【課題を解決するための手段】
【0018】
この目的のために、対象は、照射光の電気への変換に関する光起電特性を有する少なくとも1つのI−III−VI
2合金層を含む薄層光起電セル構造である。
【0019】
さらに、本発明に従う構造は、少なくとも、
−照射光の一部を反射する表面を有する1つのミラー層であって、この反射表面が反射された照射光を第1の面上で受け取るためのI−III−VI
2合金層の第1の面に面する、ミラー層と、
−第1の面に対向するI−III−VI
2合金層の第2の面上で、透過した照射光を受け取るための、照射光に対して透明な1つ以上の層と、を含む。
【0020】
そのため、I−III−VI
2合金層の第1の面は、本発明の意味するところにおけるそのような構造を含むセルの「背面上」に配置され、その一方I−III−VI
2合金層の第2の面はそのような構造を含むセルの「前面上」に配置されることが理解されるであろう。
【0021】
従って、光起電セルのI−III−VI
2合金薄層は、その第2の面によって透過された照射光(直接照射)及びその第1の面によって反射された照射光(間接光)を受け取り、この第1の面はミラー層の反射表面に対向している。
【0022】
このようにして、I−III−VI
2合金層の直接照射及び反射された照射の重ね合わせは、(同一の厚さの光起電層を有する)従来技術の意味するところにおける構造の照射よりも大きく、これは、従来の光起電セルと比較してセルの効率を改善するミラー層によるものである。
【0023】
反射照射光によって導入される照射の増加は、セル構造においてより薄いI−III−VI
2合金層を提供することを可能にする一方で、従来のセルと実質的に同等の効率を維持可能とすることが理解されるであろう。
【0024】
I−III−VI
2合金層の厚さの減少は、その効率を損なうことなく光起電セルの生産に使用される材料の量(及び特にCIGS層の場合にはインジウムの量)を制限する。
【0025】
有利には、ミラー層は導電金属相である。従って、例えば通常は低い反射のモリブデンの背面コンタクト電極の代わりに、ミラー層がセルの背面電極を形成することができる。
【0026】
ミラー層は、典型的には、アルミニウム(Al)、ニッケル(Ni)、銀(Ag)、金(Au)、白金(Pt)または銅(Cu)のリストから選択される金属または金属の合金からなることができる。
【0027】
界面層が、ミラー層とCIGS層との間に追加されてこのコンタクトの電気的及び光学的特性を最適化することができる。
【0028】
変形例として、前述の「ミラー」層は非金属であるが拡散層とし、反射コーティングを含むことができる。この実装例に関して、少なくとも1つの透明導電層が、ミラー層とI−III−VI
2合金層との間に配置されて、有利には光起電層に低抵抗オーミックコンタクトを提供することによって、セルの背面電極の役割を果たす。
【0029】
このとき、上述の「ミラー層」は、光起電層の前述の第1の面(光起電層のpn接合に対応する面)の方へ光を反射または拡散させることによって、一般的に戻すのに適した層を意味することは理解されるであろう。
【0030】
一実装例において、この構造は、ミラー層とI−III−VI
2合金層との間に、照射光に対して透明な1つ以上の第2の層を含む。ここで、「照射光に対して透明な層」とは、太陽電池パネルにおける光起電セル応用に関して、特定の波長範囲、典型的には350から1100nm(太陽のスペクトル)で光を通過させることを可能にするこれらの層の特性を意味すると理解される。透明な第2の層は、有利には少なくとも1つの酸化亜鉛(ZnO)系薄層及び/または
−硫化カドミウム(CdS)、
−硫化亜鉛(ZnS)、
−硫化インジウム(In
2S
3)または
−その他の従来の材料からなるバッファ層を有するセルの従来の前面構造に対応する構造を含むことができる。
【0031】
従って、これらの前述の「第2の層」の少なくとも1つは、例えば前述の「ミラー」層が導電性でない場合、セルの背面電極を形成できるように透明かつ導電性とすることができる。
【0032】
従って、この構造において、第2の層はミラー層と光起電合金層との間に配置されることが理解されるであろう。この場合、I−III−VI
2合金層とバッファ層との間の界面によって形成されるセルのnp接合(光起電効果が最も効果的である領域)は、合金層の背面(セルにおける光伝搬の方向に関して背面)に位置する。従来のセル構成において(
図1に示されるように)、この界面は合金I−III−VI
2層の前面に位置する。
【0033】
この構成において、電力を発生させるための照射の効率は、I−III−VI
2合金層の低減された厚さ(0.5μmよりも薄い)のために可能である。
【0034】
有利には、ミラー層はさらに、酸化亜鉛(ZnO)層及び脆弱なZnO−CT−CIGS界面(特に水分に対して感受性が高い)をより効率的に分離することにより、光起電層の安定性を向上させる働きをする。従って、セル生産に関してより制約の少ない製造条件が好適である。
【0035】
本発明の意味するところにおけるこの構造において、光は、透明かつ導電性である新しい前面コンタクトを製造する条件で、I−III−VI
2合金層の前述の第2の面(pn接合を含む面と反対の面)を介して入射することができる。そのため、いくつかの第1の透明層が、この表面上に配置される。従って、前述の第1の透明な層の1つは、好適には少なくとも1つの導電層を含む。直近の場合、この導電層はこの構造内で前面電極の役割を果たすことができる一方で、前述の第2の層のミラー層または導電層は背面電極の役割を果たすことができる。
【0036】
この実施形態において、I−III−VI
2合金層と前面コンタクトを構成する透明導電層との間に透明スペーサ層を挿入することが有利である。そのようなスペーサ層(これ以降「界面層」と呼ばれる)は、
図11を参照してさらにみられるように、低抵抗オーミックコンタクトを形成する役割を果たす。この目的に関して、界面層は大きな禁制帯を有する酸化物、硫化物、セレン化物、窒化物またはリン化物型または、銅(Cu)、ガリウム(Ga)、インジウム(In)、ヨウ素(I)、リン(P)、ヒ素(As)、硫黄(S)、窒素(N)、酸素(O)またはその他を含む化合物でさえある、透明半導体系層とすることができる。変形例として、また可能な実装例として、界面層は数ナノメートルの銅層とすることができる。
【0037】
この界面層は、特にミラー層自体が電極を形成する場合に有利である。しかしながら、導電透明上層(通常はZnO)の電極品質を改善するために、それ自体が有利である可能性がある。従って、この界面層は、ミラー構造における実装を必要とすることなく、それ自体有利であることは理解されるであろう。この界面層及び光起電層とZnO層との間のその追加は、ミラー層構造に独立な分離保護の対象とすることができる。
【0038】
本発明の意味するところにおける構造において、この透明導電層を保護することが適切であり、この第1の透明層がこの目的に関して例えば構造に接合されることによって適用される少なくとも1つの封入表面コーティングを提供することができる。
【0039】
1つの実装例において、構造はさらに、
−I−III−VI
2合金層、
−ミラー層及び
−1つ以上の第1の透明層に関して基板を含む。
【0040】
この基板は、500℃以下の融点を有する材料から形成することができる。この基板は、例えば接合によって、その前述の反射表面と反対の基板上のミラー層と接触した状態とすることができる。有利には、基板は、その融点が300℃より低いポリマーからなる。好適には、この基板は柔軟なものとすることができる。この基板は、例えば非常に融点の低い柔軟な、一般に低コストのポリマーを伴うことができる。
【0041】
従って、I−III−VI
2合金薄層を形成するために高い熱制約を必要とするセル構造を作製することは、低融点基板上へのそのような層の適用と互換性があるものとなる。事実、情報に関して、550℃程度の温度は通常共蒸着プロセスによるCIGS系薄層の形成に関して、セル構造におけるこの層の均一な成膜を得るために推奨される。
【0042】
そのため、このプロセスに特有の熱制約は、その製造において基板として使用される柔軟な基板の特性を変性させる可能性がある(例えば、この基板の融点が550℃未満の場合)。
【0043】
さらに示されるように、本発明の意味するところにおける構造に関する製造プロセスは、ありうる実装例において、その基板から(またはモリブデンの層から)積層体を剥離し、有利には低融点を有することができる基板上へ積層体を接合することを提案する。
【0044】
さらに、本発明はまた、一般にはミラー層を含む光起電セルの製造に関して有利な製造法もカバーし、そのプロセスは少なくとも以下の、
a)I−III−VI
2合金層を基板上に成膜するステップであって、I−III−VI
2合金層の第2の表面がその表面に接した状態とするステップ、
b)第2の面とは反対側である、I−III−VI
2合金層の第1の表面上に直接的または間接的にミラー層を成膜するステップ、
c)I−III−VI
2合金層の第2の表面上に直接的または間接的に1つ以上の第1の透明層を成膜するステップ、を含む。
【0045】
有利な、しかしながら任意選択の実装例において、本プロセスはさらに前述のように、少なくともI−III−VI
2合金層を前述の基板から、第2の表面によって剥離するプロセスを含み、ステップc)の前に実施される。
【0046】
有利ではあるが、この実装例は任意選択である。事実、積層体の設計において、また続けて剥離をすることなく、ミラー層上に(少なくとも1つの透明層の中間によって)直接的または間接的に光起電層の成膜を提供することが可能である。
【0047】
一実装例において、本プロセスはさらにステップa)とb)との間において、前述の照射光に対して透明な1つ以上の第2の薄層の、I−III−VI
2合金層の第1の面上への成膜を含み、このミラー層はこの第2の透明薄層の1つの上に成膜される。
【0048】
より一般的には、セルの製造方法は、I−III−VI
2合金層の成膜前かつその界面における基板の剥離前を通して、I−III−VI
2合金層の形成プロセスの高温以下の融点を有する薄層及びコーティングを第1の積層体に適用する働きをする。
【0049】
従って、新しい背面基板が、従来のセルとは互換性のなかった材料からなることが可能である。新しい背面層基板は、例えばポリマーまたは有利な特性を有するよりコストの低いその他の材料(例えば柔軟なポリマー)とすることができる。
【0050】
有利には、I−III−VI
2合金層は、本プロセスの実装例に関して及び/または本発明の意味するところにおけるセル構造において0.5μm以下の厚さを有することができる。
【0051】
このように、I−III−VI
2合金層の厚さの低減は、少なくとも4倍、使用される材料の量を減少させる。例として、0.2μmの厚さのI−III−VI
2合金層では、材料の量は従来のセル(2μmの厚さ)と比較して10倍低減される。
【0052】
さらに、I−III−VI
2合金層の厚さの低減は、適用されなければならない材料がより少ないので、光起電セルの製造時間を低減させる。情報として、従来の光起電セルの一部として2μmのGIGS薄層を形成することは、一般には40分の蒸着が必要となる。0.5μmよりも薄いCIGS層は、このセルの製造に必要な共蒸着の時間を大幅に低減させることは理解されるであろう。
【0053】
本発明のその他の利点及び特徴は、限定するのではなく、例示に関して示された実装例の以下の詳細な説明を、添付された図面を参照して読むことにより、明らかになるであろう。