(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6251572
(24)【登録日】2017年12月1日
(45)【発行日】2017年12月20日
(54)【発明の名称】車両用電気配線装置
(51)【国際特許分類】
B60R 16/02 20060101AFI20171211BHJP
B60R 16/023 20060101ALI20171211BHJP
【FI】
B60R16/02 621D
B60R16/023 P
B60R16/02 645D
【請求項の数】3
【全頁数】9
(21)【出願番号】特願2014-2237(P2014-2237)
(22)【出願日】2014年1月9日
(65)【公開番号】特開2015-128975(P2015-128975A)
(43)【公開日】2015年7月16日
【審査請求日】2016年12月19日
(73)【特許権者】
【識別番号】000006895
【氏名又は名称】矢崎総業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100083806
【弁理士】
【氏名又は名称】三好 秀和
(74)【代理人】
【識別番号】100100712
【弁理士】
【氏名又は名称】岩▲崎▼ 幸邦
(74)【代理人】
【識別番号】100101247
【弁理士】
【氏名又は名称】高橋 俊一
(74)【代理人】
【識別番号】100095500
【弁理士】
【氏名又は名称】伊藤 正和
(74)【代理人】
【識別番号】100098327
【弁理士】
【氏名又は名称】高松 俊雄
(72)【発明者】
【氏名】佐竹 周二
(72)【発明者】
【氏名】筧 正人
【審査官】
岡▲さき▼ 潤
(56)【参考文献】
【文献】
特開2007−062480(JP,A)
【文献】
特開2007−253742(JP,A)
【文献】
特開平04−286435(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B60R 16/02
B60R 16/023
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
車両に搭載される電源線、グランド線、及び車両内ネットワークの通信線が接続される予備コネクタと、
車両に搭載するオプション機器と前記予備コネクタとの間に介置される分配モジュールと、を有し、
前記分配モジュールは、
前記電源線に接続される少なくとも一つのリレーと、
少なくとも一つの入出力I/Fと、
前記通信線を経由して取得される各種の信号に基づいて前記リレー及び入出力I/Fを制御する制御部と、
前記リレーの出力、及び入出力I/Fの出力を前記オプション機器に接続するための接続用端子と、
該リレーの通電電流、通電時間に基づいて、過電流検知を行うヒューズ機能を備え、
前記制御部は、前記接続用端子に接続されるオプション機器に応じて前記リレー、及び入出力I/Fの作動を制御することを特徴とする車両用電気配線装置。
【請求項2】
前記制御部は、前記通信線を介して取得される車両用信号に応じて、前記リレーのオン、オフを切り替えることを特徴とする請求項1に記載の車両用電気配線装置。
【請求項3】
前記分配モジュールは、前記電源線より供給される電圧を変換する電圧変換手段を備えたことを特徴とする請求項1または請求項2に記載の車両用電気配線装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、車両に設置して、車両に搭載されるオプション機器を接続する車両用電気配線装置に関する。
【背景技術】
【0002】
車両に搭載される各種の電装機器は、コネクタを介して電源、グランド、及びECU等より出力される信号を送信するハーネスに接続される。また、ナビゲーション装置等のオプション機器を接続するために、予備コネクタを設ける必要がある(例えば、特許文献1参照)。
【0003】
図3は、従来における予備コネクタ、及び該予備コネクタに接続する各種のオプション機器を示す説明図である。
図3に示す例では、4個のオプション機器N1〜N4を接続する場合について示しており、各オプション機器N1〜N4を接続するためのハーネス102、及び各ハーネスを接続するための予備コネクタ101を有している。
【0004】
そして、オプション機器N1は、電源(+B)、グランド(GND)以外に、イグニッション(IG)、アクセサリ(ACC)、イルミネーション(ILL)、速度(SPD)、及びバック走行(R)の信号を必要とする。従って、これらの7つの信号を接続するためのハーネスが必要になり、また、このハーネスに応じた数のコネクタが必要となる。即ち、搭載するオプション機器に合わせて、複数の電力、信号供給用のコネクタを使用している。
【0005】
一方、オプション機器N2は、電源(+B)、グランド(GND)、及びイグニッション(IG)の信号を必要とするので、3個の信号を接続するためのハーネスが必要になる。また、このハーネスに応じた数のコネクタが必要となる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開2003−252131号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
上述した従来における車両用電気配線装置では、下記(1)〜(4)に示す問題点が発生する。
【0008】
(1)オプション機器毎に、使用する電力、信号が異なるので、オプション機器に接続する電線サイズと、電力供給側の電線サイズが異なることがあり、分岐部には別途電線保護のためのヒューズを設置する必要がある。
【0009】
(2)車両内の各種データを利用して車両の状態等とオプション機器の動作を連動させる場合には、予め決められた信号データのみ利用が可能であり、それ以外は利用できないので汎用性、拡張性に劣る。
【0010】
(3)既存の車両システム側の通信ラインに対し、オプション機器を接続すると通信システムが成立しなくなる場合があり、その場合、車両システムが停止してしまうという問題が発生する。
【0011】
(4)搭載するオプション機器を想定してコネクタを設置しているため、想定外のオプション機器、例えば、ドライブレコーダ等を搭載する場合には、別途ハーネスを加工して分岐点を設ける必要があり、接続作業性を悪化させている。
【0012】
本発明は、このような従来の課題を解決するためになされたものであり、その目的とするところは、簡単な操作でオプション機器の接続を行うことを可能とする車両用電気配線装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0013】
上記目的を達成するため、本願請求項1に記載の発明は、車両に搭載される電源線、グランド線、及び車両内ネットワークの通信線が接続される予備コネクタと、車両に搭載するオプション機器と前記予備コネクタとの間に介置される分配モジュールと、を有し、前記分配モジュールは、前記電源線に接続される少なくとも一つのリレーと、少なくとも一つの入出力I/Fと、前記通信線を経由して取得される各種の信号に基づいて前記リレー及び入出力I/Fを制御する制御部と、前記リレーの出力、及び入出力I/Fの出力を前記オプション機器に接続するための接続用端子と、該リレーの通電電流、通電時間に基づいて、過電流検知を行うヒューズ機能を備え、前記制御部は、前記接続用端子に接続されるオプション機器に応じて前記リレー、及び入出力I/Fの作動を制御することを特徴とする。
【0014】
請求項2に記載の発明は、前記制御部は、前記通信線を介して取得される車両用信号に応じて、前記リレーのオン、オフを切り替えることを特徴とする。
【0015】
請求項3に記載の発明は、前記分配モジュールは、前記電源線より供給される電圧を変換する電圧変換手段を備えたことを特徴とする。
【発明の効果】
【0016】
請求項1の発明では、車両に予備コネクタを設置し、更に、該予備コネクタに分配モジュールを介在させてオプション機器を接続する。従って、車両内には、電源線、グランド線、及び通信線を接続するための予備コネクタを標準的に搭載するのみとなるので、車両に搭載する部品を簡素化することができる。また、接続するオプション機器に応じた分配モジュールを選択して、予備コネクタに接続するので、オプション機器の接続操作を極めて容易に行うことが可能となる。
【0017】
請求項2の発明では、車両用信号に応じて、リレーのオン、オフを切り替えるので、各オプション機器が必要とする電力供給を行うことが可能となる。
【0018】
請求項3の発明では、分配モジュール内に電圧変換手段を備えているので、バッテリ電圧と異なる電圧を必要とするオプション機器に対して、簡単な操作で電力を供給することが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0019】
【
図1】本発明の一実施形態に係る車両用電気配線装置の構成を示す配線図である。
【
図2】本発明の一実施形態に係る車両用電気配線装置の、分配モジュールの詳細な構成を示すブロック図である。
【
図3】従来における車両用電気配線装置の構成を示す配線図である。
【発明を実施するための形態】
【0020】
以下、本発明の実施形態を図面に基づいて説明する。
図1は、本発明の一実施形態に係る車両用電気配線装置の構成を示す配線図である。
図1に示すように、車両用配線装置100は、予備コネクタ11と、分配モジュール12を備えており、該分配モジュール12を介して各種のオプション機器N1〜N4を接続する。分配モジュール12は、各オプション機器N1〜N4と接続するための接続用端子TB1を備えている。そして、該接続用端子TB1は、ハーネス13を経由して各オプション機器N1〜N4と接続される。
【0021】
予備コネクタ11には、車両のバッテリと接続される電源線(+B)、グランド線(GND)、及びCAN(Controller Area Network)、LIN(Local Interconnect Network)等の通信線が接続される。なお、電源線、及びグランド線は、車両のボディを用いることも可能である。
【0022】
次に、
図2を参照して分配モジュール12の詳細な構成について説明する。
図2に示すように、分配モジュール12は、予備コネクタ11との間で、電源線(+B)、グランド線(GND)、及び通信線が接続される。通信線は、CAN、LIN等の車両内ネットワークを経由して各種の信号(検出信号や制御信号)を送信する。電源線(+B)は、例えば直流12V等の車両用バッテリより出力される電力を送信する。
【0023】
また、分配モジュール12は、電源線(+B)を経由して供給される電力を、後段側に設けられる各種のオプション機器N1〜N4へ出力する制御を行うための、複数の半導体リレーR1〜R4と、制御部21を備えている。なお、本実施形態では、リレーの一例として半導体リレーを用いる場合について説明するが、半導体以外のリレーを用いることも可能である。
【0024】
更に、通信線と接続されて各種信号の通信を行う通信I/F22と、該通信I/F22を経由して取得される各種の検出信号、及び制御信号を各オプション機器N1〜N4のいずれか3個に出力する制御を行う入出力I/F(P1〜P3)と、各オプション機器N1〜N4との間でCAN、或いはLIN等のネットワーク通信を行う通信I/F23と、を備えている。
【0025】
また、各半導体リレーR1〜R4は、それぞれがヒューズ機能を備えている。具体的には、半導体リレーに流れる電流値(通電電流)、及び通電時間に基づいて、該半導体リレーの発熱温度及び放熱温度を演算し、更に周囲温度に基づいて半導体リレーの温度を推定し、推定した温度が予め設定した閾値温度に達した場合に、過電流と判断して(過電流検知して)半導体リレーR1〜R4を遮断する機能を備えている。なお、半導体リレーが電流センサを備え、検出される電流値に基づいて制御部21が半導体リレーの温度を推定することもできる。
【0026】
制御部21は、分配モジュール12全体を総括的に制御する。即ち、該制御部21は、接続用端子TB1に接続される各オプション機器N1〜N4の仕様に応じて半導体リレーR1〜R4、及び入出力I/F(P1〜P3)の作動を制御する。制御部21は、例えば中央演算ユニット(CPU)や、RAM、ROM、ハードディスク等の記憶手段からなる一体型のコンピュータとして構成することができる。
【0027】
そして、各半導体リレーR1〜R4の出力端、各入出力I/F(P1〜P3)の出力端、及び通信I/F(23)の出力端は、接続用端子TB1に接続されており、該接続用端子TB1、及び
図1に示したハーネス13を介して、各オプション機器N1〜N4に接続されている。
【0028】
また、半導体リレーR1には、レギュレータ24(電圧変換手段)が設けられており、バッテリより供給される直流12Vの電圧を、例えば、直流5Vの電圧に降圧することができる。従って、駆動電圧がバッテリ電圧と異なるオプション機器を接続する場合でも、所望の電圧を生成して給電することができる。
【0029】
次に、上記のように構成された本実施形態に係る車両用電気配線装置の作用について説明する。本実施形態では、車両内に標準的に
図1に示した予備コネクタ11を搭載する。つまり、電源線(+B)、グランド線(GND)、及び通信線の3つの電線と接続された簡素な構成の予備コネクタ11が設けられる。また、複数種類の分配モジュール12を用意する。具体的には、半導体リレーの個数、入出力I/Fの個数、レギュレータの有無、等に応じて複数のタイプの分配モジュール12を用意する。
【0030】
そして、車両内に設置するオプション機器に応じた分配モジュール12を選択して、
図1に示す予備コネクタ11に接続する。
図1に示す例では、4個のオプション機器N1〜N4を接続するので、これらのオプション機器N1〜N4に対応する機器を備えた分配モジュール12を予備コネクタ11に接続する。
【0031】
また、制御部21において、各オプション機器N1〜N4毎に、電力供給の条件を設定する。例えば、車両のキーポジション(車両用信号)に応じて、+B、IG(イグニッション)、ACC(アクセサリ)での電力供給を設定する。具体的には、キーポジションに関係無くバッテリ電圧の供給時にリレーがオンとなる「+B」と、車両のイグニッションオン時にリレーがオンとなる「IG」、キーポジションがACCのときにリレーがオンとなる「ACC」を設定する。この設定は、制御部21において、ソフト的に設定することができる。
【0032】
従って、制御部21は、通信線を介して取得される制御信号に基づき、キーポジションがACCとされた場合には、「ACC」に設定されている半導体リレーをオンとし、車両のイグニッションがオンとされた際には、「IG」に設定されている半導体リレーをオンとするように制御する。なお、キーポジションは、車両用信号の一例であり、例えば、ドアロック解除信号、ドア開信号などを車両用信号として用いることも可能である。
【0033】
更に、各オプション機器N1〜N4について遮断電流を設定する。即ち、各オプション機器N1〜N4で、定格電流が異なり、更に接続用の電線径が異なるので、電線径に応じた遮断電流を設定する。この操作は、制御部21において、ソフト的に行うことが可能である。
【0034】
また、制御部21において、各オプション機器N1〜N4毎に、各種信号の供給先を設定する。具体的には、イルミネーション信号(ILL)、速度信号(SPD)、リバース信号(R)等が必要な場合には、入出力I/F(P1〜P3)を経由してこれらの信号を必要とするオプション機器N1〜N4に出力する。
【0035】
更に、CANやLIN等のネットワーク情報を必要とするオプション機器N1〜N4には、通信I/Fを接続する。更に、各オプション機器N1〜N4にグランド線を接続する。
【0036】
このように、分配モジュール12の内部において、必要な電線を選択して
図1に示した接続用端子TB1に接続することにより、各オプション機器N1〜N4が必要とする電源線、及び信号線を接続することが可能となる。
【0037】
このようにして、本実施形態に係る車両用電気配線装置では、電源線、グランド線、及び通信線のみを接続する予備コネクタ11を車両に搭載する。そして、オプション機器N1〜N4を設置する場合には、予備コネクタ11とオプション機器N1〜N4との間に分配モジュール12を介置する。従って、車両内に標準的に搭載する機器は予備コネクタ11のみとなり、従来と対比して著しく構成を簡素化することができる。更に、オプション機器N1〜N4との接続作業を容易に行うことが可能となる。
【0038】
また、オプション機器の仕様により、電線径が異なる場合でも、分配モジュール12内のリレーに半導体リレーを用いた場合には、各半導体リレーR1〜R4はヒューズ機能を搭載しており、制御部21でのソフト的な操作により遮断電流を任意に設定できるので、電線径に応じて機械的なヒューズを設ける必要がなく、構成を簡素化することが可能となる。
【0039】
また、分配モジュール12は、車両内のネットワーク通信にて用いられる信号を取得してオプション機器N1〜N4に供給するので、各オプション機器が必要とする情報を簡単な操作で供給することが可能となる。
【0040】
更に、車両システムの任意の通信データをオプション機器にて使用しても、車両の通信システムに影響を与えないので、機能性、及び信頼性を向上させることが可能となる。また、オプション機器の接続は、分配モジュール12に対して接続すれば良いので、作業性を簡素化することが可能となる。
【0041】
また、分配モジュール12内にレギュレータ24を設置するので、バッテリ電圧と異なる電源電圧(例えば、直流5V)を必要とするオプション機器を接続する際においても、接続操作を容易に行うことが可能となる。
【0042】
更に、分配モジュール12は、接続するオプション機器の個数等に応じて、予め複数種類用意しておき、オプション機器の仕様が決定した時点で、複数の分配モジュール12から適切なものを選択して車両に搭載するので、分配モジュール12のスペックが過剰になることを防止できる。
【0043】
また、将来的に例えば、ドライブレコーダ等の想定外のオプション機器を取り付けるような場合においても、分配モジュール12を用いることにより、容易に接続することが可能となる。
【0044】
更に、CAN通信やLIN通信等のネットワーク通信を用いて、各種の信号を分配モジュール12内に供給するので、簡単な操作で所望の信号を各オプション機器に送信することが可能となる。
【0045】
また、従来のように、既存の車両システム側の通信ラインに対して、オプション機器を接続するという操作を行わないので、通信システムが成立しなくなり、車両システムが停止するというトラブルの発生を回避することができる。
【0046】
以上、本発明の車両用電気配線装置を図示の実施形態に基づいて説明したが、本発明はこれに限定されるものではなく、各部の構成は、同様の機能を有する任意の構成のものに置き換えることができる。
【0047】
例えば、上述した実施形態では、分配モジュールの一例として、半導体リレーが4個、入出力I/Fが3個、出力側の通信I/Fが1個設けられている例について説明したが、本発明はこれに限定されるものではなく、半導体リレー、入出力I/F、及び通信I/Fの個数を任意に設定することが可能である。
【産業上の利用可能性】
【0048】
本発明は、簡単な操作で車両にオプション機器を搭載することに利用することができる。
【符号の説明】
【0049】
11 予備コネクタ
12 分配モジュール
13 ハーネス
21 制御部
22,23 通信I/F
24 レギュレータ
100 車両用配線装置
P1〜P3 入出力I/F
N1〜N4 オプション機器
R1〜R4 半導体リレー
TB1 接続用端子