特許第6250943号(P6250943)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6250943
(24)【登録日】2017年12月1日
(45)【発行日】2017年12月20日
(54)【発明の名称】配線基板
(51)【国際特許分類】
   H01L 23/12 20060101AFI20171211BHJP
   H05K 3/46 20060101ALI20171211BHJP
   H05K 3/28 20060101ALI20171211BHJP
【FI】
   H01L23/12 N
   H05K3/46 N
   H05K3/46 H
   H05K3/28 A
【請求項の数】5
【全頁数】11
(21)【出願番号】特願2013-69249(P2013-69249)
(22)【出願日】2013年3月28日
(65)【公開番号】特開2014-192491(P2014-192491A)
(43)【公開日】2014年10月6日
【審査請求日】2015年11月16日
(73)【特許権者】
【識別番号】000006633
【氏名又は名称】京セラ株式会社
(72)【発明者】
【氏名】田丸 日出和
(72)【発明者】
【氏名】仮屋薗 淳
【審査官】 梅本 章子
(56)【参考文献】
【文献】 特開2008−251784(JP,A)
【文献】 特開2012−212912(JP,A)
【文献】 特開2011−044681(JP,A)
【文献】 特開2010−199346(JP,A)
【文献】 特開2008−300507(JP,A)
【文献】 特開平05−029377(JP,A)
【文献】 特開2007−305741(JP,A)
【文献】 特開2004−063929(JP,A)
【文献】 特開2007−273914(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01L 23/12 − 23/15
H05K 3/28
H05K 3/46
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
電子部品の搭載部を有する主面を含む絶縁基板と、
該絶縁基板の前記主面に設けられた電極パッドと、
前記絶縁基板内に設けられており、前記電極パッドと電位が異なる金属パターンとを備えており、
前記電極パッドは、前記絶縁基板の前記主面に設けられているとともに、厚み方向の少なくとも一部が前記絶縁基板内に埋まっている第1金属層と、該第1金属層上に積層された第2金属層とを含んでおり、
平面透視において、前記第1金属層の外周が前記第2金属層の外周よりも内側に位置しており、
前記金属パターンは、平面透視において前記電極パッドの前記第1金属層および前記第2金属層の両方と重なっており、前記電極パッドと対向する部分の厚みが前記電極パッドと対向する部分を除いた部分の厚みに比べて薄いことを特徴とする配線基板。
【請求項2】
前記第1金属層のうち前記絶縁基板に埋まっている部分の厚みが、前記第1金属層の外周部において中央部よりも小さいことを特徴とする請求項1に記載の配線基板。
【請求項3】
前記絶縁基板がガラスを含むセラミック焼結体からなり、
前記電極パッドがガラスを含有しており、
前記電極パッドのうち前記第1金属層におけるガラス含有率が、前記第2金属層におけるガラス含有率よりも大きいことを特徴とする請求項1または請求項2に記載の配線基板。
【請求項4】
前記第2金属層の外周部から前記絶縁基板の前記主面にかけて被覆している絶縁コート層をさらに備えることを特徴とする請求項1に記載の配線基板。
【請求項5】
平面透視において、前記絶縁コート層の内周が、前記第1金属層の外周よりも内側に位置していることを特徴とする請求項4に記載の配線基板。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、絶縁基板と、絶縁基板の表面に設けられた電極パッドとを有する配線基板に関するものである。
【背景技術】
【0002】
半導体素子、容量素子または圧電振動子等の電子部品が搭載される配線基板として、酸化アルミニウム質焼結体またはガラスセラミック質焼結体等からなる四角形状等の絶縁基板と、絶縁基板の主面に設けられた電極パッドとを備えたものが多用されている。電極パッドは、例えば電子部品または外部電気回路とはんだ等を介して電気的に接続される部分である。
【0003】
電極パッドは、一般に、メタライズ層およびめっき層等の金属層が絶縁基板の主面に円形状等のパターンで被着されて形成されている。
【0004】
近年、配線基板の高集積密度化に対応して電極パッドが小さくなる傾向にあるため、熱応力が生じる環境下で、電極パッドまたはその周辺において、金属層と絶縁基板との間の剥離または絶縁基板のクラック等の機械的な破壊が発生しやすくなってきているという問題があった。
【0005】
このような問題に対しては、電極パッドの金属層を厚くするとともに、電極パッドの周囲にガラスコート膜で覆われた電極周辺配線等を設けることが考えられる。これにより、電極パッドの絶縁基板に対する接合の強度が増し、また発生する熱応力が緩和される(例えば特許文献1を参照)。
【0006】
また、電極パッドを絶縁基板中に埋設することで、電極パッドの絶縁基板に対する接合の強度を高めるという手段が考えられる(例えば特許文献2を参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】特開2009−182238号公報
【特許文献2】特開平10−125719号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
しかしながら、上記従来の配線基板においては、電極パッドと金属パターンとの対向面積の増加、または両者間の距離の低下が生じやすい。そのため、電極パッドと、その電極パッドと平面透視において重なる金属パターンとの間に静電容量(浮遊容量)が発生しやすいという問題点があった。このような静電容量が生じた場合、例えば電極パッドを通って高周波信号が伝送される場合、電極パッドのインピーダンスが低くなり、インピーダンスの不整合が起きて高周波信号の伝送特性が低下する可能性があった。
【0009】
特に近年、配線基板(電子装置)が実装されるコンピュータ、高速インターネット通信用機器あるいは車載用の衝突防止センサ等の電子機器において使用される信号の高周波化に伴い、例えば、800kHz〜数十GHz帯の高周波信号が、電極パッドを通って伝送さ
れる場合がある。この高周波化に伴い、インピーダンスの不整合が起きる可能性がさらに増大している。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明の一つの態様による配線基板は、電子部品の搭載部を有する主面を含む絶縁基板と、該絶縁基板の前記主面に設けられた電極パッドと、前記絶縁基板内に設けられており、前記電極パッドと電位が異なる金属パターンとを備えており、前記電極パッドは、前記絶縁基板の前記主面に設けられているとともに、厚み方向の少なくとも一部が前記絶縁基板に埋まっている第1金属層と、該第1金属層上に積層された第2金属層とを含んでおり、平面透視において、前記第1金属層の外周が前記第2金属層の外周よりも内側に位置しており、前記金属パターンは、平面透視において前記電極パッドの前記第1金属層および前記第2金属層の両方と重なっており、前記電極パッドと対向する部分の厚みが前記電極パッドと対向する部分を除いた部分の厚みに比べて薄い
【発明の効果】
【0011】
本発明の一つの態様による配線基板によれば、一部が絶縁基板内に埋まった第1金属層と絶縁基板との接合によって、電極パッドと絶縁基板との接合の強度が確保できる。また、平面透視において第2金属層の外周よりも第1金属層の外周が内側に位置していることから、電極パッドのうち金属パターンとの距離がより近い第1金属層と金属パターンとが対向し合う範囲が低減され、電極パッドと金属パターンとの間における静電容量の発生が低減されている。平面透視において電極パッドのうち第2金属層のみが金属パターンと重なり合う部分では電極パッドと金属パターンとの間の距離がより大きいため、電極パッドと金属パターンとの間に生じる静電容量が低減される。そのため、例えば高周波信号の伝送時におけるインピーダンスの整合が容易であり、高周波信号の伝送特性等が良好な配線基板を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0012】
図1]本発明の参考例の実施形態の配線基板を示す断面図である。
図2図1に示す配線基板の要部を拡大して示す要部拡大断面図である。
図3図2に示す配線基板の要部を平面視した場合の一例を示す平面透視図である。
図4図1に示す配線基板の要部を拡大して示す要部拡大断面図である。
図5図1に示す配線基板の第1の変形例における要部を示す断面図である。
図6図1に示す配線基板の第2の変形例である本発明の実施形態の配線基板の要部を示す断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0013】
本発明の配線基板を添付の図面を参照しつつ詳細に説明する。図1は本発明の実施形態の配線基板を示す断面図である。
【0014】
図1に示す例において、配線基板9は、基本的に、絶縁基板1と、絶縁基板1の表面に設けられた電極パッド2と、電極パッド2から絶縁基板1の内部に向かって形成された貫通導体3と、電極パッド2と対向し、電極パッド2と電位が異なる金属パターン4とによって形成されている。電極パッド2を介して、配線基板9が外部の電気回路の所定部位と電気的に接続される。外部の電気回路は、例えば外部回路基板に設けられた電気回路、または配線基板9に搭載される電子部品の電子回路等である。
【0015】
絶縁基板1は、例えばガラスセラミック質焼結体または酸化アルミニウム質焼結体等からなる複数の絶縁層11が積層されて形成されている。絶縁層11の積層数は、図1に示す例では、6層であるが、これ以外の積層数でも構わない。
【0016】
絶縁基板1を形成するガラスセラミック焼結体としては、ホウケイ酸系ガラスにセラミック成分として酸化アルミニウムや酸化ケイ素を添加してなるものや、リチウム系ガラスを用いたもの等が挙げられる。
【0017】
絶縁基板1は、例えば各絶縁層11が、ホウケイ酸ガラスにセラミック成分として酸化アルミニウムを添加してなるガラスセラミック焼結体からなる場合であれば、次のようにし
て製作することができる。すなわち、まず、酸化ケイ素、酸化ホウ素等のガラス成分の粉末に酸化アルミニウム等のセラミック粉末を添加した原料粉末に適当な有機バインダおよび有機溶剤を添加混合してスラリーを作製する。次に、このスラリーをドクターブレード法やリップコーター法等のシート成形技術を採用してシート状に成形することによって複数枚のセラミックグリーンシートを作製する。その後、セラミックグリーンシートを切断加工および打ち抜き加工等から選択した加工方法によって適当な形状とするとともにこれを複数枚積層し、最後にこの積層したセラミックグリーンシートを還元雰囲気中において約900〜1000℃の温度で焼成することによって製作することができる。
【0018】
絶縁基板1は、例えば平面視において四角形状(四角板状等)であり、上面に電子部品が搭載され、下面が外部回路基板と対向して実装される。電子部品としては、ICおよびLSI等の半導体集積回路素子、ならびにLED(発光ダイオード)、PD(フォトダイオード)およびCCD(電荷結合素子)等の光半導体素子を含む半導体素子、弾性表面波素子および水晶振動子等の圧電素子、容量素子、抵抗器、半導体基板の表面に微小な電子機械機構が形成されてなるマイクロマシン(いわゆるMEMS素子)等の種々の電子部品が挙げられる。
【0019】
図2は、図1に示す配線基板の要部を拡大して示す要部拡大断面図である。図2において図1と同様の部位には同様の符号を付している。
【0020】
この図2に示す電極パッド2は、図1の配線基板の上面の電極パッド2を拡大したものであり、例えば電子部品の電極が接続されるものである。
【0021】
電極パッド2は、第1金属層5と、第1金属層5上に積層された第2金属層6から構成されている。この第1金属層5と第2金属層6とは、例えば平面視で円形状または楕円形状等の形状、もしくは四角形状等の多角形状で形成される。
【0022】
第1および第2金属層5、6は、それぞれ銅、銀、パラジウム、金、白金、タングステン、モリブデン、マンガン、ニッケルまたはコバルト等の金属材料からなる。また、第1および第2金属層5、6は、これらの金属材料の合金からなるものでもよく、これらの金属材料の層が複数積層されてなるものでもよい。
【0023】
第1および第2金属層5、6は、例えば上記の金属材料がメタライズ層またはめっき層等の形態で絶縁基板1に被着されて形成されている。第1および第2金属層は、例えば銅のメタライズ層を含むものである場合には、次のようにして形成されている。すなわち、銅の粉末が有機溶剤およびバインダ等とともに混練されて作製された金属ペーストが絶縁層11となるセラミックグリーンシートにスクリーン印刷法等の印刷法で印刷され、これらが同時焼成されることによって、絶縁層11に第1および第2金属層5、6が形成される。また、このようなメタライズ層(特に上側の第2金属層6)の外表面に、ニッケルおよび金等のめっき層が被着されてもよい。
【0024】
電極パッド2は、貫通導体3を介して絶縁基板1の下面等の外表面に電気的に導出されている。電極パッド2に接続される電子部品の電極は、電極パッド2および貫通導体3を経て外部の電気回路に電気的に接続される。貫通導体3は電極パッド2の接着強度を向上させる効果を伴う。このとき、貫通導体3と電極パッド2の接合面積が大きいほうが、接着強度を向上させる効果が高い。そのため、例えば貫通導体3が側面視において台形状であり、貫通導体3の上面と下面との面積が異なる場合は、面積の大きい面を電極パッド2に接合させるとよい。
【0025】
絶縁基板1の内部には、電極パッド2と異なる電位を有する金属パターン4が設けられ
ている。金属パターン4は、例えば接地導体層または電源導体層であり、例えば信号が伝送される電極パッド2とは異なる電位を有している。また、金属パターン4は、平面視において重なる電極パッド2とは異なる電位の信号が通過する内部配線層である場合も含まれる。
【0026】
金属パターン4は、少なくともその一部が平面透視において電極パッド2と重なっている。これは、金属パターン4が絶縁層11の層間に広い範囲で設けられることによる。金属パターン4は、例えば内部配線層の場合であれば、絶縁基板1の小型化のために高い密度で設けられる。また、接地導体層または電源導体層であれば、接地または電源等の電位の安定のために、絶縁層11同士の層間に極力広い範囲で設けられる。図2では、金属パターン4が絶縁層11を1層挟んで電極パッド2と対向しているように設けられているが、複数の絶縁層11を挟んで設けられていても構わない。
【0027】
貫通導体3および金属パターン4は、例えば第1および第2金属層5、6と同様の金属材料からなり、同様の形態で絶縁基板1の内部に設けられている。なお、貫通導体3の場合には、絶縁層11となるセラミックグリーンシートにあらかじめ貫通孔が設けられ、この貫通孔内に金属ペーストが充填されてセラミックグリーンシートと同時焼成される。また、貫通導体3および金属パターン4は絶縁層11との接着強度を向上させるために、例えば、絶縁層11に含有しているのと同じガラス成分を含有させてもよい。
【0028】
電極パッド2について、平面透視で、第2金属層6の外周よりも第1金属層の外周が内側に位置している。言い換えれば、平面透視において、第2金属層6が第1金属層5よりも大きく、第1金属層5が第2金属層6の範囲内に収まっている。また、第1金属層5は絶縁基板1内に埋まっている。実施形態の配線基板においては、第1および第2金属層5、6がそれぞれ円形状であり、平面透視において互いに同心円状に配置されている。ただし、第1および第2金属層5、6は、それぞれ円形状には限定されず、四角形状、楕円形状等の他の形状であっても構わない。
【0029】
実施形態の配線基板において、絶縁基板1の下面にも電極パッド2が設けられている。絶縁基板1の下面の電極パッド2は、配線基板を外部の電気回路に電気的に接続するための導体である。絶縁基板の下面の電極パッド2は、上記絶縁基板1の上面の電極パッド2と同様に、第1および第2の金属層5、6を含んでいる。絶縁基板1の下面の電極パッド2においても、平面透視において第1の金属層5の外周が第2の金属層6の外周よりも内側に位置している。また、第1金属層5は絶縁基板1内に埋まっている。以下の説明においては、絶縁基板1の上面の電極パッド2を例に挙げてその効果等を説明しているが、絶縁基板1の下面の電極パッド2についても同様の効果を有している。
【0030】
上記電極パッド2において、一部が絶縁基板1内に埋まった第1金属層5と絶縁基板1との接合によって、電極パッド2と絶縁基板1との接合が効果的に補強されている。
【0031】
また、平面透視で、この第2金属層6の外周よりも第1金属層5の外周が内側に位置していることから、電極パッド2のうち金属パターン4との距離がより近い第1金属層5と金属パターン4とが対向し合う範囲が低減されている。これにより、電極パッド2と金属パターン4との間における静電容量の発生が低減されている。平面透視において電極パッド2のうち第2金属層6のみが金属パターン4と重なり合う部分では電極パッド2と金属パターン4との間の距離がより大きくなり、この距離の分、電極パッド2と金属パターン4との間に生じる静電容量が小さくなる。そのため、例えば高周波信号の伝送時におけるインピーダンスの整合が容易になる。したがって、高周波信号の伝送特性が良好な配線基板を提供することができる。また、図2の例においては、第2金属層6が絶縁層11中に埋め込まれていないため、金属パターン4との距離を大きくすることができる。
【0032】
この電極パッド2は、例えば次のようにして形成することができる。すなわち、まず、絶縁層11となるセラミックグリーンシートの上面(主面)に第1金属層5となる金属ペースト(以下、第1ペーストともいう)を印刷する。次に、この第1ペーストを加圧して、少なくとも第1ペーストの厚み方向の一部をセラミックグリーンシート内に埋め込む。次にこの第1ペーストの上面からセラミックグリーンシートの上面にかけて第2金属層6となる金属ペースト(以下、第2ペーストともいう)を印刷する。その後、第1および第2ペーストとセラミックグリーンシートとを同時焼成すれば、絶縁層11上に電極パッド2を形成することができる。
【0033】
電極パッド2と金属パターン4との間に生じる静電容量を低減する上では、第1金属層5の平面視における大きさ(以下、単に「第1金属層5の大きさ」ともいう)が小さいほどよい。ただし、第1金属層5が小さくなり過ぎると、電極パッド2と絶縁基板1との間の接合を補強する効果が不十分になる可能性がある。そのため、第1金属層5の大きさは、絶縁基板1の材料、大きさ、厚み等の条件、配線基板に搭載される電子部品の種類(作動時の発熱量)、外部電気回路基板の熱膨張率(絶縁基板1と外部電気回路基板との熱膨張率差)といった、熱応力に影響を与える各種の条件、および電極パッド2に求められる導通抵抗等の電気特性、ならびに配線基板としての生産性等の条件も考慮して、適宜設定することが望ましい。
【0034】
また、電極パッド2のうち第2金属層6は、電子部品接続用の導体層としての電極パッド2の形状および寸法を決める部分であり、平面視におけるその大きさおよび形状は、電子部品との電気的な接続性および絶縁基板1の外形寸法等の条件に応じて適宜設定することができる。
【0035】
第1金属層5の外周と第2金属層6の外周との間の距離は、上記のようにしてそれぞれ設定された第1および第2金属層の大きさおよび形状に応じた値になる。例えば、絶縁基板1がホウケイ酸ガラス−酸化アルミニウム系のガラスセラミック焼結体からなる四角板状のものであり、樹脂絶縁基板を含む外部電気回路基板に実装される場合には、第1金属層5は直径が約700μmの円形状等であり、第2金属層6は直径が約800μmの円形状等であり、平面透視における第1金属層5の外周と第2金属層6の外周との間の距離は、約100μm程度である。なお、上記条件において、平面透視における第1および第2金属層5
、6のそれぞれの外周同士の間の距離は、約100μmより大きくてもよく、約100〜200μ
m程度の範囲で設定されていても構わない。
【0036】
また、例えば図3に示すように、電極パッド2のうち第1金属層5が、平面透視において金属パターン4と重なっていないことが好ましい。言い換えれば、第1金属層5が、絶縁基板1の一部を間に挟んで金属パターン4と対向し合っていないことが好ましい。この場合、電極パッド2のうち第2金属層6のみが金属パターン4と対向し合っていたとしても、第2金属層6と金属パターン4との間の距離が比較的大きいため、電極パッド2(第2金属層6)と金属パターン4との間に生じる静電容量は低減される。なお、図3は、図2に示す配線基板の要部を平面視した場合の一例を示す平面透視図である。図3において図1および図2と同様の部位には同様の符号を付している。なお、図3は断面図ではないが、わかりやすくするために金属パターン4について破線でハッチングを施している。
【0037】
この場合、第2金属層6と金属パターン4との間の距離と、第1金属層5と金属パターン4との間の距離との差は、例えば第1金属層5の厚み程度であり、比較的小さいように見える。しかし、近年の絶縁基板1の薄型化に伴い、電極パッド2と金属パターンとの間の距離が、例えば約100μm以下と非常に小さくなってきている。そのため、金属パター
ン4に対する電極パッド2の距離の差の絶対値が比較的小さくて見えても、相対的な距離
の増加効果は大きく、電極パッド2と金属パターン4との間の静電容量が効果的に低減され得る。例えば、第1金属層5の厚みは、約20〜30μm程度であり、上記の電極パッド2と金属パターン4との間の距離に対して約20〜30%程度になる。そのため、電極パッド2と金属パターン4との間の距離が最大で約1.4〜1.2倍程度以上に大きくなり、静電容量は約71〜83%程度以下に低減される。
【0038】
図4は、図1に示す配線基板の要部を拡大して示す断面図である。図4において図1と同様の部位には同様の符号を付している。図4においては、絶縁基板1の下面の電極パッド2およびその周辺を拡大して示している。絶縁基板1の下面の電極パッド2は、例えば配線基板の外部接続用の導体層である。絶縁基板1の下面の電極パッド2は、前述したように絶縁基板1の上面の電極パッド2と同様の構成を有し、絶縁基板1に対して強固に接合されている。
【0039】
図4の例において、電極パッド2のうち第2金属層6の外周が絶縁コート層7によって被覆されている。絶縁コート層7は、第2金属層6の外周部から絶縁基板1の主面(下面)にかけて一体的に被覆している。これにより、第2金属層6の絶縁基板1に対する接合がさらに補強されている。そのため、電極パッド2としての絶縁基板1に対する接合の強度がさらに高められている。
【0040】
第2金属層6が絶縁層11に埋め込まれていない場合、および第2金属層6中のガラス成分が比較的少ない(含有されない)場合には、この絶縁コート層7で電極パッド2を補強する効果がより高い。
【0041】
絶縁コート層7は、例えばセラミック材料、ガラス材料または樹脂材料等の絶縁材料からなる。絶縁コート層7が絶縁層11と同様のセラミック材料(セラミック焼結体)からなる場合であれば、セラミックグリーンシートと同様の組成のセラミックペーストを作製し、これを、絶縁層11となるセラミックグリーンシート等に印刷した第2金属層6となる金属ペーストの外周部上に印刷し、焼成することによって形成することができる。
【0042】
なお、絶縁基板1の上面の電極パッドにおいても、第2金属層6の外周部が絶縁コート層7で被覆されていてもよい。
【0043】
図5は、図1に示す配線基板の第1の変形例における要部を拡大して示す断面図である。図5において図1および図2と同様の部位には同様の符号を付している。図5においては、第1金属層5のうち絶縁層11に埋まっている部分(埋設部)の厚みが、第1金属層5の外周部において中央部よりも薄い。これにより、第1金属層5の外周部において、第1金属層5と金属パターン4との間の距離をより大きくすることができる。そのため、第1金属層5(電極パッド2)と金属パターン4との間に生じる静電容量がより効果的に低減される。
【0044】
また、この例においては、第2金属層6も絶縁層11に埋まって、接合強度が向上されており、第1金属層5と同様に、第2金属層6の外周部の厚みが、中央部よりも薄く形成されている。そのため、第2金属層6(電極パッド2)と金属パターン4との間に生じる静電容量も低減することができる。図4において示した例では、絶縁コート層7で、電極パッド2を補強する例を示したが、電極パッド2が小さくなると、絶縁コート層7が滲んでしまい、電極パッド2の面積が小さくなり、電子部品等との接合強度が低下する可能性がある。また、絶縁コート層7で電極パッド2を補強する場合、第2金属層6を大きく形成しなければならない。すなわち、電極パッド2の表面のうち絶縁コート層7で覆われた部分は、外表面に露出しないため、第2金属層6は、所望の電極パッド2の露出面積よりも、大きい面積で形成しなければならない。そのため、電極パッド2と金属パターン4とが
対向する面積が増加し、静電容量が増加してしまう。このような場合には、絶縁コート層7を設けず、第2金属層6を絶縁層11中に埋め込む構造が好ましい。
【0045】
また、金属パターン4のうち、電極パッド2と対向する部分をほかの部分に比べて薄く形成している。この場合、電極パッド2と金属パターン4の距離をさらに大きくすることが可能となる。
【0046】
第1金属層5、第2金属層6、金属パターン4の一部の厚みを薄く形成する方法としては、セラミックグリーンシートの上面に金属ペースを印刷する際に、所望の部位を薄く形成させればよい。
【0047】
図6は、図1に示す配線基板の第2の変形例である本発明の実施形態の配線基板の要部を拡大して示す断面図である。図6において図1および図3と同様の部位には同様の符号を付している。図6においては、図5の例と同様に、第1金属層5のうち絶縁基板1に埋まっている部分(埋設部)の厚みが、第1金属層5の外周部において中央部よりも薄い。これにより、第1金属層5の外周部において、第1金属層5と金属パターン4との間の距離がより大きくなり、両者の間に生じる静電容量がより効果的に低減される。
【0048】
また、第1金属層5の外周部における厚みが中央部における厚みよりも小さい。さらに第2金属層6についても、その外周部における厚みが中央部における厚みよりも小さくなっている。また、第2金属層6の外周から絶縁基板1の主面(下面)にかけて絶縁コート層7が設けられている。
【0049】
図6に示す例においては、第2金属層6が絶縁層11中に埋まっていないため、図5に示した例と比べて、電極パッド2と金属パターン4との間に生じる静電容量がさらに低減されている。また、第2金属層の外周部における絶縁基板1に対する接合が絶縁コート層7により効果的に補強されている。そのため、この場合には、電極パッド2と金属パターン4との間の静電容量がより効果的に低減されているとともに、電極パッド2と絶縁基板1との接合強度がより効果的に高められている配線基板を提供することができる。
【0050】
また、絶縁コート層7を有する配線基板においては、平面透視で、絶縁コート層7の内周が、第1金属層5の外周よりも内側に形成されていてもよい。この場合には、それぞれ熱応力が集中しやすい部位である絶縁コート層7の内周と第1金属層5の外周とが平面透視において互いにずれているため、熱応力が分散される。また、第2金属層6の外表面に露出している部分(はんだ等の接続材が接続する部分)の直下の金属層の厚みを厚くすることができるため、熱応力を分散させることができる。そのため、例えば熱応力が一部に集中することによる電極パッド2の絶縁基板1からの剥がれ、および絶縁基板1のクラック等の不具合がより効果的に抑制され得る。
【0051】
絶縁基板が上記のガラスセラミック焼結体および酸化アルミニウム質焼結体のようにガラスを含むセラミック焼結体からなるときに、第1金属層5および第2金属層6がそれぞれにガラスを含有していてもよい。この場合、第1金属層5におけるガラス含有率よりも第2金属層6におけるガラス含有率が小さいことが好ましい。これにより、電極パッド2がはんだ等の導電性接続材を介して外部の電気回路に電気的に接続されるときの、第2金属層6に対するはんだの濡れ性等の特性が良好に確保される。また、第2金属層6はガラスを含有していなくてもよい。この場合には、第2金属層6に対するはんだの濡れ性等の特性がさらに良好である。
【符号の説明】
【0052】
1・・・絶縁基板
11・・・絶縁層
2・・・電極パッド
3・・・貫通導体
4・・・金属パターン
5・・・第1金属層
6・・・第2金属層
7・・・絶縁コート層
9・・・配線基板
図1
図2
図3
図4
図5
図6