特許第6251089号(P6251089)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6251089
(24)【登録日】2017年12月1日
(45)【発行日】2017年12月20日
(54)【発明の名称】成形体の製造方法
(51)【国際特許分類】
   B29B 7/80 20060101AFI20171211BHJP
   B29C 47/38 20060101ALI20171211BHJP
【FI】
   B29B7/80
   B29C47/38
【請求項の数】17
【全頁数】26
(21)【出願番号】特願2014-50248(P2014-50248)
(22)【出願日】2014年3月13日
(65)【公開番号】特開2015-174238(P2015-174238A)
(43)【公開日】2015年10月5日
【審査請求日】2016年12月16日
(73)【特許権者】
【識別番号】000005810
【氏名又は名称】マクセルホールディングス株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100099793
【弁理士】
【氏名又は名称】川北 喜十郎
(74)【代理人】
【識別番号】100154586
【弁理士】
【氏名又は名称】藤田 正広
(74)【代理人】
【識別番号】100139941
【弁理士】
【氏名又は名称】川津 幸恵
(72)【発明者】
【氏名】遊佐 敦
(72)【発明者】
【氏名】鬼頭 朗子
(72)【発明者】
【氏名】臼杵 直樹
(72)【発明者】
【氏名】山本 智史
【審査官】 大塚 徹
(56)【参考文献】
【文献】 特開2013−166304(JP,A)
【文献】 国際公開第2012/120637(WO,A1)
【文献】 特開2006−001252(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B29C 47/00 − 47/96
B29B 7/00 − 7/94
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
成形体の製造方法であって、
熱可塑性樹脂を可塑化して溶融樹脂とすることと、
前記溶融樹脂の圧力を2MPa〜20MPaの第1の圧力に調整することと、
第1の圧力よりも高く且つ4MPa〜30MPaの第2の圧力の流体を調製することと、
第1の圧力の前記溶融樹脂と第2の圧力の前記流体とを混練して、混練物を得ることと、
前記混練物の圧力を2回以上、段階的に低下させて、前記流体を前記溶融樹脂から分離することと、
前記流体を分離した溶融樹脂を所望の形状に成形することを含み、
前記流体、及び/又は、前記流体が接触する前の前記熱可塑性樹脂が、無機粒子、無機粒子の前駆体、無機フィラー、無機フィラーの修飾化合物、ナノカーボン、有機フィラー及び相溶化剤からなる群から選択される少なくとも1つを含有することを特徴とする成形体の製造方法。
【請求項2】
前記流体が、前記無機粒子として、表面を水溶性ポリマーで被覆された金属粒子を含むことを特徴とする請求項1に記載の成形体の製造方法。
【請求項3】
前記流体が、不活性ガス、水及び有機溶剤からなる群から選択される少なくとも1つであることを特徴とする請求項1又は2に記載の成形体の製造方法。
【請求項4】
前記流体が、前記不活性ガスであって、前記不活性ガスが、窒素又は二酸化炭素を含むことを特徴とする請求項3に記載の成形体の製造方法。
【請求項5】
前記流体が、水であることを特徴とする請求項3に記載の成形体の製造方法。
【請求項6】
前記流体が、前記有機溶剤であって、前記有機溶剤が、エタノール、イソプロピルアルコール、N-メチル-2-ピロリドン及びヘキサンからなる群から選択される少なくとも1つであることを特徴とする請求項3に記載の成形体の製造方法。
【請求項7】
前記溶融樹脂と前記流体とを混練するとき、前記流体の温度又は圧力が、臨界点未満であることを特徴とする請求項5又は6に記載の成形体の製造方法。
【請求項8】
更に、
前記溶融樹脂及び前記溶融樹脂から分離した流体を冷却することと、
冷却されたことにより液化した前記流体を回収することを含むことを特徴とする請求項1〜7のいずれか一項に記載の成形体の製造方法。
【請求項9】
可塑化シリンダと、前記可塑化シリンダ内に回転自在に配設されたスクリュと、前記可塑化シリンダ内に設けられたシール機構とを有する成形機を用いることを含み、
前記可塑化シリンダ内において、前記シール機構の上流側の前記混練物の圧力を第1の圧力に調整した状態で、前記シール機構の下流側に前記混練物を流動させることを特徴とする請求項1〜8のいずれか一項に記載の成形体の製造方法。
【請求項10】
可塑化シリンダと、前記可塑化シリンダ内に回転自在に配設されたスクリュと、前記可塑化シリンダ内に設けられたシール機構とを有する成形機を用いることを含み、
前記可塑化シリンダ内において、前記シール機構の上流側の前記混練物の圧力を第1の圧力よりも低い第3の圧力に調整した状態で、前記シール機構の下流側に前記混練物を流動させることを特徴とする請求項1〜8のいずれか一項に記載の成形体の製造方法。
【請求項11】
前記シール機構によって、前記可塑化シリンダ内において、所定圧力未満の混練物を前記シール機構の下流側に流通させないことを特徴とする請求項9又は10に記載の成形体の製造方法。
【請求項12】
前記シール機構は、バネを介して前記スクリュの外周面に設けられるシールリングを含むことを特徴とする請求項11に記載の成形体の製造方法。
【請求項13】
前記シール機構によって、前記可塑化シリンダ内において、前記混練物の流通速度を低下させることを特徴とする請求項9又は10に記載の成形体の製造方法。
【請求項14】
前記シール機構は、ラビリンスシールであることを特徴とする請求項13に記載の成形体の製造方法。
【請求項15】
前記シール機構は、スクリュの回転状態に応じて、前記可塑化シリンダ内における前記シール機構の上流側と下流側を連通及び遮断することを特徴とする請求項9又は10に記載の成形体の製造方法。
【請求項16】
前記シール機構は、スクリュの逆回転により、前記シール機構の上流側と下流側を遮断し、スクリュの正回転、スクリュの回転の停止、またはスクリュの逆回転の回転数の低下のいずれかにより、前記シール機構の上流側と下流側とを連通することを特徴とする請求項15に記載の成形体の製造方法。
【請求項17】
前記溶融樹脂と前記流体を混練しながら、前記可塑化スクリュの正回転及び逆回転を繰り返すことを特徴とする請求項16に記載の成形体の製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、流体を用いる成形体の製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
単分散のナノ粒子は、量子サイズ効果により半値幅の狭い蛍光を発色する等、特異的な性質を有することから、近年、その合成方法や応用が研究されている。単分散のナノ粒子の合成方法は、CVD(Chemical Vapor Deposition)等の気相法と、ゾルゲル法や水熱合成法の液相法に大別される。気相法は製造コストが高く、単分散している微粒子が得難いという欠点を有する。液相法としては、例えば、特許文献1に開示される方法が報告されている。
【0003】
特許文献1には、金属粒子源Aとポリマー粒子Bとそれらの接触を阻害する物質Cと溶媒とを混合し、これら混合物を熱処理及び化学反応させることで粒子源Aからナノ粒子の核を生成し、次いでポリマー粒子Bに囲まれた領域において、600℃以上1000℃以下の温度範囲で熱処理するナノ粒子の製造方法が開示されている。
【0004】
また、特許文献2〜4には、ナノ粒子等の機能性材料を樹脂に混合して、樹脂製品の特性を改良することが開示されている。例えば、特許文献2には、熱可塑性樹脂に親水性の高いクレイを分散するために、熱可塑性樹脂を溶融樹脂にし、溶融樹脂と、クレイと、水又はプロトン供与体を含む溶媒とを混練し、押出成形することが開示されている。また、特許文献3には、高圧オートクレープにポリマー基材、ゲスト物質、高温高圧の二酸化炭素を加え、高圧オートクレープの内容物をノズルを通して、大気圧雰囲気に放出することにより、固体繊維状メッシュ生成物を得ることが開示されている。高圧オートクレープにおいて、ポリマー基材は高温高圧の二酸化炭素により可塑化され、ゲスト物質がポリマー基材に取り込まれ、その結果、固体繊維状メッシュ生成物にゲスト物質が取り込まれる。
【0005】
本発明者らは、特許文献4において、機能性材料を含む成形体を得る方法として、機能性材料を二酸化炭素等の超臨界流体に溶解し、該二酸化炭素を溶融樹脂と混練した後、押出成形する成形方法を開示している。
【0006】
一方、特許文献5には、機能性材料を含有する超臨界二酸化炭素を用いて、射出成形を行う成形機が開示されている。該成形機の可塑化シリンダ内には、溶融樹脂及び超臨界二酸化炭素の流通を遮断するシール機構が設けられている。特許文献5で提案されているシール機構は、スクリュに貫通孔を穿設し、該貫通孔にバネによって開閉するポペット弁を配設したシール機構である。したがって、溶融樹脂は、スクリュに形成された貫通孔を流通することになる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】特許第4767562号公報
【特許文献2】特開平11-310643号公報
【特許文献3】特表2007-509220号公報
【特許文献4】特許第4746708号公報
【特許文献5】特開2011-207160号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
しかし、特許文献2及び3には、熱可塑性樹脂中の機能性材料の分散性を高め、凝集を抑制する手法、及び熱可塑性樹脂中の機能性材料の濃度を高める手法については、何ら開示されていない。
【0009】
また、特許文献4及び5には、機能性材料の熱可塑性樹脂への分散を促進する流体として、加圧状態の二酸化炭素等が用いられており、水や有機溶媒等を用いる方法については開示されていない。加圧状態の二酸化炭素の代わりに水や有機溶媒を用いて、特許文献4及び5に開示される方法を実施した場合、機能性材料の分散性が低下し、凝集が生じる虞がある。
【0010】
更に、特許文献5に開示されるシール機構は、構造が複雑であり、メンテナスが困難であるという問題を有する。例えば、バネは加熱された溶融樹脂と接触するため消耗するが、スクリュ内部に配置されているため、交換が困難である。したがって、成形機にシール機構を用いる場合には、メンテナンスが容易なシール機構が求められていた。
【0011】
本発明は、これらの課題を解決するものであり、機能性材料の熱可塑性樹脂への分散を促進する流体を用いる成形方法において、流体として、加圧二酸化炭素等の不活性ガスを用いた場合のみならず、水や有機溶媒を用いた場合にも、熱可塑性樹脂中の機能性材料の分散性を高め、凝集を抑制し、更に、熱可塑性樹脂中の機能性材料の濃度を高めることを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0012】
本発明に従えば、成形体の製造方法であって、熱可塑性樹脂を可塑化して溶融樹脂とすることと、前記溶融樹脂の圧力を2MPa〜20MPaの第1の圧力に調整することと、第1の圧力よりも高く且つ4MPa〜30MPaの第2の圧力の流体を調製することと、第1の圧力の前記溶融樹脂と第2の圧力の前記流体とを混練して、混練物を得ることと、前記混練物の圧力を2回以上、段階的に低下させて、前記流体を前記溶融樹脂から分離することと、前記流体を分離した溶融樹脂を所望の形状に成形することを含み、前記流体、及び/又は、前記流体が接触する前の前記熱可塑性樹脂が、無機粒子、無機粒子の前駆体、無機フィラー、無機フィラーの修飾化合物、ナノカーボン、有機フィラー及び相溶化剤からなる群から選択される少なくとも1つを含有することを特徴とする成形体の製造方法が提供される。
【0013】
前記流体が、前記無機粒子として、表面を水溶性ポリマーで被覆された金属粒子を含んでもよい。
【0014】
また、本発明においては、前記流体が、不活性ガス、水及び有機溶剤からなる群から選択される少なくとも1つであってもよく、前記不活性ガスが、窒素又は二酸化炭素を含んでもよい。前記流体が、水であってもよく、前記有機溶剤が、エタノール、イソプロピルアルコール、N-メチル-2-ピロリドン及びヘキサンからなる群から選択される少なくとも1つであってもよい。前記水又は有機溶剤の温度又は圧力は、前記溶融樹脂と前記水又は有機溶剤とを混練するとき、臨界点未満であってもよい。
【0015】
更に、本発明においては、前記溶融樹脂及び前記溶融樹脂から分離した流体を冷却することと、冷却されたことにより液化した前記流体を回収することを含んでもよい。
【0016】
本発明においては、可塑化シリンダと、前記可塑化シリンダ内に回転自在に配設されたスクリュと、前記可塑化シリンダ内に設けられたシール機構とを有する成形機を用いることを含み、前記可塑化シリンダ内において、前記シール機構の上流側の前記混練物の圧力を第1の圧力に調整した状態で、前記シール機構の下流側に前記混練物を流動させてもよい。また、前記可塑化シリンダ内において、前記シール機構の上流側の前記混練物の圧力を第1の圧力よりも低い第3の圧力に調整した状態で、前記シール機構の下流側に前記混練物を流動させてもよい。
【0017】
また、前記シール機構によって、前記可塑化シリンダ内において、所定圧力未満の前記混練物を前記シール機構の下流側に流通させなくてもよく、前記シール機構は、バネを介して前記スクリュの外周面に設けられるシールリングを含んでもよい。前記シール機構によって、前記可塑化シリンダ内において、前記混練物の流通速度を低下させてもよく、前記シール機構は、ラビリンスシールであってもよい。また、前記シール機構は、スクリュの回転状態に応じて、前記可塑化シリンダ内における前記シール機構の上流側と下流側を連通及び遮断してもよく、前記シール機構は、スクリュの逆回転により、前記シール機構の上流側と下流側を遮断し、スクリュの正回転、スクリュの回転の停止、またはスクリュの逆回転の回転数の低下のいずれかにより、前記シール機構の上流側と下流側とを連通してもよく、更に、前記溶融樹脂と前記流体を混練しながら、前記可塑化スクリュの正回転及び逆回転を繰り返してもよい。
【発明の効果】
【0018】
本発明は、機能性材料の熱可塑性樹脂への分散を促進する流体を用いる成形方法において、流体として、加圧二酸化炭素等の不活性ガスを用いた場合のみならず、水や有機溶媒を用いた場合にも、熱可塑性樹脂中の機能性材料の分散性を高め、凝集を抑制し、更に、熱可塑性樹脂中の機能性材料の濃度を高める。
【図面の簡単な説明】
【0019】
図1】第1の実施形態の成形体の製造方法を示すフローチャートである。
図2】第1の実施形態に用いる成形機を示す概略断面図である。
図3図3(a)及び(b)は、第1の実施形態に用いる成形機の第1の下流側シール機構の拡大図である。
図4】第2の実施形態に用いる成形機を示す概略断面図である。
図5図5(a)は、第2の実施形態に用いる成形機の第1の下流側シール機構の拡大図であり、図5(b)は図5(a)に示す第1の下流側シール機構のA-A′線断面図であり、図5(c)は図5(a)に示す第1の下流側シール機構のB-B′線断面図である。
図6】第3の実施形態に用いる成形機を示す概略断面図である。
図7】実施例1において用いたナノ粒子製造装置を示す概略図である。
【発明を実施するための形態】
【0020】
[第1の実施形態]
本実施形態の成形体の製造方法は、押出成形であり、図2に示す成形機1000を用いて実施することができる。まず、成形機1000について説明する。
【0021】
<成形機>
図2に示すように、成形機1000は単軸の押出成形機である。成形機1000は、可塑化シリンダ210を有する混練装置200と、機能性材料を含有する流体を可塑化シリンダ210に供給する流体供給装置100及び制御装置(不図示)を備える。制御装置は、流体供給装置100及び混練装置200を動作制御する。また、混練装置200の先端にはダイ29が設けられ、ダイ29から溶融樹脂が押し出される。
【0022】
図2に示す混練装置200は、可塑化シリンダ210と、可塑化シリンダ210内に回転自在に配設されたスクリュ20と、スクリュ20を駆動させるスクリュ駆動機構37と、可塑化シリンダ210内に配置される上流側シール機構S1及び第1の下流側シール機構S21と、第2の下流側シール機構S22と、可塑化シリンダ210に接続する流体回収装置300を備える。本実施形態では、可塑化シリンダ210内において、可塑化溶融された溶融樹脂は、図2及び図3における右手から左手に向かって流動する。したがって、本実施形態の可塑化シリンダ210の内部においては、図2及び図3における右手を「上流」又は「後方」、左手を「下流」又は「前方」と定義する。尚、本実施形態の混練装置200は、従来公知の混練装置の構成と同様に、可塑化シリンダ210の後方側から見た場合に、スクリュ20を反時計回りに回転させると溶融樹脂を前方(ノズル部側)に送る正回転をし、時計回りに回転させると逆回転するように構成されている。
【0023】
可塑化シリンダ210の上部側面には、上流側から順に、熱可塑性樹脂を可塑化シリンダ210に供給するための樹脂供給口201、流体を可塑化シリンダ210内に導入するための導入口202が設け有れている。また、導入口202の下流には、可塑化シリンダ210の下部側面に、可塑化シリンダ210内から流体を排出するための排出口203が複数形成されている。これらの樹脂供給口201、導入口202及び排出口203には、それぞれ、樹脂供給用ホッパ211、導入バルブ212及び抽出管213が配設されている。また導入バルブ212及び抽出管213は、それぞれ、流体供給装置100及び流体回収装置300と接続される。可塑化シリンダ210の外壁面には、バンドヒータ220が配設されており、これにより可塑化シリンダ210が加熱されて、熱可塑性樹脂の可塑化が促進される。
【0024】
混練装置200では、樹脂供給口201から可塑化シリンダ210内に熱可塑性樹脂が供給され、熱可塑性樹脂がバンドヒータ220によって可塑化されて溶融樹脂となり、スクリュ20が正回転することにより下流に送られる。そして、導入口202近傍まで送られた溶融樹脂は、導入された流体と高圧下、接触混練される。次いで、流体と接触混練された溶融樹脂の樹脂内圧を低下させることにより、ガス化した一部の流体が溶融樹脂から分離し、排出口203から排出される。これにより、可塑化シリンダ210内では、上流側から順に、熱可塑性樹脂を可塑化して溶融樹脂とする可塑化ゾーン21、溶融樹脂と導入口202から導入される流体とを高圧下、接触混練する高圧混練ゾーン22、流体と接触混練した溶融樹脂の圧力を低下させる減圧ゾーン23、溶融樹脂から、流体の一部をガス化させて分離する分離ゾーン24、分離された流体を排出口203から排出する排出ゾーン25が形成される。排出ゾーン25が形成される部分の可塑化シリンダ210外表面には、冷却ジャケット230が設けられており、これにより溶融樹脂及びガス化して分離された流体は冷却され、冷却された流体は、排出口203から排出される。排出ゾーン25の下流には、バンドヒータ220を備える再溶融ゾーン26が設けられる。排出ゾーン25で冷却された溶融樹脂は、再溶融ゾーン26で再度、加熱されて溶融し、ダイ29から押出される。
【0025】
上述した上流側シール機構S1は、可塑化ゾーン21と高圧混練ゾーン22との間に配置され、第1の下流側シール機構S21は、高圧混練ゾーン22と減圧ゾーン23との間に配置され、第2の下流側シール機構S22は、減圧ゾーン23と分離ゾーン24との間に配置される。このように、減圧ゾーン23は、可塑化シリンダ210内において、第1及び第2の下流側シール機構S21、S22に挟まれて区画されている。
【0026】
尚、本実施形態では、減圧ゾーン23は1つのゾーンから形成されているが、減圧ゾーン23は複数のゾーンを有していてもよい。例えば、減圧ゾーン23内に1つ以上のシール機構を設けて、シール機構により、減圧ゾーン23を複数のゾーンに区画することができる。この場合、溶融樹脂は、高圧混練ゾーン22から、減圧ゾーン23の複数のゾーンを通過して分離ゾーン24へ流動する。
【0027】
本実施形態の混練装置200では、スクリュ20は、スクリュ径が細い飢餓スクリュ部20Aを有し、飢餓スクリュ部20Aは可塑化シリンダの分離ゾーン24に位置する。飢餓スクリュ部20Aにより、分離ゾーン24において、溶融樹脂の減圧及び溶融樹脂からの流体の分離が促進される。
【0028】
本実施形態の流体供給装置100は、機能性材料が溶解又は分散している流体(溶液又は分散体)Cが収容される容器101と、流体Cの昇圧及び可塑化シリンダ210への液送を行う2台のシリンジポンプ102と、2台のシリンジポンプ102の切り替えを行う自動エアーオペレートバルブ103と、可塑化シリンダ210へ導入する流体Cの圧力を制御する背圧弁104から主に構成される。
【0029】
流体回収装置300は、抽出管213に接続する真空ポンプPと、真空ポンプPに接続し、抽出された流体を回収する回収容器301から主に構成される。本実施形態では、流体回収装置300は、分離ゾーン24及び排出ゾーン25の圧力を大気圧以下に制御する圧力調整機構も兼ねている。
【0030】
<シール機構>
次に、成形機1000に備えられる上流側シール機構S1、第1の下流側シール機構S21及び第2の下流側シール機構S22について説明する。上流側シール機構S1は、樹脂の上流側への逆流を抑制することができれば任意のシール機構を用いることができ、例えば、従来の発泡成形等に用いるシールリング等を採用できる。
【0031】
本実施形態の第1の下流側シール機構S21は、第1の下流側シール機構S21の上流側の高圧混練ゾーン22において、溶融樹脂の圧力を2MPa〜20MPaの第1の圧力に調整した状態で、第1の下流側シール機構S21の下流側の減圧ゾーン23へ溶融樹脂を流動させることができるシール機構を用いる。また、本実施形態の第2の下流側シール機構S22は、第2の下流側シール機構S22の上流側の減圧ゾーン23において、溶融樹脂の圧力を第1の圧力よりも低く且つ分離ゾーン24の第4の圧力よりも高い第3の圧力に調整した状態で、第2の下流側シール機構S22の下流側の分離ゾーン24へ溶融樹脂を流動させることができるシール機構を用いる。
【0032】
本実施形態では、第1及び第2の下流側シール機構S21、S22として、以下に説明するバネを介してスクリュ20の外周面に設けられるシールリング60を含む、同一構造のシール機構を用いた。第1及び第2の下流側シール機構S21、S22は同一構造であるので、以下、主に第1の下流側シール機構S21について説明する。本実施形態で用いた第1の下流側シール機構S21は、高圧混練ゾーン22の圧力が所定の圧力未満の場合、溶融樹脂を高圧混練ゾーン22から、減圧ゾーン23へ流通させないシール機構である。
【0033】
本実施形態のスクリュ20は、図3に示すように、高圧混練ゾーン22と減圧ゾーン23との境界領域において、この境界領域と隣接する領域に比べて縮径された縮径部50を有している。そして、縮径部50には、縮径部50の範囲で軸方向(前後方向)に移動可能となるように遊嵌状態で下流側シールリング60が外嵌している。これら縮径部50と下流側シールリング60とで、第1の下流側シール機構S21が構成されている。
【0034】
スクリュ20において、縮径部50の下流側には、減圧ゾーン23に位置する下流スクリュ部51が隣接して設けられており、下流クリュ部51は縮径部50より直径が大きいため、縮径部50と連続する端面51aを有する。端面51aには、4か所の孔51bが形成され、それぞれの孔51bの中にはバネピストン61が配置されている。バネピストン61は、孔51bの中に配置される複数の皿バネ63と、孔51bの中で皿バネ63と接触し、且つ一部が孔51bから突出するように配置されるリング64と、皿バネ63とリング64を貫通する軸62から形成される。図3(a)に示すように、バネピストン61のリング64は、下流側シールリング60と接触しており、下流側シールリング60を上流方向(図3(a)において矢印で示す方向)に付勢している。その結果、シールリング60の内壁60aと、縮径部50の外周面50aが当接し、高圧混練ゾーン22と減圧ゾーン23との連通が遮断される。
【0035】
次に、第1の下流側シール機構S21の動作について説明する。スクリュ20が正回転することで、溶融樹脂は上流から下流へ流動する。その結果、高圧混練ゾーン22に滞留する溶融樹脂は、下流側シールリング60を下流方向へ押す。しかし、図3(a)に示すように、バネピストン61により下流側シールリング60は上流方向に付勢され、高圧混練ゾーン22と減圧ゾーン23との連通が遮断されるため、溶融樹脂は高圧混練ゾーン22から減圧ゾーン23へ流動できない。
【0036】
更に、スクリュ20が正回転すると、高圧混練ゾーン22と減圧ゾーン23との連通が遮断された状態のまま、溶融樹脂が可塑化ゾーン21から高圧混練ゾーン22へ流動し続け、高圧混練ゾーン22の圧力が上昇する。高圧混練ゾーン22の圧力が所定の圧力以上になると、下流側シールリング60は溶融樹脂に下流方向へ押され移動し始める。これにより、図3(b)に示すように、下流側シールリング60の内壁60aと、縮径部50の外周面50aが離間し、隙間Gが開口し、隙間Gを通って溶融樹脂が高圧混練ゾーン22から減圧ゾーン23へ移動可能となる。
【0037】
本実施形態の第1及び第2の下流側シール機構S21、S22を構成する下流側シールリング60及びバネピストン61は、図2及び図3に示すように、クリュ20に外接しており、比較的シンプルな構造をとり、例えば、特許文献5に開示される、スクリュに溶融樹脂が流通する貫通穴を形成し、その貫通穴の内部にバネピストンや溶融樹脂のシール構造を設けるといった複雑な構造とは異なる。この様に、本実施形態の第1及び第2の下流側シール機構S21、S22は、構造が単純であるため、メンテナンスが容易である。また第1及び第2の下流側シール機構S21、S22において、隙間Gが開口し始める所定の圧力は、用いるバネのバネ定数、用いるバネの数及び配置等を設計することにより調整が可能である。また、本実施形態では、バネとしてストロークが短くて済むことから皿バネ63を用いるが、コイルバネ等を用いてもよい。
【0038】
<成形方法>
次に、図1に示すフローチャートに従い、本実施形態の成形体の製造方法について説明する。本実施形態では、上で説明した図2に示す成形機1000を用いて行う。成形機1000において、可塑化シリンダの可塑化ゾーン21、高圧混練ゾーン22、減圧ゾーン23、分離ゾーン24、排出ゾーン25及び再溶融ゾーン26の温度は、使用する熱可塑性樹脂、流体の種類に応じて適宜選択することができる。また、本実施形態では、以下に説明する熱可塑性樹脂の可塑化及び溶融樹脂の計量の間(可塑化計量の間)、スクリュ20を同一方向に回転する。
【0039】
まず、熱可塑性樹脂を可塑化シリンダ210に供給し、スクリュ20を正回転させることにより、可塑化ゾーン21で熱可塑性樹脂を可塑化して溶融樹脂とする(ステップS1)。
【0040】
熱可塑性樹脂としては、目的とする成形体の種類に応じて種々の樹脂を使用することができる。具体的には、例えば、ポリプロピレン、ポリメチルメタクリレート、ポリアミド、ポリカーボネート、アモルファスポリオレフィン、ポリエーテルイミド、ポリエチレンテレフタレート、ポリエーテルエーテルケトン、ABS系樹脂、ポリフェニレンサルファイド、ポリアミドイミド、ポリ乳酸、ポリカプロラクトンなどの熱可塑性樹脂、及びこれらの複合材料を用いることができる。また、熱可塑性樹脂としては、ガラス繊維、タルク、カーボン繊維などの各種無機フィラーを混練したものを用いてもよく、凝集性の高いナノセルロースファイバー、カーボンナノチューブ等のナノファイバーを混練したものを用いてもよい。更に、熱可塑性樹脂に混練するファイバーやフィラーは、流体に親和性の高い官能基により表面修飾したものであってもよい。本実施形態の熱可塑性樹脂は、1種類の樹脂を単独で用いてもよいし、2種類以上の樹脂を混合して用いてもよい。
【0041】
次に、スクリュ20を正回転することにより、可塑化された溶融樹脂を可塑化ゾーン21から高圧混練ゾーン22へ送り、高圧混練ゾーン22において、溶融樹脂の圧力を2MPa〜20MPaの第1の圧力に調整する(ステップS2)。溶融樹脂の圧力を2MPa〜20MPaに高めておくと、溶融樹脂と、流体及び機能性材料との混練性、分散性が良好となる。また、第1の圧力が2MPa未満であると、流体の圧力損失を抑制し難くなり、20MPaを超えると、溶融樹脂の密度が高くなり過ぎ、機能性材料の分散性が低下する。第1の圧力は、4MPa〜15MPaが好ましい。また、溶融樹脂の第1の圧力は、上記範囲内であれば変動してもよいが、機能性材料の分散安定性の観点から、その変動幅を±2MPaの範囲に制御することが好ましく、±1MPaの範囲に制御することがより好ましい。
【0042】
本実施形態では、上述のように高圧混練ゾーン22と減圧ゾーン23の間に第1の下流側シール機構S21を設け、スクリュを同一方向に回転することにより、前記溶融樹脂の圧力を第1の圧力に調整する。以下に、溶融樹脂の圧力の調整方法を説明する。まず、第1の下流側シール機構S21により、高圧混練ゾーン22と減圧ゾーン23との連通を遮断した状態で、スクリュ20を正回転する。上流側シール機構S1により、高圧混練ゾーン22から可塑化ゾーン21への逆流は抑制されるため、可塑化ゾーン21から高圧混練ゾーン22へ溶融樹脂は流動し続け、高圧混練ゾーン22の圧力が上昇する。スクリュを正回転することにより、高圧混練ゾーン22における溶融樹脂の圧力が更に上昇して所定の圧力以上になると、第1の下流側シール機構S21により、高圧混練ゾーン22と減圧ゾーン23とが連通し、溶融樹脂は下流の減圧ゾーン23へ流動する。溶融樹脂が下流の減圧ゾーン23へ流動すると、高圧混練ゾーン22の圧力は低下し始め、そして、高圧混練ゾーン22の圧力が所定の圧力以下になると、再び第1の下流側シール機構S21により、高圧混練ゾーン22と減圧ゾーン23との連通が遮断される。スクリュは正回転するため、再び高圧混練ゾーン22の圧力は上昇し、そして、所定の圧力以上になると、第1の下流側シール機構S21により、高圧混練ゾーン22と減圧ゾーン23とが再び連通し、溶融樹脂は下流の減圧ゾーン23へ流動する。このように、本実施形態では、スクリュを同一方向に回転(正回転)することにより、高圧混練ゾーン22の圧力に応じて、第1の下流側シール機構S21が高圧混練ゾーン22と減圧ゾーン23との連通と遮断を繰り返す。この結果、高圧混練ゾーン22における溶融樹脂の圧力を圧力変動の少ない高圧力(第1の圧力)に維持することができる。例えば、後述する実施例1では、高圧混練ゾーン22の圧力が6MPaのとき、第1の下流側シール機構S21の隙間Gが開口し始め、該圧力が10MPaで図3(b)に示すようにシールリング60が下流方向へ最前進して隙間Gが最大となるような第1の下流側シール機構S21を用いた。この結果、高圧混練ゾーン22において、溶融樹脂の圧力を10±0.5MPaに調整することができた。
【0043】
次に、第1の圧力よりも高く且つ4MPa〜30MPaの第2の圧力の流体を調製する(ステップS3)。第2の圧力が、4MPa未満であると、流体の溶融樹脂に対する溶解度が低下し、第2の圧力が30MPaを超えると、装置の負担が大きくなり、装置コストも増加する。第2の圧力は、6MPa〜15MPaが好ましい。また、可塑化シリンダ210への流体の導入を容易にするため、第2の圧力は第1の圧力よりも高く調整するが、第1の圧力と第2の圧力との差は、流体の連続供給の安定性の観点から、0.1MPa〜10MPaが好ましく、1MPa〜5MPaがより好ましい。
【0044】
本発明において、流体は機能性材料を含んでもよい。本実施形態では、流体は機能性材料を含む。以下、必要に応じて、機能性材料を含む流体を「混合加圧流体」と記す。
【0045】
本実施形態で用いられる流体は、機能性材料を溶解する溶媒、又は機能性材料を分散する分散媒となり得る流体であれば任意である。例えば、二酸化炭素や窒素等の不活性ガスを用いることができる。これらの流体は、人体に無害であり、また溶融樹脂への拡散性に優れ、溶融樹脂から容易に除去可能であり、更に、溶融樹脂の可塑剤としても機能する。また、流体として、水又は有機溶剤を用いることもできる。有機溶媒としては、メタノール、エタノール、イソプロピルアルコール(IPA)等のアルコール、N-メチル-2-ピロリドン(NMP)、ヘキサン、テトラヒドロフラン、トルエン、N,N-ジメチルホルムアミド、酢酸、酢酸エチル、ジメチルスルホキシド、ジメチルエーテル等の各種極性、非極性有機溶媒を用いることができる。流体としては、エタノール、イソプロピルアルコール、N-メチル-2-ピロリドン及びヘキサンを用いることが好ましい。これらの有機溶媒の流体は、超臨界状態又は液体状態の二酸化炭素と相溶し、二酸化炭素との混合溶媒とすることで、溶融樹脂への浸透性を高めることができる。尚、強酸や強アルカリは、成形機の可塑化シリンダを腐食させる恐れがあるため、流体として用いないことが好ましい。本実施形態の流体は、1種類の流体を単独で用いてもよいし、2種類以上の流体を混合して用いてもよい。
【0046】
機能性材料としては、上述した流体に溶解又は分散でき、得られる成形体に所定の機能を付与できるものであれば特に制限されない。このような機能性材料としては、例えば、有機金属錯体、金属アルコキシド、金属粒子等の無機粒子或いはその前駆体;天然鉱物、炭素繊維、ガラス繊維等の無機フィラー或いはその修飾化合物;カーボンナノチューブ、ナノダイヤ、フラーレン等のナノカーボン;セルロースナノファイバー等の有機フィラー、染料、可塑剤、紫外線吸収剤、熱安定剤、造核剤、酸化防止剤、触媒、界面活性剤、帯電防止剤、難燃材料、各種樹脂のアロイ化を促進させるための相溶化剤などが挙げられる。
【0047】
本実施形態においては、機能性材料は流体に全て溶解又は分散させて溶融樹脂に導入するが、流体とは別に、流体が接触する前の熱可塑性樹脂に混合してもよい。機能性材料が混合された熱可塑性樹脂を可塑化溶融すると、例えば、ファイバー形状の機能性材料は、絡み合ったり、凝集したりする虞がある。しかし、この状態の溶融樹脂に加圧状態の流体を導入すると、絡み合った機能性材料の凝集体に加圧状態の流体が浸透し、絡み合った機能性材料を解繊して、凝集を解きほぐすことができる。流体が接触する前の熱可塑性樹脂に機能性材料を混合しておく方法によれば、低剪断で熱可塑性樹脂への機能性材料の分散性を向上できる。このため、例えば、フィラー形状の機能性材料の切断を抑制でき、更に成形体の剛性の向上も期待できる。流体が接触する前の熱可塑性樹脂に機能性材料を混合しておく方法に用いる機能性材料としては、例えば、流体への親和性を高くするように表面を化学修飾したナノファイバーが挙げられる。
【0048】
更に、本実施形態では、機能性材料として、表面を水溶性ポリマーで被覆された金属粒子からなる、平均粒子径が10nm以下のナノ粒子を用いることもできる。例えば、金属粒子としてはパラジウムを用いることができ、水溶性ポリマーとしては、ポリ(2−ビニルピリジン)、ポリ(4−ビニルピリジン)、ポリビニルピロリドン、ポリ(N−ビニルアセトアミド)、ポリ(ビニルアミン)、ポリ(3−ビニルピリジン)、ポリ(N−ビニルカルバゾール) 、ポリ(ビニルチアゾリウム塩)、ポリビニルアルコール等を用いることができる。水溶性ポリマーで被覆されているナノ粒子は、流体として水を用いた場合に流体への分散性に優れる。また粒径がナノオーダーと小さいため、例えば、無電解メッキの触媒として用いた場合に高い触媒活性を示すことができる。表面を水溶性ポリマーで被覆された金属粒子は、例えば、後述する実施例1に記載した方法により製造することができる。
【0049】
流体中の機能性材料の濃度は、使用する機能性材料の種類、目的とする成形体の機能を考慮して適宜選択することができ、特に制限されないが、溶融樹脂への浸透性や流体中の機能性材料の凝集を考慮すれば、好ましくは飽和溶解度以下であり、飽和溶解度の1〜50%程度が好ましい。尚、本実施形態では、上述のように、流体は不活性ガスに限定されず、選択の幅が広い。したがって、機能性材料の良溶媒を流体として採用することにより、流体中の機能性材料の濃度を高めることができる。
【0050】
流体を調製する方法としては、特に限定されず、従来公知の方法を使用することができる。本実施形態では、図2に示す流体供給装置100の容器101において、機能性材料と流体を混合し、機能性材料を含む流体Cを調製した後、シリンジポンプ102により昇圧し、背圧弁104により、第2の圧力の混合加圧流体を調製した。
【0051】
混合加圧流体の温度は、流体の種類によっても適切な条件は異なり任意であるが、例えば、10℃〜100℃とすることができる。温度が10℃〜100℃の範囲であれば、系内での流体の制御が容易となる。また、本実施形態の第2の圧力に加圧した流体は、密度が高く安定であることから、液体状態、亜臨界状態、超臨界状態のいずれかであることが好ましい。
【0052】
次に、高圧混練ゾーン22に第2の圧力に調整した機能性材料を含む流体(混合加圧流体)を導入し、スクリュ20を回転することにより、高圧混練ゾーン22において、第1の圧力の前記溶融樹脂と、第2の圧力の流体とを混練して、混練物を得る(ステップS4)。溶融樹脂を第1の圧力に加圧した状態で混合加圧流体と混合することで、混合加圧流体の溶融樹脂への分散性が向上する。流体を高圧混練ゾーン22に供給する方法は任意の方法を使用することができる。例えば、流体を高圧混練ゾーン22に間欠的に導入してもよいし、連続的に導入してもよい。また、流体の導入は、安定な送液が行えるシリンジポンプ等やダブルプランジャーポンプ等の高圧装置を利用して、導入量を制御しながら導入してもよい。本実施形態では、図2に示す流体供給装置100のシリンジポンプ102により、導入量を制御しながら、混合加圧流体を可塑化シリンダ210へ導入する。
【0053】
次に、流体を混練した溶融樹脂の圧力(混練物の圧力)を2回以上、段階的に低下させて、溶融樹脂から流体を分離する(図1のステップS5及びS6)。これにより、溶融樹脂の急減圧が回避され、機能性材料の凝集を抑制できる。尚、本願明細書において、溶融樹脂と流体とを混練する工程の後工程(図1のステップS4の後工程)における「流体を混練した溶融樹脂の圧力」及び「溶融樹脂の圧力」とは、溶融樹脂と流体とを混練する工程(図1のステップS4)によって得られた、溶融樹脂と流体との「混練物の圧力」を意味するものとする。
【0054】
本実施形態では、流体を混練した溶融樹脂の圧力(混練物の圧力)を2回、段階的に低下させて流体を分離する。まず、溶融樹脂の圧力(混練物の圧力)を第1の圧力よりも低い第3の圧力に低下させ(ステップS5)、更に、第3の圧力より低く、且つ大気圧以下の第4の圧力に低下させ、溶融樹脂からガス化した流体を分離する(ステップS6)。本実施形態では、溶融樹脂の圧力(混練物の圧力)を大気圧以下(第4の圧力)に低下させることで、効率的に溶融樹脂から流体を分離することができる。また、溶融樹脂の圧力(混練物の圧力)を第4の圧力に低下させる前に、一旦、第4の圧力よりも高い第3の圧力に低下させることで、溶融樹脂の急減圧が回避され、機能性材料の凝集を抑制できる。
【0055】
混合加圧流体を含む溶融樹脂を急減圧すると、流体が急激に気化して機能性材料が凝集する虞がある。本実施形態では、まず、溶融樹脂の圧力を第3の圧力に低下させて、次に第4の圧力に低下させるというように、溶融樹脂の圧力を段階的に低下させることで、機能性材料の流体を伴った良好な分散状態を維持したまま、穏やかに溶融樹脂の減圧が進む。そして、最後に大気圧以下(第4の圧力)に溶融樹脂を減圧することで、機能性材料の良好な分散状態を維持したまま、流体を溶融樹脂から分離することができる。特に、水(Tc=374℃)、エタノール(Tc=240℃)、ヘキサン(Tc=234℃)等の臨界点の低い物質を流体として用いる場合、溶融樹脂の急減圧による機能性材料の凝集の問題が顕著となる。これらの物質は、超臨界温度が高いため、可塑化シリンダ内において溶融樹脂と混練するとき、超臨界状態ではない。超臨界流体が圧力の変化に伴う密度変化が小さいのに対し、超臨界に達していいない流体は、圧力の変化に伴う密度変化が大きい。このため、わずかな圧力変化により急激に密度が低下して気化し、機能性材料が凝集してしまう。本実施形態の成形方法によれば、熱可塑性樹脂と混練するときに超臨界状態でない流体、即ち、流体の温度又は圧力が臨界点未満であり、高温状態において圧力変化に伴う密度変化が大きく、溶媒性能を維持しにくい流体を用いた場合においても、機能性材料の良好な分散状態を維持したまま、溶融樹脂から流体を分離することができる。
【0056】
また、本実施形態では、溶融樹脂の圧力を第4の圧力に低下させる前に、一旦、第4の圧力よりも高い第3の圧力に低下させることで、多量の機能性材料を溶融樹脂に混合することができる。高圧混練ゾーン22において、多量に混合加圧流体を導入すると、溶融樹脂と混合加圧流体が十分に混合される前に、高圧混練ゾーン22の圧力が上昇して、溶融樹脂が第1の下流側シール機構S21を通過して下流へ流動する虞がある。そして、もし、第1の下流側シール機構S21を通過した溶融樹脂が急減圧されると、溶融樹脂と混合加圧流体は十分に混合されずに、流体又は流体と共に機能性材料も溶融樹脂から分離される虞がある。本実施形態では、高圧混練ソーン22に隣接して減圧ゾーン23を設け、溶融樹脂の圧力を第4の圧力に低下させる前に、一旦、第4の圧力よりも高い第3の圧力に低下させることで、溶融樹脂の急減圧を抑制できる。また、減圧ゾーン23と分離ゾーン24との間には、第2の下流側シール機構S22が設けられているため、溶融樹脂は減圧ゾーン23に留まり、分離ゾーン24で溶融樹脂から流体が分離される前に、減圧ゾーン23においても、溶融樹脂と混合加圧流体を十分に混練することができる。この結果、本実施形態では、溶融樹脂に多量の混合加圧流体を混合でき、良好な分散状態を維持したまま、溶媒のみを分離することができる。そのため、多量の混合加圧流体を溶融樹脂に混合するために、溶融樹脂に多くのせん断力を付与する必要がなくなり、樹脂や機能性材料へのダメージを減少させることができる。更に、成形に用いる成形機は、二軸押出機等ではなく、安価な単軸押出機とすることができる。
【0057】
第3の圧力は、第1の圧力よりも低く且つ第4の圧力よりも高ければ任意であるが、0.1MPa〜10MPaか好ましく、1MPa〜5MPaがより好ましい。第4の圧力は、大気圧以下であれば任意であるが、−0.1MPa〜0.1MPaか好ましく、−0.05MPa〜0.1MPaがより好ましい。
【0058】
次に、本実施形態において、混合加圧流体を含む溶融樹脂の温度を第3の圧力及び第4の圧力に調整する方法について説明する。
【0059】
上述したように、本実施形態では、高圧混練ゾーン22と減圧ゾーン23との間に第1の下流側シール機構S21を設けることにより、高圧混練ゾーン22を第1の圧力に保持したまま、高圧混練ゾーン22から下流の減圧ゾーン23へ溶融樹脂が流動する。そして、減圧ゾーン23と分離ゾーン24との間に、第1の下流側シール機構S21と同様の構造を有する第2の下流側シール機構S22を設け、スクリュを同一方向に回転することにより、減圧ゾーン23において、溶融樹脂の圧力を第3の圧力に調整する。本実施形態では、スクリュを同一方向に回転(正回転)することにより、減圧ゾーン23の圧力に応じて、第2の下流側シール機構S22が減圧ゾーン23と分離ゾーン24との連通と遮断を繰り返す。この結果、減圧ゾーン23における溶融樹脂の圧力を圧力変動の少ない圧力(第3の圧力)に維持することができる。例えば、後述する実施例1では、減圧ゾーン23の圧力が4MPaのとき、第2の下流側シール機構S22の隙間Gが開口し始め、該圧力が6MPaで図3(b)に示すようにシールリング60が下流方向へ最前進して隙間Gが最大となるような第2の下流側シール機構S22を用いた。この結果、高圧混練ゾーン22において、溶融樹脂の圧力を5±0.5MPaに調整することができた。
【0060】
分離ゾーン24は、大気圧以下の第4の圧力に調整する。調製の方法は任意であるが、例えば、分離ゾーン24を可塑化スクリュ210の外部と連通させることにより分離ゾーン24を大気圧としてもよく、真空ポンプ等で吸引して大気圧未満としてもよい。本実施形態では、分離ゾーン24の下流側に隣接する排出ゾーン25に真空ポンプPを接続し、分離ゾーン24及び排出ゾーン25を大気圧以下に減圧する。
【0061】
スクリュ20を回転することにより、減圧ゾーン23を第3の圧力に保持したまま、減圧ゾーン23から下流の分離ゾーン24へ溶融樹脂を流動させる。分離ゾーン24へ流動してきた溶融樹脂は第4の圧力まで減圧され、溶融樹脂から流体がガス化し、分離する。本実施形態では、分離ゾーン24に位置する飢餓スクリュ部20Aにより、溶融樹脂の減圧及び溶融樹脂からの流体の分離が促進される。
【0062】
溶融樹脂からガス化した流体は、回収してもよい。溶融樹脂から分離した流体は、そのまま可塑化シリンダ210の外部へ排出して回収しなくてもよいが、流体が可燃性気体である場合等は、安全面、環境面から回収することが好ましい。流体を回収する場合、回収効率の観点から、ガス化した流体を冷却して液体として回収することが好ましい。
【0063】
本実施形態では、スクリュ20を正回転することにより、溶融樹脂を分離ゾーン24の下流側に隣接する排出ゾーン25へ流動させ、排出ゾーン25を冷却ジャケット230により冷却することにより、溶融樹脂と、溶融樹脂から分離された流体とを冷却する。これにより、溶融樹脂は半固化又は固化し、溶融樹脂から分離された流体は液化される。液化した流体は、真空ポンプPにより吸引され、抽出管213を通過して、回収容器12に回収される。このように、本実施形態では、溶融樹脂を冷却し、溶融樹脂を半固化又は固化させるため、溶融樹脂のベントアップを抑制することができる。
【0064】
次に、ガス化した流体を分離した溶融樹脂を所望の形状に成形する(ステップS7)。本実施形態では、スクリュ20を正回転することにより、半固化又は固化した溶融樹脂を排出ゾーン25の下流側に隣接する再溶融ゾーン26へ流動させ、再溶融ゾーン26をバンドヒータ220により加熱することにより、半固化又は固化した溶融樹脂を溶融した。その後、ダイ29から押し出し、成形体を得る。
【0065】
尚、本実施形態では、溶融樹脂を第3の圧力に調整した後、第4の圧力に調整したが、第4の圧力に調整する前に、第3の圧力に調整した溶融樹脂の圧力を第3の圧力よりも低く且つ第4の圧力よりも高い圧力に、1回以上調整してもよい。例えば、減圧ゾーン23内に1つ以上のシール機構を設けて、シール機構により、減圧ゾーン23を複数のゾーンに区画し、溶融樹脂を高圧混練ゾーン22から、減圧ゾーン23の複数のゾーンを通過させて、分離ゾーン24へ流動させる。そして、減圧ゾーン23の有する各ゾーンにおいて、溶融樹脂の圧力を段階的に低下させる。このように、第4の圧力に調整する前に、溶融樹脂の圧力を複数回、段階的に低下させることで、より穏やかな溶融樹脂の減圧が可能となり、機能性材料の凝集をより抑制できる。
【0066】
[第2の実施形態]
本実施形態の成形体の製造方法は、押出成形であり、図4に示す成形機2000を用いて実施する。成形機2000は、図2に示す成形機1000の第1及び第2の下流側シール機構S21、S22の代わりに、図5(a)〜(c)に示す第1及び第2の下流側シール機構S31、S32を用いた以外は、第1の実施形態で用いた図2に示す成形機1000と同様の構成である。以下に、第1及び第2の下流側シール機構S31、S32について説明する第1及び第2の下流側シール機構S31、S32は同一構造であるので、以下、主に第1の下流側シール機構S31について説明する。
【0067】
<シール機構>
第1の下流側シール機構S31は、第1の実施形態で用いた第1及び第2の下流側シール機構S21、S22と同様に、第1の下流側シール機構S31の上流側の高圧混練ゾーン22において、溶融樹脂の圧力を2MPa〜20MPaの第1の圧力に調整した状態で、第1の下流側シール機構S31の下流側の減圧ゾーン23へ熱可塑性樹脂を流動させることができるシール機構である。本実施形態では、第1の下流側シール機構S31として、スクリュフライトの形状により溶融樹脂の流通を阻害し、溶融樹脂の流通速度を低下させる、ラビリンスシールを用いる。
【0068】
本実施形態の第1の下流側シール機構S31は、スクリュ20の周方向に沿って凹凸を有するスクリュフライト30、40が、スクリュ20の軸方向に、前記凹凸が互い違いに並ぶように複数配置されることにより構成される。図5(a)〜(c)に示すように、スクリュ20の外周面には、スクリュフライト30、40が設けられている。スクリュフライト30、40は、可塑化シリンダ210の内壁と対向する頂部表面を有し、頂部表面には、スクリュ20の周方向に沿って、凸部30a、40aと、凹部30b、40bとが交互に配置されている。そして、スクリュ20の軸方向において、隣接するスクリュフライト30とスクリュフライト40とでは、前記凹凸が互い違いに並ぶように配置されている。即ち、スクリュフライト30、40の頂部表面の凸部30a、40aと、凹部30b、40bとは、スクリュ20の軸方向に沿っても交互に配置されている。これらスクリュフライト30、40により、可塑化シリンダ210の内壁(静止部)と、スクリュ20(回転軸)の間には、凹凸の隙間を複数段組み合わせたラビリンス構造が形成される。スクリュ20が有しているラビリンス構造が、第1の下流側シール機構S31を構成する。
【0069】
次に、第1の下流側シール機構S31の動作について説明する。スクリュ20が正回転することで、高圧混練ゾーン22に滞留する溶融樹脂は、第1の下流側シール機構S31のラビリンス構造内を通過して、減圧ゾーン23へ流動しようとする。溶融樹脂は、ラビリンス構造によりその流通を阻害され、流通速度が低下する。スクリュ20が正回転するため、高圧混練ゾーン22の圧力は上昇する。そして、圧力が上昇した溶融樹脂は、第1の下流側シール機構S31のラビリンス構造の凹凸の隙間を通過し始める。このとき、溶融樹脂はラビリンス構造の凹凸の隙間を通過しながら、徐々に圧力を低下させて減圧ゾーン23へ流動する。
【0070】
このように、低圧の溶融樹脂は第1の下流側シール機構S31により高圧ゾーン22から減圧ゾーン23への流通を阻止され、高圧の溶融樹脂は第1の下流側シール機構S31を通過できる。本実施形態では、第1の下流側シール機構S31のこの特性を利用して、高圧混練ソーン22の溶融樹脂の圧力を2MPa〜20MPaの第1の圧力に調整する。本実施形態の第1の下流側シール機構S31は、熱可塑性樹脂の種類及びその粘度により、保持できる高圧混練ゾーンの圧力の値が変化するが、高圧混練ソーン22の溶融樹脂の圧力が2MPa〜20MPaとなるように、既知の手法によりラビリンス構造を設計することが可能である。
【0071】
第2の下流側シール機構S32は、第1の下流側シール機構S31と同様の構造のラビリンスシールであり、第2の下流側シール機構S32の上流側の減圧ゾーン23において、溶融樹脂の圧力を第1の圧力よりも低く且つ第4の圧力よりも高い第3の圧力に調整した状態で、第2の下流側シール機構S32の下流側の分離ゾーン24へ熱可塑性樹脂を流動させることができるシール機構である。本実施形態の第1及び第2の下流側シール機構S31、S32は、可動部を有さない非接触シール機構であるため、メンテナンスが容易である。
【0072】
<成形方法>
本実施形態の成形体の製造方法(押出成形)は、図2に示す成形機1000の代わりに、図4に示す第1及び第2の下流側シール機構S31、S32を有する成形機2000を用いて実施する以外は、第1の実施形態と同様に実施することができ、同様の効果を奏する。
【0073】
[第3の実施形態]
本実施形態の成形体の製造方法は、押出成形であり、図6に示す成形機3000を用いて実施する。成形機3000は、図2に示す成形機1000の第1の下流側シール機構S21の代わりに、第1の下流側シール機構S41を用いた以外は、第1の実施形態で用いた図2に示す成形機1000と同様の構成である。以下に、第1の下流側シール機構S41について説明する。
【0074】
<シール機構>
本実施形態では、第1の下流側シール機構S41として、国際公開第2012/120637号に開示されている下流側シール機構を用いる。第1の下流側シール機構S41は、スクリュ20の回転状態に応じて前記高圧混練ゾーン22と前記減圧ゾーン23とを連通及び遮断するシール機構であり、スクリュ20の逆回転により、高圧混練ゾーン22と減圧ゾーン23とを遮断し、スクリュ20の正回転、スクリュ20の回転の停止、またはスクリュ20の逆回転の回転数の低下のいずれかにより高圧混練ゾーン22と前記減圧ゾーン23とを連通する。
<成形方法>
本実施形態の射出成形方法(押出成形)では、図2に示す成形機1000の代わりに、図6に示す成形機3000を用いる。まず、第1の実施形態と同様の方法により、可塑化ゾーン21で熱可塑性樹脂を可塑化して溶融樹脂とする(ステップS1)。そして、スクリュ20を正回転することにより、可塑化された溶融樹脂を可塑化ゾーン21から高圧混練ゾーン22へ送る。それと並行して、流体供給装置100において、第1の実施形態と同様の方法により、第1の圧力よりも高く且つ4MPa〜30MPaの第2の圧力の混合加圧流体を調製する(ステップS3)。
【0075】
次に、スクリュ20を逆回転して、第1の下流側シール機構S41により高圧混練ゾーン22と減圧ゾーン23とを遮断する。そして、高圧混練ゾーン22へ第2の圧力の混合加圧流体を導入することにより、高圧混練ゾーン22の溶融樹脂の圧力を2MPa〜20MPaの第1の圧力に高める(ステップS2)。
【0076】
また、高圧混練ゾーン22の溶融樹脂の圧力を第1の圧力に高める他の方法として、第1の下流側シール機構S41の駆動に伴い開閉して樹脂が流通するクリアランスを狭く設定することが挙げられる。これにより、正回転時に溶融樹脂が第1の下流側シール機構S41を通過する際の流動抵抗を増やし、高圧混練ゾーン22の溶融樹脂の圧力を上昇させることができる。または、高圧混錬ゾーン22の樹脂温度を低くして樹脂粘度を高めることによっても、高圧混錬ゾーン22の圧力を高めることができる。これらの方法は、加圧した流体を高圧混練ゾーン22へ導入する前に、高圧混練ゾーン22の溶融樹脂の圧力を第1の圧力に高めることができるため、好ましい。
【0077】
第1の圧力に調整された溶融樹脂に、更に第2の圧力の混合加圧流体を導入して、第1の圧力の前記溶融樹脂と混練して、混練物を得る(ステップS4)。本実施形態では、混合高圧流体を一定流量で高圧混練ゾーン22に導入しながら、スクリュ20の正回転及び逆回転を繰り返し、混合高圧流体と熱可塑性樹脂を混練する。そして、スクリュ20の正回転及び逆回転を繰り返すことより、第1の下流側シール機構S41は高圧混練ゾーン22と減圧ゾーン23の連通と遮断を繰り返す。この結果、高圧混練ゾーン22における溶融樹脂の圧力(混練物の圧力)を圧力変動の少ない高圧力(第1の圧力)に維持しながら、溶融樹脂を下流の減圧ゾーン23へ流動させることができる。例えば、後述する実施例2では、第1の下流側シール機構S41により、高圧混練ゾーン22における溶融樹脂の圧力(混練物の圧力)を9±1MPaに調整することができた。
【0078】
次に、溶融樹脂の圧力(混練物の圧力)を第1の圧力よりも低い第3の圧力に低下させる(ステップS5)。本実施形態では、第1の実施形態と同様に、減圧ゾーン23と分離ゾーン24との間に、第2の下流側シール機構S22を設けることにより、溶融樹脂の圧力を第3の圧力に低下させることができる。そして、スクリュ20を正回転することにより、減圧ゾーン23を第3の圧力に保持したまま、減圧ゾーン23から下流の分離ゾーン24へ溶融樹脂を流動させる。
【0079】
その後、第1の実施形態と同様の方法により、分離ゾーン24において、溶融樹脂の圧力を第3の圧力より低く、且つ大気圧以下の第4の圧力に低下させ、記溶融樹脂からガス化した流体を分離し(ステップS6)、ダイ29から溶融樹脂を押し出し、溶融樹脂を所望の形状に成形する(ステップS7)。本実施形態の成形体の製造方法(押出成形)は、第1の実施形態と同様の効果を奏することができる。
【0080】
本実施形態に用いた第1の下流側シール機構S41は、スクリュ20の逆回転の時、確実に高圧混練ゾーン22と減圧ゾーン23との連通を遮断できるが、スクリュ20の正回転の時、下流側のゾーン(減圧ゾーン23)の圧力の影響を受け、上流側のゾーン(高圧混練ゾーン22)の急減圧が生じ易い。本実施形態では、第1の下流側シール機構S41の下流に、スクリュの回転方向とは無関係に溶融樹脂の流通を制御する第2の下流側シール機構S22を設けて、減圧ゾーン23の圧力を第3の圧力に保持している。このため、スクリュ20の正回転の時においても、高圧混練ゾーン22の急減圧を抑制できる。
【0081】
以上、第1から第3の実施形態において、バネを介してスクリュ20の外周面に設けられるシールリングを含むシール機構(第1の実施形態の第1及び第2の下流側シール機構S21、S22)、ラビリンスシール機構(第2の実施形態の第1及び第2の下流側シール機構S31、S32)及びスクリュ20の回転状態に応じてゾーン間を連通及び遮断するシール機構(第3の実施形態の第1の下流側シール機構S41)について説明したが、本発明の実施のために用いられるシール機構は、これらに限定されず、また、これらのシール機構は、1つの可塑化シリンダ内に任意の組合せで組み合わせて用いてもよい。但し、分離ゾーン24と減圧ゾーン23の間に設置するシール機構は、スクリュ20の回転状態に応じてゾーン間を連通及び遮断するシール機構(例えば、第3の実施形態の第1の下流側シール機構S41)ではなく、上流側の溶融樹脂の圧力によってゾーン間を流通及び遮断するシール機構(例えば、第1の実施形態の第1及び第2の下流側シール機構S21、S22、第2の実施形態の第1及び第2の下流側シール機構S31、S32)を用いることが好ましい。スクリュ20の回転状態に応じてゾーン間を連通及び遮断するシール機構は、分離ゾーン24と減圧ゾーン23との連通時に、上流側のゾーン(減圧ゾーン)を急減圧する虞や、上流側のゾーンに大きな圧力変動をもたらす虞があるからである。
【0082】
以下、本発明を実施例に基づき更に具体的に説明するが、本発明はこれらの実施例に限定されるものではない。
【実施例】
【0083】
[実施例1]
本実施例では、図2に示す成形機1000を用いて、紐状の成形体を押出成形し、切断して樹脂ペレットを作製した。更に、得られた樹脂ペレットを用いて、成形体を射出成形した。
【0084】
熱可塑性樹脂としては、ナイロン6(東洋紡製、グラマイドT777−02)を用い、流体としては、水を用いた。機能性材料としては、無電解メッキ用触媒として機能する、水溶性ポリマーが被覆されたパラジウム(Pd)ナノ粒子を用いた。本実施形態では、溶融樹脂の押し出し吐出量を10kg/hとし、溶融樹脂に対して流体(水)を100重量%導入して、溶融樹脂中に機能性材料(ナノ粒子)を3重量%含有させた。
【0085】
まず、本実施例で用いた機能性材料である、ナノ粒子の製造に用いた装置及び製造方法について説明する。
【0086】
<ナノ粒子製造装置>
図7の示す装置4000を用いてナノ粒子を製造した。本実施例では、水溶性ポリマーとして、ポリビニルピロリドン(ISP製、PVP K-120、分子量64万)を用い、アルコール(第1の溶媒)としてエタノールを用いて第1溶液を調製し、金属粒子の前駆体としてパラジウム錯体であるヘキサフルオロアセチルアセトナトパラジウム(II)を用い、水溶性ポリマーの貧溶媒(第2の溶媒)としてn−ヘキサンを用いて第2溶液を調製した。
【0087】
本実施例に用いたナノ粒子製造装置4000について説明する。図7に示すように、ナノ粒子製造装置4000は、第1溶液供給機構700、第2溶液供給機構800、ナノ粒子合成部900及びナノ粒子回収部950から構成される。
【0088】
第1及び第2溶液供給機構700、800は、逆止弁77、87を介してナノ粒子合成部900に接続しており、それぞれ、第1溶液、第2溶液をナノ粒子合成部900に供給する。第1溶液供給機構700は、第1溶液が調製される第1溶液供給容器70と、第1溶液供給容器70から第1溶液を吸引後、所定の圧力に昇圧し、更に流量一定で液送可能な2つのシリンジポンプ71、72と、配管に配置される2つの吸引用エアー自動バルブ73、74と、2つの液送用エアー自動バルブ75、76から構成される。第2溶液供給機構800も、第1溶液供給機構700と同様の構成であり、第2溶液が調製される第2溶液供給容器80と、第2溶液供給容器80から第2溶液を吸引後、所定の圧力に昇圧する2つのシリンジポンプ81、82と、配管に配置される2つの吸引用エアー自動バルブ83、84と、2つの液送用エアー自動バルブ85、86から構成される。第1及び第2溶液供給機構700、800は、流量制御及び圧力制御が可能なシリンジポンプ71、72、81、82を有するので、流量及び圧力を所定量に制御した第1及び第2溶液をナノ粒子合成部900へ送ることができる。シリンジポンプ71、72、81、82は、吸引用エアー自動バルブ73、74、83、84を開放して溶液をシリンジポンプ内に吸引した後、前記バルブを閉鎖して加圧して所定圧力に保つ。液送する際は、液送用エアー自動バルブ75、76、85、86を開放し、シリンジポンプのシリンジを一定速度で押し込むことで流量一定で液送することができる。流量制御で加圧流体を流動させる際の圧力は、経路末端の背圧弁99にて調整する。第1及び第2溶液供給機構700、800それぞれにおいて、一方のポンプ(例えば、シリンジポンプ71、81)が液送している際に、他方のポンプ(シリンジポンプ72、82)が溶液を吸引加圧して待機する。液送している一方のポンプ(シリンジポンプ71、81)内の加圧した溶液が空になったタイミングで、ポンプを切り替え、今度は、他方のポンプ(シリンジポンプ72、82)により液送を開始する。これにより連続で圧力と流量を一定にして、第1及び第2溶液供給機構700、800からナノ粒子合成部900へ第1及び第2溶液を液送する(供給する)ことが可能となり、ナノ粒子製造装置4000はナノ粒子を連続製造することができる。尚、第2溶液供給容器80は、加圧二酸化炭素等の高圧流体も収容可能なように高圧密閉容器を用いた。
【0089】
ナノ粒子合成部900は、上述のように第1及び第2溶液供給機構700、800と接続すると共に、圧力計98、背圧弁99を介してナノ粒子回収部950へも接続する。ナノ粒子合成部900は、第1及び第2溶液供給機構700、800から供給される第1溶液と第2溶液とを混合して混合溶液を調製した後、混合溶液内でナノ粒子を合成し、合成したナノ粒子を含む混合溶液をナノ粒子回収部950へ送る。ナノ粒子合成部900は、内壁に配管91を螺旋状に這わせた筒状の電気炉90と、筒状の電気炉90の入口90a側、即ち、第1及び第2溶液供給機構700、800側に配置された冷却用二重配管92と、筒状の電気炉90の出口90b側、つまりナノ粒子回収部950側に配置された冷却用二重配管93とから構成される。第1及び第2溶液供給機構700、800から供給された第1及び第2溶液は、合流点94において合流、混合され混合溶液となった後、冷却用二重配管92、電気炉90内の螺旋状の配管91、冷却用二重配管93を流通し、ナノ粒子回収部950へ送られる。尚、ナノ粒子製造装置4000では、電気炉90内の配管91、冷却用二重配管92、93を含む混合溶液が流通する全ての配管(管)には、肉厚0.5mm(0.02インチ)、外径1.58mm(1/16インチ)のSUS316の配管を用いた。電気炉90内の配管91の長さは約2mとし、配管91の内容積、つまりナノ粒子の合成反応場の容積は、約0.51cmとした。
【0090】
ナノ粒子回収部950は、遠心分離により気体と液体とを分離するサイクロン95と、気体を分離された溶液が回収される回収容器96から構成される。第2の溶媒(水溶性ポリマーの貧溶媒)として加圧二酸化炭素等の高圧容器を用いた場合に、第2の溶媒はサイクロン95により混合溶液から除去される。本実施例では、第2の溶媒に加圧二酸化炭素は用いていないので、サイクロン95は用いず、合成されたナノ粒子を含む混合溶液は、そのまま回収容器96に回収された。
【0091】
<ナノ粒子の製造>
第1溶液供給容器70内で、第1の溶媒であるエタノールに水溶性ポリマーであるポリビニルピロリドンを溶解し、第1溶液を調製した。第1溶液中のポリビニルピロリドン濃度は、3g/Lとした。第2溶液供給容器80内で、第2の溶媒であるn−ヘキサンに金属粒子の前駆体としてパラジウム錯体を溶解し、第2溶液を調製した。第2溶液中のパラジウム錯体濃度は、800mg/Lとした。このとき、第2溶液の色は、パラジウム錯体に起因する黄色であった。
【0092】
次に、第1溶液供給機構700において、吸引用エアー自動バルブ73を開放し、シリンジポンプ71内に第1溶液を吸引し、圧力20MPaに加圧した。同様に、第2溶液供給機構800において、吸引用エアー自動バルブ83を開放し、シリンジポンプ81内に第2溶液を吸引し、圧力20MPaに加圧した。このとき、シリンジポンプ71、81内の温度は常温(25℃)とした。
【0093】
次に、液送用エアー自動バルブ75、85を開放して、第1及び第2溶液を共にナノ粒子合成部900へ液送した。第1及び第2溶液は、逆止弁77、87を経由し、合流点94において合流し、混合され、圧力10MPaの混合溶液となった。第1溶液、第2溶液が、体積比1:1で混合するようにシリンジポンプ71、81を制御し、更に、冷却用二重配管92、電気炉90内の配管91、冷却用二重配管93を経て、背圧弁99まで、圧力10MPaの混合溶液で満たした。このとき、電気炉90の温度は、200℃に制御し、冷却用二重配管92、93には20℃の冷却水を通水し、背圧弁99は事前に圧力計98の表示が10MPaとなるように制御した。
【0094】
次に、シリンジポンプ71、81を流量制御に切り替え、流速1ml/minで混合溶液を配管内に流通させた。シリンジポンプ71、81の流量制御開始1分後に、サイクロン95下部から、混合溶液は黒色の液体として回収容器96内に滴下された。回収された混合溶液の色から、原料のパラジウム錯体が、分解還元されパラジウムとなったと推察される。
【0095】
本実施例で回収された混合溶液(黒色の溶液)からエバポレータにより、エタノール(第1の溶媒)とn−ヘキサン(第2の溶媒)を除去し、黒色の粉体が得られた。
【0096】
得られたナノ粒子を、水中に投入し、水への分散性を評価した。ナノ粒子は、沈降することなく、水に対して良好な分散性を示した。この結果から、得られたナノ粒子は水溶性ポリマーに被覆されているコア-シェル構造を有すると推測される。
【0097】
一方、TEM観察の結果、本実施例で得られたナノ粒子の平均粒子径は10nmであった。ナノ粒子の平均粒子径は、ナノ粒子をTEM観察し、50〜100個の粒子の粒子径を測定して平均した値である。
【0098】
<樹脂ペレットの製造方法>
本実施例では、図2に示す成形機1000のダイ29の先に、図示しない水槽及びストランドカット装置をこの順に配置した。水槽及びストランドカット装置は、汎用のものを用いた。これにより、ダイ29から紐状に押し出される成形物を水槽で冷却し、ストランドカット装置で裁断して、連続的に樹脂ペレットを製造した。
【0099】
まず、流体供給装置100の容器101において、製造したナノ粒子を水に分散し、分散体Cを調製した。分散体中のナノ粒子の濃度は3重量%とした。分散体Cをシリンジポンプ102(ISCO社製、500D)により吸引及び昇圧し、その後、シリンジポンプ102を流量制御に切り替え、可塑化シリンダ210へ送液した。分散体Cは、背圧弁104にて圧力を13MPaに制御した(以下、加圧された分散体Cを必要に応じて「混合加圧流体」と記載する)。これにより、可塑化シリンダ210内に流体を導入する導入バルブ212までの系内を混合加圧流体により加圧した。2台のシリンジポンプ102の切り替えは、図示しない制御装置により、自動エアーオペレートバルブ103を開閉して行った。
【0100】
次に、混練装置200において、樹脂供給用ホッパ211から熱可塑性樹脂を供給し、可塑化ゾーン21の外壁面に設けられたバンドヒータ220により可塑化ゾーン21を加熱し、スクリュ20を正回転させた。これにより、該熱可塑性樹脂を加熱、混練し、溶融樹脂とした。本実施例では、溶融樹脂の温度が210〜240℃となるように可塑化シリンダ210の可塑化ゾーン21を加熱した。尚、本実施例においては、後工程において溶融樹脂と流体との分離を容易にするために、図示しない汎用のフィーダースクリュにより、可塑化シリンダ200への熱可塑性樹脂の供給量を制限しながらに投入した。また、本実施例では、これ以降溶融樹脂の計量が終了するまで、スクリュ20を同一方向に回転(正回転)した。
【0101】
スクリュ20を正回転することにより、溶融樹脂を可塑化ゾーン21から高圧混練ゾーン22に流動させた。上述したように、第1の下流側シール機構S21は、高圧混練ゾーン22の圧力が6MPaのとき、第1の下流側シール機構S21の隙間Gが開口し始め、該圧力が10MPaで図3(b)に示すようにシールリング60が下流方向へ最前進して隙間Gが最大となる。本実施例では、第1の下流側シール機構S21を用いることにより、高圧混練ゾーン11における樹脂の圧力を10±0.5MPa(第1の圧力)で安定するよう制御した。
【0102】
次に、導入バルブ212を開放して、シリンジポンプ102により、混合加圧流体を高圧混練ゾーン22に一定流量で導入した。そして、スクリュ20を正回転し、高圧混練ゾーン22において、10±0.5MPa(第1の圧力)に調整された溶融樹脂に、13MPa(第2の圧力)の混合加圧流体を混練し、混練物を得た。本導入バルブ212直下に設けた圧力センサ(不図示)のモニターした可塑化シリンダ210の内部の圧力は、流体の導入後も10±0.5MPaMPaと安定であった。
【0103】
第1の下流側シール機構S21を用い、スクリュ20を正回転することにより、高圧混練ゾーン22を10±0.5MPa(第1の圧力)に保持した状態で、溶融樹脂を減圧ゾーン23へ流動させた。そして、第2の下流側シール機構S22を用い、スクリュを同一方向に回転することにより、減圧ゾーン23における溶融樹脂の圧力を5±0.5MPa(第3の圧力)に調整した。上述したように、第2の下流側シール機構S22は、減圧混練ゾーン23の圧力が4MPaのとき、第2の下流側シール機構S22の隙間Gが開口し始め、該圧力が6MPaで図3(b)に示すようにシールリング60が下流方向へ最前進して隙間Gが最大となる。
【0104】
分離ゾーン24では、排出ゾーン25に設けた真空ポンプPを駆動し、排出ゾーン25の圧力と共に、分離ゾーン24の圧力を−0.01MPa(第4の圧力)に調整した。そして、スクリュ20を回転することにより、減圧ゾーン23を5±0.5MPa(第3の圧力)に保持したまま、減圧ゾーン23から下流の分離ゾーン24へ溶融樹脂を流動させた。分離ゾーン24へ流動した溶融樹脂は−0.01MPa(第4の圧力)まで減圧され、溶融樹脂から水(流体)がガス化し、分離した。本実施形態では、分離ゾーン24に位置する飢餓スクリュ部20Aにより、溶融樹脂の減圧及び溶融樹脂からの流体の分離が促進された。
【0105】
スクリュ20を回転することにより、溶融樹脂を分離ゾーン24から排出ゾーン25へ流動させた。排出ゾーン25では、冷却ジャケット230により、排出ゾーン25を冷却した。これにより、溶融樹脂は半固化又は固化し、溶融樹脂から分離された水(流体)は液化された。液化した水(流体)は、真空ポンプPにより吸引され、抽出管213を通過して、回収容器12に回収された。
【0106】
スクリュ20を回転することにより、ガス化した水(流体)を分離した溶融樹脂を更に下流の再溶融ゾーン26へ流動させた。再溶融ゾーン26では、バンドヒータ220により、半固化又は固化した溶融樹脂を再度、加熱して溶融した。その後、スクリュ20を回転することにより、溶融樹脂をダイ29から紐状に押し出した。
【0107】
得られた紐状の押出成形物を図示しない水槽を通過させ、その後、図示しないストランドカット装置にて連続的に切断して樹脂ペレットを作製した。得られた樹脂ペレットを目視で観察した。樹脂ペレットには、白濁や加水分解の悪影響は確認されなかった。これから、得られた樹脂ペレットには、流体として用いた水分は、樹脂ペレットの機能に悪影響を与える程は残存していないと推測した。
【0108】
<成形体の成形>
汎用の射出成形機(日本製鋼所製、J180AD−2M)を使用し、製造した樹脂ペレットを用いて平板状の成形体を成形した。得られた成形体を目視で観察した。その結果、パラジウムナノ粒子(機能性材料)の凝集体は確認できなかった。得られた成形体の断面をTEM(透過型電子顕微鏡)により観察した。その結果、成形体中にパラジウム粒子が、約10nmの平均粒子径を維持した状態で均一に分散していることが確認された。以上のように、本実施例では、パラジウムナノ粒子(機能性材料)を凝集させることなく、成形体中に3重量%と多量に含有させることができた。
【0109】
[実施例2]
本実施例では、図6に示す成形機3000を用いて、実施例1と同様の材料から樹脂ペレットを作製し、更に、得られた樹脂ペレットを用いて、実施例1と同様の方法により成形体を射出成形した。
【0110】
<ペレットの製造方法>
まず、実施例1と同様の方法により、可塑化ゾーン21で熱可塑性樹脂を可塑化して溶融樹脂とし、可塑化された溶融樹脂を可塑化ゾーン21から高圧混練ゾーン22へ流動させた。これと並行して、流体供給装置100において、実施例1と同様の方法により、13MPa(第2の圧力)の混合加圧流体を調製した。
【0111】
次に、スクリュ20を逆回転して、第1の下流側シール機構S41により高圧混練ゾーン22と減圧ゾーン23とを遮断し、高圧混練ゾーン22へ混合加圧流体を導入した。高圧混練ゾーン22の圧力は、流体の導入後は、最高9±1MPaとなった。続いて、混合高圧流体を一定流量で高圧混練ゾーン22に導入しながら、スクリュ20の正回転及び逆回転を繰り返した。これにより、第1の下流側シール機構S41は高圧混練ゾーン22と減圧ゾーン23の連通と遮断を繰り返した。この結果、高圧混練ゾーン22において、溶融樹脂の圧力を9±1MPa(第1の圧力)に調整した状態で混合高圧流体との混練を行いながら、溶融樹脂を減圧ゾーン23へ流動させることができた。そして、実施例1と同様に、第2の下流側シール機構S22を用い、スクリュを同一方向に回転することにより、減圧ゾーン23における溶融樹脂の圧力を5±0.5MPa(第3の圧力)に調整した。
【0112】
実施例1と同様の方法により、分離ゾーン24の圧力を−0.01MPa(第4の圧力)に調整し、減圧ゾーン23を5±0.5MPa(第3の圧力)に保持したまま、減圧ゾーン23から下流の分離ゾーン24へ溶融樹脂を流動させた。分離ゾーン24へ流動した溶融樹脂は、−0.01MPa(第4の圧力)まで減圧され、溶融樹脂から水(流体)がガス化し、分離した。
【0113】
実施例1と同様の方法により、溶融樹脂を分離ゾーン24から排出ゾーン25へ流動させ、溶融樹脂から分離された水(流体)を回収容器12に回収し、更に下流の再溶融ゾーン26へ流動させた後、ダイ29から紐状に押し出した。得られた紐状の押出成形物を実施例1と同様の方法により、冷却した後、裁断して樹脂ペレットを得た。得られた樹脂ペレットを目視で観察した。樹脂ペレットには、白濁や加水分解の悪影響は確認されなかった。これから、得られた樹脂ペレットには、流体として用いた水分は、樹脂ペレットの機能に悪影響を与える程は残存していないと推測した。
【0114】
<成形体の成形>
実施例1と同様に、汎用の射出成形機を使用し、製造した樹脂ペレットを用いて平板状の成形体を成形した。得られた成形体を目視で観察した。その結果、パラジウムナノ粒子(機能性材料)の凝集体は確認できなかった。得られた成形体の断面をTEM(透過型電子顕微鏡)により観察した。その結果、成形体中にパラジウム粒子が、約10nmの平均粒子径を維持した状態で均一に分散していることが確認された。以上のように、本実施例では、パラジウムナノ粒子(機能性材料)を凝集させることなく、成形体中に3重量%と多量に含有させることができた。
【0115】
[比較例1]
本比較例では、第2の下流側シール機構S22を設けていない以外は、実施例2で用いた図6に示す成形機3000と同様の構造を有する成形機を用いて、実施例1と同様の材料から樹脂ペレットを作製し、更に、得られた樹脂ペレットを用いて、実施例1と同様の方法により成形体を射出成形した。本比較例で用いた成形機は、第2の下流側シール機構S22を設けていないため、減圧ゾーン23が存在せず、高圧混練ゾーン22と分離ゾーン24とが隣接する構造となる。
【0116】
<ペレットの製造方法>
本比較例では、実施例2と同様に、混合高圧流体を一定流量で高圧混練ゾーン22に導入しながら、スクリュ20の正回転及び逆回転を繰り返したが、スクリュ20を正回転して高圧混練ゾーン22と分離ゾーン24を連通させたとき、高圧混練ゾーン22の圧力が、0〜6MPaと大きく変動した。即ち、本比較例では、2MPa〜20MPaの第1の圧力に調整した溶融樹脂に、混合加圧流体を混練することができなかった。また、本比較例では、第3の圧力に調整された減圧ゾーン23が存在しない成形機を用いるため、溶融樹脂の圧力を第4の圧力(分離ゾーン24)に低下させる前に、第1の圧力よりも低く且つ第4の圧力よりも高い第3の圧力に調整することができなかった。以上説明した事項以外は、実施例2と同様の方法により、樹脂ペレットを製造した。
【0117】
<成形体の成形>
実施例1と同様に、汎用の射出成形機を使用し、製造した樹脂ペレットを用いて平板状の成形体を成形した。得られた成形体を目視で観察した。その結果、目視で確認できる大きさのパラジウムナノ粒子(機能性材料)の凝集体が確認された。これは、以下の理由によるものと推察される。本比較例では、高圧混練ゾーン22の圧力変動が大きく、溶媒として機能する流体の密度が低下して、機能性材料の良好な分散状態を維持できない。そのため、第1の圧力に調整した溶融樹脂に混合加圧流体を混練することができず、溶融樹脂へのパラジウムナノ粒子(機能性材料)の混練性及び分散性が低下したと考えられる。また、溶融樹脂を第4の圧力に低下させる前に、第3の圧力に段階的に低下させることを行わなかったため、パラジウムナノ粒子(機能性材料)の凝集が促進されたと考えられる。
【0118】
[比較例2]
本比較例では、実施例1で用いた図2に示す成形機1000を用いて、実施例1と同様の材料から樹脂ペレットを作製し、更に、得られた樹脂ペレットを用いて、実施例1と同様の方法により成形体を射出成形した。但し、本比較例では、樹脂ペレットの作製において、真空ポンプPを駆動させず、冷却ジャケット230による分離ゾーン24の冷却も行わなかった。
【0119】
<ペレットの製造方法>
本比較例では、真空ポンプPを駆動させなかったため、分離ゾーン24は大気圧以下の第4の圧力に調整されず、分離ゾーン24に流動した溶融樹脂も第4の圧力に調整されなかった。また、水(流体)も回収容器12に回収されなかった。以上説明した事項以外は、実施例1と同様の方法により、樹脂ペレットを製造した。得られた樹脂ペレットを目視で観察した。樹脂ペレットには、白濁が確認された。これから、得られた樹脂ペレットは、完全に水分(機能性材料)が分離していないと推測される。この原因は、溶融樹脂を第4の圧力に減圧しなかったため、溶融樹脂からの水分(流体)の分離が不十分であったためと推測される。
【0120】
<成形体の成形>
水分除去の目的で、得られた樹脂ペレットを80℃で8時間乾燥させた。その後、実施例1と同様に、汎用の射出成形機を使用し、製造した樹脂ペレットを用いて平板状の成形体を成形した。得られた成形体を目視で観察した。その結果、得られた成形体には、シルバーストリーク(銀状痕)が発生していた。これから、得られた成形体には、水分が依然として残存していることがわかった。
【産業上の利用可能性】
【0121】
本発明によれば、機能性材料の熱可塑性樹脂への分散を促進する流体を用いる成形方法において、流体の選択の幅が広がる。これにより、様々な機能性材料を含有する成形体を効率的に製造することが可能となる。
【符号の説明】
【0122】
20 スクリュ
S1 上流側シール機構
100 流体供給装置
200 混練装置
210 可塑化シリンダ
1000、2000、3000 成形機
S21、S31、S41 第1の下流側シール機構
S22、S32 第2の下流側シール機構
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7