特許第6251566号(P6251566)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6251566
(24)【登録日】2017年12月1日
(45)【発行日】2017年12月20日
(54)【発明の名称】粘着テープ
(51)【国際特許分類】
   C09J 7/02 20060101AFI20171211BHJP
   C09J 133/14 20060101ALI20171211BHJP
   C09J 133/06 20060101ALI20171211BHJP
【FI】
   C09J7/02 Z
   C09J133/14
   C09J133/06
【請求項の数】3
【全頁数】18
(21)【出願番号】特願2013-269987(P2013-269987)
(22)【出願日】2013年12月26日
(65)【公開番号】特開2015-124301(P2015-124301A)
(43)【公開日】2015年7月6日
【審査請求日】2016年9月1日
(73)【特許権者】
【識別番号】000002174
【氏名又は名称】積水化学工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110000914
【氏名又は名称】特許業務法人 安富国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】福岡 正輝
(72)【発明者】
【氏名】戸田 智基
(72)【発明者】
【氏名】石川 由貴
(72)【発明者】
【氏名】石堂 泰志
(72)【発明者】
【氏名】林 聡史
【審査官】 吉岡 沙織
(56)【参考文献】
【文献】 特開2011−074380(JP,A)
【文献】 特開2000−290625(JP,A)
【文献】 特開平10−298248(JP,A)
【文献】 特開2002−371262(JP,A)
【文献】 特開2013−067726(JP,A)
【文献】 国際公開第2007/119884(WO,A1)
【文献】 特開2011−032412(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C09J 1/00−201/10
H01L 21/301
21/304
21/463
21/78
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
粘着剤層を有する粘着テープであって、
前記粘着剤層は、リビングラジカル重合により得られた分子量分布(Mw/Mn)1.05〜2.5の(メタ)アクリルポリマーを含有し、
前記(メタ)アクリルポリマーは、カルボキシル基含有モノマー由来の成分0.1〜10重量%及び/又は水酸基含有モノマー由来の成分0.1〜1重量%を含有し、
示差熱熱重量同時測定装置を用いて昇温速度5℃/分で測定した300℃での前記粘着剤層の加熱重量減少量が10重量%以下であり、
粘着剤層のゲル分率が70重量%以下である、
ことを特徴とする粘着テープ。
【請求項2】
粘着剤層の厚みが25〜100μmであることを特徴とする請求項1記載の粘着テープ。
【請求項3】
半導体ウエハを加工するために用いられるものであることを特徴とする請求項1又は2記載の粘着テープ。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、薄い粘着テープでありながら、高温に晒されても剥がれにくい粘着テープに関する。
【背景技術】
【0002】
半導体ウエハの加工(例えば、裏面研削、ダイシング等)は、一般に、半導体ウエハの固定や回路面の保護のために半導体ウエハに粘着テープを貼り合わせた状態で行われ、加工後に粘着テープが剥離される。
半導体ウエハの高温の加工工程においては200℃以上にも及ぶ高温に部品が晒されるため、このような過酷な環境に耐え、加工工程中は強力な粘着力を発揮しつつ、加工後には容易に剥離することができる粘着テープが望まれている。
【0003】
特許文献1には、鎖式構造からなる(メタ)アクリル酸アルキルエステルと、マレイミド基を有するモノマーとを含む単量体組成物を共重合してなるポリマーを主成分とする接着剤組成物が記載されており、該接着剤組成物は耐熱性、高温環境下(特に200℃〜250℃)における接着強度、耐アルカリ性が高いことが記載されている。
しかしながら、近年の部品の小型化、薄化又は軽量化、或いは、省資源化へのニーズの増大に従って、従来よりも薄い粘着テープが望まれており、特許文献1に記載された接着剤組成物では、粘着テープを薄くすると高温に晒されたときに剥がれやすくなるという問題点があった。
【0004】
一方、粘着テープの粘着剤には、ビニルモノマー、アクリルモノマー等のラジカル重合性モノマーを重合させて得られたポリマーが頻用されている。ラジカル重合の種類としてはフリーラジカル重合が一般的である。しかしながら、フリーラジカル重合は、分子量及び分子量分布、共重合体組成等を充分に制御できず、低分子量成分が生成したり、共重合の場合であってもホモポリマーが生成したりするため、これらの成分が粘着テープの耐熱性低下、凝集力低下等を招いたり、粘着テープを剥がれやすくしたりする等の欠点がある。
【0005】
これに対して、より制御されたラジカル重合として、リビングラジカル重合が検討されている。リビングラジカル重合は、重合反応が停止反応又は連鎖移動反応等の副反応で妨げられることなく分子鎖が生長していく重合であるため、分子量及び分子量分布、共重合体組成等を制御しやすく、低分子量成分の生成及び共重合せずに生じるホモポリマーの生成を抑えることができる。
特許文献2には、有機テルル化合物を重合開始剤として用いてリビングラジカル重合法によりモノマーを共重合して得られた共重合体を含有する粘着剤が記載されている。
しかしながら、このような粘着剤であっても、粘着テープを薄くすると高温に晒されたときに剥がれやすくなるという問題点を解決することはできていなかった。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開2009−203450号公報
【特許文献2】特許第5256515号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
本発明は、薄い粘着テープでありながら、高温に晒されても剥がれにくい粘着テープを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明は、粘着剤層を有する粘着テープであって、前記粘着剤層は、リビングラジカル重合により得られた分子量分布(Mw/Mn)1.05〜2.5の(メタ)アクリルポリマーを含有し、前記(メタ)アクリルポリマーは、カルボキシル基含有モノマー由来の成分0.1〜10重量%及び/又は水酸基含有モノマー由来の成分0.1〜1重量%を含有し、示差熱熱重量同時測定装置を用いて昇温速度5℃/分で測定した300℃での加熱重量減少量が10重量%以下である粘着テープである。
以下、本発明を詳述する。
【0009】
本発明者らは、リビングラジカル重合により得られた特定範囲の分子量分布(Mw/Mn)の(メタ)アクリルポリマーであって、カルボキシル基含有モノマー由来の成分及び/又は水酸基含有モノマー由来の成分の割合が特定範囲に調整され、更に、示差熱熱重量同時測定装置を用いて昇温速度5℃/分で測定した300℃での加熱重量減少量が特定範囲に調整された(メタ)アクリルポリマーを用いることにより、薄い粘着テープでありながら、高温に晒されても剥がれにくい粘着テープが得られることを見出し、本発明を完成させるに至った。
粘着テープが高温に晒されても剥がれにくい理由としては、リビングラジカル重合によれば、低分子量成分の生成及び共重合せずに生じるホモポリマーの生成を抑え、高温に晒されたときの剥がれの原因となる加熱重量減少量を抑えることができる点、カルボキシル基含有モノマー及び/又は水酸基含有モノマーを各ポリマー分子に特定範囲の割合で均一に共重合させることができる点が挙げられる。
【0010】
本発明の粘着テープは、粘着剤層を有する粘着テープである。上記粘着剤層は、リビングラジカル重合により得られた分子量分布(Mw/Mn)1.05〜2.5の(メタ)アクリルポリマーを含有する。
【0011】
上記(メタ)アクリルポリマーは、リビングラジカル重合、好ましくは有機テルル重合開始剤を用いたリビングラジカル重合により得られたポリマーである。
上記粘着剤層が上記(メタ)アクリルポリマーを含有することにより、本発明の粘着テープは、薄い粘着テープでありながら、高温に晒されても剥がれにくいものとなる。
粘着テープが高温に晒されても剥がれにくい理由としては、リビングラジカル重合によれば、低分子量成分の生成及び共重合せずに生じるホモポリマーの生成を抑え、高温に晒されたときの剥がれの原因となる加熱重量減少量を抑えることができる点、カルボキシル基含有モノマー及び/又は水酸基含有モノマーを各ポリマー分子に特定範囲の割合で均一に共重合させることができる点が挙げられる。
【0012】
なかでも、有機テルル重合開始剤を用いたリビングラジカル重合は、他のリビングラジカル重合とは異なり、カルボキシル基、水酸基、エポキシ基、アミノ基、イソシアネート基、アミド基、ニトリル基等の官能基を有するモノマーをいずれも保護することなく、同一の開始剤で重合して均一な分子量及び組成を有するポリマーを得ることができる。このため、このような官能基を有するモノマーを容易に共重合することができる。
【0013】
上記有機テルル重合開始剤は、リビングラジカル重合に一般的に用いられるものであれば特に限定されず、例えば、有機テルル化合物、有機テルリド化合物等が挙げられる。
上記有機テルル化合物として、例えば、(メチルテラニル−メチル)ベンゼン、(1−メチルテラニル−エチル)ベンゼン、(2−メチルテラニル−プロピル)ベンゼン、1−クロロ−4−(メチルテラニル−メチル)ベンゼン、1−ヒドロキシ−4−(メチルテラニル−メチル)ベンゼン、1−メトキシ−4−(メチルテラニル−メチル)ベンゼン、1−アミノ−4−(メチルテラニル−メチル)ベンゼン、1−ニトロ−4−(メチルテラニル−メチル)ベンゼン、1−シアノ−4−(メチルテラニル−メチル)ベンゼン、1−メチルカルボニル−4−(メチルテラニル−メチル)ベンゼン、1−フェニルカルボニル−4−(メチルテラニル−メチル)ベンゼン、1−メトキシカルボニル−4−(メチルテラニル−メチル)ベンゼン、1−フェノキシカルボニル−4−(メチルテラニル−メチル)ベンゼン、1−スルホニル−4−(メチルテラニル−メチル)ベンゼン、1−トリフルオロメチル−4−(メチルテラニル−メチル)ベンゼン、1−クロロ−4−(1−メチルテラニル−エチル)ベンゼン、1−ヒドロキシ−4−(1−メチルテラニル−エチル)ベンゼン、1−メトキシ−4−(1−メチルテラニル−エチル)ベンゼン、1−アミノ−4−(1−メチルテラニル−エチル)ベンゼン、1−ニトロ−4−(1−メチルテラニル−エチル)ベンゼン、1−シアノ−4−(1−メチルテラニル−エチル)ベンゼン、1−メチルカルボニル−4−(1−メチルテラニル−エチル)ベンゼン、1−フェニルカルボニル−4−(1−メチルテラニル−エチル)ベンゼン、1−メトキシカルボニル−4−(1−メチルテラニル−エチル)ベンゼン、1−フェノキシカルボニル−4−(1−メチルテラニル−エチル)ベンゼン、1−スルホニル−4−(1−メチルテラニル−エチル)ベンゼン、1−トリフルオロメチル−4−(1−メチルテラニル−エチル)ベンゼン、1−クロロ−4−(2−メチルテラニル−プロピル)ベンゼン、1−ヒドロキシ−4−(2−メチルテラニル−プロピル)ベンゼン、1−メトキシ−4−(2−メチルテラニル−プロピル)ベンゼン、1−アミノ−4−(2−メチルテラニル−プロピル)ベンゼン、1−ニトロ−4−(2−メチルテラニル−プロピル)ベンゼン、1−シアノ−4−(2−メチルテラニル−プロピル)ベンゼン、1−メチルカルボニル−4−(2−メチルテラニル−プロピル)ベンゼン、1−フェニルカルボニル−4−(2−メチルテラニル−プロピル)ベンゼン、1−メトキシカルボニル−4−(2−メチルテラニル−プロピル)ベンゼン、1−フェノキシカルボニル−4−(2−メチルテラニル−プロピル)ベンゼン、1−スルホニル−4−(2−メチルテラニル−プロピル)ベンゼン、1−トリフルオロメチル−4−(2−メチルテラニル−プロピル)ベンゼン、2−(メチルテラニル−メチル)ピリジン、2−(1−メチルテラニル−エチル)ピリジン、2−(2−メチルテラニル−プロピル)ピリジン、2−メチルテラニル−エタン酸メチル、2−メチルテラニル−プロピオン酸メチル、2−メチルテラニル−2−メチルプロピオン酸メチル、2−メチルテラニル−エタン酸エチル、2−メチルテラニル−プロピオン酸エチル、2−メチルテラニル−2−メチルプロピオン酸エチル、2−メチルテラニルアセトニトリル、2−メチルテラニルプロピオニトリル、2−メチル−2−メチルテラニルプロピオニトリル等が挙げられる。これらの有機テルル化合物中のメチルテラニル基は、エチルテラニル基、n−プロピルテラニル基、イソプロピルテラニル基、n−ブチルテラニル基、イソブチルテラニル基、t−ブチルテラニル基、フェニルテラニル基等であってもよく、また、これらの有機テルル化合物は、単独で用いてもよく、2種以上を併用してもよい。
【0014】
上記有機テルリド化合物として、例えば、ジメチルジテルリド、ジエチルジテルリド、ジ−n−プロピルジテルリド、ジイソプロピルジテルリド、ジシクロプロピルジテルリド、ジ−n−ブチルジテルリド、ジ−sec−ブチルジテルリド、ジ−tert−ブチルジテルリド、ジシクロブチルジテルリド、ジフェニルジテルリド、ビス−(p−メトキシフェニル)ジテルリド、ビス−(p−アミノフェニル)ジテルリド、ビス−(p−ニトロフェニル)ジテルリド、ビス−(p−シアノフェニル)ジテルリド、ビス−(p−スルホニルフェニル)ジテルリド、ジナフチルジテルリド、ジピリジルジテルリド等が挙げられる。これらの有機テルリド化合物は、単独で用いてもよく、2種以上を併用してもよい。なかでも、ジメチルジテルリド、ジエチルジテルリド、ジ−n−プロピルジテルリド、ジ−n−ブチルジテルリド、ジフェニルジテルリドが好ましい。
【0015】
なお、本発明の効果を損なわない範囲内で、上記有機テルル重合開始剤に加えて、重合速度の促進を目的として重合開始剤としてアゾ化合物を用いてもよい。
上記アゾ化合物は、ラジカル重合に一般的に用いられるものであれば特に限定されず、例えば、2,2’−アゾビス(イソブチロニトリル)、2,2’−アゾビス(2−メチルブチロニトリル)、2,2’−アゾビス(2,4−ジメチルバレロニトリル)、2,2’−アゾビス(4−メトキシ−2,4−ジメチルバレロニトリル)、1,1−アゾビス(シクロヘキサン−1−カルボニトリル)、1−[(1−シアノ−1−メチルエチル)アゾ]ホルムアミド、4,4’−アゾビス(4−シアノバレリアン酸)、ジメチル−2,2’−アゾビス(2−メチルプロピオネート)、ジメチル−1,1’−アゾビス(1−シクロヘキサンカルボキシレート)、2,2’−アゾビス{2−メチル−N−[1,1’−ビス(ヒドロキシメチル)−2−ヒドロキシエチル]プロピオンアミド}、2,2’−アゾビス[2−メチル−N−(2−ヒドロキシエチル)プロピオンアミド]、2,2’−アゾビス[N−(2−プロペニル)−2−メチルプロピオンアミド]、2,2’−アゾビス(N−ブチル−2−メチルプロピオンアミド)、2,2’−アゾビス(N−シクロヘキシル−2−メチルプロピオンアミド)、2,2’−アゾビス[2−(2−イミダゾリン−2−イル)プロパン]二塩酸塩、2,2’−アゾビス{2−[1−(2−ヒドロキシエチル)−2−イミダゾリン−2−イル]プロパン}二塩酸塩、2,2’−アゾビス[2−(2−イミダゾリン−2−イル)プロパン]、2,2’−アゾビス(2−アミジノプロパン)二塩酸塩、2,2’−アゾビス[N−(2−カルボキシエチル)−2−メチルプロピオンアミジン]四水和物、2,2’−アゾビス(1−イミノ−1−ピロリジノ−2−メチルプロパン)二塩酸塩、2,2’−アゾビス(2,4,4−トリメチルペンタン)等が挙げられる。これらのアゾ化合物は、単独で用いてもよく、2種以上を併用してもよい。
【0016】
上記リビングラジカル重合においては、分散安定剤を用いてもよい。上記分散安定剤として、例えば、ポリビニルピロリドン、ポリビニルアルコール、メチルセルロース、エチルセルロース、ポリ(メタ)アクリル酸、ポリ(メタ)アクリル酸エステル、ポリエチレングリコール等が挙げられる。
上記リビングラジカル重合の方法として、従来公知の方法が用いられ、例えば、溶液重合(沸点重合又は定温重合)、乳化重合、懸濁重合、塊状重合等が挙げられる。
上記リビングラジカル重合において重合溶媒を用いる場合、該重合溶媒は特に限定されず、例えば、ヘキサン、シクロヘキサン、オクタン、トルエン、キシレン等の非極性溶媒や、水、メタノール、エタノール、プロパノール、ブタノール、アセトン、メチルエチルケトン、メチルイソブチルケトン、テトラヒドロフラン、ジオキサン、N,N−ジメチルホルムアミド等の高極性溶媒を用いることができる。これらの重合溶媒は、単独で用いてもよく、2種以上を併用してもよい。
また、重合温度は、重合速度の観点から0〜110℃が好ましい。
【0017】
上記(メタ)アクリルポリマーは、分子量分布(Mw/Mn)が1.05〜2.5である。
上記分子量分布が2.5を超えると、上記リビングラジカル重合において生成した低分子量成分等が増えるため、高温に晒されたときに粘着テープが剥がれやすくなる。上記分子量分布の好ましい上限は2.0であり、より好ましい上限は1.8である。
【0018】
上記(メタ)アクリルポリマーは、重量平均分子量(Mw)の好ましい下限が10万、好ましい上限が200万である。上記重量平均分子量が10万以上であれば、高い耐熱性を得ることができる。なお、上記重量平均分子量が200万を超えると、塗工時の粘度が高すぎて塗工し難くなり、上記粘着剤層の厚みムラを発生させてしまうことがある。上記重量平均分子量のより好ましい下限は20万である。
【0019】
なお、分子量分布(Mw/Mn)は、重量平均分子量(Mw)と数平均分子量(Mn)との比である。
重量平均分子量(Mw)及び数平均分子量(Mn)は、ゲルパミエーションクロマトグラフィ(GPC)法によりポリスチレン換算分子量として測定される。具体的には、重量平均分子量(Mw)及び数平均分子量(Mn)は、(メタ)アクリルポリマーをテトラヒドロフラン(THF)によって50倍希釈して得られた希釈液をフィルターで濾過し、得られた濾液を用いてGPC法によりポリスチレン換算分子量として測定される。GPC法では、例えば、2690 Separations Model(Waters社製)等を使用できる。
【0020】
上記(メタ)アクリルポリマーは、カルボキシル基含有モノマー由来の成分0.1〜10重量%及び/又は水酸基含有モノマー由来の成分0.1〜1重量%を含有する。有機テルル重合開始剤を用いることで、このような官能基を有するモノマーであってもいずれも保護することなく用いることができる。
なお、カルボキシル基含有モノマー由来の成分0.1〜10重量%及び/又は水酸基含有モノマー由来の成分0.1〜1重量%を含有するとは、カルボキシル基含有モノマー由来の成分のみを上記範囲で含有するか、水酸基含有モノマー由来の成分のみを上記範囲で含有するか、これらの両方をそれぞれ上記範囲で含有するかのいずれかであることを意味する。
【0021】
なお、カルボキシル基又は水酸基には、後述するように、これらの官能基と反応可能であり、かつ、紫外線硬化が可能な重合性基を有する化合物を反応させてもよい。
ただし、上記(メタ)アクリルポリマーにおけるカルボキシル基含有モノマー由来の成分、又は、水酸基含有モノマー由来の成分は、リビングラジカル重合におけるモノマー由来の成分である。従って、本明細書において、上記官能基と反応可能であり、かつ、紫外線硬化が可能な重合性基を有する化合物は、カルボキシル基又は水酸基を有する場合であっても、上記(メタ)アクリルポリマーにおけるカルボキシル基含有モノマー由来の成分、又は、水酸基含有モノマー由来の成分には該当しない。
また、カルボキシル基又は水酸基が、上記官能基と反応可能であり、かつ、紫外線硬化が可能な重合性基を有する化合物と反応することにより消費される場合は、反応により消費されるカルボキシル基又は水酸基の濃度を考慮して、上記(メタ)アクリルポリマーにおけるカルボキシル基含有モノマー由来の成分、又は、水酸基含有モノマー由来の成分の割合が上記範囲となるように調整しておくことが好ましい。
【0022】
上記カルボキシル基含有モノマーとしては、例えば、(メタ)アクリル酸、フタル酸、テレフタル酸、ピロメリット酸等が挙げられる。なかでも、アクリル酸が好ましい。
【0023】
上記カルボキシル基含有モノマー由来の成分の割合が0.1重量%未満であると、粘着テープの耐熱性が不足することがある。上記カルボキシル基含有モノマー由来の成分の割合が10重量%を超えると、上記粘着剤層のゲル分率が高くなりすぎて、高温に晒されたときに粘着テープが剥がれやすくなることがある。上記カルボキシル基含有モノマー由来の成分の割合の好ましい下限は0.5重量%、好ましい上限は5重量%であり、より好ましい下限は1重量%、より好ましい上限は3重量%である。
【0024】
上記水酸基含有モノマーとしては、例えば、ヒドロキシエチル(メタ)アクリレート、ヒドロキシプロピル(メタ)アクリレート、片末端をアクリロイル基で変性したポリエチレングリコール、片末端をアクリロイル基で変性したポリプロピレングリコール等が挙げられる。なかでも、ヒドロキシエチルメタクリレートが好ましい。
【0025】
上記水酸基含有モノマー由来の成分の割合が0.1重量%未満であると、粘着テープの耐熱性が不足することがある。上記水酸基含有モノマー由来の成分の割合が1重量%を超えると、上記粘着剤層のゲル分率が高くなりすぎて、高温に晒されたときに粘着テープが剥がれやすくなることがある。上記水酸基含有モノマー由来の成分の割合の好ましい下限は0.2重量%、好ましい上限は0.8重量%であり、より好ましい下限は0.3重量%、より好ましい上限は0.5重量%である。
【0026】
上記(メタ)アクリルポリマーは、上記カルボキシル基含有モノマー由来の成分及び/又は上記水酸基含有モノマー由来の成分以外に、これらと共重合可能なモノマー由来の成分を含有する。上記共重合可能なモノマーは特に限定されず、例えば、(メタ)アクリル酸エステル、ビニル化合物等が挙げられる。
上記(メタ)アクリル酸エステルは特に限定されず、メチル(メタ)アクリレート、エチル(メタ)アクリレート、プロピル(メタ)アクリレート、n−ブチル(メタ)アクリレート、tert−ブチル(メタ)アクリレート、2−エチルヘキシル(メタ)アクリレート、n−オクチル(メタ)アクリレート、イソオクチル(メタ)アクリレート、イソノニル(メタ)アクリレート、イソミリスチル(メタ)アクリレート、ステアリル(メタ)アクリレート等の(メタ)アクリル酸アルキルエステルや、シクロヘキシル(メタ)アクリレート、イソボルニル(メタ)アクリレート、ベンジル(メタ)アクリレート、2−ブトキシエチル(メタ)アクリレート、2−フェノキシエチル(メタ)アクリレート、グリシジル(メタ)アクリレート、テトラヒドロフルフリル(メタ)アクリレート等が挙げられる。これらの(メタ)アクリル酸エステルは、単独で用いてもよく、2種以上を併用してもよい。
【0027】
上記ビニル化合物は特に限定されず、例えば、N,N−ジメチルアクリルアミド、N,N−ジエチルアクリルアミド、N−イソプロピルアクリルアミド、N−ヒドロキシエチルアクリルアミド、アクリルアミド等の(メタ)アクリルアミド化合物、N−ビニルピロリドン、N−ビニルカプロラクタム、N−ビニルアセトアミド、N−アクリロイルモルフォリン、アクリロニトリル、スチレン、酢酸ビニル等が挙げられる。これらのビニル化合物は、単独で用いてもよく、2種以上を併用してもよい。
【0028】
上記(メタ)アクリルポリマーは、側鎖に紫外線硬化が可能な重合性基が導入されていてもよい。
上記(メタ)アクリルポリマーの側鎖に紫外線硬化が可能な重合性基が導入されていることにより、被着体から剥離するときには紫外線の照射により上記粘着剤層の全体が均一にかつ速やかに架橋反応を起こして硬化し、粘着力が大きく低下し、被着体から容易に剥離することができる。
上記紫外線硬化が可能な重合性基としては、例えば、ビニル基、アクリロイル基、メタクリロイル基等の炭素−炭素二重結合を有する基が挙げられる。上記紫外線硬化が可能な重合性基は、炭素−炭素三重結合を有する基であってもよい。
【0029】
このような側鎖に紫外線硬化が可能な重合性基が導入された(メタ)アクリルポリマーは、例えば、次の方法により得ることが好ましい。
上記リビングラジカル重合によりカルボキシル基、水酸基、エポキシ基、アミノ基、イソシアネート基、アミド基等の官能基を有するモノマーを共重合させることで、これらのモノマーを各ポリマー分子に均一に共重合させることができ、得られた(メタ)アクリルポリマーは側鎖に上記官能基を有するものとなる。このような(メタ)アクリルポリマーに、上記官能基と反応可能であり、かつ、紫外線硬化が可能な重合性基を有する化合物を反応させることで、側鎖に重合性基を結合させる。
なお、カルボキシル基又は水酸基に、これらの官能基と反応可能であり、かつ、紫外線硬化が可能な重合性基を有する化合物を反応させる場合は、反応により消費されるカルボキシル基又は水酸基の濃度を考慮して、上記(メタ)アクリルポリマーにおけるカルボキシル基含有モノマー由来の成分、又は、水酸基含有モノマー由来の成分の割合が上記範囲となるように調整しておくことが好ましい。
【0030】
上記官能基を有するモノマーとしては、具体的には例えば、4−ヒドロキシブチル(メタ)アクリレート、グリセロールモノ(メタ)アクリレート、1,6−ヘキサンジオール(メタ)アクリレート、ヒドロキシエチル(メタ)アクリレート、ポリプロピレングリコールモノ(メタ)アクリレート等の水酸基含有モノマー;N−メチル(メタ)アクリルアミド等のアミド基含有モノマー;(メタ)アクリロイルオキシエチルイソシアネート、メタ−イソプロぺニル−α,α−ジメチルベンジルイソシアネート、(メタ)アクリロイルイソシアネート、アリルイソシアネート等のイソシアネート基含有モノマー;グリシジル(メタ)アクリレート等のエポキシ基含有モノマー;(メタ)アクリル酸等のカルボキシル基含有モノマー;(メタ)アクリル酸アミノエチル等のアミノ基含有モノマー等が挙げられる。これらの官能基を有するモノマーは、単独で用いてもよく、2種以上を併用してもよい。
【0031】
上記官能基と反応可能であり、かつ、紫外線硬化が可能な重合性基を有する化合物としては、例えば、カルボキシル基、水酸基、エポキシ基、アミノ基、イソシアネート基、アミド基等の官能基を有し、かつ、(メタ)アクリロイル基を有する化合物が挙げられる。具体的には例えば、次の(1)〜(4)の場合が挙げられる。
(1)側鎖に水酸基を有する(メタ)アクリルポリマーに対しては、アミド基、イソシアネート基、エポキシ基及びカルボキシル基からなる群より選択される少なくとも1つを有し、かつ、(メタ)アクリロイル基を有する化合物を反応させればよい。
(2)側鎖にカルボキシル基を有する(メタ)アクリルポリマーに対しては、エポキシ基又はイソシアネート基を有し、かつ、(メタ)アクリロイル基を有する化合物を反応させればよい。
(3)側鎖にエポキシ基を有する(メタ)アクリルポリマーに対しては、カルボキシル基又はアミド基を有し、かつ、(メタ)アクリロイル基を有する化合物を反応させればよい。
(4)側鎖にアミノ基を有する(メタ)アクリルポリマーに対しては、エポキシ基を有し、かつ、(メタ)アクリロイル基を有する化合物を反応させればよい。
【0032】
上記粘着剤層は、示差熱熱重量同時測定装置を用いて昇温速度5℃/分で測定した300℃での加熱重量減少量が10重量%以下である。
上述したように、リビングラジカル重合によれば、低分子量成分の生成及び共重合せずに生じるホモポリマーの生成を抑え、高温に晒されたときの剥がれの原因となる加熱重量減少量を抑えることができる。これにより、本発明の粘着テープは、薄い粘着テープでありながら、高温に晒されても剥がれにくいものとなる。
上記加熱重量減少量は5重量%以下であることが好ましい。
【0033】
上記示差熱熱重量同時測定装置は特に限定されず、例えば、TG/DTA6200(SII社製)等を用いることができる。
【0034】
上記粘着剤層は、粘着付与樹脂を含有してもよい。上記粘着剤層が粘着付与樹脂を含有することにより、粘着テープは、被着体から剥離するときに紫外線照射されるまでは、剥がれにくいものとなる。
上記粘着付与樹脂としては、例えば、ロジン樹脂、不均化ロジン樹脂、重合ロジン樹脂、水添ロジン樹脂、ロジン変性フェノール樹脂、ロジンエステル樹脂、不均化ロジンエステル樹脂、重合ロジンエステル樹脂、水添ロジンエステル樹脂、テルペン樹脂、テルペンフェノール樹脂、クマロンインデン樹脂、石油系樹脂等が挙げられる。
【0035】
上記粘着付与樹脂の含有量は、上記(メタ)アクリルポリマー100重量部に対する好ましい下限が5重量部、好ましい上限が40重量部である。上記含有量が5重量部未満であると、紫外線照射される前に粘着テープが剥がれやすくなり、上記含有量が40重量部を超えると、ガラス転移温度の上昇により、紫外線照射される前に粘着テープが剥がれやすくなることがある。上記含有量のより好ましい下限は10重量部、より好ましい上限は30重量部である。
【0036】
上記粘着剤層は、光重合開始剤を含有してもよい。
上記光重合開始剤は、例えば、250〜800nmの波長の光を照射することにより活性化されるものが挙げられ、このような光重合開始剤としては、例えば、メトキシアセトフェノン等のアセトフェノン誘導体化合物や、ベンゾインプロピルエーテル、ベンゾインイソブチルエーテル等のベンゾインエーテル系化合物や、ベンジルジメチルケタール、アセトフェノンジエチルケタール等のケタール誘導体化合物や、フォスフィンオキシド誘導体化合物や、ビス(η5−シクロペンタジエニル)チタノセン誘導体化合物、ベンゾフェノン、ミヒラーケトン、クロロチオキサントン、トデシルチオキサントン、ジメチルチオキサントン、ジエチルチオキサントン、α−ヒドロキシシクロヘキシルフェニルケトン、2−ヒドロキシメチルフェニルプロパン等の光ラジカル重合開始剤が挙げられる。これらの光重合開始剤は、単独で用いてもよく、2種以上を併用してもよい。
【0037】
上記粘着剤層は、紫外線により気体を発生する気体発生剤を含有してもよい。
上記粘着剤層が上記気体発生剤を含有することにより、被着体から剥離するとき、上記粘着剤層の粘着力が大きく低下することに加えて上記気体発生剤から気体が発生し、これにより、上記粘着剤層の剥離応力が発生するか、又は、被着体との接着面積が減少して、強く引き剥がさずとも剥離できる。
上記気体発生剤としては、例えば、アゾ化合物、アジド化合物、テトラゾール化合物又はその塩、ビステトラゾール化合物等が挙げられる。
【0038】
上記気体発生剤の含有量は、上記(メタ)アクリルポリマー100重量部に対する好ましい下限が5重量部、好ましい上限が50重量部である。上記含有量がこの範囲内であると、被着体から剥離するときには充分な気体が発生して上記粘着剤層の剥離を行うことができ、かつ、上記接着剤層の粘着力を損なうこともない。上記含有量のより好ましい下限は10重量部、より好ましい上限は30重量部である。
【0039】
上記粘着剤層は、更に、光増感剤を含有してもよい。
上記光増感剤は、上記気体発生剤への光による刺激を増幅する効果を有することから、より少ない光の照射により気体を放出させることができる。また、より広い波長領域の光により気体を放出させることができる。
上記光増感剤としては、例えば、アミノ系化合物、ニトロ化合物、キノン系化合物、キサントン系化合物、アンスロン化合物、ケトン系化合物等が挙げられる。
【0040】
上記光増感剤は特に限定されず、例えば、アルコキシ基を少なくとも1つ以上有する多環芳香族化合物が挙げられる。なかでも、一部がグリシジル基又は水酸基で置換されたアルコキシ基を有する置換アルコキシ多環芳香族化合物が好ましい。このような化合物は、耐昇華性が高く、高温下で使用することができる。また、アルコキシ基の一部がグリシジル基又は水酸基で置換されることにより、上記粘着剤層への溶解性が高まり、ブリードアウトを防止することができる。
上記多環芳香族化合物は、アントラセン誘導体が好ましい。上記アルコキシ基は、炭素数1〜18のものが好ましく、炭素数1〜8のものがより好ましい。
【0041】
上記アルコキシ基を少なくとも1つ以上有する多環芳香族化合物は、例えば、9,10−ジメトキシアントラセン、2−エチル−9,10−ジメトキシアントラセン、2−tブチル−9,10−ジメトキシアントラセン、2,3−ジメチル−9,10−ジメトキシアントラセン、9−メトキシ−10−メチルアントラセン、9,10−ジエトキシアントラセン、2−エチル−9,10−ジエトキシアントラセン、2−tブチル−9,10−ジエトキシアントラセン、2,3−ジメチル−9,10−ジエトキシアントラセン、9−エトキシ−10−メチルアントラセン、9,10−ジプロポキシアントラセン、2−エチル−9,10−ジプロポキシアントラセン、2−tブチル−9,10−ジプロポキシアントラセン、2,3−ジメチル−9,10−ジプロポキシアントラセン、9−イソプロポキシ−10−メチルアントラセン、9,10−ジブトキシアントラセン、9,10−ジベンジルオキシアントラセン、2−エチル−9,10−ジベンジルオキシアントラセン、2−tブチル−9,10−ジベンジルオキシアントラセン、2,3−ジメチル−9,10−ジベンジルオキシアントラセン、9−ベンジルオキシ−10−メチルアントラセン、9,10−ジ−α−メチルベンジルオキシアントラセン、2−エチル−9,10−ジ−α−メチルベンジルオキシアントラセン、2−tブチル−9,10−ジ−α−メチルベンジルオキシアントラセン、2,3−ジメチル−9,10−ジ−α−メチルベンジルオキシアントラセン、9−(α−メチルベンジルオキシ)−10−メチルアントラセン、9,10−ジ(2−ヒドロキシエトキシ)アントラセン、2−エチル−9,10−ジ(2−カルボキシエトキシ)アントラセン等のアントラセン誘導体等が挙げられる。
【0042】
上記一部がグリシジル基又は水酸基で置換されたアルコキシ基を有する置換アルコキシ多環芳香族化合物は、例えば、9,10−ジ(グリシジルオキシ)アントラセン、2−エチル−9,10−ジ(グリシジルオキシ)アントラセン、2−tブチル−9,10−ジ(グリシジルオキシ)アントラセン、2,3−ジメチル−9,10−ジ(グリシジルオキシ)アントラセン、9−(グリシジルオキシ)−10−メチルアントラセン、9,10−ジ(2−ビニルオキシエトキシ)アントラセン、2−エチル−9,10−ジ(2−ビニルオキシエトキシ)アントラセン、2−tブチル−9,10−ジ(2−ビニルオキシエトキシ)アントラセン、2,3−ジメチル−9,10−ジ(2−ビニルオキシエトキシ)アントラセン、9−(2−ビニルオキシエトキシ)−10−メチルアントラセン、9,10−ジ(3−メチル−3−オキセタニルメトキシ)アントラセン、2−エチル−9,10−ジ(3−メチル−3−オキセタニルメメトキシ)アントラセン、2−tブチル−9,10−ジ(3−メチル−3−オキセタニルメメトキシ)アントラセン、2,3−ジメチル−9,10−ジ(3−メチル−3−オキセタニルメメトキシ)アントラセン、9−(3−メチル−3−オキセタニルメメトキシ)−10−メチルアントラセン、9,10−ジ(p−エポキシフェニルメトキシ)アントラセン、2−エチル−9,10−ジ(p−エポキシフェニルメトキシ)アントラセン、2−tブチル−9,10−ジ(p−エポキシフェニルメトキシ)アントラセン、2,3−ジメチル−9,10−ジ(p−エポキシフェニルメトキシ)アントラセン、9−(p−エポキシフェニルメトキシ)−10−メチルアントラセン、9,10−ジ(p−ビニルフェニルメトキシ)アントラセン、2−エチル−9,10−ジ(p−ビニルフェニルメトキシ)アントラセン、2−tブチル−9,1−ジ(p−ビニルフェニルメトキシ)アントラセン、2,3−ジメチル−9,10−ジ(p−ビニルフェニルメトキシ)アントラセン、9−(p−ビニルフェニルメトキシ)−10−メチルアントラセン、9,10−ジ(2−ヒドロキシエトキシ)アントラセン、9,10−ジ(2−ヒドロキシプロポキシ)アントラセン、9,10−ジ(2−ヒドロキシブトキシ)アントラセン、9,10−ジ(2−ヒドロキシ−3−ブトキシプロポキシ)アントラセン、9,10−ジ(2−ヒドロキシ−3−(2−エチルヘキシルオキシ)プロポキシ)アントラセン、9,10−ジ(2−ヒドロキシ−3−アリロキシプロポキシ)アントラセン、9,10−ジ(2−ヒドロキシ−3−フェノキシプロポキシ)アントラセン、9,10−ジ(2,3−ジヒドロキシプロポキシ)アントラセン等が挙げられる。
【0043】
上記光増感剤の含有量は、上記(メタ)アクリルポリマー100重量部に対する好ましい下限が0.05重量部、好ましい上限が10重量部である。上記含有量が0.05重量部未満であると、充分な増感効果が得られないことがある。上記含有量が10重量部を超えると、光増感剤に由来する残存物が増え、充分な剥離を行えなくなることがある。上記含有量のより好ましい下限は0.1重量部、より好ましい上限は5重量部である。
【0044】
上記粘着剤層は、更に、ラジカル重合性の多官能オリゴマー又はモノマーを含有してもよい。上記粘着剤層がラジカル重合性の多官能オリゴマー又はモノマーを含有することにより、上記粘着剤層の光硬化性及び熱硬化性が向上する。
上記多官能オリゴマー又はモノマーは、分子量が1万以下であるものが好ましく、紫外線の照射による上記粘着剤層の硬化が効率よくなされるように、その分子量が5000以下でかつ分子内のラジカル重合性の不飽和結合の数が2〜20個のものがより好ましい。
【0045】
上記多官能オリゴマー又はモノマーとしては、例えば、トリメチロールプロパントリアクリレート、テトラメチロールメタンテトラアクリレート、ペンタエリスリトールトリアクリレート、ペンタエリスリトールテトラアクリレート、ジペンタエリスリトールモノヒドロキシペンタアクリレート、ジペンタエリスリトールヘキサアクリレート又は上記同様のメタクリレート類等が挙げられる。また、1,4−ブチレングリコールジアクリレート、1,6−ヘキサンジオールジアクリレート、ポリエチレングリコールジアクリレート、市販のオリゴエステルアクリレート、上記同様のメタクリレート類等が挙げられる。これらの多官能オリゴマー又はモノマーは、単独で用いてもよく、2種以上を併用してもよい。
【0046】
上記粘着剤層は、必要に応じて、可塑剤、乳化剤、軟化剤、微粒子、充填剤、顔料、染料、シランカップリング剤、酸化防止剤、界面活性剤、ワックス、充填剤等の公知の添加剤を含有してもよい。
【0047】
上記粘着剤層は、ゲル分率が70重量%以下であることが好ましい。上記ゲル分率が70重量%以下であれば、粘着テープは、高温に晒されてもより剥がれにくいものとなる。上記ゲル分率のより好ましい上限は60重量%である。
また、上記ゲル分率の下限は特に限定されないが、好ましい下限は1重量%である。上記ゲル分率が1重量%未満であると、上記粘着剤層が柔らかくなりすぎて、耐熱性が低下することがある。上記ゲル分率のより好ましい下限は5重量%である。
なお、ゲル分率は、次のようにして測定される。まず、粘着テープを50mm×100mmの平面長方形状に裁断して試験片を作製し、試験片を酢酸エチル中に23℃にて24時間浸漬した後、酢酸エチルから取り出して、110℃の条件下で1時間乾燥させる。乾燥後の試験片の重量を測定し、下記式(1)を用いてゲル分率を算出する。なお、試験片には、粘着剤層を保護するための離型フィルムは積層されていないものとする。
ゲル分率(重量%)=100×(W2−W0)/(W1−W0) (1)
(W0:基材の重量、W1:浸漬前の試験片の重量、W2:浸漬、乾燥後の試験片の重量)
【0048】
上記範囲のゲル分率の粘着剤層を得る方法としては、架橋剤を添加して上記粘着剤層を構成する樹脂の主鎖間に架橋構造を形成する方法が好ましい。上記架橋剤の種類又は量を適宜調整することによって、上記粘着剤層のゲル分率を上記範囲に調整しやすくなる。
【0049】
上記架橋剤は特に限定されず、例えば、イソシアネート系架橋剤、アジリジン系架橋剤、エポキシ系架橋剤、金属キレート型架橋剤等が挙げられる。なかでも、基材に対する密着安定性に優れるため、イソシアネート系架橋剤又はエポキシ系架橋剤が好ましい。上記イソシアネート系架橋剤として、例えば、コロネートHX(日本ポリウレタン工業社製)、コロネートL(日本ポリウレタン工業社製)、マイテックNY260A(三菱化学社製)等が挙げられる。上記エポキシ系架橋剤として、例えば、デナコールEX212、デナコールEX214(いずれもナガセケムテック社製)、TETRAD−X、TETRAD−C(いずれも三菱ガス化学社製)等が挙げられる。
上記架橋剤の配合量は、上記(メタ)アクリルポリマー100重量部に対して0.01〜5重量部が好ましく、0.1〜3重量部がより好ましい。
【0050】
本発明の粘着テープは、薄い粘着テープであっても剥がれにくいため、用途に応じて上記粘着剤層、及び、後述する基材を薄くすることができる。
上記粘着剤層の厚みは用途によって設定されるので特に限定されないが、好ましい下限が1μm、好ましい上限が100μmである。上記厚みが1μm未満であると、粘着テープが剥がれやすくなることがある。上記厚みが100μmを超えると、薄い粘着テープが得られないことがある。上記厚みのより好ましい下限は25μm、より好ましい上限は75μmである。
【0051】
本発明の粘着テープは、基材を有するサポートタイプであってもよいし、基材を有さないノンサポートタイプであってもよい。サポートタイプの場合には、基材の片面に上記粘着剤層が形成されていてもよいし、両面に上記粘着剤層が形成されていてもよい。
【0052】
上記基材は特に限定されないが、樹脂フィルム、樹脂発泡体、紙、不織布、ヤーンクロス布等が挙げられる。
上記樹脂フィルムとしては、例えば、ポリエチレンフィルム、ポリプロピレンフィルム等のポリオレフィン系樹脂フィルムや、ポリエチレンテレフタレート(PET)フィルム、ポリエチレンナフタレート(PEN)フィルム等のポリエステル系樹脂フィルムや、エチレン−酢酸ビニル共重合体、エチレン−アクリル酸エステル共重合体等の変性オレフィン系樹脂フィルムや、ポリ塩化ビニル系樹脂フィルム、ポリウレタン系樹脂フィルム、シクロオレフィンポリマー樹脂フィルム、アクリル樹脂フィルム、ポリカーボネートフィルム、ABS(アクリロニトリル−ブタジエン−スチレン)樹脂フィルム、ポリアミドフィルム、ポリウレタンフィルム、ポリイミドフィルム等が挙げられる。
上記樹脂発泡体としては、例えば、ポリエチレンフォーム、ポリプロピレンフォーム、アクリルフォーム、ウレタンフォーム、エチレンプロピレンゴムフォーム等が挙げられる。上記ヤーンクロス布としては、例えば、ポリエチレンフラットヤーンを織ったものや、その表面に樹脂フィルムをラミネートしたもの等が挙げられる。
上記基材は、透明な樹脂からなる基材であってもよく、網目状の構造を有する基材であってもよく、孔が開けられた基材であってもよい。
特にディスプレイモジュールの組み立てにおいて用いられる両面テープの場合には、光透過防止のために黒色印刷された基材、光反射性向上のために白色印刷された基材、金属蒸着されたフィルム基材等も用いることができる。
【0053】
上記基材の厚みは用途によって設定されるので特に限定されないが、例えばフィルム基材の場合には1〜100μmが好ましく、5〜75μmがより好ましい。上記基材の厚みが1μm未満であると、粘着テープの機械的強度が低下することがある。上記基材の厚みが100μmを超えると、粘着テープの腰が強くなりすぎて、被着体の形状に沿って密着させて貼り合わせることが困難になることがある。
【0054】
本発明の粘着テープの製造方法は特に限定されず、例えば、上記(メタ)アクリルポリマーを、必要に応じて上記光重合開始剤、上記気体発生剤、上記光増感剤、上記粘着付与樹脂、上記架橋剤等のその他の配合成分と共に混合し、攪拌して粘着剤溶液を調製し、続いて、この粘着剤溶液を離型処理したPETフィルムに塗工乾燥させて粘着剤層を形成し、得られた粘着剤層を基材の片面又は両面に転着させる方法、基材に直接塗工乾燥させる方法等が挙げられる。粘着剤溶液を離型処理したPETフィルムに塗工乾燥させて形成した粘着剤層を、基材なしでそのままノンサポートタイプの粘着テープとしてもよい。
【0055】
本発明の粘着テープの用途は特に限定されないが、例えば、半導体ウエハを加工する際のバックグラインドテープ又はダイシング用粘着テープや、反り易い部材(例えば、極薄ガラス基板等の脆弱部材、プラスチックスフィルム、コアレスFPC基板等)の支持用テープ等に好適に用いることができる。
また、本発明の粘着テープは、例えば、半導体ウエハに薬液処理、加熱処理又は発熱を伴う処理を施す際、或いは、半導体ウエハに電極を有する貫通孔を形成させる際に、半導体ウエハを保護する目的で支持板を貼り合わせる際に用いることができる。
本発明の粘着テープは高温に晒されても剥がれにくいため、200℃以上にも及ぶ高温に部品が晒されるような加工工程においても好適に用いることができる。更に、上記(メタ)アクリルポリマーの側鎖に紫外線硬化が可能な重合性基を導入することにより、加工工程を終えた後には、光を照射することにより容易に半導体ウエハから支持板を剥離することができる。
【発明の効果】
【0056】
本発明によれば、薄い粘着テープでありながら、高温に晒されても剥がれにくい粘着テープを提供することができる。
【発明を実施するための形態】
【0057】
以下に実施例を掲げて本発明を更に詳しく説明するが、本発明はこれら実施例のみに限定されない。
【0058】
(合成1、3〜7)
(リビングラジカル重合ポリマーの合成)
Tellurium(40メッシュ、金属テルル、アルドリッチ社製)6.38g(50mmol)をテトラヒドロフラン(THF)50mLに懸濁させ、これに1.6mol/Lのn−ブチルリチウム/ヘキサン溶液(アルドリッチ社製)34.4mL(55mmol)を、室温でゆっくり滴下した。この反応溶液を金属テルルが完全に消失するまで攪拌した。この反応溶液に、エチル−2−ブロモ−イソブチレート10.7g(55mmol)を室温で加え、2時間攪拌した。反応終了後、減圧下で溶媒を濃縮し、続いて減圧蒸留して、黄色油状物の2−メチル−2−n−ブチルテラニル−プロピオン酸エチルを得た。
【0059】
アルゴン置換したグローブボックス内で、反応容器中に、上記で得られた2−メチル−2−n−ブチルテラニル−プロピオン酸エチル38μL、V−60(2,2’−アゾビスイソブチロニトリル、和光純薬工業社製)2.8mg、酢酸エチル1mLを投入した後、反応容器を密閉し、反応容器をグローブボックスから取り出した。続いて、反応容器にアルゴンガスを流入しながら、反応容器内に、表1に示すモノマー(BA:ブチルアクリレート、Aac:アクリル酸、HEA:2−ヒドロキシエチルアクリレート)の合計100g、重合溶媒として酢酸エチル66.5gを投入し、60℃で20時間重合反応を行い、リビングラジカル重合ポリマー含有溶液を得た。
得られたリビングラジカル重合ポリマーをテトラヒドロフラン(THF)によって50倍希釈して得られた希釈液をフィルター(材質:ポリテトラフルオロエチレン、ポア径:0.2μm)で濾過し、得られた濾液をゲルパミエーションクロマトグラフ(Waters社製、2690 Separations Model)に供給して、サンプル流量1ミリリットル/min、カラム温度40℃の条件でGPC測定を行い、ポリマーのポリスチレン換算分子量を測定して、重量平均分子量(Mw)及び分子量分布(Mw/Mn)を求めた。カラムとしてはGPC KF−806L(昭和電工社製)を用い、検出器としては示差屈折計を用いた。
【0060】
(合成2)
(フリーラジカル重合ポリマーの合成)
反応容器内に、重合溶媒として酢酸エチル50gを加え、窒素でバブリングした後、窒素を流入しながら反応容器を加熱して還流を開始した。続いて、重合開始剤としてV−60(2,2’−アゾビスイソブチロニトリル、和光純薬工業社製)0.15gを酢酸エチルで10倍希釈した重合開始剤溶液を反応容器内に投入し、表1に示すモノマーの合計100gを2時間かけて滴下添加した。滴下終了後、重合開始剤としてV−60(2,2’−アゾビスイソブチロニトリル、和光純薬工業社製)0.15gを酢酸エチルで10倍希釈した重合開始剤溶液を反応容器内に再度投入し、4時間重合反応を行い、フリーラジカル重合ポリマー含有溶液を得た。合成1と同様にして、重量平均分子量(Mw)及び分子量分布(Mw/Mn)を求めた。
【0061】
【表1】
【0062】
(合成8〜10)
(側鎖に紫外線硬化が可能な重合性基が導入されたリビングラジカル重合ポリマーの合成)
温度計、攪拌機、冷却管を備えた反応容器を用意し、この反応容器内に、合成1、6又は7で得た固形分換算で100重量部のリビングラジカル重合ポリマー含有溶液に対して、2−イソシアナトエチルメタクリレート3.5重量部を加えて反応させ、側鎖に紫外線硬化が可能な重合性基が導入されたリビングラジカル重合ポリマー(それぞれ合成8、9又は10とする)を含有する酢酸エチル溶液を得た。
【0063】
(実施例1〜12、比較例1〜4)
合成1〜10で得た固形分換算で100重量部の(メタ)アクリルポリマー(リビングラジカル重合ポリマー、フリーラジカル重合ポリマー、又は、側鎖に紫外線硬化が可能な重合性基が導入されたリビングラジカル重合ポリマー)含有溶液に対して、表2、表3に示す所定量の架橋剤(IPDI:イソホロンジイソシアネート、TETRAD−X:三菱ガス化学社製)を添加して攪拌し、不揮発分30重量%の粘着剤溶液を得た。このとき、実施例7〜12では、表3に示す所定量の光重合開始剤(エサキュアワン、日本シイベルヘグナー社製)、気体発生剤(アゾジカルボンアミド)、光増感剤(9,10−ジグリシジルオキシアントラセン)を添加した。
厚み50μmの離型処理したPETフィルムに、得られた粘着剤溶液を、乾燥後の粘着剤層の厚みが50μmとなるように塗工した後、70℃で10分間乾燥させ、粘着テープを得た。なお、粘着剤層を保護するために粘着剤層のもう一方の面にも厚み50μmの離型処理したPETフィルムを積層した。
【0064】
得られた粘着テープを50mm×100mmの平面長方形状に裁断して試験片を作製し、離型フィルムを剥離除去した。試験片を酢酸エチル中に23℃にて24時間浸漬した後、酢酸エチルから取り出して、110℃の条件下で1時間乾燥させた。乾燥後の試験片の重量を測定し、下記式(1)を用いてゲル分率を算出した。
ゲル分率(重量%)=100×(W2−W0)/(W1−W0) (1)
(W0:基材の重量、W1:浸漬前の試験片の重量、W2:浸漬、乾燥後の試験片の重量)
【0065】
<評価>
実施例、比較例で得られた粘着テープについて、下記の評価を行った。結果を表2、表3に示した。
【0066】
(1)300℃での加熱重量減少量の測定
示差熱熱重量同時測定装置(SII社製、TG/DTA6200)のアルミパンに、粘着テープの粘着剤層を5〜10mg秤量し、空気雰囲気中(流量200mL/分)、昇温速度5℃/分の条件で0℃から350℃まで昇温したときの300℃での重量減少量を測定した。
【0067】
(2)高温に晒されたときの剥がれ評価
直径20cmの円形状に切り出した粘着テープの片面の離型処理したPETフィルムを剥がし、コロナ処理した厚み50μmのPETフィルムで裏打ちした。この粘着テープのもう一方の離型処理したPETフィルムを剥がし、直径20cm、厚み約750μmのシリコンウエハに貼り付けた。この積層体を、300℃、1時間加熱した後、室温に戻した。加熱後の積層体の表面を目視にて観察して、剥離が認められた面積が全体の5%以下であった場合を「○」と、5%を超えて10%以下であった場合を「△」と、10%を超えた場合を「×」と評価した。
【0068】
【表2】
【0069】
【表3】
【産業上の利用可能性】
【0070】
本発明によれば、薄い粘着テープでありながら、高温に晒されても剥がれにくい粘着テープを提供することができる。