のブレーキ制御では、サーボ圧について、ブレーキ操作に応じて決定される「操作目標圧」が目標サーボ圧として設定される。サーボ圧は、サーボ室1A内の作動液の液圧(フルードの液圧)である。
【0063】
詳細に説明すると、ブレーキペダル10が踏まれていない状態では、上記のような状態、すなわちボール弁442が弁座部444の貫通路444aを塞いでいる状態となる。また、減圧弁41は開状態、増圧弁42は閉状態となっている。つまり、第1室4Aと第2室4Bは隔離されている。
【0064】
第2室4Bは、配管163を介してサーボ室1Aに連通し、互いに同圧力に保たれている。第2室4Bは、制御ピストン445の通路445c、445dを介して第3室4Cに連通している。したがって、第2室4B及び第3室4Cは、配管414、161を介してリザーバ171に連通している。第1パイロット室4Dは、一方が増圧弁42で塞がれ、他方が減圧弁41を介してリザーバ171に連通している。第1パイロット室4Dと第2室4Bとは同圧力に保たれる。第2パイロット室4Eは、配管511、51を介して第1マスタ室1Dに連通し、互いに同圧力に保たれる。
【0065】
この状態から、ブレーキペダル10が踏まれると、ブレーキECU6は、目標サーボ圧に基づいて、減圧弁41及び増圧弁42を制御する。すなわち、ブレーキECU6は、減圧弁41を閉じる方向に制御し、増圧弁42を開ける方向に制御する。
【0066】
増圧弁42が開くことでアキュムレータ431と第1パイロット室4Dとが連通する。減圧弁41が閉じることで、第1パイロット室4Dとリザーバ171とが遮断される。アキュムレータ431から供給される高圧の作動液により、第1パイロット室4Dの圧力を上昇させることができる。第1パイロット室4Dの圧力が上昇することで、制御ピストン445がシリンダ底面側に摺動する。これにより、制御ピストン445の突出部445b先端がボール弁442に当接し、通路445dがボール弁442により塞がれる。そして、第2室4Bとリザーバ171とは遮断される。
【0067】
さらに、制御ピストン445がシリンダ底面側に摺動することで、突出部445bによりボール弁442がシリンダ底面側に押されて移動し、ボール弁442が弁座面444bから離間する。これにより、第1室4Aと第2室4Bは弁座部444の貫通路444aにより連通する。第1室4Aには、アキュムレータ431から高圧の作動液が供給されており、連通により第2室4Bの圧力が上昇する。なお、ボール弁442の弁座面444bからの離間距離が大きくなる程、作動液の流路が大きくなり、ボール弁442の下流の流路の液圧が高くなる。つまり、第1パイロット室4Dの圧力(パイロット圧)が大きくなる程、制御ピストン445の移動距離が大きくなり、ボール弁442の弁座面444bからの離間距離が大きくなり、第2室4Bの液圧(サーボ圧)が高くなる。
【0068】
ブレーキECU6は、ストロークセンサ71で検知された入力ピストン13の移動量(ブレーキペダル10の操作量)が大きくなる程、第1パイロット室4Dのパイロット圧が高くなるように、増圧弁42下流の流路が大きくなるように増圧弁42を制御するとともに、減圧弁41下流の流路が小さくなるように減圧弁41を制御する。つまり、入力ピストン13の移動量(ブレーキペダル10の操作量)が大きくなる程、パイロット圧が高くなり、サーボ圧も高くなる。サーボ圧は、圧力センサ74により取得でき、パイロット圧に換算することができる。
【0069】
第2室4Bの圧力上昇に伴って、それに連通するサーボ室1Aの圧力も上昇する。サーボ室1Aの圧力上昇により、第1マスタピストン14が前進し、第1マスタ室1Dの圧力が上昇する。そして、第2マスタピストン15も前進し、第2マスタ室1Eの圧力が上昇する。第1マスタ室1Dの圧力上昇により、高圧の作動液が後述するアクチュエータ53及び第2パイロット室4Eに供給される。第2パイロット室4Eの圧力は上昇するが、第1パイロット室4Dの圧力も同様に上昇しているため、サブピストン446は移動しない。このように、アクチュエータ53に高圧(マスタ圧)の作動液が供給され、摩擦ブレーキが作動して車両が制動される。「ブレーキ制御」において第1マスタピストン14を前進させる力は、サーボ圧に対応する力に相当する。
【0070】
ブレーキ操作を解除する場合、反対に、減圧弁41を開状態とし、増圧弁42を閉状態として、リザーバ171と第1パイロット室4Dとを連通させる。これにより、制御ピストン445が後退し、ブレーキペダル10を踏む前の状態に戻る。
【0071】
本実施形態の通常のブレーキ制御は、ブレーキペダル10の操作及びストロークに応じて目標サーボ圧を設定し、サーボ圧が目標サーボ圧に達するように、減圧弁41及び増圧弁42を制御してパイロット圧を変化させるフィードバック制御である。通常のブレーキ制御において、目標サーボ圧は、予め設定されたマップ等に基づいて設定される。また、本実施形態において、上述のとおり、減圧弁41及び増圧弁42は、出入口間の差圧によって開弁電流又は閉弁電流が変化する電磁弁である。
【0072】
また、ブレーキECU6では、目標サーボ圧に対して所定の不感帯が設定されている。ブレーキECU6は、液圧制御を行うにあたり、実サーボ圧が不感帯の範囲内に入ると実質的に目標サーボ圧に達したものと認識する。このような不感帯を設定することで、目標サーボ圧を一点に設定する場合よりも液圧制御のハンチングを抑制することができる。
【0073】
ブレーキECU6は、ブレーキ制御において、目標サーボ圧と実サーボ圧との偏差が不感帯の範囲外にある場合には当該偏差を不感帯の範囲に収めるように実サーボ圧を制御し、目標サーボ圧と実サーボ圧との偏差が不感帯の範囲にある場合には実サーボ圧を保持するように実サーボ圧を制御する。ブレーキECU6は、圧力センサ74の値を監視しながら減圧弁41及び増圧弁42を制御するフィードバック制御を行っている。
【0074】
ブレーキECU6は、実サーボ圧が不感帯の範囲外で且つ目標サーボ圧よりも小さい場合、実サーボ圧を目標サーボ圧に向けて増大させる「増圧モード」となる。また、ブレーキECU6は、実サーボ圧が不感帯の範囲外で且つ目標サーボ圧よりも大きい場合、実サーボ圧を目標サーボ圧に向けて減少させる「減圧モード」となる。ブレーキECU6は、実サーボ圧が不感帯の範囲内にある場合、実サーボ圧を保持する「保持モード」となる。具体例を挙げると、ブレーキECU6は、増圧モードにおいては増圧弁42を開弁させ減圧弁41を閉弁させ、減圧モードにおいては増圧弁42を閉弁させ減圧弁41を開弁させ、保持モードにおいては増圧弁42及び減圧弁41を閉弁させる。
【0075】
(フィーリング悪化抑制制御)
ブレーキECU6は、上記のような通常のブレーキ制御の他に、所定条件下においてフィーリング悪化抑制制御を実行する。以下、フィーリング悪化抑制制御の一例について説明する。ブレーキECU6は、機能として、液圧制御部61と、目標圧設定部62と、制限部63と、制限設定部64と、を備えている。液圧制御部61は、目標圧設定部62で設定された目標サーボ圧に基づき、実サーボ圧を目標サーボ圧に近づけるフィードバック制御を実行する。液圧制御部61は、制御対象の各部に指示を送信する。実サーボ圧は、圧力センサ74の検出値から取得される。ここで、目標サーボ圧とは、ブレーキECU6(目標圧設定部62)が設定した、その時点での最終的な目標圧である。一方、操作目標圧は、ブレーキ操作に対応した目標圧である。操作目標圧は、例えば、記録されたマップ等に基づき、ブレーキペダル10の操作(ストロークセンサ71の検出値)とペダル操作力とに応じて決定される目標圧である。上記のような通常のブレーキ制御において、目標サーボ圧は、操作目標圧に設定される。
【0076】
目標圧設定部62は、操作目標圧と実サーボ圧との偏差(「制御偏差」とも称する)が第1差圧以下である場合、及び/又は実サーボ圧が操作目標圧に近づいていない場合、通常のブレーキ制御が実行されるように、操作目標圧を目標サーボ圧に設定する。そして、目標圧設定部62は、制御偏差が第1差圧よりも大きく、且つ、実サーボ圧が操作目標圧に近づいている場合に、操作目標圧よりも実サーボ圧側に目標サーボ圧を設定する。
【0077】
具体的に、本実施形態の目標圧設定部62は、実サーボ圧が操作目標圧に近づく変化を開始した時点を起点として巻き戻し時間(「第1時間」に相当する)(ディレイ時間)だけ遡った時点からの操作目標圧の変化又は同操作目標圧の変化に相関する変化を、実サーボ圧が操作目標圧に近づく変化を開始した時点からの目標サーボ圧の変化として設定する。つまり、目標圧設定部62は、巻き戻し時間を設定し、現時点からの目標サーボ圧の油圧勾配が、巻き戻し時間前の操作目標圧の油圧勾配になるように、目標サーボ圧を設定する。このように、目標圧設定部62は、目標サーボ圧の油圧勾配を巻き戻し時間前の操作目標圧の油圧勾配に設定する。
【0078】
制御偏差は、例えばブレーキ操作状態が変化した際、実サーボ圧が変化しなければ、時間の経過とともに拡大する。巻き戻し時間前の操作目標圧は、時間が経過した現時点の操作目標圧よりも実サーボ圧に近い値である。つまり、目標圧設定部62は、所定条件が満たされた場合に、目標サーボ圧を巻き戻し時間前の操作目標圧に設定することで、目標サーボ圧を現時点の操作目標圧よりも実サーボ圧側に設定する。また、目標圧設定部62は、現時点の操作目標圧と巻き戻し時間前の操作目標圧との差が、予め設定された巻き戻し終了閾値(「第2差圧」に相当する)以下の場合、操作目標圧を目標サーボ圧に設定する(通常のブレーキ制御に戻る)。
【0079】
本実施形態において、目標圧設定部62は、制御偏差が第1差圧より大きいか否かの判定を、操作目標圧の油圧勾配と、当該油圧勾配が設定されてから実サーボ圧が反応するまでの時間とに基づいて行っている。これにより、目標圧設定部62は、制御偏差と第1差圧との比較を容易に実行することができる。なお、制御偏差と第1差圧の大小の判定方法は、本実施形態の判定方法以外の方法でも良い。例えば、目標圧設定部62は、任意の間隔で、実際に操作目標圧と実サーボ圧(圧力センサ74の検出値)とを比較し、両者の差と第1差圧とを比較しても良い。
【0080】
制限部63は、目標圧設定部62が設定する巻き戻し時間を、制限設定部64が設定する最大巻き戻し時間(「第2時間」に相当する)以下に制限する。制限設定部64は、車両の車速が低いほど、最大巻き戻し時間を長くする。また、制限設定部64は、目標サーボ圧を操作目標圧よりも実サーボ圧側に近づける際の目標サーボ圧と実サーボ圧との偏差が大きいほど、最大巻き戻し時間を短くする。本実施形態のフィーリング悪化抑制制御は、「巻き戻し時間設定処理」と「目標圧ディレイ制御」で構成されている。目標圧ディレイ制御とは、具体的には後述するが、巻き戻し時間設定処理で設定した時間だけ前の操作目標圧に基づいてブレーキ制御をすることである。目標圧ディレイ制御は、過去の操作目標圧に基づいてブレーキ制御する制御ともいえる。
【0081】
まず、ブレーキECU6による巻き戻し時間設定処理について、
図4〜
図6を参照して説明する。
図6に示すように、目標圧設定部62は、まず、油圧制御が遅れる状況か否かを判定する(S101)。油圧制御が遅れる状況とは、例えば、ブレーキ制御が開始されたときや、制御モードが変更されたとき(ブレーキ操作が変更されたとき)である。つまり、目標圧設定部62は、現在の状況が、ブレーキ制御開始時又は制御モード変更時であるか否かを判定する。
【0082】
レギュレータ44において、制御ピストン445はアイドル領域(無効ストローク領域)を有し、制御ピストン445の駆動とボール弁442の開閉との間に反応のずれが生じる。これが油圧制御の遅れとして現れる。遅れ状況としては、例えば、ブレーキ操作が開始された際(ブレーキ制御開始時)、制御ピストン445が駆動されるが、アイドル領域の分、アイドル詰め動作が発生し、その間は実サーボ圧に変化が出ない。このように、レギュレータ44を備える車両用制動装置では、電磁弁出力(指示)に対して制御油圧が発生しない領域があり、この領域での動作において制御偏差(遅れ時間)が拡大しやすい。この領域の遅れには、予め計算(想定)された通常の遅れ時間(標準遅れ時間)が存在する。ブレーキECU6には、正常時(理想)の「油圧制御の遅れ時間」と「操作目標圧の油圧勾配」との関係が予め記憶されている。つまり、ブレーキ操作に応じて操作目標圧の油圧勾配が決定されると、当該油圧勾配に対応する標準遅れ時間t0が算出できる。
【0083】
以下、ブレーキ操作が開始された際を例として制御の流れを説明する(
図5参照)。
図6に示すように、油圧制御が遅れる状況でない場合(S101:No)、巻き戻し時間設定処理は終了する。油圧制御が遅れる状況である場合(S101:Yes)、目標圧設定部62は、遅れ時間t1をカウントする(S102)。遅れ時間t1は、油圧制御が遅れる状況と判定してから(ここではブレーキ制御開始時から)、実サーボ圧が反応する(目標サーボ圧に接近し始める)までの時間である。そして、制限設定部64は、後に設定される巻き戻し時間t3の上限である最大巻き戻し時間t2を設定する(S103)。制限設定部64は、車速が低くなるほど最大巻き戻し時間t2が長くなるように設定された情報(マップ等)、及び制御偏差が大きいほど最大巻き戻し時間t2が短くなるように設定された情報(マップ等)に基づいて、車速及び制御偏差から最大巻き戻し時間t2を設定する。
【0084】
具体的に、本実施形態の制限設定部64は、油圧制御が遅れる各状況における「車速」と「仮最大巻き戻し時間t2´」との関係を予め記憶している。車速と仮最大巻き戻し時間t2´との関係は、車速が低くなるほど仮最大巻き戻し時間t2´が長くなるように設定されている。当該両者の関係は、例えば、線型的、段階的、又は両者の組み合わせで設定されている。制限設定部64は、油圧制御が遅れる状況と判定した際の車速(車輪速度センサ76の検出値)に基づいて、仮最大巻き戻し時間t2´を設定する。
【0085】
さらに、制限設定部64は、目標圧ディレイ制御を実行する際の操作目標圧と実サーボ圧の偏差(すなわち制御偏差)とゲインαの関係を設定したゲインマップに基づいて、目標圧ディレイ制御実行の際の制御偏差からゲインαを決定する。ゲインマップは、制御偏差が大きいほどゲインが小さくなるように設定されている。当該両者の関係は、例えば、線型的、段階的、又は両者の組み合わせで設定されている。制限設定部64は、仮最大巻き戻し時間t2´にゲインαを乗算することで最大巻き戻し時間t2を決定する(t2=α×t2´)。
【0086】
そして、目標圧設定部62は、油圧制御が遅れる状況か否かを判定する(S104)。油圧制御が遅れる状況である場合(S104:Yes)、目標圧設定部62は、カウントしている遅れ時間t1が標準遅れ時間t0よりも大きいか否かを判定する(S105)。標準遅れ時間t0における制御偏差が「第1差圧」に相当する。このように、ステップS105では、制御偏差が第1差圧より大きいか否かが判定される。
【0087】
遅れ時間t1が標準遅れ時間t0よりも大きい場合(S105:Yes)、制限部63は、遅れ時間t1と標準遅れ時間t0との差が最大巻き戻し時間t2より小さいか否か(又は最大巻き戻し時間t2以下であるか否か)を判定する(S106)。遅れ時間t1と標準遅れ時間t0との差が最大巻き戻し時間t2より小さい場合(S106:Yes)、目標圧設定部62は、遅れ時間t1と標準遅れ時間t0との差を巻き戻し時間t3(n)に設定する(S107)。nは自然数である。一方、油圧制御が遅れる状況でない場合(S104:No)、遅れ時間t1が標準遅れ時間t0以下である場合(S105:No)、又は遅れ時間t1と標準遅れ時間t0との差が最大巻き戻し時間t2より大きい場合(S106:No)、目標圧設定部62は、前回の巻き戻し時間t3(n−1)を今回の巻き戻し時間t3(n)に設定する(S108)。なお、本実施形態では、巻き戻し時間の設定が初回の場合(n=1)、ステップS108において巻き戻し時間は0となる。
【0088】
次に、目標圧ディレイ制御について
図4、
図5、及び
図7を参照して説明する。
図7に示すように、目標圧設定部62は、油圧制御が遅れる状況か否かを判定する(S201)。油圧制御が遅れる状況でない場合(S201:No)、制御フローは終了する。油圧制御が遅れる状況である場合(S201:Yes)、目標圧設定部62は、現状がすでに目標圧ディレイ制御中であるか否かを判定する(S202)。目標圧ディレイ制御中である場合(S202:Yes)、目標圧設定部62は、上記処理で設定した巻き戻し時間t3だけ前の操作目標圧P2を目標サーボ圧に設定する(S203)。ブレーキECU6(液圧制御部61)は、現時点の操作目標圧P1ではなく、ステップS203で設定された目標サーボ圧(P2)に基づいてサーボ圧発生装置4を制御する。
【0089】
一方、目標圧ディレイ制御中でない場合(S202:No)、ブレーキECU6は、実サーボ圧に反応があるか否かを判定する(S204)。つまり、ブレーキECU6は、実サーボ圧が操作目標圧に近づいているか否かを判定する。実サーボ圧に反応がない場合(S204:No)、目標圧設定部62は、現時点での操作目標圧P1を目標サーボ圧に設定し(S206)、制御フローを終了する。実サーボ圧に反応がある場合(S204:Yes)、目標圧設定部62は、目標圧ディレイ制御を開始し(S205)、設定した巻き戻し時間t3だけ前の操作目標圧P2を目標サーボ圧に設定する(S203)。巻き戻し時間t3は、目標圧ディレイ制御実行時の値が採用され、当該目標圧ディレイ制御中では同一の巻き戻し時間t3が設定されている。したがって、目標圧ディレイ制御中の目標サーボ圧は、巻き戻し時間t3前における操作目標圧の油圧勾配と相似形の油圧勾配に設定される。
【0090】
そして、目標圧設定部62は、現時点の操作目標圧P1と巻き戻し時間t3前の操作目標圧P2との差が、予め設定された巻き戻し終了閾値P3より小さいか否かを判定する(S207)。操作目標圧P1と操作目標圧P2の差が巻き戻し終了閾値P3より小さい場合(S207:Yes)、目標圧設定部62は、目標圧ディレイ制御を終了する(S208)。つまり、操作目標圧P1と操作目標圧P2の差が巻き戻し終了閾値P3より小さい場合(またはP1−P2≦P3の場合)、操作目標圧P1が目標サーボ圧に設定される。
【0091】
(作用効果)
本実施形態の車両用制動装置によれば、フィードバック制御において制御偏差が大きくなった場合でも、目標サーボ圧が実サーボ圧側にシフトするため、目標サーボ圧と実サーボ圧の差が小さくなり、急な制動力の変化が抑制される。つまり、本実施形態によれば、遅れが発生した場合でも制動力の穏やかな変化が実現され、フィーリングの悪化、音の発生、又はショックの発生が抑制される。また、本実施形態では、目標サーボ圧を実サーボ圧側にシフトさせるにあたり、制御開始・変更後における巻き戻し時間前の操作目標圧に基づいて目標サーボ圧が設定される。これにより、ブレーキ操作に対する通常時の反応(例えば理想的な反応)の再現が容易となる。特に本実施形態では、遅れ時間と標準遅れ時間の差に基づいて巻き戻し時間が決定されるため、実サーボ圧の変化(反応)が標準遅れ時間の際と同様になる。これにより、油圧制御に遅れが生じた場合でも、通常同様のフィーリングが再現可能となる。本実施形態では、目標サーボ圧に過去の目標サーボ圧を採用することで、過去と相似形の目標サーボ圧の油圧勾配を現在に実現し、制御偏差を規制しつつ、運転手によるブレーキ操作を適切に反映させることができる。
【0092】
また、本実施形態では、フィーリング悪化抑制制御(目標圧ディレイ制御)の実施のタイミングを、油圧制御が遅れる状況に限定している。これにより、より適切なタイミングで、フィーリングの悪化等を抑制することができる。また、制御偏差が第1差圧以下である場合は、通常のブレーキ制御であるため通常の制御量が発揮され、早期の油圧反応が促される。また、本実施形態では、最大巻き戻し時間が設定されるため、遅れ時間が最大巻き戻し時間より大きくなった場合でも、最大巻き戻し時間より長い時間巻き戻しされることはない。つまり、本実施形態は、目標圧ディレイ制御においても一定以上の油圧反応遅れが発生しないように構成されている。これにより、遅れ時間が想定以上に大きくなった場合には、フィーリングよりも制動安定性(油圧の確保)が優先される。
【0093】
また、遅れ時間の発生によるフィーリングの悪化等は、車両が低速(例えばおよそ5〜10km/h)の時に発生しやすい。本実施形態は、車速に応じて最大巻き戻し時間が決定される構成であり、具体的には車両が低速であるほど最大巻き戻し時間が長くなるように構成されているため、低速時のフィーリング悪化を効果的に抑制することができる。また一方で、本実施形態は、実サーボ圧の反応時における制御偏差に応じて巻き戻し時間を変更する構成となっている。具体的に、本実施形態では、ゲインマップにより、実サーボ圧の反応時における制御偏差が大きいほど、最大巻き戻し時間が小さくなるようになっている。これにより、例えば急制動時など、制御偏差が大きくなった場合、ゲインαが0又は0に近い値となり、早期に制動力が確保される。
【0094】
また、本実施形態では、目標圧ディレイ制御を実行した場合の目標サーボ圧と、現時点の操作目標圧との差が巻き戻し終了閾値以下の場合には、目標圧ディレイ制御でなく、通常のブレーキ制御が実行される。巻き戻し終了閾値は0以上に設定されている(
図5では0に設定されている)。これにより、適切なタイミングで目標圧ディレイ制御を終了させることができる。
【0095】
また、目標圧設定部62は、目標圧ディレイ制御を実行する際の制御偏差が大きいほど、巻き戻し時間t3が長くなり、目標サーボ圧をより一層実サーボ圧に近づける。これにより、t1>t0において、遅れ時間t1が長くなった場合でも、遅れ時間t1が短い場合と同様、適切にフィーリング悪化が抑制される。このように、目標圧設定部62は、制御偏差に応じて巻き戻し時間t3を設定しても良い。一方で、制御偏差が大きいほど最大巻き戻し時間t2は小さくなるため、制動力も適切に確保できる。
【0096】
(変形態様)
本発明は、上記実施形態に限られない。例えば、目標圧設定部62は、ブレーキ操作速度に応じて目標サーボ圧のシフト量(巻き戻し時間)を変更しても良い。具体的に、目標圧設定部62は、ブレーキ操作速度が低いほど、目標サーボ圧をより一層実サーボ圧側に設定するようにしても良い。つまり、目標圧ディレイ制御の場合、ブレーキ操作速度が低いほど巻き戻し時間が長くなり、ブレーキ操作速度が高いほど巻き戻し時間が短くなる。これにより、ゆっくりブレーキ操作がなされた場合(ブレーキペダル10がゆっくり踏まれた場合)、フィーリング悪化を抑制する制御が可能となり、急なブレーキ操作が行われた場合(急ブレーキの場合)、早期に制動力を発生させることが可能となる。ブレーキ操作速度は、ブレーキECU6により、例えばストロークセンサ71の検出値に基づき演算できる。また、レギュレータ44は、本実施形態のようにボール弁442により開閉する構成でなく、スプール弁により開閉する構成(例えばスプールとスリーブ)であっても良い。スプール弁の移動により外部との連通/閉鎖を行うレギュレータ44のほうが、「油圧制御が遅れる状況」が起こりやすく、フィーリング悪化抑制制御の効果がさらに顕著となる。また、フィーリング悪化抑制制御は、当該制御を実行する状況において目標サーボ圧を実サーボ圧に近づける制御であれば良く、目標圧ディレイ制御に限定されない。また、目標圧ディレイ制御における目標サーボ圧に設定は、巻き戻し時間前の操作目標圧の変化そのものに限らず、巻き戻し時間前の操作目標圧の変化に相関する変化に基づいてなされても良い。また、制御対象が実サーボ圧でないもの(例えば実マスタ圧、実ホイール圧)でも良い。
【0097】
(まとめ)
本発明は、以下のように記載することができる。すなわち、本発明の車両用制動装置は、フルードの液圧に基づいて車両の車輪に制動力を付与する車両用制動装置であって、当該液圧の実圧を指示目標圧に近づけるフィードバック制御を行う液圧制御部61と、ブレーキ操作に対応する前記液圧の目標値である操作目標圧と実圧との偏差が第1差圧よりも大きく、且つ、実圧が操作目標圧に近づいている場合に、操作目標圧よりも実圧側に指示目標圧を設定する目標圧設定部62と、を備える。また、目標圧設定部62は、指示目標圧を操作目標圧よりも実圧側に近づける際の操作目標圧と実圧との偏差が大きいほど、指示目標圧をより一層実圧側に近づけても良い。また、目標圧設定部62は、ブレーキ操作速度が低いほど、指示目標圧をより一層実圧側に設定しても良い。
また、目標圧設定部62は、実圧が指示目標圧に近づく変化を開始した時点t1を起点として第1時間t3だけ遡った時点t0からの「操作目標圧P2の変化」又は「同操作目標圧P2の変化に相関する変化」を、実圧が指示目標圧に近づく変化を開始した時点t1からの「指示目標圧の変化」として設定しても良い。また、目標圧設定部62は、実圧が指示目標圧に近づく変化を開始した時点t1を起点として第1時間t3だけ遡った時点t0からの操作目標圧P2の変化又は同操作目標圧P2の変化に相関する変化を、実圧が指示目標圧に近づく変化を開始した時点t1からの指示目標圧の変化とした場合の当該指示目標圧の液圧値(P2)と、操作目標圧(P1)との偏差が第2差圧以下である場合に、操作目標圧を指示目標圧として設定しても良い。
また、この車両用制動装置は、第1時間を第2時間以下に制限する制限部63と、車両の車速が低いほど第2時間を長くする制限設定部64と、を備えても良い。また、車両用制動装置は、第1時間を第2時間以下に制限する制限部63と、指示目標圧を操作目標圧よりも実圧側に近づける際の操作目標圧と実圧との偏差が大きいほど、第2時間を短くする制限設定部64と、を備えても良い。また、目標圧設定部62は、「操作目標圧と実圧の偏差」と「第1差圧」との比較を、操作目標圧の変化開始からそれに対応する実圧の変化開始までの時間に基づいて行っても良い。