特許第6252062号(P6252062)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2015.5.11 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6252062
(24)【登録日】2017年12月8日
(45)【発行日】2017年12月27日
(54)【発明の名称】ステアリング制御装置
(51)【国際特許分類】
   B62D 6/00 20060101AFI20171218BHJP
   B62D 5/04 20060101ALI20171218BHJP
   B62D 101/00 20060101ALN20171218BHJP
   B62D 113/00 20060101ALN20171218BHJP
   B62D 119/00 20060101ALN20171218BHJP
   B62D 137/00 20060101ALN20171218BHJP
【FI】
   B62D6/00
   B62D5/04
   B62D101:00
   B62D113:00
   B62D119:00
   B62D137:00
【請求項の数】7
【全頁数】16
(21)【出願番号】特願2013-192180(P2013-192180)
(22)【出願日】2013年9月17日
(65)【公開番号】特開2015-58753(P2015-58753A)
(43)【公開日】2015年3月30日
【審査請求日】2016年6月3日
(73)【特許権者】
【識別番号】000004260
【氏名又は名称】株式会社デンソー
(73)【特許権者】
【識別番号】000003207
【氏名又は名称】トヨタ自動車株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100106149
【弁理士】
【氏名又は名称】矢作 和行
(74)【代理人】
【識別番号】100121991
【弁理士】
【氏名又は名称】野々部 泰平
(74)【代理人】
【識別番号】100145595
【弁理士】
【氏名又は名称】久保 貴則
(72)【発明者】
【氏名】片岡 資章
(72)【発明者】
【氏名】平手 庸介
(72)【発明者】
【氏名】渡部 大治
(72)【発明者】
【氏名】岡崎 主税
【審査官】 神田 泰貴
(56)【参考文献】
【文献】 特開平04−027664(JP,A)
【文献】 特開2013−052793(JP,A)
【文献】 国際公開第2013/018420(WO,A1)
【文献】 特開2008−232724(JP,A)
【文献】 特開2005−319971(JP,A)
【文献】 特開2003−267245(JP,A)
【文献】 特開2009−292214(JP,A)
【文献】 国際公開第2009/078074(WO,A1)
【文献】 特開平05−229448(JP,A)
【文献】 特開2002−274405(JP,A)
【文献】 特開2003−200844(JP,A)
【文献】 特開平08−072732(JP,A)
【文献】 特開2003−040120(JP,A)
【文献】 特開2002−059860(JP,A)
【文献】 特開2001−239947(JP,A)
【文献】 米国特許第06097286(US,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B62D 6/00 − 6/10
B62D 5/00 − 5/06
B62D 5/07 − 5/32
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
車両に搭載され、
操舵部材(2)に作用している操舵トルクを検出する操舵トルク検出部(15A、251A)と、
前記操舵部材に対するドライバの操作に基づいて、前記操舵トルクの目標値である目標操舵トルクを生成する目標操舵トルク生成部(15C、251C)と、
前記目標操舵トルクとの差が0となるように、前記操舵トルクを調整する操舵モータ(6、16)の駆動をフィードバック制御する操舵モータ制御部(15E、251E)と、を備えるステアリング制御装置(15)であって、
前記操舵モータ制御部は、
前記目標操舵トルクに対する前記操舵トルクの応答が、前記ドライバの操舵に対応する第1制御周波数帯において−3dB以上となり、かつ、前記目標操舵トルクに対する前記操舵トルクの応答周波数が、第1制御周波数帯の最大周波数から、前記操舵モータが応答可能な周波数帯である第2制御周波数帯の最大周波数までの間にあるように構成されていることを特徴とするステアリング制御装置。
【請求項2】
請求項1に記載のステアリング制御装置であって
前記操舵部材の回転角度である操舵角を検出する操舵角検出部(15B、252B)と、を備え、
前記目標操舵トルク生成部は、
前記操舵角検出部により検出される前記操舵角と、車速センサ(11)により検出される車速と、に基づいて前記目標操舵トルクを生成することを特徴とするステアリング制御装置。
【請求項3】
請求項1に記載のステアリング制御装置であって
前記操舵部材の回転角度である操舵角を検出する操舵角検出部(252B)と、
車両前後方向に対するタイヤ(10)の回転角度である転舵角を検出する転舵角検出部
(252A)と、
前記操舵角と、車速センサ(11)により検出される車速と、に基づいて前記転舵角の目標値である目標転舵角を生成する目標転舵角生成部(252C)と、
前記転舵角と前記目標転舵角との差が0となるように、前記転舵角を変化させる転舵モータ(17)の駆動をフィードバック制御する転舵モータ制御部(252E)と、
前記転舵モータ制御部に供給する電流値に基づいて路面から前記タイヤに加えられる負荷の推定値である推定負荷を生成する負荷推定部(251B)と、を備え、
前記目標操舵トルク生成部は、前記負荷推定部が生成した前記推定負荷と、前記車速とから、前記目標操舵トルクを生成することを特徴とするステアリング制御装置。
【請求項4】
請求項1から3の何れか1項に記載のステアリング制御装置であって
前記第2制御周波数帯の最大周波数は、前記第1制御周波数帯の最大周波数の5倍以上の周波数であって、
前記応答周波数は、前記第1制御周波数帯の最大周波数の5倍の周波数から前記第2制御周波数帯の最大周波数までの間にあるように構成されていることを特徴とするステアリング制御装置。
【請求項5】
請求項1から4の何れか1項に記載のステアリング制御装置であって
前記第1制御周波数帯はDC〜5Hzであり、前記第2制御周波数帯はDC〜200Hzであることを特徴とするステアリング制御装置。
【請求項6】
請求項4または5に記載のステアリング制御装置であって
前記応答周波数は、25Hzから50Hzまでの間にあるように構成されていることを特徴とするステアリング制御装置。
【請求項7】
請求項1から6の何れか1項に記載のステアリング制御装置であって
前記目標操舵トルクに対する前記操舵トルクの応答は、第2制御周波数帯において−3dB以下であることを特徴とするステアリング制御装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、車両に搭載され、ドライバがステアリングを操作するために要する操舵トルクを制御するステアリング制御装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、この種のステアリング制御装置として、ハンドルに入力された角度(すなわち操舵角)に基づいて目標操舵トルクを推定し、当該目標操舵トルクと実際の操舵トルクとの偏差を無くすようにモータのフィードバック制御を行うものがある(例えば特許文献1)。
【0003】
より詳しくは、モータの出力を制御するコントローラは、目標操舵トルクと実際の操作トルクとの偏差を入力として、モータに対して公知のPI制御又はPID制御を行っている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特許第4553773号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
目標操舵トルクは、ドライバのハンドル操作(操舵角の入力など)に基づいて生成されるため、ドライバによるハンドル操作の周波数成分が存在する周波数帯(例えばDC〜5Hz)と同様の周波数帯を備える。しかしながら、上記従来装置では、コントローラが実施する制御の目標値である目標操舵トルクの周波数特性、及び目標操舵トルクを実現する上で要求される応答特性やコントローラの制約については考慮されていない。従って、ドライバによるハンドル操作の周波数成分が存在する周波数帯に対して、コントローラの応答特性が対応していない場合には、目標操舵トルクに対して適切にモータを制御することができないといった問題が生じる。
【0006】
また、コントローラが、目標操舵トルクと実際の操舵トルクとの偏差に基づいてモータに入力する指令値が、モータの応答特性を超えるものとなっている場合にも、やはり目標操舵トルクに対して適切にモータを制御することができない。
【0007】
本発明は、この事情に基づいて成されたものであり、その目的とするところは、目標操舵トルクに対してより適切にモータを制御するステアリング制御装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0008】
その目的を達成するための本発明は、車両に搭載され、操舵部材(2)に作用している操舵トルクを検出する操舵トルク検出部(15A、251A)と、操舵部材に対するドライバの操作に基づいて、操舵トルクの目標値である目標操舵トルクを生成する目標操舵トルク生成部(15C、251C)と、目標操舵トルクとの差が0となるように、操舵トルクを調整する操舵モータ(6、16)の駆動をフィードバック制御する操舵モータ制御部(15E、251E)と、を備えるステアリング制御装置(15)であって、操舵モータ制御部は、目標操舵トルクに対する操舵トルクの応答は、ドライバの操舵に対応する第1制御周波数帯において−3dB以上であって、かつ、目標操舵トルクに対する操舵トルクの応答周波数が、第1制御周波数帯の最大周波数から、モータが応答可能な周波数帯である第2制御周波数帯の最大周波数までの間にあるように構成されていることを特徴とする。
【0009】
以上の構成では、操舵モータ制御部は、目標操舵トルクに対する操舵トルクの応答が、ドライバの操舵に対応する第1制御周波数帯において−3dB以上となるように構成されている。すなわち、操舵部材に対するドライバの操作に応じて生成される目標操舵トルクに対して、より適切に操舵モータを制御することができる。
【0010】
また、応答周波数が、モータが応答可能な周波数帯である第2制御周波数帯の最大周波数よりも小さい値となっているため、モータに入力する指令値は、モータにとって実現可能な値となる。
【0011】
したがって、目標操舵トルクに対して、より適切に操舵モータを制御することができる。
【図面の簡単な説明】
【0012】
図1】第1の実施形態に係る電動パワーステアリングシステム1の概略的な構成の一例を表す図である。
図2】第1の実施形態に係るECU15の概略的な構成の一例を表すブロック図である。
図3】目標操舵トルク生成部15Cにおいて、操舵角θsから目標操舵トルクTidを生成する際に使用する変換マップの特性を表すグラフである。
図4】目標操舵トルクTidから操舵トルクまでの伝達特性の一例を示すグラフである。
図5】第2の実施形態に係る電動パワーステアリングシステム1Aの概略的な構成の一例を表す図である。
図6】第2の実施形態に係るECU25の概略的な構成の一例を表すブロック図である。
図7】車速Vと目標ギヤ比kの対応関係を表すマップの一例である。
図8】路面負荷Txと目標操舵トルクTidの対応関係を表すマップの一例である。
【発明を実施するための形態】
【0013】
(第1の実施形態)
<全体構成>
以下、本発明の第1の実施形態について図面を用いて説明する。図1は、車両に搭載され、本発明に係るステアリング制御装置の機能を備える電動パワーステアリングシステム1の概略的な構成の一例を示す図である。
【0014】
本実施形態における電動パワーステアリングシステム1は、一例としてドライバによるハンドル2(請求項に記載の操舵部材)の操作をモータ6によってアシストするものとして、以降の説明を行う。もちろん、他の形態として、ハンドル2を含む操舵機構と、タイヤ10の車両前後方向に対する角度(転舵角とする)を実際に変化させるための転舵機構とが機械的に分離された、いわゆるステアバイワイヤ方式の電動パワーステアリングシステムに適用しても良い。
【0015】
ハンドル2は、ステアリングシャフト3の一端に固定され、ステアリングシャフト3の他端にはトルクセンサ4が接続されており、このトルクセンサ4の他端には、インターミディエイトシャフト5が接続されている。なお、以下の説明では、ステアリングシャフト3からトルクセンサ4を経てインターミディエイトシャフト5に至る軸体全体を、まとめて操舵軸ともいう。また、以下では、ステアリングシャフト3の中立位置からの回転角を操舵角ともいう。
【0016】
トルクセンサ4は、ステアリングシャフト3とインターミディエイトシャフト5とを連結するトーションバー(図示略)を有し、このトーションバーのねじれ角θtを、後述するECU(Electronic Control Unit)15に出力する。そして、ECU15はトルクセンサ4から入力されるねじれ角θtに基づいて操舵軸に加えられているトルク(操舵トルク)Tsを検出する。なお、トーションバーのねじれ角θtは、インターミディエイトシャフト5に対するステアリングシャフト3の回転角度差を表し、その値が正となる回転方向は、操舵角が正となる回転方向と同じであるとする。
【0017】
モータ6は、ECU15の指示に基づいて回転することでハンドル2の操舵力をアシスト(補助)するものであって、モータ6の回転は減速機構6Aを介してインターミディエイトシャフト5に伝達される。このモータ6が請求項に記載の操舵モータの一例に相当する。
【0018】
減速機構6Aは、モータ6の回転軸の先端に設けられたウォームギヤと、このウォームギヤと噛み合った状態でインターミディエイトシャフト5に同軸状に設けられたウォームホイール(いずれも図示略)とにより構成されている。したがって、モータ6の回転は、この減速機構6Aを介してインターミディエイトシャフト5に伝達される。また、ハンドル2の操作や路面12からの反力(路面反力)によってインターミディエイトシャフト5が回転すると、その回転が減速機構6Aを介してモータ6に伝達され、モータ6も回転することになる。
【0019】
本実施形態においてモータ6は、一例として周知のブラシレスモータとし、内部にレゾルバ等の回転センサを備え、モータ6の回転状態を出力可能に構成されている。回転センサが検出する回転状態は、少なくともモータ角θmを出力可能に構成されている。なお、回転状態として回転角速度(回転の角速度)を検出して、この回転角速度を積分することで現在のモータ角θmを算出する構成としても良い。検出したモータ角θmはECU15に出力される。なお、モータ角θmもまた、ねじれ角θtと同様に、回転方向を表す正または負の値をとる。
【0020】
インターミディエイトシャフト5において、トルクセンサ4が接続された一端とは反対側の他端は、ステアリングギヤボックス7に接続されている。ステアリングギヤボックス7は、ラックとピニオンギヤ(何れも図示略)からなるギヤ機構にて構成されており、インターミディエイトシャフト5の他端に設けられたピニオンギヤに、ラックの歯が噛み合っている。
【0021】
そのため、インターミディエイトシャフト5が回転(すなわちピニオンギヤが回転)すると、ラックが左右に移動する。ラックの両端にはそれぞれタイロッド8が取り付けられており、ラックとともにタイロッド8が左右の往復運動を行う。これにより、タイロッド8がその先のナックルアーム9を引っ張ったり押したりすることで、各タイヤ10の向きが変わる。
【0022】
以上の構成により、ドライバがハンドル2を回転させると、その回転がステアリングシャフト3、トルクセンサ4、およびインターミディエイトシャフト5を介してステアリングギヤボックス7に伝達される。そして、ステアリングギヤボックス7内で、インターミディエイトシャフト5の回転がタイロッド8の左右移動に変換され、タイロッド8が動くことによって、左右の両タイヤ10が転舵される。
【0023】
また、車両における所定の部位には、車速Vを検出するための周知の車速センサ11が設けられている。車速センサ11が検出した車速Vは、ECU15に出力される。
【0024】
ECU15は、図示しない車載バッテリからの電力によって動作し、トルクセンサ4にて検出されたトーションバーのねじれ角θt、モータ6のモータ角θm、および車速センサ11にて検出された車速Vに基づいて、アシストトルク指令値Im*を演算する。そして、その演算結果に応じた駆動電圧Vdをモータ6へ印加することにより、ドライバがハンドル2を回す力(ひいては両タイヤ10を転舵する力)のアシスト量をフィードバック制御する。
【0025】
本実施形態においてモータ6はブラシレスモータとするため、ECU15からモータ6へ出力(印加)される駆動電圧Vdは、詳しくは、3相(U,V,W)の駆動電圧Vdu,Vdv,Vdwである。ECU15からモータ6へこれら各相の駆動電圧Vdu,Vdv,Vdwを印加(各相の駆動電流を通電)することで、モータ6の回転トルクが制御される。ブラシレスモータを3相の駆動電圧で駆動(例えばPWM駆動)する方法やその3相の駆動電圧を生成する駆動回路(例えば3相インバータ)については周知であるため、ここではその詳細な説明は省略する。
【0026】
なお、ECU15は、モータ6へ印加する駆動電圧Vdを制御することによりモータ6の回転トルクを制御するものであるが、モータ6を制御することで結果としてそのモータ6により駆動される操舵系メカ100A(図2参照)を間接的に制御することを意味する。したがって、ECU15の制御対象は、モータ6と操舵系メカ100Aを含む操舵系メカシステム100であるとも言える。
【0027】
なお、操舵系メカ100Aは、図1に示したシステム構成図のうちECU15およびモータ6を除く機構全体、すなわちハンドル2から各タイヤ10に至る、ハンドル2に入力された操舵力が伝達される機構全体を示す。なお、ここでは便宜上、操舵系メカ100Aとモータ6とを区別した表現を用いるが、もちろん、モータ6を含めて操舵系メカと称してもよい。なお、このECU15が請求項に記載のステアリング制御装置の一例に相当する。
【0028】
<ECU>
ECU15は、図2に示すように、種々の処理を実施するための機能ブロックとして、操舵トルク検出部15A、操舵角検出部15B、目標操舵トルク生成部15C、偏差演算部15D、コントローラ15E、及び電流FB部15Fを備えている。
【0029】
操舵トルク検出部15Aは、トルクセンサ4から入力されるねじれ角θtに基づいて操舵軸に作用している操舵トルクTsを検出する。操舵角検出部15Bは、モータ角θmと、トーションバーのねじれ角θtとから、ドライバがハンドル2に入力している角度(すなわち、操舵角)θsを検出する。例えば操舵角θsは、モータ角θmと、トーションバーのねじれ角θtの和とすればよく、回転方向を表す正または負の値をとる。例えばハンドル2の中立位置に対して時計回りの方向の角度(いわゆる右舷角)を正とし、反時計回りの方向の角度(いわゆる左舷角)を負の値で表す。なお、操舵角θsは、周知の角度センサを用いて検出しても良い。
【0030】
目標操舵トルク生成部15Cは、操舵角θsと車速Vに応じてタイヤ10が路面12から受けるセルフアライニングトルク、すなわち自然と操舵角θsを0(中立位置)に近づけようとする復元力に対応する操作感を、ドライバに伝達するための機能ブロックである。ここでの操作感とは、ハンドル2からタイヤ10までの感覚的硬さ、ねばり、重さを指し、操舵角θsと車速Vに応じてドライバに与える操作感を調整することで、ハンドル2の操舵量や車速Vを認識しやすくする。
【0031】
目標操舵トルク生成部15Cは、上述した操作感を実現するために、操舵角θs及び車速センサ11から入力される車速Vを用いて、ドライバがハンドル2を操舵するために要するトルクの目標値である目標操舵トルクTidを生成する。より具体的には、目標操舵トルク生成部15Cは、操舵角θs、車速V、及び目標操舵トルクTidの対応関係を表す操舵角−目標操舵トルクTidマップを参照することによって、目標操舵トルクTidを算出する。
【0032】
操舵角−目標操舵トルクTidマップは、例えば図3に示すように、操舵角θsに対応する目標操舵トルクTidを、予め設定された複数種類の車速毎にマップ化したものとすればよい。目標操舵トルクTidは、操舵角θsが大きいほど、また、車速Vが大きいほど、大きくなる。設定された車速以外の車速Vでは、マップの値から補間して目標操舵トルクTidを求めればよい。なお、図3では、操舵角θsが正の範囲を示しているが、操舵角θsが負の範囲にある場合には、図3に示すマップを原点対称にした値を用いる構成とする。なお、目標操舵トルクTidの正負は、目標操舵トルクTidの方向を表すものであって、その正負は操舵角θsと同様であるものとする。
【0033】
偏差演算部15Dは、目標操舵トルクTidと、操舵トルク検出部15Aが検出した操舵トルクTsとの差であるトルク偏差を演算してコントローラ15Eに出力する。
【0034】
コントローラ15Eは、トルク偏差に基づき、トルク偏差が0になるような、すなわち操舵トルクTsが目標操舵トルクTidに追従するようなアシストトルク(アシスト量ともいう)を決定する。そして、アシストトルクの大きさ及び方向を、モータ6に通電させる電流の指令値であるアシストトルク指令値Im*として電流FB部15Fに出力する。
【0035】
本実施形態においてコントローラ15Eは、比例要素(P)、積分要素(I)及び微分要素(D)を備え、いわゆるPID制御を実現するように構成とするがこれに限らない。微分要素を備えないPI制御であってもよい。このコントローラ15Eの周波数に対する応答特性については、別途、詳細に後述する。このコントローラ15Eが請求項に記載の操舵モータ制御部の一例に相当する。
【0036】
電流FB部15Fは、アシストトルク指令値Im*に対応したアシストトルクが操舵軸(特にトルクセンサ4よりもタイヤ10側)に付与されるようにモータ6へ駆動電圧Vdを印加する。具体的には、アシストトルク指令値Im*に基づいて、モータ6の各相へ通電すべき目標電流(相毎の目標電流)を設定する。そして、各相の通電電流Imをフィードバックして、その検出値(各相の通電電流Im)がそれぞれ目標電流と一致するように駆動電圧Vdを制御することで、操舵軸に対して所望のアシストトルクを発生させる。
【0037】
なお、このような電流FB部15Fは公知の技術(例えば、特開2013−52793号公報参照)であるため、ここでは説明を省略する。
【0038】
<コントローラの応答特性>
ここで、偏差演算部15Dおよびコントローラ15Eによって実現される目標操舵トルクTidから操舵トルクTsまでの周波数に対する応答特性を、図4を用いて説明する。
【0039】
図4中の第1制御周波数帯とは、ドライバによってハンドル2が操舵される際の周波数成分が存在する帯域(これを操舵周波数帯とも称する)を表しており、第2制御周波数帯とは、モータ6が応答可能な周波数帯を指す。ここでは、一例として第1制御周波数帯をDC〜5Hzとし、第2制御周波数帯はDC〜100Hzに設定されているものとする。したがって、第1制御周波数帯の最大周波数f1は5Hzであり、第2制御周波数帯の最大周波数f2は100Hzである。
【0040】
もちろん、第1制御周波数帯の範囲は、適宜試験等によって設計されればよく、他の例としてはDC〜10Hzであってもよい。また、第2制御周波数帯の範囲も、モータ6の性能を考慮して設計されれば良く、他の例としては、DC〜200Hzであってもよい。
【0041】
コントローラ15Eは、図4に示すように、目標操舵トルクTidに対する操舵トルクTsの応答周波数fcが、第1制御周波数帯の最大周波数f1以上であり、且つ、第2制御周波数帯の最大周波数f2以下の範囲にあるように構成されている(一例としてfc=25Hz)。ここでいう応答周波数fcとは、目標操舵トルクTidに対する操舵トルクTsのゲイン(すなわち応答特性)が−3dBとなる周波数をいう。
【0042】
さらに、コントローラ15Eは、目標操舵トルクTidに対する操舵トルクTsの応答が、第1制御周波数帯で−3dB以上であり、且つ、第2制御周波数帯より高い周波数で−3dB以下であるように構成されている。
【0043】
このような周波数に対する応答特性の調整は、コントローラ15Eが備える比例要素(P)、積分要素(I)及び微分要素(D)の各ゲインを変更することにより行われる。例えば、図中の周波数全域にわたるゲインの増減は比例要素(P)のゲインによって変更される。また、低い周波数領域(例えば数Hz)におけるゲインは積分要素(I)のゲインによって調整され、約20Hz付近におけるゲインのピーク値は微分要素(D)のゲインによって調整される。比例要素(P)、積分要素(I)及び微分要素(D)の各ゲインによる応答特性の調整は周知であるため、ここでは詳細な説明を省略する。
【0044】
<効果>
以上説明したように、本実施形態では、PID制御を実現するコントローラ15Eは、目標操舵トルクTidに対する操舵トルクTsの応答周波数fcが、第1制御周波数帯の最大周波数f1以上であり、且つ、第2制御周波数帯の最大周波数f2以下の範囲にあるように構成されている(図4参照)。
【0045】
ここで、ドライバによってハンドル2が操舵される際の周波数成分は概ね5Hz以下であることから、目標操舵トルクTidは、5Hz程度までの成分からなる。そして、このようなドライバの操舵に対して応答するためには、コントローラ15Eにおいて、5Hzまでの目標操舵トルクTidに対して操舵トルクTsが追従することが必要となる。つまり、コントローラ15Eは、目標操舵トルクTidから操舵トルクTsまでの応答特性が、5Hzまでは−3dB以上となるように構成されていることが望ましい。
【0046】
本実施形態におけるコントローラ15Eは、目標操舵トルクTidに対する操舵トルクTsの応答特性が、ドライバによってハンドル2が操舵される際の周波数成分に対応する第1制御周波数帯において−3dB以上となるように構成されている。したがって、コントローラ15Eは、目標操舵トルクTidに対してより適切にモータ6を制御することができる。
【0047】
一方、コントローラ15Eの指令先であるモータ6では、電流応答(トルク応答と等価)において磁気振動やモータハウジング共鳴、電流検出ノイズといった高周波振動を増幅しないように、モータ6の応答可能な周波数帯の上限(すなわち最大周波数f2)が定められている。
【0048】
したがって、コントローラ15Eは、モータ6の最大周波数f2を超えた指令値を出さないために、目標操舵トルクTidから操舵トルクTsまでの応答特性が、モータ6の最大周波数f2以上の周波数においては−3dB以下となるように構成されていることが望ましい。
【0049】
本実施形態では、モータ6の最大周波数f2=100Hzに対して、コントローラ15Eは、前述したゲイン特性が100Hz以上の周波数では−3dB以下となるように構成されている。したがって、コントローラ15Eの指令先であるモータ6を高周波振動なく適切に作動させることができる。
【0050】
ところで、第1制御周波数帯の最大周波数f1までの目標操舵トルクTidに対して操舵トルクTsを十分に応答させるためには、コントローラ15Eは、理想的には最大周波数f1の5〜10倍の周波数まで応答性を備えていることが好ましい。言い換えれば、最大周波数f1の5〜10倍の周波数まで、目標操舵トルクTidにする操舵トルクTsの応答特性が−3dB以上となっていることが好ましい。
【0051】
これを鑑みて本実施形態では、最大周波数f1=5に対して、応答周波数fc=25とした。すなわち、応答周波数fcが最大周波数f1の5倍となっているため、上述したように、最大周波数f1までの目標操舵トルクTidに対して操舵トルクを十分に応答させることができる。なお、これらの値は一例であって、最大周波数f1までの目標操舵トルクTidに対して操舵トルクを十分に応答させるための倍率をα(5≦α≦10)とすると、応答周波数fc=α×f1となるように比例要素(P)、積分要素(I)及び微分要素(D)の各ゲインを調整すればよい。
【0052】
なお、以上で述べた応答周波数fcは、一例として25Hzとしたが、これに限らない。第1制御周波数帯の最大周波数f1以上であり、且つ、第2制御周波数帯の最大周波数f2以下の範囲にあるように構成されていればよい。すなわち、本実施形態では、応答周波数fcは、5〜100Hzの範囲の値であればよい。
【0053】
また、コントローラ15Eは、前述したように、最大周波数f1(ここでは5Hz)の5〜10倍の周波数まで応答性を備えることがより好ましい。したがって、応答周波数fcは上記の範囲(5〜100Hz)の中でも、さらに、25〜50Hzの範囲の値であることが好ましい。
(第2の実施形態)
次に、本発明の第2の実施形態について、図面に基づいて説明する。なお、説明の便宜上、第1の実施形態の説明に用いた部材と同一の機能を有する部材については、同一の符号を付し、その説明を省略する。また、構成の一部のみを説明している場合、構成の他の部分については先に説明した第1の実施形態を適用することができる。
【0054】
<全体構成>
図5は、第2の実施形態に係るステアリング制御装置の機能を備える電動パワーステアリングシステム1Aの概略的な構成の一例を示す図である。本実施形態における電動パワーステアリングシステム1Aは、ハンドル2を含む操舵機構(操舵系メカシステムとする)200と、転舵角を制御する転舵機構(転舵系メカシステムとする)300とが機械的に分離されたステアバイワイヤ方式を採用している。
【0055】
操舵系メカシステム200は、ハンドル2、ステアリングシャフト3、及びトルクセンサ4を備える操舵系メカ200Aと、反力モータ16と、を備えている。ハンドル2は、第1の実施形態と同様にステアリングシャフト3を介してトルクセンサ4と接続されている。また、このトルクセンサ4の他端は、減速機構16Aを介して反力モータ16と接続されている。
【0056】
反力モータ16は、ECU25の指示に基づいて回転することでドライバによるハンドル2の操作に対して反力トルク(すなわち、操舵トルク)Tsを付与するものである。反力モータ16の回転力は減速機構16Aを介してステアリングシャフト3に伝達される。なお、本実施形態において反力モータ16は周知のブラシレスモータとし、反力モータ16のモータ角θmrを出力可能に構成されている。検出したモータ角θmrはECU25に出力される。また、反力モータ16に供給されている電流の値ImrもECU25に出力される。
【0057】
転舵系メカシステム300は、車両の左右方向に延びて配置された転舵軸13、タイロッド8、ナックルアーム9、及びタイヤ10を備える転舵系メカ300Aと、転舵モータ17と、を備えている。
【0058】
転舵軸13の両端部には、タイロッド8及びナックルアーム9を介して、タイヤ10を転舵可能に接続されている。転舵軸13の軸線方向の変位がタイロッド8及びナックルアーム9を介して伝達されることによって、タイヤ10の転舵角θfは変化する。転舵軸13には、転舵モータ17が組み付けられている。
【0059】
転舵モータ17はECU25の指示に基づいて回転することでタイヤ10の転舵角θfを制御するための電動モータであって、転舵モータ17の回転運動は、図示しないボールねじ機構によって直線運動に変換されて転舵軸13に伝達される。すなわち、転舵モータ17が回転すると転舵軸13が左右に移動し、転舵軸13の移動に伴ってタイヤ10の転舵角θfが変化する。
【0060】
本実施形態において転舵モータ17は周知のブラシレスモータとし、転舵モータ17のモータ角θmfを出力可能に構成されている。検出したモータ角θmfはECU25に出力される。また、転舵モータ17に供給されている電流の値ImfもECU25に出力される。
【0061】
ECU25は、ECU25に接続される各機器から入力される信号に基づいて、反力モータ16、転舵モータ17それぞれの出力すべきトルクを演算する。そして、その演算結果に応じた駆動電圧を各モータ16、17へ印加することにより、反力モータ16及び転舵モータ17を制御する。このECU25の作動について、次に詳細に説明する。
【0062】
なお、本実施形態において反力モータ16及び転舵モータ17は何れもブラシレスモータとするため、ECU25は、反力モータ16の駆動電圧Vdrおよび転舵モータ17の駆動電圧Vdfをそれぞれ調整することで、各モータ16、17の出力を制御する構成とする。
【0063】
また、ECU25の直接的な制御対象は、反力モータ16及び転舵モータ17であるが、例えば反力モータ16を制御することは結果として反力モータ16により駆動される操舵系メカ200A(図6参照)を間接的に制御することを意味する。また、転舵モータ17を制御することは結果として転舵モータ17により駆動される転舵系メカ300Aを間接的に制御することを意味する。したがって、ECU25の制御対象は、反力モータ16と操舵系メカ200Aを含む操舵系メカシステム200、及び転舵モータ17と転舵系メカ300Aを含む転舵系メカシステム300であるとも言える。
【0064】
<ECU>
次にECU25の作動について説明する。ECU25は、図2に示すように、操舵系メカシステム200を制御するための機能ブロックである操舵力制御部251と、転舵系メカシステム300を制御するための機能ブロックである転舵角制御部252と、を備えている。操舵力制御部251について説明する前に、先に転舵角制御部252について説明する。
【0065】
転舵角制御部252は、より細かい機能ブロックとして、転舵角検出部252A、操舵角検出部252B、目標転舵角生成部252C、偏差演算部252D、転舵角コントローラ252E、及び転舵モータ電流FB部252Fを備えている。
【0066】
転舵角検出部252Aは、転舵モータ17のモータ角θmfからタイヤ10の転舵角θfを検出する。操舵角検出部252Bは、反力モータ16のモータ角θmrと、トーションバーのねじれ角θtとから、ドライバがハンドル2に入力している角度(すなわち、操舵角)θsを検出する。
【0067】
目標転舵角生成部252Cは、操舵角θsと、車速センサ11から入力される車速Vを用いて、タイヤ10の転舵角θfの目標値である目標転舵角θf*を生成する。より具体的には、目標転舵角生成部252Cは、操舵角θsと目標転舵角θf*の比である目標ギヤ比k(k=θs/θf*)と、車速Vとの対応関係を表す車速−目標ギヤ比マップを参照することによって、現在の車速Vに対応する目標ギヤ比kを取得する。そして、得られた目標ギヤ比kと操舵角θsとを用いて、θf*=θs/kを演算することによって目標転舵角θf*を算出する。
【0068】
この車速−目標ギヤ比マップは、例えば図7に示すように、車速Vが小さい領域(すなわち低速領域)では、目標ギヤ比kが相対的に小さくなるように設定し、車速Vが大きい領域(すなわち高速領域)では、目標ギヤ比kが相対的に大きくなるように設定する。
【0069】
このような構成にすれば、同じ操舵角θsに対して、低速領域では相対的に目標転舵角θf*が大きく設定される一方、高速領域では目標転舵角θf*が小さく設定される。すなわち、低速領域では相対的に少ないハンドル操作(すなわち、操舵角θsが小さい場合)で、目標転舵角θf*が大きく設定されるため、小回りを効かせることができる。また、高速領域ではドライバのハンドル操作に対する車両横運動(言い換えれば進行方向の変化量)の感度を下げることになるため、より安定して走行させることができる。
【0070】
偏差演算部252Dは、目標転舵角θf*と、転舵角検出部252Aが検出した転舵角θfとの差である転舵角偏差を演算して転舵角コントローラ252Eに出力する。
【0071】
転舵角コントローラ252Eは、転舵角偏差に基づいて、転舵角偏差が0になるように、すなわち転舵角θfが目標転舵角θf*に追従するように、転舵モータ17を駆動させる量(転舵量とする)を決定する。そして、この転舵量を、転舵モータ17に通電する電流の指令値である転舵モータ電流指令値Imf*として、転舵モータ電流FB部252Fに出力する。なお、本実施形態において転舵角コントローラ252Eは、第1の実施形態と同様に、比例要素(P)、積分要素(I)及び微分要素(D)を備え、いわゆるPID制御を実現するように構成とする。この転舵角コントローラ252Eが請求項に記載の転舵モータ制御部の一例に相当する。
【0072】
転舵モータ電流FB部252Fは、転舵モータ電流指令値Imf*に対応した転舵量が転舵軸13に付与されるように転舵モータ17に駆動電圧Vdfを印加する。具体的には、転舵モータ電流指令値Imf*に基づいて、転舵モータ17の各相へ通電すべき目標電流(相毎の目標電流)を設定する。そして、各相の通電電流の検出値(検出電流Imfとする)がそれぞれ目標電流と一致するように駆動電圧Vdfを制御することで、所望の転舵角θf*を実現させる。なお、転舵モータ17に供給している電流の大きさ、すなわち検出電流Imfは、後述する負荷推定部251Bにも出力される。
【0073】
続いて、操舵力制御部251について説明する。操舵力制御部251は、図6に示すように、より細かい機能ブロックとして、操舵トルク検出部251A、負荷推定部251B、目標操舵トルク生成部251C、偏差演算部251D、操舵トルクコントローラ251E、及び反力モータ電流FB部251Fを備えている。操舵トルク検出部251Aは、トルクセンサ4から入力されるトーションバーのねじれ角θtに基づいてステアリングシャフト3に加えられている操舵トルクTsを検出する。
【0074】
負荷推定部251Bは、転舵モータ17に通電されている電流(すなわち検出電流)Imfから、タイヤ10が路面12から受けるトルクに相当する路面負荷Txを推定する。より具体的には、負荷推定部251Bは、路面負荷Txを、検出電流Imfに所定の係数Kxを乗算して算出する(すなわちTx=Kx×Imf)。なお、係数Kxは適宜設計されればよい。この路面負荷Txが請求項に記載の推定負荷に相当する。
【0075】
なお、負荷推定部251Bは、所定の周波数以下の帯域の成分を抽出する図示しないローパスフィルタ(LPF)を備え、このLPFにより抽出された周波数成分を路面負荷Txとして目標操舵トルク生成部251Cに出力する。LPFが通過させる周波数帯は、少なくとも第1制御周波数帯の成分を通過させ、かつ、操舵トルクコントローラ251Eが応答可能な周波数帯の範囲に収まるように適宜設計されればよい。
【0076】
本実施形態では、操舵トルクコントローラ251Eの応答周波数fcを25Hzとしているため、LPFは、25Hz以下の周波数成分を通過(抽出)させ、25Hzより高い周波数成分は遮断するものとする。もちろん、LPFが通過させる周波数帯の上限値は、応答周波数fcよりも低くてもよく、LPFが通過させる周波数帯は、例えばDC〜20Hzなどとしてもよい。
【0077】
目標操舵トルク生成部251Cは、負荷推定部251Bで推定した路面負荷Txと、車速センサ11が検出する車速Vとから、目標操舵トルクTidを生成する。より具体的には、目標操舵トルク生成部251Cは、路面負荷Tx、車速V、及び目標操舵トルクTidの対応関係を表したマップである路面負荷−目標操舵トルクTidマップを参照することによって、目標操舵トルクTidを算出する。
【0078】
路面負荷−目標操舵トルクTidマップは、例えば図8に示すように、路面負荷Txに対応する目標操舵トルクTidを、予め設定された複数種類の車速V毎にマップ化したものとすればよい。目標操舵トルクTidは、路面負荷Txが大きいほど、また、車速Vが大きいほど大きくなる。なお、設定された車速以外の車速Vに対しては、マップの値から補間して目標操舵トルクTidを求めればよい。
【0079】
偏差演算部251Dは、目標操舵トルクTidと、操舵トルク検出部251Aが検出した操舵トルクTsとの差であるトルク偏差を演算して操舵トルクコントローラ251Eに出力する。
【0080】
操舵トルクコントローラ251Eは、トルク偏差に基づいて、操舵トルクTsが目標操舵トルクTidに追従するように反力モータ16を駆動させるための制御量(反力モータ16に通電させる電流の指令値Imr*)を決定する。ここで、電流の指令値Imr*は便宜上、前述の転舵モータ電流指令値Imf*と区別するため、反力モータ電流指令値Imr*と称する。
【0081】
本実施形態において操舵トルクコントローラ251Eは、前述の第1の実施形態におけるコントローラ15Eと同様に、比例要素(P)、積分要素(I)及び微分要素(D)を備えている。また、入力される信号の周波数に対する応答特性についてもコントローラ15Eと同様の応答特性を有するものとする(図4参照)。すなわち、目標操舵トルクTidに対する操舵トルクTsの応答が、第1制御周波数帯で−3dB以上であり、且つ、第2制御周波数帯より高い周波数で−3dB以下であるように構成されている。また、応答周波数fcは、第1制御周波数帯の最大周波数f1と、第2制御周波数帯の最大周波数f2との間の値(ここでは25Hz)となるように構成されている。
【0082】
反力モータ電流FB部251Fは、反力モータ電流指令値Imr*に対応したトルク(すなわち目標操舵トルクTid)がステアリングシャフト3に付与されるように、反力モータ16へ駆動電圧Vdrを印加する。
【0083】
<効果>
以上の構成によれば、操舵角θsに基づいて目標転舵角θf*が決定し、転舵角θfが当該目標転舵角θf*に追従するように転舵モータ17を駆動させる。このとき転舵モータ17に供給される電流Imfに基づいて、負荷推定部251Bが路面負荷Txを推定する。すなわち、負荷推定部251Bは、操舵角θsに応じて定まる電流Imfに基づいて路面負荷Txを推定する。そして、目標操舵トルク生成部251Cは、路面負荷Txに基づいて目標操舵トルクTidを生成して、操舵トルクコントローラ251Eが、操舵トルクTsが目標操舵トルクTidに追従するように、反力モータ16を制御する。
【0084】
ここで、操舵角θsの周波数成分は、第1の実施形態でも述べたとおり、DC〜5Hz(すなわち第1制御周波数帯)であるため、転舵モータ17に供給される電流Imfもまた、少なくともDC〜5Hzの周波数成分を備え、当該周波数成分がドライバのハンドル操作に起因する成分である。そして目標操舵トルクTidもまた、電流Imfによって定まる路面負荷Txに応じて生成されるため、DC〜5Hzの周波数成分を備えている。
【0085】
したがって、ドライバのハンドル操作に対して応答するためには、やはり操舵トルクコントローラ251Eは、目標操舵トルクTidから操舵トルクTsまでの応答特性が、DC〜5Hzの周波数帯において−3dB以上となるように構成されていることが望ましい。
【0086】
本実施形態における操舵トルクコントローラ251Eは、目標操舵トルクTidに対する操舵トルクTsの応答特性が、ドライバによってハンドル2が操舵される際の周波数成分に対応する第1制御周波数帯において−3dB以上となるように構成されている。したがって、操舵トルクコントローラ251Eは、目標操舵トルクTidに対してより適切にモータ6を制御することができる。
【0087】
また、本実施形態では、負荷推定部251Bが転舵モータ17に通電されている電流Imfから路面負荷Txを推定する構成とすることで、次に述べる効果も奏する。
【0088】
まず、操舵角θsに応じた目標転舵角θf*を実現するために転舵モータ17にかかる負荷は、路面12の状況に影響される。具体的には、路面12が粗い(すなわち摩擦係数が大きい)場合には、路面12からタイヤ10にかかるトルクは大きくなり、これに伴って転舵モータ17にかかる負荷は大きくなる。また、路面12が滑らかである(すなわち摩擦係数が小さい)場合には、路面12からタイヤ10にかかるトルクは小さくなる。
【0089】
転舵モータ17にかかる負荷が大きいほど転舵モータ17が要する電流Imfは大きくなる。言い換えれば、検出電流Imfが大きいほど、転舵モータ17の負荷の大きさ、すなわち、路面負荷Txが大きいことになる。そして、目標操舵トルクTidは、路面負荷Txに応じて生成されるため、路面負荷Txが相対的に大きい場合には目標操舵トルクTidも相対的に大きくなる。
【0090】
従って、同じ操舵角θsを入力している場合であっても、路面12の摩擦係数が大きい場合には、相対的に路面負荷Tx及び目標操舵トルクTidが大きくなり、これに伴ってドライバがハンドル2から感じるトルクも大きくなる。また、路面12の摩擦係数が小さい場合には、同じ操舵角θsを入力している場合であっても、相対的に路面負荷Tx及び目標操舵トルクTidが小さくなり、ドライバがハンドル2から感じるトルクも小さくなる。
【0091】
つまり、転舵モータ17に通電されている電流Imfから路面負荷Txを推定することによって、路面の状態をドライバに伝えることができ、ドライバの操作感を向上させることができる。
【符号の説明】
【0092】
1 電動パワーステアリングシステム、2 ハンドル(操舵部材)、6 モータ(操舵モータ)、16 反力モータ(操舵モータ)、17 転舵モータ、10 タイヤ、11 車速センサ、15・25 ECU、15A・251A 操舵トルク検出部、15B・252B 操舵角検出部、15C・251C 目標操舵トルク生成部、15E コントローラ、15F 電流FB部、251 操舵力制御部、252 転舵角制御部、251B 負荷推定部、251E 操舵トルクコントローラ、252E 転舵角コントローラ
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8