(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
有機樹脂の少なくとも内部に導電性粒子を含有する導電性繊維を含有する不織布を含むガス拡散電極用基材であり、前記ガス拡散電極用基材の比見掛ヤング率が40[MPa/(g/cm3)]以上であることを特徴とする、ガス拡散電極用基材。
【発明を実施するための形態】
【0015】
本発明のガス拡散電極用基材(以下、単に「電極基材」と表記することがある)は、有機樹脂の少なくとも内部に導電性粒子を含有する導電性繊維を含有する不織布を含む。この不織布の導電性繊維は、有機樹脂を含んでいることによって柔軟であるため、導電性繊維が固体高分子膜を直接的に損傷し、短絡するということがない。なお、本発明の「有機樹脂」に、ダイヤモンド、グラファイト、無定形炭素は含まれない。
【0016】
この導電性繊維を構成する有機樹脂は、疎水性有機樹脂であっても、親水性有機樹脂であっても、或いはこれらの混合物又は複合物であっても良く、特に限定するものではない。前者の疎水性有機樹脂を含んでいると、フッ素系樹脂等の疎水性樹脂を含浸しなくても優れた水の透過性を示し、優れた排水性を示す。他方で、親水性有機樹脂を含んでいると、水分を保持することができるため、低湿度下であっても固体高分子膜を湿潤状態に保つことができ、低湿度下であっても十分な発電性能を発揮できる固体高分子形燃料電池を作製することができる。
【0017】
この「疎水性有機樹脂」とは、水との接触角が90°以上の有機樹脂であり、例えば、ポリテトラフルオロエチレン(PTFE)、ポリクロロトリフルオロエチレン(PCTFE)、ポリフッ化ビニリデン(PVDF)、ポリフッ化ビニル(PVF)、ペルフルオロアルコキシフッ素樹脂(PFA)、四フッ化エチレン・六フッ化プロピレン共重合体(FEP)、エチレン・四フッ化エチレン共重合体(ETFE)、エチレン・クロロトリフルオロエチレン共重合体(ECTFE)、フッ化ビニリデン・テトラフルオロエチレン・ヘキサフルオロプロピレン共重合体、及び前記樹脂を構成する各種モノマーの共重合体、などのフッ素系樹脂;ポリエチレン(PE)、ポリプロピレン(PP)などのポリオレフィン系樹脂;ポリエチレンテレフタレート(PET)、ポリエチレンナフタレート(PEN)などのポリエステル系樹脂などを挙げることができる。また、これらの疎水性樹脂は単独で用いることもできるし、2種類以上混合又は複合して使用することもできる。これらの中でも特に、フッ素系樹脂は耐熱性、耐薬品性、疎水性が強いため、好適に用いることができる。
【0018】
他方、「親水性有機樹脂」とは、水との接触角が90°未満の有機樹脂であり、例えば、レーヨンなどのセルロース;ポリアクリロニトリル、酸化アクリル、ポリアクリル酸、ポリメタクリル酸などのアクリル系樹脂;ナイロン6、ナイロン66などのポリアミド系樹脂;ポリビニルアルコール系樹脂;親水性ポリウレタン;ポリビニルピロリドン;フェノール樹脂、尿素樹脂、メラミン樹脂、不飽和ポリエステル樹脂、エポキシ樹脂などの熱硬化性樹脂など、親水性基(アミド基、カルボキシル基、水酸基、アミノ基、スルホン酸基等)を有する樹脂を挙げることができる。また、これらの親水性有機樹脂は単独で用いることもできるし、2種類以上混合又は複合して使用することもできる。
【0019】
なお、導電性繊維の剛性が高く、結果として電極基材の剛性が高いことによって、固体高分子膜の膨潤及び収縮を抑制し、固体高分子膜の亀裂を防止できるように、熱硬化性樹脂を含んでいるのが好ましい。熱硬化性樹脂の中でもフェノール樹脂又はエポキシ樹脂は、耐熱性、耐酸性で、熱処理によって電極基材の剛性を高めることができるため好適である。
【0020】
本発明の導電性繊維はガス拡散電極として使用した場合に、電子移動性に優れているように、有機樹脂の少なくとも内部に導電性粒子を含有している。つまり、有機樹脂の外側表面にのみ導電性粒子が存在する状態にあると、有機樹脂成分が抵抗成分となり、ガス拡散電極の厚さ方向において導電性に劣ることになるが、本発明においては、有機樹脂の内部に導電性粒子を含有しているため、ガス拡散電極の厚さ方向においても導電性に優れている。導電性という観点からは、導電性粒子は有機樹脂から露出しているのが好ましい。なお、「内部に導電性粒子を含有する」とは、有機樹脂内に導電性粒子が完全に埋没している状態だけを意味しているのではなく、導電性粒子の一部が有機樹脂から露出した状態も意味する。このような有機樹脂の少なくとも内部に導電性粒子を含有する導電性繊維は、例えば、有機樹脂と導電性粒子とを含む紡糸液を紡糸することによって製造することができる。
【0021】
この導電性粒子は特に限定するものではないが、カーボンブラック、カーボンナノチューブ、カーボンナノファイバー、金属粒子、金属酸化物粒子などを挙げることができる。これらの中でもカーボンブラックは耐薬品性、導電性及び分散性の点から好適である。この好適であるカーボンブラックの粒径は特に限定するものではないが、好ましくは平均一次粒径が5nm〜200nm、より好ましくは10nm〜100nmである。なお、導電性粒子の平均一次粒径は、脱落しにくく、また、繊維形態を形成しやすいように、後述の導電性繊維の繊維径よりも小さいのが好ましい。また、気相法炭素繊維などのカーボンナノファイバーは繊維形態であることによって、電極基材の比見掛ヤング率を高めやすいため好適である。
【0022】
このような導電性粒子と有機樹脂との質量比は特に限定するものではないが、10〜90:90〜10であるのが好ましく、20〜80:80〜20であるのがより好ましく、30〜70:70〜30であるのが更に好ましく、35〜65:65〜35であるのが更に好ましく、40〜60:60〜40であるのが更に好ましい。導電性粒子量が10mass%を下回ると導電性が不足しやすく、他方で、導電性粒子量が90mass%を上回ると繊維形成性が低下する傾向があるためである。
【0023】
なお、導電性に優れているように、導電性粒子は不織布(電極基材)の10〜90mass%を占めているのが好ましく、20〜80mass%を占めているのがより好ましく、30〜70mass%を占めているのが更に好ましく、35〜65mass%を占めているのが更に好ましく、40〜60mass%を占めているのが更に好ましい。
【0024】
本発明の導電性繊維の平均繊維径は特に限定するものではないが、10nm〜10μmであるのが好ましく、50nm〜5μmであるのがより好ましく、50nm〜1μmであるのが更に好ましい。平均繊維径が10μmを上回ると、電極基材における繊維同士の接触点が少なく、導電性が不足しやすい傾向があり、他方、10nmを下回ると、繊維内部に導電性粒子を含有しにくい傾向があるためである。なお、導電性繊維の平均繊維径は導電性粒子が脱落しにくいように、導電性粒子の一次粒子径の5倍以上であるのが好ましい。このような平均繊維径を有する導電性繊維は、例えば、静電紡糸法、スパンボンド法、メルトブロー法、或いは特開2009−287138号公報に開示されているような、液吐出部から吐出された紡糸液に対してガスを平行に吐出し、紡糸液に1本の直線状に剪断力を作用させて繊維化する方法、により製造することができる。
【0025】
この「平均繊維径」とは、40点における繊維径の算術平均値を意味し、また、「繊維径」とは、顕微鏡写真をもとに計測した値であり、導電性粒子が露出した導電性繊維のみから構成されている場合には、露出した導電性粒子を含めた直径を意味し、導電性粒子が露出した導電性繊維を含有していないか、導電性粒子が露出した導電性繊維を含有していても、導電性粒子が露出していない部分を有する導電性繊維を含んで構成されている場合には、導電性粒子が露出していない部分における直径を意味する。
【0026】
本発明の導電性繊維は電子の移動性に優れているように、また、導電性繊維の端部が少なく、固体高分子膜を損傷しにくいように、連続繊維であるのが好ましい。このような導電性連続繊維は、例えば、静電紡糸法又はスパンボンド法により製造することができる。
【0027】
本発明の電極基材を構成する不織布における導電性繊維の質量含有割合は電子の移動性に優れるように、10%以上であるのが好ましく、50%以上であるのがより好ましく、70%以上であるのが更に好ましく、90%以上であるのが更に好ましく、導電性繊維のみから構成されているのが最も好ましい。なお、導電性繊維以外の繊維として、フッ素繊維、ポリオレフィン繊維などの疎水性有機繊維、アクリル繊維、ナイロン繊維(例えば、ナイロン6、ナイロン66など)、フェノール繊維などの親水性有機繊維を含んでいることができる。
【0028】
本発明の電極基材を構成する不織布は導電性繊維以外の繊維を含んでいることができるが、電極基材は導電性に優れているように、電気抵抗が150mΩ・cm
2以下であるのが好ましく、100mΩ・cm
2以下であるのがより好ましく、50mΩ・cm
2以下であるのが更に好ましい。本発明の「電気抵抗」は、5cm角に切断した電極基材(25cm
2)をカーボンプレートで両面側から挟み、カーボンプレートの積層方向に、2MPaで加圧下、1Aの電流(I)を印加した状態で、電圧(V)を計測する。続いて、抵抗(R=V/I)を算出し、更に、電極基材の面積(25cm
2)を乗じることによって得られる値である。
【0029】
なお、本発明の電極基材を構成する不織布は接着剤を使用することによって結合し、形態を維持させても良いが、導電性に優れるように、導電性繊維を構成する有機樹脂の結合によって形態を維持しているのが好ましい。この好適である有機樹脂の結合として、例えば、繊維同士の絡合、溶媒による可塑化による結合、又は熱による融着による結合を挙げることができる。
【0030】
本発明の電極基材を構成する不織布の目付は特に限定するものではないが、排水性、ガス拡散性、取り扱い性及び生産性の点から0.5〜200g/m
2であるのが好ましく、0.5〜100g/m
2であるのがより好ましく、0.5〜50g/m
2であるのが更に好ましい。また、厚さも特に限定するものではないが、1〜1000μmであるのが好ましく、1〜500μmであるのがより好ましく、30〜300μmであるのが更に好ましく、50〜250μmであるのが更に好ましい。
【0031】
本発明における「目付」は、10cm角に切断した試料の質量を測定し、1m
2の大きさの質量に換算した値をいい、「厚さ」はシックネスゲージ((株)ミツトヨ製:コードNo.547−401:測定力3.5N以下)を用いて測定した値をいう。
【0032】
本発明の電極基材は前述のような導電性繊維を含有する不織布を含むが、比見掛ヤング率が40[MPa/(g/cm
3)]以上と、従来の有機樹脂の少なくとも内部に導電性粒子を含有する導電性繊維を含有する電極基材よりも剛性が高く、固体高分子膜の膨潤及び収縮を抑制することができるため、固体高分子膜の膨潤及び収縮による亀裂を防止することができるものである。
【0033】
この比見掛ヤング率は後述の測定方法から理解できるように、電極基材の剛性の指標である見掛ヤング率を、電極基材の見掛密度で除して得られる値である。つまり、同じ見掛ヤング率であっても、見掛密度が高い場合と低い場合とでは、見掛密度が低い方が導電性繊維の量が少ないにも関わらず、同じ見掛ヤング率であるということは、それだけ1本1本の導電性繊維の剛性が高いことを意味し、結果として、固体高分子膜の膨潤及び収縮の抑制作用に優れていることを意味しているため、本発明においては、電極基材の見掛ヤング率を見掛密度で除した値である比見掛ヤング率で表現している。この比見掛ヤング率が高い程、個々の導電性繊維の剛性が高く、固体高分子膜の膨潤及び収縮の抑制作用に優れているため、45[MPa/(g/cm
3)]以上であるのが好ましく、50[MPa/(g/cm
3)]以上であるのがより好ましく、60[MPa/(g/cm
3)]以上であるのが更に好ましく、70[MPa/(g/cm
3)]以上であるのが更に好ましく、80[MPa/(g/cm
3)]以上であるのが更に好ましく、90[MPa/(g/cm
3)]以上であるのが更に好ましい。一方で、比見掛ヤング率が高すぎると、導電性繊維の剛性によって、固体高分子膜を直接的に損傷することがあるため、1000[MPa/(g/cm
3)]以下であるのが好ましく、900[MPa/(g/cm
3)]以下であるのがより好ましく、700[MPa/(g/cm
3)]以下であるのが更に好ましく、500[MPa/(g/cm
3)]以下であるのが更に好ましい。なお、参考までにカーボンペーパー、ガラス不織布製電極基材の比見掛ヤング率は、いずれも1000[MPa/(g/cm
3)]を優に超える。
【0034】
本発明の「比見掛ヤング率」は、次の手順により得られる値である。
(1)評価対象の電極基材の目付(g/cm
2)を厚さ(cm)で除して、見掛密度(g/cm
3)を算出する。
(2)電極基材を、たて方向に50mmで、よこ方向に5mmの長方形状に裁断したたて方向試験片10枚、及びよこ方向に50mmで、たて方向に5mmの長方形状に裁断したよこ方向試験片10枚を、それぞれ採取する。
(3)前記各試験片の引張りせん断試験を、小型引張り試験機(サーチ社製、TSM−op01)を用い、チャック間距離20mm、引張り速度20mm/min.の条件で実施し、各々荷重−伸び曲線を描く。
(4)前記各々の荷重−伸び曲線における原点近くで伸長変化に対する荷重変化の最大点(接線角の最大点)における荷重(N)を、引張りせん断試験をする前の試験片の断面積[厚さ(T)×5](単位:mm
2)で除して、引張り応力(MPa)を算出する。続いて、引張り応力を最大点におけるひずみ(無次元)[試験片の伸び長さ(mm)÷初期試験片長さ(mm)]で除することで、見掛けヤング率を各々求める。そして、20枚の試験片の見掛けヤング率の算術平均値を算出し、「平均見掛けヤング率」とする。
(5)前記平均見掛けヤング率を前記見掛密度で除して、「比見掛ヤング率」を算出する。
【0035】
本発明の電極基材は、厚さや生産コストの制限を受けることなく、ガス拡散電極生産時のハンドリング性に優れているように、比引張り強度(MPa)は0.5MPa以上であるのが好ましく、2MPa以上であるのがより好ましく、4MPa以上であるのが更に好ましく、5MPa以上であるのが更に好ましく、6MPa以上であるのが更に好ましく、7MPa以上であるのが更に好ましい。この比引張り強度は後述の測定方法から理解できるように、電極基材の強度である破断強度を、電極基材の見掛密度で除して得られる値である。つまり、同じ引張り強度であっても、見掛密度が高い場合と低い場合とでは、見掛密度が低い方が導電性の繊維量が少ないにも関わらず、同じ引張り強度であるということは、それだけ各々の導電性繊維の引張り強度が強いか、導電性繊維同士の結合が強いことを意味し、結果として、生産時に必要となる引張り強度を確保するために必要な繊維量(目付)を調整できることを意味している。
【0036】
この「比引張り強度」は、次の手順により得られる値である。
(1)評価対象の電極基材の目付(g/cm
2)を厚さ(cm)で除して、見掛密度(g/cm
3)を算出する。
(2)電極基材を、たて方向に50mmで、よこ方向に5mmの長方形状に裁断したたて方向試験片10枚、及びよこ方向に50mmで、たて方向に5mmの長方形状に裁断したよこ方向試験片10枚を採取する。
(3)前記各試験片の引張りせん断試験を、小型引張り試験機(サーチ社製、TSM−op01)を用い、チャック間距離20mm、引張り速度20mm/min.の条件で実施し、破断強度(N)を各々測定する。
(4)破断強度(N)を、引張りせん断試験をする前の試験片の断面積[厚さ(T)×5](単位:mm
2)で除して、引張り強度(MPa)を各々求め、20枚の試験片の引張り強度の算術平均値を算出し、「平均引張り強度」とする。
(5)前記平均引張り強度を前記見掛密度で除して、「比引張り強度」を算出する。
【0037】
本発明の電極基材は前述のような不織布を含むが、不織布は多孔性であるため、不織布の空隙に何も充填されていない場合には、面方向においても、排水性およびガス拡散性に優れ、発電性能の高い燃料電池を作製することができるものであるが、この多孔性は空隙率にして20%以上の多孔性を有するのが好ましく、より好ましくは空隙率が30%以上の多孔性を有し、更に好ましくは空隙率が50%以上の多孔性を有し、更に好ましくは空隙率が60%以上の多孔性を有し、更に好ましくは空隙率が70%以上の多孔性を有し、更に好ましくは空隙率が80%以上の多孔性を有する。なお、空隙率の上限は特に限定するものではないが、形態安定性の点から99%以下であるのが好ましく、95%以下であるのがより好ましく、90%以下であるのが更に好ましい。また、空隙率P(単位:%)は次の式から得られる値をいう。
P=100−(Fr1+Fr2+・・+Frn)
ここで、Frnは不織布を構成する成分nの充填率(単位:%)を示し、次の式から得られる値をいう。
Frn=M×Prn/(T×SGn)×100
ここで、Mは不織布の目付(単位:g/cm
2)、Tは不織布の厚さ(cm)、Prnは不織布における成分n(例えば、有機樹脂、導電性粒子)の存在質量比率、SGnは成分nの比重(単位:g/cm
3)をそれぞれ意味する。
【0038】
本発明の電極基材は、面方向においても排水性およびガス拡散性に優れ、発電性能の高い燃料電池を作製することができるように、不織布の空隙に何も充填されていないのが好ましいが、面方向における排水性及びガス拡散性を損なわない範囲内で、不織布の表面及び/又は空隙に、フッ素系樹脂及び/又はカーボンを含んでいても良い。
【0039】
このフッ素系樹脂としては、例えば、ポリテトラフルオロエチレン(PTFE)、ポリクロロトリフルオロエチレン(PCTFE)、ポリフッ化ビニリデン(PVDF)、ポリフッ化ビニル(PVF)、ペルフルオロアルコキシフッ素樹脂(PFA)、四フッ化エチレン・六フッ化プロピレン共重合体(FEP)、エチレン・四フッ化エチレン共重合体(ETFE)、エチレン・クロロトリフルオロエチレン共重合体(ECTFE)、フッ化ビニリデン・テトラフルオロエチレン・ヘキサフルオロプロピレン共重合体、及び前記樹脂を構成する各種モノマーの共重合体、などを挙げることができ、カーボンとして、例えば、カーボンブラック、カーボンナノチューブ、カーボンナノファイバーなどを挙げることができる。
【0040】
本発明の電極基材は、例えば、次のようにして製造することができる。
【0041】
まず、有機樹脂と導電性粒子とを混合した紡糸液を用いて紡糸して、導電性繊維を形成し、この導電性繊維を直接捕集し、集積することによって、繊維ウエブを形成する。なお、従来の有機樹脂の少なくとも内部に導電性粒子を含有する導電性繊維よりも剛性の強い導電性繊維であるように、有機樹脂として、熱硬化性樹脂(特にフェノール樹脂又はエポキシ樹脂)を含んでいるのが好ましい。
【0042】
この繊維ウエブ自体に強度があれば、そのまま繊維ウエブを不織布(電極基材)として使用できるし、強度を付与又は向上させるために、溶媒による可塑化、熱による融着、接着剤による接着等により結合し、不織布(電極基材)とすることもできる。特に、好適である熱硬化性樹脂を含んでいる場合には、熱によって硬化させることによって、導電性繊維の剛性を高めるのが好ましい。なお、熱硬化性樹脂を硬化させる条件は熱硬化性樹脂の種類によって異なるため、熱硬化性樹脂の種類に応じて適宜設定する。
【0043】
なお、導電性繊維を直接捕集し、集積して形成した繊維ウエブを構成する繊維は連続した長繊維であるのが好ましい。連続した長繊維であることによって、導電性及び強度の点で優れているだけでなく、繊維の端部が少なく、固体高分子膜を損傷しにくいためである。
【0044】
また、繊維ウエブの形成方法としては、例えば、静電紡糸法、スパンボンド法、メルトブロー法、或いは特開2009−287138号公報に開示されているような、液吐出部から吐出された紡糸液に対してガスを平行に吐出し、紡糸液に1本の直線状に剪断力を作用させて繊維化する方法、を挙げることができる。これらの中でも静電紡糸法又は特開2009−287138号公報に開示の方法によれば、繊維径の小さい導電性繊維を紡糸できることから、薄い不織布を製造することができ、結果として燃料電池の抵抗を下げることができ、また、燃料電池の体積を小さくすることができるため好適である。特に、静電紡糸法によれば、連続した導電性繊維を形成することができるため、繊維の端部が少なく、固体高分子膜を損傷しにくいため好適である。
【0045】
静電紡糸法又は特開2009−287138号公報に開示の方法のように、溶媒に有機樹脂を溶解させた溶液に導電性粒子を混合する場合、溶媒として、紡糸時に揮散しにくいものを使用し、繊維ウエブ又は不織布を形成した後に、溶媒置換により紡糸溶媒を除去すると、導電性繊維同士が可塑化結合した状態になりやすく、結果として導電性の高い不織布を製造することができ、また、電極基材が緻密になり、燃料電池内での接触抵抗が低くなりやすいため好適である。
【0046】
なお、導電性繊維を連続繊維として巻き取り、次いで導電性繊維を所望繊維長に切断して短繊維とした後、公知の乾式法又は湿式法により繊維ウエブを形成し、溶媒による可塑化、熱による融着、接着剤による接着等により結合し、不織布とすることもできる。しかしながら、前述の通り、不織布を構成する導電性繊維は連続した繊維であるのが好ましいため、連続した導電性繊維を直接捕集し、集積して形成した繊維ウエブに由来する不織布であるのが好ましい。
【0047】
なお、導電性繊維を構成する有機樹脂が酸化アクリルである場合、アクリル樹脂と導電性粒子とを混合した紡糸液を紡糸して導電性繊維を形成し、この導電性繊維を含む繊維ウエブを直接的に又は間接的に形成した後、空気中で温度200〜300℃で加熱することによって、アクリル樹脂を酸化アクリルとして、不織布の導電性を更に高めることもできる。或いは、アクリル樹脂と導電性粒子とを混合した紡糸液を用いて紡糸した導電性繊維を、空気中、温度200〜300℃で加熱することによって、アクリル樹脂を酸化アクリルとした後に、酸化アクリルと導電性粒子からなる導電性繊維を使用して不織布を形成することもできる。
【0048】
また、導電性繊維を構成する有機樹脂が350℃を超えるような融点を有する耐熱性有機樹脂を含む場合、不織布をポリテトラフルオロエチレンディスパージョンなどのフッ素系ディスパージョンに浸漬して、不織布にフッ素系樹脂を付与した後、温度300〜350℃で焼結することで、撥水性を高めた電極基材を形成することもできる。
【0049】
本発明の電極基材を使用すれば、電極基材に触媒が担持されたガス拡散電極を作製することができる。このガス拡散電極は本発明の電極基材を使用しているため、固体高分子膜を直接的に損傷することなく、しかも固体高分子膜の膨潤及び収縮を抑制することができる。
【0050】
また、前記ガス拡散電極は、導電性繊維表面に触媒が担持され、触媒同士の接触による電子伝導だけではなく、導電性繊維による電子伝導パスも形成されているため、電子伝導パスから孤立した触媒が少ない。更に、電極基材は不織布構造の多孔体で、排水性およびガス拡散性に優れることから、三相界面(ガス、触媒、電解質樹脂が会合する反応場)へガスを十分に安定して供給することができる。これらの理由で、効率的に触媒を利用でき、触媒量を少なくできるという効果を奏する。
【0051】
前記ガス拡散電極は本発明の電極基材を備えていること以外は、従来のガス拡散電極と全く同様の構造を有する。例えば、触媒としては、白金、白金合金、パラジウム、パラジウム合金、チタン、マンガン、マグネシウム、ランタン、バナジウム、ジルコニウム、イリジウム、ロジウム、ルテニウム、金、ニッケル−ランタン合金、チタン−鉄合金などを挙げることができ、これらから選ばれる1種類以上の触媒を担持していることができる。
【0052】
なお、触媒以外にも、電子伝導体及びプロトン伝導体を含んでいるのが好ましく、電子伝導体として、カーボンブラック等の導電性繊維に含まれている導電性粒子と同様の導電性粒子が好適であり、触媒はこの導電性粒子に担持されていても良い。また、プロトン伝導体として、イオン交換樹脂が好適である。
【0053】
このようなガス拡散電極は、例えば、次の方法で作製できる。
【0054】
まず、エチルアルコール、プロピルアルコール、ブチルアルコール、エチレングリコールジメチルエーテルなどからなる単一あるいは混合溶媒中に、触媒(例えば、白金などの触媒を担持したカーボン粉末)を加えて混合し、これにイオン交換樹脂溶液を加え、超音波分散等で均一に混合して触媒分散懸濁液とする。そして、本発明の電極基材に、前記触媒分散懸濁液をコーティング又は散布し、これを乾燥して、ガス拡散電極を製造することができる。
【0055】
更に、本発明の電極基材を用いて、膜−電極接合体とすることもできる。この膜−電極接合体は本発明の電極基材を使用しているため、固体高分子膜を直接的に損傷することなく、しかも固体高分子膜の膨潤及び収縮を抑制することができる。前記膜−電極接合体は本発明の電極基材を備えていること以外は、従来の膜−電極接合体と全く同様であることができる。このような膜−電極接合体は、例えば、本発明の電極基材を用いて作製した一対のガス拡散電極の、それぞれの触媒担持面の間に固体高分子膜を挟み、熱プレスすることによって接合して製造できる。また、前述のような触媒分散懸濁液を支持体に塗布して触媒層を形成した後、この触媒層を固体高分子膜に転写し、その後、触媒層に本発明の電極基材を積層し、熱プレスする方法によっても製造できる。
【0056】
なお、固体高分子膜としては、例えば、パーフルオロカーボンスルホン酸系樹脂膜、スルホン化芳香族炭化水素系樹脂膜、アルキルスルホン化芳香族炭化水素系樹脂膜などを用いることができる。
【0057】
更に、本発明の電極基材を用いた固体高分子形燃料電池は、本発明の電極基材を使用しているため、固体高分子膜を直接的に損傷することなく、しかも固体高分子膜の膨潤及び収縮を抑制することができるため、寿命の長い燃料電池である。
【0058】
この燃料電池は本発明の電極基材を備えていること以外は、従来の燃料電池と全く同様であることができる。例えば、前述のような膜−電極接合体を1対のバイポーラプレートで挟んだセル単位を複数積層した構造からなり、例えば、セル単位を複数積層し、固定して製造できる。
【0059】
なお、バイポーラプレートとしては、導電性が高く、ガスを透過せず、ガス拡散電極にガスを供給できる流路を有するものであれば良く、特に限定するものではないが、例えば、カーボン成形材料、カーボン−樹脂複合材料、金属材料などを用いることができる。
【実施例】
【0060】
以下に、本発明の実施例を記載するが、本発明は以下の実施例に限定されるものではない。
【0061】
(実施例)
<第1紡糸溶液の調製>
フッ化ビニリデン・テトラフルオロエチレン・ヘキサフルオロプロピレン共重合物をN,N−ジメチルホルムアミド(DMF)に加え、ロッキングミルを用いて溶解させ、濃度10mass%の溶液を得た。
【0062】
次いで、導電性粒子として、カーボンブラック(デンカブラック粒状品、電気化学工業(株)製、平均一次粒子径:35nm)、熱硬化性樹脂として、フェノール樹脂(ベルパール、エア・ウォーター・ベルパール株式会社)を前記溶液に混合し、撹拌した後、DMFを加えて希釈し、カーボンブラック及びフェノール樹脂を分散させ、カーボンブラックとフェノール樹脂とフッ化ビニリデン・テトラフルオロエチレン・ヘキサフルオロプロピレン共重合物の固形質量比が40:10:50で、固形分濃度が10mass%の第1紡糸溶液を調製した。
【0063】
<第2紡糸溶液の調製>
カーボンブラックとフェノール樹脂とフッ化ビニリデン・テトラフルオロエチレン・ヘキサフルオロプロピレン共重合物の固形質量比を40:20:40としたこと以外は第1紡糸溶液と同様にして、固形分濃度が10mass%の第2紡糸溶液を調製した。
【0064】
<第3紡糸溶液の調製>
カーボンブラックとフェノール樹脂とフッ化ビニリデン・テトラフルオロエチレン・ヘキサフルオロプロピレン共重合物の固形質量比を40:30:30としたこと以外は第1紡糸溶液と同様にして、固形分濃度が10mass%の第3紡糸溶液を調製した。
【0065】
<第4紡糸溶液の調製>
カーボンブラックとフェノール樹脂とフッ化ビニリデン・テトラフルオロエチレン・ヘキサフルオロプロピレン共重合物の固形質量比を50:10:40としたこと以外は第1紡糸溶液と同様にして、固形分濃度が10mass%の第4紡糸溶液を調整した。
【0066】
<第5紡糸溶液の調製>
カーボンブラックとフェノール樹脂とフッ化ビニリデン・テトラフルオロエチレン・ヘキサフルオロプロピレン共重合物の固形質量比を50:20:30としたこと以外は第1紡糸溶液と同様にして、固形分濃度が10mass%の第5紡糸溶液を調製した。
【0067】
<第6紡糸溶液の調製>
カーボンブラックとフェノール樹脂とフッ化ビニリデン・テトラフルオロエチレン・ヘキサフルオロプロピレン共重合物の固形質量比を60:10:30としたこと以外は第1紡糸溶液と同様にして、固形分濃度が10mass%の第6紡糸溶液を調製した。
【0068】
<第7紡糸溶液の調製>
フェノール樹脂を加えなかったこと以外は第1紡糸溶液と同様にして、カーボンブラックとフッ化ビニリデン・テトラフルオロエチレン・ヘキサフルオロプロピレン共重合物の固形質量比が40:60で、固形分濃度が10mass%の第7紡糸溶液を調製した。
【0069】
<第8紡糸溶液の調製>
カーボンブラックとフッ化ビニリデン・テトラフルオロエチレン・ヘキサフルオロプロピレン共重合物の比率を変えたこと以外は、第7紡糸溶液と同様にして、カーボンブラックとフッ化ビニリデン・テトラフルオロエチレン・ヘキサフルオロプロピレン共重合物の固形質量比が60:40で、固形分濃度が10mass%の第8紡糸溶液を調製した。
【0070】
<第9紡糸溶液の調製>
フェノール樹脂に替えて、クレゾールノボラックエポキシ樹脂を主剤とし、ノボラック型フェノール樹脂を硬化剤とするエポキシ樹脂を使用し、固形分濃度を16mass%に変更したこと以外は、第3紡糸溶液と同様にして、第9紡糸溶液を調製した。
【0071】
<第10紡糸溶液の調製>
カーボンブラックに替えて、気相法炭素繊維(VGCF、登録商標、昭和電工(株)製)を使用したこと以外は、第9紡糸溶液と同様にして、第10紡糸溶液を調製した。
【0072】
第1紡糸溶液〜第8紡糸溶液の配合割合は表1に示す通りであった。なお、表中、CBはカーボンブラック、Pはフェノール樹脂、PV・TF・HFPはフッ化ビニリデン・テトラフルオロエチレン・ヘキサフルオロプロピレン共重合物を、それぞれ表す。
【0073】
【表1】
【0074】
また、第9紡糸溶液〜第10紡糸溶液の配合割合は表2に示す通りであった。なお、表中、CBはカーボンブラック、CFは気相法炭素繊維、PV・TF・HFPはフッ化ビニリデン・テトラフルオロエチレン・ヘキサフルオロプロピレン共重合物を、それぞれ表す。
【0075】
【表2】
【0076】
<実施例1>
第1紡糸溶液を静電紡糸法により紡糸して得た導電性繊維を、対向電極であるステンレスドラム上に、直接、集積して、連続した導電性繊維のみからなる繊維ウエブを作製した。この繊維ウエブを温度140℃で1時間熱処理し、フェノール樹脂を硬化させ、電極基材(目付36g/m
2、厚さ160μm、空隙率87%、平均繊維径:830nm、電気抵抗:33mΩ・cm
2)を作製した。この導電性繊維を構成するカーボンブラックの一部は導電性繊維内部に存在し、一部は繊維表面から露出した状態にあり、繊維同士は集積時に結合した状態にあった。なお、静電紡糸条件は次の通りとした。
【0077】
電極:金属性ノズル(内径:0.33mm)とステンレスドラム
吐出量:2g/時間
ノズル先端とステンレスドラムとの距離:10cm
印加電圧:15kV
温度/湿度:25℃/30%RH
【0078】
<実施例2>
第2紡糸溶液を用いたこと以外は実施例1と同様に実施し、電極基材(目付34g/m
2、厚さ180μm、空隙率89%、平均繊維径:360nm、電気抵抗:39mΩ・cm
2)を作製した。この導電性繊維を構成するカーボンブラックの一部は導電性繊維内部に存在し、一部は繊維表面から露出した状態にあり、繊維同士は集積時に結合した状態にあった。
【0079】
<実施例3>
第3紡糸溶液を用いたこと以外は実施例1と同様に実施し、電極基材(目付37g/m
2、厚さ200μm、空隙率89%、平均繊維径:270nm、電気抵抗:44mΩ・cm
2)を作製した。この導電性繊維を構成するカーボンブラックの一部は導電性繊維内部に存在し、一部は繊維表面から露出した状態にあり、繊維同士は集積時に結合した状態にあった。
【0080】
<実施例4>
第4紡糸溶液を用いたこと以外は実施例1と同様に実施し、電極基材(目付18g/m
2、厚さ100μm、空隙率90%、平均繊維径:550nm、電気抵抗:26mΩ・cm
2)を作製した。この導電性繊維を構成するカーボンブラックの一部は導電性繊維内部に存在し、一部は繊維表面から露出した状態にあり、繊維同士は集積時に結合した状態にあった。
【0081】
<実施例5>
第5紡糸溶液を用いたこと以外は実施例1と同様に実施し、電極基材(目付17g/m
2、厚さ77μm、空隙率87%、平均繊維径:320nm、電気抵抗:30mΩ・cm
2)を作製した。この導電性繊維を構成するカーボンブラックの一部は導電性繊維内部に存在し、一部は繊維表面から露出した状態にあり、繊維同士は集積時に結合した状態にあった。
【0082】
<実施例6>
第6紡糸溶液を用いたこと以外は実施例1と同様に実施し、電極基材(目付20g/m
2、厚さ100μm、空隙率88%、平均繊維径:720nm、電気抵抗:21mΩ・cm
2)を作製した。この導電性繊維を構成するカーボンブラックの一部は導電性繊維内部に存在し、一部は繊維表面から露出した状態にあり、繊維同士は集積時に結合した状態にあった。
【0083】
<実施例7>
第9紡糸溶液を用いたこと以外は実施例1と同様に実施し、電極基材(目付90g/m
2、厚さ185μm、空隙率70%、平均繊維径:620nm、電気抵抗:45mΩ・cm
2)を作製した。この導電性繊維を構成するカーボンブラックの一部は導電性繊維内部に存在し、一部は繊維表面から露出した状態にあり、繊維同士は集積時に結合した状態にあった。
【0084】
<実施例8>
第10紡糸溶液を用いたこと以外は実施例1と同様に実施し、電極基材(目付42g/m
2、厚さ150μm、空隙率82%、平均繊維径:720nm、電気抵抗:40mΩ・cm
2)を作製した。この導電性繊維を構成する気相法炭素繊維の一部は導電性繊維内部に存在し、一部は繊維表面から露出した状態にあり、繊維同士は集積時に結合した状態にあった。
【0085】
<比較例1>
熱処理を行わなかったこと以外は実施例1と同様に実施し、電極基材(目付22g/m
2、厚さ100μm、空隙率88%、平均繊維径:700nm、電気抵抗:35mΩ・cm
2)を作製した。この導電性繊維を構成するカーボンブラックの一部は導電性繊維内部に存在し、一部は繊維表面から露出した状態にあり、繊維同士は集積時に結合した状態にあった。
【0086】
<比較例2>
第7紡糸溶液を用いたこと以外は比較例1と同様に実施し、電極基材(目付18g/m
2、厚さ90μm、空隙率90%、平均繊維径:900nm、電気抵抗:43mΩ・cm
2)を作製した。この導電性繊維を構成するカーボンブラックの一部は導電性繊維内部に存在し、一部は繊維表面から露出した状態にあり、繊維同士は集積時に結合した状態にあった。
【0087】
<比較例3>
比較例2と同様に実施し、電極基材(目付65g/m
2、厚さ180μm、空隙率80%、平均繊維径:680nm、電気抵抗:39mΩ・cm
2)を作製した。この導電性繊維を構成するカーボンブラックの一部は導電性繊維内部に存在し、一部は繊維表面から露出した状態にあり、繊維同士は集積時に結合した状態にあった。
【0088】
<比較例4>
第8紡糸溶液を用いたこと以外は比較例2と同様に実施し、電極基材(目付21g/m
2、厚さ120μm、空隙率87%、平均繊維径:880nm、電気抵抗:25mΩ・cm
2)を作製した。この導電性繊維を構成するカーボンブラックの一部は導電性繊維内部に存在し、一部は繊維表面から露出した状態にあり、繊維同士は集積時に結合した状態にあった。
【0089】
<物性評価>
実施例1〜8及び比較例1〜4の電極基材に関して、前述の方法により、破断強度、比引張り強度、見掛ヤング率及び比見掛ヤング率を、それぞれ計測した。これらの結果は表3に示す通りであった。なお、表中、Mは目付(単位:g/m
2)、Tは厚さ(単位:μm)、ADは見掛密度(単位:g/cm
3)、RSは破断強度(単位:MPa)、SRSは比引張り強度[単位:MPa/(g/cm
3)]、AYは見掛ヤング率(単位:MPa)、SAYは比見掛ヤング率[単位:MPa/(g/cm
3)]を、それぞれ表す。
【0090】
【表3】
【0091】
表3から、本発明の実施例1〜実施例8の電極基材は、比較例2〜4の従来の有機樹脂と導電性粒子を含有する導電性繊維を含有する不織布からなる電極基材よりも比見掛ヤング率が高く、剛性があるため、固体高分子膜の膨潤及び収縮の抑制効果を期待できるものであった。
【0092】
また、実施例4〜6と比較例4の電極基材の比較から、導電性粒子量(カーボンブラック量)が50mass%以上と多量であっても、高い比見掛ヤング率であることができるため、導電性と、固体高分子膜の膨潤及び収縮の抑制効果を両立できるものであることがわかった。