特許第6251943号(P6251943)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2015.5.11 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6251943
(24)【登録日】2017年12月8日
(45)【発行日】2017年12月27日
(54)【発明の名称】飲料のミネラル補給
(51)【国際特許分類】
   A23L 33/15 20160101AFI20171218BHJP
   A23L 33/165 20160101ALI20171218BHJP
   A23L 2/52 20060101ALI20171218BHJP
   A23L 5/00 20160101ALI20171218BHJP
【FI】
   A23L33/15
   A23L33/165
   A23L2/00 F
   A23L5/00 Z
【請求項の数】9
【全頁数】12
(21)【出願番号】特願2015-514646(P2015-514646)
(86)(22)【出願日】2013年5月27日
(65)【公表番号】特表2015-521045(P2015-521045A)
(43)【公表日】2015年7月27日
(86)【国際出願番号】IB2013054365
(87)【国際公開番号】WO2013179206
(87)【国際公開日】20131205
【審査請求日】2016年5月12日
(31)【優先権主張番号】12170516.4
(32)【優先日】2012年6月1日
(33)【優先権主張国】EP
(73)【特許権者】
【識別番号】503220392
【氏名又は名称】ディーエスエム アイピー アセッツ ビー.ブイ.
(74)【代理人】
【識別番号】100107456
【弁理士】
【氏名又は名称】池田 成人
(74)【代理人】
【識別番号】100128381
【弁理士】
【氏名又は名称】清水 義憲
(74)【代理人】
【識別番号】100162352
【弁理士】
【氏名又は名称】酒巻 順一郎
(72)【発明者】
【氏名】リー, フェン
(72)【発明者】
【氏名】ブレマー, レオナルダス ゲラルダス ベルナルダス
(72)【発明者】
【氏名】トゥイニエール, レムコ
【審査官】 小金井 悟
(56)【参考文献】
【文献】 米国特許出願公開第2006/0240151(US,A1)
【文献】 米国特許出願公開第2009/0124572(US,A1)
【文献】 国際公開第2008/028264(WO,A1)
【文献】 特表2003−527868(JP,A)
【文献】 特開昭61−078351(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A23L 2/00− 2/84
A23L 33/00−33/29
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(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
85〜99重量%のヘキサメタリン酸ナトリウム
重合度10〜20の0.4〜8重量%のキトサン
0.6〜6重量%のFe2+
0〜10重量%の水または脂溶性着香剤および/またはビタミン、
および水
を含んでなり、重量%が、複合コアセルベートコアミセルの総重量を基準にした乾燥重量パーセントを意味し、動的光散乱によって判定される平均粒度が、10〜150nmであり、
ヘキサメタリン酸ナトリウム(sodium heametaphosphate)が、5〜350mg/mlの濃度で含まれる、金属含有複合コアセルベートコアミセル。
【請求項2】
前記ミセルのシェル内の水溶性食品着香剤および/またはビタミン、または脂溶性食品着香剤および/またはビタミンを含んでなる、請求項1に記載の金属含有複合コアセルベートコアミセル。
【請求項3】
前記平均粒度が50〜100nmである、請求項1または2に記載の金属含有複合コアセルベートコアミセル。
【請求項4】
i)負に帯電したキレート化剤A)の水溶液を調製するステップと、
ii)金属塩B)の水溶液を調製するステップと、
iii)等モル濃度の100部のA)と20部のB)を混合して、得られた混合物を室温でインキュベートして、結果として生じるキレート化金属溶液C)を生成するステップと、
iv)pH4〜6のクエン酸緩衝溶液中で低分子量天然食品等級ポリマーカチオンの水溶液D)を調製するステップと、
)キレート化金属溶液C)を880部の前記溶液D)に撹拌しながら滴下して添加するステップと
を含んでなり、
前記負に帯電したキレート化剤がヘキサメタリン酸ナトリウムであり、前記金属塩がFeSOであり、前記低分子量天然食品等級ポリマーカチオンが重合度10〜20のキトサンである、請求項1〜のいずれか一項に記載の金属含有複合コアセルベートコアミセルを製造する方法。
【請求項5】
前記溶液A)が1〜500mMの濃度であり、前記溶液B)が1〜500mMの濃度であり、ステップiii)のインキュベーションが5分間〜5日間実施され、前記溶液D)が0.1〜1mg/mlの濃度である、請求項に記載の方法。
【請求項6】
手順i)およびii)のヘキサメタリン酸ナトリウムおよびFeSO溶液が、それぞれ100mMの濃度であり、ステップiv)のキトサンが、0.6mg/mlの濃度である、請求項4または5に記載の方法。
【請求項7】
飲料を1〜60mg金属/リットルで補給するための、請求項1〜のいずれか一項に記載の金属含有複合コアセルベートコアミセルの使用。
【請求項8】
前記飲料が、ジュース、炭酸非含有清涼飲料、ミルク、および果汁から選択される、請求項に記載の使用。
【請求項9】
請求項1〜のいずれか一項に記載の金属含有複合コアセルベートコアミセルを含んでなる、飲料。
【発明の詳細な説明】
【発明の詳細な説明】
【0001】
本発明は、飲料の金属補給の分野に関する。より特には、それは、負に帯電したキレート化剤と、低分子量天然食品等級ポリマーカチオンと、水とを含んでなる、金属含有複合コアセルベートコアミセルを対象とする。それはまた、前記金属含有複合コアセルベートコアミセルを製造する方法、および生物が高度に利用可能な金属源を飲料に補給するための前記金属含有複合コアセルベートコアミセルの使用も対象とする。それはまた、前記金属含有複合コアセルベートコアミセルを含んでなる飲料にも関する。
【0002】
金属欠乏症の中でも、鉄欠乏性貧血は、深刻な栄養関連健康問題であり、全世界で30億人を超える人々に影響を及ぼしている。鉄欠乏症は、貧血の直接原因の1つである一方で、それはまた、エネルギー欠乏症、成長および発達不全などのその他の様々な生理学的な障害も引き起こす。食品強化プログラムは、通常、最も費用効率が高く、鉄(Fe)欠乏症と戦う持続可能なアプローチと見なされる。しかし鉄強化プログラムの成功は、Fe化合物および食品マトリックスの注意深い選択に大幅に依存する。
【0003】
食品および飲料へのミネラル補給剤添加に伴う、十分に認識された問題がある。例えば多数のこのようなミネラル補給剤は、かなり不溶性であり、したがって飲料であまり有用でなく、またはまずい味(金属味)を有する傾向があり、または許容できない口当たりを有する傾向がある。さらに鉄補給剤は、食材を変色させ、または感覚受容的に不適にする傾向がある。鉄化合物は、溶液中で不溶性水酸化鉄ポリマーを形成し、その他のミネラルおよびその他の材料と相互作用する傾向があるために、鉄補給剤を含有する飲料を配合することもまた、特に困難である。この相互作用は、飲料の官能特性および審美特性に影響を及ぼすだけでなく、鉄補給剤栄養の生物学的利用能(bioavailabilty)にもまた悪影響も及ぼす。
【0004】
国際公開第2011/159665号パンフレットは、水不溶性キトサン−ステアリン酸複合体によってカプセル化された栄養塩類粒子を含んでなる、カプセル化栄養塩類を開示する。しかしこのカプセル封入は、油相を要するマイクロエマルションをベースとしており、飲料中での長期間貯蔵中に不安定である。
【0005】
国際公開第2009/029407号パンフレットは、カプセル化された水不溶性着香料の送達および放出制御を開示する。これは、ホエータンパク質と多糖類とを含んでなる複合コアセルベートをベースとして、静電気引力に基づく複合体を形成する。しかし粒度は全て500nmを上回り、溶液中で使用すると濁る。
【0006】
国際公開第2010/116379号パンフレットは、99.5〜99.88%の茶、0.1〜0.3%の鉄塩、および0.02〜0.2%のデンプンベースを含んでなる、乾燥形態の鉄強化茶を開示する。この強化茶は、乾燥茶への鉄溶液の噴霧によって製造される。しかしこの技術は、鉄塩の沈殿のために、鉄で強化された液体飲料の製造を可能にしない。
【0007】
本出願の発明者らは、今や驚くことに、飲料の金属強化で有用な新しい組成物を発見した。この組成物は費用効率が高く、ホモポリマー混合物を使用して、包括的に全て食品等級と見なされる製品から調製され、そのままで経時的に安定しており、飲料に混合した場合、低温殺菌中に分解せず、ポリフェノールと反応せず、優れた金属の生物学的利用能(bioavailabity)を提供し、栄養補給される飲料を着色せず、金属味を生じない。さらにこの組成物は、水溶性成分ベースであり、自己組織化して粒子になる。さらにこれらの食品等級複合コアセルベート粒子は、溶液を安定かつ透明に保ちながら、非常に高濃度の金属(例えば鉄)を水溶液中で利用できるようにする。
【0008】
したがって本発明は、80〜99重量%の負に帯電したキレート化剤、0.2〜10重量%の低分子量天然食品等級ポリマーカチオン、0.5〜10重量%の金属カチオン、および水を含んでなる、金属含有複合コアセルベートコアミセルを提供し、重量%は、複合コアセルベートコアミセルの総重量を基準にした乾燥重量パーセントを意味し、動的光散乱によって測定される平均粒度は10〜150nmである。
【0009】
特に断りのない限り、本出願中の全ての百分率は、複合コアセルベートコアミセルの総重量を基準にして、乾燥重量パーセントとして表される。
【0010】
複合コアセルベートは、疎水性力によって、周囲の液体から分離結合されている、種々雑多な有機分子の極小球状小滴である。コアセルベーションは、水溶液中で2つの逆帯電した高分子電解質を混合した場合に生じる、自発的な相分離過程である。2種の微小分子間の静電相互作用は、コアセルベート(ポリマーに富む相)の上清(ポリマーに乏しい相)からの分離をもたらす。この現象を使用して、ナノ球体を形成し、多様な化合物をカプセル化し得る。カプセル封入過程は、完全に水溶液中で、いかなるエネルギーも提供することなく、低温で実施し得る。
【0011】
定義上、ナノ球体または超微粒子のサイズは、1〜150ナノメートルである。粒子表面と溶媒の相互作用は、さもなければ通常は、液体中で沈降しまたは浮遊する材料をもたらす密度の差を克服するのに十分強力であるので、ナノ球体の利点は、透明な懸濁液が可能なことである。
【0012】
ミセルは、液体コロイド中に分散する界面活性剤分子の凝集体である。水溶液中の典型的なミセルは、周囲の溶媒に接する親水性「頭部」領域と共に凝集を形成して、ミセルの中心の疎水性単一尾部領域を隔離する。複合コアセルベートコアミセルは、原料(ポリマーカチオンおよびキレート化剤)が、定義された方法および定義された比率で混合されたときに、自己組織化特性を有する。
【0013】
本発明では、金属カチオンは、鉄、カルシウム、および亜鉛から選択され得るが、好ましくはFe2+である。
【0014】
キレート化は、多座の(複数結合の)リガンドと単一中心原子の間の2つ以上の別個の配位結合の形成または存在である。通常はこれらのリガンドは有機化合物であり、錯化剤、キレート剤、キレート化剤、または金属イオン封鎖剤と称される。本発明では、一般的有機化合物から選択される(selected form)、あらゆる負に帯電したキレート化剤を使用し得る。より好ましくは、キレート化剤は、環様構造を有し(環形状を有し)、なおもより好ましくは、それはヘキサメタリン酸ナトリウムである。
【0015】
ヘキサメタリン酸ナトリウム(SHMP)は、組成物(NaPOの六量体である。商業的なヘキサメタリン酸ナトリウムは、典型的にポリマーメタリン酸塩の混合物であり、六量体はその1つであり、通常は、この名称で言及される化合物である。これはより正しくは、ポリメタリン酸ナトリウムと称される。これは、オルトリン酸一ナトリウムの溶解と、それに続く迅速な冷却によって調製される。
【0016】
低分子量天然食品等級ポリマーカチオンは、米国食品医薬品局によって、食品および飲料製品における使用が安全と見なされる、あらゆるポリマー材料と定義される。本発明で適切な天然食品等級ポリマーカチオンとしては、乳清タンパク質およびカゼインをはじめとする乳タンパク質、ゼラチン、卵アルブミン、植物性タンパク質、微生物タンパク質、マメ類タンパク質、およびキトサンが挙げられるが、これに限定されるものではない。本発明による好ましい低分子量天然食品等級ポリマーカチオンは、重合度5〜100、より好ましくは重合度10〜50、なおもより好ましくは重合度10〜20のキトサンである。キトサンは、無作為に分布する、β−(1−4)結合D−グルコサミン(脱アセチル化単位)およびN−アセチル−D−グルコサミン(アセチル化単位)から構成される、直鎖多糖類である。キトサンは、甲殻類の外骨格の構造要素であるキチンの脱アセチル化によって、商業的に製造される。
【0017】
このような複合コアセルベートコアミセル内にカプセル化された金属は、ポリマーコロナの保護のために安定化され、抗酸化効率は、キレート化剤の存在のために増大する。
【0018】
SHMPはキトサンと部分的に相互作用するので、金属キレート化効率が低下する。SHMPとキトサンの相互作用は、これらの2つの分子濃度、および環境条件など、pHおよび温度によって定まる。これは、SHMPとキトサンの相互作用に影響することで、当業者によって、SHMPと鉄の相互作用またはキレート化可能性が調節され得ることを意味する。その結果、鉄の生物学的利用能を制御し得る。さらに、これらの自己組織化ミセル粒子は、中空物体であり、それらは、例えばフレーバー分子やビタミンなどのその他の食品成分をカプセル化し得る。
【0019】
別の実施形態では、本発明は、上述したような本発明による金属含有複合コアセルベートコアミセルに関し、それは、水性相中に水溶性食品着香剤および/またはビタミンを、またはミセルのシェル中に脂溶性食品着香剤および/またはビタミンをさらに含んでなる。好ましくは、それは、複合コアセルベートコアミセルの総重量を基準にして0〜10重量%の水または脂溶性着香剤および/またはビタミンを含んでなる。
【0020】
「着香料」または「香味料」という用語は、共通言語(common language)では、味覚および嗅覚の化学的感覚の組み合わせを意味するが、芳香剤およびフレーバー工業では、同一用語が、通常は、嗅覚を通じて食物および食品のフレーバーを変化させる、食用化学物質および抽出物を指すために使用される。天然フレーバー抽出物は高コストでありまたは入手不可能であるために、ほとんどの市販の着香料は天然同等であり、すなわちそれらは、天然フレーバーの化学的同等物であるが、原材料から抽出されたのでなく、化学的に合成される。あらゆる一般的な食品等級着香剤を、本発明による組成物で使用し得る。好ましい着香料は、アーモンド、アマレット、アニセット、ブランデー、カプチーノ、ミント、シナモン、シナモンアーモンド、クレーム・ド・マント、グラン・マルニエ(Grand Mariner)、ペパーミント風味飴、ピスタチオ、サンブーカ、リンゴ、カモミール、シナモン香料、クレーム、クレーム・ド・マント、バニラ、フレンチバニラ、アイリッシュクリーム、カルーア、ミント、ペパーミント、レモン、マカダミアナッツ、オレンジ、オレンジの葉、モモ、イチゴ、ブドウ、ラズベリー、チェリー、コーヒー、チョコレート、ココア、モカなど、およびそのあらゆる混合物;ならびにアセトアルデヒドジアセチル、イソアミル酢酸、ベンズアルデヒド、ケイ皮酸アルデヒド、プロピオン酸エチル、アントラニル酸メチル、リモネン、エチル−2,4−デカジエン酸、アリルヘキサン酸、エチルマルトール、エチルバニリン、サリチル酸メチルまたはその混合物などの香味料/アロマ増強剤、ハーブ、香辛料、ならびにあらゆるその混合物から選択される。
【0021】
本発明による水溶性ビタミンは、ビタミンB1(チアミン)、ビタミンB2(リボフラビン)、ビタミンB6(ピリドキシン)、ナイアシン(ニコチン酸)、ビタミンB12、葉酸、パントテン酸、ビオチン、およびビタミンCから選択され得る。
【0022】
本発明による脂溶性ビタミンは、ビタミンA、D、E、およびKから選択される。
【0023】
好ましい実施形態では、本発明は、
85〜99重量%のヘキサメタリン酸ナトリウム、
重合度10〜20の0.4〜8重量%のキトサン、
0.6〜6重量%のFe2+
0〜10重量%の水または脂溶性着香剤および/またはビタミン、
および水
を含んでなる、金属含有複合コアセルベートコアミセルに関し、
重量%は、複合コアセルベートコアミセルの総重量を基準にした乾燥重量パーセントを意味し、動的光散乱によって測定される平均粒度は、10〜150nmである。
【0024】
より好ましい実施形態では、本発明は、
85〜99重量%のヘキサメタリン酸ナトリウム、
重合度10〜20の0.4〜8重量%のキトサン、
0.6〜6重量%のFe2+
0〜10重量%の水または脂溶性着香剤および/またはビタミン、
および水
を含んでなる、金属含有複合コアセルベートコアミセルに関し、ヘキサメタリン酸ナトリウム(sodium heametaphosphate)は、5〜350mg/mlの濃度であり、重量%は、複合コアセルベートコアミセルの総重量を基準にした乾燥重量パーセントを意味し、動的光散乱によって測定される平均粒度は10〜150nmである。
【0025】
本発明による金属含有複合コアセルベートコアミセルは、10〜150nmの平均粒度、より好ましくは50〜100nmの平均粒度を有する。粒度は、天然食品等級高分子カチオン(polymericcation)の分子量によって調節し得て、例えば重合度15未満のキトサンを使用すると、10〜150nmの粒度が得られる。粒度は、ALV光散乱装置上で動的光散乱によって測定される。
【0026】
別の実施形態では、本発明はまた、
i)負に帯電したキレート化剤A)の水溶液を調製するステップと、
ii)金属塩B)の水溶液を調製するステップと、
iii)等モル濃度の100部のA)と20部のB)を混合して、得られた混合物を室温でインキュベートし、結果として生じるキレート化金属溶液C)を生成するステップと、
iv)pH4〜6のクエン酸緩衝溶液中で低分子量天然食品等級ポリマーカチオンの水溶液D)を調製するステップと、
v)キレート化金属溶液D)を880部の溶液C)に撹拌しながら滴下して添加するステップと
を含んでなる、上述の金属含有複合コアセルベートコアミセルを製造する方法も提供する。
【0027】
好ましくは、本発明は、
i)負に帯電したキレート化剤A)の水溶液を1〜500mMで調製するステップと、
ii)金属塩B)の水溶液を1〜500mMで調製するステップと、
iii)等モル濃度の100部のA)と20部のB)を混合して、得られた混合物を室温で5分間から5日間インキュベートして、結果として生じるキレート化金属溶液C)を生成するステップと、
iv)pH4〜6のクエン酸緩衝溶液中0.1〜1mg/mlの濃度で、低分子量天然食品等級ポリマーカチオンの水溶液D)を調製するステップと、
v)キレート化金属溶液D)を880部の溶液C)に撹拌しながら滴下して添加するステップと
を含んでなる、上述の金属含有複合コアセルベートコアミセルを製造する方法を提供する。
【0028】
より好ましくは、ステップiii)のインキュベーション時間は、少なくとも20分間、好ましくは少なくとも50分間、より好ましくは少なくとも90分間、および5日間以下、好ましくは24時間以下、より好ましくは8時間以下、なおもより好ましくは5時間以下である。
【0029】
なおもより好ましくは、本発明による方法では、負に帯電したキレート化剤は、ヘキサメタリン酸ナトリウムであり、金属塩はFeSOであり、低分子量天然食品等級ポリマーカチオンは重合度10〜20のキトサンである。より好ましくは、ステップi)およびii)のヘキサメタリン酸ナトリウムおよびFeSO4の溶液は、それぞれ50〜150mMの濃度であり、ステップiv)のキトサンは、0.4〜0.8mg/mlの濃度である。なおもより好ましくは、ヘキサメタリン酸ナトリウムおよびFeSO4の溶液は、それぞれ100mMの濃度であり、キトサンは、0.6mg/mlの濃度である。
【0030】
本方法のステップv)では、溶液D)を溶液C)に滴下して添加することが重要である。これを逆に行った場合、表面電荷および安定化機序は完全に異なり、本発明の十分に可溶性で安定したナノ粒子の代わりに、マイクロメートルサイズの沈殿物がもたらされる。
【0031】
別の実施形態では、本発明は、飲料を1〜60mgの金属/リットルで栄養補給するための、本発明による金属含有複合コアセルベートコアミセルの使用を提供する。本発明では、飲料は、特にヒト消費のために調製される液体である。本発明の目的で、飲料は、即席飲料、飲料濃縮物、シロップ、常温保存可能飲料、冷蔵飲料、凍結飲料などであり、それは水およびフレーバーウォーターもまた含む。好ましい実施形態では、飲料は、ジュース、炭酸非含有清涼飲料、ミルク、および果汁から選択される。飲料製品は、超高温処理(UHT)および/または高温短時間処理(HTST)などの一般的技術を使用して、低温殺菌してもよい。
【0032】
本発明はまた、本発明のいずれかに従った金属含有複合コアセルベートコアミセルを含んでなる飲料を対象とする。
【図面の簡単な説明】
【0033】
図1】(a)時間の関数としての粒子安定性のDLS測定であり、三角形はキュムラント適合による測定された平均粒子半径、四角形は平均散乱光強度である。(b)contin分析による、インキュベーション時間(1、10、および24時間)の関数としての粒度分布である。
図2】(a)時間の関数としての温度安定性のDLS測定であり、三角形は、キュムラント適合による測定された平均粒子半径、四角形は平均散乱光強度である。(b)contin分析による、インキュベーション温度(5、25、および50℃)の関数としての粒度分布である。
図3】(a)pHの関数としての粒子安定性の滴定測定であり、丸は、キュムラント適合による測定された平均粒子半径、四角形は、平均散乱光強度である。(b)pHの関数としてのζ電位である。
図4】(a)pHの関数としての粒子安定性の滴定測定であり、丸はキュムラント適合による測定された平均粒子半径、四角形は、平均散乱光強度である。(b)pHの関数としてのζ電位である。
図5】ポリフェノールと鉄を含有する混合物のUVスペクトルである。
図6】粒子のSLS Zimmプロットである。
【0034】
以下の実施例によって、本発明をさらに例証する。
【0035】
[実施例]
[実施例1:鉄含有複合コアセルベートコアミセルの調製]
[試料調製]
硫酸鉄(II)および低分子量キトサン(重合度n<15)は、Sigma−Aldrichから購入された。ヘキサメタリン酸ナトリウム(SHMP)は、J.T.Bakerから購入された。(A)100mMのSHMP、(B)100mMのFeSO、および(C)pH<3の20mg/mlのキトサンの濃度で、3種の原液を水溶液中で調製した。pH5で0.5Mの酢酸緩衝液をさらに希釈し、緩衝溶液として使用して、サンプルを調製した。手始めに、100μLのAが20μLのBに添加され、AとBの反応時間は、鉄とキレート化剤SHMPとの結合効率に相関した。この反応時間は、数分間から数日間の間で変動し得る。本実施例では、インキュベーション時間は1時間であった。反応時間が長いほど、鉄はSHMPとより強力に結合する。その間に、100μLの酢酸緩衝液の存在下で、25μLのCを755μLのmiliQ水で希釈した。ひとたび双方の混合物の準備ができたら、鉄とSHMPの溶液を希釈キトサン溶液に撹拌しながら滴下して添加した。最終混合物の重量百分率は、6mg/mlのSHMP、0.4mg/mlのFe2+、0.5mg/mlのキトサンであった。これらの重量百分率は、325mg/mlのSHMP、2.6mg/mlのFe2+、および1.3mg/mlのキトサンに増大させて、安定自己組織化粒子を生成し得る。
【0036】
[複合コアセルベートコアミセルの特性解析]
動的光散乱(DLS)は、ALV光散乱装置(ALV,Langen,Germany)上で実施した。全ての実験は、90°の散乱角で実施した。温度は、Haake C35恒温装置を使用して調節した。流体力学半径は、キュムラント適合またはCONTIN多指数関数適合から計算された。相対強度は、サンプルとトルエンの強度比に従って得た。静止光散乱(SLS)は、同一ALV装置上で実施して、検出角度は、24°から140°で変動する。滴定測定およびζ電位測定は、ゼータサイザー(Malvern,UK)上で実施した。滴定サンプルの散乱光強度もまた、ゼータサイザー上での測定から得た。
【0037】
透過電子顕微鏡法(TEM)測定は、100kVで稼働するJEOL 1200 EX電子顕微鏡上で実施した。画像は、1k CCDカメラで記録した。測定前に、サンプルを銅格子上で一晩乾燥させた。
【0038】
UVスペクトル測定は、0.05Mの酢酸を参照として、UV−2450(島津)上で実施した。この試験で使用されるポリフェノールであるタンニン酸の濃度は、0.15mg/mlであった。
【0039】
比較的低濃度(6mg/mlのSHMP、0.4mg/mlのFe2+、0.5mg/mlのキトサン)で調製されたサンプルを10倍希釈し、DLSを20℃で24時間にわたり測定した。図1aに示される約70nmの平均粒度と散乱光強度の双方、および図1bに示される粒度分布は、表示される測定時間内で顕著に変化しなかった。これは20℃の一定温度で、粒子が非常に安定したままであることを意味する。
【0040】
粒子安定性が、温度に対して感受性であるかどうかをチェックするために、異なる温度でDLS測定を実施した。安定性試験で使用したのと同じサンプルを準備して、5℃〜50℃で5℃毎にDLSを測定した。結果は、表2に示される。図2aの平均粒度と散乱光強度、および図2bの粒度分布は、温度増大時にわずかに低下した。5℃と50℃間の差は、かなり小さかった。これは粒子のサイズと形状が、5〜50℃の温度範囲内で比較的一定したままであることを実証する。
【0041】
これらの粒子は、5〜50℃の温度範囲内で、経時的に安定しており適度に一定している。これらの粒子のpH感受性のより良い理解を得るために、そしてそれらの組成について深い知識を得るために、ゼータサイザーによるpH滴定測定を実施した。その間に、発明者は、pHの関数としてζ電位変化を追跡調査した。サンプルは、比較的低濃度(6mg/mlのSHMP、0.4mg/mlのFe2+、0.5mg/mlキトサン)で調製し、10倍希釈して0.1MのNaOHで滴定した。結果は、表3に示される。粒度ならびに散乱光強度は、図3aのようにpH上昇時に増大した。しかし3〜8のpH範囲内では、粒子のζ電位は−40mVで、ほぼ一定したままである。
【0042】
粒子の陰性ζ電位は、SHMPが、粒子外部の安定化官能基であり、SHMP基が(部分的に)粒子表面に位置することを示唆する。この観察をさらに確認して、SHMPおよびキトサンが、鉄の添加なしに自己組織化して安定粒子になり得るかを同定するために、我々は、以下のサンプルを調製して、その後、滴定測定を実施した。6mg/mlのSHMPおよび0.5mg/mlのキトサンを含有するサンプルを最初に調製し、終了時に0.4mg/mlの濃度に達するまで、Fe2+を滴下して添加した。このサンプルを10倍希釈して、希釈サンプラー(diluted sampler)の滴定測定をゼータサイザー上で実施した。先の滴定測定と比較して、粒度ならびに散乱光強度は、どちらも顕著に増大した:pH5ではDhは63nmから90nmに増大し、その一方で散乱光強度は700kHzから2000kHzにほぼ3倍になった(図3aと図4aを比較されたい)。この変化は、混合物への鉄の添加順序が、自己組織化粒子の形態および/または組成に、強く影響を及ぼすことを示唆する。さらに図4bに示されるように、サンプルのζ電位は、滴定開始時の−20mVから−40mVに徐々に低下した。最初のζ電位変動は、滴定測定を行う1時間前までにサンプルを平衡化すれば、克服し得て、次に測定されたζ電位は、−40mVでほぼ一定に保たれる。これは、鉄の添加時に複合体が再組織化して平衡に達するのに、時間がかかるという事実によって説明し得る。
【0043】
これらの結果は、SHMPとキトサンの混合物への鉄の添加時に、SHMPとキトサンの複合体の第2の層が、粒子に会合する見込みが高いことを示唆する。これが、鉄添加時の粒度増大、ならびに散乱光(scatted light)増大を説明する。鉄は、ここで、粒子の「コア」を、SHMPとキトサンの複合体の追加層に結合する、カチオン性架橋として使用されるようである。
【0044】
粒子の安定性およびpH感受性に加えて、この様にしてカプセル化された鉄は、変色問題がはるかに少なく、鉄とキレート化剤SHMPとの結合強度は、動力学的に調節し得る。実際には、これは、キトサン添加前の、SHMPと鉄のインキュベーション時間の増大が、結合効率を強化することを意味する。
【0045】
変色は、通常は、鉄とポリフェノールの反応が関係する。通常、鉄はポリフェノールと複合体を形成し、複合体は暗青色に見えて、ほとんどの食品用途で問題になることが、想定される(Perron et al.2010,Dalton Trans 39,9982)。ひとたび鉄がSHMPに強く結合すると、ポリフェノールと複合体を形成する確率は小さい。したがって変色は、極度に抑制される。我々は、UV分光光度法を使用して、鉄ポリフェノール複合体の形成を調査し、UV吸収スペクトルを参照サンプルと比較して、結果は図5で示される。鉄およびポリフェノールであるタンニン酸は、迅速に複合体を形成し、鉄ポリフェノール複合体の特徴的なUV吸収ピークは、550nm周囲にあるようである。最大UV吸収の定常状態は、本実験条件下でサンプルを調製した10時間後に、初めて達し得ることに留意すべきである。我々は、鉄ポリフェノール複合体形成に関連する、動力学効果に気付いた。鉄とタンニン酸の混合物とは逆に、鉄を最初にSHMPに結合させて、次にタンニン酸と組み合せた場合、鉄ポリフェノール複合体はほとんど形成せず、これは、550nmにおいて検出可能なUV吸収が出現しないという事実によって示される(図5)。0.6mg/mlのSHMP、0.04mg/mlのFe2+、および0.05mg/mlのキトサンと、タンニン酸を含有するサンプル混合物は、鉄、SHMP、およびタンニン酸のみから構成される標準試料と比較して、わずかにより多くのUV吸収を与える。
【0046】
この差は、キトサンの存在によって、鉄とSHMPの結合強度が影響を受けたことを説明する。結合強度は、鉄の生物学的利用能に関連し、それは今や、SHMPおよび鉄混合物にキトサンを導入する時点によって、調節し得る。
【0047】
この目的を達成するために、我々は、粒子のpHおよび温度感受性を示した。我々はまた、試料調製手順を注意深くデザインすることで、鉄の生物学的利用能を操作する可能性を示した。ζ電位の測定からは、SHMPが粒子表面に存在することになる。さらにこれらの粒子の内部形態の画像はない。これらの粒子をさらに特性解析するために、我々は、0.6mg/mlのSHMP、0.04mg/mlのFe2+、および0.05mg/mlのキトサンを含有するサンプルについて、SLS試験を実施した。様々な散乱角と粒子濃度で測定された散乱強度の結果は、図6で示される。得られた回転半径および流体力学半径が判定され、それらの比率は0.97であり、これは小胞構造が形成されたことを示唆する。さらに粒子の平均分子量は4478kDaであり、これは各粒子が、平均しておよそ7000個のSHMP、1500個の鉄、および120個のキトサン分子から構成されることを物語る。
【0048】
TEM試験もまた実施して、これらの粒子形態を直接的に視覚化した。粒子はコアが中空で、球状のようである(図示せず)。これは、これらの粒子が小胞構造であるという、SLS試験の徴候に一致する。TEMサンプルは銅格子上で乾燥されて、乾燥中に鉄イオンが濃縮して粒子周囲に結合するが、粒子内部の鉄濃度は、乾燥時に変化し得ない(それらは小胞二重層によって保護される)。その結果、我々は、これらの粒子の「コア」が、周囲と比較して、より低い密度を有することを観察する。
図1
図2
図3
図4
図5
図6