特許第6251973号(P6251973)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2015.5.11 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6251973
(24)【登録日】2017年12月8日
(45)【発行日】2017年12月27日
(54)【発明の名称】止水用構造体及びそれを用いた工事方法
(51)【国際特許分類】
   E03F 7/00 20060101AFI20171218BHJP
【FI】
   E03F7/00
【請求項の数】6
【全頁数】13
(21)【出願番号】特願2013-81508(P2013-81508)
(22)【出願日】2013年4月9日
(65)【公開番号】特開2014-202043(P2014-202043A)
(43)【公開日】2014年10月27日
【審査請求日】2015年12月3日
(73)【特許権者】
【識別番号】000006655
【氏名又は名称】新日鐵住金株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100095957
【弁理士】
【氏名又は名称】亀谷 美明
(74)【代理人】
【識別番号】100096389
【弁理士】
【氏名又は名称】金本 哲男
(74)【代理人】
【識別番号】100101557
【弁理士】
【氏名又は名称】萩原 康司
(74)【代理人】
【識別番号】100128587
【弁理士】
【氏名又は名称】松本 一騎
(72)【発明者】
【氏名】内藤 寛子
(72)【発明者】
【氏名】榎田 忠宏
【審査官】 竹村 真一郎
(56)【参考文献】
【文献】 実開昭54−066398(JP,U)
【文献】 特開平08−113933(JP,A)
【文献】 実開昭59−7094(JP,U)
【文献】 特開2003−119793(JP,A)
【文献】 特開昭52−057690(JP,A)
【文献】 登録実用新案第3050190(JP,U)
【文献】 特開2010−216125(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
E02B 1/00−3/28、5/00−7/18、8/06−8/08
E02C 1/00−5/02
E03F 7/00
B63C 11/44
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
液体を貯蔵する液体貯蔵体の操業中に前記液体貯蔵体の外部から行う工事に使用される止水用構造体であって、
中空部の周囲を覆う壁体と、前記壁体の一部にのみ設けられ、前記中空部に連通する開口面とを備え、前記液体貯蔵体内に投入された際に、前記開口面が前記液体貯蔵体の内壁面の工事対象箇所に当接する筐体と、
一方の端部が前記筐体の中空部に連結され、他方の端部が前記液体の液面上に配置される空気導通管と、
一方の端部が前記筐体の中空部に連結され、他方の端部がポンプに連結された液体導通管と、を備え、
前記空気導通管には、前記筐体からの距離を示す目盛が記されていることを特徴とする、止水用構造体。
【請求項2】
中空部の周囲を覆う壁体と、前記壁体の一部にのみ設けられ、前記中空部に連通する開口面とを備え、液体を貯蔵する液体貯蔵体内に投入された際に、前記開口面が前記液体貯蔵体の内壁面の工事対象箇所に当接する筐体と、
一方の端部が前記筐体の中空部に連結され、他方の端部が前記液体の液面上に配置される空気導通管と、
一方の端部が前記筐体の中空部に連結され、他方の端部がポンプに連結された液体導通管と、
前記液体の液面に浮く浮き体と、
前記浮き体と前記筐体とを連結する連結体と、を備えることを特徴とする、止水用構造体。
【請求項3】
前記開口面の外周部は、前記開口面の外側に突出していることを特徴とする、請求項1または2に記載の止水用構造体。
【請求項4】
前記筐体は、前記開口面の外周部に設けられる弾性体を有することを特徴とする、請求項1〜3のいずれか1項に記載の止水用構造体。
【請求項5】
請求項1〜4の何れか1項に記載の止水用構造体を用いた工事方法であって、
前記筐体を液体貯蔵体内に投入するステップと、
前記筐体の開口面を前記液体貯蔵体の内壁面の工事対象箇所に当接させるステップと、
前記ポンプを用いて前記筐体内の液体を排出するとともに、前記空気導通管から空気を前記筐体内に注入するステップと、を有し、
前記筐体の水深を工事対象個所に一致させることを特徴とする、工事方法。
【請求項6】
アーム部材を用いて前記筐体の開口面を前記工事対象箇所に当接させることを特徴とする、請求項5記載の工事方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、止水用構造体及びそれを用いた工事方法に関する。
【背景技術】
【0002】
特許文献1は、汚水槽を改修する方法を開示する。特許文献1に開示された方法では、まず、汚水槽から汚水を排水する。次いで、空になった汚水槽の内壁面に膜状部材を固着する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2002−30721号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
このように、従来の工事方法では、液体貯蔵体(特許文献1では汚水槽)の内壁面に何らかの工事を行う場合、液体貯蔵体に貯蔵された液体を排水する必要があった。このため、工事に非常に手間がかかるという問題があった。さらに、従来の工事方法は、液体貯蔵体に貯蔵された液体を排水するため、液体貯蔵体の操業(特許文献1に開示された技術では、例えば汚水の受け入れ)を停止する必要があるという問題もあった。
【0005】
そこで、本発明は、上記問題に鑑みてなされたものであり、本発明の目的とするところは、液体貯蔵体の操業中に液体貯蔵体の工事を行うことができ、かつ、液体貯蔵体の工事に掛かる手間及び費用を低減することが可能な、新規かつ改良された止水用構造体及び工事方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記課題を解決するために、本発明のある観点によれば、液体を貯蔵する液体貯蔵体の操業中に液体貯蔵体の外部から行う工事に使用される止水用構造体であって、中空部の周囲を覆う壁体と、壁体の一部にのみ設けられ、中空部に連通する開口面とを備え、液体貯蔵体内に投入された際に、開口面が液体貯蔵体の内壁面の工事対象箇所に当接する筐体と、一方の端部が筐体の中空部に連結され、他方の端部が液体の液面上に配置される空気導通管と、一方の端部が筐体の中空部に連結され、他方の端部がポンプに連結された液体導通管と、を備え、空気導通管には、筐体からの距離を示す目盛が記されていることを特徴とする、止水用構造体が提供される。
本発明の他の観点によれば、中空部の周囲を覆う壁体と、壁体の一部にのみ設けられ、中空部に連通する開口面とを備え、液体を貯蔵する液体貯蔵体内に投入された際に、開口面が液体貯蔵体の内壁面の工事対象箇所に当接する筐体と、一方の端部が筐体の中空部に連結され、他方の端部が液体の液面上に配置される空気導通管と、一方の端部が筐体の中空部に連結され、他方の端部がポンプに連結された液体導通管と、液体の液面に浮く浮き体と、浮き体と筐体とを連結する連結体と、を備えることを特徴とする、止水用構造体が提供される。
【0007】
ここで、開口面の外周部は、開口面の外側に突出していてもよい。
【0008】
また、筐体は、開口面の外周部に設けられる弾性体を有していてもよい。
【0011】
本発明の他の観点によれば、上記の止水用構造体を用いた工事方法であって、筐体を液体貯蔵体内に投入するステップと、筐体の開口面を液体貯蔵体の内壁面の工事対象箇所に当接させるステップとポンプを用いて筐体内の液体を排出するとともに空気導通管から空気を筐体内に注入するステップと、を有し、筐体の水深を工事対象個所に一致させることを特徴とする、工事方法が提供される。
【0012】
ここで、アーム部材を用いて筐体の開口面を工事対象箇所に当接させるようにしてもよい。
【発明の効果】
【0013】
以上説明したように本発明によれば、作業者は、筐体の開口面を工事対象箇所に当接させ、ついで、ポンプを用いて中空部内の液体を排出することで、工事対象箇所を液体から隔離することができる。したがって、作業者は、工事対象箇所を液体から容易に隔離することができる。そして、作業者は、工事対象箇所に各種の工事を行うことができる。このように、本発明によれば、作業者は、液体貯蔵体内の液体を排出することなく、工事を行うことができるので、液体貯蔵体の操業中に液体貯蔵体の工事を行うことができる。さらに、本発明によれば、液体貯蔵体の工事に掛かる手間及び費用を低減することができる。
【図面の簡単な説明】
【0014】
図1】本発明の実施形態に係る工事方法の概要を説明するための側断面図である。
図2】同実施形態にかかる止水用構造体の詳細構成を示す側断面図である。
図3】止水用構造体の変形例を示す側断面図である。
図4】止水用構造体の変形例を示す側断面図である。
図5】止水用構造体の変形例を示す側断面図である。
図6】実施形態に係る工事方法の詳細を説明するための側断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0015】
以下に添付図面を参照しながら、本発明の好適な実施の形態について詳細に説明する。なお、本明細書及び図面において、実質的に同一の機能構成を有する構成要素については、同一の符号を付することにより重複説明を省略する。
【0016】
<1.本実施形態の概要>
まず、図1に基づいて、本実施形態の概要について説明する。上述したように、従来の工事方法では、水槽100の内壁面に存在する工事対象箇所110を工事する場合には、水槽100内の液体200を全て排出する必要があった。このため、工事に手間がかかり、かつ、水槽100を用いた操業を停止する必要があった。なお、図1では、工事対象箇所110は水槽100の内壁面から外壁面に亘って形成されている。工事対象箇所110が水槽100の内壁面から外壁面に亘って形成される場合としては、例えば、水槽100の壁面を貫通するパイプ等を設ける場合が挙げられる。
【0017】
これに対し、本実施形態に係る工事方法は、まず、止水用構造体10が備える筐体20を水槽100内に投入する。ここで、止水用構造体10の構造について簡単に説明する。止水用構造体10は、筐体20と、空気導通管30と、液体導通管40とを備える。
【0018】
筐体20は、中空の直方体の形状を有しており、上端部22、下端部23、及び側面部24を備える。筐体20は例えば鋼材で構成される。上端部22は、液体200中で液体200の液面210に対向する部分である。下端部23は、液体200中で水槽100の底面120に対向する部分である。側面部24は、上端部22と下端部23とを連結する部分である。側面部24の一面には開口面25が形成されている。開口面25は中空部21aに連通している。
【0019】
空気導通管30は、空気が流通する管であり、例えば鋼管である。空気導通管30の一方の端部30aは、筐体20の中空部21aに連結される。他方の端部30bは、筐体20が液体200内に投入された際に、液面210上に配置される。
【0020】
液体導通管40は、液体200が流通する管であり、例えば鋼管である。液体導通管40の一方の端部は、筐体20の中空部21aに連結される。他方の端部は、ポンプ300に連結されている。
【0021】
筐体20を液体200内に投入すると、中空部21aが液体200で満たされる。そして、作業者H(図6参照)は、後述するアーム部材500(図6参照)を用いて筐体20の開口面25を工事対象箇所110の周囲に当接させる。このとき、空気導通管30の他方の端部30bは液面210上に配置される。ついで、作業者Hは、ポンプ300を駆動させることで、中空部21a内の液体200を排出する。ここで、中空部21a内の液体200の排出に伴い、空気導通管30から中空部21a内に空気が導入される。これにより、中空部21a内の水圧と液面210との間に水頭差が生じるので、筐体20は水槽100内壁面の工事対象箇所110の周囲へ大きな力を加えなくとも自然に抑えつけられる。なお、中空部21a内の水圧と液面210との間にわずかでも水頭差があれば、筐体20は工事対象箇所110の周囲に当接し続けることができる。
【0022】
これにより、工事対象箇所110は液体200から隔離されるので、作業者Hは、工事対象箇所110に各種の工事を行うことができる。例えば、作業者Hは、工事対象箇所110が破損している場合には、工事対象箇所110を水槽100の外側から除去し、除去部分にあらたな材料を充填することで、工事対象箇所110を補修することができる。
【0023】
また、作業者Hは、工事対象箇所110にパイプ導入用の貫通穴を形成することができる。この場合、作業者Hは、水槽100の外側から工事対象箇所110に貫通穴を形成することができる。ここで、工事対象箇所110は液体200から隔離されているので、本実施形態の工事方法によれば、貫通穴から液体200がこぼれだすことを防止することができる。作業者Hは、貫通穴にパイプを導入し、このパイプに新たな水槽を連結することができる。すなわち、作業者Hは、水槽100の増築を行うことができる。
【0024】
また、作業者Hは、耐水性の撮像装置を予め(筐体20の液体200への投入前に)中空部21a内に配置しておき、この撮像装置を用いて工事対象箇所110を撮影することができる。そして、作業者Hは、撮影により得られた画像データ等にもとづいて、工事対象箇所110の劣化調査を行うことができる。
【0025】
また、本実施形態の工事方法によれば、水槽100から液体200を排出すること無く工事対象箇所110を工事することができるので、工事に掛かる手間を低減することができる。さらに、本実施形態の工事方法によれば、水槽100を用いた操業を停止することなく、工事を行うことができる。さらに、本実施形態の工事方法によれば、作業者Hは、水槽100の内部に入ること無く、工事対象箇所110を液体200から隔離し、かつ、各種の工事を行うことができる。したがって、作業者Hは、仮に液体200の温度が高い(例えば80℃以上)場合であっても、安全に工事を行うことができる。
【0026】
<2.本実施形態の工事方法が適用される水槽>
本実施形態の工事方法が適用される水槽100はどのようなものであってもよい。例えば特許文献1に開示された汚水槽であってもよいし、製鉄設備内の水槽であってもよい。水槽100内の液体としては、例えば水(水溶液を含む)があげられるが、これに限られない。
<3.止水用構造体の構成>
次に、図2に基づいて、止水用構造体10の詳細な構造について説明する。止水用構造体10は、筐体20と、空気導通管30と、液体導通管40と、浮き構造体50とを備える。ここで、止水用構造体10は、耐環境性(例えば、液体200に対する耐腐食性、耐圧性)を有する材料で構成される。
【0027】
筐体20は、筐体本体21と、弾性体27とを備える。筐体本体21は、中空の直方体の形状を有しており、中空部21aと、壁体と、開口面25とを備える。壁体は、中空部21aの周囲を覆うものであり、上端部22、下端部23、及び側面部24に区分される。
【0028】
上端部22は、液体200中で液面210に対向する部分である。下端部23は、液体200中で水槽100の底面120に対向する部分である。側面部24は、上端部22と下端部23とを連結する部分である。
【0029】
開口面25は、側面部24の一部(ここでは一側面)にのみ形成されている。開口面25は、工事対象箇所110に当接する部分であり、中空部21aに連通している。また、開口面25の外周部26は、開口面25の外側に突出している。開口面25の外周部26は、弾性体27を介して工事対象箇所110の周囲に当接する。したがって、外周部26が大きいほど、筐体20は水槽100の内壁面に強固に当接することができる。このように、筐体本体21は、いわゆるハット形状となっている。なお、開口面25の外周部26はこのような突出部分を有していなくてもよい。
【0030】
弾性体27は、開口面25の外周部26全域に設けられ、工事対象箇所110の周囲に当接する。なお、弾性体27は、外周部26の一部にのみ設けられてもよい。弾性体27は、耐環境性を有し、かつ液体200を通しにくい材料で構成される。すなわち、弾性体27は、止水性を有する。弾性体27は、例えば止水ゴムである。したがって、弾性体27は、筐体20の水槽100への密着性を向上させるとともに、液体200が弾性体27を介して中空部21aに侵入することを抑制することができる。
【0031】
空気導通管30は、空気が流通する管である。空気導通管30の一方の端部30aは、筐体20の上端部22を通って筐体20の中空部21aに連結される。他方の端部30bは、筐体20が液体200内に投入された際に、液面210上に配置される。また、空気導通管30には、目盛31が記されている。目盛31は、筐体20からの距離を示す。より具体的には、目盛31は、開口面25の中心点から各目盛31までの鉛直方向の距離を示す。したがって、作業者Hは、液面210の目盛31を読むことで、開口面25の中心点が現在どの程度の水深に存在するかを容易に把握することができる。
【0032】
液体導通管40は、液体200が流通する管である。液体導通管40の一方の端部は、筐体20の下端部23を通って筐体20の中空部21aに連結される。他方の端部は、ポンプ300に連結されている。
【0033】
浮き構造体50は、浮き体51と連結体52とを備える。浮き体51は、連結体52を介して筐体20に連結されており、液体200から与えられる浮力によって液面210に浮くことができる。これにより、筐体20が水槽100の底面120まで沈むことが防止される。すなわち、筐体20は、連結体52が伸びきるまで沈むが、連結体52が伸びきった以降は沈まなくなる。
【0034】
連結体52は、浮き体51と筐体20とを連結するものである。具体的には、連結体52の一方の端部は筐体20の上端部22に連結され、他方の端部は浮き体51に連結されている。
【0035】
ここで、連結体52の長さは、連結体52が伸びきった際の筐体20の水深(具体的には、開口面25の中心点の水深)と、工事対象箇所110の水深とが一致するように設計される。したがって、作業者Hは、目盛31及び浮き構造体50を併用することで、筐体20の深さ方向の位置合わせを容易に行うことができる。すなわち、作業者Hは、筐体20を液体200内に投入した後、連結体52が伸びきるまで待機する。そして、作業者Hは、液面210の目盛31を読む。作業者Hは、液面210の目盛31が工事対象箇所110の水深に一致している場合には、開口面25の中心点の水深と、工事対象箇所110の水深とが一致すると判断する。
【0036】
一方、作業者Hは、液面210の目盛31が工事対象箇所110の水深に一致していない場合には、これらが一致するように筐体20の水深の微調整を行う。したがって、作業者Hは、開口面25の中心点の水深を工事対象箇所110の水深に容易に合わせることができる。
【0037】
空気導通管30は、浮き構造体50より長くなければならない。これにより、筐体20が液体200内に投入された際に、空気導通管30の他方の端部30bが液面210上に配置されやすくなる。なお、連結体52の長さは、上述した長さ以外であってもよいが、作業性の向上という観点からは、上述した長さに設計されることが好ましい。
【0038】
(止水用構造体の第1変形例)
止水用構造体10の第1変形例を図3に示す。図3に示すように、第1変形例に係る止水用構造体10−1は、止水用構造体10から目盛31を省略したものである。上述したように、目盛31は、開口面25の中心点の水深を調整するために用いられる。一方、連結体52の長さは、連結体52が伸びきった際の開口面25の中心点の水深と、工事対象箇所110の水深とが一致するように設計される。したがって、筐体20が液体200内に投入された後、開口面25の中心点の水深は、自動的に工事対象箇所110の水深に一致する。
【0039】
このため、目盛31及び浮き構造体50のうち、少なくとも一方があれば作業者Hは開口面25の中心点の水深を工事対象箇所110の水深に一致させることができる。そこで、第1変形例に係る止水用構造体10−1では、目盛31を省略した。作業者Hは、浮き構造体50を用いることで、開口面25の中心点の水深を工事対象箇所110の水深に容易に一致させることができる。
【0040】
(止水用構造体の第2変形例)
止水用構造体10の第2変形例を図4に示す。第2変形例に係る止水用構造体10−2は、止水用構造体10から浮き構造体50を省略したものである。上述したように、目盛31及び浮き構造体50のうち、少なくとも一方があれば作業者Hは開口面25の中心点の水深を工事対象箇所110の水深に一致させることができる。そこで、第2変形例に係る止水用構造体10−2では、浮き構造体50を省略した。作業者Hは、目盛31を用いることで、開口面25の中心点の水深を工事対象箇所110の水深に容易に一致させることができる。ただし、第2変形例に係る止水用構造体10−2では、作業者Hは、筐体20が工事対象箇所110よりも深い位置まで沈まないように、筐体20を保持する必要がある。
【0041】
(止水用構造体の第3変形例)
上述した止水用構造体10では、筐体20は直方体の形状を有しているが、筐体20の形状はこれに限られない。すなわち、筐体20は、中空部を有し、かつ、側面部の一面のみが開口していれば良い。図5は、第3変形例に係る止水用構造体10−3を示す。止水用構造体10−3は、止水用構造体10の筐体20を筐体70に置き換えたものである。
【0042】
筐体70は、筐体本体71と、弾性体76とを備える。筐体本体71は、中空部71aと、中空部71aの周囲を覆う壁体と、開口面74とを備える。壁体は、中空の半球形状となっており、半球の平面部分のみが開口している(すなわち、開口面74となっている)。壁体は、上端部72及び下端部73に区分される。
【0043】
上端部72は、液体200中で液面210に対向する部分である。下端部73は、液体200中で水槽100の底面120に対向する部分である。開口面74は、壁体の一部(ここでは半球の平面部分)にのみ設けられる。開口面74は、工事対象箇所110に当接する。また、開口面74は、筐体70の中空部71aに連通している。
【0044】
また、開口面74の外周部75は、開口面74の外側に突出している。開口面74の外周部75は、弾性体76を介して工事対象箇所110の周囲に当接する。したがって、外周部75が大きいほど、筐体20は水槽100の内壁面に強固に当接することができる。このように、筐体本体71は、いわゆるハット形状となっている。なお、開口面74の外周部75はこのような突出部分を有していなくてもよい。弾性体76は上述した弾性体27と同様である。第3変形例に係る止水用構造体10−3によっても、止水用構造体10と同様の効果が得られる。もちろん、第3変形例を上述した第1または第2変形例と組み合わせてもよい。
【0045】
<4.止水用構造体を用いた工事方法>
次に、図6に基づいて、止水用構造体10を用いた工事方法を説明する。まず、作業者Hは、水槽100の上端部のうち、工事対象箇所110の直上部分に仮設櫓400を設置する。仮設櫓400には、後述するアーム部材500の支点410が設けられる。
【0046】
次いで、作業者Hは、止水用構造体10の筐体20を液体200内に投入する。筐体20は、連結体52が伸びきるまでは沈むが、連結体52が伸びきった以降は沈まなくなる。そして、この時点で、開口面25の中心点の水深は、工事対象箇所110の水深に一致する。作業者Hは、液面210の目盛31を見ることで、開口面25の中心点の水深が工事対象箇所110の水深に一致していることを確認する。ただし、この時点では、筐体20の中空部21aには液体200が満たされており、かつ、開口面25は工事対象箇所110から離れている。作業者Hは、開口面25の中心点の水深が工事対象箇所110の水深に一致していない場合には、筐体20の水深の微調整を行う。
【0047】
次いで、作業者Hは、アーム部材500を支点410に接続する。ここで、アーム部材500は、90度折れ曲がった長尺の部材であり、操作部510と、液体投入部520とを備える。操作部510は、作業者Hにより操作される部分である。操作部510の一方の端部は、支点410に回動可能に接続され、他方の端部は、液体投入部520に接続される。液体投入部520は、液体200内で筐体20を工事対象箇所110に引き寄せる部分である。
【0048】
次いで、作業者Hは、アーム部材500の液体投入部520を液体200内に投入する。そして、液体投入部520の先端部520aを筐体20の側面部24に押し当てる。そして、作業者Hは、操作部510を矢印A方向に回動させることで、液体投入部520の先端部520aを矢印B方向に回動させる。これにより、作業者Hは、筐体20を工事対象箇所110側に引き寄せる。ここで、作業者Hは、浮き体51及び空気導通管30の水平方向の位置を筐体20の水平方向の位置の目安にすることができる。浮き体51及び空気導通管30は、筐体20の直上に存在するからである。
【0049】
作業者Hは、アーム部材500から大きな反発力(矢印A方向と逆方向の反発力)を受けた場合には、筐体20の開口面25が工事対象箇所110に当接したと判断する。ついで、作業者Hは、ポンプ300を駆動させることで、中空部21a内の液体200を排出する。ここで、液体導通管40は、筐体20の下端部23を通って中空部21aに連結されているので、液体200を効率的に排出することができる。また、開口面25が工事対象箇所110に当接する際には、弾性体27が工事対象箇所110の周囲に強固に当接しているので、液体200の中空部21a内への侵入が抑制される。
【0050】
一方、中空部21a内の液体200の排出に伴い、空気導通管30から中空部21a内に空気が導入される。これにより、中空部21a内の圧力と液面210との間に水頭差が生じるので、筐体20は水槽100内壁面の工事対象箇所110の周囲へ大きな力を加えなくとも自然に抑えつけられる。ここで、空気導通管30は筐体20の上端部22を通って中空部21aに連結されているので、空気をより効率的に中空部21a内に導入することができる。また、中空部21a内と液面210との間にわずかでも水頭差があれば、筐体20は工事対象箇所110の周囲に当接し続けることができる。
【0051】
また、ポンプ300が駆動している際に、開口面25が工事対象箇所110に当接していれば、中空部21a内の液体200はやがて枯渇する。また、空気導通管30から空気が中空部21a内に吸引(導入)される。したがって、作業者Hは、ポンプ300が液体200を引かなくなったこと、または空気導通管30から空気が吸引されることを確認することによっても、開口面25が工事対象箇所110に当接することを確認することができる。また、作業者Hは、工事対象箇所110を水槽100の外側から叩き、その時の音質にもとづいて、開口面25が工事対象箇所110の周囲に当接したか否かを確認することもできる。また、作業者Hは、液体投入部520と液面210とのなす角度によっても、開口面25が工事対象箇所110の周囲に当接したか否かを確認することができる。例えば、図6の場合であれば、作業者Hは、液体投入部520が液面210に対して鉛直になった場合に、開口面25が工事対象箇所110の周囲に当接したと判断することができる。
【0052】
これにより、工事対象箇所110は液体200から隔離されるので、作業者Hは、工事対象箇所110に各種の工事を行うことができる。例えば、作業者Hは、工事対象箇所110が破損している場合には、工事対象箇所110を水槽100の外側から除去し、除去部分にあらたな材料を充填することで、工事対象箇所110を補修することができる。
【0053】
また、作業者Hは、工事対象箇所110にパイプ導入用の貫通穴を形成することができる。この場合、作業者Hは、水槽100の外側から工事対象箇所110に貫通穴を形成することができる。ここで、工事対象箇所110は液体200から隔離されているので、本実施形態の工事方法によれば、貫通穴から液体200がこぼれだすことを防止することができる。作業者Hは、貫通穴にパイプを導入し、このパイプに新たな水槽を連結することができる。すなわち、作業者Hは、水槽100の増築を行うことができる。
【0054】
また、作業者Hは、耐水性の撮像装置を予め(筐体20の液体200への投入前に)中空部21a内に配置しておき、この撮像装置を用いて工事対象箇所110を撮影することができる。そして、作業者Hは、撮影により得られた画像データ等にもとづいて、工事対象箇所110の劣化調査を行うことができる。なお、作業者Hは、中空部21a内の液体200を排出した後、空気導通管30を通して小型カメラを中空部21a内に導入してもよい。この場合、小型カメラは耐水性を有していなくてもよい。ただし、作業者Hは、筐体20を工事対象箇所110から取り外す前に小型カメラを回収する必要がある。
【0055】
また、本実施形態の工事方法によれば、水槽100から液体200を排出すること無く工事対象箇所110を工事することができるので、工事に掛かる手間及び費用を低減することができる。さらに、本実施形態の工事方法によれば、水槽100を用いた操業を停止することなく、工事を行うことができる。さらに、本実施形態の工事方法によれば、作業者Hは、水槽100の内部に入ること無く、工事対象箇所110を液体200から隔離し、かつ、各種の工事を行うことができる。したがって、作業者Hは、仮に液体200の温度が高い(例えば80℃以上)場合であっても、安全に工事を行うことができる。
【0056】
作業者Hは、工事が終わった後、止水用構造体10を回収する。具体的には、作業者Hは、ポンプ300を逆回転で駆動させることで、中空部21a内に液体200を導入する。なお、中空部21a内の空気は空気導通管30を通って液面210上に放出される。中空部21a内が液体200で満たされると、中空部21a内と液面210との間に水頭差がなくなるので、筐体20が工事対象箇所110の周囲から外れる。その後、作業者Hは、止水用構造体10を回収する。このように、本実施形態によれば、作業者Hは、止水用構造体10を容易に回収することができる。
【0057】
以上により、本実施形態によれば、作業者Hは、筐体20の開口面25を工事対象箇所110に当接させ、ついで、ポンプ300を用いて中空部21a内の液体200を排出することで、工事対象箇所110を液体200から隔離することができる。したがって、作業者Hは、工事対象箇所110を液体200から容易に隔離することができる。そして、作業者Hは、工事対象箇所110に各種の工事を行うことができる。例えば、作業者Hは、工事対象箇所110の補修、水槽100の増築、工事対象箇所110の劣化調査(撮影)を行うことができる。
【0058】
このように、本実施形態によれば、作業者Hは、水槽100内の液体200を排出することなく、工事を行うことができるので、水槽100の操業中に水槽100の工事を行うことができる。さらに、本実施形態によれば、水槽100の工事に掛かる手間及び費用を低減することができる。
【0059】
また、開口面25は工事対象箇所110を覆う程度の大きさがあればよいので、筐体20は、工事対象箇所110の水深によらず小型化可能である。これにより、工事に掛かる費用が低減される。具体的には、空気導通管30、液体導通管40、及び連結体52の長さを工事対象箇所110の水深に応じて調整するだけでよく、筐体20は工事対象箇所110の周囲を覆う程度の大きさがあればよい。また、筐体20が小型化可能なので、作業者Hは、止水用構造体10を容易に取り扱うことができる。
【0060】
また、空気導通管30の一方の端部30aは、筐体20の上端部22を通って、中空部21aに連結される。したがって、ポンプ300の駆動中に空気が効率的に中空部21a内に導入される。
【0061】
また、液体導通管40の一方の端部は、筐体20の下端部23を通って、中空部21aに連結される。したがって、作業者Hは、ポンプ300によって液体200を効率的に中空部21aから排出することができる。
【0062】
また、開口面25の外周部26は、開口面25の外側に突出しているので、外周部26は工事対象箇所110の外周部に強固に当接することができる。
【0063】
また、筐体20は、開口面25の外周部26に設けられる弾性体を有するので、外周部26は弾性体27を介して工事対象箇所110の周囲に強固に当接することができる。
【0064】
さらに、空気導通管30には、筐体20からの距離、具体的には開口面25の中心点からの距離を示す目盛31が記されている。これにより、作業者Hは、液面210の目盛31を見ることで、開口面25の中心点の水深を確認することができる。
【0065】
さらに、止水用構造体10は、浮き構造体50を有するので、止水用構造体10の作業性が向上する。すなわち、作業者Hは、筐体20の深さ方向の位置合わせを容易に行うことができる。
【0066】
さらに、連結体52の長さは、連結体52が伸びきった際の筐体20の水深と、工事対象箇所110の水深とが一致するように設計されるので、筐体20の深さ方向の位置合わせがより容易となる。
【0067】
また、作業者Hは、アーム部材500を用いて筐体20の開口面25を工事対象箇所110に当接させるので、開口面25を容易に工事対象箇所110に当接させることができる。
【0068】
以上、添付図面を参照しながら本発明の好適な実施形態について詳細に説明したが、本発明はかかる例に限定されない。本発明の属する技術の分野における通常の知識を有する者であれば、特許請求の範囲に記載された技術的思想の範疇内において、各種の変更例または修正例に想到し得ることは明らかであり、これらについても、当然に本発明の技術的範囲に属するものと了解される。
【0069】
例えば、上記実施形態では、筐体の形状を直方体形状または半球形状としたが、本発明はかかる例に限定されない。例えば、立方体形状であってもよい。すなわち、筐体は、中空部を有し、かつ、側面部の一面が開口していればどのような形状であってもよい。
【符号の説明】
【0070】
10 止水用構造体
20、70 筐体
21 筐体本体
22 上端部
23 下端部
24 側面部
25 開口面
26 開口面の外周部
27 弾性体
30 空気導通管
40 液体導通管
50 浮き構造体
51 浮き部
52 連結体

図1
図2
図3
図4
図5
図6