特許第6252007号(P6252007)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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特許6252007隊列走行制御装置、隊列走行制御方法、走行制御装置
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6252007
(24)【登録日】2017年12月8日
(45)【発行日】2017年12月27日
(54)【発明の名称】隊列走行制御装置、隊列走行制御方法、走行制御装置
(51)【国際特許分類】
   G08G 1/00 20060101AFI20171218BHJP
   G08G 1/16 20060101ALI20171218BHJP
   B60W 30/16 20120101ALI20171218BHJP
【FI】
   G08G1/00 X
   G08G1/16 E
   B60W30/16
【請求項の数】9
【全頁数】22
(21)【出願番号】特願2013-148680(P2013-148680)
(22)【出願日】2013年7月17日
(65)【公開番号】特開2015-22420(P2015-22420A)
(43)【公開日】2015年2月2日
【審査請求日】2016年3月25日
(73)【特許権者】
【識別番号】000003997
【氏名又は名称】日産自動車株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100066980
【弁理士】
【氏名又は名称】森 哲也
(74)【代理人】
【識別番号】100103850
【弁理士】
【氏名又は名称】田中 秀▲てつ▼
(74)【代理人】
【識別番号】100116012
【弁理士】
【氏名又は名称】宮坂 徹
(72)【発明者】
【氏名】中村 誠秀
(72)【発明者】
【氏名】川添 寛
(72)【発明者】
【氏名】橋口 博文
【審査官】 吉村 俊厚
(56)【参考文献】
【文献】 特開2007−132768(JP,A)
【文献】 特開2011−233091(JP,A)
【文献】 特開2004−058920(JP,A)
【文献】 特開2002−160547(JP,A)
【文献】 特開2011−250021(JP,A)
【文献】 特開2007−199939(JP,A)
【文献】 国際公開第2007/129357(WO,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G08G 1/00
B60W 30/16
G08G 1/16
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
同一車線上の複数の車両と隊列を形成して走行する隊列走行制御装置において、
先行車両に追従するために自車両の加減速度を制御する走行制御部と、
前記隊列内の他車両が車線変更によって前記隊列から離脱することを判断する離脱判断部と、
先行車両との車間距離を検出する車間距離検出部と、
先行車両に対する目標車間時間を設定する目標車間時間設定部と、
前記離脱判断部で前記隊列内の他車両が離脱すると判断した時点で、前記車間距離検出部で検出した車間距離を、目標車間距離として設定する目標車間距離設定部と、を備え、
前記走行制御部は、
前記離脱判断部で前記隊列内の他車両が離脱すると判断した場合、自車両が離脱位置よりも後方に位置するときに、加減速度の変動を抑制し、
前記離脱判断部は、
前記車間距離検出部で検出する車間距離の不連続性を検出したときに、先行車両が離脱すると判断し、
前記走行制御部は、
前記目標車間時間設定部で設定した目標車間時間を実現するために、自車両の加減速度を制御することにより車間時間制御を行う車間時間制御部と、
前記目標車間距離設定部で設定した目標車間距離を実現するために、自車両の加減速度を制御することにより車間距離制御を行う車間距離制御部と、を備え、
前記車間時間制御部により車間時間制御を行っている状態で、前記離脱判断部で前記隊列内の他車両が離脱すると判断したときには、前記隊列内の他車両が離脱すると判断してから予め定めた時間が経過するまで、前記車間時間制御部による車間時間制御の代わりに前記車間距離制御部による車間距離制御を行うことを特徴とする隊列走行制御装置。
【請求項2】
前記走行制御部は、
前記離脱判断部で前記隊列内の他車両が離脱すると判断してから予め定めた時間が経過するまでは、加減速度の変動を禁止することを特徴とする請求項1に記載の隊列走行制御装置。
【請求項3】
前記走行制御部は、
前記離脱判断部で前記隊列内の他車両が離脱すると判断した場合、加減速度を段階的に変化させることを特徴とする請求項1に記載の隊列走行制御装置。
【請求項4】
前記走行制御部は、
前記離脱判断部で前記隊列内の他車両が離脱すると判断したときには、離脱位置を境に前記隊列を分割することを特徴とする請求項1に記載の隊列走行制御装置。
【請求項5】
前記離脱判断部は、
車両間の通信により、前記隊列内の他車両における離脱意志を検出したときに、前記隊列内の他車両が離脱すると判断することを特徴とする請求項1〜の何れか一項に記載の隊列走行制御装置。
【請求項6】
前記離脱判断部は、
前記隊列内の他車両における方向指示器の作動を、離脱意志として検出することを特徴とする請求項に記載の隊列走行制御装置。
【請求項7】
前記離脱判断部は、
前記隊列内の他車両における前記走行制御部の作動中止を、離脱意志として検出することを特徴とする請求項又はに記載の隊列走行制御装置。
【請求項8】
隊列走行制御装置が、同一車線上の複数の車両と隊列を形成して走行する際に、
前記隊列走行制御装置の走行制御部が、先行車両に追従するために自車両の加減速度を制御し、
前記隊列走行制御装置の離脱判断部が、前記隊列内の他車両が車線変更によって前記隊列から離脱すると判断した場合、自車両が離脱位置よりも後方に位置するときに、前記走行制御部が、加減速度の変動を抑制し、
前記隊列走行制御装置の車間距離検出部が、先行車両との車間距離を検出し、
前記車間距離検出部で検出する車間距離の不連続性を検出したときに、前記隊列走行制御装置の離脱判断部が、先行車両が離脱すると判断し、
前記隊列走行制御装置の目標車間時間設定部が、先行車両に対する目標車間時間を設定し、
前記隊列走行制御装置の目標車間距離設定部が、前記離脱判断部で前記隊列内の他車両が離脱すると判断した時点で、前記車間距離検出部で検出した車間距離を、目標車間距離として設定し、
前記走行制御部の車間時間制御部が、前記目標車間時間設定部で設定した目標車間時間を実現するために、自車両の加減速度を制御することにより車間時間制御を行ない、
前記走行制御部の車間距離制御部が、前記目標車間距離設定部で設定した目標車間距離を実現するために、自車両の加減速度を制御することにより車間距離制御を行ない、
前記走行制御部が、前記車間時間制御部により車間時間制御を行っている状態で、前記離脱判断部で前記隊列内の他車両が離脱すると判断したときには、前記隊列内の他車両が離脱すると判断してから予め定めた時間が経過するまで、前記車間時間制御部による車間時間制御の代わりに前記車間距離制御部による車間距離制御を行うことを特徴とする隊列走行制御方法。
【請求項9】
同一車線上の先行車両に追従するために自車両の加減速度を制御する走行制御部と、
前記先行車両が車線変更によって離脱することを判断する離脱判断部と、
前記先行車両との車間距離を検出する車間距離検出部と、
前記先行車両に対する目標車間時間を設定する目標車間時間設定部と、
前記離脱判断部で前記先行車両が離脱すると判断した時点で、前記車間距離検出部で検出した車間距離を、目標車間距離として設定する目標車間距離設定部と、を備え、
前記走行制御部は、
前記離脱判断部で前記先行車両が離脱すると判断した場合、加減速度の変動を抑制し、
前記離脱判断部は、
前記車間距離検出部で検出する車間距離の不連続性を検出したときに、前記先行車両が離脱すると判断し、
前記走行制御部は、
前記目標車間時間設定部で設定した目標車間時間を実現するために、自車両の加減速度を制御することにより車間時間制御を行う車間時間制御部と、
前記目標車間距離設定部で設定した目標車間距離を実現するために、自車両の加減速度を制御することにより車間距離制御を行う車間距離制御部と、を備え、
前記車間時間制御部により車間時間制御を行っている状態で、前記離脱判断部で前記先行車両が離脱すると判断したときには、前記先行車両が離脱すると判断してから予め定めた時間が経過するまで、前記車間時間制御部による車間時間制御の代わりに前記車間距離制御部による車間距離制御を行うことを特徴とする走行制御装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、隊列走行制御装置、隊列走行制御方法、走行制御装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
特許文献1に記載された従来技術では、隊列走行をする際に、車車間通信を介して先頭車両から順に識別番号IDを付与し、付与された識別番号IDに応じて各車両の走行を制御し、先頭車両に後続車両を追従させることを提案している。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開平9−81899号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
同一車線上の複数の車両で隊列を形成して走行しているときに、その隊列内の何れかの車両が車線変更によって離脱したら、その分だけ後続車両が速やかに車間を詰めることが望ましい。しかしながら、離脱のための車線変更が完了した後も、例えば後続車両がレーダ装置により離脱車両を検出してしまうこともあり、離脱が完了したタイミングを正確に判断することが難しい。そのため、離脱が完了した後も離脱車両の加減速に応じて後続車両が加減速したり、逆に離脱が完了していないのに後続車両が車間を詰めようとして加速したりする等、隊列を乱してしまう可能性がある。
本発明の課題は、隊列内の車両が車線変更によって離脱するときも、良好な隊列走行を維持することである。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明の一態様に係る隊列走行制御装置は、同一車線上の複数の車両と隊列を形成して走行するものにおいて、先行車両に追従するために、自車両の加減速度を制御する。そして、隊列内の他車両が車線変更によって隊列から離脱すると判断した場合、自車両が離脱位置よりも後方に位置するときに、加減速度の変動を抑制する。また、先行車両との車間距離を検出し、車間距離の不連続性を検出したときに、先行車両が離脱すると判断する。また、先行車両に対する目標車間時間を設定し、離脱判断部で隊列内の他車両が離脱すると判断した時点で、車間距離検出部で検出した車間距離を、目標車間距離として設定する。また、目標車間時間を実現するために、自車両の加減速度を制御することにより車間時間制御を行ない、目標車間距離を実現するために、自車両の加減速度を制御することにより車間距離制御を行なう。そして、車間時間制御を行っている状態で、隊列内の他車両が離脱すると判断したときには、隊列内の他車両が離脱すると判断してから予め定めた時間が経過するまで、車間時間制御の代わりに車間距離制御を行う。
【発明の効果】
【0006】
本発明によれば、隊列内の他車両が車線変更によって隊列から離脱すると判断したら、離脱位置よりも後方に位置するときに、加減速度の変動を抑制するので、実際に離脱するタイミングに誤差があるとしても、隊列の乱れを抑制することができる。すなわち、離脱が完了した後も離脱車両の加減速に応じて後続車両が加減速したり、逆に離脱が完了していないのに後続車両が車間を詰めようとして加速したりすることを抑制し、良好な隊列走行を維持することができる。
【図面の簡単な説明】
【0007】
図1】隊列走行制御装置を示す概略構成図である。
図2】隊列走行制御処理を示すフローチャートである。
図3】第1実施形態の加減速度指令値補正処理を示すフローチャートである。
図4】隊列からの離脱について説明した図である。
図5】離脱完了後も後続車両が離脱車両を検出している図である。
図6】離脱完了前に後続車両が先々行車両を検出している図である。
図7】離脱完了前に先々行車両を検出したときの動作を示すタイムチャートである。
図8】検出フラグの動作を示すタイムチャートである。
図9】第2実施形態の加減速度指令値補正処理を示すフローチャートである。
図10】第3実施形態の加減速度指令値補正処理を示すフローチャートである。
図11】離脱完了前に先々行車両を検出したときの動作を示すタイムチャートである。
図12】第4実施形態の隊列走行制御処理を示すフローチャートである。
図13】制御切り替え判断処理を示すフローチャートである。
図14】第5実施形態の隊列編成処理を示すフローチャートである。
図15】第6実施形態の離脱判断処理を示すフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0008】
以下、本発明の実施形態を図面に基づいて説明する。
《第1実施形態》
《構成》
同一車線上の複数の車両で隊列を形成して走行するために、先行車両との相対関係に応じて自車両の走行を制御する技術として、ACC(Adaptive Cruise Control)やCACC(Cooperative Adaptive Cruise Control)等がある。先ずACCは、車両の前方に搭載したレーダを用いて、前方を走行する車両との車間距離を一定に保ち、必要に応じてドライバーへの警告を行うシステムである。一方、CACCは、車車間通信によって他車の加減速情報を共有することで、より的確な走行制御を行うシステムであり、ACCより短い車間距離での走行や、制御の遅れによるハンチング(車間の変動)の少ない安定した走行が可能となる。本実施形態では、CACCを利用した隊列走行を例に説明する。
【0009】
本実施形態では、同一車線上を走行し、先行車両との相対関係に応じて自車両の走行を制御する車両の全てを隊列と称する。そして、この隊列内で、例えば3〜5台程度の車両によって車群を編成し、車群同士の車間距離を、車群内における各車両同士の車間距離よりも広くするものとする。なお、自車両の前に先行車両が存在しない場合は、予め定めた設定車速を維持するものとする。
図1は、隊列走行制御装置を示す概略構成図である。
本実施形態における隊列走行制御装置は、CACCスイッチ11と、車輪速センサ12と、周辺状況認識装置13と、通信装置14と、ナビゲーションシステム15と、コントローラ16と、を備える。
【0010】
CACCスイッチ11は、メインスイッチ、キャンセルスイッチ、リジューム/アクセラレートスイッチ、セット/コーストスイッチ、車間時間設定スイッチ等のスイッチ群からなり、運転者が操作可能となるように、例えばステアリングホイールのスポーク部に設けてある。メインスイッチは、CACCのON/OFFを切り替え、キャンセルスイッチは、CACCの設定を一時的に解除する。リジューム/アクセラレートスイッチは、一時的に解除されたCACCを復帰させる、又は設定車速を例えば5km/h刻みで増加させる。セット/コーストスイッチは、現在の車速を設定車速としてセットする、又は設定車速を例えば5km/h刻みで減少させる。車間時間設定スイッチは、スイッチを押すごとに目標車間時間Ttを例えば長・中・短の三段階に切り替える。これらCACCスイッチ11は、各種操作状況に応じた電圧信号をコントローラ16に出力する。コントローラ16は、入力された電圧信号から各種操作状況を判断する。
【0011】
なお、自車両が車群内で先頭車両を除く後続車両になる場合と、車群内で先頭車両になる場合とで、先行車両に対する目標車間時間を異ならせる必要がある。例えば、後続車両用の目標車間時間を0.7sec程度とすると、先頭車両用の目標車間時間を1.8sec程度にすることが望ましい。そこで、車間時間設定スイッチの操作により、後続車両用の目標車間時間、及び先頭車両用の目標車間時間の双方を個別に設定できる構成としてもよい。また、車間時間設定スイッチの操作により、後続車両用の目標車間時間、及び先頭車両用の目標車間時間の何れか一方を設定すると、予め定めた車間時間だけ加算又は減算することにより、他方が設定される構成としてもよい。
【0012】
車輪速センサ12は、各車輪の車輪速度VwFL〜VwRRを検出する。この車輪速センサ12は、例えば車輪と共に回転し円周に突起部(ギヤパルサ)が形成されたセンサロータと、このセンサロータの突起部に対向して設けられたピックアップコイルを有する検出回路と、を備える。そして、センサロータの回転に伴う磁束密度の変化を、ピックアップコイルによって電圧信号に変換してコントローラ16に出力する。コントローラ16は、入力された電圧信号から車輪速度VwFL〜VwRRを判断し、例えば非駆動輪(従動輪)の車輪速平均値や全輪の車輪速平均値を車速として演算する。
【0013】
周辺状況認識装置13は、レーダ装置やステレオカメラからなり、自車両前方の状況を認識する。
レーダ装置は、自車両前方に存在する前方物体までの距離、相対速度、及び方位を検出する。このレーダ装置は、フロントグリル内に設けられたミリ波レーダからなり、検出した各種データをコントローラ16に出力する。距離及び相対速度については、例えばFM‐CW(Frequency Modulation-Continuous Wave)方式を利用し、ドップラ効果による周波数差に応じて距離及び相対速度を検出し、方位については、例えばDBF(Digital Beam Forming)方式を利用し、複数のチャンネルで受信した反射波の位相差に応じて方位を検出する。
【0014】
ステレオカメラは、車体の前方を撮像する。このステレオカメラは、同一の仕様の2台のカメラからなり、車室内のフロントウィンドウ上部で車幅方向に沿って配置され、且つ光軸及びカメラ座標を平行にしてある。ステレオカメラで撮像した車体前方の画像データは、画像処理装置に入力され、ステレオ画像処理される。すなわち、左カメラ画像と右カメラ画像との視差から画面領域全域にわたって距離分布画像を生成し、この距離分布画像と元画像とに基づいて、前方物体の位置や走行区分線(白線)の検出を行い、検出した各種データをコントローラ16に出力する。
【0015】
通信装置14は、車群内の車両や車群に加わろうとする他車両との間で、隊列管理のための情報を、車車間通信を介して送受信する。隊列管理のための情報とは、自車両のID番号、自車両の現在位置、先行車両との車間距離、先行車両との相対車速、自車速、加減速度、ブレーキ信号、アクセル信号、ウィンカ信号、各種制御システムの作動信号、異常信号等である。各種制御システムの動作信号には、CACCの作動状態やCC(Cruise Control)の動作状態も含まれる。なお、CCは、予め定めた車速を維持するために、自車両の加減速度を制御するシステムである。
【0016】
車車間通信には、電波通信や光通信を用いる。電波通信では、例えば5.8GHz帯や700MHz帯の周波数帯を用い、直交周波数分割多重方式(OFDM:Orthogonal Frequency Division Multiplex)によって通信を行う。なお、車群内における先頭車両と最後尾車両との間では、直接通信するよりも、中継車両を経由して間接的に通信するマルチホップ通信(アドホック通信)を行うことにより、通信エラーを低減し、通信品質を向上させることができる。光通信では、例えば880nm程度の近赤外線を用い、周波数偏移変調(FSK:Frequency Shift Keying)や振幅偏移変調(ASK:Amplitude Shift Keying)によって通信を行う。
【0017】
ナビゲーションシステム15は、自車両の現在位置と、その現在位置における道路地図情報を認識する。このナビゲーションシステム15は、GPS受信機を有し、四つ以上のGPS衛星から到着する電波の時間差に基づいて自車両の位置(緯度、経度、高度)と進行方向とを認識する。そして、DVD‐ROMドライブやハードディスクドライブに記憶された道路種別、道路線形、車線幅員、車両の通行方向等を含めた道路地図情報を参照し、自車両の現在位置における道路地図情報を認識しコントローラ16に出力する。なお、安全運転支援システム(DSSS:Driving Safety Support Systems)として、双方向無線通信(DSRC:Dedicated Short Range Communication)を利用し、各種データをインフラストラクチャから受信してもよい。
【0018】
コントローラ16は、例えばマイクロコンピュータからなり、各センサからの検出信号に基づいて後述する隊列走行制御処理を実行し、駆動力制御装置20と、ブレーキ制御装置50と、を駆動制御する。
駆動力制御装置20は、回転駆動源の駆動力を制御する。例えば、回転駆動源がエンジンであれば、スロットルバルブの開度、燃料噴射量、点火時期などを調整することで、エンジン出力(回転数やエンジントルク)を制御する。回転駆動源がモータであれば、インバータを介してモータ出力(回転数やモータトルク)を制御する。
【0019】
次に、ブレーキ制御装置50について説明する。
ブレーキ制御装置50は、各車輪の制動力を制御する。例えば、アンチスキッド制御(ABS)、トラクション制御(TCS)、スタビリティ制御(VDC:Vehicle Dynamics Control)等に用いられるブレーキアクチュエータにより、各車輪に設けられたホイールシリンダの液圧を制御する。
【0020】
次に、コントローラ16で所定時間(例えば10msec)毎に実行する隊列走行制御処理について説明する。
ここでは、自車両の属する車群だけが存在するものとし、便宜的にこれを隊列と称して説明する。
図2は、隊列走行制御処理を示すフローチャートである。
先ずステップS101では、各種データを読込む。
続くステップS102では、例えば非駆動輪(従動輪)の車輪速平均値を自車速Vsとして算出する。
【0021】
続くステップS103では、自車両が隊列内の先頭車両であるか、又は後続車両であるか、つまりID番号が#1であるか、又はそれ以外であるかに応じて目標車間時間Ttを設定する。具体的には、自車両が先頭車両であるときには、車間時間設定スイッチによって設定された先頭車両用の目標車間時間Ttを目標車間時間Ttとして設定する。一方、自車両が後続車両であるときには、車間時間設定スイッチによって設定された後続車両用の目標車間時間Ttを目標車間時間Ttとして設定する。
続くステップS104では、目標車間時間Ttを実現するための第一の目標車間距離Dt1を、下記の数式に示すように、目標車間時間Tt、及び先行車両の車速Vaに応じて算出する。先行車両の車速Vaは、先行車両との相対速度Vrと自車速Vsとの差分によって算出する。
Dt1=Va×Tt
【0022】
続くステップS105では、第一の目標車間距離Dt1を実現するための目標車速Vtを算出する。
先ず、下記の数式に示すように、先行車両の車速Va、第一の目標車間距離Dt1と車間距離Drとの偏差ΔD(=Dt1−Dr)、及び先行車両との相対速度Vrに応じて、基礎目標車速Vb算出する。ここで、K1はVaに乗じるゲインであり、K2はΔDに乗じるゲインであり、K3はVrに乗じるゲインであり、f{ }は、K1×Va、K2×ΔD、及びK3×Vrに応じて基礎目標車速Vbを演算するための関数を表している。
Vb=f{K1×Va、K2×ΔD、K3×Vr}
そして、下記の数式に示すように、予め定めた伝達特性に従い、基準目標車速Vbに一次遅れ系のフィルタ処理を施すことにより、最終的な目標車速Vtを算出する。
【0023】
【数1】
【0024】
続くステップS106では、目標車速Vtを実現するための目標加減速度Gtを、予め定めた応答特性に従い、下記の数式に示すように、自車速Vs、及び目標車速Vtに応じて算出する。ここで、f{ }は、Vs及びVtに応じて目標加減速度Gtを演算するための関数を表している。なお、自車速Vsが目標車速Vtよりも高いときは、目標加減速度Gtが減速の負値となり、自車速Vsが目標車速Vtよりも低いときは、目標加減速度Gtが加速の正値となる。
Gt=f{Vs、Vt}
【0025】
続くステップS107では、目標加減速度Gtに対してレートリミッタ処理を行う。すなわち、目標加減速度Gtの単位時間当たりの変化量、ここでは前回値Gt(n−1)からの変化量ΔGtが、予め定めた上限値ΔG1以下であるときには、目標加減速度Gtをそのまま維持する。一方、前回値Gt(n−1)からの変化量ΔGtが、上限値ΔG1よりも大きいときには、前回値Gt(n−1)からの変化量ΔGtが上限値ΔG1となるように、目標加減速度Gtを補正し、その変化率を制限する。
【0026】
続くステップS108では、下記の数式に示すように、車間時間制御として、目標加減速度Gtを実現するための第一の加減速度指令値Gc1を、目標加減速度Gtに応じて算出する。ここで、Tsは予め定めた設定時間であり、f{ }は、Gtに応じて第一の制御指令値Gc1を演算するための関数を表している。なお、第一の加減速度指令値Gc1は、加速指令となるときに正の値となり、減速指令となるときに負の値となる。
Gc1=f{Gt}×Ts
【0027】
続くステップS109では、隊列内の車両が車線変更によって隊列から離脱することを判断する。ここでは、周辺状況認識装置13、及び通信装置14により、隊列内の車両の離脱を判断する。例えば、レーダ装置で検出する車間距離Drの不連続性を検出したときに、先行車両が隊列から離脱すると判断する。車間距離Drの不連続性とは、検出値の変化率が予め定めた変化率を上回ること、つまり単位時間当たりの(例えば演算周期毎の)変化量が予め定めた変化量を上回ることである。そして、先行車両が離脱すると判断した車両は、自車両の前方を走行していた車両が離脱すること、及びその車両のID番号を、通信装置14を介して隊列内の他の車両に伝達する。こうして、先行車両が離脱した訳ではない残りの車両においては、通信装置14を介して隊列内の車両が離脱することを判断する。
【0028】
続くステップS110では、後述する加減速度指令値補正処理を実行し、第一の加減速度指令値Gc1に補正処理を行って最終的な減速度指令値Gcを設定する。
続くステップS111では、最終的な減速度指令値Gcに実現に応じて、制御指令値としてのエンジントルク指令値及びブレーキ液圧指令値を設定する。減速度指令値Gcが加速指令であるときには、エンジントルク指令値を増加させ、ブレーキ液圧指令値を0にする。また、減速度指令値Gcが減速指令であるときには、エンジントルク指令値を0にして、ブレーキ液圧指令値を増加させる。
続くステップS112では、エンジントルク指令値に応じて駆動力制御装置20を駆動制御すると共に、ブレーキ液圧指令値に応じてブレーキ制御装置50を駆動制御してから所定のメインプログラムに復帰する。
上記が本実施形態の隊列走行制御処理である。
【0029】
次に、加減速度指令値補正処理について説明する。
図3は、第1実施形態の加減速度指令値補正処理を示すフローチャートである。
ステップS121では、隊列内の車両が車線変更によって隊列から離脱するか否かを判定する。ここで、隊列からの離脱が発生していなければ、第一の加減速度指令値Gc1に対する補正は不要であると判断してステップS122に移行する。一方、隊列からの離脱が発生しているときには、第一の加減速度指令値Gc1に対する補正が必要であると判断してステップS123に移行する。
【0030】
ステップS122では、第一の加減速度指令値Gc1を最終的な加減速指令値Gcに設定してから所定のメインプログラムに復帰する。
ステップS123では、先行車両に対する目標車間時間Ttを実現するまでは、第一の加減速度指令値Gc1に対するレートリミッタ補正を行うことにより、最終的な加減速度指令値Gcを設定してから所定のメインプログラムに復帰する。このレートリミッタ補正は、第一の加減速度指令値Gc1の変化率を、予め定めた変化率α以下に抑制するものである。つまり、単位時間当たりの(例えば演算周期毎の)変化量を、予め定めたΔG以下に制限する。
上記が本実施形態の加減速度指令値補正処理である。
【0031】
《作用》
次に、第1実施形態の作用について説明する。
本実施形態は、同一車線上の複数の車両で隊列を形成して走行するために、各車両が車間時間制御を実行する。
先ず、車群の中で、自車両が先頭車両であるか後続車両であるかに応じて目標車間時間Ttを設定し、自車両が先頭車両であるときには、後続車両であるときよりも長い目標車間時間Ttを設定する(ステップS103)。そして、目標車間時間Ttを実現するための第一の目標車間距離Dt1を算出し(ステップS104)、この第一の目標車間距離Dt1を実現するための目標車速Vtを算出する(ステップS105)。
【0032】
そして、目標車速Vtを実現するための目標加減速度Gtを算出し(ステップS106)、この目標加減速度Gtに対してレートリミッタ処理を行う(ステップS107)。そして、目標加減速度Gtを実現するための第一の加減速度指令値Gc1を算出し(ステップS108)、この第一の加減速度指令値Gc1に応じて最終的な減速度指令値Gcを設定する(ステップS110)。そして、最終的な減速度指令値Gcに応じて、制御指令値としてのエンジントルク指令値及びブレーキ液圧指令値を設定し(ステップS111)、これらに応じて駆動力制御装置20及びブレーキ制御装置50を駆動制御する(ステップS112)。このような手順で実行されるのが車間時間制御である。
【0033】
図4は、隊列からの離脱について説明した図である。
ここでは、片側二車線の道路で、右側の同一車線上を、5台の車両で隊列を形成して走行している。5台の車両は、車車間通信を介して、隊列の編成を行っており、先頭車両から順に#1、#2、#3、#4、#5というIDを付与している。この状態で、#3の車両が左側へ車線変更して隊列から離脱したら、その分だけ#4の車両が#2の車両に対して速やかに車間を詰めることが望ましい。しかしながら、離脱にも度合があり、車線変更が完了する間際で、少なくとも同一車線上からは外れている状態や、車線変更を始めたばかりで、まだ同一車線上を走行している状態もある。
【0034】
このような状況では、#4の車両のレーダ装置が、先行車両を誤認識してしまう可能性がある。例えば、#3の車両が少なくとも同一車線上からは外れているのに、これを先行車両として認識したり、逆に#3の車両がまだ同一車線上を走行しているのに、先々行車両である#2の車両を先行車両として認識したりすることがある。したがって、離脱が完了したタイミングを正確に判断することが難しい。なお、GPSで自車両の現在位置を検出している場合、車線変更程度の横移動を高精度に検出することが難しいので、この場合には、離脱した#3の車両自身さえも、離脱が完了したタイミングを正確に判断することが難しい。
【0035】
こうして、離脱が完了したタイミングを正確に判断できないと、離脱が完了した後も離脱車両の加減速に応じて後続車両が加減速したり、逆に離脱が完了していないのに後続車両が車間を詰めようとして加速したりする等、隊列を乱してしまう可能性がある。
図5は、離脱完了後も後続車両が離脱車両を検出している図である。
ここでは、#3の車両の離脱が完了しているのに、#4の車両が#2の車両ではなく、#3の車両を先行車両として認識し続けている。したがって、この状態で#3の車両が加減速をすると、#4の車両も追従してしまい、結果として#5の車両も追従し、隊列を乱してしまうことになり、運転者に違和感を与える可能性がある。
【0036】
図6は、離脱完了前に後続車両が先々行車両を検出している図である。
ここでは、まだ#3の車両が同一車線上を走行しているのに、#4の車両が#3の車両ではなく、先々行車両となる#2の車両を先行車両として認識している。したがって、#3の車両が離脱途中にあるのに、#2の車両に対して車間を詰めようとして、#4の車両が加速してしまい、結果として#5の車両も追従してしまうことになり、やはり運転者に違和感を与える可能性がある。
【0037】
そこで、隊列内の車両が車線変更によって隊列から離脱することを判断し(ステップS109)、離脱があると判断したときは(ステップS121の判定が“Yes”)、離脱位置よりも後方の車両で加減速度の変化率を抑制する(ステップS123)。ここでは、先行車両に対する目標車間時間Ttを実現するまでは、第一の加減速度指令値Gc1に対するレートリミッタ補正を行うことで最終的な加減速度指令値Gcを設定する。すなわち、第一の加減速度指令値Gc1の変化率を、予め定めた変化率以下に抑制する。これにより、実際に離脱するタイミングに多少の誤差があるとしても、隊列の乱れを抑制することができる。すなわち、離脱が完了した後も離脱車両の加減速に応じて後続車両が加減速したり、逆に離脱が完了していないのに後続車両が車間を詰めようとして加速したりすることを抑制し、良好な隊列走行を維持することができる。こうして、離脱位置から後方の車両で加減速度の変動を抑制することで、その間に、離脱しようとしていた#3の車両は、完全に車線変更を完了することができる。そして、このような状況においては、#4の車両のレーダ装置が、先行車両の認識を誤る可能性が低い。
【0038】
図7は、離脱完了前に先々行車両を検出したときの動作を示すタイムチャートである。
ここでは、車間時間THWの動きについて説明する。
先ず、車間時間THWが目標車間時間Ttを概ね維持しており、この状態から先行車両が隊列から離脱し始め、まだ同一車線上を走行しているのに、時点t11で、先々行車両を検出すると、車間時間THWが大きく増加する。このとき、自車両の加減速度の変化率を抑制しない場合には、特性線L0で示すように、目標車間時間Ttを実現しようと過敏に加速をしてしまう。一方、自車両の加減速度の変化率を抑制した場合には、特性線L1で示すように、目標車間時間Ttを実現するまで、緩やかに一定の変化率で車間時間THWを減少させることができる。これにより、実際に離脱するタイミングに多少の誤差があるとしても、隊列の乱れを抑制し、良好な隊列走行を維持することができる。
【0039】
こうして、#4及び#5の車両は、徐々に加速してゆき、夫々が目標車間時間Ttを実現したときには、第一の加減速度指令値Gc1に対するレートリミッタ補正を終了し、通常の車間時間制御に復帰する。これにより、不必要に加減速度の変化率を抑制することを防ぎ、良好な隊列走行を維持することができる。
なお、隊列内の何れの車両も同一車線上を維持し、隊列内からの離脱はないと判断したときには(ステップS121の判定が“No”)、第一の加減速度指令値Gc1をそのまま最終的な加減速度指令値Gcに設定する(ステップS122)。これにより、不必要に加減速度の変化率を抑制することを防ぎ、良好な隊列走行を維持することができる。
【0040】
《変形例1》
本実施形態では、自車両の加減速度の変化率を抑制するために、第一の加減速度指令値Gc1に対してレートリミット補正を行っているが、これに限定されるものではない。すなわち、例えば目標車間時間Tt、第一の目標車間距離Dt1、基礎目標車速Vb、目標車速Vt、目標加減速度Gt、エンジントルク指令値、ブレーキ液圧指令値等を補正してもよい。要は、車間時間制御として、最終的に自車両の加減速度の変化率を抑制することができれば、どの段階の変数を補正してもよい。
【0041】
《変形例2》
本実施形態では、レーダ装置で検出する車間距離Drの不連続性を検出したときに、先行車両が隊列から離脱すると判断しているが、これに限定されるものではない。例えば、レーダ装置の検出結果に応じて、先行車両を検出できているか否かを判断し、この判断結果に応じて、先行車両が隊列から離脱することを判断してもよい。具体的には、先ず先行車両を検出できていないときに検出フラグをfd=0にリセットし、先行車両を検出できているときに検出フラグをfd=1にセットする処理を行う。そして、検出フラグがfd=1にセットされている状態から、一時的にfd=0にリセットされ、予め定めた時間以内に再びfd=1にセットされたときに、先行車両が隊列から離脱すると判断する。
図8は、検出フラグの動作を示すタイムチャートである。
レーダ装置で検出する車間距離Drが不連続に変動するときに、検出フラグは一時的にfd=0にリセットされることがある。つまり、先行車両を一時的にロストすることがあり、この条件を利用し、先行車両が離脱することを判断してもよい。
【0042】
《対応関係》
以上より、ステップS104〜S108、S110〜S112、S121〜S123の処理が「走行制御部」に対応し、ステップS109の処理が「離脱判断部」に対応する。また、CACCスイッチ11、ステップS103の処理が「目標車間時間設定部」に対応し、ステップS104〜S108、S110〜S112、S121〜S123の処理は「車間時間制御部」にも対応する。
【0043】
《効果》
次に、第1実施形態における主要部の効果を記す。
(1)本実施形態に係る隊列走行制御装置は、同一車線上の複数の車両と隊列を形成して走行するものにおいて、先行車両に追従するために自車両の加減速度を制御する。そして、隊列内の他車両が車線変更によって隊列から離脱すると判断した場合、自車両が離脱位置よりも後方に位置するときに、加減速度の変動を抑制する。
このように、隊列内の他車両が車線変更によって隊列から離脱すると判断したら、離脱位置よりも後方に位置するときに、加減速度の変動を抑制するので、実際に離脱するタイミングに誤差があるとしても、隊列の乱れを抑制することができる。すなわち、離脱が完了した後も離脱車両の加減速に応じて後続車両が加減速したり、逆に離脱が完了していないのに後続車両が車間を詰めようとして加速したりすることを抑制し、良好な隊列走行を維持することができる。
【0044】
(2)本実施形態に係る隊列走行制御装置は、先行車両との車間距離を検出し、車間距離Drの不連続性を検出したときに、先行車両が離脱すると判断する。
このように、車間距離Drの不連続性を検出したときに、先行車両が離脱すると判断することにより、隊列内の他車両が車線変更によって隊列から離脱することを容易に判断することができる。
【0045】
(3)本実施形態に係る隊列走行制御方法は、同一車線上の複数の車両と隊列を形成して走行する際に、先行車両に追従するために自車両の加減速度を制御する。そして、隊列内の他車両が車線変更によって隊列から離脱すると判断したら、自車両が離脱位置よりも後方に位置するときに、加減速度の変動を抑制する。
このように、隊列内の他車両が車線変更によって隊列から離脱すると判断したら、離脱位置よりも後方に位置するときに、加減速度の変動を抑制するので、実際に離脱するタイミングに誤差があるとしても、隊列の乱れを抑制することができる。すなわち、離脱が完了した後も離脱車両の加減速に応じて後続車両が加減速したり、逆に離脱が完了していないのに後続車両が車間を詰めようとして加速したりすることを抑制し、良好な隊列走行を維持することができる。
【0046】
《第2実施形態》
《構成》
本実施形態は、隊列内の他車両が離脱すると判断してから予め定めた時間が経過するまでは、加減速度の変動を禁止するものである。
装置構成は、前述した第1実施形態と同様である。
次に、本実施形態の加減速度指令値補正処理について説明する。
図9は、第2実施形態の加減速度指令値補正処理を示すフローチャートである。
ステップS201では、隊列内の他車両が車線変更によって隊列から離脱するか否かを判定する。ここで、隊列からの離脱が発生していなければ、第一の加減速度指令値Gc1に対する補正は不要であると判断してステップS202に移行する。一方、隊列からの離脱が発生しているときには、第一の加減速度指令値Gc1に対する補正が必要であると判断してステップS203に移行する。
ステップS202では、第一の加減速度指令値Gc1を最終的な加減速指令値Gcに設定してから所定のメインプログラムに復帰する。
【0047】
ステップS203では、隊列内の他車両が離脱すると判断してから予め定めた時間Tm未満であるか否かを判定する。時間Tmは、離脱すると判断してから、離脱位置よりも後方の各車両が、夫々、目標車間時間Ttを実現できる程度の値である。ここで、離脱すると判断してからの経過時間がTm未満であるときには、第一の加減速度指令値Gc1に対する補正が必要であると判断してステップS304に移行する。一方、離脱すると判断してから時間Tmが経過しているときには、第一の加減速度指令値Gc1に対する補正を終了するためにステップS203に移行する。
ステップS204では、第一の加減速度指令値Gc1に対するレートリミッタ補正を行うことにより、最終的な加減速度指令値Gcを設定してから所定のメインプログラムに復帰する。このレートリミッタ補正は、第一の加減速度指令値Gc1を、前回値Gc1(n−1)に保持するものである。つまり、第一の加減速度指令値Gc1の変動を禁止する。
上記が本実施形態の加減速度指令値補正処理である。
【0048】
《作用》
次に、第2実施形態の作用について説明する。
自車両の加減速度の変動を抑制する場合、その変化率を抑制するだけではなく、変動を完全に禁止してもよい。そこで、離脱があると判断したときは(ステップS201の判定が“Yes”)、離脱があると判断してから予め定めた時間Tmが経過するまでは(ステップS203の判定が“Yes”)、離脱位置よりも後方の車両で加減速度の変動を禁止する(ステップS204)。ここでは、第一の加減速度指令値Gc1に対するレートリミッタ補正を行うことで最終的な加減速度指令値Gcを設定する。すなわち、第一の加減速度指令値Gc1を、前回値Gc1(n−1)に保持する。これにより、実際に離脱するタイミングに多少の誤差があるとしても、より確実に隊列の乱れを抑制することができる。すなわち、離脱が完了した後も離脱車両の加減速に応じて後続車両が加減速したり、逆に離脱が完了していないのに後続車両が車間を詰めようとして加速したりすることを抑制し、良好な隊列走行を維持することができる。
【0049】
そして、離脱あると判断してから時間Tmが経過したときに(ステップS203の判定が“No”)、加減速度変動の禁止を解除する。すなわち、第一の加減速度指令値Gc1をそのまま最終的な加減速度指令値Gcに設定し(ステップS202)。加減速度の変動を許容する。これにより、不必要に加減速度の変動を抑制することを防ぎ、良好な隊列を維持することができる。
また、隊列内の何れの車両も同一車線上を維持し、隊列内からの離脱はないと判断したときには(ステップS201の判定が“No”)、第一の加減速度指令値Gc1をそのまま最終的な加減速度指令値Gcに設定する(ステップS202)。不必要に加減速度の変動を抑制することを防ぎ、良好な隊列を維持することができる。
本実施形態において、その他、前述した第1実施形態と共通する部分については、同様の作用効果が得られるものとし、詳細な説明は省略する。
【0050】
《対応関係》
以上、ステップS201〜S204の処理が「走行制御部」に含まれ、且つ「車間時間制御部」にも含まれる。
《効果》
次に、第2実施形態における主要部の効果を記す。
(1)本実施形態の隊列走行制御装置は、隊列内の他車両が離脱すると判断してから予め定めた時間Tmが経過するまでは、加減速度の変動を禁止する。
このように、他車両が離脱すると判断してから時間Tmが経過するまで、離脱位置よりも後方に位置するときに、加減速度の変動を抑制するので、実際に離脱するタイミングに誤差があるとしても、より確実に隊列の乱れを抑制することができる。すなわち、離脱が完了した後も離脱車両の加減速に応じて後続車両が加減速したり、逆に離脱が完了していないのに後続車両が車間を詰めようとして加速したりすることを抑制し、良好な隊列走行を維持することができる。
【0051】
《第3実施形態》
《構成》
本実施形態は、隊列内の他車両が離脱すると判断した場合、加減速度を段階的に変化させるものである。
装置構成は、前述した第1実施形態と同様である。
次に、本実施形態の隊列走行制御処理について説明する。
図10は、第3実施形態の加減速度指令値補正処理を示すフローチャートである。
ここでは、前述した第1実施形態において、ステップS123の処理を新たなステップS301の処理に変更してある。なお、ステップS121、S122の処理については、前述した第1実施形態と同様であるため、共通部分については詳細な説明を省略する。
【0052】
ステップS301では、先行車両に対する目標車間時間Ttを実現するまでは、第一の加減速度指令値Gc1に対するレートリミッタ補正を行うことにより、最終的な加減速度指令値Gcを設定してから所定のメインプログラムに復帰する。このレートリミッタ補正は、第一の加減速度指令値Gc1を、段階的に(ステップ状に)変化させるものである。つまり、予め定めた時間Tsが経過する度に、予め定めた変化量ずつ許容する。
上記が本実施形態の隊列走行制御処理である。
【0053】
《作用》
次に、第3実施形態の作用について説明する。
自車両の加減速度の変動を抑制する場合、その変化率を一定に抑制するだけではなく、加減速度が段階的に変化するようにしてもよい。そこで、離脱があると判断したときは(ステップS121の判定が“Yes”)、離脱位置よりも後方の車両で加減速度の変動を禁止する(ステップS301)。ここでは、第一の加減速度指令値Gc1に対するレートリミッタ補正を行うことで最終的な加減速度指令値Gcを設定する。すなわち、第一の加減速度指令値Gc1を、段階的に変化させる。これにより、実際に離脱するタイミングに多少の誤差があるとしても、隊列の乱れを抑制することができる。すなわち、離脱が完了した後も離脱車両の加減速に応じて後続車両が加減速したり、逆に離脱が完了していないのに後続車両が車間を詰めようとして加速したりすることを抑制し、良好な隊列走行を維持することができる。
【0054】
図11は、離脱完了前に先々行車両を検出したときの動作を示すタイムチャートである。
ここでは、車間時間THWの動きについて説明する。
先ず、車間時間THWが目標車間時間Ttを概ね維持しており、この状態から先行車両が隊列から離脱し始め、まだ同一車線上を走行しているのに、時点t31で、先々行車両を検出すると、車間時間THWが大きく増加する。このとき、自車両の加減速度の変化率を抑制しない場合には、特性線L0で示すように、目標車間時間Ttを実現しようと過敏に加速をしてしまう。一方、自車両の加減速度の変化率を抑制した場合には、特性線L1で示すように、目標車間時間Ttを実現するまで、段階的に車間時間THWを減少させることができる。ここでは、車間時間THWが1.4sec程度から先ず1.0secまで減少し、その後、1.0sec程度から0.7sec程度まで減少させている。勿論、二段階ではなく、三段階以上に分けて車間時間THWを減少させてもよい。これにより、実際に離脱するタイミングに多少の誤差があるとしても、隊列の乱れを抑制し、良好な隊列走行を維持することができる。
【0055】
なお、隊列内の何れの車両も同一車線上を維持し、隊列内からの離脱はないと判断したときには(ステップS121の判定が“No”)、第一の加減速度指令値Gc1をそのまま最終的な加減速度指令値Gcに設定する(ステップS122)。これにより、不必要に加減速度の変化率を抑制することを防ぎ、良好な隊列走行を維持することができる。
本実施形態において、その他、前述した第1実施形態と共通する部分については、同様の作用効果が得られるものとし、詳細な説明は省略する。
【0056】
《対応関係》
以上、ステップS301の処理が「走行制御部」に含まれ、且つ「車間時間制御部」にも含まれる。
《効果》
次に、第3実施形態における主要部の効果を記す。
(1)本実施形態の隊列走行制御装置は、隊列内の他車両が離脱すると判断した場合、加減速度を段階的に変化させる。
このように、加減速度を段階的に変化させるので、実際に離脱するタイミングに誤差があるとしても、隊列の乱れを抑制することができる。すなわち、離脱が完了した後も離脱車両の加減速に応じて後続車両が加減速したり、逆に離脱が完了していないのに後続車両が車間を詰めようとして加速したりすることを抑制し、良好な隊列走行を維持することができる。
【0057】
《第4実施形態》
《構成》
本実施形態は、隊列内の他車両が離脱すると判断したときに、車間時間制御から車間距離制御へと切り替えるものである。車間距離制御とは、隊列内の他車両が離脱すると判断した時点の車間距離Drを、第二の目標車間距離Dt2として設定し、この第二の目標車間距離Dt2を実現するために、自車両の加減速度を制御するモードである。
装置構成は、前述した第1実施形態と同様である。
【0058】
次に、本実施形態の隊列走行制御処理について説明する。
図12は、第4実施形態の隊列走行制御処理を示すフローチャートである。
ここでは、前述した第1実施形態において、ステップS110の処理を新たなステップS401、S402の処理に変更してある。なお、ステップS101〜S109、S111、S112の処理については、前述した第1実施形態と同様であるため、共通部分については詳細な説明を省略する。
【0059】
ステップS401では、車間距離制御として、隊列内の他車両が離脱すると判断した時点の車間距離Drを、第二の目標車間距離Dt2として設定し、且つこの第二の目標車間距離Dt2を維持するための第二の加減速度指令値Gc2を設定する。この第二の加減速度指令値Gc2は、例えば第二の目標車間距離Dt2と車間距離Drとの偏差ΔDに応じた減速度を発生させる設定値であり、減速指令となるので負の値となる。また、予め定めた減速度を発生させる固定値を用いたり、固定値と設定値のセレクトハイ値を用いたりしてもよい。
続くステップS402では、後述する制御切り替え判断処理を実行し、車間時間制御、又は車間距離制御の何れか一方を選択し、最終的な減速度指令値Gcを設定する。
上記が本実施形態の隊列走行制御処理である。
【0060】
次に、制御切り替え判断処理について説明する。
図13は、制御切り替え判断処理を示すフローチャートである。
ステップS411では、隊列内の車両が車線変更によって隊列から離脱するか否かを判定する。ここで、隊列からの離脱が発生していなければ、離脱位置から後方の各車両で、加減速度の変動を抑制する必要はないと判断してステップS412に移行する。一方、隊列からの離脱が発生しているときには、離脱位置から後方の各車両で、加減速度の変動を抑制する必要があると判断してステップS413に移行する。
ステップS412では、車間時間制御として、第一の加減速度指令値Gc1を最終的な加減速指令値Gcに設定してから所定のメインプログラムに復帰する。
【0061】
ステップS413では、隊列内の他車両が離脱すると判断してから予め定めた時間Tm未満であるか否かを判定する。時間Tmは、離脱すると判断してから、離脱位置よりも後方の各車両が、夫々、目標車間時間Ttを実現できる程度の値である。ここで、離脱すると判断してからの経過時間がTm未満であるときには、離脱位置から後方の各車両で、加減速度の変動を抑制する必要があると判断してステップS304に移行する。一方、離脱すると判断してから時間Tmが経過しているときには、離脱位置から後方の各車両で、加減速度変動の抑制を終了するためにステップS413に移行する。
ステップS414では、車間距離制御として、第二の加減速度指令値Gc2を最終的な加減速指令値Gcに設定してから所定のメインプログラムに復帰する。
上記が本実施形態の制御切り替え判断処理である。
【0062】
《作用》
次に、第4実施形態の作用について説明する。
車間距離制御とは、第二の目標車間距離Dt2を実現するために、自車両の加減速度を制御するモードである。
先ず、隊列内の他車両が離脱すると判断した時点の車間距離Drを、第二の目標車間距離Dt2として設定し、且つこの第二の目標車間距離Dt2を維持するための第二の加減速度指令値Gc2を設定する(ステップS401)。この第二の加減速度指令値Gc2は、第二の目標車間距離Dt2と車間距離Drとの偏差ΔDに応じた減速度を発生させる減速指令であり、この第二の加減速度指令値Gc2を最終的な減速度指令値Gcとして設定する(ステップS402)。そして、最終的な減速度指令値Gcに応じて、制御指令値としてのエンジントルク指令値及びブレーキ液圧指令値を設定し(ステップS111)、これらに応じて駆動力制御装置20及びブレーキ制御装置50を駆動制御する(ステップS112)。このような手順で実行されるのが車間距離制御である。
【0063】
この車間距離制御により、先行車両に対して車間を詰めようとして、自車両が加速してしまうことを抑制できる。そこで、隊列から他車両が離脱すると判断したときは(ステップS411の判定が“Yes”)、離脱があると判断してから予め定めた時間Tmが経過するまでは(ステップS413の判定が“Yes”)、車間時間制御に代えて車間距離制御を行う(ステップS414)。これにより、離脱完了前に先々行車両を検出していても、この先々行車両との車間距離Drを維持することができる。すなわち、離脱車両がまだ離脱途中にあるのに、先々行車両に対して車間を詰めようとして、自車両が加速してしまうことを抑制できる。このように、実際に離脱するタイミングに多少の誤差があるとしても、隊列の乱れを抑制し、良好な隊列走行を維持することができる。
【0064】
そして、離脱あると判断してから時間Tmが経過したときに(ステップS413の判定が“No”)、車間距離制御から車間時間制御へと復帰させ(ステップS412)、加減速度の変動を許容する。これにより、不必要に加減速度の変動を抑制することを防ぎ、良好な隊列を維持することができる。
また、隊列内の何れの車両も同一車線上を維持し、隊列内からの離脱はないと判断したときには(ステップS411の判定が“No”)、車間時間制御を維持する(ステップS412)。これにより、不必要に加減速度の変動を抑制することを防ぎ、良好な隊列走行を維持することができる。
本実施形態において、その他、前述した第1実施形態と共通する部分については、同様の作用効果が得られるものとし、詳細な説明は省略する。
【0065】
《対応関係》
以上、ステップS401、S402、S411〜S414の処理が「走行制御部」に含まれる。さらに、ステップS412の処理が「車間時間制御部」に含まれ、ステップS414の処理が「車間距離制御部」に含まれる。
《効果》
次に、第4実施形態における主要部の効果を記す。
(1)本実施形態の隊列走行制御装置は、先行車両に対する目標車間時間Ttを設定し、隊列内の他車両が離脱すると判断した時点の車間距離Drを、第二の目標車間距離Dt2として設定する。そして、目標車間時間Ttを実現するために、自車両の加減速度を制御する車間時間制御を実行可能とし、且つ第二の目標車間距離Dt2を実現するために、自車両の加減速度を制御する車間距離制御を実行可能に構成される。そして、車間時間制御を行っている状態で、他車両が離脱すると判断したときには、他車両が離脱すると判断してから時間Tmが経過するまで、車間時間制御の代わりに車間距離制御を行う。
このように、他車両が離脱すると判断したら、時間Tmが経過するまで、車間距離制御に切り替えることで、実際に離脱するタイミングに誤差があるとしても、隊列の乱れを抑制することができる。すなわち、離脱が完了した後も離脱車両の加減速に応じて後続車両が加減速したり、逆に離脱が完了していないのに後続車両が車間を詰めようとして加速したりすることを抑制し、良好な隊列走行を維持することができる。
【0066】
《第5実施形態》
《構成》
本実施形態は、隊列内の他車両が離脱すると判断したときには、離脱位置を境に隊列を分割するものである。
装置構成は、前述した第1実施形態と同様である。
次に、コントローラ16で所定時間(例えば10msec)毎に実行する隊列編成処理について説明する。
ここでも、自車両の属する車群だけがあるものとし、便宜的にこれを隊列と称して説明する。
【0067】
図14は、第5実施形態の隊列編成処理を示すフローチャートである。
ステップS501では、隊列内の車両が車線変更によって隊列から離脱するか否かを判定する。ここで、隊列からの離脱が発生していなければ、隊列を分割する再編成は不要であると判断してステップS502に移行する。一方、隊列からの離脱が発生しているときには、隊列を分割する再編成が必要であると判断してステップS503に移行する。
【0068】
ステップS502では、隊列を再編成することなく、現在の隊列を維持したまま所定のメインプログラムに復帰する。
ステップS503では、離脱位置を境に隊列を分割して再編成してから所定のメインプログラムに復帰する。具体的には、離脱位置を境に、前側の隊列と後側の隊列とを新たに形成する。夫々、車車間通信を介して、先頭車両から順に、#1、#2、#3、……#nと、IDを付与し直すことで隊列を再編成する。
上記が本実施形態の隊列編成処理である。
【0069】
《作用》
次に、第5実施形態の作用について説明する。
隊列走行では、隊列同士の車間距離Drを、隊列内における各車両同士の車間距離Drよりも広くしている。すなわち、離脱位置を境に隊列を分割すると、分割位置の後の車両では、目標車間時間Ttが後続車両用の目標車間時間Ttから先頭車両用の目標車間時間Ttへと切り替わる。これにより、先行車両に対して車間を詰めようとして、自車両が加速してしまうことを抑制できる。
【0070】
そこで、隊列から他車両が離脱すると判断したときに(ステップS501の判定が“Yes”)、その離脱位置を境に隊列を二つに分割する(ステップS503)。これにより、離脱完了前に先々行車両を検出していても、離脱車両の離脱が完了していないのに、この先々行車両に対して車間を詰めようとして、自車両が加速してしまうことを抑制できる。このように、実際に離脱するタイミングに多少の誤差があるとしても、隊列の乱れを抑制し、良好な隊列走行を維持することができる。
【0071】
また、隊列内の何れの車両も同一車線上を維持し、隊列内からの離脱はないと判断したときには(ステップS501の判定が“No”)、現在の隊列を維持する(ステップS502)。これにより、不必要な隊列の分割によって交通効率が低下することを抑制し、良好な隊列走行を維持することができる。
本実施形態において、その他、前述した他の実施形態と共通する部分については、同様の作用効果が得られるものとし、詳細な説明は省略する。
【0072】
《対応関係》
以上、ステップS501〜S503の処理が「走行制御部」に含まれる。
《効果》
次に、第5実施形態における主要部の効果を記す。
(1)本実施形態の隊列走行制御装置は、隊列内の他車両が離脱すると判断したときには、離脱位置を境に隊列を分割する。
このように、他車両が離脱すると判断したら、離脱位置を境に隊列を分割することで、実際に離脱するタイミングに誤差があるとしても、隊列の乱れを抑制することができる。すなわち、離脱が完了した後も離脱車両の加減速に応じて後続車両が加減速したり、逆に離脱が完了していないのに後続車両が車間を詰めようとして加速したりすることを抑制し、良好な隊列走行を維持することができる。
【0073】
《第6実施形態》
《構成》
本実施形態は、隊列内の他車両における離脱意志を検出したときに、隊列内の他車両が離脱すると判断するものである。また、隊列内の他車両におけるウィンカの作動、又はCACCスイッチ11のOFFを、離脱意志として検出するものである。
装置構成は、前述した第1実施形態と同様である。
次に、隊列走行制御処理のステップS109で実行される離脱判断処理について説明する。
【0074】
図15は、第6実施形態の離脱判断処理を示すフローチャートである。
先ずステップS601では、隊列内の車両間で、車車間通信を行う。
続くステップS602では、隊列内の何れかの車両で、ウィンカが作動しているか否かを判定する。ここで、隊列内の何れかの車両で、ウィンカが作動しているときには、これを離脱意志として検出してステップS603に移行する。一方、何れの車両でも、ウィンカが作動していないときにはステップS604に移行する。
ステップS603では、隊列内の他車両が離脱すると判断してから所定のメインプログラムに復帰する。
【0075】
ステップS604では、隊列内の何れかの車両が、CACCスイッチ11がONからOFFに切り替えられたか否かを判定する。ここで、隊列内の何れかの車両で、CACCスイッチ11がOFFに切り替えられたときには、これを離脱意志として検出してステップS603に移行する。一方、何れの車両でも、CACCスイッチ11がONのままであるときにはステップS605に移行する。
ステップS605では、隊列内の他車両は離脱しないと判断してから所定のメインプログラムに復帰する。
上記が本実施形態の離脱判断処理の説明である。
【0076】
《作用》
次に、第6実施形態の作用について説明する。
離脱する車両が、直接的な離脱意志を提示することもある。例えば、ウィンカを作動させたり、CACCスイッチ11をOFFにしたりする等の操作である。そこで、車間距離Drの不連続性を検出することに加え、隊列内の車両間で車車間通信を行い(ステップS601)、離脱車両が離脱意志を提示することを検出することで、隊列内の車両が離脱するか否かを判断する。すなわち、隊列内の車両がウィンカを作動させたとき(ステップS602の判定が“Yes”)、又はCACCスイッチ11をOFFにしたときに(ステップS604の判定が“Yes”)、隊列内の他車両が隊列から離脱すると判断する(ステップS603)。これにより、隊列内の他車両が離脱するか否かを、直接判断することができる。
本実施形態において、その他、前述した他の実施形態と共通する部分については、同様の作用効果が得られるものとし、詳細な説明は省略する。
【0077】
《対応関係》
以上、ステップS601〜S605の処理が「離脱判断部」に含まれる。
《効果》
次に、第6実施形態における主要部の効果を記す。
(1)本実施形態の隊列走行制御装置は、車両間の通信により、隊列内の他車両における離脱意志を検出したときに、隊列内の他車両が離脱すると判断する。
これにより、隊列内の他車両が離脱するか否かを、直接判断することができる。
(2)本実施形態の隊列走行制御装置は、隊列内の他車両におけるウィンカの作動を、離脱意志として検出する。
これにより、離脱意志を容易に検出することができる。
(3)本実施形態の隊列走行制御装置は、隊列内の他車両におけるCACCの作動中止を、離脱意志として検出する。
これにより、離脱意志を容易に検出することができる。
以上、限られた数の実施形態を参照しながら説明したが、権利範囲はそれらに限定されるものではなく、上記の開示に基づく実施形態の改変は、当業者にとって自明のことである。また、各実施形態は、任意に組み合わせて採用することができる。
【符号の説明】
【0078】
11 CACCスイッチ
12 車輪速センサ
13 周辺状況認識装置
14 通信装置
15 ナビゲーションシステム
16 コントローラ
20 駆動力制御装置
50 ブレーキ制御装置
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
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図10
図11
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図15