特許第6251279号(P6251279)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6251279
(24)【登録日】2017年12月1日
(45)【発行日】2017年12月20日
(54)【発明の名称】アグリカナーゼ阻害剤
(51)【国際特許分類】
   C07D 233/76 20060101AFI20171211BHJP
   A61K 31/4166 20060101ALI20171211BHJP
   A61P 19/02 20060101ALI20171211BHJP
   A61P 29/00 20060101ALI20171211BHJP
   A61P 19/00 20060101ALI20171211BHJP
【FI】
   C07D233/76CSP
   A61K31/4166
   A61P19/02
   A61P29/00
   A61P19/00
【請求項の数】8
【全頁数】36
(21)【出願番号】特願2015-539672(P2015-539672)
(86)(22)【出願日】2013年10月18日
(65)【公表番号】特表2015-535248(P2015-535248A)
(43)【公表日】2015年12月10日
(86)【国際出願番号】US2013065591
(87)【国際公開番号】WO2014066151
(87)【国際公開日】20140501
【審査請求日】2016年10月3日
(31)【優先権主張番号】61/718,965
(32)【優先日】2012年10月26日
(33)【優先権主張国】US
(73)【特許権者】
【識別番号】594197872
【氏名又は名称】イーライ リリー アンド カンパニー
(74)【代理人】
【識別番号】100092783
【弁理士】
【氏名又は名称】小林 浩
(74)【代理人】
【識別番号】100120134
【弁理士】
【氏名又は名称】大森 規雄
(74)【代理人】
【識別番号】100162617
【弁理士】
【氏名又は名称】大賀 沙央里
(74)【代理人】
【識別番号】100104282
【弁理士】
【氏名又は名称】鈴木 康仁
(72)【発明者】
【氏名】ダラム,ティモシー,バレット
(72)【発明者】
【氏名】マリムトゥー,ジョティーラジャー
(72)【発明者】
【氏名】ウィリー,マイケル,ロバート
【審査官】 早川 裕之
(56)【参考文献】
【文献】 特表2004−535411(JP,A)
【文献】 特表2009−523797(JP,A)
【文献】 特表2008−546843(JP,A)
【文献】 特表2010−511027(JP,A)
【文献】 特表2006−503019(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
CAplus/REGISTRY(STN)
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
式:
【化1-1】

【化1-2】

を有する化合物または医薬的に許容可能なその塩。
【請求項2】
式:
【化2-1】

【化2-2】

を有する請求項に記載の化合物または医薬的に許容可能なその塩。
【請求項3】
式:
【化3】

を有する請求項1に記載の化合物または医薬的に許容可能なその塩。
【請求項4】
請求項1〜のいずれか1項に記載の化合物または医薬的に許容可能なその塩、および少なくとも一つの医薬的に許容可能な担体、賦形剤、または希釈剤を含む医薬組成物。
【請求項5】
節炎を治療するための医薬組成物であって、請求項1〜のいずれか1項に記載の化合物または医薬的に許容可能なその塩を含む医薬組成物
【請求項6】
軟骨浸食を阻害するための医薬組成物であって、請求項1〜のいずれか1項に記載の化合物または医薬的に許容可能なその塩を含む医薬組成物
【請求項7】
治療に使用するための、請求項1〜のいずれか1項に記載の化合物または医薬的に許容可能なその塩。
【請求項8】
医薬品の製造のための、請求項1〜のいずれか1項に記載の化合物または医薬的に許容可能なその塩の使用。
【発明の詳細な説明】
【発明の概要】
【0001】
結合組織はすべての哺乳動物の必須構成要素である。それは、剛性、分化、結合、および、いくつかの場合には弾力性も提供する。結合組織の構成要素には、例えば、コラーゲン、エラスチン、プロテオグリカン、フィブロネクチン、およびラミニンを含む。これらの生体化学物質は、皮膚、骨、歯、腱、軟骨、基底膜、血管、角膜および硝子体液等の構造体を構成する(またはその構成要素となる)。関節炎は、一又は複数の関節の結合組織の炎症に関与する関節疾患の一形態である。関節炎のタイプに関わらず、すべての関節炎疾患に共通する症状には、種々のレベルの疼痛、腫れ、関節のこわばり、そして時には関節(複数可)周りの定常的痛みを含む。
【0002】
65歳以上のヒト患者の半数と75歳以上のほぼ全ての患者が変形性関節症を有していると推定されている。変形性関節症(OA)に対しては((OAの痛みを管理するための)タイレノール(Tylenol)からアヘン製剤に範囲は及ぶ)多数の治療法があり、最終的には関節全体の置換手術がある。現状では、OAの進行に影響を及ぼすことが証明された承認治療法はない。
【0003】
関節炎は、家庭で飼育する他のペット類よりもイヌにずっとより一般的にある。関節炎はたちの悪い病気である。というのもそれは、動物に痛みを引き起こし、運動性を制限するからである。任意のイヌが関節炎に罹患し得るが、老齢犬や大型種がより影響されやすい可能性がある。活動的なイヌ(職業犬、狩猟犬のようなもの)は、その活動レベルが高いためにより大きなリスクがある場合もある。
【0004】
関節炎の関節中の軟骨の生化学的特徴解析は、二つの重要なマトリックス構成要素であるコラーゲン(特に、II型コラーゲン)とアグリカンの有意な喪失を示す。アグリカン分解は、軟骨浸食、特に変形性関節症(OA)に観察される初期変化の一つである。複数の研究が、アグリカンは、アグリカナーゼとして同定された二つの細胞外マトリックスプロテアーゼにより異化されることを示してきた。二つのアグリカナーゼプロテアーゼ、ADAMTS−4( isintegrin nd etalloprotease with hrombopondinモチーフ、アグリカナーゼ1)およびADAMTS−5(アグリカナーゼ2)は、アグリカンを異化するのに特に効果的であるとして同定された。より効果的な関節炎の治療法および特にOAの治療法を提供するニーズがある。
【0005】
関節の分解または浸食は、種々の疾患(関節リウマチ、乾癬性関節炎、骨関節症(osteoarthosis)、肥大性関節炎、および変形性関節症を含むもの)に起こる。さらに、関節の急性炎症は、軟骨の破壊を伴う場合がある。急性関節炎に関わる疾患の例には、エルシニア関節炎、ピロリン酸関節炎、痛風関節炎、および化膿性関節炎がある。また、軟骨の破壊または変性を促す可能性のある別の因子は、コルチゾンを用いた治療である。
【0006】
本発明は、関節炎および特に変形性関節症の治療、ならびに軟骨浸食の阻害に有用であり得る化合物を提供する。本発明の化合物はADAMTS4および/またはADAMTS5に対して効力を示す。
【0007】
本発明は、式:
【化1】

(Rは、メチル、エチル、プロピル、ジメチル、およびシクロプロピルから選択される)を有する化合物または医薬的に許容可能なその塩を提供する。式Iに見られ得るように、本発明の化合物は2つのキラル中心またはRがジメチルの場合は1つのキラル中心を有する。
【化2】
【0008】
本発明は、式:
【化3】

(Rは、メチル、エチル、プロピル、およびシクロプロピルから選択される)、またはRがジメチルの場合は:
【化4】

の化合物および医薬的に許容可能なその塩を提供する。
【0009】
本発明は、式:
【化5-1】

【化5-2】

【化5-3】

の化合物および医薬的に許容可能なその塩を提供する。
【0010】
別の観点では、本発明は、本発明の化合物または医薬的に許容可能なその塩および、少なくとも一つの医薬的に許容可能な担体、賦形剤、または希釈剤を含む医薬組成物を提供する。
【0011】
別の観点では、本発明は、阻害を必要とする患者において、変形性関節症で見られるような軟骨浸食を阻害する方法を提供し、その方法は、前記患者に有効量の本発明の化合物または医薬的に許容可能なその塩を投与することを含む。
【0012】
別の観点では、本発明は、治療を必要とする患者において、関節炎を治療する方法を提供し、その方法は、前記患者に有効量の本発明の化合物または医薬的に許容可能なその塩を投与することを含む。
【0013】
別の観点では、本発明は、医薬品、特に関節炎の治療用または軟骨浸食の阻害用の医薬品製造のための、本発明の化合物または医薬的に許容可能なその塩の使用を提供する。
【0014】
別の観点では、本発明は、治療に使用するための、本発明の化合物または医薬的に許容可能なその塩を提供する。
【0015】
別の観点では、本発明は、関節炎の治療または軟骨浸食の阻害に使用するための、本発明の化合物または医薬的に許容可能なその塩を提供する。
【0016】
別の観点では、本発明は、一又は複数の他の活性薬剤と組み合わせる、本発明の化合物、方法、使用、または組成物を提供する。
【0017】
上記したように、本発明の好ましい化合物は、アグリカナーゼ、特にADAMTS4/5への結合が向上し、そしてその/それらの活性を阻害する。従って、これらの化合物はアグリカンの分解を阻害することができる。軟骨中でアグリカンの分解を阻害することは、関節炎、好ましくはOA、および/またはその/それらの病理的後遺症もしくは症状の治療に使用可能である。
【0018】
「患者」は哺乳動物のことを言い、ヒト、他の霊長類(例、サル、チンパンジー等)、伴侶動物(例、イヌ、ネコ、ウマ等)、家畜(例、ヤギ、ヒツジ、ブタ、ウシ等)、実験動物(ネズミ、ラット等)、ならびに野生および動物園の動物(例、オオカミ、クマ、シカ等)を含む。用語「患者」はまた、軟骨浸食、関節炎、および/または変形性関節症の病理的有害作用に苦しむ哺乳動物、特にヒトおよび/または伴侶動物(例、イヌ、ネコ)もしくは家畜(例、ウマ)を指す。
【0019】
「有効量」とは、関節炎または変形性関節症および/あるいは関節炎もしくは変形性関節症の一又は複数の後遺症を治療するのに十分な、本発明の化合物または医薬的に許容可能なその塩の量のことを指す。哺乳動物上のまたは哺乳動物中の使用に関しては、その方法のための範囲は0.01〜1000mg/kg(哺乳動物の体重)、より望ましくは0.1〜100mg/kg(哺乳動物の体重)を含む。投与頻度はまた、いくつかの因子に依存し、一回の投薬が一日に一回、一週間に一回、または一月に一回投与される場合があり、期間は担当の医師または獣医により決定され得る。追加的な活性薬剤は、本発明の化合物とともに投与可能である。
【0020】
例えば、塩および製剤構成要素(例、担体)に関して本願で使用される「医薬的に許容可能」とは、患者に有害ではなく且つ他の成分、活性薬剤、塩、または構成要素と相溶性である塩および構成要素のことを指す。「医薬的に許容可能」には、「獣医学的に許容可能」を含み、したがって、独立してヒト用途と非ヒト哺乳動物用途の両者を含む。
【0021】
「阻害する」とは、一般的に認められている意味であって、軟骨浸食に陥入りつつある患者を予防的に治療すること並びに患者の既存軟骨浸食を制限しおよび/または治療することを含む。このように、本方法は、適切なやり方において、医学的な治療的および/または予防的治療の両者を含む。
【0022】
本明細書においては、用語「投与すること」とは、有効量の本発明の化合物を患者へ投与することを指す。投与は様々な手段を通じて実施可能であり、例えば、経口投与、非経口投与(例、(筋肉内、皮下、静脈内、腹腔内)注射等)または経皮通過を伴うか若しくは伴わない局所塗布を含む。
【0023】
本発明の化合物は、アグリカナーゼを阻害し、したがって関節炎を治療する際に、およびOAの治療のために特に好ましく有利に使用される可能性がある。本明細書において、用語「有効量」は、本発明の化合物(つまり、式I)の量であって、本明細書中に記載される各種病理的状態の症状を治療もしくは緩和できるかまたはそれに有効な量を意味する。実際に投与される化合物の量は、患者の相対的な環境や状況(例、年齢、体重、病気の進行と重症度)を考慮しながら医師により決定されることが理解される。本発明の化合物は、種々の経路で投与される医薬組成物として好ましくは処方される。最も好ましくは、そのような組成物は(例えば、錠剤、カプセル剤、溶液剤、懸濁剤の形態の)経口投与用である。
【0024】
したがって、本発明の別の観点は、有効量の本発明の化合物または医薬的に許容可能なその塩を含む医薬組成物である。医薬的塩の例は、S. M. Bergeら、「Pharmaceutical Salts(医薬的塩)、J. Phar. Sci., 66: 1−19 (1977)ならびに「A Handbook of Pharmaceutical Salts Properties, Selection, and Use(医薬的塩の性質、選択、および使用のハンドブック)」、Wermuth, C. G.およびStahl, P. H. (編) Verlag Helvtica Chimica Acta, 2002年に見出すことができる。例えば、本発明の化合物は、医薬的に許容可能な賦形剤、希釈剤、または担体と処方可能であり、錠剤、カプセル剤、懸濁剤、溶液剤、および粉末剤等へと成形される。その調製のための医薬組成物および方法は当該技術分野で公知である。例は、 Remington、「The Science and Practice of Pharmacy(薬学の科学と実践)」(A. Gennaroら編、第19版、Mack Publishing Co.、1995年)に見出すことが可能であり、参照により本明細書中に組み込まれる。製剤は様々な手段を通じて投与可能であり、その手段には、経口投与、非経口投与(例、(筋肉内、皮下、静脈内、腹腔内)注射等)または経皮通過を伴うか若しくは伴わない局所塗布を含む。追加的な活性薬剤は、本発明の化合物を含有する製剤に含まれる場合がある。
【0025】
医薬的に許容可能な塩に加えて、他の塩が本発明において含まれる。それら塩は、化合物の精製もしくは他の医薬的に許容可能な塩の調製における中間体として働く場合があり、または同定、特徴解析、もしくは精製に有用である。
【0026】
本発明の化合物は、関節炎および付随する後遺症の治療に有利に使用されることが見出され得る。本明細書においては、用語「関節炎」は、限定はされないが、関節リウマチ(RA)、若年性関節リウマチ、全身性エリテマトーデス(SLE)、痛風、強皮症、乾癬性関節炎、強直性脊椎炎、変形性関節症(OA)、およびライター症候群(反応性関節炎)を含む。本発明の化合物は、変形性関節症(OA)の治療において特に有利に使用されることが見出され得る。
【0027】
他の活性薬剤(例えば、ステロイド剤もしくは非ステロイド剤のいずれかである場合がある、抗炎症剤または痛みを緩和する薬剤)と組み合わせて用いる場合がある。本発明の化合物および他の活性薬剤は、一つの製剤または別々の製剤のいずれかの中で同時に投与可能である。また、本発明の化合物および他の活性薬剤は、経時的に投与可能であるか又は患者の必要に応じて投与可能である。
【0028】
本明細書においては、以下の用語は示される意味を有する:「n−BuLi」はn−ブチルリチウムを指す;「DCM」はジクロロメタンを指す;「Dibal−H」はジイソブチルアルミニウムヒドリドを指す;「DMF」はN,N−ジメチルホルムアミドを指す;「DMSO」はジメチルスルホキシドを指す;「EDTA」はエチレンジアミン四酢酸を指す;「EtOAc」は酢酸エチルを指す;「EtO」はジエチルエーテルを指す;「EtOH」はエタノールを指す;「Ex」は実施例を指す;「IPA」はイソプロピルアルコールを指す;「LDA」はリチウムジイソプロピルアミドを指す;「MeOH」はメタノールを指す;「Prep」は調製を指す;「t−bocまたはboc」はtertーブトキシカルボニルを指す;TFAはトリフルオロ酢酸を指す;「THF」はテトラヒドロフランを指す;本明細書中で用いられる「X」はハロゲン化物(つまり、I、Br、Cl、またはF)を指す;「IC50」は、薬剤にとって可能な最大阻害反応の50%を生み出す前記薬剤の濃度を指す。
【0029】
本発明の化合物は、以下の実施例に記述される反応に従って調製可能である。
【実施例】
【0030】
調製1
(5R)−5−(アミノメチル)−5−シクロプロピルーイミダゾリジンー2,4−ジオンヒドロクロリド
【化6】
【0031】
工程1:tertーブチルN−[2−(メトキシ(メチル)アミノ)−2−オキソーエチル]カルバメートの合成
【化7】
【0032】
ジクロロメタン(36L)中のBoc−Gly−OH(4250g、24.26mol)、N,O−ジメチルヒドロキシルアミン−HCl(2839g、29.10mol)、およびDMAP(297g、2.43mol)の溶液に、0℃のトリエチルアミン(5.54L)を90分の期間に渡り加え、その後、EDC塩酸塩(5674g、29.60mol)を加える。混合物を0℃で1時間撹拌し、その後、24時間、室温へと温める。反応混合物を0℃へと冷却し、1.0M HClを用いてpH3〜4へとクエンチし、20分間室温で撹拌し、その後、静置し分離する。有機相を、1.0M HCl(15L)、水(15.0L)およびブライン(8.0L)で連続的に洗浄し、NaSOで乾燥し、そして濾過する。ろ液を減圧下で濃縮し、標題の化合物(4985g、収率94%)を白色固形物として得る。
【0033】
工程2:tertーブチルN−(2−シクロプロピル−2−オキソーエチル)カルバメートの合成
【化8】
【0034】
THF(9.0L)中のtert−ブチルN−[2−(メトキシ(メチル)アミノ)−2−オキソーエチル]カルバメート(2,455.3g、11.25mol)の溶液に、−30℃のTHF(5.34L、10.69mol)中の2.0M塩化イソプロピルマグネシウムを添加漏斗を介して60分間に渡り、内部温度が0℃を超えないように加える。混合物をその後ゆっくりと10℃へと温め、THF(27.0L、13.50mol)中の0.5M臭化シクロプロピルマグネシウムを添加漏斗を介して1時間に渡り加える。その混合物を室温で24時間撹拌する。この混合物を0℃へと冷却し、1.0M HClを用いてpH5〜6へとクエンチし、その後、室温へと温めて、EtOAc(12Lおよび10L)を用いて抽出する。合わせた有機相を、水(10L)およびブライン(8L)で連続的に洗浄し、NaSOで乾燥し、そして濾過する。ろ液を減圧下で蒸発させて、次の工程に直接使用する淡黄色オイルとして標題の化合物2.24kg(収率100%)を得る。
【0035】
工程3:tertーブチルN−[(4−シクロプロピル−2,5−ジオキソーイミダゾリジンー4−イル)メチル]カルバメートの合成
【化9】
【0036】
メタノール(16.0L)およびDI水(19.5L)中の化合物tert−ブチルN−(2−シクロプロピル−2−オキソ−エチル)カルバメート(4204g、約21.10mol)、KCN(1786g、27.43mol)および(NHCO(4866g、50.64mol)の混合物を、72時間65℃で撹拌する。その混合物を減圧下で濃縮し、メタノールのほとんどを除去し、その後、EtOAc(5x20L)を用いて抽出する。有機相を、ブライン(8.0L)で洗浄し、(NaSO)乾燥し、そして濾過する。合わせたろ液を二つの等量のポーションに分割する。それぞれのポーションを15Lの容量へと濃縮し、室温で一晩静置する。沈殿物を濾過し、EtOAc(3x1.0L)を用いて洗浄する。得られた白色固形物を合わせて、3日間45℃で真空下にて乾燥し、標題の化合物(3605g、収率64.3%)を得る。
【0037】
工程4:tertーブチルN−[[(4R)−4−シクロプロピル−2,5−ジオキソーイミダゾリジンー4−イル)メチル]カルバメートの分離
【化10】
【0038】
tertーブチルN−[(4−シクロプロピル−2,5−ジオキソーイミダゾリジンー4−イル)メチル]カルバメートの光学異性体は、キラルカラムを使用して分離することができる。カラム:11x33cm Chiralpak AD(登録商標)、20μm;流速/検出:800mL/min/230nm;移動相:メタノール。
【0039】
工程5:(5R)−5−(アミノメチル)−5−シクロプロピルーイミダゾリジンー2,4−ジオンヒドロクロリドの合成
【化11】
【0040】
tertーブチルN−[[(4R)−4−シクロプロピル−2,5−ジオキソーイミダゾリジンー4−イル)メチル]カルバメート(310g、1151mmol)を6℃のMeOH(3.1L)中に溶解する。ジオキサン(310mL)中の4M HClを加え、混合物を25℃へと温める。22時間撹拌後、ジオキサン(110mL)中の4M HClの第二ポーションを加え、撹拌をさらに16時間継続する。反応物を、その後、2日間撹拌せずに静置する。混合物を、その後、トルエン(6L)を用いて希釈する。標題の化合物を、その混合物を濾過することにより、白色固形物(180g)として回収する。
【0041】
実施例1
(2R)−N−[[(4R)−4−シクロプロピル−2,5−ジオキソ−イミダゾリジン−4−イル]メチル]−2−メチル−3−[4−(トリフルオロメチル)フェニル]プロパンアミド
【化12】
【0042】
実施例2に基本的に記載される合成は、塩化ブタノイルの代わりに塩化プロパノイルを使用して上記化合物を作製するのに使用可能である。
【0043】
実施例2
(2R)−N−[[(4R)−4−シクロプロピル−2,5−ジオキソ−イミダゾリジン−4−イル]メチル]−2−[[4−(トリフルオロメチル)フェニル]メチル]ブタンアミド
【化13】
【0044】
工程1:(4S)−4−ベンジル−3−ブタノイル−オキサゾリジン−2−オンの合成
【化14】
【0045】
三つ首RBF(丸底フラスコ)に、ジクロロメタン(2.4L)、(S)−4−ベンジル−2−オキサゾリジンオン(200g、1.13moles)およびN,N−ジメチル−4−ピリジンアミン(13.6g;111.32mmoles)を加える。そのフラスコを氷水浴中で冷却し、トリエチルアミン(472mL;3.39moles)を0℃で滴下する。得られた溶液に、その後、温度を5℃以下に保ちながら塩化ブタノイル(152.2mL;1.46moles)を3時間かけて滴下する。反応物をその後濾過し、ろ液を1M HCl(aq.)(500mlx1)および飽和NaHCO(500mlx1)を用いて洗浄する。有機相をNaSOで乾燥、濾過、そして濃縮して、標題の化合物(275g、MS:[M+H]=248.1m/z)を得る。
【0046】
工程2:(4S)−4−ベンジル−3−[(2R)−2−[[4−(トリフルオロメチル)フェニル]メチル]ブタノイル]オキサゾリジン−2−オンの合成
【化15】
【0047】
三つ首5L RBFに、N下でTHF(2L)および(4S)−4−ベンジル−3−ブタノイル−オキサゾリジン−2−オン(270g、1.09moles)を加える。得られた溶液を、アセトンードライアイス浴中で−68℃へと冷却する。その冷却溶液に、ナトリウムビス(トリメチルシリル)アミド(1320mLの1M THF溶液;1.32moles)を、内部温度を−68〜−60℃に維持しながら1.5時間かけて滴下する。添加完了したら、反応物を−68℃で30分間撹拌する。その冷却溶液に、その後、THF(1L)中の臭化4−トリフルオロメチルベンジル(278g;1.16moles)を−68℃で30分間かけて加える。1.5時間後、反応物を1M HClに注ぎ入れる。混合物を酢酸エチル(3Lx1)で抽出する。抽出物を合わせて、aq.NaHCO(2Lx1)およびブライン(2Lx1)で洗浄する。有機層をNaSOで乾燥、濾過、および濃縮する。固形物を15℃のEtOH(600mL)を用いて粉砕する。濾過することにより、標題の化合物を固形物(270g、MS:[M+H]=406m/z)として得る。
【0048】
工程3:(2R)−2−[[4−(トリフルオロメチル)フェニル]メチル]ブタン酸の合成
【化16】
【0049】
三つ首RBFに、テトラヒドロフラン(4.2L)および水(0.8L)を加える。(4S)−4−ベンジル−3−(2−(ベンジルオキシ)−3−(4−(トリフルオロメチル)フェニル]プロパノイル)オキサゾリジン−2−オン(250g;616.65mmoles)を加え、そして溶液を0℃へと冷却する。過酸化水素(4.93moles;500.30mL)を45分かけて滴下する。1.2Lの水中のLiOH(1.08moles;45.28g)を1時間かけて滴下する。得られた混合物を、その後、1時間2℃で撹拌する。亜硫酸ナトリウム(2.47moles;310.90g)を2Lの水に溶解し、得られた溶液を反応混合物へと1時間かけて滴下する。添加完了したら、その混合物をDCM(2x2L;1Lx1)を用いて洗浄する。水相をその後、濃縮HCl(100ml)を使ってpH=1へと酸性化する。得られた懸濁液をEA(2Lx2)を用いて抽出する。有機抽出物を合わせ、NaSO溶液(2Lx1)およびブラインI(2Lx1)で洗浄し、NaSOで乾燥し、そして濾過して標題の化合物(140g、MS:[M+H]=247 m/z)を得る。
【0050】
工程4:(2R)−N−[[(4R)−4−シクロプロピル−2,5−ジオキソ−イミダゾリジン−4−イル]メチル]−2−[[4−(トリフルオロメチル)フェニル]メチル]ブタンアミド(実施例2)の合成
【化17】
【0051】
三つ首RBF(2L)に、ジクロロメタン(996mL)、ジメチルホルムアミド(200mL)、(2R)−2−[[4−(トリフルオロメチル)フェニル]メチル]ブタン酸(53g、215mmoles)およびO−(7−アザベンゾトリアゾール−1−イル)−N,N,N’,N’−テトラメチルウロニウムヘキサフルオロホスフェート(215mmoles;81.84g)を窒素環境下で外気温度にて加える。混合物に、N,N−ジメチル−エタンアミン(1.08moles;116.80mL)をワンポーションで加える。その混合物を30分間撹拌する。得られた溶液に、(5R)−5−(アミノメチル)−5−シクロプロピル−イミダゾリジン−2,4−ジオン塩酸塩(237mmoles;49g)をワンポーションで加える。得られた溶液を2.5時間撹拌する。撹拌をその後停止し、混合物を16時間外気に開放して静置する。反応混合物を、その後、EtOAc(200mL)を使って希釈し、そして、2M HCl(aq.)(200mlx2)、5%NaHCO(aq.)(200mlでx2)およびブライン(500mL)を用いて洗浄する。有機層をNaSOで乾燥、濾過、および濃縮してオイルにする。そのオイルをCHCl(250mL)を使って希釈することで、白色固形物が析出する。その固形物を濾過することで回収し、石油エーテル(100mLx2)を用いて洗浄して標題の化合物(55g;MS:[M+H]=398m/z)を得る。
【0052】
実施例3
(2S)−2−シクロプロピル−N−[[(4R)−4−シクロプロピル−2,5−ジオキソ−イミダゾリジン−4−イル]メチル]−3−[4−(トリフルオロメチル)フェニル]プロパンアミド
【化18】
【0053】
実施例2に基本的に記載される合成は、塩化ブタノイルの代わりに塩化2−シクロプロピルアセチルを使用して上記化合物を作製するのに使用可能である。
【0054】
実施例4
(2S)−N−[[(4R)−4−シクロプロピル−2,5−ジオキソ−イミダゾリジン−4−イル]メチル]−3−メチル−2−[[4−(トリフルオロメチル)フェニル]メチル]ブタンアミド
【化19】
【0055】
実施例2に基本的に記載される合成は、塩化ブタノイルの代わりに塩化3−メチルブタノイルを使用して上記化合物を作製するのに使用可能である。
【0056】
実施例5
N−[[(4R)−4−シクロプロピル−2,5−ジオキソイミダゾリジン−4−イル]メチル]−2,2−ジメチル−3−[4−(トリフルオロメチル)フェニル]プロパンアミド
【化20】
【0057】
工程1:(E)−2−メチル−3−[4−(トリフルオロメチル)フェニル]プロプ(prop)−2−エノエートの合成
【化21】
【0058】
窒素環境下の乾燥THF(50mL)中に、エチル2−ジエトキシホスフォリルプロパノエート(5.24g、22mmol)および4−(トリフルオロメチル)ベンズアルデヒド(3.48g、20mmol)を溶解する。得られた溶液を0℃に冷却する。60重量%のNaH(960mg、24mmol)を慎重に加える。外気温へと温め、12時間撹拌する。反応物を濃縮する。残分をフラッシュクロマトグラフィー(5%EtOAc/石油エーテル)を使用して精製し、標題の化合物を得る(4.18g)。
【0059】
工程2:エチル2−メチル−3−[4−(トリフルオロメチル)フェニル]プロパノエートの合成
【化22】
【0060】
Pd−Cの酸素への暴露は火災につながる可能性があるので、窒素下のRBFにて10wt%のPd−C(258mg)/MeOH(20mL)の懸濁液中に、エチル(E)−2−メチル−3−[4−(トリフルオロメチル)フェニル]プロプ−2−エノエート(2.58g、10mmol)を溶解する。フラスコを水素で慎重にパージし、得られた混合物を16時間水素(1Atm)下で撹拌する。フラスコを窒素でパージし、溶媒を脱気して、空気に暴露する前にすべての水素を除去する。懸濁液をセライトパッドを通して濾過する。ろ液を濃縮して標題の化合物(2.39g)を得る。
【0061】
工程3:エチル2,2−ジメチル−3−[4−(トリフルオロメチル)フェニル]プロパノエートの合成
【化23】
【0062】
−78℃のTHF(30mL)中の(2.9mLの2M)LDAの溶液へ、エチル2−メチル−3−[4−(トリフルオロメチル)フェニル]プロパノエート(1g、3.85mmol)を加える。10分間撹拌し、その後、ヨウ化メチル(1.48g、10.4mmol)を加え、そして、さらに15分間撹拌する。10mLの1N HClを使って反応物をクエンチし、外気温へと温める。EtOAc(50mL)を用いて抽出する。ブラインで抽出物を洗浄し、硫酸ナトリウムで乾燥し、濾過し、そして、濃縮する。残分をフラッシュクロマトグラフィー(石油エーテル中の5%EtOAc)により精製し、標題の化合物を得る(475mg)。
【0063】
工程4:2,2−ジメチル−3−[4−(トリフルオロメチル)フェニル]プロパン酸の合成
【化24】
【0064】
エチル2,2−ジメチル−3−[4−(トリフルオロメチル)フェニル]プロパノエート(400mg、1.46mmol)をMeOH(2mL)中に溶解し、(3mLの3N)NaOH水溶液を加える。80℃へと加熱し、3時間撹拌する。外気温へと冷却し、pHが約4になるまで1N HClを用いて酸性化する。EtOAcを用いて抽出する。有機抽出物を合わせ、ブラインで洗浄し、硫酸ナトリウムで乾燥し、濾過し、そして濃縮して標題の化合物(272mg)を得る。
【0065】
工程5:N−[[(4R)−4−シクロプロピル−2,5−ジオキソ−イミダゾリジン−4−イル]メチル]−2,2−ジメチル−3−[4−(トリフルオロメチル)フェニル]プロパンアミドの合成
【化25】
【0066】
15mLの乾燥アセトニトリル中のアミン(205mg、1mmol)の溶液に、N,N−ジイソプロピルエチルアミン(diidopropylethyl amine)(387mg、3mmol)を加える。得られた溶液へ、2,2−ジメチル−3−[4−(トリフルオロメチル)フェニル]プロパン酸(246mg、1mmol)、EDCI(229mg、1.2mmol)およびHOAT(163mg、1.2mmol)を加える。外気温で12時間撹拌する。調製用HPLCを使用して、標題の化合物(282mg)を分離する。
【0067】
【表A】
【0068】
以下のアッセイプロトコルおよび化合物の有用性と効力をさらに実証する結果ならびに/または本発明の方法は、説明目的で与えられており、いかなる方式においても限定する意図はない。以下のアッセイに採用される全てのリガンド、放射能標識、溶媒、および試薬は、市販供給者から容易に入手できるか、または当業者により容易に合成可能である。
【0069】
アグリカナーゼ結合アッセイを実施して、本発明に含まれる化合物がアグリカナーゼに対する親和性を示すことを実証する。より具体的には、本発明の好ましい化合物はアグリカナーゼに対する親和性が改善し、それはADAMTS−4およびADAMTS−5のアルファスクリーン(AlphaScreen)アッセイにおける化合物の結合親和性により例示される。
【0070】
マトリックスメタロプロテアーゼ(MMP)は、組織リモデリング、シェダーゼ(sheddase)活性、およびエンドサイトーシスを含むいくつかのホメオスタシスプロセスに関与することが知られている。臨床現場で試験される広域性MMP阻害剤は、筋骨格症候群(MSS)と総称される、線維増殖症および関節のこわばり並びに関連する副作用に関連するとされてきた。従って、一般的なMMPよりもアグリカナーゼに対する選択性があることが望ましい。同様に、ADAMTSファミリーに関しては、いくつかのメンバーが、所望のアグリカナーゼ阻害とは異なる重要な機能と関連するとされてきた。本発明の化合物はまた、血漿中での効能(すなわち、ADAMTS−4およびADAMTS−5を阻害すること)を示し、MMP−2およびMMP−14よりもADAMTS−4およびADAMTS−5に対する選択性が増加する。
【0071】
ADAMTS−4およびADAMTS−5のアルファスクリーンアッセイ:
本発明の化合物は、アグリカナーゼADAMTS−4およびADAMTS−5のアルファスクリーンアッセイ(Miller J. A.ら、Anal. Biochem. 2003, 314, 260−265)を用いて評価可能であるが、以下の変更点がある。典型的には、3もしくは4nMのADAMTS−4または2.1nMのADAMTS−5を、白色非結合表面96穴プレート(コーニング3990)中で室温、3時間、80nMの43アミノ酸長のペプチド基質+/−阻害剤(1%のDMSO終濃度)とインキュベートする。阻害剤を3倍系列希釈し、約100μMまでの最終開始濃度で試験する。アッセイはカクテル(EDTA(62.5mM)、50mM Tris(ヒドロキシメチル)アミノメタン(Tris)、(pH 7.5)、10mM塩化カルシウム、100mM塩化ナトリウム、0.2%Brij(登録商標)35(ポリオキシエチレン(23)ラウリルエーテルの主成分)、0.1%ウシ血清アルブミン(BSA)、BC3モノクローナル抗体ハイブリドーマ上清(1:2000最終希釈)、ストレプトアビジン結合ドナービーズおよび抗マウスIgG結合アクセプタービーズ(両ビーズとも15μg/mL終濃度)を含むもの)で、その後クエンチする。プレートをアルミニウムホイルテープで覆い、結合物を一晩インキュベートする。そのプレートを、その後、パーキンエルマー(Perkin Elmer)製のアルファスクリーン フュージョン アルファ リーダーで読み取る。データを、ActivityBase(商標)ソフトウエア(IDBS Alameda、CA)を使用して解析する。同様のアッセイを、精製イヌADAMTS−4酵素を用いて使用する。本発明の代表的化合物のデータを表1に、以下示す。
【0072】
【表1】
【0073】
ラットおよびイヌのプラズマシフトアルファスクリーンアッセイ(Plasma Shift AlphaScreen Assay)
阻害剤の効能に対する血漿タンパク質結合の効果を決定するために、アルファスクリーンアッセイを改変して、50%ルイス(Lewis)ラット血漿の存在下でのADAMTS−5に対する阻害剤のテストを含める。50%ルイスラット血漿中のADAMTS−5に対する阻害剤のIC50とバッファー中の阻害剤のIC50との比率を計算し、阻害剤のプラズマシフトとして記述する。2.1nMの代わりに10nMのADAMTS−5を使用して、同様にアッセイを完了する。同様のアッセイを、25%イヌ血漿の存在下でイヌADAMTS−4を用いて使用する。本発明の代表的化合物のデータを表2に、以下示す。
【0074】
【表2】
【0075】
MMP−2活性のインビトロ蛍光アッセイ
連続アッセイを使用し、アッセイ中では蛍光グループ(7−メトキシクマリン、Mca)(2,4−ジニトロフェニル基へのエネルギー転移によりクエンチされるもの)を含む合成ぺプチドが基質である。前記基質は、ペプチド Mca−PQGL−(3−[2,4−ジニトロフェニル]−L−2,3−ジアミノプロピオニル)−AR−OHである。そのペプチドがMMPにより切断されると、蛍光の大きな増加が観察される。このアッセイ用の酵素の供給源は、チャイニーズハムスター卵巣(CHO)細胞に発現される完全長組換えヒトpro−MMP−2であって、有機水銀化合物4−アミノフェニル酢酸水銀(APMA)によりその後活性化されるものである。APMAを脱塩カラム(MMP−2 Calbiochem(登録商標)カタログ番号PF023)を通して除去する。アッセイ緩衝液は、100mM Tris−HCl(pH 7.5)、100mM NaCl、10mM CaClおよび10μMのヒト血清アルブミンからなる。96穴プレートの各ウエルは、アッセイ緩衝液、MMP(終濃度0.2nM;アッセイ緩衝液中に希釈することにより調製するもの)および各種濃度の阻害剤(96穴ポリプロピレンプレートにDMSO中の所定の阻害剤を、10ポイントまたは11ポイント希釈スキームを使用して系列系釈することにより調製するもの)からなる100μLの反応混合物からなる。酵素反応を、基質を終濃度20μMになるように加えることにより開始する。このアッセイの最終DMSO濃度は1.0%である。プレートを室温で2〜4時間インキュベートし、基質切断を、LJL Analyst(登録商標)またはWallac Envision(登録商標)上の蛍光プレートリーダー(励起フィルタ320およびエミッションフィルタ436)を使って室温で測定する。
【0076】
データを、複数の相対的IC50が生成される4パラメータフィットモデルエクエーション(4 parameter fit model equation)205を使うActivityBase(登録商標)ソフトウエアプログラムvs.5.3を使用することにより解析する。最大シグナルは、阻害剤非処理であるが、酵素、基質および1.0%DMSOを有するウエルから計算される。最少シグナルは、緩衝液のみ(酵素なし)、基質および1.0%DMSOを有するウエルから計算される。
【0077】
他のMMP活性のインビトロ蛍光アッセイ
基本的に同一方法を、上記MMP−2アッセイまたは当該技術分野で公知のものとして、残りのMMPアッセイのために使用する。例えば、MMP−14に関しては、酵素供給源は、ペリプラズムから精製した酵素の組換え型可溶性前駆フォームの活性化により生産されるMMP−14(MT1−MMP)触媒ドメインである。それは、成熟ヒトMT1−MMP(Calbiochem(登録商標)カタログ番号475935)のアミノ酸残基Tyr89〜Gly265からなる。各ウエルの終濃度は、MMP−2アッセイであるような0.2nMの代わりに0.5nMである。本発明の代表的化合物のデータを表3に、以下示す。
【0078】
【表3】
【0079】
ラットにおけるMIA注射PDモデル
Swearingenら、Osteoarthritis and Cartilage 18 (2010) 1159−1166に記載されるアッセイを採用してもよい。MIA(シグマ、カタログ#I2512、ナトリウム塩)を、使用当日、50ulの滅菌0.9%生理食塩水中に3mg新たに調製する。7〜8週齢の雄ルイスラットを麻酔し、Day0にMIAを右膝に(内在性のアグリカナーゼ活性を誘導およびアグリカン断片の関節液への放出を誘導するため)及び生理食塩水を(対側の)左膝に関節内注射する。アグリカナーゼ阻害剤(3、10もしくは30mg/kg)又はビークル[1%ヒドロキシエチルセルロース(HEC);0.25%Tween 80;0.05%泡止め剤]を、Day3から開始して一日2回、経口投薬する。化合物の一回の投薬をDay7に行い、動物を4時間後に屠殺し、そして、膝関節を200ulの生理食塩水で洗浄する。関節洗浄液を、アグリカンのアグリカナーゼ切断断片に関して、NITEGEサンドイッチELISAを使用してアッセイする。関節洗浄液中に存在するアグリカン断片の量を、アグリカナーゼ消化ラットアグリカンを使って作成した検量線に基づいて決定する。統計解析をダネットの検定を使用して実施する。
【0080】
サンドイッチELISAアッセイ:NITEGE ELISAのために、抗NITEGEモノクローナル抗体を、4℃、一晩、白色高結合ELISAプレート(Nunc)上に固定する。ブロッキングの後、ラット関節液洗浄サンプルをプレートに加え、C末端NITEGE配列を有する断片を捕獲する。捕獲した断片を、HRP結合抗HABRモノクローナル抗体を使用して検出する。ELISAシグナルをスーパーシグナルELISAフェムト最大感受性基質(Pierce)を使用して測定し、Victorルミノメーター上で読み取る。サンプルに存在するアグリカン断片の量を、アグリカナーゼ消化ラット軟骨肉腫アグリカン(抗体希釈緩衝液に希釈した850mg/mlのストック)を使って作成した検量線に基づいて決定する。データを表4に提示する。
【0081】
【表4】
【0082】
変形性関節症のイヌにおける血漿バイオマーカーARGNの試験
この試験の目的は、21日間の毎日の経口投与後の、複数用量範囲にある本発明化合物への、変形性関節症(OA)のイヌにおける血漿バイオマーカーARGN応答を測定することである。股関節(複数可)におけるOAのX線学的証拠を有する年齢8歳以上の16匹の成体実験ビーグル犬と4匹の年齢を一致させたOAを有しないコントロールビーグル犬をこの試験に参加させる。
【0083】
ベースライン血漿ARGN濃度のための血液サンプルを、投薬開始前30、28、および26日に、すべてのイヌから回収する。OAを有する16匹のイヌを、4種類の治療グループ(プラセボ、0.1、1、および10mg/kgの実施例2化合物のもの)の一つに対して、平均ベースライン血漿ARGN濃度によってブロックランダム化する。OAを有しない4匹の年齢を一致させたコントロール犬を、全てプラセボ治療グループに割り当てる。Day0に開始して、イヌは、割り当てられた治療グループに従って、溶液/懸濁液中の実施例2の化合物の一日一回の経口強制栄養投与を3週間受ける。血漿ARGNおよび実施例2化合物の濃度決定のための血液サンプルを、最初の投薬の前とさらに4週間(Day28)の間週3回、回収する。血漿ARGNおよび実施例2化合物の濃度決定のための追加的血液サンプルを、最後の投薬(Day20)前ならびに1、2、6、12および24時間後に、回収する。血漿ARGN濃度をサンドイッチELISAプロトコルを使用する免疫アッセイにより決定し、実施例2化合物の血漿濃度をLC−MS/MS法を使用して決定する。血漿ARGNおよび実施例2化合物の濃度の簡易統計を計算し、実施例2化合物濃度の非コンパートメントPK解析を実施する。
【0084】
血漿ARGN濃度は投与量に対応する様式で阻害され、0.1、1、および10mg/kgの実施例2化合物を毎日投薬した後、それぞれ33.8%、70.7%、および80.3%の平均Day21阻害がある。正常犬およびOAプラセボ治療犬におけるARGN阻害は比較的低く、−1.30%〜13.4%の範囲である。ARGN濃度は、正常犬とOAプラセボ犬との間に実質的相違はない。実施例2化合物の血漿濃度は、下位比例(sub−proportional)様式で投与量とともに増加し、定常トラフ濃度が速やかに達成される。実施例2化合物の投与量の増加および全身暴露が、血漿ARGN濃度阻害の増加につながる。従って、実施例2化合物は、自然発生OAを有するイヌの標的アグリカナーゼを一日一回の経口投与後に阻害する。
【0085】
本発明を、以下の条項により記述する。
1.式:
【化26】

(Rは、メチル、エチル、プロピル、ジメチル、およびシクロプロピルから選択される)を有する化合物または医薬的に許容可能なその塩。
2.式:
【化27】

を有する条項1に記載の化合物または医薬的に許容可能なその塩。
3.式:
【化28】

を有する条項1に記載の化合物または医薬的に許容可能なその塩。
4.式:
【化29】

を有する条項3に記載の化合物または医薬的に許容可能なその塩。
5.式:
【化30】

を有する条項1に記載の化合物または医薬的に許容可能なその塩。
6.式:
【化31】

を有する条項5に記載の化合物または医薬的に許容可能なその塩。
7.式:
【化32】

を有する条項1に記載の化合物または医薬的に許容可能なその塩。
8.式:
【化33】

を有する条項7に記載の化合物または医薬的に許容可能なその塩。
9.式:
【化34】

を有する条項1に記載の化合物または医薬的に許容可能なその塩。
10.式:
【化35】

を有する条項9に記載の化合物または医薬的に許容可能なその塩。
11.式:
【化36】

を有する条項1に記載の化合物または医薬的に許容可能なその塩。
12.式:
【化37】

を有する条項11に記載の化合物または医薬的に許容可能なその塩。
13.式:
【化38】

を有する条項1に記載の化合物または医薬的に許容可能なその塩。
14.式:
【化39】

を有する条項13に記載の化合物または医薬的に許容可能なその塩。
15.条項1〜14のいずれか一項に記載の化合物または医薬的に許容可能なその塩、および少なくとも一つの医薬的に許容可能な担体、賦形剤、または希釈剤を含む医薬組成物。
16.前記組成物が少なくとも一つの追加的活性薬剤を含む、条項15記載の医薬組成物。
17.前記組成物がヒト医薬組成物である、条項15または16記載の医薬組成物。
18.前記組成物が獣医学的組成物である、条項15または16記載の医薬組成物。
19.前記医薬組成物が経口投与に適応させられる、条項15〜18のいずれか一項に記載の医薬組成物。
20.前記医薬組成物が錠剤、カプセル剤、溶液剤、または懸濁剤の形態である、条項15〜19のいずれか一項に記載の医薬組成物。
21.治療を必要とする患者において関節炎を治療する方法であって、前記患者に有効量の条項1〜14のいずれか一項に記載の化合物または医薬的に許容可能なその塩を投与することを含む方法。
22.前記患者が少なくとも一つの追加的活性薬剤を投与される、条項21記載の方法。
23.前記患者がヒトである、条項21または22記載の方法。
24.前記患者がイヌである、条項21または22記載の方法。
25.前記投与が経口投与である、条項21〜24のいずれか一項に記載の方法。
26.前記投与が錠剤、カプセル剤、溶液剤、または懸濁剤中の前記化合物を使用して実施される、条項21〜25のいずれか一項に記載の方法。
27.阻害を必要とする患者において軟骨浸食を阻害する方法であって、前記患者に有効量の条項1〜14のいずれか一項に記載の化合物または医薬的に許容可能なその塩を投与することを含む方法。
28.前記患者が少なくとも一つの追加的活性薬剤を投与される、条項27記載の方法。
29.前記患者がヒトである、条項27または28記載の方法。
30.前記患者がイヌである、条項27または28記載の方法。
31.前記投与が経口投与である、条項27〜30のいずれか一項に記載の方法。
32.前記投与が錠剤、カプセル剤、溶液剤、または懸濁剤中の前記化合物を使用して実施される、条項27〜31のいずれか一項に記載の方法。
33.治療に使用するための、条項1〜14のいずれか一項に記載の化合物または医薬的に許容可能なその塩。
34.関節炎の治療に使用するための、条項1〜14のいずれか一項に記載の化合物または医薬的に許容可能なその塩。
35.軟骨浸食の阻害に使用するための、条項1〜14のいずれか一項に記載の化合物または医薬的に許容可能なその塩。
36.医薬品の製造のための、条項1〜14のいずれか一項に記載の化合物または医薬的に許容可能なその塩の使用。
37.前記医薬品が関節炎を治療するためのものである、条項36に記載の使用。
38.前記医薬品が軟骨浸食を阻害するためのものである、条項36または37に記載の使用。
39.前記医薬品が経口投与に適応させられる、条項36〜38のいずれか一項に記載の使用。
40.前記医薬品が錠剤、カプセル剤、溶液剤、または懸濁剤の形態である、条項36〜39のいずれか一項に記載の使用。