(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【背景技術】
【0002】
軽水炉等の原子炉を有する原子力発電所から発生する使用済み軽水炉燃料中には、ウラン(U)や超ウラン元素(TRU)に加え、アルカリ金属、アルカリ土類金属、希土類元素等からなる核分裂生成物(FP)が含まれている。使用済み軽水炉燃料は再処理され、核分裂生成物が除去されるとともに、取り出したウランや超ウラン元素が軽水炉燃料や高速炉燃料として再利用される。
【0003】
現在、我が国の原子力発電は軽水炉を主体として行われているが、将来的に高速炉に移行することが検討されている。また、この高速炉に用いられる高速炉燃料としては、種々の利点から酸化物燃料に代えて金属燃料(金属製高速炉燃料)を用いることが検討されている。
【0004】
このため、軽水炉から高速炉への移行時期にあり、しかも金属製高速炉燃料を用いることが検討されている現在においては、使用済み軽水炉燃料の再処理プロセスとして、軽水炉燃料用の高純度酸化ウランを回収するプロセスと、プルトニウム(Pu)およびマイナーアクチニド(MA)を含む金属製高速炉燃料を回収するプロセスと、を同時に進行させることが望まれている。
【0005】
従来、使用済み軽水炉燃料を再処理して高純度酸化ウランを回収する方法として、ピューレックス法等の湿式プロセスが知られている。湿式プロセスによれば、高純度の酸化ウランを回収することができる。
【0006】
また、使用済み軽水炉燃料や使用済み高速炉燃料を再処理して金属製高速炉燃料を調製する方法としては、溶融塩電解法等の乾式プロセスが知られている。溶融塩電解法は、PuおよびMAを含む酸化物や酸化物からなる使用済み高速炉燃料を用い、電解還元により酸化物を金属に還元し、さらに電解精製を行って、最終的に金属製高速炉燃料を生成するプロセスである。乾式プロセスによれば、プルトニウムを単独分離できないため核不拡散性の観点から好ましい。
【0007】
これらの湿式プロセスおよび乾式プロセスは、それぞれ長所を有する。
そこで、近年、湿式プロセスと乾式プロセスとを組み合わせた複合プロセスにより、使用済み軽水炉燃料から、プルトニウムを単独で分離せずに、高純度の軽水炉燃料と金属製高速炉燃料とを生成するハイブリッド再処理プロセスが提案されている。
【0008】
このハイブリッド再処理プロセスは、使用済み軽水炉燃料を再処理して高純度の酸化ウランを回収する湿式プロセスと、湿式プロセスの途中で得られた溶液からPuおよびMAを含む酸化物を生成するアクアパイロプロセスと、このPuおよびMAを含む酸化物に電解還元、および電解精製を行って最終的に金属製高速炉燃料を生成する乾式プロセスと、を備えるものである(特許文献1、2)。
【0009】
しかし、現在は高速炉燃料の需要がまだ少ないため、高速炉燃料の需要が高まるまでは、ハイブリッド再処理プロセスの乾式プロセスで生成された金属製高速炉燃料またはその中間生成物を長期にわたって貯蔵する必要がある
【0010】
なお、貯蔵される物質が金属でなく酸化物である場合、酸化物の貯蔵時の化学的状態が安定しているという利点がある。しかし、この酸化物は、崩壊熱がUの10
6倍程度高いFPや、MAを含むため、貯蔵時に崩壊熱等の管理が複雑になる。
【0011】
これに対し、高速炉燃料が金属燃料(金属製高速炉燃料)であり、この金属燃料の中間生成物であるインゴット等の金属製中間生成物が貯蔵される場合は、貯蔵時に崩壊熱等の管理が容易である。
この理由は次の通りである。すなわち、アクアパイロプロセスで生成され乾式プロセスの出発物質であるPuおよびMAを含む酸化物は、FPを5質量%程度含むため崩壊熱が高い。これに対し、この酸化物に電解精製を行って得られるインゴット等の金属製中間生成物は、前記5質量%程度のFPのうち80%程度のFPが除去されて崩壊熱が低くなっているため、貯蔵時に崩壊熱等の管理が容易になるからである。また、金属製中間生成物は、熱伝導率が高く冷却しやすいために、崩壊熱等の管理が容易であるという利点もある。
【発明を実施するための形態】
【0020】
[中間生成物貯蔵方法]
以下、図面を参照して本発明の中間生成物貯蔵方法の実施の形態について説明する。
【0021】
(第1の実施形態)
図1は、中間生成物貯蔵方法の第1の実施形態を示す概略図である。
中間生成物貯蔵方法の第1の実施形態は、
図1に示されたハイブリッド再処理プロセス1の金属製中間生成物を貯蔵する中間生成物貯蔵方法である。
【0022】
ハイブリッド再処理プロセス1は、湿式プロセス100と、アクアパイロプロセス200と、乾式プロセス300とを備える。
ハイブリッド再処理プロセス1は、湿式プロセス100が軽水炉燃料の再処理サイクルに対応し、乾式プロセス300が高速炉燃料の再処理サイクルに対応する。また、ハイブリッド再処理プロセス1中のアクアパイロプロセス200は、湿式プロセス100で生成された中間体を乾式プロセス300で用いるようにするための処理を行う。
【0023】
本実施形態は、ハイブリッド再処理プロセス1の金属製中間生成物である高速炉用インゴットを貯蔵する中間生成物貯蔵方法である。
【0024】
<湿式プロセス>
湿式プロセス100は、使用済み軽水炉燃料から軽水炉燃料(軽水炉FL)を生成するプロセスである。
湿式プロセス100では、はじめに、使用済み軽水炉燃料(軽水炉SFL)を準備する(ステップS101)。使用済み軽水炉燃料は、通常、酸化物であり、ウラン(U)、プルトニウム(Pu)、マイナーアクチニド(MA)、核分裂生成物(FP)等を含む。MAとは、UおよびPu以外の重元素であり、たとえば、ネプツニウム(Np)、アメリシウム(Am)、キュリウム(Cu)等である。
ステップS101で準備される使用済み軽水炉燃料は、燃料ペレットのみからなるものであってもよいし、被覆管を含む燃料棒であってもよい。
【0025】
使用済み軽水炉燃料は、剪断後、剪断された燃料ペレットが硝酸で溶解され(ステップS102)、ハル(溶け残った被覆管)等の細片と溶液とを分離するため、遠心清澄される(ステップS103)。遠心清澄後の硝酸溶液は、電解還元されてU、Pu等の元素のイオン価数が調整される(ステップS104)。この電解還元は、次工程のUの遠心抽出でUと、PuおよびMAとの分離が効率的に行われるようにするために行われる。
イオン価数が調整されたU、Pu等の元素を含む硝酸溶液は、遠心抽出によりUが抽出され、抽出後に得られるウラン抽出残液にはPu、MAおよびFPが含まれる(ステップS105)。
【0026】
抽出されたUを含む硝酸溶液からは、Zr、Ru、Tc等がさらに除去された(ステップS106)後、逆抽出によりUが濃縮される(ステップS107)。
逆抽出後の溶液は、Uが精製され、脱硝されることにより(ステップS108)、酸化物からなる高純度の軽水炉燃料(軽水炉FL)が得られる(ステップS109)。軽水炉燃料が被覆管に装入されると軽水炉用燃料棒が得られる。
【0027】
一方、ステップS105でUを含む溶液から分離された、Pu、MAおよびFPを含むウラン抽出残液は、アクアパイロプロセス200で処理される。
ウラン抽出残液は、Pu、MAおよびFPを含み、大きな崩壊熱が発生する。このため、ウラン抽出残液を貯蔵する場合には、貯蔵施設の大型化や、除熱のための換気システムの高性能化が要求され、コストが高くなりやすい。本発明では、ウラン抽出残液をアクアパイロプロセス200で処理することにより、ウラン抽出残液を中間貯蔵しないため、ウラン抽出残液の貯蔵の問題が実質的に生じない。
【0028】
<アクアパイロプロセス>
アクアパイロプロセス200は、湿式プロセス100の途中で生成されるウラン抽出残液からプルトニウム(Pu)およびマイナーアクチニド(MA)を含む酸化物を生成するプロセスである。
アクアパイロプロセス200は、はじめに、湿式プロセス100の遠心抽出(ステップS105)後に得られる、Pu、MAおよびFPを含むウラン抽出残液に、シュウ酸を加えて、PuおよびMAを含むシュウ酸塩を沈殿させる(シュウ酸塩沈殿工程、ステップS201)。FPのうち白金族元素のFPは、沈殿せず、溶液中に残留する。白金族元素以外の元素のFPの大部分は、シュウ酸塩中に共沈する。
【0029】
PuおよびMAを含むシュウ酸塩は、濾過等で分離され、洗浄された後、加熱されることにより、酸化物に転換される(酸化物転換工程、ステップS202)。なお、このPuおよびMAを含む酸化物は、通常、FPも含む。また、このPuおよびMAを含む酸化物は、乾式プロセス300の電解還元工程(ステップS301)の原料として用いられる。
【0030】
一方、ステップS201の後、シュウ酸塩沈殿が分離された残液は、白金族元素のFPが回収された(ステップS211)後、廃棄物として廃棄処分される(ステップS212)。
【0031】
<乾式プロセス>
乾式プロセス300は、アクアパイロプロセス200で得られた少なくともPuおよびMAを含む酸化物を電解還元して得られた金属製還元物、または使用済み高速炉燃料を、電解精製して金属製精製物を生成し、蒸留し、最終的に金属製高速炉燃料を生成するためのプロセスである。
【0032】
乾式プロセス300では、出発原料として、アクアパイロプロセス200で得られた少なくともPuおよびMAを含む酸化物を用いる場合、はじめに、この酸化物を電解還元して、金属製還元物を得る(電解還元工程、ステップS301)。この電解還元工程は、たとえば650℃程度のLiCl等の溶融塩中で、電気化学的方法により酸化物を還元して金属を生成する工程である。
【0033】
一方、出発原料として、アクアパイロプロセス200で得られた酸化物でなく、使用済み高速炉燃料(高速炉SFL)S311を用いる場合、使用済み高速炉燃料を準備する。ここで、使用済み高速炉燃料とは、通常、金属製の使用済み高速炉燃料、すなわち使用済みの高速炉用金属燃料である。なお、使用済み高速炉燃料として、使用済み高速炉用金属燃料でなく使用済み高速炉用酸化物燃料を用いる場合は、アクアパイロプロセス200で得られた酸化物を用いる場合と同様に、使用済みの高速炉用酸化物燃料を電解還元して、金属製還元物を得る(電解還元工程、ステップS301)。
【0034】
次に、この金属製還元物または金属製の使用済み高速炉燃料S311は、電解精製されて金属製精製物が生成される(電解精製工程、ステップS302)。この電解精製工程は、たとえば500℃程度のLiCl−KCl等の溶融塩中で、電気化学的方法によりFPからPuおよびMAを分離、回収する工程である。金属製精製物はCd陰極で生成され、U、PuおよびMAを含む。
【0035】
一方、電解精製工程(ステップS302)で、電気化学的方法によりPuおよびMAから分離されたFPおよび廃塩は、FPおよび廃塩が処理される(FP処理/廃塩処理工程、ステップS321)。
【0036】
[蒸留工程]
電解精製工程(ステップS302)で得られた金属製精製物は、蒸留されて高速炉用インゴットが成型される(蒸留工程、ステップS303)。この蒸留工程は、金属製精製物に付着したCdや塩を除去し、U、PuおよびMAを含む高速炉用インゴットを成型する工程である。
高速炉用インゴットは、中間生成物製造装置としての蒸留容器内に金属製精製物を配置し、蒸留処理することにより作製される。
【0037】
(蒸留容器(中間生成物製造装置))
図2(A)は、中間生成物製造装置としての蒸留容器の平面図であり、
図2(B)は、
図2(A)のA−A線に沿った蒸留容器の縦断面図である。
図2に示される蒸留容器10は、高導電性材料からなる有底筒状の外殻体20と、この外殻体20内に収容され、耐熱材料からなり、金属製精製物を収容して高速炉用インゴットを成型するインゴット成型用空間35を有する内装体30と、を備える。
【0038】
内装体30のインゴット成型用空間35は、高速炉用インゴットの基部を形成するインゴット基部成型用空間35aと、このインゴット基部成型用空間35aに連続して形成され高速炉用インゴットの柱状部を形成するインゴット柱状部成型用空間35bとからなる。インゴット基部成型用空間35aおよびインゴット柱状部成型用空間35bは、それぞれ、円柱状に形成される。
【0039】
インゴット成型用空間35に金属製精製物が配置され、蒸留処理されると、
図3に示されるように、インゴット基部成型用空間35aの形状に対応したインゴット基部52と、インゴット柱状部成型用空間35bのクラスタ形状に対応し、インゴット基部52から突設されたクラスタ形状のインゴット柱状部53とを有する高速炉用インゴット50が作製される。
【0040】
外殻体20は、たとえば、高導電性材料である金属または炭素製からなる。
内装体30は、耐熱材料で化学的に安定な物質である、イットリア、セリア、ジルコニア、アルミナ、マグネシア、およびカルシアより選ばれる1種以上の無機酸化物粉体の圧粉体である。
【0041】
圧粉体からなる内装体30のインゴット成型用空間35は、
図4に示されるように、たとえば、外殻体20内に配置された無機酸化物粉体31を圧縮する圧縮用金型40を用いて形成される。
【0042】
図4は、
図2に示された中間生成物製造装置の作製手順を説明する概略図である。中間生成物製造装置としての蒸留容器10は、その内装体30が無機酸化物粉体の圧粉体である。この蒸留容器10は、以下の手順で作製される。
【0043】
図4は、
図2に示される中間生成物製造装置の作製手順を説明する概略図であり、
図4(A)は、中間生成物製造装置の作製前の状態を示す図、
図4(B)は、中間生成物製造装置の作製途上の状態を示す図、
図4(C)は、作製された中間生成物製造装置を示す図である。
【0044】
はじめに、
図4(A)および(B)に示されるように、内装体30を形成する下金型である外殻体20内に配置された無機酸化物粉体31を、内装体30を形成する上金型である圧縮用金型40を用いて圧縮成型する。
無機酸化物粉体31は、無機酸化物粉体の圧粉体からなる内装体30の原料粉体である。無機酸化物粉体31としては、内装体30と同様の物資が用いられ、たとえば、イットリア、セリア、ジルコニア、アルミナ、マグネシア、およびカルシアより選ばれる1種以上の無機酸化物粉体が用いられる。
【0045】
圧縮用金型40は、外殻体20の開口端の内部に嵌合する最大径部を有する外周フランジ状の金型鍔部41と、無機酸化物粉体31を圧縮して内装体30のインゴット基部成型用空間35aを形成するための金型基部42と、内装体30のクラスタ状のインゴット柱状部成型用空間35bを形成するためのクラスタ状の金型柱状部43と、を備える。
【0046】
この圧縮用金型40が、外殻体20内に配置された無機酸化物粉体31を、
図4(A)の矢印Pの方向に圧縮すると、外殻体20内の無機酸化物粉体31は、圧縮用金型40により、
図4(B)に示されるように、圧縮成型され無機酸化物粉体31の圧粉体からなる内装体30が成型される。
【0047】
具体的には、圧縮用金型40の金型基部42が無機酸化物粉体31を押圧することにより、無機酸化物粉体31から、内装体30のインゴット基部成型用空間35aを構成するインゴット基部成形部32が成型される。
また、圧縮用金型40の金型柱状部43が無機酸化物粉体31を押圧することにより、無機酸化物粉体31から、内装体30のクラスタ状のインゴット柱状部成型用空間35bを構成するインゴット柱状部成形部33が成型される。
【0048】
次に、圧縮用金型40が、
図4(C)の矢印Lの方向に引き抜かれると、外殻体20と、この外殻体20内に収容されインゴット成型用空間35を有する内装体30とを備える蒸留容器10が得られる。
【0049】
この蒸留容器10の内装体30内に金属製精製物が配置され、蒸留処理され、成型されると、インゴット成型用空間35の形状を有する高速炉用インゴット50が得られる。高速炉用インゴット50は、
図3に示されるように、インゴット基部52と、クラスタ形状のインゴット柱状部53とを有する。
【0050】
このように、本実施形態で中間貯蔵される高速炉用インゴット50は、体積が小さい複数個の円柱からなり表面積が大きいクラスタ状のインゴット柱状部53が形成されるため、単位体積あたりの崩壊熱の放出量を大きくすることができる。このため、本実施形態の高速炉用インゴット50を中間貯蔵すると、中間貯蔵時の高速炉用インゴット50の温度を低く維持することができるとともに中間貯蔵時の熱管理負荷を低減することができる。また、本実施形態の高速炉用インゴット50を中間貯蔵する場合、中間貯蔵時の高速炉用インゴット50の温度を低く維持することができることから高速炉用インゴット50の酸化が抑制されるため、高速炉用インゴット50の酸化を抑制するための雰囲気管理の必要もなくなる。
【0051】
なお、従来、本発明のようなクラスタ形状の柱状部を有する高速炉用インゴットを成型するためには、蒸留容器の内装体からの高速炉用インゴットの分離(引き抜き)を容易にするため、内装体のインゴット柱状部成型用空間の形状をテーパー状にしたり、内装体のインゴット柱状部成型用空間の壁面に剥離剤をコーティングしたりする必要があった。
【0052】
これに対し、本実施形態では、内装体30が無機酸化物粉体31の圧粉体であり、破壊が容易である。このため、内装体30を破壊することで容易に高速炉用インゴット50を取り出すことができ、また、崩壊熱の放出量が大きい複雑な形状の高速炉用インゴット50を作製することも可能である。
【0053】
(インゴット成型用空間の形状、大きさ)
蒸留容器10では、インゴット基部成型用空間35aが円柱状、インゴット柱状部成型用空間35bが、円柱状に形成されている例を示した。しかし、本発明の中間生成物貯蔵方法で用いられる蒸留容器10は、インゴット基部成型用空間35aおよびインゴット柱状部成型用空間35bが、それぞれ、円柱状以外の形状に形成されていてもよい。
たとえば、インゴット基部成型用空間35aおよびインゴット柱状部成型用空間35bを、それぞれ、四角柱状、五角柱状、六角柱状等の多角柱状に形成してもよい。
【0054】
蒸留容器10のインゴット成型用空間35を構成するインゴット基部成型用空間35aおよびインゴット柱状部成型用空間35bの形状や大きさは、作製される高速炉用インゴット50の発熱量に応じて変えることが好ましい。
【0055】
蒸留容器10のインゴット成型用空間35を構成するインゴット基部成型用空間35aおよびインゴット柱状部成型用空間35bの形状や大きさを変える方法としては、圧縮用金型40の形状や大きさを、作製される高速炉用インゴット50の発熱量に応じて変える方法が挙げられる。
【0056】
具体的には、はじめに、燃料の燃焼度等を考慮した高速炉用インゴット50の発熱量の評価結果を基にして必要な高速炉用インゴット50のサイズや形状を計算し、このサイズや形状の高速炉用インゴット50を作製可能な圧縮用金型を予め複数用意しておく。次に、適切なサイズや形状の圧縮用金型を用いて高速炉用インゴット50を作製し、さらに状況の変化に応じてより適切な圧縮用金型を選択して高速炉用インゴット50を作製する。これにより、高速炉用インゴット50の表面の温度を好適な範囲内にコントロールすることが可能になる。
【0057】
(内装体の再利用)
また、蒸留容器10は、圧粉体からなる内装体30が、高速炉用インゴット50を取り出した後に粉砕され、内装体30を作製する原料である無機酸化物粉体31として再利用されるようにしてもよい。
内装体30は、高速炉用インゴット50を取り出す際に破壊されやすいが、粉砕して無機酸化物粉体31にすることにより内装体30としての再利用が可能になる。
このように高速炉用インゴット50を取り出した後の内装体30を無機酸化物粉体31として再利用すると、廃棄物の発生量を大幅に減らすことができる。
【0058】
(中間生成物製造装置(蒸留容器)の効果)
中間生成物製造装置としての蒸留容器10によれば、金属製中間生成物であるとともに崩壊熱の放出量が大きい複雑な形状の高速炉用インゴット50を容易に作製することができる。
また、内装体30を圧粉体とした蒸留容器10によれば、内装体30の破壊が容易であることから、崩壊熱の放出量が大きい複雑な形状の高速炉用インゴット50を作製することが可能であるとともに、蒸留容器10から容易に高速炉用インゴット50を取り出すことができる。
さらに、圧縮用金型40の形状や大きさを変えて作製した蒸留容器10によれば、作製される高速炉用インゴット50の形状や大きさを変えることにより高速炉用インゴット50の発熱量を容易に調整することができる。
【0059】
一方、蒸留工程(ステップS303)で、高速炉用インゴット50から分離されたCdや廃塩は、FP処理/廃塩処理工程で廃塩が処理される(ステップS321)。
【0060】
[中間貯蔵工程]
蒸留工程(ステップS303)で作製された高速炉用インゴット50は、中間貯蔵工程で中間貯蔵される(中間貯蔵工程、ステップS331)。
【0061】
ステップS331では、金属製中間生成物である高速炉用インゴット50が中間貯蔵される。高速炉用インゴット50は、蒸留工程(ステップS303)より前の処理により、崩壊熱の大きいFP等の不純物の大部分が除去された後のものになっているとともに、金属であるため、熱導電性が高くかつ低容量化が可能である。このため、高速炉用インゴット50の容積およびその中間貯蔵の貯蔵施設を小型化することができるとともに、除熱のための換気システムも簡略化することができる。
【0062】
中間貯蔵された高速炉用インゴット50(ステップS331)は、金属製高速炉燃料を作製する必要が生じた場合に貯蔵施設から取り出され、被覆管との共晶温度を上昇させるためのZr等が添加された後、射出成形(鋳造)されることにより、ピン状の金属製高速炉燃料である金属燃料スラグが作製される(射出成形工程、ステップS304)。
【0063】
この金属燃料スラグはそのままでまたは適宜表面が研磨されることによりピン状の金属製高速炉燃料(高速炉FL)となる(金属製高速炉燃料生成工程、ステップS305)。ピン状の金属製高速炉燃料(高速炉FL)が被覆管に封入されると高速炉用の燃料ピンが得られる。
【0064】
<第1の実施形態の効果>
第1の実施形態に係る中間生成物貯蔵方法では、貯蔵対象である高速炉用インゴット50が、蒸留工程(ステップS303)より前の処理により、崩壊熱の大きいFP等の不純物の大部分が除去された後のものになっているとともに、金属であるため、熱導電性が高くかつ低容量化されている。
このため、第1の実施形態に係る中間生成物貯蔵方法によれば、低容量化した金属製中間生成物を温度管理や雰囲気管理を全くまたはほとんど行わずに中間貯蔵することができる。
【0065】
また、第1の実施形態に係る中間生成物貯蔵方法によれば、貯蔵される高速炉用インゴット50が、表面積が大きいとともに体積が小さい複数個の円柱状からなるクラスタ状の柱状部が形成されたものになっている。このため、高速炉用インゴット50の単位体積あたりの崩壊熱の放出量を大きくすることができ、中間貯蔵時の高速炉用インゴット50の温度を低く維持することができるとともに中間貯蔵時の熱管理負荷を低減することができる。
【0066】
さらに、第1の実施形態に係る中間生成物貯蔵方法によれば、中間貯蔵時の高速炉用インゴット50の温度を低く維持することができることから高速炉用インゴット50の酸化が抑制されるため、高速炉用インゴット50の酸化を抑制するための雰囲気管理の必要もなくなる。
【0067】
<高速炉用インゴットのMOX燃料への転用>
さらに、第1の実施形態に係る中間生成物貯蔵方法で得られた高速炉用インゴット50は、アクアパイロプロセス200を用いて酸化物に転換された後、軽水炉燃料(軽水炉FL)と混合されることにより軽水炉用のMOX燃料を生成することができる。この方法については第3の実施形態で説明する。
【0068】
(第2の実施形態)
第2の実施形態について説明する。
図5は、中間生成物貯蔵方法の第2の実施形態を示す概略図である。
中間生成物貯蔵方法の第2の実施形態は、
図5に示されたハイブリッド再処理プロセス1Aの金属製中間生成物を貯蔵する中間生成物貯蔵方法である。
【0069】
第2の実施形態は、中間貯蔵される金属製中間生成物として、
図1に示されたハイブリッド再処理プロセス1の金属製中間生成物である高速炉用インゴット50に代えて、ピン状の金属製高速炉燃料である金属燃料スラグと同じ組成かつ同様のピン状に射出成形された貯蔵用燃料スラグを用いる方法である。第2の実施形態は、乾式プロセスで生成される燃料の使用対象が高速炉であることが確実かまたはその可能性が高い場合に用いられる方法である。
【0070】
ハイブリッド再処理プロセス1Aは、湿式プロセス100と、アクアパイロプロセス200と、乾式プロセス300Aとを備える。
ハイブリッド再処理プロセス1Aは、
図1に示されたハイブリッド再処理プロセス1において、乾式プロセス300を乾式プロセス300Aに代えたものである。
このため、以下、第2の実施形態が実施されるハイブリッド再処理プロセス1Aと、ハイブリッド再処理プロセス1とで同じ工程に同じ符号を付して説明を省略または簡略化するとともに、主に乾式プロセス300Aについて説明する。
【0071】
<乾式プロセス>
乾式プロセス300Aは、
図1に示されたハイブリッド再処理プロセス1の乾式プロセス300と同様に、アクアパイロプロセス200で得られた少なくともPuおよびMAを含む酸化物を電解還元して得られた金属製還元物、または使用済み高速炉燃料S311を、電解精製して金属製精製物を生成し、蒸留し、最終的に金属製高速炉燃料を生成するためのプロセスである。
【0072】
乾式プロセス300Aは、
図1に示されたハイブリッド再処理プロセス1の乾式プロセス300において、高速炉用インゴット50を中間貯蔵する中間貯蔵工程(ステップS331)を行わないとともに、蒸留工程(ステップS303)の後に貯蔵用燃料スラグを射出成形する射出成形工程(ステップS341)と、得られた貯蔵用燃料スラグを中間貯蔵する中間貯蔵工程(ステップS342)と、この貯蔵用燃料スラグを成形加工することによりピン状の金属製高速炉燃料である金属燃料スラグを作製する成形加工工程(ステップS343)と、を行ってピン状の金属製高速炉燃料(高速炉FL)を生成するようにしたものである(金属製高速炉燃料生成工程、ステップS305)。
【0073】
射出成形工程(ステップS341)について説明する。
【0074】
[射出成形工程]
上記の蒸留工程(ステップS303)で作製された高速炉用インゴット50は、被覆管との共晶温度を上昇させるためのZr等が添加された後、射出成形(鋳造)されることにより、ピン状の貯蔵用燃料スラグが作製される(射出成形工程、ステップS341)。このハイブリッド再処理プロセス1Aの射出成形工程(ステップS341)は、第1の実施形態が実施されるハイブリッド再処理プロセス1の射出成形工程(ステップS304)と異なり、ピン状の金属製高速炉燃料(高速炉FL)である金属燃料スラグを作製するための中間体である貯蔵用燃料スラグを作製する工程である。
【0075】
ここで、貯蔵用燃料スラグとは、ピン状の金属製高速炉燃料である金属燃料スラグと同じ組成かつ金属燃料スラグと同様のピン状に射出成形された中間体である。
【0076】
貯蔵用燃料スラグは、通常、金属燃料スラグより直径が大きくなるように、すなわち太くなるように形成される。これは、貯蔵された貯蔵用燃料スラグの表面を機械加工等により研磨するだけで規定サイズの金属燃料スラグを作製することができるようにするためである。このように、貯蔵用燃料スラグの表面の研磨だけで金属燃料スラグの作製が可能であると、貯蔵用燃料スラグの再溶融や、高速炉用インゴット50の再射出等の操作が不要となるため、処理コストを低くすることができる。
【0077】
中間貯蔵工程(ステップS342)について説明する。
【0078】
[中間貯蔵工程]
射出成形工程(ステップS341)で作製された貯蔵用燃料スラグは、中間貯蔵工程で中間貯蔵される(中間貯蔵工程、ステップS342)。
【0079】
ステップS342では、金属製中間生成物である貯蔵用燃料スラグが中間貯蔵される。貯蔵用燃料スラグは、第1の実施形態において金属製中間生成物として中間貯蔵される高速炉用インゴット50と同様に、蒸留工程(ステップS303)より前の処理により、崩壊熱の大きいFP等の不純物の大部分が除去された後のものになっているとともに、金属であるため、熱導電性が高くかつ低容量化が可能である。このため、貯蔵用燃料スラグの中間貯蔵の貯蔵施設を小型化することができるとともに、除熱のための換気システムも簡略化することができる。
【0080】
中間貯蔵された貯蔵用燃料スラグ(ステップS342)は、ピン状の金属製高速炉燃料を作製する必要が生じた場合に貯蔵施設から取り出され、表面が機械加工等により研磨されることにより、ピン状の金属製高速炉燃料(高速炉FL)であるピン状の金属燃料スラグが作製される(金属製高速炉燃料生成工程、ステップS305)。このピン状の金属燃料スラグが、被覆管に封入されると高速炉用の燃料ピンが得られる。
【0081】
<第2の実施形態の効果>
第2の実施形態に係る中間生成物貯蔵方法によれば、貯蔵対象である貯蔵用燃料スラグが、蒸留工程(ステップS303)より前の処理により、崩壊熱の大きいFP等の不純物の大部分が除去された後のものになっているとともに、金属であるため、熱導電性が高くかつ低容量化が可能である。このため、貯蔵用燃料スラグの中間貯蔵施設を小型化することができるとともに、除熱のための換気システムも簡略化することができる。
【0082】
また、第2の実施形態に係る中間生成物貯蔵方法によれば、中間貯蔵時の貯蔵用燃料スラグの温度を低く維持することができることから貯蔵用燃料スラグの酸化が抑制されるため、貯蔵用燃料スラグの酸化を抑制するための雰囲気管理の必要もなくなる。
【0083】
(第3の実施形態)
第3の実施形態について説明する。
図6は、中間生成物貯蔵方法の第3の実施形態を示す概略図である。
中間生成物貯蔵方法の第3の実施形態は、
図6に示されたハイブリッド再処理プロセス1Bで中間貯蔵された金属製中間生成物を用いてMOX燃料を調製する中間生成物貯蔵方法である。
【0084】
第3の実施形態は、
図1に示されたハイブリッド再処理プロセス1において、乾式プロセス300で生成された中間貯蔵用の高速炉用インゴット50と、湿式プロセス100で生成された軽水炉燃料(軽水炉FL)とを用いて、軽水炉用のMOX燃料を生成する方法である。第3の実施形態は、乾式プロセスで生成された中間貯蔵用の高速炉用インゴット50を軽水炉用のMOX燃料の原料として再利用する場合に用いられる方法である。
【0085】
ハイブリッド再処理プロセス1Bは、湿式プロセス100Bと、アクアパイロプロセス200Bと、乾式プロセス300Bとを備える。
ハイブリッド再処理プロセス1Bは、
図1に示されたハイブリッド再処理プロセス1において、湿式プロセス100に代えて湿式プロセス100Bを、アクアパイロプロセス200に代えてアクアパイロプロセス200Bを、乾式プロセス300に代えて乾式プロセス300Bを、それぞれ用いたものである。
【0086】
なお、湿式プロセス100Bと湿式プロセス100、アクアパイロプロセス200Bとアクアパイロプロセス200、および乾式プロセス300Bと乾式プロセス300とは、それぞれ多くの工程が共通する。
【0087】
このため、以下、第3の実施形態が実施されるハイブリッド再処理プロセス1Bと、
図1に示された第1の実施形態が実施されるハイブリッド再処理プロセス1とで同じ工程に同じ符号を付して説明を省略または簡略化する。
【0088】
<湿式プロセス>
湿式プロセス100Bは、
図1に示されたハイブリッド再処理プロセス1の湿式プロセス100と同様に使用済み軽水炉燃料から軽水炉燃料(軽水炉FL)を生成するプロセスである。
【0089】
湿式プロセス100Bは、ハイブリッド再処理プロセス1の湿式プロセス100に比較して、得られた軽水炉燃料(軽水炉FL)(ステップS109)を軽水炉用のMOX燃料の原料として用いる点が異なる。
具体的には、湿式プロセス100Bは、得られた軽水炉燃料(軽水炉FL)を、矢印53に示すように、アクアパイロプロセス200Bの混合調整工程(ステップS221)の原料として用いる点が湿式プロセス100と異なる。湿式プロセス100Bのその他の工程は、
図1に示された湿式プロセス100と同じであるため説明を省略する。
【0090】
<乾式プロセス>
乾式プロセス300Bは、
図1に示されたハイブリッド再処理プロセス1の乾式プロセス300と同様にアクアパイロプロセス200Bで得られた少なくともPuおよびMAを含む酸化物を電解還元して得られた金属製還元物、または使用済み高速炉燃料を、電解精製して金属製精製物を生成し、蒸留し、最終的に金属製高速炉燃料を生成するためのプロセスである。
【0091】
乾式プロセス300Bは、
図1に示されたハイブリッド再処理プロセス1の乾式プロセス300に比較して、金属製高速炉燃料の金属製中間生成物である高速炉用インゴット50を軽水炉用のMOX燃料の原料として用いる点が異なる。
具体的には、乾式プロセス300Bは、中間貯蔵された高速炉用インゴット50(ステップS331)の一部または全部を、矢印51に示すようにアクアパイロプロセス200Bの酸化物転換工程(ステップS202)に供給する点が乾式プロセス300と異なる。乾式プロセス300Bのその他の工程は、
図1に示された乾式プロセス300と同じであるため説明を省略する。
【0092】
なお、乾式プロセス300Bは、最終的に金属製高速炉燃料を生成するためのプロセスであるが、金属製高速炉燃料の金属製中間生成物である高速炉用インゴット50を軽水炉用のMOX燃料の原料として用いるため、通常、金属製高速炉燃料(高速炉FL)を生成しない。ただし、乾式プロセス300Bにおいても、高速炉用インゴット50の一部を用いて、乾式プロセス300と同様に金属製高速炉燃料(高速炉FL)S305を生成してもよい。
【0093】
<アクアパイロプロセス>
アクアパイロプロセス200Bは、湿式プロセス100の途中で生成されるウラン抽出残液と乾式プロセス300Bで中間貯蔵された高速炉用インゴット50とからプルトニウムおよびマイナーアクチニドを含む酸化物を生成するとともに、この酸化物と湿式プロセス100で得られた軽水炉燃料(軽水炉FL)とを混合調整して軽水炉用のMOX燃料を生成するプロセスである。
【0094】
アクアパイロプロセス200Bは、
図1に示されたハイブリッド再処理プロセス1のアクアパイロプロセス200と同様に、シュウ酸塩沈殿工程(ステップS201)を行った後、酸化物転換工程(ステップS202)が行われる。
この酸化物転換工程(ステップS202)では、シュウ酸塩沈殿工程(ステップS201)で得られたPuおよびMAを含むシュウ酸塩の濾過・洗浄物が加熱されて酸化物に転換されるとともに、乾式プロセス300Bで中間貯蔵されていた高速炉用インゴット50も加熱されて酸化物に転換される(酸化物転換工程、ステップS202)。
【0095】
得られた酸化物は、湿式プロセス100Bで得られた高純度の軽水炉燃料(軽水炉FL)と混合され、成分が調整される(混合調整工程、ステップS221)。この混合調整工程により、軽水炉用のMOX燃料(MOX FL)が生成される(MOX燃料生成工程、ステップS222)。
【0096】
<第3の実施形態の効果>
第3の実施形態に係る中間生成物貯蔵方法によれば、第1の実施形態に係る中間生成物貯蔵方法と同様の効果を奏する上、高速炉用インゴット50からMOX燃料を生成することができるため、エネルギー需要の変化に柔軟に対応することが可能になる。
【0097】
本発明のいくつかの実施形態を説明したが、これらの実施形態は、例として提示したものであり、発明の範囲を限定することは意図していない。これら新規な実施形態は、その他の様々な形態で実施されることが可能であり、発明の要旨を逸脱しない範囲で、種々の省略、置き換え、変更を行うことができる。これら実施形態やその変形は、発明の範囲や要旨に含まれるとともに、特許請求の範囲に記載された発明とその均等の範囲に含まれる。