特許第6251749号(P6251749)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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特許6251749置換されていても良いフェニルおよびピリジルピロリジン類の製造方法
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6251749
(24)【登録日】2017年12月1日
(45)【発行日】2017年12月20日
(54)【発明の名称】置換されていても良いフェニルおよびピリジルピロリジン類の製造方法
(51)【国際特許分類】
   C07D 207/08 20060101AFI20171211BHJP
   C07C 321/28 20060101ALI20171211BHJP
   C07C 317/14 20060101ALI20171211BHJP
   C07C 317/10 20060101ALI20171211BHJP
   C07C 321/20 20060101ALI20171211BHJP
   C07F 7/10 20060101ALI20171211BHJP
【FI】
   C07D207/08CSP
   C07C321/28
   C07C317/14
   C07C317/10
   C07C321/20
   C07F7/10 C
【請求項の数】9
【全頁数】43
(21)【出願番号】特願2015-533567(P2015-533567)
(86)(22)【出願日】2013年9月25日
(65)【公表番号】特表2015-535835(P2015-535835A)
(43)【公表日】2015年12月17日
(86)【国際出願番号】EP2013069919
(87)【国際公開番号】WO2014048958
(87)【国際公開日】20140403
【審査請求日】2016年9月20日
(31)【優先権主張番号】12186243.7
(32)【優先日】2012年9月27日
(33)【優先権主張国】EP
(73)【特許権者】
【識別番号】507203353
【氏名又は名称】バイエル・クロップサイエンス・アクチェンゲゼルシャフト
(74)【代理人】
【識別番号】100114188
【弁理士】
【氏名又は名称】小野 誠
(74)【代理人】
【識別番号】100119253
【弁理士】
【氏名又は名称】金山 賢教
(74)【代理人】
【識別番号】100124855
【弁理士】
【氏名又は名称】坪倉 道明
(74)【代理人】
【識別番号】100129713
【弁理士】
【氏名又は名称】重森 一輝
(74)【代理人】
【識別番号】100137213
【弁理士】
【氏名又は名称】安藤 健司
(74)【代理人】
【識別番号】100146318
【弁理士】
【氏名又は名称】岩瀬 吉和
(74)【代理人】
【識別番号】100127812
【弁理士】
【氏名又は名称】城山 康文
(72)【発明者】
【氏名】ミユールタウ,フリードリツヒ・アウグスト
(72)【発明者】
【氏名】フォード,マーク・ジエイムズ
【審査官】 早乙女 智美
(56)【参考文献】
【文献】 特開2008−266230(JP,A)
【文献】 特開2010−116389(JP,A)
【文献】 特開2008−110971(JP,A)
【文献】 国際公開第2010/135560(WO,A1)
【文献】 特表2000−516234(JP,A)
【文献】 YANCHANG SHEN,STEREOSPECIFIC SYNTHESIS OF TRIFLUOROMETHYLATED VINYL SULFIDES,SYNTHESIS,2005年 1月 1日,N13,P2183-2187
【文献】 NICOLAS DELLUS,AN ISOLABLE MIXED P,S-BIS (YLIDE) AS AN ASYMMETRIC CARBON ATOM SOURCE,ANGEWANDTE CHEMIE INTERNATIONAL EDITION,2010年 8月16日,V49 N38,P6798-6801
【文献】 EL FAKIH, HAMID,WITTIG-HORNER SYNTHESIS OF VINYL SULFOXIDES FROM ARYL ALKYL OR DIARYL KETONES UNDER SONICATION,JOURNAL FUER PRAKTISCHE CHEMIE,1997年,V339,P176-178
【文献】 PETERS, DIETMAR,COMPETITION BETWEEN ISOMERIZATION AND ADDITION IN THE SONICATION OF VINYL SULFONES 以下省略,JOURNAL FUER PRAKTISCHE CHEMIE,1995年,V337,P363-367
【文献】 Bonnet-Delpon, D. et al.,Trifluoromethylalkenes in Cycloaddition Reactions,Tetrahedron,1996年,52(1),pp. 59-70
【文献】 Biggs-Houck, James E. et al.,Carbon-Carbon Bond-Forming Reactions of α-Thioaryl Carbonyl Compounds for the Synthesis of Complex Heterocyclic Molecules,Journal of Organic Chemistry,2012年,77(1),pp. 160-172
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C07D
C07C
C07F
CAplus/REGISTRY/CASREACT(STN)
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
下記式(X)の化合物:
【化1】


[式中、
Zは、C−X表し、
、X、X、XおよびXは互いに独立に、水素、ハロゲン、シアノ、C−C12−アルキル、C−C12−ハロアルキル、C−C12−アルコキシおよびC−C12−ハロアルコキシからなる群から選択される。]の製造方法であって、
段階(i):下記式(II)の化合物:
【化2】


[式中、X、X、X、XおよびZは上記の意味を有する。]を、下記式(III)の化合物:
【化3】


[式中、
Tは、((C1−4)−アルキルO)P(O)またはA(Cであり;
は、クロライド、ブロミド又はヨージドであり;
Rは、C1−12−アルキル、C1−6−ハロアルキル、フェニル、またはフェニル−C1−6−アルキルであり;
mは0、1または2である。]と、適宜に溶媒の存在下に、塩基の存在下に、そしてTがA(Cである場合は、適宜に相間移動触媒または可溶化剤の存在下に、およびTが((C1−4)−アルキルO)P(O)である場合には、適宜にルイス酸の存在下に反応させて、下記式(IV)の化合物:
【化4】


[式中、X、X、X、X、R、mおよびZは上記の意味を有する。]
を得ること;
段階(ii):前記式(IV)の化合物を、
(ii−a)酸またはフルオリド塩の存在下に下記式(V)の化合物:
【化5】


[式中、
は、C1−12−アルキル、C1−6−ハロアルキル、フェニルおよびフェニル−C1−6−アルキルからなる群から選択され;
、RおよびRは互いに独立に、C1−12−アルキル、C1−6−ハロアルキル、フェニルおよびフェニル−C1−6−アルキルからなる群から選択され;
Qはアリール−C−C−アルキル、C−C−アルコキシ−(C−C)−アルキル、C−C−アルキル−(O−CHおよびC−C−アルケニルからなる群から選択され
nは、1から10である。]と;または
(ii−b)ホルムアルデヒドまたはトリオキサンおよびパラホルムアルデヒドからなる群から選択されるホルムアルデヒド相当物の存在下、および溶媒の存在下に、下記式(Va)の化合物:
【化6】
[式中、Qは上記の意味を有する。]と反応させて(その工程において、反応中に生成する水を反応混合物から除去する。)、下記式(VI)の化合物:
【化7】


[式中、X、X、X、X、R、m、QおよびZは上記の意味を有する。]を得て、それを下記式(I)の化合物:
【化8】


[式中、X、X、X、X、QおよびZは上記の意味を有する。]に変換するが、それを
(段階(iii−a))
式(VI)(mは1を表す。)の化合物を、適宜に塩基の存在下に、適切であれば溶媒の存在下に加熱して(段階(iii−a−1))、下記式(VII)の化合物:
【化9】


[式中、X、X、X、X、QおよびZは上記の意味を有する。]を得て、接触水素化に供するか、または適切な溶媒中での水素化物源を用いる還元反応(段階(iii−a−2))に供することで、または
段階(iii−b))
溶媒の存在下に、および属塩の存在下に元素状金属と式(VI)の化合物を反応させることでS(O)R基(mは2を表す。)を除去することで;または
(段階(iii−c))
溶媒および適宜に塩基たは酸存在下に接触水素化によって式(VI)の化合物からS(O)R基(mは0または1を表す。)を除去することで、そして
段階(iv)
基Qの水素による置き換えによって、式(X)の化合物を得ることで行い、
または
式(IV)の化合物を、(段階(ii−aa))酸またはフルオリド塩の存在下に式(V−1)の化合物:
【化10】


[式中、
、R、RおよびRは上記の意味を有し、
は、C−C−アルキル−(O−CHからなる群から選択され、
nは、1から10であり、または
およびQがそれらが結合している原子とともに、
【化11】


から選択される環を形成しており、
点線は式(V−1)におけるSi原子に隣接する炭素原子への結合である。]と反応させて、下記式(VIa)の化合物:
【化12】


[式中、X、X、X、X、R、mおよびZは上記の意味を有する。]を得て、
それを、
(段階(iii−aa))
適宜に塩基の存在下に、適切であれば溶媒の存在下に式(VIa)の化合物(mは1を表す。)を加熱して(段階(iii−aa−1))、
下記式(VIIa)の化合物:
【化13】


[式中、X、X、X、XおよびZは上記の意味を有する。]を得て、接触水素化に供するか、または適切な溶媒中で水素化物源を用いる還元反応に供し(段階(iii−aa−2))、式(X)の化合物に変換することを含む方法。
【請求項2】
段階(iii−c)における塩基が、トリエチルアミンまたは炭酸ナトリウムである、請求項1に記載の製造方法。
【請求項3】
段階(iii−c)における酸が、塩酸または酢酸である、請求項1に記載の製造方法。
【請求項4】
下記式(IV)の化合物。
【化14】


[式中、X、X、Z、X、Xおよびは請求項1に記載の意味を有し、およびmは0、1または2であり、ただし、X、X、XおよびXのうち1つは水素ではない。
【請求項5】
下記式E−(IV)の化合物。
【化15】


[式中、X、X、Z、X、Xおよびは請求項1に記載の意味を有し、およびmは0、1または2であり、ただし、X、X、XおよびXのうち1つは水素ではない。
【請求項6】
下記式Z−(IV)の化合物。
【化16】


[式中、X、X、Z、X、Xおよびは請求項1に記載の意味を有し、およびmは0、1または2であり、ただし、X、X、XおよびXのうち1つは水素ではない。
【請求項7】
下記式(V−1)の化合物。
【化17】


[式中、R、R、R、RおよびQ請求項1に記載の意味を有する。]
【請求項8】
下記式の化合物。
【化18】


[式中、R、RおよびR請求項1に記載の意味を有する。]
【請求項9】
下記式の化合物。
【化19】


[式中、R、RおよびR請求項1に記載の意味を有する。]
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ある種の生理活性化合物の製造における有用な中間体である置換されていても良いアリールおよびピリジルピロリジン類の製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
ある種のアリールおよびヘテロアリールピロリジン類が、農業分野および園芸などの非農業分野で、または獣医学の分野で見られる昆虫、ダニ、蠕虫および線虫などの有害病害生物と戦う上で有用であることが知られている(WO2008/128711、WO2010/124845、WO2010/043315、WO2011/080211を参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】WO2008/128711
【特許文献2】WO2010/124845
【特許文献3】WO2010/043315
【特許文献4】WO2011/080211
【発明の概要】
【0004】
本発明は、下記式(X)の化合物の製造方法に関するものである。
【化1】
【0005】
式中、Z、X、X、XおよびXならびにQは本明細書で定義の通りである。
【0006】
本発明による方法は、次の段階:
段階(i):下記式(II)のトリフルオロアセトフェノン類:
【化2】
【0007】
を、下記式(III)の化合物:
【化3】
【0008】
と、適宜に溶媒の存在下に、塩基(例:カリウムtert−ブトキシド)の存在下に、そして適宜に添加剤の存在下に反応させて、式E−(IV)およびZ−(IV)の両方の異性体を含む式(IV)の化合物:
【化4】
【0009】
を得ること;
段階(ii):前記式(IV)、E−(IV)、またはZ−(IV)の化合物を、
(ii−a)酸(例:CF−COH)またはフルオリド塩の存在下に下記式(V)の化合物:
【化5】
【0010】
と;または
(ii−b)ホルムアルデヒドまたはホルムアルデヒド相当物(例:トリオキサン、パラホルムアルデヒド)の存在下、および溶媒の存在下に、下記式(Va)の化合物:
【化6】
【0011】
と反応させて(その工程において、反応中に生成する水を反応混合物から除去する(例えば、蒸留によって共沸混合物(トルエンおよび水など)を連続的に除去することで(特にはディーン−スターク装置を使用))、下記式(VI)の化合物:
【化7】
【0012】
を得て、それを下記式(I)の化合物:
【化8】
【0013】
に変換すること、
(段階(iii−a))によって、
式(VI)(mは1を表す。)の化合物を、適宜に塩基(例:トリエチルアミンまたは炭酸ナトリウム)の存在下に、適切であれば溶媒(例:トルエン)の存在下に加熱して(段階(iii−a−1))、下記式(VII)の化合物:
【化9】
【0014】
を得て、接触水素化(例えば、メタノール中の白金/活性炭の存在下におよびギ酸の存在下に水素ガスを使用)に供するか、または適切な溶媒(例:テトラヒドロフラン)中での水素化物源(例:水素化ホウ素ナトリウム)を用いる還元反応(段階(iii−a−2))に供すること、または
段階(iii−b))によって、
溶媒の存在下に、および好ましくは金属塩の存在下に元素状金属と式(VI)の化合物を反応させることでS(O)R基(mは2を表す。)を除去すること;または
(段階(iii−c))によって、
溶媒および適宜に塩基(例:トリエチルアミンまたは炭酸ナトリウム)または酸(例:塩酸、酢酸)の存在下に接触水素化によって式(VI)の化合物からS(O)R基(mは0または1を表す。)を除去すること、および
段階(iv)
基Qの水素による置き換えによって、式(X)の化合物を得ること、
または
式E−(IV)およびZ−(IV)の両方の異性体を含む式(IV)の化合物を、(段階(ii−aa))酸(例:CF−COH)またはフルオリド塩の存在下に式(V−1)の化合物:
【化10】
【0015】
と反応させて、下記式(VIa)の化合物:
【化11】
【0016】
を得て、
(段階(iii−aa))によって、
適宜に塩基(例:トリエチルアミンまたは炭酸ナトリウム)の存在下に、適切であれば溶媒(例:トルエン)の存在下に式(VIa)の化合物(mは1を表す。)を加熱して(段階(iii−aa−1))、
下記式(VIIa)の化合物:
【化12】
【0017】
を得て、接触水素化(例えば、メタノール中白金/活性炭の存在下およびギ酸の存在下に水素ガスを用いて)に供するか、または適切な溶媒(例:テトラヒドロフラン)中で水素化物源(例:水素化ホウ素ナトリウム)を用いる還元反応に供し(段階(iii−aa−2))、式(X)の化合物に変換することを含む。
【発明を実施するための形態】
【0018】
式(I)、(II)、(III)、(IV)、(E−IV)、(Z−IV)、(V)、(V−1)、(Va)、(VI)、(VIa)(VII)、(VIIa)および(X)において、置換基または化学基は下記のように定義される。
【0019】
Zは、C−Xまたは窒素原子を表し;好ましくはZはC−Xであり;
、X、X、XおよびXは互いに独立に、水素、ハロゲン(フッ素、塩素、臭素、ヨウ素)、シアノ、C−C12−アルキル、C−C12−ハロアルキル、C−C12−アルコキシまたはC−C12−ハロアルコキシであり;
好ましくはX、X、X、XおよびXは互いに独立に、水素、フッ素、塩素、臭素、ヨウ素、C−C−アルキル、C−C−ハロアルキル、C−C−アルコキシまたはC−C−ハロアルコキシであり;
より好ましくはX、X、X、XおよびXは互いに独立に、水素、フッ素、塩素、臭素、C−C−アルキル(メチル、エチル、i−プロピル、n−プロピル、n−ブチル、i−ブチル、t−ブチル)、C−C−ハロアルキル(特に、CFH、CF、CHCF、CHCHF)、C−C−アルコキシ(メトキシ、エトキシ、i−プロポキシ)またはC−C−ハロアルコキシ(特に、OCFH、OCF)であり;最も好ましくはX、X、X、XおよびXは互いに独立に、水素、フッ素、塩素、トリフルオロメチルまたはメトキシであり;
は、C1−12−アルキル、C1−6−ハロアルキル、フェニル、またはフェニル−C1−6−アルキルからなる群から選択され;好ましくはRはメチル、エチル、フェニルおよびベンジルであり;
、RおよびRは互いに独立に、C1−12−アルキル、C1−6−ハロアルキル、フェニル、またはフェニル−C1−6−アルキルからなる群から選択され;好ましくはRはメチル、エチル、フェニルおよびベンジルであり;
Qは、アリール−C−C−アルキル、C−C−アルコキシ−(C−C)−アルキル、C−C−アルキル−(O−CHおよびC−C−アルケニルからなる群から選択され;好ましくはQは、ベンジル、C−C−アルコキシ−(C−C)−アルキルおよびC−C−アルケニルからなる群から選択され;より好ましくはQは、ベンジル、メトキシメチルおよびアリルからなる群から選択され;
は、C−C−アルキル−(O−CHからなる群から選択され、または
およびQがそれらが結合している原子とともに、
【化13】
【0020】
から選択される環を形成しており、
式中の点線は、式(V−1)におけるSi原子に隣接する炭素原子への結合であり;
Tはアニオン安定化基であり;好ましくはTは((C)−アルキルO)P(O)、A(C、((C)−アルキル)Siであり;より好ましくはTは(EtO)P(O)、A(C、または(CHSiであり;
はクロライド、ブロミドまたはヨージドであり;
mは0、1または2であり;
nは1から10であり;好ましくはnは1から3であり;より好ましくはnは1であり;
Rは、C1−12−アルキル、C1−6−ハロアルキル、フェニルまたはフェニル−C1−6−アルキルであり;好ましくはRはメチル、エチル、フェニルおよびベンジルである。
【0021】
式(I)または(X)の化合物は、例えばWO2012/35011A1、US2012/129854A1、WO2011/80211A1、WO2010/43315A1およびWO2008/128711A1から公知の生理活性化合物を製造する上での中間体として用いることができる。
【0022】
本発明はさらに、段階(i)とそれに続く下記の段階(i−a)、適宜に下記の段階(i−b)とそれに続く段階(ii)および(iii−a)または(iii−b)および適宜に段階(iv)を含む実施形態[A]に関するものである。
【0023】
段階(i−a):下記式(IVa)の化合物:
【化14】
【0024】
を、適宜にキラル触媒であることができる触媒の存在下に酸化剤(例:酢酸またはアセトニトリルの存在下に過酸化水素)と反応させて、下記式(IVb)および/または(IVc)の化合物を得る。
【化15】
【0025】
本発明はさらに、段階(i)とそれに続く下記の段階(i−b)、それに続く段階(ii)および(iii−a)または(iii−b)および適宜に段階(iv)を含む実施形態[B]に関するものでもある。
【0026】
段階(i−b):下記式(IVb)の化合物:
【化16】
【0027】
を、段階(i−a)の酸化剤と反応させて、下記式(IVc)の化合物を得る。
【化17】
【0028】
別の実施形態[C]では、段階(i)で使用される式(III)の化合物は、下記式(IIIa)のいわゆる「ウィティッヒ塩」である。
【化18】
【0029】
式中、
Phはフェニルを表し、
Rおよびmは上記で定義の意味を有し、
Aは、クロライド、ブロミドまたはヨージドを表す。
【0030】
本実施形態[C]は確かに、実施形態[A]または[B]と組み合わせることができる。
【0031】
別の実施形態[D]において、段階(i)で用いられる式(III)の化合物は、下記式(IIIb)のリン酸エステルである。
【化19】
【0032】
式中、
mおよびRは上記の意味を有し、両方のR′が互いに独立にアルキル、フェニルまたはベンジルを表す。
【0033】
実施形態[D]は確かに、実施形態[A]または[B]と組み合わせることができる。
【0034】
別の好ましい実施形態[E]は、ワンポット反応での段階(iii−c)および(iv)の組み合わせである。これは、特にQが置換されていても良いベンジル基である場合に接触水素化によって行うことができる。
【0035】
別の好ましい実施形態[F]は、ワンポット反応での段階(iii−a−2)および(iv)の組み合わせである。これは、特にQが置換されていても良いベンジル基である場合に接触水素化によって行うことができる。
【0036】
本発明の別の態様において、式(I)および(X)の化合物の立体選択的合成経路が提供される。
【0037】
選択的に光学異性体には、特には下記式(I):
【化20】
【0038】
[式中、X、X、X、X、ZおよびQは上記の意味を有する。]の光学異性体および
式(E−IVb)の化合物:
【化21】
【0039】
[式中、X、X、X、X、RおよびZは上記の意味を有する。]を、段階(ii)で用いて、下記式(VIb)の化合物:
【化22】
【0040】
(式中、X、X、X、X、R、QおよびZは上記の意味を有する。)を得る。
【0041】
驚くべきことに、式(IVb)の化合物の立体化学情報が、得られた式(VIb)の化合物にほぼ十分に伝えられることが認められた。所望の立体化学形態での式(VI)の化合物は、少なくとも70%の光学純度で得ることができる。従って、本発明による方法は、下記の式中の円内に描かれた立体化学を有する化合物の立体選択的合成において特に有用である。
【化23】
【0042】
本発明による立体選択的方法を反応図式1に描いている。
【0043】
反応図式1
【化24】
【0044】
段階(iv)による反応条件を適用することで、式(I)の化合物の立体化学を保存することにより、式(I)の化合物を式(X)の化合物に変換することができる。
【0045】
式(II)のトリフルオロアセトフェノンは市販されているか、当業界で公知の方法によって製造することができる(WO2010/86820A1;US6096926A1;WO2003/99805A1参照)。
【0046】
式(III)の化合物は市販されているか、当業界で公知の方法によって製造することができる(式(IIIa)の化合物については、US4,173,463B;Chemische Berichte 1983, 116, 1955−1962参照;式(IIIb)の化合物については、WO2010/99379A1;US2006/241057A1;Synthesis 1990, 10, 937−938;US4,092,349を参照)。
【0047】
段階(i)、(ii)、(iii)および(iv)による反応は、減圧下(1バール以下)、真空下(0.4バール以下)、高圧下(1バールより上)または常圧下(すなわち、ほぼ1バール)に行うことができる。その反応を常圧下で行うことが好ましい。接触水素化は好ましくは、常圧下または高圧下に行う。
【0048】
段階(i)による反応は、溶媒の非存在下または存在下に行うことができる。溶媒の存在下に段階(i)による反応を実施することが好ましい。好適な溶媒には、フッ素または塩素によって置換されていても良い脂肪族および芳香族炭化水素類(例:n−ヘキサン、ベンゼン、トルエン、キシレン)(例:メチレンクロライド、ジクロロメタン、CCl、フルオロベンゼン、クロロベンゼンまたはジクロロベンゼン);エーテル類(例:ジエチルエーテル、ジフェニルエーテル、メチル−tert−ブチルエーテル、イソプロピルエチルエーテル、ジオキサン、ジメチルグリコール、THFまたはメチルテトラヒドロフラン);ニトリル類(例:メチルニトリル(アセトニトリル、ブチルニトリルまたはフェニルニトリル);およびアルコール類(例:エタノールまたはイソプロパノール)などがある。
【0049】
式(IIIa)のウィティッヒ塩の反応については(実施形態[C]も参照)、好ましい溶媒はベンゼン、トルエンおよびキシレンである。式(IIIb)のリン酸エステルの反応については(実施形態[D]も参照)、好ましい溶媒はメチルニトリル、ブチルニトリル、テトラヒドロフラン(THF)およびメチルテトラヒドロフランである。
【0050】
式(IIIa)のウィティッヒ塩を用いる段階(i)による反応(実施形態[C]も参照)は、塩基の存在下におよび適宜に相間移動触媒または可溶化剤の存在下に行う。式(IIIa)のウィティッヒ塩を用いる段階(i)で使用可能な塩基の例には。アルカリ金属塩基(例:水素化リチウム、水素化ナトリウム、水素化カリウム、ブチルリチウム、tert−ブチルリチウム、トリメチルシリルリチウム、リチウムヘキサメチルジシラジド、炭酸ナトリウム、炭酸カリウム、炭酸セシウム、リン酸三カリウム、酢酸ナトリウム、酢酸カリウム、ナトリウムメトキシド、ナトリウムエトキシド、ナトリウム−tert−ブトキシドおよびカリウム−tert−ブトキシド)、有機塩基(例:トリエチルアミン、ジイソプロピルエチルアミン、トリブチルアミン、N−メチルモルホリン、N,N−ジメチルアニリン、N,N−ジエチルアニリン、4−tert−ブチル−N,N−ジメチルアニリン、ピリジン、ピコリン、ルチジン、ジアザビシクロオクタン(DABCO)、ジアザビシクロノネン(DBN)、ジアザビシクロウンデセン(DBU)およびイミダゾール)などがある。好ましい塩基は、ナトリウムtert−ブトキシド、カリウムtert−ブトキシド、炭酸ナトリウムおよび炭酸カリウムである。
【0051】
式(IIIa)のウィティッヒ塩を用いて段階(i)で用いることができる相間移動触媒または可溶化剤の例には、四級アンモニウム塩類(例:テトラメチルアンモニウムクロライド、テトラブチルアンモニウムクロライド、テトラブチルアンモニウムブロミド)およびポリエーテル類(例:18−クラウン−6、ポリエチレングリコール)などがある。好ましい相間移動触媒または可溶化剤は、ポリエチレングリコールである。
【0052】
式(IIIb)のリン酸エステルを用いる段階(i)の反応は、塩基の存在下におよび適宜にルイス酸の存在下に行う。リン酸エステル(IIIb)を用いる段階(i)で用いることができる塩基の例には、アルカリ金属塩基(例:水素化リチウム、水素化ナトリウム、水素化カリウム、ブチルリチウム、tert−ブチルリチウム、トリメチルシリルリチウム、リチウムヘキサメチルジシラジド、炭酸ナトリウム、炭酸カリウム、炭酸セシウム、リン酸三カリウム、酢酸ナトリウム、酢酸カリウム、ナトリウムメトキシド、ナトリウムエトキシド、ナトリウム−tert−ブトキシドおよびカリウム−tert−ブトキシド)、有機塩基(例:トリエチルアミン、ジイソプロピルエチルアミン、トリブチルアミン、N−メチルモルホリン、N,N−ジメチルアニリン、N,N−ジエチルアニリン、4−tert−ブチル−N,N−ジメチルアニリン、ピリジン、ピコリン、ルチジン、ジアザビシクロオクタン(DABCO)、ジアザビシクロノネン(DBN)、ジアザビシクロウンデセン(DBU)およびイミダゾール)などがある。好ましい塩基は、ルイス酸を用いずに使用する場合にはナトリウム−tert−ブトキシドおよびカリウム−tert−ブトキシドであり、ルイス酸を用いて使用する場合にはトリエチルアミン、ジイソプロピルエチルアミンおよびトリブチルアミンである。式(IIIb)のリン酸エステルを用いる段階(i)で用いることができるルイス酸の例には、アルカリ金属ハライド(例:塩化リチウム、臭化リチウム、塩化カリウム)、アルカリ土類金属ハライド(例:マグネシウムクロライド、臭化マグネシウム、塩化カルシウム)などがある。好ましいルイス酸は、塩化リチウム、臭化リチウムおよび塩化マグネシウムである。
【0053】
段階(i−a)ならびに段階(i−b)は、US2011/0015405A1に開示の手順を利用することで実施することができる。この文書は、参照によって本明細書に組み込まれる。
【0054】
好適な酸化剤は当業界で公知であり、硫黄化合物を相当するスルホキシドおよび/またはスルホン化合物に酸化することができるものである。段階(i−a)ならびに段階(i−b)で用いることができる好適な酸化剤は、例えば、過酸化水素などの無機過酸化物、または有機過酸化物、例えばC−C−アルキルヒドロペルオキシド類およびアリール−(C−C)−アルキルヒドロペルオキシド類である。さらなる好適な酸化剤は、過ヨウ素酸ナトリウムまたは過ホウ酸ナトリウムである。好ましい酸化剤は過酸化水素である。酸化剤の式(IVa)または(IVb)の化合物に対するモル比は、後者を段階(i−b)で原料として用いる場合、0.9:1から4:1、好ましくは1.0:1から2.5:1の範囲である。
【0055】
好適なキラル触媒はキラル金属−配位子錯体であり、その金属は遷移金属誘導体であり、配位子は下記式(C−1)または(C−2)のキラル化合物である(下記式において、キラル炭素原子には星印()でマークを付けた。)。
【化25】
【0056】
式中、
C1およびRC2は互いから独立に、水素、(C−C)−アルキル、(C−C)−アルキルフェニル、フェニル、ハロゲン、シアノ、ニトロ、シアノ−(C−C)−アルキル、ヒドロキシ−(C−C)−アルキル、(C−C)−アルコキシカルボニル−(C−C)−アルキル、(C−C)−アルコキシ−(C−C)アルキルからなる群から選択され、
C3は、(C−C)−アルキル、ハロゲン−、シアノ−、ニトロ−、アミノ−、ヒドロキシル−またはフェニル−置換された(C−C)−アルキル、カルボキシル、カルボニル−(C−C)−アルキル、(C−C)−アルコキシカルボニル−(C−C)−アルキル、(C−C)−アルコキシ−(C−C)−アルキル、(C−C)−アルコキシ、ジ−(C−C)−アルコキシ−(C−C)−アルキルからなる群から選択され、
C4は水素、(C−C)−アルキル、(C−C)−アルキルフェニル、フェニル、フェニル−(C−C)−アルキルからなる群から、好ましくはtert−ブチル、イソ−プロピル、ベンジル、フェニルからなる群から選択され;
C5は、水素、(C−C)−アルキル、(C−C)−アルキルフェニル、フェニル、ハロゲン、シアノ、ニトロ、シアノ−(C−C)−アルキル、ヒドロキシ−(C−C)−アルキル、(C−C)−アルコキシカルボニル−(C−C)−アルキル、(C−C)−アルコキシ−(C−C)−アルキルからなる群から選択され、
C6およびRC7は互いから独立に水素、(C−C)−アルキル、フェニルからなる群から選択され、またはRC6およびRC7が、例えばブタン−1,4−ジイルまたはメチレン(C−C)−アルキルアミノメチレン単位からなる架橋を形成していることができる。
【0057】
概して、キラル配位子は、例えば遷移金属誘導体と反応することができるキラル化合物である。そのような化合物は好ましくは、キラルアルコールから選択される。好ましいキラル配位子には、式(C−1)および(C−2)のシフ塩基などがある。これらのシフ塩基は、キラル金属−配位子錯体を形成することができる。
【0058】
遷移金属誘導体は好ましくは、バナジウム誘導体、モリブデン誘導体、ジルコニウム誘導体、鉄誘導体、マンガン誘導体およびチタン誘導体であり、非常に好ましくはバナジウム誘導体である。これらの誘導体は、例えば遷移金属(IV)ハライド、遷移金属(IV)アルコキシドまたは遷移金属(IV)アセチルアセトネート類の形態で用いることができる。
【0059】
キラル遷移金属錯体は、遷移金属誘導体およびキラル配位子を、別個に、または式(IVa)または(IVb)の化合物の存在下に(後者を原料として用いる場合)反応させることで得られる。
【0060】
キラル金属−配位子錯体の量は、式(IVa)の化合物の量に対して(後者を原料として使用される場合)0.001から10mol%、好ましくは0.1から5mol%、最も好ましくは1から4mol%の範囲である。より高い量のキラル金属−配位子錯体を用いることができるが、通常は経済的に実行不可能である。
【0061】
段階(i−a)ならびに段階(i−b)は、溶媒の存在下に行うことができる。好適な溶媒にはTHF、ジオキサン、ジエチルエーテル、ジグライム、メチルtert−ブチルエーテル(MTBE)、tert−アミルメチルエーテル(TAME)、ジメチルエーテル(DME)、2−メチル−THF、アセトニトリル、ブチロニトリル、トルエン、キシレン類、メシチレン、酢酸エチル、酢酸イソプロピル、アルコール類、例えばメタノール、エタノール、プロパノール、ブタノール、エチレングリコール、エチレンカーボネート、プロピレンカーボネート、N,N−ジメチルアセトアミド、N,N−ジメチルホルムアミド、N−メチルピロリドン、ハロ炭化水素類および芳香族炭化水素類、特別にはクロロ炭化水素類、例えばテトラクロロエチレン、テトラクロロエタン、ジクロロプロパン、メチレンクロライド、ジクロロブタン、クロロホルム、四塩化炭素、トリクロロエタン、トリクロロエチレン、ペンタクロロエタン、ジフルオロベンゼン、1,2−ジクロロエタン、クロロベンゼン、ブロモベンゼン、ジクロロベンゼン、クロロトルエン、トリクロロベンゼン;4−メトキシベンゼン、フッ素化脂肪族および芳香族、例えばトリクロロトリフルオロエタン、ベンゾトリフルオリド、4−クロロベンゾトリフルオリド、酢酸および水などがある。溶媒の混合物を用いることも可能である。
【0062】
段階(i−a)ならびに段階(i−b)は、−80℃から200℃、好ましくは0℃から140℃、より好ましくは10℃から60℃の温度で、100バール以下の圧力で、より好ましくは標準圧から40バールの圧力で行う。
【0063】
段階(i−a)ならびに段階(i−b)は、例えば下記の表で提供される反応条件下で行うことができ、表中において、VO(acac)はバナジルアセチルアセトネートを意味し、RTは室温(すなわち、ほぼ20℃)を表し、Fe(acac)は鉄(II)アセチルアセトネートを意味する。遷移金属誘導体およびキラル配位子の好ましい組み合わせ(触媒系)を下記の表に描いている。
【表1】
【0064】
段階(ia)の好ましい実施形態では、反応図式2に描いた方法に従って、適切な溶媒中、好ましくはアセトニトリル中、2,4−ジ−tert−ブチル−6−[(E)−{[(2S)−1−ヒドロキシ−3,3−ジメチルブタン−2−イル]イミノ}メチル]フェノールとともに、バナジルアセチルアセトネート(VO(acac))およびHの存在下に、式E−(IVa)の化合物を式E−(IVb)の化合物に変換する。
【0065】
反応図式2:
【化26】
【0066】
式中、X、X、X、X、ZおよびRは上記の意味を有する。
【0067】
実施形態[B]における段階(i)による反応に好ましい溶媒は、メチルニトリル、ブチルニトリル、テトラヒドロフランまたはメチルテトラヒドロフランまたはこれらの混合物である。
【0068】
段階(i−a)は、酸化剤の存在下に行う。好適な酸化剤は、例えば過酸化水素のような無機過酸化物、または有機過酸化物、例えばC−Cアルキルヒドロペルオキシドおよびアリール−(C−C)−アルキルヒドロペルオキシドである。過酸化水素水溶液(35%から50%)が好ましい。
【0069】
キラル触媒を用いずに段階(i−a)で過酸化水素を酸化剤として用いる場合、溶媒として氷酢酸を用いることが好ましい。
【0070】
式(V)の化合物は市販されているか、当業界で公知の方法によって製造することができる(US2006/128789A1、2006;US2008/234280A1、2008;US2008/9619A1、2008;WO2009/87058A1、2009)。式(Va)の化合物は市販されているか、当業界で公知の方法によって製造することができる(US5827881A1、1998;WO2006/130418A1、2006;US5071999A1、1991;WO2008/62182A1、2008;WO2009/111997A1、2009)。
【0071】
段階(ii)による反応は、溶媒の非存在下または存在下に行うことができる。段階(ii)による反応を、溶媒の存在下に行うことが好ましい。好適な溶媒には、脂肪族および芳香族炭化水素(例:n−ヘキサン、ベンゼン、トルエン、キシレン)であって、フッ素または塩素によって置換されていても良いもの(例:塩化メチレン、ジクロロメタン、CCl、フルオロベンゼン、クロロベンゼンまたはジクロロベンゼン);エーテル類(例:ジエチルエーテル、ジフェニルエーテル、メチル−tert−ブチルエーテル、イソプロピルエチルエーテル、ジオキサン、ジメチルグリコール、THFまたはメチルテトラヒドロフラン);ニトリル類(例:メチルニトリル、ブチルニトリルまたはフェニルニトリル);およびアルコール類(例:エタノールまたはイソプロパノール)などがある。式(V)の化合物の反応の場合、好ましい溶媒はベンゼン、トルエン、塩化メチレンおよびメチルニトリルである。化合物(Va)の反応の場合、好ましい溶媒はベンゼン、トルエンおよびキシレンである。
【0072】
式(V)の化合物を用いる段階(ii−a)による反応は、酸またはフルオリド塩の存在下に行う。酸の例には、カルボン酸類(例:酢酸、ギ酸)、ハロゲン化カルボン酸類(例:トリクロロ酢酸、トリフルオロ酢酸)、スルホン酸類(例:メチルスルホン酸、フェニルスルホン酸、p−トルエンスルホン酸およびカンファースルホン酸)などがある。トリフルオロ酢酸が好ましい酸である。
【0073】
式(V)の化合物を用いる段階(ii−a)で使用することができるフルオリド塩の例には、アルカリ金属フッ化物(例:フッ化リチウム、フッ化ナトリウム、フッ化セシウム)、フッ化アルキルアンモニウム類(例:フッ化テトラメチルアンモニウム、フッ化テトラエチルアンモニウムおよびフッ化テトラブチルアンモニウム)などがある。好ましいものは、フッ化テトラブチルアンモニウムおよびフッ化ナトリウムである。
【0074】
式(Va)の化合物を用いる段階(ii−b)による反応は、ホルムアルデヒドまたはホルムアルデヒド等価物の存在下に行う。式(Va)の化合物を用いる段階(ii−b)で用いることが可能なホルムアルデヒド等価物の例には、オリゴマー性またはポリマー性ホルムアルデヒド(例:1,3,5−トリオキサン、パラホルムアルデヒド)などがある。いずれの場合も、反応中に発生する水を除去する。反応液から水を除去する方法の例には、連続的にディーン−スターク装置を用いるトルエンおよび水の共沸蒸留がある。
【0075】
段階(iii−a−2)、段階(iii−c)および段階(iv)での接触水素化に使用される好適な触媒は、周期表の8から10族の1以上の金属を含み、特には鉄、ルテニウム、オスミウム、コバルト、ロジウム、イリジウム、ニッケル、パラジウムおよび白金から選択される1以上の金属を含む。触媒活性に加えて、好適な触媒は、選択された反応条件下で不活性である。その金属は、いずれかの化学的形態、例えばキレートまたは合金(その場合に、合金は、例えばアルミニウムなどの他の金属を含むこともできる。)としての錯形成剤ならびに上記で挙げた金属とともに元素、コロイド、塩または酸化物の形態で存在しても良い。その金属は、担持形態で存在しても良く、すなわち支持体、好ましくは無機支持体に添加されていても良い。好適な支持体の例には、炭素(木炭または活性炭)、酸化アルミニウム、二酸化ケイ素、二酸化ジルコニウムまたは二酸化チタンがある。本発明に従って好ましい触媒は、無機支持体上に1以上の周期表の8から10族の金属を含む。特に好ましいものは、パラジウムおよび白金を含み、無機支持体(例:炭素)に加えられている触媒である。そのような触媒は、例えば白金/炭素、酸化白金/炭素およびパラジウム/炭素である。
【0076】
段階(iii−c)、段階(iii−a−2)および段階(iv)による接触水素化では、触媒は式(VI)の化合物式(VII)の化合物それぞれに基づいて約0.01から約30重量%の量で用いる。触媒は好ましくは、約0.1から約15重量%の濃度で用いる。
【0077】
接触水素化は、オートクレーブ中高圧下に(すなわち、約200バール以下)、または水素ガス雰囲気では標準圧で行うことができる。特に。高い反応温度では、高圧で行うことが有用であり得る。窒素またはアルゴンなどの不活性ガスを供給することで、(さらなる)圧上昇をもたらすことができる。本発明の水素化は、好ましくは約1から約30バールの範囲の圧で、より好ましくは約5から約25バールの範囲の圧で行う。
【0078】
溶媒(希釈剤)の存在下に接触水素化を行うことが有利である。しかしながら、接触水素化は溶媒なしで行うこともできる。溶媒は有利には、工程全体を通して反応混合物を効率的に撹拌できるような量で使用される。有利には、使用される化合物(VI)または(VII)に基づいて、1から50倍量の溶媒、好ましくは2から40倍量の溶媒、より好ましくは2から30倍量の溶媒を用いる。
【0079】
本発明による段階(iii−a−2)、段階(iii−c)および段階(iv)の接触水素化を行う上で有用な溶媒には、反応条件下で不活性な全ての有機溶媒などがあり、使用される溶媒の種類は反応手順の種類によって、詳細には使用される触媒および/または水素源の種類(水素ガスの導入またはイン・サイツの発生)によって決まる。溶媒の混合物も使用可能である。
【0080】
段階(iii−a−2)、段階(iii−c)および段階(iv)の接触水素化に好適な溶媒は、ハロ炭化水素、例えばクロロ炭化水素類、例えばテトラクロロエチレン、テトラクロロエタン、ジクロロプロパン、メチレンクロライド、ジクロロブタン、クロロホルム、四塩化炭素、トリクロロエタン、トリクロロエチレン、ペンタクロロエタン、ジフルオロベンゼン、1,2−ジクロロエタン、クロロベンゼン、ブロモベンゼン、ジクロロベンゼン、クロロトルエン、トリクロロベンゼン;アルコール、例えばメタノール、エタノール、イソプロパノール、ブタノール;エーテル類、例えばエチルプロピルエーテル、メチルtert−ブチルエーテル、n−ブチルエーテル、アニソール、フェネトール、シクロヘキシルメチルエーテル、ジメチルエーテル、ジエチルエーテル、ジメチルグリコール、ジフェニルエーテル、ジプロピルエーテル、ジイソプロピルエーテル、ジ−n−ブチルエーテル、ジイソブチルエーテル、ジイソアミルエーテル、エチレングリコールジメチルエーテル、イソプロピルエチルエーテル、メチルtert−ブチルエーテル、テトラヒドロフラン、ジオキサン、ジクロロジエチルエーテルおよびエチレンオキサイドおよび/またはプロピレンオキサイドのポリエーテル類;脂肪族、脂環式または芳香族炭化水素、例えばペンタン、ヘキサン、ヘプタン、オクタン、ノナンおよびフッ素および塩素原子によって置換されていても良い工業用炭化水素、例えばメチレンクロライド、ジクロロメタン、トリクロロメタン、四塩化炭素、フルオロベンゼン、クロロベンゼンまたはジクロロベンゼン;例えば、例えば40℃から250℃の範囲の沸点を有する成分を有するホワイト・スピリット、シメン、70℃あら190℃の沸点範囲内の石油留分、シクロヘキサン、メチルシクロヘキサン、石油エーテル、リグロイン、オクタン、ベンゼン、トルエン、クロロベンゼン、ブロモベンゼン、キシレン;エステル類、酢酸メチル、酢酸エチル、酢酸ブチル、酢酸イソブチル、さらには炭酸ジメチル、炭酸ジブチルまたは炭酸エチレンである。別の溶媒は水である。
【0081】
段階(iii−a−2)、段階(iii−c)および段階(iv)による接触水素化は、酸または塩基の存在下に行っても良い。接触水素化に好適な酸は、塩酸、臭化水素酸、硫酸、リン酸などの無機酸;酢酸(acitic acid)、トリクロロ酢酸、トリフルオロ酢酸および安息香酸などの有機酸である。接触水素化に好適な塩基は、無機塩基、例えば炭酸ナトリウム、炭酸カリウムなどのアルカリ金属炭酸塩;炭酸カルシウムなどのアルカリ土類金属炭酸塩;有機塩基、例えばトリエチルアミンおよびエチルジ−イソ−プロピルアミンなどのアルキルアミン類である。
【0082】
本発明による段階(iii−a−2)、段階(iii−c)および段階(iv)による接触水素化では、使用される溶媒は好ましくは、エーテル類またはアルコール類である。
【0083】
段階(iii−a−2)、段階(iii−c)および段階(iv)による接触水素化は、広い温度範囲内で(例えば約−20℃から約100℃の範囲で)行うことができる。好ましくは、約0℃から約100℃の温度範囲内で、特には室温(すなわち、ほぼ20℃)で接触水素化を行う。
【0084】
段階(iii−b)による反応は、金属の存在下に行う。金属の例には、アルカリ金属(例:ナトリウム)、アルカリ土類金属(例:マグネシウム)および遷移金属(例:亜鉛)などがある。好ましい金属はマグネシウムである。
【0085】
本発明による段階(iii−a−2)、段階(iii−c)および段階(iv)による接触水素化では、使用される溶媒は好ましくはエーテル類またはアルコール類である。
【0086】
段階(iii−a−2)、段階(iii−c)および段階(iv)による接触水素化は、広い温度範囲内で(例えば約−20℃から約100℃の範囲で)行うことができる。好ましくは、約0℃から約100℃の範囲の温度範囲内で、特には室温(すなわち、ほぼ20℃)で接触水素化を行う。
【0087】
段階(iii−b)による反応は、金属の存在下に行う。金属の例には、アルカリ金属(例:ナトリウム)、アルカリ土類金属(例:マグネシウム)および遷移金属(例:亜鉛)などがある。好ましい金属はマグネシウムである。
【0088】
段階(iii−b)による反応は、金属塩の存在下に行う。金属の例には、アルカリ金属ハライド(例:塩化リチウム)、アルカリ土類金属ハライド(例:塩化マグネシウム)および遷移金属塩(例:塩化亜鉛)などがある。好ましい金属塩は塩化リチウムである。
【0089】
段階(iii−b)による反応は、溶媒の非存在下または存在下に行うことができる。溶媒の存在下に段階(iii−b)に従って反応を行うことが好ましい。好適な溶媒には、脂肪族および芳香族炭化水素(例:n−ヘキサン、ベンゼン、トルエン、キシレン);エーテル類(例:ジエチルエーテル、ジフェニルエーテル、メチル−tert−ブチルエーテル、イソプロピルエチルエーテル、ジオキサン、ジメチルグリコール、THFまたはメチルテトラヒドロフラン);ニトリル類(例:メチルニトリル、ブチルニトリルまたはフェニルニトリル)、有機酸類(例:酢酸)およびアルコール類(例:エタノールまたはイソプロパノール)などがある。好ましい溶媒はメタノール、エタノール、イソプロパノール、THFおよび酢酸である。
【0090】
段階(iii−a−1)による反応は、塩基の存在下に行う。好適な塩基には、アルカリ金属塩(例:炭酸ナトリウム、炭酸カリウム、炭酸セシウム、リン酸三カリウム、酢酸ナトリウム、酢酸カリウム、ナトリウムメトキシド、ナトリウムエトキシド、ナトリウム−tert−ブトキシドおよびカリウム−tert−ブトキシド)、有機塩基(例:トリエチルアミン、ジイソプロピルエチルアミン、トリブチルアミン、N−メチルモルホリン、N,N−ジメチルアニリン、N,N−ジエチルアニリン、4−tert−ブチル−N,N−ジメチルアニリン、ピリジン、ピコリン、ルチジン、ジアザビシクロオクタン(DABCO)、ジアザビシクロノネン(DBN)、ジアザビシクロウンデセン(DBU)およびイミダゾール)などがある。好ましい塩基は、炭酸ナトリウム、炭酸カリウムおよびトリエチルアミンである。
【0091】
段階(iii−a−1)による反応は、溶媒の非存在下または存在下に行うことができる。段階(iii−a−1)による反応を、溶媒の存在下に行うことが好ましい。好適な溶媒には、脂肪族および芳香族炭化水素(例:n−ヘキサン、ベンゼン、トルエン、キシレン);エーテル(例:ジエチルエーテル、ジフェニルエーテル、メチル−tert−ブチルエーテル、イソプロピルエチルエーテル、ジオキサン、ジメチルグリコール、THFまたはメチルテトラヒドロフラン);ニトリル類(例:メチルニトリル、ブチルニトリルまたはフェニルニトリル)、有機酸類(例:酢酸)およびアルコール類(例:エタノールまたはイソプロパノール)などがある。好ましい溶媒はベンゼン、トルエンおよびキシレンである。
【0092】
段階(iii−a−2)による反応では、式(VII)の化合物の二重結合を、適切な溶媒中での接触水素化によって還元する。
【0093】
あるいは、式(VII)の化合物は、段階(iii−a−2)で、水素化物源と反応させて、二重結合を還元することができる。水素化物源の例には、水素化物(例:ボラン)、水素化物錯体(例:ボランジメチルスルフィド錯体、ボランテトラヒドロフラン錯体)、混合水素化物(例:水素化リチウムアルミニウム、水素化ホウ素ナトリウム、水素化ホウ素シアノナトリウム、水素化ホウ素トリアセトキシナトリウム)およびアルキルアルミニウム水素化物(例:水素化アルミニウムジイソブチル[DIBAL])などがある。好ましい水素化物源は、水素化ホウ素ナトリウムおよびボラン錯体である。
【0094】
段階(iii−a−2)による反応は、溶媒の非存在下または存在下に行うことができる。段階(iii−a−2)による反応は、溶媒の存在下に行うことが好ましい。好適な溶媒には、例えば脂肪族および芳香族炭化水素(例:n−ヘキサン、ベンゼン、トルエン、キシレン);エーテル(例:ジエチルエーテル、ジフェニルエーテル、メチル−tert−ブチルエーテル、イソプロピルエチルエーテル、ジオキサン、ジメチルグリコール、THFまたはメチルテトラヒドロフラン);ニトリル類(例:メチルニトリル、ブチルニトリルまたはフェニルニトリル)、有機酸類(例:酢酸)およびアルコール類(例:エタノールまたはイソプロパノール)などがある。好ましい溶媒はTHF、メチルテトラヒドロフランおよびメチルニトリルである。
【0095】
Qの開裂方法(段階(iv))は文献に記載されている(例:Philip J. Kocienski, Protecting Groups, Thieme, Stuttgart, 2005;Peter G. M. Wuts und Theodora W. Greene, Greene′s Protective Groups in Organic Synthesis, John Wiley & Sons, 2006)。置換されたメチレンフェニル(ベンジル)基は、接触水素化(上記参照)によって、または化合物を1−クロロエチルカルボノクロリドエート(carbonochloridoate)で処理し、次にメタノールで処理することで(手順については、WO2008/128711A1、WO2012/35011A1を参照)除去することができる。
【0096】
以下、下記の実施例によって本発明を説明するが、本発明はそれに限定されるものではない。
【0097】
次の略称を用いる:MW=分子量、MS=質量分析、GC=ガスクロマトグラフィー、NMR=核磁気共鳴。
【0098】
下記で提供される分析データは、下記の装置を用いて収集したものである。
【0099】
NMR:Bruker Avance III(400MHz)またはBRUKER Avance III(600MHz)、300Kで測定;
MS:3100質量検出器搭載のWaters Acquity UPLC;
GC:Perkin Elmer Autosystem XL、カラム:HP5、キャリアガス:ヘリウム。
【0100】
製造例1(実施形態[C])
段階(i)−2−(3,5−ジクロロフェニル)−3,3,3−トリフルオロプロパ−1−エン−1−イルフェニルスルフィドの製造
【化27】
【0101】
トリフェニル[(フェニルスルファニル)メチル]ホスホニウムクロライド(50.0g、116mmol)および炭酸カリウム(32.2g、純度98%、233mmol)を不活性ガス雰囲気下に(アルゴン)、トルエン(1リットル)に懸濁させ、冷却して5℃とした。1−(3,5−ジクロロフェニル)−2,2,2−トリフルオロエタノン(29.5g、純度96%、116mmol)およびポリエチレングリコール(MW1500、8.76g、5.82mmol)を加え、反応混合物を5℃で5.5時間撹拌し、昇温させて室温とした後に、さらに2時間撹拌した。水(500mL)を加え、相を分離した。水相をトルエンで抽出し、合わせた有機相を水(2回)およびブラインで洗浄した。硫酸ナトリウムでの脱水、濾過および溶媒留去後、粗混合物をn−ヘプタン(250mL)で処理し、冷凍庫に終夜入れた。固体を濾過し、濾液の溶媒を留去した。この取得物を再度n−ヘプタン(100mL)に取り、冷凍庫に3日間入れておいた。濾過および溶媒留去によって、2−(3,5−ジクロロフェニル)−3,3,3−トリフルオロプロパ−1−エン−1−イルフェニルスルフィドを得た(41.6g、純度96%、収率99%;E/Z=94/6−GCによって決定)。
【0102】
H−NMR(CDCl、400MHz):δ=6.98(s、1H)、7.30−7.47ppm(m、8H);MS(EI+):m/z=347.9[M]。
【0103】
製造例1A
段階(i)−の製造[(3,3,3−トリフルオロ−2−フェニルプロパ−1−エン−1−イル)スルファニル]ベンゼン
【化28】
【0104】
2,2,2−トリフルオロ−1−フェニルエタノン(17.3mmol)を用い、製造例1に従って[(3,3,3−トリフルオロ−2−フェニルプロパ−1−エン−1−イル)スルファニル]ベンゼン(4.69g、96%純度、93%収率;E/Z=90/10−GCによって決定、割り当てせず)を合成した。
【0105】
MS(EI+):m/z=280.1[M]。
【0106】
製造例1B
段階(i)−1−メトキシ−4−[3,3,3−トリフルオロ−1−(フェニルスルファニル)プロパ−1−エン−2−イル]ベンゼンの製造
【化29】
【0107】
2,2,2−トリフルオロ−1−(4−メトキシフェニル)エタノン(14.7mmol)を用い、製造例1に従って1−メトキシ−4−[3,3,3−トリフルオロ−1−(フェニルスルファニル)プロパ−1−エン−2−イル]ベンゼン(4.69g、純度94%、収率94%;E/Z=94/6−GCによって決定、割り当てせず)を合成した。
【0108】
MS(EI+):m/z=310.1[M]。
【0109】
製造例1C
段階(i)−12−(4−クロロフェニル)−3,3,3−トリフルオロプロパ−1−エン−1−イルフェニルスルフィドの製造
【化30】
【0110】
1−(4−クロロフェニル)−2,2,2−トリフルオロエタノン(14.4mmol)を用い、製造例1に従って2−(4−クロロフェニル)−3,3,3−トリフルオロプロパ−1−エン−1−イルフェニルスルフィド(4.39g、純度91%、収率89%;E/Z=91/9−GCによって決定、割り当てせず)を合成した。
【0111】
MS(EI+):m/z=314.1[M]。
【0112】
製造例1D
段階(i)−1,2,3−トリクロロ−5−[3,3,3−トリフルオロ−1−(フェニルスルファニル)プロパ−1−エン−2−イル]ベンゼンの製造
【化31】
【0113】
1,2,3−トリクロロ−5−[3,3,3−トリフルオロ−1−(フェニルスルファニル)プロパ−1−エン−2−イル](6.71g、92%純度、94%収率;E/Z=94/6−GCによって決定、割り当てせず)を製造例1に従って合成した。を用い、2,2,2−トリフルオロ−1−(3,4,5−トリクロロフェニル)エタノン(17.1mmol)。
【0114】
MS(EI+):m/z=381.9[M]。
【0115】
製造例2
段階(i−a)−の製造2−(3,5−ジクロロフェニル)−3,3,3−トリフルオロプロパ−1−エン−1−イルフェニルスルホキシド
【化32】
【0116】
2−(3,5−ジクロロフェニル)−3,3,3−トリフルオロプロパ−1−エン−1−イルフェニルスルフィド(1.00g、94%純度、2.69mmol)を氷酢酸(5mL)に溶かし、過酸化水素(0.54mL、35%水溶液、6:19mml)を1回で加えた。反応混合物を加熱して50℃とし、その温度で3時間撹拌した。冷却後、トルエンおよび水を加え、相を分離した。水相をトルエンで抽出し、合わせた有機相を飽和重炭酸ナトリウム溶液で2回、メタ重亜硫酸ナトリウム溶液(30重量%水溶液)で1回洗浄した。硫酸ナトリウムでの脱水、濾過および留去によって、2−(3,5−ジクロロフェニル)−3,3,3−トリフルオロプロパ−1−エン−1−イルフェニルスルホキシドを得た(950mg、純度94%、収率91%、E/Z=93/7)。
【0117】
H−NMR(CDCl、400MHz):δ=7.12(m、1H)、7.26(s、2H)、7.54(m、1H)、7.58ppm(s、5H);MS(EI+):m/z=364.0[M]。
【0118】
少量成分の二重結合異性体(Z)を、プロパン−2−オールからの結晶化によって分離することができる。
【0119】
製造例2A
段階(i−a)−[(3,3,3−トリフルオロ−2−フェニルプロパ−1−エン−1−イル)スルフィニル]ベンゼンの製造
【化33】
【0120】
[(3,3,3−トリフルオロ−2−フェニルプロパ−1−エン−1−イル)スルファニル]ベンゼン(1.68mmol)を用い、製造例2に従って1[(3,3,3−トリフルオロ−2−フェニルプロパ−1−エン−1−イル)スルフィニル]ベンゼン(481mg、純度98%、収率95%;E/Z=94/6−割り当てせず)を合成した。
【0121】
MS(EI+):m/z=296.0[M]。
【0122】
製造例2B
段階(i−a)−1−メトキシ−4−[3,3,3−トリフルオロ−1−(フェニルスルフィニル)プロパ−1−エン−2−イル]ベンゼンの製造
【化34】
【0123】
1−メトキシ−4−[3,3,3−トリフルオロ−1−(フェニルスルファニル)プロパ−1−エン−2−イル]ベンゼン(1.51mmol)を用い、製造例2に従って1−メトキシ−4−[3,3,3−トリフルオロ−1−(フェニルスルフィニル)プロパ−1−エン−2−イル]ベンゼン(478mg、純度95%、収率92%;E/Z=96/4−割り当てせず)を合成した。
【0124】
MS(EI+):m/z=326.1[M]。
【0125】
製造例2C
段階(i−a)−2−(4−クロロフェニル)−3,3,3−トリフルオロプロパ−1−エン−1−イルフェニルスルホキシドの製造
【化35】
【0126】
2−(4−クロロフェニル)−3,3,3−トリフルオロプロパ−1−エン−1−イルフェニルスルフィド(1.49mmol)を用い、製造例2に従って2−(4−クロロフェニル)−3,3,3−トリフルオロプロパ−1−エン−1−イルフェニルスルホキシド(509mg、純度90%、収率93%;E/Z=95/5−割り当てせず)を合成した。
【0127】
MS(EI+):m/z=330.0[M]。
【0128】
製造例2D
段階(i−a)−1,2,3−トリクロロ−5−[3,3,3−トリフルオロ−1−(フェニルスルフィニル)プロパ−1−エン−2−イル]ベンゼンの製造
【化36】
【0129】
1,2,3−トリクロロ−5−[3,3,3−トリフルオロ−1−(フェニルスルファニル)プロパ−1−エン−2−イル](7.34mmol)を用い、製造例2に従って1,2,3−トリクロロ−5−[3,3,3−トリフルオロ−1−(フェニルスルフィニル)プロパ−1−エン−2−イル]ベンゼン(3.00g、純度94%、収率92%;E/Z=98/2−割り当てせず)を合成した。
【0130】
MS(EI+):m/z=397.9[M]。
【0131】
製造例3
段階(i)−2−(3,5−ジクロロフェニル)−3,3,3−トリフルオロプロパ−1−エン−1−イルフェニルスルホキシドの製造
【化37】
【0132】
[(フェニルスルフィニル)メチル]ホスホン酸ジエチル(5.00g、純度96%、17.4mmol)をトルエン(20mL)に溶かし、冷却して0℃とした。その溶液に、カリウムtert−ブトキシド(2.05g、18.2mmol)を1回で加えた。この溶液を45分間かけて0℃で1−(3,5−ジクロロフェニル)−2,2,2−トリフルオロエタノン(4.26g、純度99%、17.4mmol)のトルエン中溶液に加えた。反応混合物を0℃でさらに15分間撹拌し、30分間かけて昇温させて室温とした。溶液を塩酸(3.6%)に投入し、相を分離した。水相をトルエンで抽出し、合わせた有機相を水で洗浄し、硫酸ナトリウムで脱水し、溶媒を留去した。2−(3,5−ジクロロフェニル)−3,3,3−トリフルオロプロパ−1−エン−1−イルフェニルスルホキシドを得た(6.26g、純度94%、収率93%、E/Z=38/62)。
【0133】
H−NMR(CDCl、400MHz):δ=6.68(m、1H)、7.26(s、2H)、7.44(m、1H)、7.58ppm(s、5H);E−立体異性体のNMRシフトおよびMSについては、製造例2を参照する。
【0134】
製造例4
段階(i)−の製造2−(3,5−ジクロロフェニル)−3,3,3−トリフルオロプロパ−1−エン−1−イルフェニルスルホキシド
【化38】
【0135】
塩化マグネシウム(乾燥品、2.19g、23.0mmol)をアルゴン雰囲気下にフラスコに入れ、脱水アセトニトリル(38mL)を加えた。混合物を室温で5分間撹拌した。[(メチルスルフィニル)メチル]ホスホン酸ジエチル(4.75g、純度89%、19.7mmol)を加えた。10分間撹拌後、塩化マグネシウムクロライドはほぼ溶解した。トリエチルアミン(3.44mL、24.7mmol)を加え、室温で10分後に、やや黄色の溶液が得られた。次に、1−(3,5−ジクロロフェニル)−2,2,2−トリフルオロエタノン(4.10g、純98%度、16.4mmol)を15分間かけて加えたが、その際顕著な発熱挙動を示した。4時間後、メチルtert−ブチルエーテル(MTBE、40mL)および水(25mL)を加え、相を分離した。水相をMTBE(15mL)で抽出した後、合わせた有機相を水で洗浄し、硫酸ナトリウムで脱水し、濾過し、溶媒を留去した。2−(3,5−ジクロロフェニル)−3,3,3−トリフルオロプロパ−1−エン−1−イルフェニルスルホキシドを得た(5.22g、純度93%、収率82%、Z/E=75/25)。純度をさらに高めて99%を超えるようにするため、粗取得物をn−ヘプタンから結晶化させることができる。
【0136】
H−NMR(CDCl、400MHz):δ=2.73(s、3H、E−異性体)、2.82(s、3H、Z−異性体)、6.83(s、1H、Z−異性体)、7.20(m、3H、E−異性体)、7.30(m、2H、Z−異性体)、7.47(m、1H、Z−異性体)、7.50ppm(m、1H、E−異性体);MS(EI+):m/z=302.0[(M+1)]。
【0137】
製造例5
段階(i)−2−(3,5−ジクロロフェニル)−3,3,3−トリフルオロプロパ−1−エン−1−イルメチルスルホンの製造
【化39】
【0138】
塩化マグネシウム(乾燥、241mg、2.53mmol)を窒素雰囲気下にフラスコに入れ、アセトニトリル(3.5mL)を加えた。混合物を室温で5分間撹拌した。[(メチルスルホニル)メチル]ホスホン酸ジエチル(500mg、2.17mmol)を加えた。10分間撹拌後、塩化マグネシウムはほぼ溶解した。トリエチルアミン(378μL、2.72mmol)を加え、室温で10分後、やや橙赤色の溶液が得られた。次に、1−(3,5−ジクロロフェニル)−2,2,2−トリフルオロエタノン(468mg、純度94%、1.81mmol)を加えた。30分後、水(10mL)およびトルエン(10mL)を加え、相を分離した。水相をトルエン(10mL)で抽出した後、合わせた有機相を硫酸ナトリウムで脱水し、濾過し、溶媒を留去した。2−(3,5−ジクロロフェニル)−3,3,3−トリフルオロプロパ−1−エン−1−イルフェニルスルホンを得た(540g、純度>98%、収率78%、E/Z(割り当てせず)=56/44)。
【0139】
H−NMR(CDCl、400MHz):δ=2.93(s、3H、異性体A)、3.20(s、3H、異性体B)、6.82(s、1H、異性体B)、7.16(s、1H、異性体A)、7.28(m、2H、異性体A)、7.29(m、2H、異性体B)、7.50(m、1H、異性体A)、7.52ppm(m、1H、異性体B);MS(EI+):m/z=317.9[(M+1)]。
【0140】
製造例6
段階(i)−2−(3,5−ジクロロフェニル)−3,3,3−トリフルオロプロパ−1−エン−1−イルフェニルスルホンの製造
【化40】
【0141】
塩化マグネシウム(乾燥、3.16g、33.2mmol)を窒素雰囲気下にフラスコに入れ、アセトニトリル(100mL)を加えた。混合物を室温で5分間撹拌した。[(フェニルスルホニル)メチル]ホスホン酸ジエチル(10.0g、純度89%、30.4mmol)を加えた。5分間撹拌後、塩化マグネシウムはほぼ溶解した。トリエチルアミン(5.01mL、35.9mmol)を加え、室温で10分後、黄色溶液が得られた。次に、1−(3,5−ジクロロフェニル)−2,2,2−トリフルオロエタノン(6.89mg、純度98%、27.7mmol)を加えた。1時間撹拌後、追加の塩化マグネシウム(0.1当量)およびトリエチルアミン(0.1当量)を加え、混合物をさらに30分間撹拌した。次に、追加のトリエチルアミン(0.1当量)を加えた。水(100mL)および酢酸エチル(200mL)を加え、相を分離し.た。水相を酢酸エチル(100mL)で2回抽出した後、合わせた有機相を水(100mL)で3回、飽和重炭酸ナトリウム溶液(100mL)で3回洗浄し、硫酸ナトリウムで脱水し、濾過し、溶媒を留去した。黄色油状物をn−ヘプタンから再結晶した。2−(3,5−ジクロロフェニル)−3,3,3−トリフルオロプロパ−1−エン−1−イルフェニルスルホンを得た(10.5g、純度97%、収率98%、E/Z(割り当てせず)=64/36)。
【0142】
H−NMR(CDCl、400MHz):δ=6.80(m、1H、異性体B)、7.00(m、2H、異性体A)、7.22(m、2H、異性体B)、7.24(m、1H、異性体A)、7.42(t、1H、異性体A)、7.45(t、1H、異性体B)、7.50(m、1H、異性体A)、7.52(m、1H、異性体B)、7.61−7.67(m、6H、異性体AおよびB)、8.00(m、1H、異性体A)、8.02ppm(m、1H、異性体B);GC−MS(EI+):m/z=379.9[M]。
【0143】
製造例7
段階(i)−2−(3,5−ジクロロフェニル)−3,3,3−トリフルオロプロパ−1−エン−1−イルメチルスルフィドの製造
【化41】
【0144】
1−(3,5−ジクロロフェニル)−2,2,2−トリフルオロエタノン(40.9mmol)を用い、製造例1に従って2−(3,5−ジクロロフェニル)−3,3,3−トリフルオロプロパ−1−エン−1−イルメチルスルフィド(10.9g、純度97%、収率90%;E/Z=86/14)を合成した。
【0145】
H−NMR(DMSO−D、599MHz):δ=2.41(s、3H、E異性体)、2.47(s、3H、Z異性体)、6.78(s、1H、Z異性体)、7.14(m、E異性体)、7.20(m、2H、Z異性体)、7.26(m、2H、E異性体)、7.32(t、1H、Z異性体)、7.37ppm(t、1H、E異性体);MS(EI+):m/z=286.0[M]。
【0146】
製造例8
段階(i−a)−2−(3,5−ジクロロフェニル)−3,3,3−トリフルオロプロパ−1−エン−1−イルメチルスルホキシドの製造
【化42】
【0147】
(3,5−ジクロロフェニル)−3,3,3−トリフルオロプロパ−1−エン−1−イルメチルスルフィド(3.36mmol)を用い、製造例2に従って2−(3,5−ジクロロフェニル)−3,3,3−トリフルオロプロパ−1−エン−1−イルメチルスルホキシド(933mg、純度>99%、収率92%;E/Z=92/8)を合成した。
【0148】
H−NMR(CDCl、400MHz):δ=2.73(s、3H)、7.20(m、3H)、7.50ppm(t、1H);MS(EI+):m/z=302.9[(M+1)]。
【0149】
製造例9
段階(i−a)−2−(3,5−ジクロロフェニル)−3,3,3−トリフルオロプロパ−1−エン−1−イルフェニルスルホンの製造
【化43】
【0150】
2−(3,5−ジクロロフェニル)−3,3,3−トリフルオロプロパ−1−エン−1−イルフェニルスルフィド(2.00g、純度94%、5.38mmol)を酢酸(10mL)に溶かし、過酸化水素(2.17mL、35%水溶液、24.7mmol)を1回で加えた。反応混合物を8時間撹拌し、室温で2日間静置した。次に、反応を加熱して50℃としたが、それ以上の変換は起こらなかった。冷却したら、白色固体が沈澱した。懸濁液を水(10mL)で希釈し、固体を濾過し、水で2回洗浄し、40℃で減圧下に終夜乾燥させた。2−(3,5−ジクロロフェニル)−3,3,3−トリフルオロプロパ−1−エン−1−イルフェニルスルホンを得た(1.82g、純度81%、収率72%)。少量の生成物をn−ヘプタンから結晶化させて、分析用の純粋サンプルを得た(純度96%)。
【0151】
H−NMR(DMSO−D、400MHz):δ=7.32(d、2H)、7.61−7.67(m、2H)、7.72−7.79(m、4H)、8.01ppm(m、1H)。
【0152】
製造例10
段階(ii−a)−1−ベンジル−3−(3,5−ジクロロフェニル)−4−(フェニルスルフィニル)−3−(トリフルオロメチル)ピロリジンの製造
【化44】
【0153】
トリフルオロ酢酸(9μL、128μmol)をトルエン(1.28mL)中の(1E)−2−(3,5−ジクロロフェニル)−3,3,3−トリフルオロプロパ−1−エン−1−イルフェニルスルホキシド(1.00g、純度93%、2.56mmol)に加えた。トルエン(8.75mL)中のN−ベンジル−1−メトキシ−N−[(トリメチルシリル)メチル]メタンアミン(911mg、3.84mmol)を室温で1時間かけて加えた。反応混合物の溶媒を除去し、粗生成物をイソ−プロパノールに取り、3.6%塩酸でpHを3に調節した。2時間後、結晶を濾過した。1−ベンジル−3−(3,5−ジクロロフェニル)−4−(フェニルスルフィニル)−3−(トリフルオロメチル)ピロリジニウムクロライド(1.17g、純度95%、収率86%)を得た。塩酸塩を水酸化ナトリウム水溶液(2N、5mL)に懸濁させ、酢酸エチルを加えた。二つの透明な相が形成されるまで混合物を撹拌した。有機相を分離し、硫酸ナトリウムで脱水し、濾過し、溶媒留去した。この手順によって1−ベンジル−3−(3,5−ジクロロフェニル)−4−(フェニルスルフィニル)−3−(トリフルオロメチル)ピロリジンを得た(1.07g、純度95%、収率80%)。
【0154】
H−NMR(CDCl、600MHz):δ=2.82(dd、1H)、3.12(s、2H)、3.66(m、2H)、3.72(dd、1H)、3.86(d、1H)、7.24−7.53ppm(m、13H);MS(EI+):m/z=497.1[(M+1)]。
【0155】
製造例10A
段階(ii−a)−1−ベンジル−3−フェニル−4−(フェニルスルフィニル)−3−(トリフルオロメチル)ピロリジンの製造
【化45】
【0156】
[(3,3,3−トリフルオロ−2−フェニルプロパ−1−エン−1−イル)スルフィニル]ベンゼン(1.54mmol)を用い、製造例10に従って1−ベンジル−3−フェニル−4−(フェニルスルフィニル)−3−(トリフルオロメチル)ピロリジン(433mg、純度97%、収率63%)を合成した。
【0157】
H−NMR(CDCl、400MHz):δ=2.91(dd、1H)、3.25(d、1H)、3.33(d、1H)、3.46(dd、1H)、3.72(m、2H)、3.86(d、1H)、7.28−7.63ppm(m、15H);MS(EI+):m/z=430.0[(M+1)]。
【0158】
製造例10B
段階(ii−a)−1−ベンジル−3−(4−メトキシフェニル)−4−(フェニルスルフィニル)−3−(トリフルオロメチル)ピロリジンの製造
【化46】
【0159】
1−メトキシ−4−[3,3,3−トリフルオロ−1−(フェニルスルフィニル)プロパ−1−エン−2−イル]ベンゼン(1.23mmol)を用い、製造例10に従って1−ベンジル−3−(4−メトキシフェニル)−4−(フェニルスルフィニル)−3−(トリフルオロメチル)ピロリジン(161mg、純度>98%、収率28%)を合成した。
【0160】
H−NMR(CDCl、400MHz):δ=2.88(dd、1H)、3.20(d、1H)、3.31(d、1H)、3.41(dd、1H)、3.68(dd、1H)、3.73(d、1H)、3.83(s、3H)、3.84(d、1H)、6.91(d、2H)、7.27−7.50ppm(m、12H);MS(EI+):m/z=460.1[(M+1)]。
【0161】
製造例10C
段階(ii−a)−1−ベンジル−3−(4−クロロフェニル)−4−(フェニルスルフィニル)−3−(トリフルオロメチル)ピロリジンの製造
【化47】
【0162】
1,2,3−トリクロロ−5−[3,3,3−トリフルオロ−1−(フェニルスルフィニル)プロパ−1−エン−2−イル]ベンゼン(1.27mmol)を用い、製造例10に従って1−ベンジル−3−(4−クロロフェニル)−4−(フェニルスルフィニル)−3−(トリフルオロメチル)ピロリジン(502mg、純度94%、収率80%)を合成した。
【0163】
H−NMR(CDCl、400MHz):δ=2.85(dd、1H)、3.19(d、1H)、3.27(d、1H)、3.47(dd、1H)、3.68(dd、1H)、3.71(d、1H)、3.85(d、1H)、7.21−7.55ppm(m、14H);MS(EI+):m/z=464.0[(M+1)]。
【0164】
製造例10D
段階(ii−a)−1−ベンジル−4−(フェニルスルフィニル)−3−(3,4,5−トリクロロフェニル)−3−(トリフルオロメチル)ピロリジンの製造
【化48】
【0165】
1,2,3−トリクロロ−5−[3,3,3−トリフルオロ−1−(フェニルスルフィニル)プロパ−1−エン−2−イル]ベンゼン(683μmol)を用い、製造例10に従って1−ベンジル−4−(フェニルスルフィニル)−3−(3,4,5−トリクロロフェニル)−3−(トリフルオロメチル)ピロリジン(203mg、純度92%、収率58%)を合成した。
【0166】
H−NMR(CDCl、400MHz):δ=2.77(dd、1H)、3.10(m、2H)、3.56−3.67(m、3H)、3.94(d、1H)、7.24−7.49(m、10H)、7.70ppm(s、2H);MS(EI+):m/z=531.0[M]。
【0167】
製造例11
段階(ii−a)−1−ベンジル−3−(3,5−ジクロロフェニル)−4−(メチルスルフィニル)−3−(トリフルオロメチル)ピロリジンの製造
【化49】
【0168】
トリフルオロ酢酸(61μL、816μmol)をトルエン(17mL)中の2−(3,5−ジクロロフェニル)−3,3,3−トリフルオロプロパ−1−エン−1−イルフェニル(5.22g、95%純度、16.3mmol)に加えた。トルエン(70mL)中のN−ベンジル−1−メトキシ−N−[(トリメチルシリル)メチル]メタンアミン(5.81g、24.5mmol)を室温で1時間かけて加えた。室温で3時間撹拌後、トルエンを減圧下に留去して粗生成物を得て、それは静置していると徐々に結晶化した。粗生成物の一部(5g)を2−プロパノールに溶かし、2N塩酸を用いてpHを3に調節した。固体沈澱を濾過して、1−ベンジル−3−(3,5−ジクロロフェニル)−4−(メチルスルフィニル)−3−(トリフルオロメチル)ピロリジン塩酸塩を得た(2.45g、純度86%、収率52%)。
【0169】
H−NMR(CDCl、400MHz):δ=2.53(s、3H)、3.12(d、1H)、3.30(m、3H)、3.44(t、1H)、3.70(d、1H)、3.85(t、1H)、7.28−7.39(m、6H)、7.40ppm(m、2H);MS(EI+):m/z=435.1[M]。
【0170】
製造例12
段階(ii−a)−1−ベンジル−3−(3,5−ジクロロフェニル)−4−(フェニルスルホニル)−3−(トリフルオロメチル)ピロリジンの製造
【化50】
【0171】
トリフルオロ酢酸(38μL、513μmol)をトルエン(20mL)中の(1E)−2−(3,5−ジクロロフェニル)−3,3,3−トリフルオロプロパ−1−エン−1−イルフェニルスルホキシド(4.00g、純度98%、10.3mmol)に加えた。トルエン(18mL)中のN−ベンジル−1−メトキシ−N−[(トリメチルシリル)メチル]メタンアミン(3.65g、15.4mmol)を室温で2時間かけて加えた。2時間後、追加のN−ベンジル−1−メトキシ−N−[(トリメチルシリル)メチル]メタンアミン(0.2当量)を加え、反応液をさらに1時間撹拌した。反応混合物の溶媒を除去し、粗生成物をn−ヘプタンに取った。生成した結晶を濾過した。1−ベンジル−3−(3,5−ジクロロフェニル)−4−(フェニルスルフィニル)−3−(トリフルオロメチル)ピロリジニウムクロライド(4.40g、純度>99%、収率83%、E/Z[割り当てせず]=53/47)を得た。
【0172】
H−NMR(CDCl、400MHz):δ=2.92(d、1H)、2.95(t、1H)、2.97(d、1H)、3.10(t、1H)、3.19(d、2H)、3.41(d、1H)、3.55(d、1H)、3.64(d、1H)、3.76(m、1H)、3.78(d、1H)、3.86(d、1H)、4.04(dd、1H)、4.20(dd、1H)、7.26−7.76(m、24H)、6.90(m、1H)、7.92ppm(m、1H)[両方の異性体のピーク];MS(EI−):m/z=512.0[(M−1)]。
【0173】
製造例13
段階(ii−a)−1−ベンジル−3−(3,5−ジクロロフェニル)−4−(メチルスルホニル)−3−(トリフルオロメチル)ピロリジンの製造
【化51】
【0174】
トリフルオロ酢酸(6μL、78μmol)をトルエン(3mL)中の2−(3,5−ジクロロフェニル)−3,3,3−トリフルオロプロパ−1−エン−1−イルメチルスルホン(500mg、1.57mmol)に加えた。トルエン(2mL)中のN−ベンジル−1−メトキシ−N−[(トリメチルシリル)メチル]メタンアミン(558mg、2.35mmol)を室温で10分間かけて加えた。反応混合物を2時間撹拌し、追加のN−ベンジル−1−メトキシ−N−[(トリメチルシリル)メチル]メタンアミン(74.4mg、313μmol)を加えた。反応混合物をさらに2時間撹拌し、終夜静置した。水を加え、少し撹拌した後、相を分離し、水相をトルエンで抽出した。合わせた有機相を硫酸ナトリウムで脱水し、溶媒留去した。粗生成物を温イソ−プロパノール(1mL)および10%塩酸(0.5mL)に取り、メタノール1滴を加えた。生成した結晶を濾過した。塩酸塩を水および水酸化ナトリウムに懸濁させ、tert−ブチルメチルエーテルを加えた。有機相を分離し、水相をtert−ブチルメチルエーテルで抽出した。合わせた有機相を硫酸ナトリウムで脱水し、濾過し、溶媒留去した。この手順によって、1−ベンジル−3−(3,5−ジクロロフェニル)−4−(メチルスルホニル)−3−(トリフルオロメチル)ピロリジンを得た(302mg、純度99%、収率42%)。
【0175】
H−NMR(CDCl、400MHz):δ=2.42(s、3H、異性体A)、2.97(d、1H、異性体A)、3.01(s、3H異性体B)、3.04(dd、1H、異性体A)、3.14−3.21(m、1H、異性体B)、3.30−3.37(m、4H、異性体AおよびB)、3.60(dd、1H、異性体A)、3.66(d、1H、異性体A)、3.69(d、1H、異性体B)、3.81(d、1H、異性体B)、3.87(d、1H、異性体A)、3.94−4.92(m、2H、異性体AおよびB)、7.29−7.42(m、12H、異性体AおよびB)、7.54(d、2H、異性体B)、7.79ppm(d、2H、異性体A);MS(EI+):m/z=両方のピークについて452.1[(M+1)]。
【0176】
製造例14
段階(iii−a−1)1−ベンジル−3−(3,5−ジクロロフェニル)−3−(トリフルオロメチル)−2,3−ジヒドロ−1H−ピロール
【化52】
【0177】
窒素雰囲気下に1−ベンジル−3−(3,5−ジクロロフェニル)−4−(メチルスルホニル)−3−(トリフルオロメチル)ピロリジン(2.00g、純度95%、4.13mmol)をトルエン(40mL)に溶かし、炭酸ナトリウム(1.31g、12.4mmol)を加えた。反応混合物を150分間加熱還流し、冷却して室温とした。水(20mL)を加え、混合物を5分間撹拌し、相を分離した。水相をトルエン(20mL)で抽出し、合わせた有機相の溶媒を減圧下に留去した。粗取得物を温n−ヘプタンに溶かし、静置および冷却後に、生成した結晶を濾過して、1−ベンジル−3−(3,5−ジクロロフェニル)−3−(トリフルオロメチル)−2,3−ジヒドロ−1H−ピロールを得た(972mg、純度95%、収率60%)。
【0178】
H−NMR(CDCl、400MHz):δ=3.36(d、1H)、3.72(d、1H)、3.99(d、1H)、4.16(d、1H)、5.18(d、1H)、6.63(d、1H)、7.28(m、3H)、7.34(m、2H)、7.46(m、2H)、7.60ppm(m、1H);GC−MS(EI+):m/z=371.0[M]。
【0179】
製造例15(段階iii−a)−一般式(I)の化合物の製造
段階(iii−a−1)1−ベンジル−3−(3,5−ジクロロフェニル)−3−(トリフルオロメチル)−2,3−ジヒドロ−1H−ピロール
【化53】
【0180】
1−ベンジル−3−(3,5−ジクロロフェニル)−4−(フェニルスルフィニル)−3−(トリフルオロメチル)ピロリジニウムクロライド(1.00g、82%純度、1.53mmol)を、窒素雰囲気下にトルエン(3mL)に懸濁させる。炭酸ナトリウム(810mg、7.65mmol)を加え、混合物を2.5時間加熱還流した。冷却水を加えた後、相を分離し、水相をトルエンで2回抽出した。合わせた有機相を硫酸ナトリウムで脱水し、濾過し、溶媒留去した。残留物をn−ヘプタンから繰り返して結晶化して、1−ベンジル−3−(3,5−ジクロロフェニル)−3−(トリフルオロメチル)−2,3−ジヒドロ−1H−ピロールを得た(198mg、純度89%、収率31%)。
【0181】
分析データは、製造例14で得られたものと同一である。
【0182】
段階(iii−a−2)1−ベンジル−3−(3,5−ジクロロフェニル)−3−(トリフルオロメチル)ピロリジン
【化54】
【0183】
別法1
1−ベンジル−3−(3,5−ジクロロフェニル)−3−(トリフルオロメチル)−2,3−ジヒドロ−1H−ピロール(200mg、純度82%、440μmol)をアルゴン雰囲気下にメタノール(5mL)に溶かした。ギ酸(200μL、5.30mmol)および白金/活性炭(5重量%Pt/C、約60%HO、42.9mg、4.4μmol)を加え、フラスコに水素(風船)を入れた。反応液を室温で6時間撹拌し、終夜放置した。白金/活性炭(0.5mol%)およびギ酸(1mL)を加えた後、反応混合物を昇温させて40から50℃として6時間経過させ、次に室温で放置した。混合物をさらに3時間還流し、1時間後に追加の白金/活性炭(1.0mol%)を加えることで、変換を完了させた。反応混合物を冷却して室温とし、酢酸エチル(5mL)で希釈し、セライトで濾過し、飽和重炭酸ナトリウムおよびブライン溶液で洗浄した。有機相を硫酸ナトリウムで脱水し、濾過し、溶媒留去した。1−ベンジル−3−(3,5−ジクロロフェニル)−3−(トリフルオロメチル)ピロリジンを得た(163mg、純度97%、収率96%)。
【0184】
分析データは、WO2008/129811A1に報告のスペクトル測定データと同一である。
【0185】
別法2
1−ベンジル−3−(3,5−ジクロロフェニル)−3−(トリフルオロメチル)−2,3−ジヒドロ−1H−ピロール(100mg、純度90%、242μmol)をテトラヒドロフラン(2mL)に溶かし、水素化ホウ素ナトリウム(26.0mg、677μmol)を室温で加えた。室温で30分後、反応混合物を塩酸(3.6%)で酸性とし、ジクロロメタンで2回抽出した。合わせた有機相を水で洗浄し、硫酸ナトリウムで脱水し、濾過し、溶媒留去した。この手順によって、1−ベンジル−3−(3,5−ジクロロフェニル)−3−(トリフルオロメチル)ピロリジンを得た(80.0mg、純度79%、収率70%)。
【0186】
分析データは、WO2008/129811A1に報告のスペクトル測定データと同一である。
【0187】
製造例16−(段階iii−a)−一般式(I)の化合物の製造
段階(iii−b)1−ベンジル−3−(3,5−ジクロロフェニル)−3−(トリフルオロメチル)ピロリジン
【化55】
【0188】
マグネシウム(47.3mg、1.94mmol)、塩化リチウム(41.2mg、972μmol)および1−ベンジル−3−(3,5−ジクロロフェニル)−4−(フェニルスルホニル)−3−(トリフルオロメチル)ピロリジン(500mg、972μmol)をアルゴン雰囲気下にフラスコに入れた。メタノール(5mL)を加え、反応液を4.5時間撹拌し、追加のマグネシウム(2当量)を加えた後にさらに1時間撹拌した。終夜静置した後、反応液を加熱して45℃として、2時間後と5時間後にマグネシウム(それぞれ1当量)を加えながら7時間経過させた。再度終夜静置した後、マグネシウムを加え(1当量)、反応液を加熱して45℃として3時間経過させた。水(2mL)およびメタノールを加えた。冷却して室温とした後、水酸化ナトリウム溶液(10%)を加えた。沈澱を濾過し、酢酸エチルおよびメタノールに溶かし、塩酸(10%)で洗浄した。有機相を硫酸ナトリウムで脱水し、濾過し、溶媒留去した。粗1−ベンジル−3−(3,5−ジクロロフェニル)−3−(トリフルオロメチル)ピロリジン(308mg、純度69%、収率59%)をイソ−プロパノールから結晶化させた(111mg、純度95%、収率29%)。
【0189】
分析データは、WO2008/129811A1に報告のスペクトル測定データと同一である。