【実施例】
【0165】
実施例1− c264scTCR/huIL15RαSushi−huIgG1及びc149scTCR/huIL15N72D遺伝子融合体を含有している発現ベクターの構築。
T2分子(T2M)と呼ばれる融合タンパク質は多鎖ポリペプチドから成っている(
図1)。本発明の一実施態様では、これらのポリペプチドの1つは、国際特許公開第WO2008143794号公報(参照により本明細書に取り込まれている)に開示されているようにタンパク質結合ドメインとIL−15(又IL−15変異体)の間の融合を含んでいる。T2の第2ポリペプチドはタンパク質結合ドメイン、IL−15Rαドメイン及び免疫グロブリンドメインの間の融合を含んでいる。或いは、タンパク質結合ドメイン−IL−15融合タンパク質は、更に免疫グロブリンドメインと結合してもよい。好ましい免疫グロブリンドメインは他の免疫グロブリンドメインと相互作用して多鎖タンパク質を形成できるようにする領域を含んでいる。例えば、IgG1、C
H2−C
H3のような、免疫グロブリンの重鎖領域は相互作用してFc領域を作成できる。好ましい免疫グロブリンドメインはFc受容体又は相補体タンパク質結合活性を包含する、エフェクター機能を有し、そして又はグリコキシル化部位を有する領域も含んでいる。ある実施態様では、T2分子の免疫グロブリンドメインは、Fc受容体又は相補体の結合活性若しくはグリコキシル化を減少又は補強して、それにより得られるタンパク質の生物活性に影響を及ぼす突然変異を含んでいる。例えば、Fc受容体との結合を減少する突然変異を含んでいる免疫グロブリンドメインはFc受容体担持細胞に対する低い結合活性を有するT2分子を作成するために用いることができ、これはTCR−特異抗原を認識又は検出するように設計された試薬に対して有利であろう。
【0166】
ヒトIL−15Rαsushiドメイン(huIL−15RαSushi)及びヒトIgG1定常領域(huIgG1C
H1−C
H2−C
H3)と融合しているp53(aa264−272)1本鎖TCR(c264scTCRと呼ぶ)を含有している発現ベクターの構築を以下のように実施した。c264scTCR/huIgG1遺伝子断片を先に構築したpNEF38−c264scTCR/huIgG1ベクターからPacI及びM1uIで制限消化して除去した。遺伝子断片をゲルで精製し、同じ制限酵素で消化したpMSGVベクターにライゲートして、pMSGV−c264scTCR/huIgG1と呼ぶ構築物をもたらした。CMVプロモーターを含有しているDNA断片をpcDNA3.1から精製し、続いてNruI及びHindIIIで消化した。この断片を、PacIで消化してあるpMSGV−c264scTCR/huIgG1内にライゲートして、DNAポリメラーゼで充填して平滑末端を作成した後HindIIIで消化した。得られた構築物をpMC−c264scTCR/huIgG1と称した。先に構築された、pNEF38−c264scTCR/huIL15RαSushi(国際公開第WO2008143794号公報を参照されたい)由来のhuIL15RαSushi遺伝子断片をフロントプライマー:
5’−TGTTGGGAATTCATCACGTGCCCTC−3’
(配列番号6)
及びバックプライマ−:
5’−TGGTGTGAATTCTCTAATGCATTTGAGACTGG−3’
(配列番号7)
を用いて、次のPCR条件下でKOD HOT Start DNAポリメラーゼ(EMD)によって増幅した:95C、2分、1サイクル;95C、20秒、65C、20秒;70C、20秒、35サイクル;72C、10分、1サイクル。ヒトIL−15RαSushi遺伝子のPCR産物をゲルで精製してEcoRIで消化した。この遺伝子をEcoRIで消化してあるpMC−c264scTCR/huIgG1内にライゲートした。ヒトIL−15RαSushiドメインをコードするDNA断片のpMC−c264scTCR/huIgG1内へのクローニングは以下の配列を含んでいるc264scTCR/huIL15RαSushi−huIgG1融合遺伝子をもたらした:3’−免疫グロブリン重鎖リーダー−264TCR V-α−ペプチドリンカー−264TCR V-β−ヒトTCR C-β−ヒトIL−15RαSushi−ヒトIgG1重鎖。
図2に示されている、正確なヒトIL15RαSushi遺伝子挿入を含有している得られたベクター(pMC.c264scTCR−Su/IgG1.PUR)を診断PCRに基づいて同定し、そしてDNAシークエンシングで再確認した。c264scTCR/huIL−15RαSushi/huIgG1遺伝子及びタンパク質はそれぞれ
図3及び
図4に示される。
【0167】
c264scTCR/huIL−15RαSushi−huIgG1遺伝子融合を含有している異なった発現ベクター(内在EcoRI部位(及び対応するコード配列)を欠失している)を構築した。このベクターのために、c264scTCR遺伝子断片の部分をc264scTCR/huIgG1ベクターから、フロントプライマー:
5’GTACGACTTAATTAACTCGAGCCACCATGGAGACAGACACACTCCTGTTATGG3’
(配列番号8)
及びバックプライマー:
5’CTTCCCGTTAACCCACCAGCTCAGCTCCACGTG3’
(配列番号9)
を用いて増幅した。
【0168】
c264scTCR遺伝子断片のTCRβ定常領域の残りの部分をc264scTCR/huIgG1ベクターから、フロントプライマー:
5’CTGGTGGGTTAACGGGAAGGAGGTGCACAGTGGGGTC3’
(配列番号10)
及びバックプライマー:
5’GAGGGCACGTGATGTCTGCTCTACCCCAGGCCTC3’
(配列番号11)
を用いて増幅した。
【0169】
huIL15RαSushi遺伝子断片をc264scTCR/huIL15RαSushiベクターから、フロントプライマー:
5’GTAGAGCAGACATCACGTGCCCTCCCCCCATG3’
(配列番号12)
及びバックプライマー:
5’CCTTGGTGCTAGCTCTAATACATTTGAGACTGGGGGTTGTCC3’
(配列番号13)
を用いて増幅した。
【0170】
huIgG1重鎖定常領域遺伝子断片をc264scTCR/huIgG1ベクターから、フロントプライマー:
5’CCAGTCTCAAATGTATTAGAGCTAGCACCAAGGGCCCATCGGTC3’
(配列番号14)
及びバックプライマー:
5’GTAATATTCTAGACGCGTTCATTATTTACCAGGAGACAGGGAGAGGCTCTTC3’
(配列番号15)
を用いて増幅した。
【0171】
TCRβ定常領域配列及びhuIL15RαSushi遺伝子を含有している得られた産物を鋳型として用いて、フロントプライマー:
5’CTGGTGGGTTAACGGGAAGGAGGTGCACAGTGGGGTC3’
(配列番号10)
及びバックプライマー:
5’CCTTGGTGCTAGCTCTAATACATTTGAGACTGGGGGTTGTCC3’
(配列番号13)
を用いるPCRによって遺伝子断片を作成した。
【0172】
得られたPCR産物及びhuIgG1遺伝子断片は、フロントプライマー:
5’CTGGTGGGTTAACGGGAAGGAGGTGCACAGTGGGGTC3’
(配列番号10)
及びバックプライマー:
5’GTAATATTCTAGACGCGTTCATTATTTACCAGGAGACAGGGAGAGGCTCTTC3’
(配列番号15)
を用いるPCRによってTCRβc/huIL15RαSushi/huIgG1融合遺伝子を作成するための鋳型の役割を果した。
【0173】
c264scTCR PCR産物をPacI及びHpaIで消化して、TCRβc/huIL15RαSushi/huIgG1融合遺伝子をHpaI及びNsiIで消化した。消化した遺伝子断片をCMVプロモーターを含有しているpMSGVレトロウィルスベクター内にライゲートした。得られたベクターをc264scTCR/Sushi/hIgG1−pMSGV又はpMSGVc264SuIgと表した(
図5)。c264scTCR/huIL15RαSushi/huIgG1遺伝子及びタンパク質の配列は、それぞれ
図6及び
図7に示される。
【0174】
1本鎖TCR結合ドメイン(すなわち、c264scTCR)とIL−15(又はIL−15変異体)の融合を産生する発現ベクターの作成は国際公開第WO2008143794号公報に開示されている。特に有用なIL−15変異体はIL−15の生物活性を減少若しくは消去するもの又はIL−15の生物活性を増大するものである。例えば、72位を置換した(すなわち、N72D置換)ヒトIL−15変異体はIL−15の生物活性を5〜10倍増大できる。IL−15変異体は以下の表に提供される。
【0175】
【表1】
【0176】
すぐ上の図に記載されているIL−15変異体を含有している融合タンパク質複合体を、TCR特異的抗原である、p53(aa264−272)/HLA−A2.1と結合するそれらの能力について特徴付けた。p53(aa264−272)/HLA−A2.1を提示する細胞を生成するために、HLA−A2.1陽性T2細胞(2×10
6/mL)に20μMのp53(aa264−272)ペプチドを、1×PLE(Altor Bioscience) の存在下37℃で2〜3時間負荷した。ペプチドで培養されなかったT2細胞及びIL−2/15Rβγcを発現する32Dβ細胞をコントロールに供した。次いで、p53ペプチド負荷T2細胞、コントロールT2細胞、又は32Dβ細胞(2×10
5/100μL)を次の二量体融合タンパク質複合体320nMと4℃で30分間培養した:
1)c264scTCR/huIL15+c264scTCR/huIL15RαSushi、
2)c264scTCR/huIL15D8A+c264scTCR/huIL15RαSushi、及び
3)c264scTCR/huIL15D8N+c264scTCR/huIL15RαSushi。
160nMの精製したc264scTCRhuIL15融合タンパク質及び160nMの精製したc264scTCRhuIL15RαSushi融合タンパク質を4℃で3時間培養して、これらの複合体を生成した。次いで染色する、細胞を洗浄緩衝液(0.5%のBSAと0.05%のアジ化ナトリウムを含有しているPBS)で1度洗浄して、0.5μgのビオチニル化マウスモノクローナル抗ヒトTCR Cβ抗体(BF1)で100μLの洗浄緩衝液中、4℃で30分間染色した。細胞を1度洗浄して、0.5μgのR−フィコエリトリン共役ストレプタビジンで100μLの洗浄緩衝液中、4℃で30分間染色した。細胞を洗浄してフローサイトメトリーで分析するために再懸濁した、
【0177】
c264scTCR/huIL15D8A+c264scTCR/huIL15RαSushi複合体及びc264scTCR/huIL15D8N+c264scTCR/huIL15RαSushi複合体は、p53ペプチド負荷T2細胞を特異的に染色することに関して、c264scTCR/huIL15D8N+c264scTCR/huIL15RαSushiと同等の活性を示した。これらの結果は、これらの融合複合体のそれぞれにおいて多価scTCRドメインが十分に機能的であることを示している。IL−15変異体(D8A及びD8N)を含有している融合タンパク質複合体は32Dβ細胞上に存在している1L−15Rβγ
c受容体との結合活性を示さない。1L−15Rβγ
c受容体結合の同様な検討をIL−15変異体を含有しているその他の融合タンパク質を用いて実施して表1に要約した。結果は、IL−15変異体を含有している本発明の融合タンパク質及び融合タンパク質複合体がペプチド/MHC複合体を認識する活性を保持して、1L−15Rβγ
c受容体との結合活性の減少又は増大を示すことを示唆している。
【0178】
ある特定のT2分子に関しては、1L−15及びIL−15Rα成分と融合した複数の異なった結合ドメインを有することが有用である。このような分子の活性を説明する一例では、HLA−A2と関連して提示されるp53(aa149−157)ペプチドに特異的な、1本鎖TCRドメイン(c149scTCRと呼ばれる)をIL−15N72Dドメインと結合して、得られた融合タンパク質を、c264scTCR/huIL15RαSushi/huIgG1融合タンパク質と同時に発現させて、c264scTCR及びc149scTCR結合ドメインを有する多鎖T2タンパク質を産生した。
【0179】
c149scTCR/IL15N72D遺伝子融合を生成するために、c149scTCR遺伝子断片(TCR−α、リンカー、TCR−β及びTCR−β定常断片)をc149scTCR/huIgG1発現ベクターからフロントプライマー:
5’GACTTCAAGCTTAATTAAGCCACCATGGACAGACTTACTTCTTC3’
(配列番号16)
及びバックプライマー:
5’−CTTCCCGTTAACCCACCAGCTCAGCTCCACGTG−3’
(配列番号9)
を用いて増幅した。
【0180】
c149scTCR/huIgG1ベクターのTCRβ定常領域の残分をフロントプライマー:
5’CTGGTGGGTTAACGGGAAGGAGGTGCACAGTGGGGTC3’
(配列番号10)
及びバックプライマー:
5’CACCCAGTTGTCTGCTCTACCCCAGGCCTC3’
(配列番号17)
を用いて増幅した。
【0181】
huIL15N72D遺伝子をc264scTCR/huIL15N72D発現ベクターからフロントプライマー:
5’CTGGGGTAGAGCAGACAACTGGGTGAATGTAATAAGTGATTTG3’
(配列番号18)
及びバックプライマー:
5’CCTCATGCATTCGAATCCGGATCATTAAGAAGTGTTGATGAACATTTGG3’
(配列番号19)
を用いて増幅した。
【0182】
TCRβ定常領域配列及びhuIL15N72D遺伝子を含有している得られた産物を鋳型として用い、フロントプライマー:
5”CTGGTGGGTTAACGGGAAGGAGGTGCACAGTGGGGTC3’
(配列番号10)
及びバックプライマー:
5’CCTCATGCATTCGAATCCGGATCATTAAGAAGTGTTGATGAACATTTGG3’
(配列番号19)
を用いるPCRによって遺伝子断片を生成した。
【0183】
c149scTCR PCR産物をPacI及びHpaIで消化して、TCRβc/huIL15N72D PCR産物をHpaI及びBstBIで消化した。消化した遺伝子断片をCMVプロモーター含有pMSGVレトロウィルスベクター内にライゲートした。得られたベクターをc149scTCR/IL15N72D−pMSGVn又はpMSGV−c149IL15N72Dと称した(
図8)。c149scTCR/huIL15N72D遺伝子及びタンパク質の配列をそれぞれ、
図9及び
図10に示す。
【0184】
実施例2− 融合タンパク質を産生するトランスフェクトした宿主細胞株の生成。
発現ベクターを、いくつかの異なる形質転換、トランスフェクション又は形質導入方法によって多様な宿主細胞株内に導入することができる。このような一方法では、CHO−K1細胞(5×10
5)を6ウェルのプレートに播種してCO
2インキュベータ中で1晩培養した。細胞を、c264scTCR/huIL15N72D融合遺伝子を含有している発現ベクター5μgで、10μLのMirus TransIT−LT1試薬(Mirus)を用いて製造会社のプロトコールに従ってトランスフェクトした。トランスフェクション後1日目に細胞を4mg/mLのG418(Invitrogen)を用いて選択した。G418耐性細胞を増殖し、TCR/IL15融合タンパク質発現細胞を限界希釈法で3回サブクローンして産生細胞株を、捕獲抗体、抗ヒトTCR Cβ抗体(BFI)及び検出抗体であって既に記載されている(出願公開第WO2008143794号公報を参照されたい)ビオチニル化抗ヒトIL−15抗体(BAM247、R&D Systems)を用いるTCR及びhuIL15特異的ELISAによって、培養培地中に分泌される可溶性融合タンパク質のレベルに基づいてスクリーニングした。次いで、c264scTCR/IL15N72D産生細胞株を、c264scTCR/huIL15RαSushi−huIgG1融合遺伝子を含有している偽型レトロウィルスベクターで以下のようにして形質導入した。
【0185】
偽型レトロウィルスベクターを産生するために、ポリリジンをコーティングした10cmのディッシュ(BD Bioscience)内で2×10
6個の293GPパッケージング細胞をCO
2インキュベーター内で2日間37℃で培養した。次いで、細胞に、リポフェクタミン2000(Invitrigen)を用いて、9μgのプラスミドpMC−c264scTCR/huIL15RαSushi/huIgG1及び4μgのVSV−Gエンベロープタンパク質をコードするプラスミドpMD−Gを同時導入した。トランスフェクション後48時間目に、ウィルスを含有している上澄液を採取して、0.45μMのフッ化ポリビニリデンフィルターを通過させて細胞残屑を除去した。10μg/mlのポリブレン(Sigma-Aldrich)の存在下でウィルスを c264scTCR/IL15N72D産生細胞(6ウェルプレート中、1×10
5細胞/ウェル)に適用した。形質導入後2日目に、細胞を10μg/mlのピューロマイシン及び2mg/mlのG418を用いて選択した。ピューロマイシン及びG418耐性細胞を増殖し、T2融合タンパク質複合体発現細胞を限界希釈法で3回サブクローンして、産生細胞株を、捕獲抗体、抗ヒトIgG抗体(Jackson ImmunoResearch)、及び検出抗体であるビオチニル化抗ヒトIL−15抗体(BAM247、R&D Systems)でhuIgG1/huIL15特異的ELISAを用いて、培養培地中に分泌される可溶性融合タンパク質のレベルに基づいてスクリーニングした。
【0186】
実施例3− T2融合タンパク質の生成及び精製。
c264scTCR/huIL15N72D及びc264scTCR/huIL15RαSushi/huIgG1を発現する細胞株を生育条件(すなわち、小規模培養フラスコ、スピナー、若しくは撹拌フラスコ、又は大規模の中空繊維、ウェーブバッグ若しくは撹拌タンク生物反応器、又は同等の培養容器及び反応器中で、25〜37℃で5〜28日間)下で培養して、培養培地中に可溶性タンパク質としてT2分子を産生した。T2分子を精製するために、培養培地をpH調節してセファロースに共有結合させた抗TCR抗体(BF1)を含有している免疫親和性カラムに付した。カラムを洗浄して、T2分子を0.5Mのクエン酸ナトリウム、pH4.0で溶出した。溶出したタンパク質を濃縮して緩衝液をリン酸緩衝食塩液(PBS)に交換し、次いでrプロテインA−セファロースカラムに付した。洗浄工程に続いて、タンパク質を0.5Mのクエン酸ナトリウム、pH4.0で溶出し、次いでPBSに緩衝液を交換した。得られたタンパク質をクーマシー−染色SDS−PAGE及びサイズ排除クロマトグラフィーで特性化した。
【0187】
還元SDS−PAGE条件下で、精製したT2タンパク質は、ホモ二量体分子に予想される単一バンドに移動する精製したc264scTCR/huIgG1及びc264scTCR/huIgG1ΔCH1融合タンパク質と比較して、c264scTCR/huIL15N72D及びc264scTCR/huIL15RαSushi/huIgG1成分に予想される分子量に対応する2つのポリペプチドバンドに移動した(
図11)。非還元変性条件下では、c264scTCR/huIL15RαSushi/huIgG1バンドは二量体ポリペプチドと一致する分子量に移動するのに対して、c264scTCR/huIL15N72Dバンドはその単量体形態と一致していた。サイズ排除ゲルろ過クロマトグラフィーにより、天然のT2タンパク質は4本鎖(2×c264scTCR/IL15N72D、2×c264scTCR/huIL15RαSushi/huIgG1)分子の予想される分子量で溶出された(
図12)。これらの結果は、
図1に示すように、T2分子がhuIL15N72D及びhuIL15RαSushiドメインの間の相互作用並びにhuIgG1間の共有結合相互作用に一致している多鎖構造を示すことを確認している。
【0188】
同様な哺乳動物細胞発現及び親和性クロマトグラフィー精製方法を本明細書に記載されているその他のT2タンパク質複合体を生成するために用いた。
【0189】
実施例4− T2分子の結合活性のインビトロでの特性化
T2分子のドメインの結合活性を特性化してこれらの活性をその他の融合タンパク質のそれと比較するためにインビトロアッセイを実施した。IgG1ドメインを特性化するために、マイクロタイターウェルを抗ヒトIgG1抗体でコーティングして、c264scTCR/huIL15N72D及びc264scTCR/huIL15RαSushi/huIgG1鎖から成る、等モル量の精製したT2タンパク質、又は精製した c264scTCR/huIgG1融合タンパク質をウェルに適用した。結合及び洗浄工程に続いて、結合したタンパク質を標準的なELISA条件下で抗ヒトIgG1抗体を用いて検出した。
【0190】
図13に示されているアッセイの結果は、T2分子のIgG1ドメインが、TCR/IgG1融合体の相当するドメインと同等の抗体結合活性を示し、T2IgG1ドメインが生来の構造を保持することを示唆していることが明らかになった。T2分子のTCRドメインを同様のアッセイで評価した。等モル量のT2又はc264scTCR/huIgG1タンパク質がIgG1 Abでコーティングしたウェル上に捕獲されて抗ヒトTCR Cβ抗体(W4F)で検出された。
【0191】
図14に示されているように、T2タンパク質は抗TCR抗体に対して、c264scTCR/huIgG1タンパク質より2倍高い反応性を示した。T2分子の4本鎖TCR融合タンパク質組成物をc264scTCR/huIgG1融合体のホモ二量体組成物と比較すると、このことは予想される。T2分子のTCRドメインのペプチド/MHC結合活性を評価した。等モル量のT2(c264scTCR/huIL15N72D及びc264scTCR/huIL15RαSushi/huIgG1鎖から成る)又はc264scTCR/huIgG1タンパク質を抗ヒトIgG1 abでコーティングしたウェルに捕獲して p53(aa 264−272)ペプチド/HLA−A2ストレプタビジン−HRP四量体で検出した。
図15に示すように、T2タンパク質は、ペプチド/MHC試薬に対して、c264scTCR/huIgG1タンパク質より3倍高い結合活性を示した。その構造及び抗TCR Ab反応性(
図14を参照されたい)に基づくとT2タンパク質はc264scTCR/huIgG1よりわずかに2倍高い結合活性を示すことが予測されるので、このことは予想外であった。従って、T2分子構造は、個々の成分に基づいて予測されるものよりもより優れた抗原特異的結合活性をもたらす。この増強した結合活性は、より小さい立体障害、優れた親和性効果、協調相互作用及び/又はTCRドメインとペプチド/MHC抗原の間の優れた構造適合の結果であろう。
【0192】
実施例5− T2IL−15ドメインの生物活性の特性化
T2分子のIL−15ドメインの活性も評価した。マイクロタイターウェルを抗ヒトIL−15抗体でコーティングして、c264scTCR/huIL15N72D及びc264scTCR/huIL15RαSushi/huIgG1鎖から成る、精製したT2タンパク質、又は精製したc264scTCR/huIL15N72D融合タンパク質の等モル量をウェルに適用した。結合及び洗浄工程に続いて、結合したタンパク質を標準的なELISA条件下で抗ヒトIL−15抗体で検出した。
【0193】
図16に示したように、T2タンパク質は、それぞれのT2分子が2つのIL−15ドメインを含有しているという仮説に基づいて予測したように、抗IL−15 Abに対してc264scTCR/huIL15N72D融合体と比較して増大した反応性(1.6倍高い)を示した。T2分子のIL−15ドメインの生物活性を、サイトカイン依存性32Dβ細胞株を用いる増殖アッセイで更に特性化した。細胞増殖を測定するために、32Dβ細胞(2×10
4細胞/ウェル)を濃度を上昇させたT2タンパク質(c264scTCR/huIL15N72D及びc264scTCR/huIL15RαSushi/huIgG1鎖から成る)又はc264scTCR/huIL15N72D融合タンパク質と37℃で48時間培養した。細胞増殖試薬WST−1(Roche Applied Science)を製造会社の手順に従って、細胞生育の終わりの4時間の間に添加した。代謝的に活性な細胞によるWST−1の染色されたフォルマザン染料への変換を440nmの吸収測定で確認した。
【0194】
図17に示したように、T2タンパク質は、c264scTCR/huIL15N72D融合タンパク質より3倍優れた生物活性を示した。その構造及び抗IL−15 Ab反応性(
図16を参照されたい)に基づくと、T2タンパク質はc264scTCR/huIL15N72Dより2倍だけ高いIL−15活性を示すと予測されるので、このことは予想外であった。これらの結果は共に、これらの成分単独では又は他の融合タンパク質形態と関連しては観察されなかったものより増大したTCR結合活性及びIL−15生物活性をもたらすT2分子形態の多くの利点を説明している。
【0195】
IL−15応答免疫細胞の増殖を促進するT2タンパク質の能力を霊長動物モデルで試験した。カニクイザル(2頭、雄1頭、雌1頭)に精製したT2タンパク質(c264scTCR/huIL15N72D及びc264scTCR/huIL15RαSushi/huIgG1鎖から成る)0.5mg/kgを静脈内に注射した。5日後に採血した血液をCD8記憶T細胞マーカー(CD8及びCD95)及びNK細胞マーカー(CD56及びCD16)で染色して処置前に採取した血液と比較した。
図18に示すように、T2処置はCD8
+CD95
+記憶T細胞(A)及びCD56
dimCD16
+エフェクターNK細胞(B)の増殖をもたらした。これらの結果はインビボで強力なIL−15活性を示しているT2分子と一致している。
【0196】
実施例6− T2 Fcドメインの結合及び生物活性の特性化
T2分子のIgG1 Fcドメインの結合活性を細胞結合アッセイで特性化した。Fcガンマ受容体担持U937細胞を33nMのT2タンパク質(c264scTCR/huIL15N72D及びc264scTCR/huIL15RαSushi/huIgG1鎖から成る)、c264scTCR/huIgG1又はA2AL9scTCR/IgG1(陰性コントロール)と20分間培養した。細胞を1度洗浄して、PE−共役p53(aa 264−272)ペプチド/HLA−A2四量体と培養した。U937細胞表面上のFcガンマ受容体への結合を、
図19Aに示すように、フローサイトメトリーで分析した。タンパク質の濃度範囲を用いる同様なU937結合試験も実施して、染色細胞に対する平均蛍光強度を
図19Bにプロットした。
【0197】
これらの検討の結果は、U937細胞が、対応するc264scTCR/huIgG1融合タンパク質よりT2分子によってより効果的に染色されることを示していて、T2分子のFc受容体結合活性を検証した。Fcドメインの生物活性を評価するために、抗体依存性細胞傷害性(ADCC)活性を介在するT2分子の能力を評価した。この検討では、0.137〜100nMのT2タンパク質、c264scTCR/huIgG1又はA2AL9scTCR/IgG1(陰性コントロール)を96ウェルプレートに添加した。HLA−A2陽性T2標的細胞を10μMのp53aa264−272ペプチドでパルスして50ug/mlのカルセイン−AMで標識化した。融合タンパク質をウェル当り1×10
4標的細胞と混合して、1×10
6/ウェルの新鮮なヒトPBMCを添加した。プレートをCO
2インキュベーター中、37℃で2時間培養し、100μlの条件培地を採取して、溶解細胞からのカルセイン放出を分析した。カルセインをEx−485nm、Em−538nm、及びカットオフ−530nmで蛍光リーダーを用いて定量した。特異的な細胞溶解を次の式で算出した:特異的溶解=[exp−(バックグラウンド−自動放出)]/[完全放出−(バックグラウンド−自動放出)]×100%。Exp=融合タンパク質+T2細胞+PBMC;バックグラウンド=培地のみ;自動放出=T2細胞のみ;完全放出=T2細胞+0.5%トリトンX−100。
【0198】
データ点当り3通りに決定した結果を
図20に示してT2タンパク質の2つの異なったロットを特性化した。結果は、T2タンパク質が、ペプチド/MHC提示標的細胞に対してTCR−IgG1融合タンパク質よりもより効果的にADCC様活性を介在することを示している。改善された活性は、T2分子のペプチド/MHC複合体への増強された結合及び/又はFc受容体又はIL−15受容体を提示しているエフェクター細胞との増大した反応性の結果であろう。
【0199】
実施例7− 細胞上に提示されたペプチド/MHC複合体と結合するT2分子の特性化
T2タンパク質の細胞上のペプチド/MHC標的との結合活性を評価するために、HLA−A2陽性T2細胞を各種の量のp53aa264−272ペプチドでパルスした。次いで、細胞をそれぞれ83nMのT2タンパク質(c264scTCR/huIL15N72D及びc264scTCR/huIL15RαSushi/huIgG1鎖から成る)、c264scTCR/huIgG1又はA2AL9scTCR/IgG1(陰性コントロール)と培養した。細胞をビオチニル化抗TCR Ab(BF1)及びストレプタビジン−PEと培養した。次いで、細胞を、
図21Aに示すようにフローサイトメトリーで分析した。染色細胞に対する平均蛍光強度を
図21Bにプロットした。
【0200】
結果は、T2分子がc264scTCE/huIgG1融合タンパク質と比較して、細胞上のp53ペプチド/HLA−A2複合体を検出する増強された能力を表わすことを示す。これらの結果は、T2タンパク質が、c264scTCR/huIgG1融合よりもより効果的に標的細胞上の腫瘍関連ペプチド抗原と結合できることを示唆している。
【0201】
別のペプチド/MHC標的に特異的なTCRドメインを含有しているT2分子を用いて同様な結果が期待される。例えば、ヒト腫瘍関連タンパク質;p53、gp100、MART1、MAGE−A3、PSMA、PSA、Her2/neu、hTERT、チロシナーゼ、スルビビン、WT1、PR1、NY−ESO1、EGFR、BRAF及びその他に由来する様々なペプチドがHLA分子に結合すること及びTCR相互作用を介するヒトT細胞応答に対する標的であることが知られている。更に、HIV、HCV、HBC、CMV、HTLV、HPV、EBV及びその他に由来するウィルスペプチド抗原を提示するHLA複合体に特異的なTCRが同定されている。これらのTCRは、IL−15又はhuIL15RαSushiタンパク質と融合でき、そして上記のような適切なペプチド負荷抗原提示細胞上でペプチド/MHC反応性について特性化できる。
【0202】
実施例8− 2つの異なったTCRドメインを担持しているT2分子の特性化
上で示したように、T2分子のIL−15、IL−15Rα及びIgG成分と融合した複数の異なったTCRドメインを有することは有用である。これは、1つ以上の抗原標的活性を単一の多鎖タンパク質内に存在させることができる。この手法の実行可能性を明らかにするために、c264scTCR−Sushi−hIgG1−pMSGVc及びc149scTCR−hIL15N72D−pMSGVn発現ベクターをIMDM−10培地で培養したCHO細胞内に同時トランスフェクトした。室温で6日間トランスフェクト体を培養した後、培養上澄液を採取した。c149scTCR/huIL15N72D及びc264scTCR/huIL15RαSushi/huIgG1のT2分子をELISAで特性化した。c264scTCR/huIL15RαSushi/huIgG1及びc264 scTCR/huIL15N72Dの精製したT2分子をコントロールとして用いた。TCRドメインを評価する1つのアッセイでは、ウェルを抗ヒトTCR Ab(BF1)でコーティングし、融合タンパク質を添加して、結合したタンパク質をビオチニル化抗ヒトTCR Ab(W4F−BN)で検出した。
【0203】
図22に示した結果は、c149scTCR/huIL15N72D及びc264scTCR/huIL15RαSushi/huIgG1から成るT2分子のTCRドメインが抗TCR抗体で検出可能であったことを示している。T2タンパク質のIgG1及びIL−15ドメインを評価するために、上記のようなヤギ抗ヒトIgG Ab捕獲及び抗ヒトIL−15 Ab検出から成るELISAを用いた。
【0204】
図23に示したように、c149scTCR/huIL15N72D及びc264scTCR/huIL15RαSushi/huIgG1から成るT2分子はこの形態で検出可能であり、IgG及びIL−15N72Dを含有しているタンパク質鎖の間の相互作用を示した。c149scTCRドメインの活性も、抗ヒトIgG Ab捕獲及びp53(aa149−157)ペプチド/HLA−A2ストレプタビジン−HRP四量体による検出を用いるELISAで試験した。
【0205】
図24に示したように、c149scTCR/huIL15N72D及びc264scTCR/huIL15RαSushi/huIgG1から成るT2分子はこの形態で検出可能であり、IgG1ドメインを有する分子もc149scTCR/huIL15N72D及びc264scTCR/huIL15RαSushi/huIgG1鎖の間の相互作用を介する p53(aa 149−157)ペプチド/HLA−A2複合体との結合活性も有していることを示した。抗ヒトIgG Ab捕獲及びp53(aa149−157)ペプチド/HLA−A2或いはp53(aa264−272)ペプチド/HLA−A2四量体による検出、又は抗TCR Ab(BF1)捕獲及び抗TCR Ab若しくは抗IL−15 Ab検出から成る更なるアッセイは、それぞれのドメインがc264scTCR/huIL15RαSushi/huIgG1及びc149scTCR/huIL15N72D鎖から成るT2タンパク質において機能的に結合されたことを立証した(
図24)。
【0206】
別のタンパク質鎖、すなわち、c264scTCR/huIL15N72D及びc149scTCR/huIL15RαSushi/huIgG1鎖上でこれら2つのTCRドメインが発現されるT2分子も作成した。これらの分子のFc及びTCR活性を、続いてU937細胞と結合して、そしてp53(aa264−272)ペプチド/HLA−A2四量体による検出、次いでフローサイトメトリーによって評価した。
【0207】
図25に示したように、c264scTCR/huIL15N72D及びc149scTCR/huIL15RαSushi/huIgG1鎖から成るT2分子は、Fcドメインを介するU937細胞上のFcガンマ受容体を結合すること及びc264scTCRドメインを介してp53(aa 264−272)ペプチド/HLA−A2複合体を認識することが可能であった。これらの検討は複数の機能的TCRドメイン並びにIL−15、IL−15Rα及びIgG1ドメインを有するT2分子が
図1に示す構造を形成できることを立証している。
【0208】
実施例9− マウス及びカニクイザルにおけるT2タンパク質薬物動態の特性化
IL−15による治療可能性の主な制約はインビボにおけるサイトカインの非常に短い生物学的半減期である。動物モデルにおけるT2分子の生物学的薬物動態特性を評価するために、HLA−A2/Kbトランスジェニックマウス(5匹マウス/時点)に精製したT2タンパク質(c264scTCR/huIL15N72D及びc264scTCR/huIL15RαSushi/huIgG1鎖から成る)135μg/マウスを静脈内注射した。このc264scTCRが制限されている、HLA−A2.1の存在がタンパク質の薬物動態に影響を与え、そして他の非ヒトモデルより薬物動態より関連性のある「ヒト化」観点をもたらすはずであるので、HLA−A2/Kbトランスジェニックマウスモデルを選択した。この試験で、注射後0、1、4、8、24、48、72、及び96時間点で血液を採取して血清中のT2タンパク質の濃度をELISAで測定した。2つの異なったELISA形態を用いた:1)ヤギ抗ヒトIgG Ab捕獲及び抗ヒトTCR Ab(W4F−BN)検出、又は2)ヤギ抗ヒトIgG Ab捕獲及び抗ヒトIL−15Ab検出。これらのアッセイは無傷タンパク質及び多鎖タンパク質複合体の安定性の評価を可能にする。
【0209】
図26Aに示したように、T2分子は静脈内注射に続いて約9〜11時間の生物学的半減期を有していた。これは報告されているIP注射後のマウスで観察された〜1時間のヒトIL−15の半減期(Stoklasek TA et al. 2006. J. Immunol. 177: 6072)よりかなり長い。また、T2分子は供給された用量と一致した血清濃度に達したのに対して、先に報告された研究(Stoklasek TA et al. 2006. J. Immunol. 177: 6072)ではIL−15の投与された用量は殆ど血清中で回収されなかった。従って、T2分子は遊離のヒトIL−15より有意に優れている薬物動態プロファイルを有している。更に、2つのELISAを用いて観察された同様なPKプロファイルに基づくと、T2タンパク質は開裂の証拠の無い、多鎖分子として無傷のままであった。
【0210】
霊長動物モデルにおけるT2分子の生物学的薬物動態特性を評価するために、カニクイザル(2頭、雄1頭、雌2頭)に精製したT2タンパク質(c264scTCR/huIL15N72D及びc264scTCR/huIL15RαSushi/huIgG1鎖から成る)0.5mg/kgを静脈内注射した。この試験で、注射後0、1、4、8、24、48、72、96及び120時間点で血液を採取して血清中のT2タンパク質の濃度をELISAで測定した。3つの異なったELISA形態を用いた:1)抗ヒトTCR Ab(βF−1)捕獲及びHRP共役ヤギ抗ヒトIgG Ab検出、又は2)抗ヒトIL−15 Ab捕獲及びHRP共役ヤギ抗ヒトIgG Ab検出、又は3)抗ヒトIL−15 Ab捕獲及び抗ヒトTCR Ab(W4F−BN)検出。これらのアッセイは無傷タンパク質及び多鎖タンパク質複合体の安定性の評価を可能にする。
【0211】
図26Bに示したように、T2分子は静脈内注射に続いて約4〜6時間の生物学的半減期を有していた。これは報告されている皮下注射後のサルで観察された〜1時間のIL−15の半減期(Villinger, F. et al. 2004. Vaccine 22: 3510)よりかなり長い。従って、T2分子は遊離のIL−15より有意に優れた薬物動態プロファイルを有しているように思われる。更に、3つのELISAで観察された同様のPKプロファイルに基づくと、これらのデータはT2タンパク質が開裂の証拠の無い、多鎖分子として無傷のままであることを示唆しているネズミのPKデータをサポートしている。
【0212】
実施例10− 異種移植腫瘍マウスモデルにおける固形ヒト腫瘍に対するT2分子の抗腫瘍活性
T2分子の治療効果を確認するために、ヌードマウスにおいてp53+HLA−A2+A375メラノーマ細胞株を有する原発腫瘍増殖モデルにおける抗腫瘍活性を試験した。腫瘍細胞をヌードマウスに皮下注射して、腫瘍を治療開始前に100mm
3まで生育させた。腫瘍担持マウスに、32μg/用量(1.6mg/kg)のc264scTCR/huIL15N72D及びc264scTCR/huIL15RαSushi/huIgG1鎖から成るT2タンパク質、32μg/用量(1.6mg/kg)のc264scTCR/huIL2、又は60μg/用量(3mg/kg)の264scTCR/huIgG1を静脈内注射した。マウスを1日おきに1週間処置し(3回注射)、9日の休息期間に続いてその後1日おきに更に一週間処置した(3回注射)。試験中に、腫瘍の生育を測定して腫瘍容量をプロットした(
図27)。結果をPBSのみで処置したマウスにおけるA375腫瘍の生育と比較した。
【0213】
図27に示したように、A375腫瘍の生育はT2分子又はTCRIL2若しくはTCRIgG融合タンパク質の何れかで処置したヌードマスにおいて阻害された。以前の研究では、このモデルにおけるp53特異的TCR−IL2又はTCR−IgG融合タンパク質の抗腫瘍効果は、エフェクタードメイン活性を、TCRドメインを介して腫瘍部位を標的化した結果であったことが示された(Belmont et al. 2006 Clin. Immunol. 121:29,、Mosquera et al. 2005 J. Immunol. 174:4781)。この可能性を評価するために、非標的化TCRドメインを有するタンパク質がA375腫瘍異種移植マウスモデルで試験されるだろう。p53に特異的なT2タンパク質と比較した非標的化T2分子のA375腫瘍に対する減少した有効性は、腫瘍抗原標的化がT2分子の抗腫瘍活性で役割を果している証拠を提供するだろう。
【0214】
実施例11− IL−15及びFcドメインに突然変異を有するT2分子の特性化
国際出願公開第WO2008143794号公報に開示されているように、IL−15Rβγ鎖と相互作用するその能力を増大又は減少してその生物活性に影響を及ぼす突然変異を1L−15ドメインに導入することができる。例えば、上で示したように、N72D置換はIL−15の生物活性を5〜10倍増大することができる。別の例では、アンタゴニスト機能をもたらすIL−15の活性を減少することが有用である。T2分子形態に関連するこのような突然変異の効果を試験するために、IL−15ドメインの8位(すなわち、D8N)及び65位(すなわち、N65D)の置換を含んでいるc264scTCR/huIL15構築物を作成してc264scTCR/huIL15RαSushi/huIgG1タンパク質と同時発現した。c264scTCR/huIL15変異体及びc264scTCR/huIL15RαSushi/huIgG1鎖の得られた複合体を、実施例5に記載されているように32Dβ細胞を用いるIL−15生物活性について試験した。
図28に示したように、IL−15D8N及びN65D変異を含んでいるT2分子は、IL−15N72Dドメイン又はc264scTCR/huIL15融合を含んでいるT2分子と比較して32Dβ細胞増殖をサポートするそれらの能力の有意な減少を示した。実施例5の結果と一致して、IL−15N72Dドメインを含んでいるT2分子はc264scTCR/huIL15N72D又はc264scTCR/huIL15融合体の何れかよりもより高いIL−15活性を示した。
【0215】
Fcガンマ受容体又は相補体と相互作用するその能力を減少することが先に示されたIgG1 Fcドメイン(Hessell, A. J., et al. 2007. Nature 449: 101-1040、参照により本明細書に取り込まれている)内にも突然変異を導入した。例えば、IgG1 C
H2の234位及び235位のロイシン残基(抗体コンセンサス配列に基づく番号付け)(すなわち、...PE
LLGG...
(配列番号1))のアラニン残基による置換(すなわち、...PE
AAGG...
(配列番号2))は、Fcガンマ受容体結合の損失をもたらすのに対して、IgG1C
H2の322位のリジン残基(抗体コンセンサス配列に基づく番号付け)(すなわち、...KC
KSL...
(配列番号3))のアラニン残基による置換(すなわち、...KC
ASL...
(配列番号4))は相補体活性化の損失をもたらす(Hessell, A. J., et al. 2007. Nature 449: 101-1040、参照により本明細書に取り込まれている)。これらの置換をc264scTCR/huIL15RαSushi/huIgG1構築物内に導入して、得られたタンパク質をc264scTCR/huIL15N72D又は上記の別のTCR−IL15変異体と同時発現した。これらの複合体がp53aa264−272ペプチド−負荷HLA−A2陽性T2標的細胞に対するヒトPBMCのADCC活性を介在する能力を実施例6に記載されているようにして評価した。Fc機能を変化させることが知られているその他の突然変異は、例えば、Lazar et al., PNAS, 103:4005-4010, 2006(参照により本明細書に取り込まれている)に提供されている。
【0216】
図29に示したように、c264scTCR/huIL15RαSushi/huIgG1−LALA及びc264scTCR/huIL15N72D鎖を含んでいるT2複合体はFc−LALA変異体によって示されたFcガンマ受容体結合の損失と一致して高レベルのADCC活性を介在することができなかった。これと対照的に、c264scTCR/huIL15RαSushi/huIgG1−KA及びc264scTCR/huIL15N72D鎖又は上記のIL−15変異体(N65D又はD8N)を含んでいる複合体はc264scTCR/huIL15RαSushi/huIgG1−c264scTCR/huIL15N72D複合体と同レベルのADCC活性を示した。メカニズムに捕らわれずに、これらのデータも、IL−15ドメイン及びFc相補体結合ドメインがADCC活性を介在することとは関連していないという可能性に基づいて予測される。
【0217】
IL−15及びFc突然変異の、ヒトNK及びT細胞応答を刺激するT2分子の能力への影響も試験した。1.8〜5×10
5細胞/mLのヒトPBMCを、上記の突然変異を含んでいる1nMのT2分子、又はコントロールとして10ng/mLの組み換えヒトIL−2又はIL−15を含んでいる培地中、37℃で4日間培養した。
【0218】
次いで、NK細胞傷害性を、NK感受性K−562細胞を標的細胞として用いて評価した後、50μg/mlのカルセイン−AMで標識化した。各種比のPBMC及びK−562細胞を混合してCO
2インキュベーター内、37℃で2時間培養し、100μlの条件培地を採取して、溶解した細胞から放出されたカルセインについて分析した。カルセインをEx−485nm、Em−538nm、及びカットオフ−530nmで蛍光リ−ダーを用いて定量した。特異的細胞溶解を次の式を用いて計算した:特異的溶解=[exp−(バックグラウンド−自動放出)/[完全放出−(バックグラウンド−自動放出)]×100%、Exp=K−562細胞+PBMC;バックグラウンド=培地のみ;自動放出=K−562細胞のみ;完全放出=K−562細胞+0.5%トリトンX−100。
【0219】
図30に示したように、c264scTCR/huIL15RαSushi/huIgG1及びc264scTCR/huIL15N72D鎖を含んでいるT2分子との培養は、培地だけで培養した後に観察されたものと比較してヒトPBMCのNK細胞溶解活性を刺激することができた。更に、FCドメインLALA及びKA変異体を含んでいるT2分子もNK細胞を刺激できたのに対して、IL−15ドメインにN65D又はD8N置換を含有しているものはNK細胞傷害性を殆ど又は全く刺激しないはずだ。これらの結果と一致して、ヒトPBMCの、c264scTCR/huIL15RαSushi/huIgG1及びc264scTCR/huIL15N72D鎖を含んでいるT2分子、又はFcドメインLALA及びKA変異体を有するものとの培養はCD56+NK細胞の増殖の増大をもたらしたのに対して、IL−15N65D又はD8N置換を含んでいるT2分子はそれほどのNK細胞増殖活性をもたらさなかった(
図31)。それぞれのIL−15の機能性に基づいてこのような結果が期待される。
【0220】
ある適用に対しては、T2分子とIL−15又はFc受容体との間の減少した相互作用は、これらの受容体を担持している細胞との非特異的結合を減少するために望ましいだろう。これを評価するために、IL−15及びFc突然変異を含有しているT2分子をペプチドを負荷させたT2細胞を用いてTCR特異的標的細胞認識について評価した。T2分子又はc264scTCR−ストレプタビジン四量体陽性コントロールによる細胞染色を、実施例7に記載された方法を用いてp53ペプチドを負荷させたT2細胞(T2.265)及び負荷させていないT2細胞(T2)上で実施した(
図32A)。非負荷細胞の染色に基づくと、c264scTCR/huIL15RαSushi/huIgG1及びc264scTCR/huIL15N72D鎖を含むT2分子は、c264scTCR−ストレプタビジン四量体又はBF1抗体コントロールと比較して、有意な細胞結合を示すことが明確である。Fc LALA又はIL−15N65D若しくはD8N突然変異の導入はこの細胞結合を減少して、Fc及びIL−15受容体の両方との相互作用がT2複合体結合に役割を果していることを示唆している。Fc LALAとIL−15N65D又はD8N突然変異との組合わせは、c264scTCR/huIL15RαSushi/huIgG1−LALA及びc264scTCR/huIL15 D8Nを含む分子が上記BF1抗体陰性コントロールを負荷していないT2細胞との結合を示さないように、T2複合体結合を更に減少する。p53ペプチド負荷細胞の染色もFc又はIL−15突然変異の導入によって達成される。しかしながら、ペプチド負荷対非負荷細胞のT2分子染色の平均蛍光強度を比較したとき(特異的対非特異的の比)、c264scTCR/huIL15RαSushi/huIgG1−LALA及びc264scTCR/huIL15 D8N鎖を含むT2分子がp53ペプチド抗原に対して最も高い染色特異性をもたらすことが明確である(
図32B)。これらの結果は、T2分子のTCR、IL−15及びIgGFcドメインのそれぞれの結合活性が容易に独立して操作されて望ましい生物活性を有する多重特異的複合体をもたらすことを示している。
【0221】
別の場合では、IL−15ドメイン及びIgGFcドメイン活性を改変して、T2複合体の治療インデックスを最適化して毒性を最小化することが有用である。例えば、その治療効果の一部をADCC活性に依存している標的複合体はIL−15成分の耐容用量レベルを超える高いレベルの用量(すなわち、1〜20mg/kg)を必要とするかもしれない。そのような場合は、その活性を減少する突然変異をIL−15ドメイン中に含有している複合体がより良い治療活性及びより低い毒性をもたらすと期待される。上記のIL−15ドメイン中のN65D又はD8N置換、又はIL−15活性を減少することが見出されている、I6S、D8A、D61A、N65A、N72R、V104P又はQ108Aを包含する、その他の置換を含有しているT2分子は特に注目される。
【0222】
実施例12− 非標的化T2分子の特性化
いくつかの適用では、T2複合体を用いて特異抗原を標的化する必要はない。このような分子では、TCR結合ドメインのような抗原特異的ドメインは突然変異によって又は完全に欠失させることによって不活性化できる。本明細書に記載されている方法を用いて、T2MΔTCRと称するhuIL15RαSushi/huIgG1及びhuIL15 D8N鎖を含むような分子の活性を、c264scTCR/huIL15RαSushi/huIgG1及びc264scTCR/huIL15N72D鎖を含むT2分子(T2Mと称する)及びhuIgG1鎖を欠失しているT2分子(c264scTCR/huIL15RαSushi及びc264scTCR/huIL15N72D、T2MΔIg又はc264scTCR二量体と称する)と比較した。実施例5に記載されているように32Dβ細胞生育をサポートする能力を試験したときに、T2MΔTCRは組み換えヒトIL−15を用いて観察されたものの>24倍である非常に強いIL−15活性を示した(
図33A)。
【0223】
ヒト免疫細胞生育をサポートするT2MΔTCRの能力も評価した。1×10
6細胞/mlのヒトPBMCをT2M(0.5nM)、T2MΔTCR(0.5nM)、又はT2MΔIg(1nM)の存在下又は非存在下で培地と7日間培養した。細胞を抗CD45RO及び抗CD8、又は抗CD8、抗CD95、及び抗CCR7、又は抗CD56及び抗CD16で染色して、FACScanで分析した。
図33Bに示される8つの異なったドナーから得た平均した結果は、T2MΔTCR及びその他のT2分子が、エフェクター記憶T細胞を包含する、各種CD8+記憶T細胞及びNK細胞サブセットの増殖を効果的に刺激できたことを示唆している。これらの細胞のNK細胞活性を実施例11に記載されている方法を用いて試験した。
図33Cに示される2つのドナーPBMC調製物からの代表的な結果は、T2MΔTCR及びその他のT2分子がNK細胞溶解活性を効果的に刺激できたことを示唆している。これらの結果の全てが、T2MΔTCRタンパク質は強力な免疫刺激性分子であることを示唆している。
【0224】
実施例13− T2分子のインビボ活性
T2分子の免疫刺激活性を更に特性化するために、T2M、T2MΔTCR、IgG1 CH1ドメインを欠失しているT2MΔTCR(T2MΔTCRΔCH1)、Fc−LALA突然変異を有するT2M(T2MLALA)及びIL−15D8N突然変異を有するT2(T2MD8N)をC57BL/6マウスにおいてNK及びCD8T細胞の増殖を誘発するそれらの能力について試験した。更に、c264scTCR/huIL15N72D、c264scTCR/huIL15RαSushi及びc264scTCR/huIL15N72D+c264scTCR/huIL15RαSushi複合体を評価した。
【0225】
マウスにIL−15の2.5μg用量に相当する量の融合タンパク質を1日目と4日目に静脈内に注射した。8日目に、血液細胞と脾臓細胞を採取し、CD8T細胞及びNK細胞について染色して、フローサイトメトリーで分析した。
図34に示した結果はT2分子が血液及び脾臓のNK細胞及びCD8T細胞の両方をインビボで増殖させるのに効果的であることを示唆している。T2MLALAはT2Mと同様の活性を示して、FcR結合及びシグナル伝達はNK及びCD8T細胞の増殖に有意な役割を果さないであろうことを示唆した。T2MD8N処置はT2Mと比較すると減少した活性をもたらし、ヒトPBMCを用いるインビトロにおける分子の免疫刺激活性をD8N突然変異が消失するという知見を確認した。TCRの欠失(T2MΔTCR及びTCR)とCH1の欠失(T2MΔTCRΔCH1)は減少した活性を示した。これらの結果はこれらのより小さい分子のより短い半減期に起因しているかもしれない。c264scTCR/huIL15N72D、c264scTCR/huIL15RαSushi及びc264scTCR/huIL15N72D+c264scTCR/huIL15RαSushi複合体もT2Mと比較して減少したインビボ活性を示して、T2分子がより強力な免疫刺激性化合物であることを示唆しているインビトロ結果を立証した。
【0226】
実施例14− 多重特異的T2分子
多重結合ドメインのスカフォールドとして作用するIL−15とIL−15Rα/IgGFcの融合ドメインの能力を更に特性化するために、huIL15N72Dと結合したH−2K
b−制限OVAaa257−264ペプチド(SIINFEKL
(配列番号20))に特異的な1本鎖TCRドメイン(OT1scTCR)とhuIL15RαSushi/huIgG1融合と結合した1本鎖CD8α/βドメインを含む、融合タンパク質複合体(OT1−CD8−T2M)を作成した。1本鎖CD8α/βドメインは、(G
4S)
4ペプチドリンカー
(配列番号21)を介してネズミCD8βの細胞外ドメインと結合しているネズミCD8αの細胞外ドメインを含んでいる。CD8が、TCR特異的ペプチド/MHC接合部と遠位のMHC分子内の部位と結合することが十分に特性化される。従って、OT1−CD8−T2M複合体のOTscTCRとscCD8α/βドメインの両方がOVAaa257−264/H−2K
b−分子上の異なった部位で相互作用すると期待される。
【0227】
これを試験するために、OT1−CD8−T2Mの結合活性をOT1scTCR/huIL15N72D融合体のそれとELISAで比較した。それぞれのタンパク質の等モル量を抗TCR CβmAb(H57)でコーティングしたウェウル上に捕獲して、OVAaa257−264/H−2K
b四量体又はIL15、CD8α、CDβ或いはTCR Vα2に対するmAbでプローブした。アッセイを抗ヒトIgでコーティングしたウェルで実施して、抗TCR Vα2でプローブした。
【0228】
図35Aに示したように、OT1−CD8−T2Mタンパク質は抗IL−15、CD8α、CD8β、TCR Vα2及びヒトIg抗体に対して反応性を示した。T2M融合複合体の多価形態に基づいて期待されるように、OT1scTCR/huIL15N72Dより抗TCR Vα2mAbに対して約3倍高い反応性があった。しかしながら、OT1scTCR/huIL15N72D融合体はOVAaa257−264/H−2K
b四量体との結合を殆ど或いは全く示さなかったのに対してOT1−CD8−T2Mタンパク質では結合が明らかに表れた(
図35B)。これらの結果は、OT1−CD8−T2M複合体のOTscTCR及びscCD8α/βドメインの両方がOVAaa257−264/H−2K
b分子と結合して親和性の高い安定な相互作用をもたらすことを示唆している。
【0229】
実施例15− 機能的スカフォールドとしてのIL15:IL−15Rαドメイン
(ペプチド/MHCクラスI(pMHCI)四量体の製造)−
上記のようなC57BL/6マウスリンパ球から抽出した全RNAから、ネズミH−2Kb遺伝子をクローンした。細胞外領域をHLA−A
*0201コード配列(31)を置き換えるHLA−A
*0201重鎖発現ベクター(31)内にライゲートした。β2m、HLA−A
*0201及びH−2Kb発現ベクターを個々にE.coli内に形質転換し、記載(31)のようにして組み替えタンパク質の発現を誘発して、不溶性封入体として発現した。ペプチドと共に複合体活性及び溶解性タンパク質を、http://www.microbiology.emory.edu/altman/ jdaWebSite_v3/ptetPrepOverview.shtmlに記載されているリフォールディング方法で得た。p53(aa264−272)及び(aa149−157)ペプチド/HLA−A
*0201試薬をそれぞれA2/p53.264−272及びA2/p53.149−157と称し、OVA(aa257−264)ペプチド/2KbをKb/OVA。257−264と称する。
【0230】
(ELISA)−
免役プレート(Maxisorb, Nunc, Rochester, NY)を、c264scTCR融合タンパク質を捕獲するための(BF1)8A3.31mAbで、或いはOT1scTCR融合タンパク質を捕獲するためのH57−597mAbでコーティングした。洗浄した後、結果の部に詳述したような各種プローブを用いてタンパク質を検出した。次いで、ABTS(2,2’−アジノビス[3−エチルベンゾチアゾリン−6−スルホン酸]−ジアンモニウム塩)基質を加えて、96ウェルプレートリーダー(Versamax, Sunnyvale, CA)を用いて405nmにおける吸光度を測定した。
【0231】
(フローサイトメトリー)−
c264scTCR融合タンパク質複合体を特性化するために、T2細胞をペプチド負荷エンハンサー(PLE、Altor BioScience Corp., Miramar, FL)の存在下、37℃で2時間p53(aa264−272)ペプチドでパルスした。OT1scTCR融合タンパク質複合体について、ネズミリンパ腫EL4細胞を100μg/mlのOVAペプチド及びPLEで37℃で6時間パルスした。各種のbirA融合タンパク質(SA−PEと複合した)を加えて4℃で1時間培養した。サンプルを2回洗浄して、CellQuestソフトウェア(BD Biosciences, San Jose, CA)を用いてFACScanフローサイトメトリーで分析した。
【0232】
IL−15ドメインの結合活性を評価するために、32Dβ細胞を320nMのc264scTCR融合タンパク質複合体と4℃で30分間培養した。タンパク質の結合を、ビオチニル化(BF1)8A3.31mAbで15分間、及びSA−PE(それぞれ5μg/ml)で15分間順に検出した。染色した細胞を上記のようにフローサイトメトリーで分析した。
【0233】
(細胞増殖アッセイ)−
先に記載されている(25)ようにして細胞増殖を測定した。すなわち、32Dβ細胞(1×10
5細胞/ウェル)を、等モル濃度のTCR/hIL−15RαSuの存在下又は非存在下で、濃度を増大させたscTCR/hIL−15又はscTCR−hIL15突然変異タンパク質と37℃で48時間培養した。細胞増殖試薬WST−1(Roche Applied Science, Indianapolis, IN)を製造会社の手順に従って細胞増殖の最後の4時間の間に添加した。代謝的に活性な細胞によるWST−1の着色フォルマザン色素への変換を440nmにおける吸光度測定によって確認した。Prizm4ソフトウェア(GraphPad Software, La Jolla, CA)で適合させる非線形回帰可変傾斜曲線によって実験データから作成した用量依存曲線でEC
50を確認した。
【0234】
(表面プラズモン共鳴)−
Ot1scTCR融合タンパク質のそれらの同種pMHCIとの親和定数を、BIAcore 2000計器(GE Healthcare, Piscataway, NJ)で表面プラズモン共鳴(SPR)手法を用いて確定した。ビオチニル化pMHCI複合体を、HBS緩衝液(10mMのHEPES、150mMのNaCL、3.4mMのEDTA、0.005%のp20界面活性剤、pH7.4)中2μg/mlのタンパク質を流速10μl/分で注入して、SA5センサーチップ(GE Healthcare, Piscataway, NJ)のストレプタビジンでコーティングした表面上に固定化した。これは固定化したpMHCI複合体の1000〜1200RUをもたらした。
【0235】
精製したOT1scTCR融合タンパク質をHBS中で1μM、0.5μM及び0.25μMに希釈する。それぞれの濃度を流速10μl/分で新たに固定化したpMHCI表面上、並びにビオチンでブロックしたコントロールのストレプタビジン表面(ベースライン)上に1度注入し(50μl)て、結合曲線を記録した。解離定数(K
D)及び結合(k
on)と解離(k
off)の比を、BIA評価4.1.1ソフトウェア(GE Healthcare Sciences, Piscataway, NJ)を用いて、修正した結合曲線(ベースラインを差し引いた)から計算した。
【0236】
(hIL−15:hIL−15Rαスカフォールドを用いるscTCR二量体の作成)−
c264scTCR/hIL−15と称する生物活性な、二元機能を有する融合タンパク質は、hIL−15のN末端を3つのドメイン、p53(aa264−257)ペプチド抗原(c264scTCR)に特異的なHLA−A
*0201−制限キメラTCRと融合することによって生成できることを先に示した(25)(
図36A)。c264scTCR及びヒトIL−15Rαのsushi結合ドメイン(aa1−66)(hIL−15RαSu)を用いて同様な融合タンパク質を構築し、これはhIL−15結合に応答可能な構造要素を含有することが示されている。この融合タンパク質は遺伝子学的にbirAペプチドタグと結合してストレプタビジンの存在下でビオチニル化及びそれに続く多量体化を可能にする(32)。この融合タンパク質をc264scTCR/hIL−15RαSu/birAと称し、そのCHO細胞からの発現及び精製はc264scTCR/hIL−15のそれと同様であった(25)。これらの融合タンパク質は細胞培養上澄液のリットル当りミリグラムのレベルで容易に産生できる(データは示されていない)。
【0237】
hIL−15とhIL−15RαSuドメインの間の高い特異的結合活性に基づいて、この融合タンパク質はヘテロ二量体複合体を形成できると推測した。更に、ヒトIL−15:IL15Rα複合体の結晶構造の実験は、2つのタンパク質のN−末端がほぼ50Å離れて複合体の反対端にあることを示唆した(33)。従って、scTCRドメインのこれらの領域との融合は複合体形成を阻害しないことが期待される。
【0238】
c264scTCR/hIL−15とc264scTCR/hIL−15RαSu/birA融合タンパク質の間の結合の最初の証拠が、hIL−15及びc246scTCR/hIL−15タンパク質を捕獲するためのプレートに結合したc264scTCR/hIL−15RαSu/birAを用いるELISAで観察された(25)。二量体c264scTCR融合タンパク質複合体(c264scTCR二量体と称する)を更に特性化するために、等モル量の精製c264scTCR/hIL−15とc264scTCR/hIL−15RαSu/BirA融合タンパク質を混合して10分以上室温で結合させた。複合体及び個々のタンパク質融合体をサイズ排除クロマトグラフィーで評価した。
【0239】
図36Bに示すように、精製c264scTCR/hIL−15とc264scTCR/hIL−15RαSu/BirA融合タンパク質調製物中の主要種は単量体タンパク質(それぞれ、分子量(MW)=115及び113kDa)と一致するSECプロファイルを示したのに対して、2つのタンパク質の混合物は二量体複合体に対応する分子量(MW>192kDa)を有する主要ピークをもたらした。従って、c264scTCR二量体調製物中により大きい分子量の種が出現したことはヘテロ二量体複合体が生成されたことの証拠である。
【0240】
c264scTCR二量体を単量体c264scTCR/BirAタンパク質と、TCR特異抗原、p53(aa246〜272)/HLA−A
*0201を結合するそれらの能力について比較した。それぞれの場合に、タンパク質をビオチンリガーゼでビオチニル化した後、SA−PEと複合体化して(32)先に記載されるように(32)多量体フローサイトメトリー染色試薬を作成した。様々な濃度のp53(aa264−272)ペプチドでパルスされたHLA−A
*0201−陽性T細胞を染色するために用いる場合、両方の試薬は、ペプチドの濃度依存的に増大する抗原特異的結合を示した(
図37A)。しかしながら、c264scTCR二量体を含む染色試薬は単量体由来C264scTCR/birA対応物より最大3倍より良く染色した(
図37B)。メカニズムに囚われることなく、これらのデータはIL−15:IL−15Rα相互作用による二量体化がscTCRの機能活性を保存して、増大した親和性を通してその同種HLA/ペプチドとのscTCR複合体の効果的な親和性を増大することを示唆している。birAタグによるビオチニル化を複合体のscTCR/hIL−15のC−末端を対象としたときに同様な結果が観察された(データは示していない)。このことは複合体のC末端が、二量体化又は融合タンパク質複合体の抗原結合ドメインの何れにも影響を与えずに、有意な大きさの分子のプローブ(ストレプタビジンのMWはほぼ60kDaである)と、共役するために利用しやすいことを明らかにしている。
【0241】
これらの検討を、二重特異的分子を生成する可能性を試験するために拡張した。149〜157のアミノ酸残基に広がるヒトp53タンパク質のHLA−A
*0201制限エピトープを認識する第2scTCR(c149scTCR)を作成した(24)。このscTCRをhIL−15と融合して、c149scTCR/hIL−15と称する、得られたタンパク質をCHO細胞内でc264scTCR/hIL−15αSu/birA融合体と同時発現した。組み換えCHO細胞培養液の上澄液中で観察されたこの融合複合体を抗IL−15抗体を用いて固定化してHRP−標識化p53(aa264−272)又はp53(aa149−157)ペプチド/HLA−A
*0201四量体の何れかでプローブした。
図37Cに示すように、抗IL−15抗体が捕獲した融合タンパク質複合体は両方のペプチド負荷HLA四量体と結合できた。この結果は、hIL−15:hIL−15RαSuスカフォールドと融合したときに、個々のscTCR分子が機能活性を保持して、hIL−15:hIL−15RαSu複合体の空間配置が個々におよそ40kDaの分子量を有しているscTCRドメインの充填に有意には影響を及ぼさないことを明らかにしている。
【0242】
hIL−15:hIL−15RαSuスカフォールドのタンパク質二量体化に対する汎用性を明らかにするために、一方がhIL−15のN−末端に融合していて他方がhIL−15RαSu/birAタンパク質のN−末端に融合している2つの1本鎖OT1 TCRを対合して第2二量体scTCR融合複合体を作成した。OT1は、ネズミH−2Kbとの関連で、アミノ酸残基257−264に広がるOVAタンパク質のエピトープを認識するとよく特徴付けられたTCRである(34)。組み換えCHO細胞発現のために、OT11本鎖TCR(OT1scTCR)遺伝子を作成して、hIL−15とOT1scTCR/hIL−15RαSu/birA構築物と融合した。親和性精製したOT1scTCR融合タンパク質は捕獲試薬として抗マウスTCR Cβ H57抗体、及びHRP標識化、OVA(aa257−264)ペプチド負荷H−2Kb四量体を用いるELISAでpMHCI結合活性を有することが見出された(
図42)。OT1scTCR二量体とOT1scTCR/birA単量体の間の結合活性の相違を区別するために、c264scTCR二量体についての上記方法と同様だが、OVA(aa257−264)ペプチドを負荷したH−2Kb陽性EL4細胞を用いてフローサイトメトリー分析を行った。
【0243】
図38に示すように、OT1scTCR二量体を含むSA−PE四量体は実際に、単量体OT1scTCR/birA融合体を含むものより有意によく染色した。ストレプタビジンセンサーチップ上に固定化されたビオチニル化OVA(aa257−264)ペプチド負荷H2−Kb/birA複合体に対するOT1scTCR単量体及び二量体の結合親和性を評価するために表面プラズモン共鳴アッセイも実施した。OVAペプチド/H−2Kb複合体に対するOT1scTCR二量体の見掛け上の結合親和性(KD)は約30μMであると推定されたのに対して、単量体OT1scTCR/birA融合タンパク質については結合が観察されなかった(表1)。これらのデータは、hIL−15:hIL−15Rα相互作用による二量体化がscTCRの生物活性を保存して、増大した親和性によってscTCR分子のその同種pMHCI複合体との効果的な親和性を増大することを裏付けている。
【0244】
(Ot1scTCR/scCD8ヘテロ二量体の作成)−
CD8分子がOT1 TCRとその同種OVAペプチド/H2−Kb複合体の間の相互作用に極めて重要な役割を果していることが先に明らかにされているので(35〜37)、hIL−15:hIL−15RαSuスカフォールドは、細胞表面で発現されるOVAペプチド/H−2Kbに対するOT1TCR結合親和性を、そして細胞及び接着分子非存在条件下でCD8分子が増大するか否かを評価する機会をもたらす。これを実施するために、最初に、フレキシブルなリンカーを用いてネズミCD8のα及びβ鎖の細胞外ドメインを融合して1本鎖形態のネズミCD8分子(scCD8)を作成した。この融合遺伝子をレトロウィルス発現ベクター中でhIL−15RαSu/birAと融合した。次いで、組み換えレトロウィルスをOT1scTCR/hIL−15融合タンパク質を発現しているCHO細胞株を感染するために用いた。ヘテロ二量体融合タンパク質複合体を培養した組み替えCHO細胞の上澄液から抗TCR抗体ベースのアフィニティークロマトグラフィーを上記のように用いて精製した。この精製したタンパク質を捕獲試薬として抗TCR抗体及びプローブとしてビオチニル化抗mCD8α又は抗mCD8βmAbの何れかを用いるELISAに付した。
【0245】
図39Aに示すように、抗TCRAb固定化融合複合体はCD8α及びCD8βの両方を含んでいるので、OT1scTCR/scCD8ヘテロ二量体の形成を示唆している。フローサイトメトリー分析を用いて、細胞表面上に提示される様々な量のOVAペプチド/H−2Kb複合体に対するOT1scTCR/scCD8ヘテロ二量体の結合活性をOT1scTCR二量体と比較した。
図39Bに示すように、OT1scTCR/scCD8ヘテロ二量体を含む染色試薬は、わずか10ng/mlのOVAペプチドを負荷したEL4細胞上で、OVAペプチド/H−2Kb複合体を容易に検出できたのに対して、OT1scTCR二量体を含む相当する試薬を用いたときはこのペプチド濃度で殆ど或いは全く染色が観察されなかった。ペプチドでパルスされていないEL4細胞上で、OT1scTCR/scCD8ヘテロ二量体のより高いバックグラウンド染色が観察されて、細胞表面上でCD8ドメインとMHC分子の間でペプチド非依存的な相互作用が生じたことを示唆している。T細胞上で発現されたCD8分子と結合するpMHCI四量体について同様な効果が報告されている(38)。
【0246】
OT1scTCR/scCD8ヘテロ二量体のペプチド特異的相互作用の結果を表面プラズモン共鳴分析で更に確認した。OT1scTCR/scCD8ヘテロ二量体のOVAペプチド/H−2Kb複合体に対する結合親和性(KD)を、OT1scTCR二量体について観察された〜30μMより有意に高い、2.6μMであると推定した(表1、
図43)。どの融合タンパク質もコントロールVSVペプチド/H−2Kb複合体との結合を示さなかった。
【0247】
OT1scTCR二量体の2価特性がこのアッセイ形式で増大した機能的親和性をもたらすと期待されることを考えると、特異的pMHCI結合活性の相違は驚くべきことである。更に、可溶性TCR、CD8α/β及びpMHCIタンパク質を独立した成分として用いて行った同様なSPR結合研究はCD8タンパク質とペプチド/H−2Kb複合体の間に単に弱い相互作用(KD30〜100μM)のみを示し、TCR:ペプチド/H−2Kb相互作用に対するCD8の協調的効果を示さなかった(39〜41)。まとめると、これらのデータは、OT1scTCR融合体へのCD8α/βドメインの付加は、2価OT1scTCR分子の作成よりもpMHCI結合により大きい影響を及ぼすことを示している。本発明者らの結果は更に、hIL−15:hIL−15RαSuスカフォールドは、複雑なタンパク質−タンパク質相互作用に適合する柔軟性を有する機能的な二重特異性分子を作成するために用いることができることを明らかにしている。また、本発明らは機能的なCD8分子を可溶性1本鎖分子として構築できることを初めて示して、scCD8ドメインがヘテロ二量体分子内でOT1scTCRと複合体を形成すると、その他の接着分子が存在していない無細胞条件下で、TCR:pMHCI相互作用を増強することを明らかにした。
【0248】
(機能的TCRα/βヘテロ二量体の作成)−
上で示したように、hIL−15及びhIL−15RαドメインのN−末端は複合体の遠位末端にあり、このスカフォールドが多鎖タンパク質のポリペプチドと融合するために適しているか否かという問題を提起している。hIL−15及びhIL−15RαSuスカフォールドを用いて可溶性で、生物活性なヘテロ二量体TCRα/βを構築できるか否かを確認するために、細胞外OT1 TCR Vα−Cα及びVβ−CβドメインのC−末端をそれぞれ、hIL−15及びhIL−15RαSu/birAのN−末端に結合した。公表されているα/βTCRの結晶構造に基づくと、適切に折り畳まれたOT1 TCRα/β分子のTCR Cα及びCβ C−末端アミノ酸は〜18Å離れていると推測される(42)。OT1 TCRα/hIL−15及びOT1 TCRβ/hIL−15αSu/birA融合遺伝子を2つの別々の発現ベクター内にクローンしてCHO細胞内に同時にトランスフェクトした。分泌された融合タンパク質複合体を上記のように抗TCR Cβ mAbアフィニティークロマトグラフィーを用いて精製した。還元条件下のクーマシー染色SDS−PAGEで分析すると、精製されたタンパク質のバンドが、2つの融合分子それぞれの計算された単量体MW(40kDa)と一致して、50kDaに移動した(データは示されていない)。
【0249】
精製したタンパク質を更に機能的ELISA(抗TCR Cβ mAbで捕獲:OVAペプチド/H2−Kb四量体でプローブ)で特性化した。
図40Aに示すように、精製したタンパク質は1本鎖形態にあるOT1 TCRと同等のpMHCI結合活性を有していることが分かった。同様な結果が、p53特異的264TCRのVα−Cα及びVβ−Cβ鎖とのhIL−15:hIL−15RαSu/birA融合体で観察された(
図40B)。哺乳動物細胞内で可溶性α/βTCRヘテロ二量体を産生する以前の試みは殆どうまくいかなかった(43、44)。従って、本発明者らの結果は、トランスフェクト細胞内でhIL−15及びhIL−15RαSu/birAドメインの結合によってTCRα及びβ鎖が適切に折り畳まれていたことを示唆している。興味深いことに、hIL−15:hIL−15RαSuスカフォールドのN−末端との融合は、c264scTCR/c149scTCRヘテロ二量体複合体を用いて観察されたように機能的に独立した結合ドメインにとって十分な空間配置を提供できるる一方、OT1 TCR及び264TCRのα及びβ鎖のような近接して対合している鎖の折り畳みを可能にする柔軟性を保持している。
【0250】
(hIL−15:hIL−15RαSu融合複合体についてのhIL−15ドメインの生物活性)−
c264scTCR二量体のhIL−15:hIL−15RαドメインのIL−15受容体(IL−15RβγC)結合能力をhIL−15Rβ及びネズミγC(mγC)鎖を担持している32Dβ細胞を用いるフローサイトメトリー分析で評価した。これらの検討は野生型hIL−15ドメインを含有しているc264scTCR二量体を、更にhIL−15Rβ鎖との結合を増強する(N72D)又は減少する(D8N)ことが先に示されている(25)IL−15突然変異タンパク質ドメインを有する二量体も用いて実施した。また、本発明者らは、これらの突然変異がhIL−15:hIL−15RαSu複合体の形成に影響を及ぼさないことを明らかにしている(25)。c264scTCR二量体と培養した後、32Dβ細胞を抗TCR mAbで染色して細胞に結合している融合タンパク質二量体を検出した。
図41Aに示したように、32Dβ細胞はhIL−15野生型又はhIL−15N72Dドメインを含有しているc264scTCR二量体によって確実に染色されたが、hIL−15D8Nドメインを含有しているものでは染色されず、複合体のIL15:IL−15RαSu部分が予測されたIL−15RβγC結合活性を保持していることを示唆した。
【0251】
融合タンパク質二量体のhIL−15生物活性も32Dβ細胞を用いる細胞増殖アッセイで試験した。
図42Bに示すように、単量体(scTCR/hIL−15融合体)又は二量体(scTCR/hIL−15:scTCR/hIL−15RαSu)融合形態中のhIL−15野生型ドメインは濃度依存的に32Dβ細胞の生育をサポートできた、〜300pMの半数最大刺激(half-maximal stimulation:EC
50)を示した。hIL−15N72D又はD8Nドメインは、これらが単量体又は二量体融合体中の何れに存在しているかに関わらず、それぞれ融合タンパク質の生物活性を増大又は消去した。これらの結果は、N72D又はD8N突然変異体を担持している非融合IL−15サイトカインで観察された機能活性と一致している(25)。従って、2つの独立したTCRドメインを含有している融合タンパク質複合体の形成はIL−15ドメインの生物活性を有意には変化させない。対照的に、OT1 TCRα/βヘテロ二量体複合体に関してはIL−15活性の少なくとも3倍の損失があり(データは示されていない)、ヘテロ二量体TCR構造の形成が、ある程度、hIL−15ドメインのhIL−15RβmγCと相互作用する能力を阻害することを示唆した。更に、これらの結果は、hIL−15ドメインが受容体結合及び機能活性を増強又は減少できるように容易に操作できて、よって異なる適用においてhIL−15:hIL−15RαSuスカフォールドの使用に更に柔軟性をもたらすことを示している。
【0252】
実施例16− 免疫正常マウスにおけるT2分子の毒性プロファイル及び抗腫瘍活性
T2分子、IgG1 CH1ドメインを欠失しているT2M(T2MΔCH1)及び非標的化T2MΔTCRΔCH1タンパク質複合体の更なるインビボ効果を確認するために、腫瘍担持免疫正常C57BLマウスにおいて毒性及び抗腫瘍活性を試験した。B16(5×10
5/マウス)又はEG7(1×10
6/マウス)ネズミ腫瘍細胞をC57BL/6NHsdマウスに試験0日目に皮下に注射した。試験1、4、8及び11日目に腫瘍担持マウスに、51又は25.5μg/用量のT2タンパク質(c264scTCR/huIL15N72D及びc264scTCR/huIL15RαSushi/huIgG1鎖から成る)、47.7μg/用量のT2MΔCH1(c264scTCR/huIL15N72D及びc264scTCR/huIL15RαSushi/huIgG1CH2−CH3鎖から成る)(T2タンパク質の51μg/用量と等モル)、16.6又は8.3μg/用量のT2MΔTCRΔCH1(huIL15N72D及びhuIL15RαSushi/huIgG1CH2−CH3鎖から成る)(それぞれT2タンパク質の51及び25.5μg/用量と等モル)、又は1.2μg/用量のrhIL−15(T2タンパク質の25.5μg/用量と等モル)を静脈内に注射した。試験期間中、動物の体重及び腫瘍の容量を測定して結果をプロットした(
図44A−B及び45A−B)。
【0253】
T2M、T2MΔCH1及びT2MΔTCRΔCH1タンパク質による処置はPBS処置後に観察されたものより有意にB16(
図44A)及びEG7(
図45A)腫瘍の生育を阻害して、それぞれの融合タンパク質複合体は等モル濃度で投与されたrhIL−15よりもより有効であった。また、腫瘍担持マウスの体重変化の測定の通り、T2M、T2MΔCH1及びT2MΔTCRΔCH1処置の細胞毒性効果は殆ど或いは全くなかった(
図44B及び45B)。メカニズムにとらわれることなく、これらのデータは、免疫正常マウスにおいてこれらの分子のインビボ免疫刺激活性と一致している(実施例13)。
【0254】
実施例17− T2M及びその誘導体の免疫刺激及び抗腫瘍活性の更なる特性化
同様な標的化IL−15:IL−15Rα−Fc複合体を更に特性化するために、c264scTCR/huIL−15及びc264scTCR/huIL−15Rα/IgG1 Fc融合タンパク質を同時発現する組み換えCHO細胞株を作成した。ある場合は、ヒトIgG1ドメインは全重鎖定常(CH1−CH2−CH3)を包含し、第2の場合は、CH2−CH3ドメイン(すなわち、ΔCH1)又はFCドメインを上記のようにして用いた。ヒトIgG1 CH2−CH3ドメイン又はFcドメインのタンパク質配列を
図46に示す。簡単にするために、この実施例では、得られたc264scTCR/huIL15N72Dスーパーアゴニスト:c264scTCR/huIL15Rα/IgG1 CH1−CH2−CH3複合体をT2分子(T2M)と、そしてc264scTCR/huIL15N72Dスーパーアゴニスト:c264scTCR/huIL15Rα/IgG1 CH2−CH3複合体をT2M2(上記のようにT2MΔCH1とも)と称する。これらの複合体の利点はFcドメインを介する二量体化及びIL−15とIL−15Rαドメインの間の相互作用が、IL−15Rβγ陽性細胞及びFc受容体(FcR)陽性細胞と結合可能な四量体標的化分子を生ずることである。また、これらのドメインそれぞれの活性を同種受容体との相互作用を減少する突然変異体によって分析できる。組み替えCHO細胞による可溶性発現の後、これらの複合体を抗TCR CβmAb−セファロース及びプロテインAセファロースを用いるアフィニティークロマトグラフィーで精製して均質にした。サイズ排除クロマトグラフィーが、無傷の複合体について期待されているサイズに分子が移動したことを示した。
【0255】
上記分析と同様に、ELISAに基づく方法が、T2M及びT2M2のscTCR及びIL−15ドメインがそれらそれぞれの結合活性を保持することを確認している。更に、T2M及びT2M2のIgG1ドメインは、scTCR−IgG1融合体のそれに匹敵する活性を有するペプチド/HLA四量体での特異的検出を可能にするFc受容体(FcR)担持細胞を結合する能力を保持している。T2M及びT2M2はp53(aa264−272)/HLA−A2複合体を提示している標的細胞に対するヒトリンパ球のADCC活性を介在することができた(
図47)。これらの結果は、T2M及びT2M2がscTCR−IgG融合体について先に記載される抗体様エフェクター機能を保持していることを立証する。FcR結合活性を減少するFc突然変異(LALA)を含有している複合体を用いる検討は機能的FcドメインがADCC活性に必要であったことを明らかにした。T2M及びT2M2はIL−15依存性32Dβ細胞株の生育もサポートしたが、T2M2はT2Mより約〜3倍低いインビトロIL−15活性を示した。マウスにおける免疫応答を刺激するこれらの分子の能力も評価した。IL−15(1mg/kg)によるC57BL/6マウスの処置は、白血球(WBC)数、脾臓重量又は血中のNK及びCD8+T細胞集団に殆ど或いは全く影響を与えなかったのに対して、IL−15N72D:IL−15Rα−IgG CH2−CH3複合体(IL−15の用量と等モルで)による処置は、同様なIL−15:IL−15Rα−Fc複合体で先に観察された結果と一致して、脾腫及び上昇した血液CD8+T細胞レベルをもたらした(
図48A及びB)。T2M2複合体は等モル用量でより強力な免疫刺激効果を示して(32Dβ細胞に対してより低いIL−15活性を示したにもかかわらず)、T2M及びT2M2複合体の両方はWBCレベル、脾臓重量及び血液NK及びCD8+T細胞集団の増加を刺激した。同様な処置によるNK及びCD8+T細胞数に対する効果が脾臓において観察された。T2M2及びIL−15N72D/IL−15Rα−IgG複合体で処置したマウスから単離した脾細胞が、NK感受性YAC細胞に対して細胞溶解活性を示した(
図48C)。用量応答検討は、0.4mg/kgという低い単回用量レベルでもこれらの効果が観察されることを示している(
図49A)。T2M2及びIL−15N72D/IL−15Rα−IgGによるヌードマウスの処置は、血液及び脾臓中のNK細胞のパーセントが処置後4日目に増加して、これが処置後7日目にベースライン値付近まで減少したことを示した(
図49B)。まとめると、これらの結果は、T2M2複合体がマウスにおけるCD8+T細胞及びNK細胞応答を、IL−15のそれよりそしてNK細胞については IL−15N72D/IL−15Rα−IgG複合体のそれより有意に高い活性で刺激可能であったことを示している。
【0256】
これらの複合体の抗腫瘍活性をヌードマウスにおける皮下A375異種移植モデルで更に試験した。初期の研究では、組み換えヒトIL−15、c264scTCR−IL15及びc264scTCR−IL15N72D融合タンパク質又はc264scTCR−IL15N72D/c264scTCR−IL15Rα複合体は、s.c.A375腫瘍異種移植に対してPBS又はc264scTCR−IL15Rα融合タンパク質処置と比較して効果を示さなかった(
図50A)。このモデルにおけるTCR−IL15融合の効果の欠如は、c264scTCR−IL2融合体を用いて報告されている結果と対照的に、これらのタンパク質がNK細胞応答を刺激できないことに起因していると思われる。上で示したように、T2M複合体をこのモデルで試験すると、NK細胞増殖を刺激するこれらの能力と一致して、これらは中等度だが統計的に有意な抗腫瘍活性を示した(
図50B)。しかし、c264scTCR−IL15融合の等モル量による処置とは対照的に、T2Mの用量スケジュール(3週間1日おきに4mg/kg)は有意な体重減少及び最終投与後6匹マウスのうち2匹の死亡をもたらした。臨床所見はマウスの不活発化、猫背姿勢、及び赤みかかった肌を含んでいた。別のモデルにおけるIL−15タンパク質複合体の同時研究は、繰返し1日おき投与は良好な耐容性がないこと及び週に1回の投与が過剰な毒性なしで免疫刺激をもたらすことを立証した。1日おきから週に1回への用量計画の変更によって、NK細胞増殖の誘発に有効であることを示した用量レベルで、T2M2複合体がIL−15又はPBS処置と比較して有意により強い抗腫瘍活性を示した(
図50C)。更に重要なことは、この週に1回の投与計画が腫瘍担持ヌードマウス及び免疫正常マウスにも良好な耐容性をもたらした。
【0257】
scTCR−IL15融合体及びT2M複合体の毒性プロファィルを上記のインビボ活性試験と同時に評価した。上に示したように、scTCR−IL15融合体による3週間の1日おき処置は腫瘍担持ヌードマウスに良好な耐容性をもたらしたが、T2M(4mg/kg)処置は動物の>30%死亡率をもたらした。これを更に、1週間1日おきに9、18、又は36mg/kgのT2M又は等モル量のT2M2複合体を投与したHLA−A*0201/Kb−トランスジェニックマウスで評価した。処置の開始1週間後に、体重及び臨床所見において用量及び時間に依存する効果が見られた。36mg/kgのT2Mを投与されたマウスは当量のT2M2で処置されたマウスで観察された12%減少と比較して体重の20%損失を示した。〜9mg/kgのT2M又はT2M2で処置されたマウスは1週間の期間を越えても体重の変化が観察されなかった。興味深いことに、T2Mで観察されたより高い毒性は、T2M2で処置したマウスがT2Mで処置されたマウスより高いレベルのWBC数及びNK細胞レベルを示したように、増大した免疫細胞の活性化と相関しなかった。マウスの体重、脾臓重量及び免疫細胞に対する最小効果を0.4mg/kgのT2M2の単回用量i.v.投与後に観察した。更に、カニクイザルでの予備検討がT2Mの0.5mg/kg単回i.v.用量が観察された毒性効果を何も引き起こさず、しかしCD8+記憶T細胞及びエフェクターNK細胞増殖を誘発できたことを示した。これらの検討の結果は、強力な免役刺激及び抗腫瘍活性並びに好ましい毒性及び薬物動態プロファイルを有する標的化IL−15融合複合体を作成できることを示している。これらの検討を介して、最適化されたTCR−標的化T2M2(c264scTCR/huIL15N72D及びc264scTCR/huIL15RαSushi/huIgG1 CH2−CH3鎖から成るT2MΔCH1とも称する)を定義して特性化した。c264scTCR/huIL15RαSushi/huIgG1 CH2−CH3構築物の核酸及びタンパク質配列をそれぞれ、
図51及び52に示す。
【0258】
実施例18− 抗体標的ドメイン含んでいるT2分子の特性化
更なる疾患標的分子を作成するためのhuIL−15:huIL−15RαSuスカフォールドの有用性を明らかにするために、抗ヒトCD20単鎖抗体のC−末端をhuIL−15N72D及びhuIL−15RαSu/huIgG1 CH2−CH3(Fc)鎖のN末端と結合して構築物を作成した。抗ヒトCD20単鎖抗体(抗CD20scAb)配列は柔軟なリンカー配列を介して結合しているリツキシマブ抗体の重鎖及び軽鎖Vドメインのコード領域を包含している。抗CD20scAb/hIL−15N72D構築物の核酸及びタンパク質配列をそれぞれ、
図53及び54に示す。抗CD20scAb/huIL−15RαSu/huIgG1 Fc構築物の核酸及びタンパク質配列をそれぞれ、
図55及び56に示す。これらの配列を上記のような発現ベクター内にクローンして発現ベクターをCHO細胞内にトランスフェクトした。2つの構築物の同時発現が、可溶性抗CD20 scAb/huIL−15N72D:抗CD20 scAb/huIL−15RαSu/huIgG1 Fc複合体(抗CD20 scAb T2Mと称する)の形成及び分泌を可能にして、これをプロテインAアフィニティークロマトグラフィーを用いてCHO細胞培養上澄液から精製した。
【0259】
上記の分析とと同様に、ELISAに基づく方法は、抗CD20 scAb/huIL−15N72D:抗CD20 scAb/huIL−15RαSu/huIgG1 Fc複合体の形成を立証した。更に、上記のような32Dβ細胞を用いる1L−15受容体結合及び細胞増殖アッセイは、この複合体がIL−15結合及び生物活性を示すことを示唆した。次いで、抗CD20scAbT2M複合体をヒトCD20
+バーキットリンパ腫ダウディ細胞株に対する抗原特異的結合活性について試験した。ダウディ細胞を抗CD20scAbT2M、c264scTCR T2M又はPBSと培養した。洗浄工程に続いて、細胞に結合した融合タンパク質複合体を、PEと共役しているヤギ抗ヒトIg抗体(GAH−Ig−PE)を用いてフローサイトメトリーで検出した(
図57)。抗CD20scAbT2M複合体は、c264scTCR T2M又はGAH−Ig−PEでは観察されなかったダウディ細胞との有意な結合を示し、これらの細胞との特異的な反応性を示唆した。
【0260】
抗CD20scAbT2M複合体がADCCに基づくメカニズムを介してCD20
+腫瘍細胞を殺傷できたか否かを確認する試験も実施した。カルセイン−AMで標識したダウディ標的細胞をヒトPMBC(E:T‐100:1)及び各種濃度の抗CD20scT2M、c264scTCRT2M(陰性コントロール)又はキメラ抗CD20mAb(陽性コントロール)と混合した。培養期間後に、標的細胞溶解を上記のように評価した。
図58に示すように、抗CD20scAbT2M複合体はCD20
+ヒトリンパ腫細胞に対するADCC活性を介在することにおいて非常に効果的であった。異なったエフェクターと標的細胞の比を試験する同様な検討でこのことが立証されて、ここで抗CD20scAbT2M複合体(2nMで)はキメラ抗CD20mABに匹敵する活性を示した(
図59)。
【0261】
これらの結果に基づくと、抗CD20scAbT2M分子は標準的な異種移植腫瘍モデル(例えば、 Rossi et al. Blood 2009;114:3864; Gillis et al. Blood. 2005;105:3972;及び Xuan et al. Blood 2010;115:2864-2871を参照されたい)においてヒトリンパ腫細胞に対して抗腫瘍活性を示すことが期待される。
【0262】
更に、それぞれが個々にhuIL−15N72D及びhuIL−15RαSu/huIgG1Ch2−CH3(Fc)鎖と融合している(又はその逆)抗CD20軽鎖及び重鎖ドメインを含むT2M構築物を本明細書に記載のように作成して発現できる。2つのこのような融合構築物の核酸及びタンパク質配列を
図60〜63に示す。これらの融合タンパク質を含む精製した複合体は、上記のように、Fcドメイン及びIL−15生物活性、並びにCD20に特異的な結合活性を示すことが期待される。これらの複合体はCD20
+腫瘍細胞に対するADCC活性を介在すること及びインビボでCD20
+腫瘍細胞に対する抗腫瘍活性が期待される。
【0263】
その他のCD抗原、サイトカイン又はケモカインの受容体又はリガンド、成長因子の受容体又はリガンド、細胞接着分子、MHC/MHC様分子、Fc受容体、Toll様受容体、NK受容体、TCR、BCR、陽性/陰性同時刺激受容体又はリガンド、死受容体又はリガンド、腫瘍関連抗原、ウィルスコード及び細菌コード抗原、並びに細菌特異的抗原に特異的な抗体配列を用いてscAb又は抗体認識ドメインを含む同様なT2M構築物を容易に作成できる。特に興味深いのは、CD3、CD4、CD19、CD21、CD22、CD23、CD25、CD30、CD33、CD38、CD40、CD44、CD51、CD52、CD70、CD74、CD80、CD152、CD147、CD221、EGFR、HER−2/neu、HER−1、HER−3、HER−4、CEA、OX40リガンド、cMet、組織因子、ネクチン−4、PSA、PSMA、EGFL7、FGFR、IL−6受容体、IGF−1受容体、GD2、CA−125、EpCam、細胞死受容体5、MUC1、VEGFR1、VEGFR2、PDGFR、Trail R2、葉酸受容体、アンジオポエチン−2、αvβインテグリン受容体及びHLA−DR抗原のエピトープに特異的な抗体ドメインを有するT2Mである。HIV、HCV、HBC、CMV、HTLV、HPV、EBV、RSV及びその他のウィルスに由来するウィルス抗原に対する抗体ドメインも興味深く、特にHIVエンベロープスパイク並びに/又はgp120及びgp41エピトープを認識するものが興味深い。このような抗体ドメインは当該技術分野で公知の配列から作成できるか或いは当該技術分野で公知の各種供給源(すなわち、脊椎動物宿主又は細胞、コンビナトリアルライブラリー、ランダム合成ライブラリー、コンピュータモデリング等)から新たに単離できる。
【0264】
更に、前述の通り、IL−15ドメイン及びIgG Fcドメインの活性を増大又は減少して、抗体標的T2複合体の治療インデックスを最適化しそして毒性を最小化することは有益である。Fcドメインの活性を改変する方法は上に記載されていて当該技術分野で十分に特性化されている。このような場合、その活性を減少する突然変異をIL‐15ドメインに含んでいる複合体はよりすぐれた治療活性及びより低い毒性をもたらすことが期待される。IL−15ドメインに上記のN65D又はD8N置換、又はIL−15活性を減少することが知られている、I6S、D8A、D61A、N65A、N72R、V104P又はQ108Aを包含するその他の置換を含んでいる抗体標的T2分子が特に興味深い。
【0265】
実施例19: CHO細胞におけるIL−15N72D及びIL−15RαSu/Fc融合遺伝子の同時発現
以前の研究は組み替えIL−15は哺乳動物の細胞によって発現されにくいことを示している(A. Ward et al., Protein Expr Purif 68 (2009) 42-48)。しかしながら、IL−15Rαを用いる細胞内複合体形成はERにおいてIL−15分解を抑制することが報告されている(C. Bergamaschi et al., J Biol Chem 283 (2008) 4189-4199)。従って、IL−15は、これをIL−15Rαと同時発現するとより高いレベルで産生できると仮定された。N末端にいわゆる「sushi」ドメイン(Su)を含んでいる、可溶性IL−15Rα断片はサイトカイン結合に関与する殆どの構造要素を担持することが知られている。可溶性IL−15RαSu(その膜貫通ドメインを含まない)とIL−15は溶液中で非常に安定なヘテロ二量体複合体を形成でき(複合体のKd=100pM(G. Bouchaud et al., J Mol Biol 382 (2008) 1-12))、そしてこれらの複合体はIL−15Rβγ
c複合体を介して免疫応答を調節(すなわち、刺激又は阻害)できる(E. Mortier et al., J Biol Chem 281 (2006) 1612-1619; M.P. Rubinstein et al., Proc Natl Acad Sci U S A 103 (2006) 9166-9171; T.A. Stoklasek et al., J Immunol 177 (2006) 6072-6080; G. Bouchaud et al., J Mol Biol 382 (2008) 1-12)。従って、IL−15N72D及びIL−15RαSu/Fcから成る複合体の産生のために選択した(
図64を参照されたい)。IL−15RαSuドメインをヒトIgG−Fc領域と遺伝的に融合して精製及び鎖間ジスルフィド結合による二量体化を促進した。IL−15N72DとIL−15RαSu/Fcを同時発現するために、2つの個別レトロウィルスに基づく発現ベクター、pMSGV−IL−15RαSu/Fc及びpMSGV−IL−15N72Dを構築して、CHO細胞に同時にトランスフェクトした。組み替えCHO細胞を、2つの発現ベクターによってもたらされたネオマイシン及びピューロマイシン耐性要素に基づいて選択し、次いで、限定希釈クローニングを用いて個々の生産細胞株を作成した。無血清規定培地中で、ELISAに基づき、IL−15N72D:IL−15RαSu/Fc複合体を約100mg/L産生できるクローンを同定した。この結果は、IL−15が哺乳動物細胞中でIL−15RαSuドメインと同時発現されると高レベルで発現され得るということを明らかにした。
【0266】
実施例20: IL−15N72D:IL−15RαSu/Fc複合体の精製及び特性化
IL−15RαSu/FcとIL−15N72Dを組み替えCHO細胞内で同時発現して細胞内で構築すると、細胞培養上澄液内に4つの異なったタンパク質の形態が予測された:1)2つのIL−15N72Dサブユニットで完全に占有されている二量体IL−15RαSu/Fc分子、2)1つのIL−15N72Dサブユニットで部分的に占有されている二量体IL−15RαSu/Fc分子、3)IL−15結合がない少量の遊離ホモ二量体IL−15RαSu/Fc分子、及び4)遊離IL−15N72D。IL−15N72DはFc領域を欠失しているので、培養上澄液中の全てのFcを担持する融合タンパク質から遊離IL−15N72Dを分離するためにrプロテインAに基づくアフィニティー精製工程を用いた。
【0267】
次いで、IL−15RαSu/Fc複合体の多種の形態を分離するためにイオン交換クロマトグラフィーを展開した。IL−15RαSu/Fc二量体分子の計算した等電点(pI)は8.5である。予測通りに、20mMTris−HCl、pH8.0溶液中のこのタンパク質はその後QSFF樹脂に結合しないことが分かった。また、計算したIL−15N72DのpIは4.5である。従って、部分的に占有されているIL−15N72D:IL−15RαSu/Fc(すなわち、二量体IL−15RαSu/Fc+1つのIL−15N72D分子)と完全に占有されているIL−15N72D:IL−15RαSu/Fc(すなわち、二量体IL−15RαSu/Fc+2つのIL−15N72D分子)の全体の電荷は異なることが予測された。このことは、プロテインAの精製した調製物のIEFゲル分析と一致していて、これは5.6〜6.5と6.8〜7.5のpIを有する2つの主要な複合体のグループが完全に占有されている複合体と部分的に占有されている複合体の予測されるpIとそれぞれに一致することを明らかにした(
図65A)。各タンパク質群のpIバンド間の不均質性は恐らくIgG1鎖におけるグリコシル化及びC−末端リジン変異体の程度に起因している。従って、異なったイオン強度を有する緩衝液をQSFFから完全に占有されている複合体と部分的に占有されている複合体を別々に溶出するために用いた。130mMのNaCl、20mMのTris−HCl、pH8.0を用いて単一タンパク質画分(Q工程1)をQSSFから溶出して、IL−15RαSu/Fc分子の部分占有を確認するELISAに基づいて、主に部分的に占有されている複合体を含有していることが分かった。300mMのNaCl、20mMのTris−HCl、pH8.0を用いる次の工程で、Q1c及びQ2cと称する2つのタンパク質画分がQSFFから溶出された。これらの調製物に行ったELISA分析が、Q1c画分が部分的に占有されている複合体(全体の10%)と完全に占有されている複合体(90%)の混合物を含んでいたのに対してQ2c画分が完全に占有されている複合体のみを含んでいたことを示した(データは示していない)。これらの知見は精製したタンパク質製剤のIEFゲル分析と一致している(
図65B)。Q工程1から溶出したタンパク質は5.6〜7.5の範囲の広いpIを有している:pIが6.8〜7.5のタンパク質は部分的に占有されている複合体を示している。Q工程2溶出の画分Q1cは5.6〜6.5の範囲のpIを有するタンパク質(すなわち、完全に占有されている複合体)を主に含んでいたが、5.6〜7.5のpIを有する少量の夾雑タンパク質を含んでいた。Q2c画分は5.6〜7.5の範囲のpIを有するタンパク質のみを含んでいた。
【0268】
SEC分析で、精製したIL−15N72D:IL−15RαSu/FcのQ2c調製物が高純度で単一分子として溶出することが分かった(
図66)。ホモ二量体の推定分子量は約114kDaであり、これはIL−15N72DとIL−15RαSu/Fcの融合タンパク質の推定アミノ酸配列に基づいて算出した分子量92kDaより大きかった。これは哺乳動物細胞で生産したタンパク質のグリコシル化に起因していると思われる。
【0269】
還元SDS−PAGE(
図65C)で、精製したIL−15N72D:IL−15RαSu/Fc調製物は40kDa、16kDa及び13kDaの分子量を有する3つのタンパク質を含んでいることが分かった。しかしながら、N−グリコシダーゼFで消化した後は、〜37kDa及び13kDaの分子量を有する2つのタンパク質のみが検出された(
図65D)。これらの分子量はIL−15RαSu/Fc及びIL‐15又はIL−15N72Dの計算した分子量にごく近い。このことはこれら2つのタンパク質が哺乳動物細胞で生産中にグリコシル化されて、IL−15N72Dは13kDaと16kDaの分子量を有する2つの主要なグリコシル化形態で産生されたことを示唆している。
図65Cに示されている異なった精製画分中にあるこれらのIL−15N72D種の相対存在量は、ELISA及びIEFゲル分析で確認された複合体の占有のレベルと一致している。
【0270】
IL−15N72DとIL−15RαSu/Fcは還元SDS−PAGEで分離されてこれらのN−末端アミノ酸配列はエドマン分解法で確認された。IL−15RαSu/FcとIL−15N72Dについて、それぞれ約15のN−末端アミノ酸配列が得られた。これらのタンパク質の確認されたN−末端アミノ酸配列は2つの遺伝子コード領域から推定されるこれらのアミノ酸配列と一致した。還元SDS−PAGE上の13及び16kDaに現れた2つの主要バンドに対するアミノ酸配列はIL−15N72Dであることが確認された。この配列確認は哺乳動物細胞におけるIL−15N72Dのグリコシル化の証拠を再びもたらした。
【0271】
実施例21: IL−15N72D:IL−15RαSu/Fc複合体の薬物動態特性
IL−15及びインビトロで構築されたIL15:IL−15Rα/Fc複合体は、マウスにこれらのタンパク質を腹腔内注射したときに、それぞれ1時間及び20時間の血清半減期を有していたことが先に報告されている(T.A. Stoklasek et al., J Immunol 177 (2006) 6072-6080)。IL−15及び同時に発現させた、精製したIL−15:IL−15αSu/Fc複合体を静脈内に投与したときに同様に挙動するか否かを評価するために、それらの薬物動態パラメータをCD−1マウスで確認した。静脈内投与は、ヒトにおいてIL−15:IL−15αSu−Fc複合体に関して用いられる薬剤送達のルートであると思われるので静脈内投与を選択した。雌のマウスに1.0mg/kgのIL−15:IL−15αSu/Fc又は0.28mg/kgのIL−15(等モル用量)を静脈内に注射して、IL−15については注射後15分から8時間、そしてIL−15N72D:IL−15αSu/Fcについては30分から72時間の様々な時点に血液を採取した。IL−15N72D:IL−15αSu/Fcの血清濃度を2つのELISA形態、無傷の複合体を検出する第1法(抗IL−15AB検出)及びIL−15αSu/Fc融合タンパク質のみを検出する別法(抗ヒトIgG FcAb検出)を用いて評価した。IL−15の濃度は標準的なIL−15特異的ELISAで評価した。
【0272】
単回静脈内急速注射後のIL−15:IL−15αSu/Fc及びIL−15についての予測フィット及び実際のデータを
図67に示す。抗IL−15Abに基づく、又は抗ヒトIgG Fc Abに基づくELISAを用いるIL−15:IL−15αSu/Fcの推定半減期はそれぞれ、約25時間又は18時間であった。これらの結果は、インビボでこの融合タンパク質は開裂せず、そしてIL−15はIL−15RαSu/Fc分子から有意には解離しなかったことを示している。IL−15:IL−15αSu/Fcのクリアランス(Cl)は0.059〜0.051mL/時間に及んで、定常状態における分布の容積(Vss)はアッセイの形式に依存して2.1〜1.3mLに及んだ。これと比べると、IL−15は0.24時間の吸収半減期及び0.64時間の消失半減期を有していた。IL−15のClは49mL/時間であり、そしてVssは18.4mLであった。これらの結果は、IL−15:IL−15αSu/Fcが、IL−15より>24倍長い消失半減期を示し、そして>800倍遅く排泄されることを示している。
【0273】
実施例22: IL−15N72D:IL−15RαSu/Fc複合体のインビトロ及びインビボ生物活性
同時発現及び精製されたIL−15N72D:IL−15RαSu/Fc複合体の生物活性をIL−15依存性32Dβ細胞増殖アッセイを用いて評価した。このアッセイのために、インビトロで構築した(IVA)IL−15N72D:IL−15RαSu/Fc複合体(IL−15N72D:IL−15RαSu/Fc IVA)もIL−15N72DとIL−15RαSu/Fcを1:1の比で40℃で30分混合して作成した。
図68に示すように、IL−15N72D:IL−15RαSu/Fc複合体は32Dβ細胞の生育をサポートするIL−15N72D:IL−15RαSu/Fc IVAと同等の活性を有していた。IL−15N72D:IL−15RαSu/Fc複合体は15.61pMのEC
50を示し、そしてIL−15N72D:IL−15RαSu/Fc IVAは15.83pMのEC
50を示した。このことは、同時発現されたIL−15N72D:IL−15RαSu/Fc複合体は細胞内で適切に処理されて精製後も完全なIL−15活性を保持していることを明らかにしている。従って、本明細書に提示されている方法は、個々に産生したインビトロ構築及びある場合はリフォールディングタンパク質を用いる現在の戦略よりもcGMPグレードの臨床材料を作成するための優れた手段を示している。
【0274】
IL−15N72D:IL−15RαSu/Fc複合体とIL−15wtも、C57BL/6マウスにおいてNK細胞及びCD8
+T細胞の増殖を誘発するそれらの能力について比較した。
図69に示すように、IL−15wtは0.28mg/kgの単回静脈内投与後4日目にNK及びCD8
+細胞の増殖に対して有意な効果を有していない。これに対して、IL−15N72D:IL−15RαSu/Fc複合体は血中及び脾臓内のNK及びCD8
+細胞の増殖を有意に促進し、これは血中のリンパ球増加症及び脾腫を導いた(
図69及び70)。これらの知見はIL−15:IL−15Rα複合体がインビボでIL−15の生物活性を有意に増大したという先の報告と一致している(M.P. Rubinstein et al., Proc Natl Acad Sci U S A 103 (2006) 9166-9171; T.A. Stoklasek et al., J Immunol 177 (2006) 6072-6080; S. Dubois et al., J Immunol 180 (2008) 2099-2106; M. Epardaud et al., Cancer Res 68 (2008) 2972-2983; A. Bessard et al., Mol Cancer Ther 8 (2009) 2736-2745)。IL−15N72D:IL−15RαSu/Fc複合体のこの増大した活性は、N72D突然変異タンパク質のIL−15Rβγc複合体との増大した結合活性(X. Zhu et al., J Immunol 183 (2009) 3598-3607)、インビボにおけるIL−15Rα鎖による最適化されたサイトカインのトランス提示(樹状細胞及びマクロファージ上のFcR受容体を介して)、サイトカインドメインの二量体特性(IL−15Rβγ
cとの結合について増大した親和性)及びIL−15と比較して増大したインビボ半減期(25時間対<40分)との組み合わせの結果と思われる。
【0275】
要約すると、本明細書に記載されている結果は、IL−15N72D及びIL−15RαSu/Fc遺伝子は組み換えCHO細胞において同時発現させることができて、完全に占有されているIL−15N72D:IL−15RαSu/Fc複合体は単純に拡張可能な精製方法を用いて細胞培養上澄液から高度に精製できることを明らかにする。
【0276】
上記実施例は以下の材料及び方法を用いて実施した。
【0277】
(タンパク質複合体発現のためのベクターの構築)
IL−15RαSu/Fc融合遺伝子をヒトIL−15Rα(ヒトIL−15Rαのa
a1−66)のsushiドメイン及びヒトIgG1Fc断片をコードするDNA鋳型の
オーバーラップPCR増幅によって構築した。シグナルペプチド−IL−15RαSuコ
ード領域(R.L. Wong et al., Protein Eng Des Sel 24 (2011) 373-383)及びヒトIg
G1−Fc遺伝子断片(L.A. Mosquera et al., J Immunol 174 (2005) 4381-4388)をプ
ライマー対:
BA494:5’−GACTTCAAGCTTAATTAAGCCACCATGGAC
AGACTTACTTCTTC−3’
(配列番号16);
BA550R:5’−GTGAGTTTTGTCACAAGATTTCGGCTCTC
TAATGCATTTGAGACTGGGGGTTG−3’
(配列番号22)、及び
BA550F:5’GAGCCGAAATCTTGTGACAAAACTCAC−3’
(配列番号23);
BA393R:5’−GTAATATTCTAGACGCGTTCATTATTTAC
CAGGAGACAGGGAGAGGCTCTTC−3’
(配列番号15)
をそれぞれ用いて増幅した。得られたIL−15RαSu/Fc融合遺伝子をピューロマ
イシン耐性発現ベクターpMSGV−1(M.S. Hughes et al., Hum Gene Ther 16 (2005
) 457-472)内にライゲートして発現ベクターpMSGV−IL−15RαSu/Fcを
構築した。
【0278】
IL−15N72Dのコード配列(X. Zhu et al., J Immunol 183 (2009) 3598-3607)を、IRES領域の後にネオマイシン耐性遺伝子を搭載している改変レトロウィルス発現ベクターpMSGV−1(M.S. Hughes et al., Hum Gene Ther 16 (2005) 457-472)内にクローンして発現ベクターpMSGV−IL−15N72Dを構築した。
【0279】
(CHO細胞におけるIL−15N72D:IL−15RαSu/Fc融合複合体の同時発現)
IL−15N72DとIL−15RαSu/Fcの融合タンパク質(
図64を参照されたい)を同時発現するために、pMSGV−IL−15RαSu/FcとpMSGV−IL−15N72DをCHO細胞内に同時にトランスフェクトした後、2mg/mLのG418(Hyclone, Logan, UT)と10μg/mLのピューロマイシン(Hyclone, Logan, UT)を含有している培地中で選択した。IL−15RαSu/Fc融合タンパク質も、コントロールとして組み換えヒト野生型IL−15(IL−15wt)を負荷するのに用いるために、別にCHO細胞で発現させた。融合タンパク質の産生のために、組み替えCHO細胞を無血清規定培地(SFM4CHO、Hyclone, Logan, UT)中で37℃で生育した。培養物の生育細胞密度が最大に達したとき、可溶性複合体を蓄積するために培養温度を30℃に下げた。次いで、培養物の生育細胞密度が約10%生育細胞に達したときに培養上澄液を採取した。
【0280】
(精製手順)
組み替えCHO細胞培養培地を遠心分離し、濾過して細胞と残骸を除去してから、1MのTris−HCl(pH8.0)で上澄液をpH8.0に調整した。可溶性IL−15N72D:IL−15RαSu/Fc融合タンパク質複合体をアフィニティー及びイオン交換クロマトグラフィーに基づくプロセスの2工程を用いて精製した。
【0281】
IL−15N72D:IL−15RαSu/Fc複合体はIgG1−Fcドメインを含んでいるので、rProtein A Sepharose Fast Flow (GE Healthcare) カラムを精製処理の第1工程として用いた。サンプルを負荷する前に、カラムを5カラム容量(CV)の20mM Tris−HCl(pH8.0)で洗浄し、5CVの0.1N NaOHで1時間消毒し、次いで7CVの20mM Tris−HCl(pH8.0)で平衡化した。上澄液を11mLのカラム上に2mL/分で負荷させて、次いでカラムを8CVの20mM Tris−HCl(pH8.0)で洗浄した後、7CVの洗浄緩衝液(0.1M Na−クエン酸、pH5.0)で洗浄して非特異的結合タンパク質を除去した。次いで、タンパク質を0.2M Na−クエン酸(pH4.0)で溶出して、採取したピーク画分のpHを0.2Mのクエン酸を用いて直ちにpH3.5に調整した:標準ウィルス排除工程として、溶出したタンパク質を30分間この低pHで維持した。低pH維持工程の後に、溶出した調製物のpHを2M Tris−HCl(pH8.0)を用いてpH7.7に調整した。調製物をAmicon Ultra−15遠心濃縮器(30kDaカットオフ、Millipore, Billerica, MA)を用いて濃縮して緩衝液を20mM Tris−HCl(pH8.0)に変えた後、0.22μmフィルター(Corning Life Sciences, Lowell, MA)を用いて滅菌濾過した。
【0282】
次いで、タンパク質調製物をQ Sepharose Fast Flow (QSFF; GE Healthcare Bio-Sciences, Piscataway, NJ) イオン交換カラムに付した。5mLのカラムを緩衝液A(20mM Tris−HCl、pH8.0)で洗浄し、5CVの0.1N NaOHで1時間消毒し、次いで緩衝液Aで平衡化した。調製物中のタンパク質濃度を最初に20mM Tris−HCl(pH8.0)で<1mg/mLに調整した後、1mL/分の速度でQSFFカラム上で負荷させた。次いで、以下の3工程勾配プロセすを用いてタンパク質をカラムから溶出した:第1工程として、4CVに対して、20mM Tris−HCl(pH8.0)、130mM NaCl、第2工程として、4CVに対して、20mM Tris−HCl(pH8.0)、300mM NaCl、そして最終工程として、2CVに対して、20mM Tris−HCl(pH8.0)、1M NaCl。タンパク質ピーク画分を採取し、緩衝液をPBS(Hyclone, Logan, UT)に交換して、0.22μmフィルターを用いて濾過した。タンパク質濃度を、A
280nm=0.79mg/mLの吸光係数を用いるUV分光光度計によって280nMで確認した。この吸光係数はIL−15N72D:IL−15RαSu/Fc複合体の推定アミノ酸配列に基づいて計算した。
【0283】
E.coli中で産生してリフォールディングしたIL−15N72D又はIL−15wt(Zhu、1009#3315)で溶液中に複合体を構築するために、別に発現したIL−15RαSu/Fcを上記のようにrプロテインAアフィニティークロマトグラフィーを用いて精製した。これらのインビトロで構築した複合体を生物活性の評価、及び同時発現複合体におけるIL−15結合部位の占有程度の推定のための標準として用いた。
【0284】
(ゲル電気泳動及びサイズ排除クロマトグラフィー(SEC)分析)
精製したタンパク質を異なったタイプのゲル電気泳動方法で分析した。これはNuPAGE12%Bis−Trisゲル(還元及び非還元条件下)、4〜20%Tris−グリシンゲル(自然条件)、及びIEF pH3〜10ゲル(pI確認用)を包含する。これら全てはInvitrogen (Carlsbad, CA)から供給された。実験方法は製造会社の記載のように実施した。泳動用緩衝液としてPBS(Hyclone, Logan, UT)を用いるSuperdex 200 HR 10/30 (GE Healthcare Bio-Sciences)クロマトグラフィーを純度を試験するため及びタンパク質の分子量を推定するために用いた。
【0285】
(N−末端アミノ酸配列及びグリコシル化の分析)
興味深いタンパク質バンドを、PVDF膜上にブロットしてポンソーS溶液で染色する、SDS−PAGEで分離した。N−末端アミノ酸配列決定をエドマン分解法(Molecular Structure Facility, UC Davis, Davis, CA)を用いて実施した。
【0286】
融合複合体がグリコシル化されているか否かを試験するために、イオン交換クロマトグラフィー後の高度に精製されたタンパク質50μgを、2μLのN−グリコシダーゼ(Calbiochem, La Jolla, CA)で、総容量50μLのPBS中、室温で48時間消化した後、還元条件下でNuPAGE12%Bis−Trisゲル中電気泳動に付した。
【0287】
(IL−15N72D:IL−15RαSu/Fc複合体のIL−15N72D占有の確認)
精製したIL−15RαSu/FcにIL−15wt(E.coli中で産生してリフォールディングした、J. Yovandich, NCI, Fredrick, MD より提供された)を様々な比で15時間4℃で負荷した。培養後、IL−15wt:IL−15RαSu/Fc複合体を上記のようにrプロテインAアフィニティークロマトグラフィーを用いて精製した。精製した複合体を、2つのELISA形態、無傷の複合体を検出する1つの方法(抗ヒトIgGFcで捕獲して抗IL−15で検出する)及びIL−15αSu/Fc融合タンパク質のみを検出するもう1つの方法(抗ヒトIgGFcで捕獲して抗ヒトIgGFcで検出する)を用いて評価した。無傷IL−15wt:IL−15αSu/Fc複合体とIL−15RαSu/Fcタンパク質濃度の間の比は、複合体のIL−15結合部位の占有率を反映している。[占有率(%)=無傷複合体(ng/mL)/IL−15RαSu/Fc(ng/mLI)×100%]。次いで、完全に占有されている複合体(IL−15RαSu/FcとIL−15wtを1:3の比で前もって結合した)を精製後に精製したIL−15N72D:IL−15RαSu/Fc融合タンパク質複合体の占有率を定量化するための標準として用いた。
【0288】
(IL−15生物活性の確認)
先に記載されている(X. Zhu et al., J Immunol 183 (2009) 3598-3607)ように、IL−15依存性32Dβ細胞株を用いるインビトロ細胞増殖アッセイを、精製した複合体とIL−15wtタンパク質のIL−15生物活性を評価するために用いた。
【0289】
(薬物動態の評価)
IL−15N72D:IL−15RαSu/Fc複合体及びIL−15wtの薬物動態プロファイルを雌のCD−1マウス(1時点当りマウス4匹、Harlan, Indianapolis, IN)において、IL−2について先に記載されている(H. J. Belmont et al., Clin Immunol 121 (2006) 29-39)ようにして評価した。IL−15N72D:IL−15RαSu/Fc複合体の血清濃度を上記のような2つのELISA形態で評価した。IL−15wt濃度を抗IL−15捕獲剤(MAB647; R&D Systems, Minneapolis, MN)及び抗IL−15検出剤(BAM247; R&D Systems, Minneapolis, MN)を用いるELISAで評価した。それぞれのELISA形態からのIL−15N72D:IL−15RαSu/Fc濃度はPK Solution 2.0 (Summit Research Services, Montrose, CO)を用いる1分画モデルと一致した。IL−15wtで処置したマウスから得られたデータは2分画モデルとして最もよくモデル化された。
【0290】
(リンパ球刺激)
C57BL/6マウス(雄、6週齢、Harlan, Indianapolis, IN)にIL−15N72D:IL−15RαSu/Fc融合複合体1mg/kg又はヒトIL−15wt0.28mg/kg(等モル用量)それぞれの、或いは陰性コントロールとしてPBSの単回用量を静脈内に注射した。処置後4日目に、プール血液(1群当り5匹のマウス)及び脾細胞を採取した。ヒストパック(Sigma, St. Louis, MO)を用いて血液からPBMCを単離した。次いで、PBMC及び脾細胞をPEで標識した抗CD19、PEで標識した抗CD335(NKp46)、FITCで標識した抗CD4及びFITCで標識した抗CD8抗体(BioLegend, San Diego, CA)で染色した。染色した細胞をFACScanフローサイトメトリー(BD Bioscience, San Jose, CA)で分析した。全ての動物実験はAltor’s IACUC承認プロトコールに従って実施された。
【0291】
以下のペプチドを前期実施例に示される検討で用いた。
【0292】
【表2】
【0293】
以下の融合タンパク質のタンパク質ドメインリンカー配列を示される実施例に用いた。
【0294】
【表3】
【0295】
以下に列挙した参考文献並びに本願で引用された全ての参考文献、特許、及びGenBankナンバー(本願の優先日以前に入手可能なバージョンにおける)はそれらが独立して組み込まれているようにそれぞれが参照により組み込まれている。
【0296】
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