特許第6251966号(P6251966)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2015.5.11 β版

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特許6251966燃料電池システムおよび燃料電池システムの作動状態確認方法
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6251966
(24)【登録日】2017年12月8日
(45)【発行日】2017年12月27日
(54)【発明の名称】燃料電池システムおよび燃料電池システムの作動状態確認方法
(51)【国際特許分類】
   H01M 8/04 20160101AFI20171218BHJP
   H01M 8/10 20160101ALN20171218BHJP
【FI】
   H01M8/04 Z
   H01M8/04 J
   !H01M8/10
【請求項の数】3
【全頁数】13
(21)【出願番号】特願2013-57674(P2013-57674)
(22)【出願日】2013年3月21日
(65)【公開番号】特開2014-182975(P2014-182975A)
(43)【公開日】2014年9月29日
【審査請求日】2015年11月16日
(73)【特許権者】
【識別番号】000003207
【氏名又は名称】トヨタ自動車株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110000028
【氏名又は名称】特許業務法人明成国際特許事務所
(74)【代理人】
【識別番号】100096817
【弁理士】
【氏名又は名称】五十嵐 孝雄
(72)【発明者】
【氏名】小松原 香莉
(72)【発明者】
【氏名】松末 真明
【審査官】 大内 俊彦
(56)【参考文献】
【文献】 特開2011−15537(JP,A)
【文献】 特開2007−305365(JP,A)
【文献】 特開平10−144334(JP,A)
【文献】 特開2011−40218(JP,A)
【文献】 特開2006−147177(JP,A)
【文献】 特開2005−196984(JP,A)
【文献】 特開2010−44932(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01M 8/04−8/0668,8/10
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
燃料電池システムであって、
燃料電池と、
前記燃料電池の出力端子間に接続される負荷、および、前記負荷の接続あるいは非接続を行う開閉スイッチを含む負荷回路と、
前記出力端子間の電圧を測定する電圧測定部と、
前記負荷回路の作動状態を確認する負荷回路検査部と、
を備え、
前記負荷回路検査部は、
前記燃料電池のカソードに酸化ガスが供給されず窒素又は窒素と水素が充填された窒素環境の状態にあり、かつ、前記燃料電池のアノードに燃料ガスとしての水素が供給された状態で、前記開閉スイッチの開閉を操作した際に発生する前記出力端子間の電圧の変化を前記電圧測定部で測定することにより、前記開閉スイッチの作動状態を確認する
ことを特徴とする燃料電池システム。
【請求項2】
請求項に記載の燃料電池システムであって、
前記負荷回路検査部は、
前記開閉スイッチが開状態となるように操作した場合に、前記電圧測定部で測定される測定電圧が前記開状態に対応する電圧として予め求められた開電圧の範囲内にあり、前記開閉スイッチが閉状態となるように操作した場合に、前記測定電圧が前記閉状態に対応する電圧として予め求められた閉電圧の範囲内にあることを確認することにより、前記開閉スイッチの作動状態を確認する
ことを特徴とする燃料電池システム。
【請求項3】
燃料電池システムの作動状態確認方法であって、
前記燃料電池システムは、
燃料電池と、
前記燃料電池の出力端子間に接続される負荷、および、前記負荷の接続あるいは非接続を行う開閉スイッチを含む負荷回路と、
制御部と、
を備え、
前記制御部は、前記燃料電池のカソードに酸化ガスが供給されず窒素又は窒素と水素が充填された窒素環境の状態にあり、かつ、前記燃料電池のアノードに燃料ガスとしての水素が供給された状態で、前記開閉スイッチの開閉を操作した際に発生する前記出力端子間の電圧の変化を測定することにより、前記開閉スイッチの作動状態を確認する
ことを特徴とする燃料電池システムの作動状態確認方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、燃料電池システムおよび燃料電池システムの作動状態確認方法に関する。
【背景技術】
【0002】
燃料電池システムでは、燃料電池内に残る反応ガスによる燃料電池の劣化を抑制するために、始動あるいはシャットダウンの際に、燃料電池の出力ターミナル間に電気負荷を接続して、燃料電池内に残る反応ガスにより発生する電力を電気負荷で消費させることが行われている(特許文献1〜3参照)。電気負荷の開閉は、電気負荷に直列に接続された開閉スイッチにより行われる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2004−139950号公報
【特許文献2】特表2005−532658号公報
【特許文献3】特開2010−44932号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
電気負荷を接続するための開閉スイッチが故障した場合、上記した放電処理が不可となって燃料電池の劣化の抑制が不可となる。従って、燃料電池の劣化の抑制のためには、開閉スイッチが正常に作動していることが不可欠であり、開閉スイッチの作動確認が可能であることが望まれている。
【0005】
しかしながら、特許文献1,2の燃料電池システムでは、開閉スイッチの作動確認について何ら記載はなく、作動確認が不可である。また、特許文献3の燃料電池システムでは、発電終了時における接続異常確認についての記載がある。しかしながら、例えば、燃料電池システムを搭載した車両の場合、発電の開始および停止が頻繁に繰り返されるため、発電終了時のみならず、始動時等の他の状態においても確認可能であることが望まれている。すなわち、特許文献3の燃料電池システムにおける接続異常確認では不十分である。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明は、上述の課題の少なくとも一部を解決するためになされたものであり、以下の形態として実現することが可能である。
本発明の一形態は、燃料電池システムであって、
燃料電池と、
前記燃料電池の出力端子間に接続される負荷、および、前記負荷の接続あるいは非接続を行う開閉スイッチを含む負荷回路と、
前記出力端子間の電圧を測定する電圧測定部と、
前記負荷回路の作動状態を確認する負荷回路検査部と、
を備え、
前記負荷回路検査部は、
前記燃料電池のカソードに酸化ガスが供給されず窒素又は窒素と水素が充填された窒素環境の状態にあり、かつ、前記燃料電池のアノードに燃料ガスとしての水素が供給された状態で、前記開閉スイッチの開閉を操作した際に発生する前記出力端子間の電圧の変化を前記電圧測定部で測定することにより、前記開閉スイッチの作動状態を確認する
ことを特徴とする。
この形態の燃料電池システムによれば、燃料電池のカソードに酸化ガスが供給されず窒素又は窒素と水素が充填された窒素環境の状態にあり、かつ、燃料電池のアノードに燃料ガスとしての水素が供給された状態で燃料電池のアノードに燃料ガスとしての水素が供給された状態とすることにより、開閉スイッチの作動状態確認を簡単に実施することが可能となる。また、この形態の燃料電池システムでは、前記燃料電池のカソードに酸化ガスが供給されず窒素又は窒素と水素が充填された窒素環境の状態にあるので、発生する電圧が発電時に発生する電圧に比べて小さくなり、負荷で発生する損失を小さくして効率良く作動状態の確認をすることが可能である。
上記形態において、前記負荷回路検査部は、前記開閉スイッチが開状態となるように操作した場合に、前記電圧測定部で測定される測定電圧が前記開状態に対応する電圧として予め求められた開電圧の範囲内にあり、前記開閉スイッチが閉状態となるように操作した場合に、前記測定電圧が前記閉状態に対応する電圧として予め求められた閉電圧の範囲内にあることを確認することにより、前記開閉スイッチの作動状態を確認する、としてもよい。
この形態によれば、測定電圧が開閉スイッチの操作に応じて開電圧の範囲内となるか閉電圧の範囲となるか確認することにより、容易に開閉スイッチの作動状態を確認することができ、負荷回路の作動状態を確認することが可能である。
その他、本発明は、以下の形態としても実現することが可能である。
【0007】
(1)本発明の一形態によれば、燃料電池システムが提供される。この燃料電池システムは、燃料電池と;前記燃料電池の出力端子間に接続される負荷、および、前記負荷の接続あるいは非接続を行う開閉スイッチを含む負荷回路と;前記出力端子間の電圧を測定する電圧測定部と;前記負荷回路の作動状態を確認する負荷回路検査部と;を備える。前記負荷回路検査部は、前記燃料電池のアノードに燃料ガスが供給された状態で、前記開閉スイッチの開閉を操作した際に発生する前記出力端子間の電圧の変化を前記電圧測定部で測定することにより、前記開閉スイッチの作動状態を確認する。この形態の燃料電池システムによれば、開閉スイッチの作動状態確認が、燃料電池のアノードへの燃料ガスが供給された状態とすることにより、簡単に実施することが可能となる。
【0008】
(2)上記燃料電池システムにおいて、前記負荷回路検査部は、前記燃料電池のカソードに酸化ガスが供給されない状態、かつ、前記アノードに燃料ガスが供給された状態で、前記開閉スイッチの開閉を操作した際に発生する前記出力端子間の電圧の変化を前記電圧測定部で測定することにより、前記開閉スイッチの作動状態を確認するようにしてもよい。この形態の燃料電池システムでは、発生する電圧が発電時に発生する電圧に比べて小さくなるので、負荷で発生する損失を小さくして効率良く作動状態の確認をすることが可能である。
【0009】
(3)上記形態の燃料電池システムにおいて、前記負荷回路検査部は、前記開閉スイッチが開状態となるように操作した場合に、前記電圧測定部で測定される測定電圧が前記開状態に対応する開電圧であり、前記開閉スイッチが閉状態となるように操作した場合に、前記測定電圧が前記閉状態に対応する閉電圧であることを確認することにより、前記開閉スイッチの作動状態を確認するようにしてもよい。測定電圧が開閉スイッチの操作に応じて開電圧となるか閉電圧となるか確認することにより、容易に開閉スイッチの作動状態を確認することができ、負荷回路の作動状態を確認することが可能である。
【0010】
本発明は、上記以外の種々の形態で実現することも可能である。例えば、燃料電池システムの作動状態確認方法や負荷回路の作動状態確認方法等の形態で実現することができる。
【図面の簡単な説明】
【0011】
図1】本発明の一実施形態としての燃料電池システムの概略構成を示す説明図である。
図2】負荷回路検査処理の手順を示す説明図である。
図3】負荷回路検査処理の具体例1を示す説明図である。
図4】負荷回路検査処理の具体例2を示す説明図である。
図5】負荷回路検査処理の具体例3を示す説明図である。
図6】負荷回路検査処理の具体例4を示す説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0012】
A.実施形態:
図1は、本発明の一実施形態としての燃料電池システムの概略構成を示す説明図である。燃料電池システム100は、駆動用電源を供給するためのシステムとして、車両等に搭載されて使用される。燃料電池システム100は、燃料電池10と、燃料ガス系20と、酸化ガス系30と、負荷回路40と、電圧センサー50と、制御部60と、を備えている。なお、燃料電池システム100には、燃料電池10の冷却を担う冷却系を備えるが、その図示および説明を省略する。
【0013】
燃料電池10は、一方の反応ガスである燃料ガス(アノードガス)として水素、および、他方の反応ガスである酸化ガス(カソードガス)として空気(具体的には、酸素)の供給を受けて発電する固体高分子形燃料電池である。燃料電池10は、複数の燃料電池セル12が積層されたスタック構造を有している。各燃料電池セル12は、膜電極接合体(不図示)と、膜電極接合体のアノード(水素ガスが供給される極で「水素極」とも呼ばれる)およびカソード(酸化ガスが供給される極で「空気極」とも呼ばれる)の両側から挟持するセパレータ(不図示)と、で構成される。膜電極接合体は、固体高分子電解質膜の一方の面にアノードとなる触媒電極が形成され、他方の面にカソードとなる触媒電極が形成された発電体である。なお、燃料電池10は、積層された燃料電池セル12の両端に、総合電極としての2つのターミナルプレート14が配置されている。なお、燃料電池10には、反応ガスや冷媒のためのマニホールド(不図示)が燃料電池セル12の積層方向に沿った貫通孔として形成されている。
【0014】
燃料ガス系20は、アノードガス配管21と、水素タンク22と、開閉弁23と、レギュレーター24と、インジェクター25と、アノードオフガス配管26と、開閉弁27と、を備える。水素タンク22は、アノードガス配管21を介して燃料電池10のアノード側の供給用マニホールドと接続されており、タンク内に充填された水素を燃料ガスとして燃料電池10に供給する。開閉弁23とレギュレーター24とインジェクター25とは、この順に、水素タンク22側からアノードガス配管21に設けられており、制御部60からの指令によって水素の圧力及び水素の燃料電池10への供給量を調整する。
【0015】
アノードオフガス配管26は、燃料電池10のアノード側の排出用マニホールドに接続された配管である。発電反応に用いられることのなかった未反応ガス(水素や窒素等)を含む燃料電池10のアノードからの排ガス(アノードオフガス)は、アノードオフガス配管26を介して燃料電池システム100の外部へと排出される。
【0016】
開閉弁27は、アノードオフガス配管26に設けられており、制御部60からの指令に応じて開閉する。また、開閉弁27は、制御部60からの指令によって、開閉弁23とともに閉状態とすることによって、開閉弁23から開閉弁27までのアノードガス流路を封止状態とすることができる。なお、「アノードガス流路」とは、開閉弁23と燃料電池10との間のアノードガス配管21、燃料電池10内のアノード側の供給用マニホールド、各燃料電池セル12内のアノード側のガス流路、燃料電池10内のアノード側の排出用マニホールド、および、燃料電池10と開閉弁27との間のアノードオフガス配管26を含んで構成される流路をいう。また、「燃料電池セル内部のアノード側のガス流路」とは、燃料電池セル内部のアノード側においてアノードガス(燃料ガス)が流通可能な空間をいう。
【0017】
酸化ガス系30は、カソードガス配管31と、エアクリーナー32と、エアコンプレッサー33と、開閉弁34と、カソードオフガス配管35と、調圧弁36と、を備える。カソードガス配管31は、燃料電池10のカソード側の供給用マニホールドに接続された配管である。エアコンプレッサー33は、カソードガス配管31を介して燃料電池10と接続されており、エアクリーナー32から吸入された空気を圧縮して、カソードガス(酸化ガス)として燃料電池10に供給する。開閉弁34は、エアコンプレッサー33と燃料電池10との間に設けられている。開閉弁34は、通常、閉じられた状態であり、エアコンプレッサー33から所定の圧力を有する空気がカソードガス配管31に供給されたときに開く。
【0018】
カソードオフガス配管35は、燃料電池10のカソード側の排出用マニホールドに接続された配管である。燃料電池10のカソードからの排ガス(カソードオフガス)は、カソードオフガス配管35を介して燃料電池システム100の外部へと排出される。
【0019】
調圧弁36は、カソードオフガス配管35に設けられており、制御部60からの指令によって、その開度が制御され、カソードガス配管31におけるカソードオフガスの圧力を調整する。また、調圧弁36は、制御部60からの指令によって、エアコンプレッサー33を停止状態とし、調圧弁36を閉状態とすることによって、開閉弁34から調圧弁36までのカソードガス流路を封止状態とすることができる。なお、「カソードガス流路」とは、開閉弁34と燃料電池10との間のカソードガス配管31、燃料電池10内のカソード側の供給用マニホールド、各燃料電池セル12内のカソード側のガス流路、燃料電池10内のカソード側の排出用マニホールド、および、燃料電池10と調圧弁36との間のカソードオフガス配管35を含んで構成される流路をいう。また、「燃料電池セル内のカソード側のガス流路」とは、燃料電池セル内部のカソード側においてカソードガス(酸化ガス)が流通可能な空間をいう。
【0020】
負荷回路40は、直列に接続された負荷41および開閉スイッチ42を備え、正極(+)側の出力ターミナルである一方のターミナルプレート14と負極(−)側の出力ターミナルである他方のターミナルプレート14との間に並列に接続されている。負荷回路40は、制御部60からの指令によって、開閉スイッチ42を開状態から閉状態とすることにより、燃料電池10の出力ターミナル間に負荷41を接続して、燃料電池10から負荷41に電流を流して、燃料電池10で発生する電気を放電する回路である。負荷回路40による放電操作によって、従来技術で説明したように、例えば、燃料電池システム100のシャットダウン(運転停止)の際に、燃料電池10の燃料電池セル12内に消費されずに残留する反応ガス(燃料ガスおよび酸化ガス)を消費して、反応ガスの残留によって発生する燃料電池セルの劣化を抑制することができる。出力ターミナル間には、負荷回路40に並列して電圧センサー50が接続されており、出力ターミナル間に発生する電圧(出力端子間電圧)Vtが測定可能である。なお、負荷回路40は「放電回路」あるいは「短絡回路」とも呼ばれる。また、負荷41は「放電負荷」あるいは「短絡負荷」とも呼ばれ、開閉スイッチ42は「放電スイッチ」あるいは「短絡スイッチ」とも呼ばれる。
【0021】
制御部60は、内部にCPUや、RAM、ROM等を備えるマイクロコンピュータによって構成される。制御部60は、CPUがROMに格納されている制御プログラムを、RAMを利用して実行することにより、運転制御部61や負荷回路検査部62等の各種制御部として動作する。
【0022】
運転制御部61は、燃料電池システム100の起動や、燃料電池システム100の起動後における燃料電池10の発電に関する動作(発電の開始、発電の継続、発電の停止等)、燃料電池システム100の停止等の各種動作を実行する。また、運転制御部61は、燃料ガス(水素)および酸化ガス(空気)の供給を停止して発電を停止する際に、以下の手順で、燃料ガス系20、酸化ガス系30、および、放電回路40を制御して、放電処理(「電圧降下処理」あるいは「短絡処理」とも呼ばれる)を実行する。
【0023】
まず、酸化ガス系30のエアコンプレッサー33を制御して、燃料電池10への空気の供給を停止し、調圧弁36を制御してカソードガス流路を封止状態にする。次に、負荷回路40の開閉スイッチ42を閉状態として負荷41を燃料電池10の出力端子間に接続し、燃料電池10の出力端子間を放電抵抗(短絡抵抗)41によって短絡する。そして、燃料ガス系20の開閉弁23、レギュレーター24、およびインジェクター25を制御して、燃料電池10への水素ガスの供給を停止し、開閉弁27を制御してアノードガス流路を封止状態にする。ただし、運転制御部61は、アノードガス流路に封入される水素と、カソードガス流路に封入される酸素と、のモル比が水素/酸素≧2となるように、空気および水素の供給を停止する。なお、燃料電池10内に流入しているガス量の状態は、ガス流量、ガス圧力等に基づいて計算により求められので、上記モル比となるように燃料ガス系20および酸化ガス系30を制御することは容易である。
【0024】
上記した発電停止状態では、放電処理(「短絡処理」とも呼ばれる)によって、カソードガス流路に封入された空気中の酸素はすべて消費されてゼロの状態となり、アノードガス流路に封入された水素は、ほとんど消費されてゼロの状態あるいは少し残った状態となる。このとき、アノードガス流路およびカソードガス流路のガス状態は、窒素のみの状態あるいは窒素および水素の混合状態となる。なお、膜電極接合体を構成する電解質膜ではガスのクロスリークが発生するので、アノードおよびカソードのどちらも同じガス組成状態となる。なお、以下の説明では、上記のように、ガス流路のガス状態が窒素のみの状態あるいは窒素および水素の混合状態となった環境を「窒素環境」とも呼ぶ。
【0025】
負荷回路検査部62は、運転制御部61によって、燃料ガスおよび酸化ガスの供給が停止しており、燃料電池10の発電が停止している状態から発電が開始される際に、以下で説明するように、負荷回路40の開閉スイッチ42の作動状態の確認検査を実行する。なお、負荷回路検査部62による検査実行タイミングとしては、例えば、燃料電池システム100の起動後の燃料電池10の発電の始動時、燃料電池10の発電状態から一旦上記した放電処理が発生する発電停止状態に移行した後の発電の再開時(例えば、いわゆる間欠運転において運転停止状態から運転再開する間欠運転明け時)等が該当する。また、負荷回路検査部62による負荷回路検査実行時には、燃料電池10から他の負荷に電力が供給されない状態であることが前提となる。
【0026】
図2は、負荷回路検査部によって実行される負荷回路検査処理の手順を示す説明図である。この負荷回路検査処理は、上記したように負荷回路検査部62によって実行される。まず、アノードガス流路およびカソードガス流路の両方が窒素環境となっている状態で、燃料ガス系20(図1)を制御して、アノードガス流路の封止状態を解除し、燃料ガス(アノードガス)としての水素の燃料電池10への供給を開始する(ステップS10)。
【0027】
そして、アノードガス流路に水素が供給されている水素環境で、かつ、カソードガス流路が窒素環境である環境(以下、単に「水素(H2)−窒素(N2)環境」とも呼ぶ)において、開閉スイッチ42の開から閉および閉から開への切り替えを制御し、これに応じて発生する出力端子間電圧Vtが開電圧V1と閉電圧V2との間で変化するか否かを確認する(ステップS20)。これにより、以下で説明するように、開閉スイッチ42が正常に作動しているか否かを確認し、負荷回路40が正常に作動しているか否かを確認する。
【0028】
水素−窒素環境においても、各燃料電池セル12では、通常の発電時に発生するセル電圧に比べると小さい(1/10程度)のセル電圧が発生し、出力端子間では燃料電池セル12の積層数に応じた電圧が発生することが分かった。また、負荷41が接続されていない状態に比べて負荷41が接続された状態では、各燃料電池セル12のセル電圧が小さくなり、出力端子間では燃料電池セル12の積層数に応じた電圧変化が発生することが分かった。なお、水素―窒素環境で一つの燃料電池セル12において発生する電圧は、温度や湿度の状態によって変動はあるが、負荷41が非接続状態では80mV〜120mV程度で、負荷41が接続状態では40mV〜60mV程度である。従って、負荷41の非接続状態と接続状態との間で20mV〜80mV程度の電圧変化が発生し、出力端子間では燃料電池セル12の積層数に応じて大きな電圧変化が発生するので、一般的な電圧センサー50によって十分検出可能であることが分かった。
【0029】
そこで、あらかじめ、負荷41の非接続状態(「解放状態」とも呼ぶ)における出力端子間電圧Vtを測定して開電圧V1とし、負荷41の接続状態における出力端子間電圧Vtを測定して閉電圧V2とすることとした。これにより、上記したように、出力端子間電圧Vtの開電圧V1から閉電圧V2への変化および閉電圧V2から開電圧V1への変化を確認することにより、開閉スイッチ42が正常に作動し、負荷回路40が正常に作動しているか否かを確認することができる。なお、開電圧V1および閉電圧V2は、マージンを考慮して、それぞれ一定の範囲に設定される。
【0030】
開閉スイッチ42の正常作動状態を確認した場合には(ステップS20:YES)、酸化ガス系30を制御して、カソードガス流路の封止状態を解除し、酸化ガス(カソードガス)としての空気の燃料電池10への供給を開始し(ステップS30)、負荷回路検査処理を終了する。これに対して、開閉スイッチ42の正常作動状態を確認できず、開閉スイッチ42が異常作動状態であり、負荷回路40が異常作動状態であった場合には(ステップS20:NO)、異常報知を実行(ステップS25)してユーザーに注意を喚起したうえで、酸化ガス(カソードガス)としての空気の燃料電池10への供給を開始し(ステップS30)、負荷回路検査処理を終了する。
【0031】
図3〜6は、負荷回路検査処理の具体例1〜4を示す説明図である。図3〜6は、期間T1〜T5あるいは期間T1〜T5の間における、(a)出力端子間電圧Vt、(b)開閉スイッチ42の開閉設定、(c)水素(H2)供給量、及び、(d)空気(air)供給量について示している。
【0032】
図3の具体例1は、以下のように負荷回路検査処理が実行される例を示している。検査開始後最初の期間T1は、検査開始前の前提である負荷回路40による放電処理が実行された状態が維持されているものとする。すなわち、水素供給および空気供給が停止され、発電が停止している状態であり、開閉スイッチ42が閉設定となっており、燃料電池10のアノードガス流路およびカソードガス流路が共に窒素環境となっている。
【0033】
期間T1から期間T2への移行タイミングで、開閉スイッチ42が閉設定から開設定に切り替えられた後、期間T2から期間T3への移行タイミングで、水素供給が開始され、アノードガス流路とカソードガス流路のガス環境は水素―窒素環境とされる(図2のステップS10に対応)。期間T3では、出力端子間電圧Vtが開電圧V1となっていることの確認により、開閉スイッチ42が開状態となっていることが確認される(以下、この確認を「放電スイッチ開状態確認」あるいは「開状態確認」とも呼ぶ)。
【0034】
期間T3から期間T4への移行タイミングで、開閉スイッチ42が開設定から閉設定に切り替えられる。期間T4では、出力端子間電圧Vtが閉電圧V2となっていることの確認により、開閉スイッチ42が閉状態となっていることが確認される(以下、この確認を「放電スイッチ閉状態確認」あるいは「閉状態確認」とも呼ぶ)。また、出力端子間電圧Vtの開電圧V1から閉電圧V2への変化が確認される(以下、この確認を「放電スイッチ閉切替確認」あるいは「閉切替確認」とも呼ぶ)ことにより、開閉スイッチ42が開状態から閉状態に変化して開から閉への切り替えが、正常に作動していることが確認される。
【0035】
期間T4から期間T5の移行タイミングで、開閉スイッチ42が閉設定から開設定に切り替えられる。期間T5では、出力端子間電圧Vtが開電圧V1となっていることの確認により放電スイッチ閉状態確認が行われる。また、出力端子間電圧Vtの閉電圧V2から開電圧V1への変化が確認される(以下、この確認を「放電スイッチ開切替確認」あるいは「開切替確認」とも呼ぶ)ことにより、開閉スイッチ42が閉状態から開状態に変化して閉から開への切り替えが、正常に作動していることが確認される。なお、本例では、期間T3〜期間T5が図2のステップS20に対応する。
【0036】
期間T5から期間T6への移行タイミングで、空気供給が開始されて(ステップS30に対応)、負荷回路検査処理が終了する。
【0037】
図4の具体例2は、以下のように負荷回路検査処理が実行される例を示している。検査開始後最初の期間T1は具体例1と同じである。期間T1から期間T2への移行タイミングでは、水素供給の開始と、開閉スイッチ42の閉設定から開設定への切り替えと、が実行され、放電スイッチ開状態確認が行われる。期間T2から期間T3への移行タイミングでは、開閉スイッチ42の開設定から閉設定への切り替えが実行され、放電スイッチ閉状態確認および放電スイッチ閉切替確認が行われる。期間T3から期間T4への移行タイミングでは、開閉スイッチ42の閉設定から開設定への切り替えが実行され、放電スイッチ開状態確認および放電スイッチ開切替確認が行われる。期間T4から期間T5への移行タイミングでは、空気供給が開始され、負荷回路検査処理が終了する。なお、本例では、期間T2〜期間T4が図2のステップS20に対応する。
【0038】
図5の具体例3は、以下のように負荷回路検査処理が実行される例を示している。検査開始後最初の期間T1は具体例1と同じである。期間T1から期間T2への移行タイミングでは、水素供給が開始され、放電スイッチ閉状態確認が行われる。期間T2から期間T3への移行タイミングでは、開閉スイッチ42の閉設定から開設定への切り替えが実行され、放電スイッチ開状態確認および放電スイッチ開切替確認が行われる。期間T3から期間T4への移行タイミングでは、開閉スイッチ42の開設定から閉設定への切り替えが実行され、放電スイッチ閉状態確認および放電スイッチ閉切替確認が行われる。期間T4から期間T5への移行タイミングでは、空気供給が開始され、負荷回路検査処理が終了する。なお、本例では、期間T2〜期間T4が図2のステップS20に対応する。
【0039】
図6の具体例4は、以下のように負荷回路検査処理が実行される例を示している。具体例4は、期間T1から期間T4における処理は具体例3と同様であり、期間T1から期間T2への移行による放電スイッチ閉状態確認と、期間T2から期間T3への移行による放電スイッチ開状態確認および放電スイッチ開切替確認と、期間T3から期間T4への移行による放電スイッチ閉状態確認および放電スイッチ閉切替確認と、が行われる。具体例4では、さらに、期間T4から期間T5への移行タイミングで、開閉スイッチ42の閉設定から開設定への切り替えが実行され、放電スイッチ開状態確認および放電スイッチ開切替確認が行われる。期間T5から期間T6への移行タイミングでは、空気供給が開始され、負荷回路検査処理が終了する。なお、本例では、期間T2〜期間T5が図2のステップS20に対応する。
【0040】
以上説明したように、負荷回路検査部62は、運転制御部61によって、燃料ガス(水素)および酸化ガス(空気)の供給が停止し、燃料電池10の発電が停止している状態において、発電を開始するために燃料ガスの供給を開始してから酸化ガスの供給を開始するまでのガス導入過程において、開閉スイッチ42の開閉切り替えを行うことにより、開閉スイッチ42の作動状態を確認し、負荷回路40の作動状態を確認することができる。従って、従来例で説明した燃料電池10の運転停止時だけでなく、燃料電池システム100を起動による燃料電池10の運転始動時や、燃料電池10の発電を間欠的に停止する間欠運転における運転停止状態から運転を再開する時(いわゆる間欠運転明け時)等の燃料電池システム100の稼働中において、種々のタイミングで、容易に確認検査を実行することが可能である。
【0041】
なお、カソードガス流路が窒素環境となって酸素が無い状態で、アノードガス流路に水素が供給されている状態において、開閉スイッチ42が閉状態となって負荷41が出力端子間に接続された状態にある場合、触媒電極の活性を改善することが可能であり、膜電極接合体の発電性能を改善することが可能であることも分かっている。従って、上記負荷回路検査処理では、放電スイッチの作動状態(放電回路の作動状態)の確認が可能であるとともに、膜電極接合体の発電性能の改善効果も有している。
【0042】
B.変形例:
(1)変形例1:
上記実施形態では、発電停止時においてアノードガス流路およびカソードガス流路を封止状態として、燃料電池10で発生する電気を負荷回路40で放電させることにより封入された水素および酸素を消費させて、アノードガス流路内およびカソードガス流路内を窒素環境とする構成を例に説明した。しかしながら、これに限定されるものではなく、例えば、窒素供給装置を搭載して、アノードガス流路およびカソードガス流路に窒素を供給することによってアノードガス流路およびカソードガス流路を窒素環境としてもよい。
【0043】
(2)変形例2:
上記実施形態では、異常報知を実行した後、空気供給を開始して、運転制御部61による運転制御が実行されるものとして説明したが、異常報知を実行した後、空気供給を開始せずに負荷回路検査処理を終了し、運転制御部61によって発電の開始が中止されるようにしてもよい。
【0044】
(3)変形例3:
上記実施形態では、カソードガス流路が窒素環境であって酸素が無い状態で、アノードガス流路に水素が供給されている状態において、開閉スイッチ42の開閉を実行することにより負荷回路検査が実行されるものとして説明している。しかしながら、通常の発電時と同様に、アノードガス流路に水素が供給され、カソードガス流路に空気が供給されている状態においても、開閉スイッチ42を開閉して負荷41の接続状態を切り替えることにより、出力端子間電圧Vtに電圧の変化が発生することが分かっている。従って、通常の発電時と同様に、アノードガス流路に水素が供給され、カソードガス流路に空気が供給されている状態においても、スイッチ42の作動状態を確認することは可能である。ただし、この場合の出力端子間電圧Vtは、実施形態の場合に比べて非常に大きな電圧となるので、開閉スイッチ42の接続時における発熱損失が大きくなる。従って、実施形態のように、カソードガス流路が窒素環境であって酸素が無い状態で、負荷回路検査が実行される方が好ましい。
【0045】
(4)変形例4:
上記実施形態では、燃料電池10の出力端子間に接続される負荷回路40を例に説明したが、各燃料電池セルに接続される負荷回路においても、セル電圧の変化に基づいて開閉スイッチの作動確認および負荷回路の作動確認を行うことができる。
【0046】
(5)変形例5:
上記実施形態では、燃料電池10から電気を放電するための負荷回路40を例に説明したが、その他の負荷回路であって、負荷および負荷の接続あるいは非接続を行う開閉スイッチを含む負荷回路において、開閉スイッチの作動確認および負荷回路の作動確認を行うこともできる。
【0047】
本発明は、上述の実施形態や実施例、変形例に限られるものではなく、その趣旨を逸脱しない範囲において種々の構成で実現することができる。例えば、発明の概要の欄に記載した各形態中の技術的特徴に対応する実施形態、実施例、変形例中の技術的特徴は、上述の課題の一部又は全部を解決するために、あるいは、上述の効果の一部又は全部を達成するために、適宜、差し替えや、組み合わせを行うことが可能である。また、その技術的特徴が本明細書中に必須なものとして説明されていなければ、適宜、削除することが可能である。
【符号の説明】
【0048】
10…燃料電池
12…燃料電池セル
14…ターミナルプレート
20…燃料ガス系
21…アノードガス配管
22…水素タンク
23…開閉弁
24…レギュレーター
25…インジェクター
26…アノードオフガス配管
27…開閉弁
30…酸化ガス系
31…カソードガス配管
32…エアクリーナー
33…エアコンプレッサー
35…カソードオフガス配管
36…調圧弁
40…放電回路
41…放電抵抗
42…放電スイッチ
50…電圧センサー
60…制御部
61…運転制御部
62…負荷回路検査部
100…燃料電池システム
図1
図2
図3
図4
図5
図6