特許第6251719号(P6251719)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6251719
(24)【登録日】2017年12月1日
(45)【発行日】2017年12月20日
(54)【発明の名称】ミラー層を有する薄層光起電セル構造
(51)【国際特許分類】
   H01L 31/0749 20120101AFI20171211BHJP
   H01L 31/056 20140101ALI20171211BHJP
【FI】
   H01L31/06 460
   H01L31/04 624
【請求項の数】13
【全頁数】17
(21)【出願番号】特願2015-502408(P2015-502408)
(86)(22)【出願日】2013年3月28日
(65)【公表番号】特表2015-515131(P2015-515131A)
(43)【公表日】2015年5月21日
(86)【国際出願番号】FR2013050667
(87)【国際公開番号】WO2013144511
(87)【国際公開日】20131003
【審査請求日】2016年3月1日
(31)【優先権主張番号】1252835
(32)【優先日】2012年3月29日
(33)【優先権主張国】FR
(73)【特許権者】
【識別番号】500174661
【氏名又は名称】サントル・ナショナル・ドゥ・ラ・レシェルシュ・サイエンティフィーク−セ・エン・エール・エス−
(73)【特許権者】
【識別番号】504462489
【氏名又は名称】エレクトリシテ・ドゥ・フランス
(74)【代理人】
【識別番号】100108453
【弁理士】
【氏名又は名称】村山 靖彦
(74)【代理人】
【識別番号】100064908
【弁理士】
【氏名又は名称】志賀 正武
(74)【代理人】
【識別番号】100089037
【弁理士】
【氏名又は名称】渡邊 隆
(74)【代理人】
【識別番号】100110364
【弁理士】
【氏名又は名称】実広 信哉
(72)【発明者】
【氏名】ネガー・ナガビ
(72)【発明者】
【氏名】ザシャリエ・ジェル
(72)【発明者】
【氏名】ダニエル・リンコ
(72)【発明者】
【氏名】ジャン−フランソワ・ギユモル
【審査官】 井上 徹
(56)【参考文献】
【文献】 特表2007−528600(JP,A)
【文献】 特開2011−044572(JP,A)
【文献】 特開2008−124230(JP,A)
【文献】 特開2004−119491(JP,A)
【文献】 特表2012−507152(JP,A)
【文献】 Minemoto et al.,Lift-Off Process for Flexible Cu(In,Ga)Se2 Solar Cells,Japanese Journal of Applied Physics,2010年,P.04DP06-1−04DP06-3
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01L 31/02−31/078、31/18−31/20、
51/42−51/48
H02S 10/00−50/15
JSTPlus/JST7580(JDreamIII)
Science Direct
IEEE Xplore
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
照射光の電気への変換に関する光起電特性を有する少なくとも1つのI−III−VI合金層(CIGS)を含む薄層光起電セル構造であって、
前記構造が、少なくとも
−照射光の一部を反射する表面(FR)を含む1つのミラー層(MR)であって、前記反射表面(FR)が、反射された照射光を第1の面上で受け取るための、前記I−III−VI合金層の前記第1の面(F1)に面する、ミラー層(MR)と、
−前記第1の面(F1)に対向する前記I−III−VI合金層の第2の面(F2)上で透過した照射光を受け取るための、照射光に対して透明な1つ以上の第1の層(CA、ENC)と、を含み、
前記ミラー層(MR)の前記反射表面(FR)が、前記I−III−VI合金層(CIGS)の前記第1の面(F1)から横切り、前記反射表面(FR)と前記I−III−VI合金層(CIGS)との間に前記照射光に対して透明な中間介在する第2の層(CT、C5)を有し、少なくとも1つの中間介在する第2の層(C5)が透明かつ導電性であり、光起電セル構造の背面電極を形成し、前記中間介在する第2の層の他の1つがバッファ層を形成することを特徴とする、薄層光起電セル構造。
【請求項2】
前記ミラー層(MR)が導電性金属層であることを特徴とする、請求項1に記載の光起電セル構造。
【請求項3】
前記ミラー層(MR)が非金属かつ拡散性であり、反射コーティングを含むことを特徴とする、請求項1に記載の光起電セル構造。
【請求項4】
前記1つ以上の透明な第1の層(CA、ENC)が、封入のための少なくとも1つの表面コーティングを含むことを特徴とする、請求項1から3のいずれか一項に記載の光起電セル構造。
【請求項5】
前記1つ以上の透明な第1の層(CA、ENC)が、光起電セル電極の役割を果たす、少なくとも1つの導電層を含むことを特徴とする、請求項1から4のいずれか一項に記載の光起電セル構造。
【請求項6】
前記導電透明層(CA)と前記I−III−VI合金層(CIGS)層との間に透明かつ低抵抗オーミックコンタクトの中間層(CI)を含むことを特徴とする、請求項1から5のいずれか一項に記載の光起電セル構造。
【請求項7】
前記I−III−VI合金層(CIGS)が0.5μm以下の厚さであることを特徴とする、請求項1から6のいずれか一項に記載の光起電セル構造。
【請求項8】
太陽電池パネルに組み込むための手段を含み、前記照射光が太陽光であることを特徴とする、請求項1から7のいずれか一項に記載の光起電セル構造。
【請求項9】
前記I−III−VI合金層(CIGS)と、
前記ミラー層(MR)と、
前記1つ以上の第1の透明層(CA、ENC)と、
前記1つ以上の中間介在する第2の層(CT、C5)と、に関する基板(S)を追加的に含み、
前記基板が500℃以下の融点を有する材料から形成することができることを特徴とする、請求項1から8のいずれか一項に記載の光起電セル構造。
【請求項10】
前記基板(S)が300℃未満の融点を有するポリマーからなることを特徴とする、請求項9に記載の光起電セル構造。
【請求項11】
前記基板(S)が、前記反射表面(FR)に対向する面(FO)上で前記ミラー層(MR)と接触することを特徴とする、請求項9または10に記載の光起電セル構造。
【請求項12】
請求項1から11のいずれか一項に記載の構造を含む光起電セル製造プロセスであって、前記プロセスが少なくとも
a)表面上にI−III−VI合金層(CIGS)の成膜をするステップ(S1)であって、前記I−III−VI合金層の第2の面(F2)が前記表面と接触する、ステップ(S1)と、
前記照射光に対して透明な第2の薄層(CT、C5)を、前記I−III−VI合金層(CIGS)の前記第1の面(F1)上に成膜するステップ(S2)であって、前記ミラー層(MR)が前記透明な第2の薄層(CT、C5)の1つの上に成膜され、前記第2の薄層の1つが透明かつ導電性であり、前記光起電セル構造の背面電極を形成し、前記第2の薄層の他の1つがバッファ層を形成する、ステップ(S2)と、
b)ミラー層(MR)を、前記第2の面(F2)に対向する、前記I−III−VI合金層(CIGS)の第1の面(F1)上に成膜するステップ(S3)と、
c)1つ以上の第1の透明層(CA、ENC)を、前記I−III−VI合金層(CIGS)の前記第2の面(F2)上に直接的にまたは間接的に成膜するステップ(S5)と、を含むことを特徴とする、光起電セル製造プロセス。
【請求項13】
少なくとも前記I−III−VI合金層(CIGS)を、前記ステップc)の前に、前記第2の面(F2)によって前記表面から剥離するステップ(S4)を追加的に含むことを特徴とする、請求項12に記載のプロセス。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、太陽電池パネル応用例のために意図された光起電セル構造に関する。
【0002】
より具体的には、光起電特性を有する、特に太陽光の電気への変換のための少なくとも1つのI−III−VII合金層を含む層状構造を有するものを取り扱う。
【背景技術】
【0003】
薄層セルに関して、特にテルル化カドミウム(CdTe)及びシリコン(Si)の薄層セルよりも大きな最大効率を提供する光起電特性を有するI−III−VI合金に基づいた太陽電池セルが知られている。このI−III−VI合金において、周期表のI族の元素は、例えば銅であり、III族元素はインジウム、ガリウム及び/またはアルミニウムであり、VI族元素はセレン及び/または硫黄であることができる。この合金は、これ以降CIGSとも呼ばれる(Cは銅、Iはインジウム、Gはガリウム及びSは硫黄及び/またはセレンである)。実際に、小さく実質的にCdTeに基づくセルと同等である製造コストに関して、CIGS系セルは3から5%大きな効率を有することができる。
【0004】
図1を参照すると、I−III−VI合金に基づく従来の構造を有する光起電セル1の可能な実施形態が断面図で示されている。そのような構造は、例えば、
−支持体として、セル1のための薄層の積層体に関して、従来技術において頻繁に使用される、ガラス系基板C1、
−通常モリブデン(Mo)系である、セルの第1の電極を形成する接触層C2、
−I−III−VI合金系の(例えばCIGS合金を有する)光起電特性を有する層C3、
−セル1に関する界面層(これ以降バッファ層と呼ばれる)である、硫化カドミウム(CdS)、硫化亜鉛(ZnS)または硫化インジウム(In)に基づく層CT、及び
−第2の電極を形成し、通常は本質的に酸化亜鉛(ZnO)からなる透明導電層C5、を含む薄層の積層体を含む。
【0005】
I−III−VI合金光起電セル1は、光源8(典型的には太陽電池パネル用途の場合、太陽である)にさらされることができる。図示の目的のために、光源8は、光源8からセル1に向かう伝搬方向に従う光線1aに沿ってセル1を照らすことができる。太陽光が入射する面は、これ以降セルの「前面」と呼ばれる。
【0006】
さらに、この例において、モリブデン(Mo)系層C2が、CIGS(p型半導体)層C3と接触しており、このモリブデン(Mo)層はセル1の背面電極(セル1における光線1aの伝搬方向に関するセルの背面電極)を構成する。次いで、背面電極は、前述の前面電極と対向し、これ以降セルの「背面」と呼ばれる面を画定する。モリブデン(Mo)層は、非常に低い抵抗の電気コンタクト(「オーミックコンタクト」と呼ばれる)の役割を果たす。
【0007】
また、酸化亜鉛(ZnO)系層C5は、CIGS層C3と接触しているバッファ層CTと接触している。層CT及び層C5は光源8からくる光に対して透明であり、そのためCIGS層が光線1aにさらされる。CIGS系層C3はこの光を電気に変換することが可能な光起電特性を有する。この実施形態において、酸化亜鉛(ZnO)系層は、セル1に対して透明導電前面電極を形成することができる。CIGS層とCT及びC5層との間の界面は、CIGSと、CT及びC5層との間のpn接合の実装のためにダイオード電気コンタクトを有するという事実によって特徴づけられる。
【0008】
そのようなセルの効率及びそれゆえそのようなセルから得られる電気的エネルギーの量は、特に以下の2つの因子に依存する。
−光起電特性を有する薄層C3の厚さ及び
−薄層C3によって受け取られる光の強度である。
【0009】
従来のセルの効率を改善するための解決手段は、I−III−VI合金系薄層の厚さを増加すること及び/またはこのセルがさらされる照射光の強度を増加させることからなるであろう。
【0010】
しかしながら、太陽電池パネルにおけるセル1の応用例と関連して、光の強度は太陽からの、セルがさらされる自然光に依存する。積層体が太陽に直接さらされる図1に示されるような標準的な構成では、この因子は効率を改善するための助けとすることはできない。
【0011】
さらに、光起電特性を有するI−III−VI合金は、具体的には入手可能性の制限された化学元素から構成される。純粋に例示的な例として、CIGS合金は現在の年間の世界的な抽出量が600トンを超えない化学元素であるインジウム(In)を含む。典型的には、1GWを生産するのに適した光起電セルの生産に関して、1年間に38トンのインジウムが、10%の効率を有し、2μmの厚さのCIGS薄層を有するセルのために使用される。
【0012】
【表1】
【0013】
上の表は、様々な厚さ及び様々な変換効率のCIGS薄層から1GWの光起電力を発生させるのに使用されるインジウムの量の評価を表す。
【0014】
例えば15%に効率が大きくなったとしても、1年間に24トンが依然として使用されることとなる。長期間の内に、インジウムの入手可能性はCIGS系セルの生産を制限することとなることが分かる。
【0015】
最近の研究である「Renewable and Sustainable Energy Reviews」(13(9),2746−2750,2009)によれば、そのようなセルの使用の成長は、2020年には1年あたり20GWの生産に到達する可能性があり、その後上述した入手可能性の制約を考慮してこの生産に制限される可能性がある。
【0016】
そのため、セルの電力発生の増加ができるように光起電セルにおけるI−III−VI合金薄層の厚さを増加させても助けとならない。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0017】
本発明は、少なくとも等価な効率を有する、より薄いI−III−VI合金層の使用を可能とすることによって状況を改善することを試み、それによってインジウムの使用を著しく低減させる助けとする(上述の表に関して前掲したように)。
【課題を解決するための手段】
【0018】
この目的のために、対象は、照射光の電気への変換に関する光起電特性を有する少なくとも1つのI−III−VI合金層を含む薄層光起電セル構造である。
【0019】
さらに、本発明に従う構造は、少なくとも、
−照射光の一部を反射する表面を有する1つのミラー層であって、この反射表面が反射された照射光を第1の面上で受け取るためのI−III−VI合金層の第1の面に面する、ミラー層と、
−第1の面に対向するI−III−VI合金層の第2の面上で、透過した照射光を受け取るための、照射光に対して透明な1つ以上の層と、を含む。
【0020】
そのため、I−III−VI合金層の第1の面は、本発明の意味するところにおけるそのような構造を含むセルの「背面上」に配置され、その一方I−III−VI合金層の第2の面はそのような構造を含むセルの「前面上」に配置されることが理解されるであろう。
【0021】
従って、光起電セルのI−III−VI合金薄層は、その第2の面によって透過された照射光(直接照射)及びその第1の面によって反射された照射光(間接光)を受け取り、この第1の面はミラー層の反射表面に対向している。
【0022】
このようにして、I−III−VI合金層の直接照射及び反射された照射の重ね合わせは、(同一の厚さの光起電層を有する)従来技術の意味するところにおける構造の照射よりも大きく、これは、従来の光起電セルと比較してセルの効率を改善するミラー層によるものである。
【0023】
反射照射光によって導入される照射の増加は、セル構造においてより薄いI−III−VI合金層を提供することを可能にする一方で、従来のセルと実質的に同等の効率を維持可能とすることが理解されるであろう。
【0024】
I−III−VI合金層の厚さの減少は、その効率を損なうことなく光起電セルの生産に使用される材料の量(及び特にCIGS層の場合にはインジウムの量)を制限する。
【0025】
有利には、ミラー層は導電金属相である。従って、例えば通常は低い反射のモリブデンの背面コンタクト電極の代わりに、ミラー層がセルの背面電極を形成することができる。
【0026】
ミラー層は、典型的には、アルミニウム(Al)、ニッケル(Ni)、銀(Ag)、金(Au)、白金(Pt)または銅(Cu)のリストから選択される金属または金属の合金からなることができる。
【0027】
界面層が、ミラー層とCIGS層との間に追加されてこのコンタクトの電気的及び光学的特性を最適化することができる。
【0028】
変形例として、前述の「ミラー」層は非金属であるが拡散層とし、反射コーティングを含むことができる。この実装例に関して、少なくとも1つの透明導電層が、ミラー層とI−III−VI合金層との間に配置されて、有利には光起電層に低抵抗オーミックコンタクトを提供することによって、セルの背面電極の役割を果たす。
【0029】
このとき、上述の「ミラー層」は、光起電層の前述の第1の面(光起電層のpn接合に対応する面)の方へ光を反射または拡散させることによって、一般的に戻すのに適した層を意味することは理解されるであろう。
【0030】
一実装例において、この構造は、ミラー層とI−III−VI合金層との間に、照射光に対して透明な1つ以上の第2の層を含む。ここで、「照射光に対して透明な層」とは、太陽電池パネルにおける光起電セル応用に関して、特定の波長範囲、典型的には350から1100nm(太陽のスペクトル)で光を通過させることを可能にするこれらの層の特性を意味すると理解される。透明な第2の層は、有利には少なくとも1つの酸化亜鉛(ZnO)系薄層及び/または
−硫化カドミウム(CdS)、
−硫化亜鉛(ZnS)、
−硫化インジウム(In)または
−その他の従来の材料からなるバッファ層を有するセルの従来の前面構造に対応する構造を含むことができる。
【0031】
従って、これらの前述の「第2の層」の少なくとも1つは、例えば前述の「ミラー」層が導電性でない場合、セルの背面電極を形成できるように透明かつ導電性とすることができる。
【0032】
従って、この構造において、第2の層はミラー層と光起電合金層との間に配置されることが理解されるであろう。この場合、I−III−VI合金層とバッファ層との間の界面によって形成されるセルのnp接合(光起電効果が最も効果的である領域)は、合金層の背面(セルにおける光伝搬の方向に関して背面)に位置する。従来のセル構成において(図1に示されるように)、この界面は合金I−III−VI層の前面に位置する。
【0033】
この構成において、電力を発生させるための照射の効率は、I−III−VI合金層の低減された厚さ(0.5μmよりも薄い)のために可能である。
【0034】
有利には、ミラー層はさらに、酸化亜鉛(ZnO)層及び脆弱なZnO−CT−CIGS界面(特に水分に対して感受性が高い)をより効率的に分離することにより、光起電層の安定性を向上させる働きをする。従って、セル生産に関してより制約の少ない製造条件が好適である。
【0035】
本発明の意味するところにおけるこの構造において、光は、透明かつ導電性である新しい前面コンタクトを製造する条件で、I−III−VI合金層の前述の第2の面(pn接合を含む面と反対の面)を介して入射することができる。そのため、いくつかの第1の透明層が、この表面上に配置される。従って、前述の第1の透明な層の1つは、好適には少なくとも1つの導電層を含む。直近の場合、この導電層はこの構造内で前面電極の役割を果たすことができる一方で、前述の第2の層のミラー層または導電層は背面電極の役割を果たすことができる。
【0036】
この実施形態において、I−III−VI合金層と前面コンタクトを構成する透明導電層との間に透明スペーサ層を挿入することが有利である。そのようなスペーサ層(これ以降「界面層」と呼ばれる)は、図11を参照してさらにみられるように、低抵抗オーミックコンタクトを形成する役割を果たす。この目的に関して、界面層は大きな禁制帯を有する酸化物、硫化物、セレン化物、窒化物またはリン化物型または、銅(Cu)、ガリウム(Ga)、インジウム(In)、ヨウ素(I)、リン(P)、ヒ素(As)、硫黄(S)、窒素(N)、酸素(O)またはその他を含む化合物でさえある、透明半導体系層とすることができる。変形例として、また可能な実装例として、界面層は数ナノメートルの銅層とすることができる。
【0037】
この界面層は、特にミラー層自体が電極を形成する場合に有利である。しかしながら、導電透明上層(通常はZnO)の電極品質を改善するために、それ自体が有利である可能性がある。従って、この界面層は、ミラー構造における実装を必要とすることなく、それ自体有利であることは理解されるであろう。この界面層及び光起電層とZnO層との間のその追加は、ミラー層構造に独立な分離保護の対象とすることができる。
【0038】
本発明の意味するところにおける構造において、この透明導電層を保護することが適切であり、この第1の透明層がこの目的に関して例えば構造に接合されることによって適用される少なくとも1つの封入表面コーティングを提供することができる。
【0039】
1つの実装例において、構造はさらに、
−I−III−VI合金層、
−ミラー層及び
−1つ以上の第1の透明層に関して基板を含む。
【0040】
この基板は、500℃以下の融点を有する材料から形成することができる。この基板は、例えば接合によって、その前述の反射表面と反対の基板上のミラー層と接触した状態とすることができる。有利には、基板は、その融点が300℃より低いポリマーからなる。好適には、この基板は柔軟なものとすることができる。この基板は、例えば非常に融点の低い柔軟な、一般に低コストのポリマーを伴うことができる。
【0041】
従って、I−III−VI合金薄層を形成するために高い熱制約を必要とするセル構造を作製することは、低融点基板上へのそのような層の適用と互換性があるものとなる。事実、情報に関して、550℃程度の温度は通常共蒸着プロセスによるCIGS系薄層の形成に関して、セル構造におけるこの層の均一な成膜を得るために推奨される。
【0042】
そのため、このプロセスに特有の熱制約は、その製造において基板として使用される柔軟な基板の特性を変性させる可能性がある(例えば、この基板の融点が550℃未満の場合)。
【0043】
さらに示されるように、本発明の意味するところにおける構造に関する製造プロセスは、ありうる実装例において、その基板から(またはモリブデンの層から)積層体を剥離し、有利には低融点を有することができる基板上へ積層体を接合することを提案する。
【0044】
さらに、本発明はまた、一般にはミラー層を含む光起電セルの製造に関して有利な製造法もカバーし、そのプロセスは少なくとも以下の、
a)I−III−VI合金層を基板上に成膜するステップであって、I−III−VI合金層の第2の表面がその表面に接した状態とするステップ、
b)第2の面とは反対側である、I−III−VI合金層の第1の表面上に直接的または間接的にミラー層を成膜するステップ、
c)I−III−VI合金層の第2の表面上に直接的または間接的に1つ以上の第1の透明層を成膜するステップ、を含む。
【0045】
有利な、しかしながら任意選択の実装例において、本プロセスはさらに前述のように、少なくともI−III−VI合金層を前述の基板から、第2の表面によって剥離するプロセスを含み、ステップc)の前に実施される。
【0046】
有利ではあるが、この実装例は任意選択である。事実、積層体の設計において、また続けて剥離をすることなく、ミラー層上に(少なくとも1つの透明層の中間によって)直接的または間接的に光起電層の成膜を提供することが可能である。
【0047】
一実装例において、本プロセスはさらにステップa)とb)との間において、前述の照射光に対して透明な1つ以上の第2の薄層の、I−III−VI合金層の第1の面上への成膜を含み、このミラー層はこの第2の透明薄層の1つの上に成膜される。
【0048】
より一般的には、セルの製造方法は、I−III−VI合金層の成膜前かつその界面における基板の剥離前を通して、I−III−VI合金層の形成プロセスの高温以下の融点を有する薄層及びコーティングを第1の積層体に適用する働きをする。
【0049】
従って、新しい背面基板が、従来のセルとは互換性のなかった材料からなることが可能である。新しい背面層基板は、例えばポリマーまたは有利な特性を有するよりコストの低いその他の材料(例えば柔軟なポリマー)とすることができる。
【0050】
有利には、I−III−VI合金層は、本プロセスの実装例に関して及び/または本発明の意味するところにおけるセル構造において0.5μm以下の厚さを有することができる。
【0051】
このように、I−III−VI合金層の厚さの低減は、少なくとも4倍、使用される材料の量を減少させる。例として、0.2μmの厚さのI−III−VI合金層では、材料の量は従来のセル(2μmの厚さ)と比較して10倍低減される。
【0052】
さらに、I−III−VI合金層の厚さの低減は、適用されなければならない材料がより少ないので、光起電セルの製造時間を低減させる。情報として、従来の光起電セルの一部として2μmのGIGS薄層を形成することは、一般には40分の蒸着が必要となる。0.5μmよりも薄いCIGS層は、このセルの製造に必要な共蒸着の時間を大幅に低減させることは理解されるであろう。
【0053】
本発明のその他の利点及び特徴は、限定するのではなく、例示に関して示された実装例の以下の詳細な説明を、添付された図面を参照して読むことにより、明らかになるであろう。
【図面の簡単な説明】
【0054】
図1】従来の光起電セル構造に関する、薄層積層体およびその基板の一例の断面図を示す。
図2】本発明に従う光起電セル構造に関する、薄層積層体およびその基板の一例の断面図を示す。
図3】積層体の光起電合金層をセル構造から伝搬する光束(縦軸)を、光起電セル中の光によって伝搬される距離(X)(横軸)の関数として示す。
図4】そのようなセル構造を製造する方法における第1のステップに続いて得られる薄層構造の一例の断面図を示す。
図5】そのようなセル構造を製造する方法における第2のステップに続いて得られる薄層積層体の一例の断面図を示す。
図6】セル構造の製造方法の剥離ステップに続いて得られる薄層積層体の一例の断面図を示す。
図7】セル構造の製造方法において剥離及び裏返すステップに続いて得られる薄層積層体の一例の断面図を示す。
図8】光起電セル構造の製造のための主なプロセスステップを示す例示的な図である。
図9】本発明に従う構造で得られた、電圧と比較した電流密度の結果及び2つの従来のセル構造で得られたものと比較した電流密度の結果の例を示す。
図10】前面導電層CAとCIGS光起電合金層との間の界面層CIを有するセル構造からの薄層積層体の一例の断面図を示す。
図11図10からの界面層CIをそれぞれ有さない発明及び有する発明に従う構造で得られる、印加電圧に対する電流密度の曲線100及び102を示す。
【発明を実施するための形態】
【0055】
明確化の理由のために、これらの図面に示される様々な要素の寸法は、その実際の寸法と必ずしも比例していない。これらの図面においては、同一の参照符号は同一の要素に対応する。
【0056】
本発明は、照射光を電気に変換するための薄層光起電セル構造を提供する。
【0057】
従って、図2を参照すると、光起電セル2を有するそのような構造の実装例が断面図で示されている。この実施形態において、CIGSがセル2のI−III−VI合金層を形成する合金である例が使用されている。
【0058】
セル2の構造は、例示の目的でガラス、ポリマーまたはその他であることができる基板Sを含む。後述のように、基板Sは500℃以下の融点を有することができる。薄層の積層体は、この基板S上に、
−ミラー層MRと、
−酸化亜鉛(ZnO)を含む層C5と、
−例えば、硫化カドミウム(CdS)、硫化亜鉛(ZnS)または硫化インジウム(In)に基づくバッファ層CTと、
−0.5μm未満の厚さのCIGSからなるCIGS層と、
−セル2の前面に配置され、純粋に例示の目的で酸化亜鉛(ZnO)などの導電透明材料からなることができる透明導電前面層CAと、
−照射光に対して透明な封入層ENCと、を含んで配置される。
【0059】
さらに、有利な実装例に従えば、透明界面層(図10及び11において後述のように)は、2つの層の間の界面の電気特性を改善するために、前面層CAとCIGS層との間に配置することができる。
【0060】
この実装例に従えば、セル2は、太陽電池パネルに組み込むための手段(図には示されない)を含み、太陽などの光源8によって照射される。
【0061】
セル2のミラー層MRは、照射光の一部、従って光線1aの一部を反射する反射表面FRを含む。反射表面FRは、反射された光線1bに従う反射された照射光を、この第1の面F1を介して受け取ることができるように、CIGS層の第1の面F1と対向する。反射された照射光は、有利には、特に反射表面FRの表面構造効果によって拡散されることができる。
【0062】
セル2の前面層CA及び封入層ENCは、光源8からくる照射光に対して透明であり、そのためCIGS層は第1の面F1と反対の第2の面F2上で、透過された照射光を受け取る。
【0063】
有利には、封入層ENCは、この例においては前面層CAと同一の表面領域を有し、プラスチック(例えばポリカーボネート、テレフタレート、ポリアクリル、ポリエチレンまたはその他)、ガラスまたはその他のような封入材料から形成される。変形例として、透明封入層ENCは、CIGS層の第2の面F2に直接接合することができ、この場合、封入層ENCは、導電材料を含む。
【0064】
CIGS層は、比較的小さな厚さ、典型的には0.5μm以下の厚さを有し、光源8からくる照射光の少なくとも一部はこのCIGS層を通過する。そのため、光源8からくる光線1aで表される光の放射の一部はCIGS層を通過し、第2の面F2を通り、ミラー層MRの反射表面FRに到達する。光線1aは次いで反射表面FRによって、再びCIGS層を通過する反射光線1bに沿って反射される。そのため、反射された光線1bで表される反射された光の放射は、CIGS層で吸収され、光起電効果によってエネルギーを発生させることができる。CIGS層は、直接照射(光線1a)及び同時に反射された照射(反射光線1b)にさらされ、そのような反射照射のないセルと比較してセル2からの効率は大きくなる。
【0065】
図3を参照すると、光起電合金層を通過する光束の光放射が示されている。曲線の一部30は第2の面F2から第1の面F1まで合金層を通過する光束の直接の光放射の減少を示している。曲線の一部31は、セルがミラー層を含まない場合に、使用されない光束の直接光放射を示している。セルがミラー層MRを含む場合、曲線の一部32は、再び光起電合金を、第1の面F1から第2の面F2に向かって通過する反射された放射を示している。そのため、ミラー層MRを有する場合、光起電セル合金層を横切る光放射が増加すると理解される。
【0066】
この例の実装例に従えば、反射表面FRは、CIGS層の第1の面F1とは対向しており、その間に層C5及びバッファ層CTを有する。有利には、層C5は酸化亜鉛(ZnO)などの、例えば200℃未満の低い温度で成膜可能な透明導電材料からなる。前述のように、その部分に関するバッファ層は、硫化カドミウム(CdS)、硫化亜鉛(ZnS)、硫化インジウム(In)またはその他のものに基づく。
【0067】
しかしながら、本発明のこの実施形態は限定的なものではなく、ミラー層MRはその第1の面F1においてCIGS層と直接接触することができ、または単にその間の透明バッファ層CTと直接接触することができ、または第1の面F1の単なる表面処理とすることさえできることは理解されるであろう。
【0068】
ミラー層MR並びに前面層CA及び封入層ENCの層のうち1つは、それぞれがセル2の電極を形成できるように、ここでは導電性である。有利には、まず、層MRはCIGS層(背面電極)の第1の面F1から横切る電極である。第2に、前面層CA及び封入層ENCの層のうち1つはCIGS層(前面電極)の第2の層F2から横切る電極である。非限定的な例として、前面層CAはセル2のカソードであり、ミラー層MRはアノードである。
【0069】
この実施形態によれば、基板Sはミラー層MRの反射表面FRと反対の面FOと接触する。基板Sは反対面FOに接合によって適用可能である。しかしながら、基板Sをミラー層MR上に堅固に結合するためのその他のプロセス、特に熱的プロセスが考慮可能である。
【0070】
ミラー層MRは、反射された光をCIGS層を通して拡散する導電性金属または反射性コーティングであることができる。反射性コーティングが導電性でない場合、セルの背面電極は第2の透明層の1つによって、典型的には例えば導電層C5によって形成される。反射性コーティングは「白」層として参照される反射層からなることができる。
【0071】
さらに、セル2の複数層構造の基板Sは、例えば柔軟なポリマーのように軽く柔軟であることができる。基板Sは、形成されたCIGS層をすでに含む薄層積層体に接合によって適用されるため、基板SはCIGS層形成プロセス(550℃における共蒸着)によって劣化する危険性なく、低融点(例えば500℃未満)を有することができる。
【0072】
その他の実装例に従えば、薄層積層体は、基板S上に直接作られ、その場合、基板Sはより高い融点(好適には550℃を超える)を有し、従ってCIGS層を形成するプロセス(400℃から550℃の温度にさらされる)に対して耐性がある。この実装例に従えば、基板Sは、その上に導電層C5及びバッファ層CTが成膜されることとなるミラー層MRでまず覆われることができる。次いで、CIGS層は、透明導電前面層CAを受け入れる前にバッファ層CT上に適用される。層C5及びバッファ層CTは、ミラー層MRとCIGS合金層との間の半導体接続を確立するために提供可能である。
【0073】
ここで、光起電セル構造のための製造プロセスの主なステップを示す図8を参照する。
【0074】
ステップS1によれば、I−III−VI合金層が基板の表面(またはより共通的には、モリブデンMo層の表面)上に成膜される。上でI−III−VI合金層の「第2の面」F2と呼ばれるI−III−VI合金層の表面が、前述の面と接触した状態であり、透過した照射光を受け入れるように意図される。I−III−VI合金層の成膜は有利には、特にCIGS型I−III−VI合金を伴う場合には、真空において高温で共蒸着プロセスに従ってなされる。もちろん、その他の成膜技術もありうる(電解またはその他の方法)。
【0075】
ステップS2によれば、1つ以上の透明層がステップS1で成膜されたI−III−VI合金層上に成膜される。この成膜は、I−III−VI合金層の第1の面F1上になされる(ここで、この第1の面F1は第2の面F2の反対側である)。
【0076】
図4を参照すると、上にI−III−VI合金のCIGS層が成膜された基板V(ここではモリブデン系層MOで覆われる)を含むステップS1及びS2に続いて得られた薄層構造の例を示している。図示された例によれば、基板Vはガラス系である。層MO上で、薄層の積層体EMP1は、
−0.5μm以下の厚さのCIGS層と、
−バッファ層CTと、
−透明導電層C5と、の重ね合わせから得られるように提供可能である。
【0077】
バッファ層CTは、例えば、化学浴成膜(CBD,chemical bath deposition)法を用いた水溶液中の化学的経路により成膜可能である。一度バッファ層CTが形成されると、酸化亜鉛(ZnO)層C5はスパッタリングによって成膜される。
【0078】
ステップS3によれば、ミラー層MRはI−III−VI合金層(ステップS1の結果得られる)の第1の面F1上に直接成膜され、または、層C5(ステップS2における)を介して間接的に成膜される。ミラー層MRは、例えば反射表面のテクスチャー化などの事前表面処理とともに成膜可能である。
【0079】
同じステップS3によれば、基板Sは結果的に得られる層の積層体に、ミラー層MRの成膜に続いて適用可能である。基板Sは、接合によってミラー層MRの反対面FO上に適用可能である。
【0080】
この段階において、薄層構造は、(特に、ステップS1におけるI−III−VI合金層成膜プロセスの結果である)高温にもはやさらされることはなく、そのため、接合によって適用される基板は融点が300℃未満である、例えば柔軟なポリマーなどの材料からなることができる。
【0081】
図5を参照すると、一連のステップS1、S2及びS3から得られ、積層体EMP2を含む例示的な薄層構造であって、
−CIGS層と、
−バッファ層CTと、
−透明導電層C5と、
−ミラー層MRと、を有する例示的な薄層構造が示されている。
【0082】
接合によって積層体EMP2上に、特にミラー層MRからの反対表面FO上に適用可能な基板S(例えば低融点の柔軟なポリマー)もまた示されている。
【0083】
ステップS4によれば、I−III−VI合金層とモリブデン層MOとの間の界面fが剥離される。事実、CIGSとモリブデンとの間の界面は、低接着係数を有する。機械的に不安定であると考えられ、CIGSはモリブデンから容易に剥離する傾向を有する。もちろん、モリブデン以外の材料もこの目的のために提供可能である。
【0084】
この剥離は、基板Sをリフトオフする作用によって達成可能である。基板Sはリフトオフに関する準備において相補的な層の一時的な追加によって追加的に強化可能である。この技術と共に、モリブデン層MO及び基板Vからより容易な積層体EMP2の分離を行うことができるように、CIGS界面層とモリブデン層との間の通常低い接着係数を利用することが可能である。
【0085】
I−III−VI合金層と基板との間の界面における剥離は、後述のように、透過による照射を受けることができるように、I−III−VI合金層の第2の面F2を基板から取り外す働きをする。
【0086】
図6を参照すると、剥離のステップS4から得られた薄層積層体の例を断面図で示している。
【0087】
有利には、ステップS4における剥離に続いて、基板V及び層MOは他の光起電セル構造(特に製造プロセスからのこれまでのステップに従うもの)の製造のために再び使用することが可能である。
【0088】
ステップS4の結果、基板V及び層MOから剥離された層の積層体は、少なくとも1つのCIGS層、ミラー層MR及び基板Sを含む。
【0089】
ステップS5によれば、ステップS4において基板から剥離された薄層積層体が裏返される。1つ以上の透明層CA、ENCが剥離された薄層積層体上に成膜される。透明層は、基板からの剥離に続いて取り外されたI−III−VI合金層の第2の面F2上に成膜される。従って、CIGS層は、その面F2上に成膜された透明層による透過によって照射を受け取る。
【0090】
図7を参照すると、裏返し、透明層を成膜するステップS5の結果得られる薄層積層体の例を断面図で示す。この図において、裏返され、セルの前面電極を形成する透明導電前面層CA及びセルの層の積層体を保護するための封入層ENCがその上に成膜される、積層体EMP2が見られる。
【0091】
この実施形態において、前述のように、基板Sはミラー層MRの成膜に続いてステップS3で追加される。しかしながら、基板SはステップS4及びS5のいずれに従って接合によって適用することもできることは理解されるであろう。
【0092】
ここで、
−モリブデン層上に成膜された2.5μmの厚さのCIGS層を有する従来のセル構造(曲線80)と、
−モリブデン層上に成膜された0.4μmの厚さのCIGS層を有する従来のセル構造(曲線82)と、
−前述のステップS1、S3、S4及びS5に従って形成され、0.4μmの厚さのCIGS層を有する金(Au)系ミラー層MRを含む本発明の意味するところのセル構造(曲線84)と、
について、1000W/mの太陽光照射下で測定され、電流の変化を印加電圧の関数として示す光起電特性の例が図示された図9を参照する。
【0093】
電流密度(mA・cm−2)の絶対値が大きくなるほど、光起電セルの効率も大きくなることに留意しなければならない。
【0094】
曲線80から、このように2つの他の構造と比較して2.5μmの厚さのCIGS層を有する従来の構造が最も良い結果を示すことが分かる。しかしながら、ミラー層MRを有する構造の場合(曲線84)、同じCIGS層の厚さを有する従来の構造(曲線82)の場合よりも良好な性能が得られることが分かる。ミラー層MRを有する場合、セルは等しい量の材料、例えばCIGS系セルの場合インジウムに対して従来のセルよりも大きな効率を提供することができる。
【0095】
ここで、透明導電前面層CAと光起電CIGS合金層との間に挿入された前述の界面層CIが示された図10を参照する。界面層CIは、小さな厚さ(例えば100nmよりも薄い)の薄層に成膜された大きなバンドギャップ(例えば2eVを超える)透明半導体であることができる。透明界面層CIは、前面層CAとCIGS層との間にオーミックコンタクトを形成することができるように提供される。有利には、界面層CIは、さらにCIGS層のそれよりも大きなレートでpドープされることができる。
【0096】
変形例として、界面層CIは数ナノメートルの厚さの銅層(Cu)であることができる。
【0097】
図11を参照すると、
−界面層CIを有さない(図2に示されるように)セル構成の曲線100と、
−界面層CIを有する(図9に示されるように)セル構成の曲線102と、
について、得られる電流変化が印加電圧の関数として示されている。
【0098】
この例において、前面層CAは、透明導電層を形成できるように、アルミニウムでドープされた酸化亜鉛(ZnO)からなる。
【0099】
曲線100を考えると、前面層CAがCIGS層と直接接触する場合には、電気接合は部分的に遮断し、光起電セルには望ましくないダイオードの電気的挙動を有する。
【0100】
曲線102によれば、結果的に得られる前面層CAとCIGS層との間に挿入された界面層CIとの接触はオーミックであり低抵抗である。このとき界面の電気的挙動は印加された電圧に対して正比例する電流通過を示し、電気的遮断を防ぐ一方で電流を通過させることができ、電極としての使用において有利である1Ωcm−2未満の接触抵抗で電子再結合を可能とする。
【0101】
そのため、ミラー層及び厚さ0.5μm以下のI−III−VI合金層を有する光起電セル構造の場合、2μmの厚さのI−III−VI合金を一般に有する従来のセルの構造と実質的に同等の効率を得ることができる。
【0102】
もちろん、本発明は例として上述された実施形態に限定されるものではなく、本発明は他の変形例へ拡張する。そのようにして、他の実施形態によれば、I−III−VI合金層は、I−III−VI合金層の第1の面から横切る反射表面を有するミラー層MRを特に含む層の積層体の上に直接成膜可能である。この実施形態によれば、構造の製造は構造の剥離を必要としない。
【符号の説明】
【0103】
1 光起電セル
1a、1b 光線
2 光起電セル
8 光源
30 光束の直接の光放射の減少を示す曲線
31 使用されない光束の直接の光放射を示す曲線
32 反射された放射を示す曲線
100 界面層を有さないセル構成の曲線
102 界面層を有するセル構成の曲線
C1 基板
C2 接触層
C3 CIGS層
C5 透明導電層
CT バッファ層
CI 界面層
S、V 基板
MR ミラー層
CA 透明導電前面層
ENC 封入層
FR 反射表面
F1、F2 CIGS層の面
FO 反対面
EMP1、EMP2 積層体
MO モリブデン層
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11