(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
請求項1に記載の鍵盤楽器において、前記鍵盤蓋は前記収納の状態として、前記鍵盤部を露呈させた第1収納状態と、この第1収納状態から更に前記鍵盤蓋を前記楽器ケースの内部へ収納させた第2収納状態と、を有することを特徴とする鍵盤楽器。
請求項3に記載の鍵盤楽器において、前記楽器ケース内に前記仕切部材を前後方向に回転可能に支持する支持軸と、前記鍵盤側空間と前記スピーカ側空間との間を塞ぐ位置に向けて前記仕切部材を付勢する付勢部材とを備えていることを特徴とする鍵盤楽器。
請求項1〜請求項4のいずれかに記載の鍵盤楽器において、前記鍵盤蓋は、複数の蓋部が折り曲げ可能に連結され、前記楽器ケースにスライド可能に設けられていることを特徴とする鍵盤楽器。
請求項1〜請求項4のいずれかに記載の鍵盤楽器において、前記鍵盤蓋は、1枚の平板で形成され、前記楽器ケースにスライド可能に設けられていることを特徴とする鍵盤楽器。
【発明を実施するための形態】
【0011】
(第1実施形態)
以下、
図1〜
図3を参照して、この発明を電子鍵盤楽器に適用した第1実施形態について説明する。
この電子鍵盤楽器は、
図1〜
図3に示すように、楽器ケース1を備えている。この楽器ケース1は、前側上部(
図1では左側上部)が開放された横長のほぼ箱形状に形成されている。
【0012】
すなわち、この楽器ケース1は、
図1〜
図3に示すように、底板2と、この底板2の前端部(
図1では左端部)に起立して設けられた前板3と、底板2の後端部(
図1では右端部)に起立して設けられた後板4と、底板2の左右両側部(
図1では紙面の表裏面の両側部)に起立して設けられた一対の側板5と、この一対の側板5の後側上部および後板4の上部に配置された天板6とを備えている。
【0013】
この場合、前板3は、
図1〜
図3に示すように、後板4の高さのほぼ半分程度の高さで形成されている。また、一対の側板5は、その前端部が前板3よりも少し高く形成され、前後方向(
図1では左右方向)におけるほぼ中間部から後部側が後板4と同じ高さで形成され、前端部から中間部に向けて後部上がりに傾斜する傾斜部に形成されている。これにより、楽器ケース1は、一対の側板5の各傾斜部に対応する前部側が上方に開放された横長のほぼ箱形状に形成されている。
【0014】
この楽器ケース1内には、
図1〜
図3に示すように、鍵盤部7が設けられている。この鍵盤部7は、楽器ケース1の底板2上に配置された鍵盤シャーシ8と、この鍵盤シャーシ8上に上下方向に回転可能な状態で並列に配列された複数の鍵9とを備えている。この鍵盤部7は、
図2および
図3に示すように、複数の鍵9が楽器ケース1の前部側から上方に露呈した状態で、押鍵操作されるように構成されている。
【0015】
また、楽器ケース1内には、
図1〜
図3に示すように、スピーカ10が鍵盤部7の後方に位置した状態で下向きに配置されている。このスピーカ10は、鍵盤部7の各鍵9が押鍵操作された際に、その各鍵9に応じた音高の楽音を発生するように構成されている。この場合、楽器ケース1の底板2には、スピーカ10の音を楽器ケース1の下側に向けて放音する放音孔2aが設けられている。また、この楽器ケース1内には、コンソールパネル12が鍵盤部7の後部に位置する上側から天板6の前部の下側に向けて傾斜して設けられている。
【0016】
一方、この楽器ケース1内には、
図1〜
図3に示すように、鍵盤部7の上側を覆う鍵盤蓋13が蓋ガイド部14によって開閉可能に設けられている。この鍵盤蓋13は、前蓋15と後蓋16とを有し、この前蓋15と後蓋16とが蝶番17によって折り曲げ可能に連結され、この状態で鍵盤部7を上方に開放するために楽器ケース1内に収納される際に、前蓋15と後蓋16とが蝶番17で折れ曲がって収納されるように構成されている。
【0017】
この場合、前蓋15の前端部には、
図1〜
図3に示すように、一対の側板5の各内面に向けてそれぞれ突出するガイド軸15aが支持脚15bを介して設けられている。また、後蓋16の前端部には、一対の側板5の各内面に向けてそれぞれ突出するガイド軸16aが支持脚16bを介して設けられている。この後蓋16の後端部には、後述する軸取付板16cが取り付けられている。
【0018】
蓋ガイド部14は、
図1〜
図3に示すように、鍵盤蓋13が鍵盤部7の上側を覆った際に前蓋15と後蓋16とをほぼ平板状に配置し、かつ鍵盤蓋13が鍵盤部7を上側に開放した際に前蓋15と後蓋16とを蝶番17で折り曲げ、この折り曲げられた後蓋16を鍵盤部7の後部とスピーカ10との間に配置させるように構成されている。
【0019】
すなわち、この蓋ガイド部14は、
図1〜
図3に示すように、ガイドレール部18とガイド部材19とを有している。ガイドレール部18は、一対の側板5の内面に前板3の上側から、コンソールパネル12の上側を経て、天板6の前後方向におけるほぼ中間部の下側に対応する箇所に向けて斜め上方に傾斜して設けられている。このガイドレール部18は、前蓋15のガイド軸15aと後蓋16のガイド軸16aとをそれぞれ前後方向にガイドするように構成されている。
【0020】
これにより、ガイドレール部18は、
図1に示すように、前蓋15と後蓋16とが鍵盤部7の上側を覆った際に、前蓋15と後蓋16とを前下りに傾斜させた状態で平板状に配置するように構成されている。この場合、ガイドレール部18のほぼ中間部には、前蓋15と後蓋16とが鍵盤部7の上側を覆った際に、後蓋16のガイド軸16aを位置規制する凹部18aが設けられている。
【0021】
ガイド部材19は、
図1〜
図3に示すように、鍵盤部7の後端部の上部付近に位置する箇所の側板5の内面に設けられた支持軸20と、この支持軸20に回転自在に取り付けられたアーム部21と、このアーム部21の端部と後蓋16の軸取付板16cとを回転可能に連結する連結軸22とを備えている。この場合、アーム部21の中間部にはガイド軸23が設けられており、このガイド軸23にはピニオンギア24が回転可能に取り付けられている。
【0022】
すなわち、アーム部21のガイド軸23は、
図1〜
図3に示すように、一対の側板5の内面に設けられたガイド板25のガイド溝26に沿って上下方向に円弧を描きながらガイドされるように構成されている。このガイド溝26は、支持軸20を中心とする半円弧状をなしてガイド板25に設けられている。
【0023】
また、ガイド軸23のピニオンギア24は、
図1〜
図3に示すように、ガイド板25のガイド歯車27に噛み合って回転しながら、上下方向に円弧を描いて移動するように構成されている。このガイド歯車27も、ガイド軸23と同様、支持軸20を中心とする半円弧状をなしてガイド板25に設けられている。
【0024】
これにより、蓋ガイド部14は、
図1に示すように、鍵盤蓋13の前蓋15と後蓋16とが鍵盤部7の上側を覆って閉じた際に、前蓋15のガイド軸15aをガイドレール部18の前端部に位置させ、後蓋16のガイド軸16aをガイドレール部18の凹部18aに位置させ、かつ後蓋16の後端部に位置する連結軸22をガイド部材19のアーム部21によってガイドレール部18とほぼ同じ高さに位置させることにより、前蓋15と後蓋16とを前下がりに傾斜させた状態で平板状に配置するように構成されている。
【0025】
この場合、蓋ガイド部14は、
図1に示すように、アーム部21が支持軸20を中心に反時計回りに回転して起立し、これと同時にガイド軸23がガイド板25のガイド溝26に沿って下側から上側に向けて移動すると共に、ピニオンギア24がガイド板25のガイド歯車27に噛み合って回転しながら下側から上側に向けて移動することにより、後蓋16の後端部の連結軸22を押し上げるように構成されている。
【0026】
また、この蓋ガイド部14は、
図2および
図3に示すように、鍵盤蓋13が開いて鍵盤部7を上側に開放した際に、前蓋15のガイド軸15aをコンソールパネル12の上方、つまり天板6の前端下側に位置するガイドレール部18の箇所に位置させ、後蓋16のガイド軸16aをガイドレール部18の後端部に位置させることにより、前板15を天板6の下側に配置させ、かつ前蓋15に対して後蓋16を蝶番17で折り曲げて、後蓋16の後端部に位置する連結軸22をガイド部材19のアーム部21によって引き下げることにより、後蓋16を鍵盤部7の後部とスピーカ10との間に配置させるように構成されている。
【0027】
この場合、蓋ガイド部14は、
図2および
図3に示すように、アーム部21が支持軸20を中心に時計回りに回転して垂下し、これと同時にガイド軸23がガイド板25のガイド溝26に沿って上側から下側に向けて移動すると共に、ピニオンギア24がガイド板25のガイド歯車27に噛み合って回転しながら上側から下側に向けて移動することにより、後蓋16の後端部の連結軸22を引き下げるように構成されている。
【0028】
ところで、楽器ケース1内には、
図1〜
図3に示すように、鍵盤部7とスピーカ10との間を仕切る仕切板30が、一対の支持軸31によって前後方向(
図1では左右方向)に回転可能に取り付けられている。この仕切板30は、その上下方向の長さが天板6の下面と底板2の上面との間の長さとほぼ同じ長さで、鍵盤部7の鍵配列方向の長さが一対の側板5間の長さとほぼ同じ長さに形成されている。また、この仕切板30の上端部および下端部には、クッション材30aがそれぞれ設けられている。
【0029】
一対の支持軸31は、
図1〜
図3に示すように、楽器ケース1の一対の側板5の各内面にそれぞれ楽器ケース1内に突出して設けられ、この突出した各先端部に仕切板30の両側に位置する各端面が回転可能に取り付けられるように構成されている。これにより、仕切板30は、一対の支持軸31を中心に回転し、楽器ケース1の前後方向に傾動することにより、鍵盤側空間K1とスピーカ側空間K2との間を開閉するように構成されている。
【0030】
また、この仕切板30は、
図1〜
図3に示すように、ばね部材32のばね力によって鍵盤側空間K1とスピーカ側空間K2との間を仕切って塞ぐ位置に向けて付勢されている。このばね部材32は、ねじりコイルばねであり、そのコイル部が支持軸31に巻き付けられ、この状態で一端部31aが仕切板30の後面(
図1では右側面)に当接し、他端部31bが側板5の内面に設けられたピン部材33に当接するように構成されている。
【0031】
この場合、楽器ケース1における天板6の下面には、
図1〜
図3に示すように、仕切板30の回転位置を規制する位置規制部34が設けられている。この位置規制部34は、仕切板30が鍵盤側空間K1とスピーカ側空間K2との間を仕切って塞いだ状態のときに、仕切板30の上端部の前面(
図1では左側面)が当接することにより、仕切板30の回転位置を規制するように構成されている。
【0032】
また、鍵盤蓋13には、
図1〜
図3に示すように、鍵盤蓋13が鍵盤部7を露呈させた際に、鍵盤蓋13の開位置に応じて仕切板30を傾動させることにより、鍵盤側空間K1とスピーカ側空間K2との間を開閉する操作部材である操作突起部35が設けられている。この操作突起部35は、鍵盤蓋13の前蓋15における後端部の上部から後方に向けて突出して設けられている。このため、後蓋16の前部には、前蓋15と後蓋16とが鍵盤部7を覆ってほぼ平板状に配置された際に、操作突起部35を収納する突起収納部36が設けられている。
【0033】
また、この鍵盤蓋13は、
図2および
図3に示すように、鍵盤部7を露呈させた第1露呈状態と、この第1露呈状態から更に鍵盤部7を露呈させた第2露呈状態と、に開放するように構成されている。これにより、鍵盤蓋13は、鍵盤部7を第1露呈状態で露呈させた際に、鍵盤蓋13が楽器ケース1内に収納された第1収納状態と、鍵盤部7を第2露呈状態で露呈させた際に、第1収納状態から更に鍵盤蓋13が押し込まれた第2収納状態と、に収納されるように構成されている。
【0034】
すなわち、鍵盤蓋13は、
図2および
図3に示すように、楽器ケース1内に収納されて前蓋15の前端部が天板6の前端部の下側に位置し、後蓋16が前蓋15に対してほぼ直角に垂下された際に、第1収納状態となり、また楽器ケース1内に収納されて前蓋15の前端部が天板6の前端部よりも後側に位置し、後蓋16が前蓋15の後部で押されて蝶番17を中心に更に回転して後方に傾いた際に、第2収納状態となるように構成されている。
【0035】
この場合、鍵盤蓋13は、
図2に示すように、楽器ケース1内に収納されて前蓋15の前端部が天板6の前端部の下側に位置した第1収納状態のときに、前蓋15のガイド軸15aがガイドレール部18に設けられた軸規制部37に位置規制されると共に、アーム部21のガイド軸23がガイド板25のガイド溝26の下端部に当接して後蓋16が位置規制されるように構成されている。
【0036】
この場合、軸規制部37は、
図1〜
図3に示すように、天板6の前端部の下方に位置する個所のガイドレール部18に設けられた凹部である。また、この鍵盤蓋13は、第1収納状態から更に楽器ケース1内に押し込まれて、後蓋16が蝶番17を中心に更に回転した第2収納状態のときに、後蓋16が後方に傾くように構成されている。
【0037】
これにより、操作突起部35は、
図2に示すように、鍵盤蓋13が楽器ケース1内に収納されて前蓋15の前端部が天板6の前端部の下側に位置し、後蓋16が前蓋15に対してほぼ直角に垂下された第1収納状態のときに、仕切板30の前側上部に接近または接触するように構成されている。このため、仕切板30は、鍵盤蓋13の開動作に伴って操作突起部35が移動しても、この操作突起部35によって傾動せず、鍵盤側空間K1とスピーカ側空間K2との間を塞いだ閉状態を維持するように構成されている。
【0038】
また、この操作突起部35は、
図3に示すように、鍵盤蓋13が楽器ケース1内に収納されて前蓋15の前端部が天板6の前端部よりも後側に位置し、後蓋16が蝶番17を中心に更に回転して後方に傾いた第2収納状態のときに、仕切板30の前側上部を押圧して仕切板30をばね部材32のばね力に抗して傾動させるように構成されている。これにより、仕切板30は、一対の支持軸31を中心に傾動して後方に傾くことにより、鍵盤側空間K1とスピーカ側空間K2との間を開放する開状態に切り替えるように構成されている。
【0039】
このため、鍵盤蓋13は、
図2に示すように、楽器ケース1内に収納されて前蓋15の前端部が天板6の前端部の下側に位置して、前蓋15のガイド軸15aがガイドレール部18の軸規制部37に位置規制され、後蓋16が前蓋15に対してほぼ直角に垂下された第1収納状態のときに、前蓋15の操作突起部35によって仕切板30が傾動せず、仕切板30によって鍵盤側空間K1とスピーカ側空間K2との間を塞いだ閉状態を維持させるように構成されている。
【0040】
また、この鍵盤蓋13は、
図3に示すように、楽器ケース1内に収納されて前蓋15の前端部が天板6の前端部よりも後側に位置して、前蓋15のガイド軸15aがガイドレール部18の軸規制部37を乗り越え、後蓋16が蝶番17を中心に更に回転して後方に向けて傾いた第2収納状態のときに、操作突起部35が仕切板30の上端部を押圧して仕切板30をばね部材32のばね力に抗して傾動させるように構成されている。
【0041】
これにより、仕切板30は、
図3に示すように、鍵盤側空間K1とスピーカ側空間K2との間を開放する開状態に切り替わるように構成されている。この場合、仕切板30は、鍵盤側空間K1とスピーカ側空間K2との間を開放する開状態に切り替わった際に、仕切板30の上端部と天板6の下面との間に第1放音路38aを形成すると共に、仕切板30の下端部と底板3の上面との間に第2放音路38bを形成するように構成されている。
【0042】
すなわち、第1放音路38aは、
図3に示すように、仕切板30の上端部と天板6の下面との間に形成された隙間と、前蓋15の上面と天板6の下面との間に形成された隙間とによって、鍵盤蓋13の上側に形成され、スピーカ側空間K2内の音を楽器ケース1内の上側から楽器ケース1の前側に向けて放音させるように構成されている。
【0043】
また、第2放音路38bは、
図3に示すように、仕切板30の下端部と底板3の上面との間に形成された隙間と、鍵盤部7の複数の鍵9の各隙間とによって、楽器ケース1内の下部側に形成され、スピーカ側空間K2内の音を楽器ケース1内の下部側から楽器ケース1の前側に向けて放音させるように構成されている。
【0044】
次に、このような電子鍵盤楽器の作用について説明する。
この電子鍵盤楽器で演奏をする場合には、まず、鍵盤蓋13を開いて鍵盤部7を上側に開放させる。このときには、前蓋15の前端部を持ち上げて後方に向けて移動させる。すると、前蓋15のガイド軸15aと後蓋16のガイド軸16aがガイドレール部18に沿って後方に向けて移動すると共に、アーム部21が支持軸20を中心に時計回りに回転して、後蓋16が蝶番17で徐々に折れ曲がりながら、後蓋16の連結軸22が上側から下側に向けて移動する。
【0045】
このときには、アーム部21の回転に伴ってガイド軸23がガイド溝26に沿って上側から下側に向けて移動すると共に、ピニオンギア24がガイド歯車27に噛み合って回転しながら上側から下側に向けて移動する。これにより、鍵盤蓋13は、前蓋15と後蓋16とが蝶番17で徐々に折れ曲がり、この折れ曲がった後蓋16が鍵盤部7の後部と仕切板30との間に位置して、仕切板30の前面に沿って上側から下側に移動する。
【0046】
そして、前蓋15が楽器ケース1の天板6の下側に配置されて、前蓋15のガイド軸15aがガイドレール部18の軸規制部37に位置規制されると、
図2に示すように、鍵盤蓋13が楽器ケース1内に第1収納状態で収納され、鍵盤部7が第1露呈状態で楽器ケース1の上側に露呈される。このときには、アーム部21の回転に伴ってガイド軸23がガイド溝26の下端部に当接すると共に、ピニオンギア24がガイド歯車27の下端部に位置し、後蓋16が前蓋15に対してほぼ90度の角度に折れ曲がって、鍵盤部7の後部と仕切板30との間に配置される。
【0047】
また、このときには、前蓋15の操作突起部35が仕切板30に接近または接触する。このため、仕切板30は、操作突起部35によって押されることがなく、一対の支持軸31を中心に回転しないため、傾動することがない。これにより、仕切板30は、ばね部材32のばね力によって位置規制部34に当接した状態を維持するので、鍵盤側空間K1とスピーカ側空間K2との間を塞いだ閉状態を維持する。
【0048】
これにより、スピーカ側空間K2が楽器ケース1内に音響空間として形成される。この状態では、鍵盤部7が上方に開放されて複数の鍵9が上側に露呈するので、演奏が可能な状態になる。この状態で、楽器ケース1の前部側から上側に露呈した鍵盤部7の複数の鍵9を押鍵操作して演奏すると、その押鍵操作に応じた音高の楽音をスピーカ10が発生する。
【0049】
このスピーカ10で発生した楽音のうち、高音側の音は、楽器ケース1の底板2に設けられた放音孔2aから楽器ケース1の下側に向けて放音される。また、低音側の音は、楽器ケース1のスピーカ側空間K2内に放音される。この低音側の音は、仕切板30によってスピーカ側空間K2が音響空間になっているので、このスピーカ側空間K2内で音質が高められる。
【0050】
一方、スピーカ10で発生した音の音質を変える場合には、
図3に示すように、第1収納状態の鍵盤蓋13の前蓋15を楽器ケース1内に向けて更に押し込み、前蓋15の前端部を天板6の前端部よりも後側に位置させる。このときには、前蓋15のガイド軸15aがガイドレール部18の軸規制部37を乗り越え、後蓋16が前蓋15の後部で押されて蝶番17を中心に更に回転して後方に傾いた第2収納状態になり、鍵盤部7が第2露呈状態で楽器ケース1の上側に露呈する。
【0051】
このときには、
図3に示すように、前蓋15の後端部に設けられた操作突起部35が仕切板30の上端部を後方に向けて押圧し、仕切板30をばね部材32のばね力に抗して回転させて後方に傾ける。これにより、仕切板30は、鍵盤側空間K1とスピーカ側空間K2との間を開放する開状態に切り替える。
【0052】
すなわち、仕切板30は、ばね部材32のばね力に抗して一対の支持軸31を中心に回転すると、
図3に示すように、後方に向けて傾き、鍵盤側空間K1とスピーカ側空間K2との間を開放する。これにより、仕切板30の上端部と天板6の下面との間に第1放音路38aが形成されると共に、仕切板30の下端部と底板3の上面との間に第2放音路38bが形成される。
【0053】
この状態で、楽器ケース1の前部側から上側に露呈した鍵盤部7の複数の鍵9を押鍵操作して演奏すると、その押鍵操作に応じた音高の楽音をスピーカ10が発生する。このスピーカ10で発生した楽音のうち、高音側の音は、楽器ケース1の下側に向けて放音される。また、低音側の音は、楽器ケース1のスピーカ側空間K2内に放音される。このスピーカ側空間K2内に放音された低音側の音は、第1放音路38aと第2放音路38bとを通して楽器ケース1の前側に向けて放音されるので、音質がフラットな状態の音質に変化する。
【0054】
すなわち、第1放音路38aは、仕切板30の上端部と天板6の下面との間に形成された隙間と、前蓋15の上面と天板6の下面との間に形成された隙間とによって、鍵盤蓋13の上側に形成されていることにより、スピーカ側空間K2内の音が楽器ケース1内の上側から楽器ケース1の前側に向けて放音される。
【0055】
また、第2放音路38bは、仕切板30の下端部と底板3の上面との間に形成された隙間と、鍵盤部7の複数の鍵9の各隙間とによって、鍵盤蓋13の下側に形成されていることにより、スピーカ側空間K2内の音が楽器ケース1内の下側から楽器ケース1の前側に向けて放音される。これにより、スピーカ側空間K2内の音質がフラットな状態の音質に変化して放音される。
【0056】
一方、演奏をしないときには、鍵盤蓋13を閉じて鍵盤部7を覆う。このときには、鍵盤蓋13の前蓋15の前端部を楽器ケース1の前側に向けて引き出す。すると、前蓋15のガイド軸15aと後蓋16のガイド軸16aがガイドレール部18に沿って前側に移動し、後蓋16の連結軸22がガイド部材19のアーム部21によって押し上げられる。
【0057】
すなわち、ガイド部材19のアーム部21は、後蓋16の移動に伴って支持軸20を中心に反時計回りに回転して、後蓋16の連結軸22を押し上げる。このときには、ガイド軸23がガイド溝26に沿って下側から上側に向けて移動すると共に、ピニオンギア24がガイド歯車27に噛み合って下側から上側に向けて移動しながら、前蓋15と後蓋16とが蝶番17で徐々に押し広げられる方向に折れ曲がって楽器ケース1の前側に向けて移動する。
【0058】
そして、前蓋15のガイド軸15aがガイドレール部18の軸規制部37に位置規制されると、
図2に示すように、前蓋15の前端部が天板6の前端部の下側に位置し、後蓋16が前蓋15に対してほぼ直角に垂下された第1収納状態になる。このときには、前蓋15の操作突起部35が仕切板30の前面に接近または接触する状態になるので、仕切板30がばね部材32のばね力によって一対の支持軸31を中心に反時計回りに回転して鍵盤側空間K1とスピーカ側空間K2との間を塞ぐ。
【0059】
この状態で、鍵盤蓋13を更に楽器ケース1の前側に引き出し、前蓋15のガイド軸15aが楽器ケース1の前板3上に位置するガイドレール部18の前端部に位置し、後蓋16のガイド軸16aがガイドレール部18の中間部の凹部18aに位置し、この後蓋16の後端部に位置する連結軸22がガイド溝26の上端部に位置し、かつピニオンギア16cがガイド歯車27の上端部に位置すると、前蓋15と後蓋16とが前下がりに傾斜した状態で平板状に配置される。これにより、鍵盤部7が前蓋15と後蓋16とによって覆われる。
【0060】
このように、この電子鍵盤楽器によれば、楽器ケース1内に設けられた鍵盤部7とスピーカ10との間に楽器ケース1の前後方向に傾動可能に設けられて、楽器ケース1内を鍵盤側空間K1とスピーカ側空間K2とに開閉可能に仕切る仕切板30と、鍵盤蓋13が鍵盤部7を露呈させた際に、鍵盤蓋13の開位置に応じて仕切板30を傾動させて鍵盤側空間K1とスピーカ側空間K2との間を開閉させる操作部材である操作突起部35と、を備えていることにより、鍵盤蓋13の開位置を変えるだけで、スピーカ側空間K2の音質を選択的に変化させることができる。
【0061】
すなわち、この電子鍵盤楽器では、鍵盤蓋13が開いて鍵盤部7を露呈させた際に、鍵盤蓋13の開位置に応じて操作突起部35が仕切板30を傾動させることができるので、楽器ケース1内における鍵盤側空間K1とスピーカ側空間K2との間を開閉することができる。このため、仕切板30によって鍵盤側空間K1とスピーカ側空間K2との間を塞いだ際に、スピーカ側空間K2を音響空間として形成することができるので、スピーカ側空間K2内で音質を高めることができる。
【0062】
また、この電子鍵盤楽器では、鍵盤蓋13の開位置に応じて操作突起部35が仕切板30を傾動させて、仕切板30が鍵盤側空間K1とスピーカ側空間K2との間を開放した際に、鍵盤側空間K1に第1、第2の各放音路38a、38bを形成することができるので、これら第1、第2の各放音路38a、38bを通してスピーカ側空間K2内の音を楽器ケース1内から楽器ケース1の前側に向けて放音させることができ、これにより音質をフラットな状態の音質に変えることができる。
【0063】
このため、この電子鍵盤楽器によれば、鍵盤蓋13の開位置を変えるだけで、仕切板30によって鍵盤側空間K1とスピーカ側空間K2との間を開閉することができるので、仕切板30で鍵盤側空間K1とスピーカ側空間K2との間を仕切って塞いだ際に、スピーカ側空間K2を楽器ケース1内の音響空間として形成して音質を向上させることができる。
【0064】
また、この電子鍵盤楽器では、仕切板30が鍵盤側空間K1とスピーカ側空間K2との間を開放した際に、楽器ケース1内に第1、第2の各放音路38a、38bを形成して、スピーカ側空間K2内の音を楽器ケース1の前側に向けて放音させることができるので、簡単に音質を変化させることができる。
【0065】
この場合、鍵盤蓋13は、鍵盤部7を露呈させた第1露呈状態と、この第1露呈状態から更に鍵盤部7を露呈させた第2露呈状態と、に開放することにより、鍵盤部7を露呈させた際に、鍵盤蓋13を楽器ケース1内に収納した第1収納状態(つまり第1露呈状態)と、この第1収納状態から更に鍵盤蓋13が押し込まれた第2収納状態(つまり第2露呈状態)と、に収納することができ、この第1収納状態のときに、仕切板30によって鍵盤側空間K1とスピーカ側空間K2との間を仕切って塞ぐことができ、また第2収納状態のきに、仕切板30を傾動させて鍵盤側空間K1とスピーカ側空間K2との間を開放することができる。
【0066】
また、操作部材である操作突起部35は、鍵盤蓋13が鍵盤部7を第1露呈状態(つまり第1収納状態)で露呈させた際に、鍵盤蓋13の開動作に伴って仕切板30を傾動させず、仕切板30によって鍵盤側空間K1とスピーカ側空間K2との間を閉状態に維持させ、鍵盤蓋13が鍵盤部7を第2露呈状態(つまり第2収納状態)で露呈させた際に、鍵盤蓋13の開動作に伴って仕切板30を傾動させ、鍵盤側空間K1とスピーカ側空間K2との間を開放する開状態に切り替えることにより、鍵盤蓋13の開位置に応じて鍵盤側空間K1とスピーカ側空間K2との間を確実にかつ良好に開閉することができる。
【0067】
この場合、この電子鍵盤楽器では、楽器ケース1内に仕切板30を前後方向に回転可能に支持する一対の支持軸31と、鍵盤側空間K1とスピーカ側空間K2とを塞ぐ位置に向けて仕切板30を付勢する付勢部材であるばね部材32とを備えていることにより、一対の支持軸31を中心に仕切板30を円滑にかつ良好に回転させて傾動させることができると共に、ばね部材32によって鍵盤側空間K1とスピーカ側空間K2との間を塞ぐ位置に向けて仕切板30を確実に付勢することができ、これにより鍵盤側空間K1とスピーカ側空間K2との間を仕切板30によって良好に開閉することができる。
【0068】
また、鍵盤蓋13は、前蓋15と後蓋16とが蝶番17によって折り曲げ可能に連結され、楽器ケース1内にスライド可能に設けられていることにより、前蓋15と後蓋16とを蝶番17で折り曲げて展開することにより、鍵盤部7を確実にかつ良好に覆うことができ、また鍵盤蓋13を楽器ケース1内に収納する際に、前蓋15と後蓋16とを蝶番17で折り曲げて、楽器ケース1内にコンパクトに収納することができるので、楽器ケース1全体をコンパクトに構成することができる。
【0069】
この場合、鍵盤蓋13は、蓋ガイド部14によってガイドされる構成であるから、鍵盤蓋13が鍵盤部7の上側に配置された際に、蓋ガイド部14によって前蓋15と後蓋16とを蝶番17で折り曲げて平板状に配置させることができ、また鍵盤蓋13が鍵盤部7を上側に開放した際に、蓋ガイド部14によって前蓋15と後蓋16とを蝶番17で折り曲げ、この折り曲げられた後蓋16を鍵盤部7と仕切板30との間に配置させることができ、これにより鍵盤蓋13を円滑にガイドすることができると共に、後蓋16を鍵盤部7と仕切板30との間に確実にかつ良好に配置させることができる。
【0070】
すなわち、蓋ガイド部14は、ガイドレール部18とガイド部材19とを有し、このガイドレール部18が一対の側板5の内面に前板3の上側から天板6の中間部の下側に向けて斜め上方に傾斜して設けられて、前蓋15のガイド軸15aと後蓋16のガイド軸16aとをそれぞれ前後方向にガイドし、ガイド部材19は、鍵盤部7の後端部の上部付近に位置する箇所の側板5の内面に設けられた支持軸20を中心にアーム部21が上下方向に回転して後蓋16の軸取付板16cの連結軸22を上下方向にガイドする構成であるから、前蓋15と後蓋16とを蝶番17で折り曲げながら、鍵盤蓋13を円滑にガイドすることができる。
【0071】
この場合、蓋ガイド部14のガイドレール部18には、鍵盤蓋13が楽器ケース1内に収納されて前蓋15の前端部が天板6の前端部の下側に位置した第1収納状態のときに、前蓋15のガイド軸15aを位置規制する軸規制部37が設けられていることにより、鍵盤蓋13が楽器ケース1内に収納されて前蓋15の前端部が天板6の前端部の下側に位置した第1収納状態のときに、ガイドレール部18の軸規制部37によって前蓋15のガイド軸15aを位置規制することができ、これにより鍵盤側空間K1とスピーカ側空間K2との間を塞いだ閉状態に仕切板30を確実にかつ良好に位置規制することができる。
【0072】
さらに、操作部材である操作突起部35は、鍵盤蓋13の前蓋15の後端部に設けられ、鍵盤蓋13が楽器ケース1内に収納された第1収納状態から第2収納状態に収納される際に、仕切板30を押圧して傾動させることにより、鍵盤側空間K1とスピーカ側空間K2との間を開放させる構成であるから、鍵盤蓋13が楽器ケース1内に第1収納状態で収納された際に、操作突起部36が仕切板30に接近または接触するだけで、仕切板30を傾動させず、仕切板30によって鍵盤側空間K1とスピーカ側空間K2との間の閉状態を確実に維持させることができる。
【0073】
また、この鍵盤蓋13では、楽器ケース1内に鍵盤蓋13が第1収納状態で収納された状態で、鍵盤蓋13が楽器ケース1内に更に押し込まれた第2収納状態のときに、操作突起部36が仕切板30の上端部を押圧して仕切板30をばね部材32のばね力に抗して回転させて傾けることができ、これにより確実にかつ良好に鍵盤側空間K1とスピーカ側空間K2との間を開放する開状態に切り替えることができる。
【0074】
(第2実施形態)
次に、
図4〜
図6を参照して、この発明を電子鍵盤楽器に適用した第2実施形態について説明する。なお、
図1〜
図3に示された第1実施形態と同一部分には同一符号を付して説明する。
この電子鍵盤楽器は、
図4〜
図6に示すように、鍵盤蓋40と蓋ガイド部41とが第1実施形態と異なる構成であり、これ以外は第1実施形態とほぼ同じ構成になっている。
【0075】
すなわち、鍵盤蓋40は、
図4〜
図6に示すように、鍵盤部7の上方に配置されて鍵盤部7を覆う大きさの1枚の平板で形成されている。この鍵盤蓋40の前端部には、一対の側板5の各内面に向けてそれぞれ突出する前側ガイド軸42が支持部43を介して取り付けられている。また、この鍵盤蓋40の後端部の両側には、取付板44がそれぞれ設けられている。
【0076】
蓋ガイド部41は、
図4〜
図6に示すように、鍵盤蓋40が鍵盤部7の上側を覆った際に鍵盤蓋40を前下がりに傾斜させた状態で配置させ、かつ鍵盤蓋40が鍵盤部7を上側に開放した際に鍵盤蓋40を天板6とほぼ平行な状態で鍵盤部7の後部と仕切板30との間に配置させるように構成されている。この場合にも、蓋ガイド部41は、ガイドレール部45とガイド部材46とを有している。
【0077】
ガイドレール部45は、
図4〜
図6に示すように、一対の側板5の内面に前板3の上側から天板6の下側に向けて斜め上方に傾斜して設けられ、鍵盤蓋40の前側ガイド軸42を前後方向に傾斜させながらガイドするように構成されている。これにより、ガイドレール部45は、
図4に示すように、鍵盤蓋40が鍵盤部7の上側を覆った際に、前側ガイド軸42がガイドレール部45の前端部に位置し、
図5および
図6に示すように、鍵盤蓋40が鍵盤部7の上側を開放した際に、前側ガイド軸42がガイドレール部45の後端部側に位置するように構成されている。
【0078】
ガイド部材46は、
図4〜
図6に示すように、鍵盤蓋40の後端部の取付板44に回転可能に取り付けられた後側ガイド軸47と、この後側ガイド軸47に取り付けられたピニオンギア48と、一対の側板5の内面に設けられて後側ガイド軸47およびピニオンギア48を天板6とほぼ平行な状態でガイドするガイド板49とを備えている。
【0079】
このガイド板49は、
図4〜
図6に示すように、コンソールパネル12の上側から仕切板30までの間に位置する箇所に配置されている。この場合、ガイド板49は、鍵盤蓋40の後端部に位置する後側ガイド軸47をガイドするガイド溝50と、後側ガイド軸47に取り付けられたピニオンギア48が噛合った状態でピニオンギア48をガイドするラックギア51とを備えている。
【0080】
これにより、蓋ガイド部41は、
図4に示すように、鍵盤蓋40が鍵盤部7の上側を覆って閉じた際に、鍵盤蓋40の前側ガイド軸42をガイドレール部45の前端部に位置させ、鍵盤蓋40の後側ガイド軸47をガイド板49のガイド溝50の前端部に位置させると共に、後側ガイド軸47のピニオンギア48をガイド板49のラックギア51の前端部に位置させることにより、鍵盤蓋40を前下がりに傾斜させた状態で平板状に配置するように構成されている。
【0081】
また、この蓋ガイド部41は、
図5に示すように、鍵盤蓋40が開いて鍵盤部7を上側に開放した際に、鍵盤蓋40の前側ガイド軸42をガイドレール部45の後端部に位置させ、鍵盤蓋40の後側ガイド軸47をガイド板49のガイド溝50の後端部に位置させると共に、後側ガイド軸47のピニオンギア48をガイド板49のラックギア51の後端部に位置させることにより、鍵盤蓋40を天板6とほぼ平行な状態で鍵盤部7の後部とスピーカ10との間に配置させるように構成されている。
【0082】
この場合にも、楽器ケース1内には、
図5および
図6に示すように、仕切板30が鍵盤部7の後方に位置するガイド板49の後端部とスピーカ10との間に位置した状態で配置されている。この仕切板30は、第1実施形態と同様、一対の支持軸31によって前後方向(
図4では左右方向)に回転可能に取り付けられている。これにより、仕切板30は、鍵盤側空間K1とスピーカ側空間K2との間を開閉するように構成されている。
【0083】
また、この仕切板30も、
図4〜
図6に示すように、ばね部材32のばね力によって鍵盤側空間K1とスピーカ側空間K2との間を仕切って塞ぐ位置に向けて付勢されている。この場合にも、楽器ケース1における天板6の下面には、仕切板30の回転位置を規制する位置規制部34が設けられている。この位置規制部34は、仕切板30が鍵盤側空間K1とスピーカ側空間K2との間を仕切って塞いだ状態のときに、仕切板30の上端部が当接することにより、仕切板30の回転位置を規制するように構成されている。
【0084】
さらに、鍵盤蓋40には、
図4〜
図6に示すように、鍵盤蓋40が鍵盤部7を露呈させた際に、鍵盤蓋40の開位置に応じて仕切板30をばね部材32のばね力に抗して押圧して傾動させることにより、鍵盤側空間K1とスピーカ側空間K2との間を開閉する操作部材である操作突起部52が設けられている。この操作突起部52は、鍵盤蓋40の後端部から後方に向けて突出して設けられている。
【0085】
この場合、鍵盤蓋40は、
図5および
図6に示すように、鍵盤部7を露呈させた第1露呈状態と、この第1露呈状態から更に鍵盤部7を露呈させた第2露呈状態と、に開放するように構成されている。これにより、鍵盤蓋40は、鍵盤部7を第1露呈状態で露呈させた際に、鍵盤蓋40が楽器ケース1内に収納された第1収納状態と、鍵盤部7を第2露呈状態で露呈させた際に、第1収納状態から更に鍵盤蓋40が押し込まれた第2収納状態と、に収納されるように構成されている。
【0086】
また、この鍵盤蓋40は、
図4〜
図6に示すように、鍵盤部7を第1露呈状態で露呈させて楽器ケース1内に第1収納状態で収納された際に、操作突起部52によって仕切板30が鍵盤側空間K1とスピーカ側空間K2との間を塞いだ閉状態と、鍵盤部7を第2露呈状態で露呈させて楽器ケース1内に第1収納状態から更に収納された第2収納状態で収納された際に、操作突起部52によって仕切板30が鍵盤側空間K1とスピーカ側空間K2との間を開放する開状態と、に切り替えるように構成されている。
【0087】
この場合にも、鍵盤蓋40は、
図5に示すように、楽器ケース1内に収納されて鍵盤蓋40の前端部が天板6の前端部よりも少し前側に位置した第1収納状態のときに、前側ガイド軸42がガイドレール部45に設けられた凹部状の軸規制部45aに位置規制されることにより、後側ガイド軸47がガイド溝50の後端部よりも少し前側に位置すると共に、ピニオンギア48がラックギア51の後端部よりも少し前側に位置するように構成されている。
【0088】
また、この鍵盤蓋40は、
図6に示すように、楽器ケース1内に収納された第1収納状態から更に押し込まれた第2収納状態(つまり第2露呈状態)のときに、鍵盤蓋40の前端部が天板6の下側に位置して、前側ガイド軸42がガイドレール部45の後端部に位置し、後側ガイド軸47がガイド溝50の後端部に当接すると共に、ピニオンギア48がラックギア51の後端部に当接することにより、位置規制されるように構成されている。
【0089】
これにより、操作突起部52は、
図5に示すように、鍵盤蓋40が楽器ケース1内に収納されて、前側ガイド軸42がガイドレール部45の軸規制部45aに位置規制された第1収納状態のときに、仕切板30の前側上部に接近または接触するように構成されている。このため、仕切板30は、鍵盤蓋40の開動作に伴って操作突起部52が移動しても、この操作突起部52によって傾動せず、鍵盤側空間K1とスピーカ側空間K2との間を塞いだ閉状態を維持し、スピーカ側空間K2を音響空間として形成するように構成されている。
【0090】
また、この操作突起部52は、
図6に示すように、鍵盤蓋13が楽器ケース1内に収納されて、第1収納状態から更に楽器ケース1内に押し込まれた第2収納状態のときに、仕切板30の前側上部を押圧して、仕切板30をばね部材32のばね力に抗して傾動させるように構成されている。これにより、仕切板30は、一対の支持軸31を中心に傾動して後方に傾くことにより、鍵盤側空間K1とスピーカ側空間K2との間を開放する開状態に切り替えるように構成されている。
【0091】
この場合、仕切板30は、
図6に示すように、鍵盤側空間K1とスピーカ側空間K2との間を開放する開状態に切り替わった際に、仕切板30の上端部と天板6の下面との間に第1放音路53aを形成すると共に、仕切板30の下端部と底板3の上面との間に第2放音路53bを形成するように構成されている。
【0092】
この場合、第1放音路53aは、
図6に示すように、仕切板30の上端部と天板6の下面との間に形成された隙間と、鍵盤蓋40の上面と天板6の下面との間に形成された隙間とによって、鍵盤蓋40の上側に形成され、スピーカ側空間K2内の音を楽器ケース1内の上側から楽器ケース1の前側に向けて放音させるように構成されている。
【0093】
また、第2放音路53bは、
図6に示すように、仕切板30の下端部と底板3の上面との間に形成された隙間と、鍵盤部7の複数の鍵9の各隙間とによって、楽器ケース1内の下部側に形成され、スピーカ側空間K2内の音を楽器ケース1内の下部側から楽器ケース1の前側に向けて放音させるように構成されている。
【0094】
次に、このような電子鍵盤楽器の作用について説明する。
この電子鍵盤楽器で演奏をする場合には、まず、鍵盤蓋40を開いて鍵盤部7を上側に開放させる。このときには、鍵盤蓋40の前端部を持ち上げて後方に向けて移動させる。すると、前側ガイド軸42がガイドレール部45に沿って後方に移動し、かつ鍵盤蓋40の後端部の後側ガイド軸47がガイド板49のガイド溝50に沿って後方に移動すると共に、ピニオンギア48がラックギア51に噛み合って回転しながら後方に移動する。これにより、鍵盤蓋40は鍵盤部7と仕切板30との間に向けて移動する。
【0095】
そして、鍵盤蓋40が楽器ケース1の天板6の下側に配置されて、前側ガイド軸42がガイドレール部45の軸規制部45aに位置規制されると、
図5に示すように、鍵盤蓋40が楽器ケース1内に第1収納状態で収納され、鍵盤部7が第1露呈状態で楽器ケース1の上側に露呈する。
【0096】
このときには、
図5に示すように、鍵盤蓋40の後端部に位置する後側ガイド軸47がガイド板49のガイド溝50の後端部よりも少し前側に位置すると共に、ピニオンギア48がラックギア51の後端部よりも少し前側に位置し、この状態で鍵盤蓋40が鍵盤部7の後部と仕切板30との間に配置される。
【0097】
また、このときには、
図5に示すように、鍵盤蓋40の操作突起部52が仕切板30に接近または接触する。このため、仕切板30は、操作突起部52によって押されることがなく、一対の支持軸31を中心に回転しないため、傾動することがない。これにより、仕切板30は、ばね部材32のばね力によって位置規制部34に当接した状態を維持するので、鍵盤側空間K1とスピーカ側空間K2との間を塞いだ閉状態を維持する。
【0098】
このため、スピーカ側空間K2が楽器ケース1内に音響空間として形成される。この状態では、鍵盤部7が上方に開放されて複数の鍵9が上側に露呈するので、演奏が可能な状態になる。この状態で、楽器ケース1の前部側から上側に露呈した鍵盤部7の複数の鍵9を押鍵操作して演奏すると、その押鍵操作に応じた音高の楽音をスピーカ10が発生する。
【0099】
このスピーカ10で発生した楽音のうち、高音側の音は、楽器ケース1の底板2に設けられた放音孔2aから楽器ケース1の下側に向けて放音される。また、低音側の音は、楽器ケース1のスピーカ側空間K2内に放音される。この低音側の音は、仕切板30によってスピーカ側空間K2が音響空間になっているので、このスピーカ側空間K2内で音質が高められる。
【0100】
一方、スピーカ10で発生した音の音質を変える場合には、
図6に示すように、第1収納状態の鍵盤蓋40を楽器ケース1内に向けて更に押し込み、鍵盤蓋40の前端部を天板6の下側に位置させる。このときには、鍵盤蓋40の前側ガイド軸42がガイドレール部45の軸規制部45aを乗り越え、鍵盤蓋40の前側ガイド軸42がガイドレール部45の後端部に位置し、後側ガイド軸47がガイド溝50の後端部に位置すると共に、ピニオンギア48がラックギア51の後端部に位置する。
【0101】
これにより、鍵盤蓋40が第1収納状態から更に楽器ケース1内に押し込まれた第2収納状態になり、鍵盤部7が第2露呈状態で楽器ケース1の上側に露呈する。このときには、
図6に示すように、鍵盤蓋40の後端部に設けられた操作突起部52が仕切板30の上端部を押圧して、仕切板30をばね部材32のばね力に抗して回転させて傾ける。これにより、仕切板30は、鍵盤側空間K1とスピーカ側空間K2との間を開放する開状態に切り替わる。
【0102】
すなわち、仕切板30は、ばね部材32のばね力に抗して一対の支持軸31を中心に回転すると、
図6に示すように、後方に向けて傾き、鍵盤側空間K1とスピーカ側空間K2との間を開放する。これにより、仕切板30の上端部と天板6の下面との間に第1放音路53aが形成されると共に、仕切板30の下端部と底板3の上面との間に第2放音路53bが形成される。
【0103】
この状態で、楽器ケース1の前部側から上側に露呈した鍵盤部7の複数の鍵9を押鍵操作して演奏すると、その押鍵操作に応じた音高の楽音をスピーカ10が発生する。このスピーカ10で発生した楽音のうち、高音側の音は、楽器ケース1の下側に向けて放音される。また、低音側の音は、楽器ケース1のスピーカ側空間K2内に放音される。このスピーカ側空間K2内に放音された低音側の音は、第1放音路53aと第2放音路53bとを通して楽器ケース1の前側に向けて放音されるので、音質がフラットな状態の音質に変化する。
【0104】
すなわち、第1放音路53aは、仕切板30の上端部と天板6の下面との間に形成された隙間と、鍵盤蓋40の上面と天板6の下面との間に形成された隙間とによって、鍵盤蓋40の上側に形成されていることにより、スピーカ側空間K2内の音が楽器ケース1内の上側から楽器ケース1の前側に向けて放音される。
【0105】
また、第2放音路53bは、仕切板30の下端部と底板3の上面との間に形成された隙間と、鍵盤部7の複数の鍵9の各隙間とによって、楽器ケース1内の下部側に形成されていることにより、スピーカ側空間K2内の音が楽器ケース1内の下部側から楽器ケース1の前側に向けて放音される。これにより、スピーカ側空間K2内の音質がフラットな状態の音質に変化して放音される。
【0106】
一方、演奏をしないときには、鍵盤蓋40を閉じて鍵盤部7を覆う。このときには、鍵盤蓋40の前端部を楽器ケース1の前側に向けて引き出す。すると、鍵盤蓋40の前側ガイド軸42がガイドレール部45に沿って前側に移動し、鍵盤蓋40の後側ガイド軸47がガイド部材46のガイド溝50に沿って前側に移動すると共に、ピニオンギア48がラックギア51に噛み合って前側に移動する。
【0107】
そして、鍵盤蓋40の前側ガイド軸42がガイドレール部45の軸規制部45aに位置規制されると、
図5に示すように、鍵盤蓋40の前端部が天板6の前端部よりも少し前側に位置し、鍵盤蓋40の後端部がガイド部材46の後端部よりも少し前側に位置する第1収納状態になる。このときには、鍵盤蓋40の操作突起部52が仕切板30の前面に接近または接触する状態になる。このため、仕切板30は、ばね部材32のばね力によって一対の支持軸31を中心に反時計回りに回転して鍵盤側空間K1とスピーカ側空間K2との間を塞ぐ。
【0108】
この状態で、鍵盤蓋40を更に楽器ケース1の前側に引き出し、鍵盤蓋40の前側ガイド軸42が楽器ケース1の前板3上に位置するガイドレール部45の前端部に位置し、後側ガイド軸47がガイド板49のガイド溝50の前端部に位置し、かつピニオンギア48がラックギア51の前端部に位置すると、鍵盤蓋40が前下がりに傾斜した状態で配置される。これにより、鍵盤部7が鍵盤蓋40によって覆われる。
【0109】
このように、この電子鍵盤楽器によれば、鍵盤蓋40が開いて鍵盤部7を露呈させた際に、鍵盤蓋40の開位置に応じて操作部材である操作突起部52が仕切板30を傾動させることができるので、第1実施形態と同様、楽器ケース1内における鍵盤側空間K1とスピーカ側空間K2との間を開閉することができる。このため、仕切板30によって鍵盤側空間K1とスピーカ側空間K2との間を塞いだ際に、スピーカ側空間K2を音響空間として形成することができるので、音質を高めることができる。
【0110】
また、この電子鍵盤楽器では、鍵盤蓋40の開位置に応じて操作突起部52が仕切板30を傾動させて、鍵盤側空間K1とスピーカ側空間K2との間を開放した際に、鍵盤側空間K1に第1、第2の各放音路53a、53bを形成することができるので、これら第1、第2の各放音路53a、53bを通してスピーカ側空間K2内の音を楽器ケース1内から楽器ケース1の前側に向けて放音させることができ、これにより音質をフラットな状態の音質に変えることができる。
【0111】
このため、この電子鍵盤楽器においても、鍵盤蓋40の開位置を変えるだけで、仕切板30によって鍵盤側空間K1とスピーカ側空間K2との間を開閉することができるので、仕切板30で鍵盤側空間K1とスピーカ側空間K2との間を仕切って塞いだ際に、スピーカ側空間K2を楽器ケース1内の音響空間として形成して音質を向上させることができる。
【0112】
また、この電子鍵盤楽器においても、仕切板30が鍵盤側空間K1とスピーカ側空間K2との間を開放した際に、楽器ケース1内に第1、第2の各放音路53a、53bを形成して、スピーカ側空間K2内の音を楽器ケース1の前側に向けて放音させることができるので、簡単に音質を変化させることができる。
【0113】
この場合、鍵盤蓋40は、鍵盤部7を露呈させた第1露呈状態と、この第1露呈状態から更に鍵盤部7を露呈させた第2露呈状態と、に開放されることにより、鍵盤部7を露呈させた際に、鍵盤蓋40を楽器ケース1内に収納した第1収納状態と、この第1収納状態から更に押し込まれた第2収納状態と、に収納することができ、この第1収納状態のときに仕切板30によって鍵盤側空間K1とスピーカ側空間K2との間を仕切って塞ぐことができ、また第2収納状態のときに仕切板30を傾動させて鍵盤側空間K1とスピーカ側空間K2との間を開放することができる。
【0114】
また、操作部材である操作突起部52は、鍵盤蓋40が鍵盤部7を第1露呈状態(つまり第1収納状態)で露呈させた際に、鍵盤蓋40の開動作に伴って仕切板30を傾動させず、仕切板30によって鍵盤側空間K1とスピーカ側空間K2との間を閉状態に維持させ、また鍵盤蓋40が鍵盤部7を第2露呈状態(つまり第2収納状態)で露呈させた際に、鍵盤蓋40の開動作に伴って仕切板30を傾動させて、鍵盤側空間K1とスピーカ側空間K2との間を開放する開状態に切り替えることにより、鍵盤蓋40の開位置に応じて鍵盤側空間K1とスピーカ側空間K2との間を確実にかつ良好に開閉することができる。
【0115】
また、この電子鍵盤楽器では、鍵盤蓋40が1枚の平板で形成されていることにより、簡単な構造で、鍵盤部7を鍵盤蓋40によって確実にかつ良好に覆うことができる共に、鍵盤蓋40を楽器ケース1内に容易にかつ良好に収納することができる。この場合、鍵盤蓋40をガイドする蓋ガイド部41は、鍵盤蓋40が鍵盤部7の上側に配置された際に、鍵盤蓋40を前下がりに傾斜させた状態で平板状に配置させ、かつ鍵盤蓋40が鍵盤部7を上側に開放した際に、鍵盤蓋40を楽器ケース1の天板6とほぼ平行な状態で鍵盤部7の後部と仕切板30との間に配置させるので、鍵盤蓋40を円滑にガイドすることができる。
【0116】
すなわち、鍵盤蓋40は、蓋ガイド部41によってガイドされるように構成され、この蓋ガイド部41がガイドレール部45とガイド部材46とを有し、このガイドレール部45が一対の側板5の内面に前板3の上側から後板4に向けて斜め上方に傾斜して設けられて、鍵盤蓋40の前側ガイド軸42を前後方向にガイドし、ガイド部材46が鍵盤部7の後端部の上方から鍵盤部7の後部と仕切板30との間に設けられたガイド板49によって鍵盤蓋40の後端部を前後方向にガイドする構成であるから、鍵盤蓋40を円滑にガイドすることができる。
【0117】
この場合にも、蓋ガイド部41のガイドレール部45には、鍵盤蓋40が楽器ケース1内に収納されて鍵盤蓋40の前端部が天板6の前端部よりも前側に位置した第1収納状態のときに、鍵盤蓋40の前側ガイド軸42を位置規制する軸規制部45aが設けられていることにより、鍵盤蓋40が楽器ケース1内に収納された第1収納状態のときに、ガイドレール部45の軸規制部45aによって鍵盤蓋40の前側ガイド軸42を位置規制することができ、これにより鍵盤側空間K1とスピーカ側空間K2との間を塞いだ閉状態に仕切板30を確実にかつ良好に位置規制することができる。
【0118】
さらに、操作部材である操作突起部52は、鍵盤蓋40の後端部に設けられ、鍵盤蓋40が楽器ケース1内に収納された第1収納状態から第2収納状態に収納される際に、仕切板30を押圧して傾動させることにより、鍵盤側空間K1とスピーカ側空間K2との間を開放させる構成であるから、鍵盤蓋40が楽器ケース1内に第1収納状態で収納された際に、操作突起部52を仕切板30に接近または接触させるだけで、仕切板30によって鍵盤側空間K1とスピーカ側空間K2との間の閉状態を確実に維持することができる。
【0119】
また、この鍵盤蓋40では、楽器ケース1内に鍵盤蓋40が第1収納状態で収納された状態で、鍵盤蓋40が楽器ケース1内に更に押し込まれた第2収納状態のときに、操作突起部52が仕切板30の上端部を押圧して仕切板30をばね部材32のばね力に抗して回転させて傾けることができ、これにより確実にかつ良好に鍵盤側空間K1とスピーカ側空間K2との間を開放する開状態に切り替えることができる。
【0120】
(第3実施形態)
次に、
図7および
図8を参照して、この発明を電子鍵盤楽器に適用した第3実施形態について説明する。この場合にも、
図1〜
図3に示された第1実施形態と同一部分には同一符号を付して説明する。
この電子鍵盤楽器は、
図7および
図8に示すように、鍵盤側空間K1とスピーカ側空間K2との間を開閉可能に仕切る仕切板30にスピーカ10を設けた構成で、かつ天板部60が第1実施形態と異なる構成である。これ以外は、第1実施形態とほぼ同じ構成になっている。
【0121】
この場合、仕切板30は、第1実施形態と同様、楽器ケース1内における鍵盤部7とスピーカ10との間に位置した状態で、一対の支持軸31によって前後方向(
図7では左右方向)に回転可能に取り付けられている。これにより、仕切板30は、一対の支持軸31を中心に前後方向に傾動することにより、鍵盤側空間K1とスピーカ側空間K2との間を開閉するように構成されている。
【0122】
また、この仕切板30は、第1実施形態と同様、ばね部材32のばね力によって鍵盤側空間K1とスピーカ側空間K2との間を仕切って塞ぐ位置に向けて付勢されている。この場合、楽器ケース1における天板6の下面には、仕切板30の回転位置を規制する位置規制部34が設けられている。この位置規制部34は、仕切板30が鍵盤側空間K1とスピーカ側空間K2との間を仕切って塞いだ状態のときに、仕切板30の上端部が当接することにより、仕切板30の回転位置を規制するように構成されている。
【0123】
さらに、この仕切板30は、第1実施形態と同様、その上下方向の長さが天板6の下面と底板2の上面との間の長さとほぼ同じ長さで、鍵盤部7の鍵配列方向の長さが一対の側板5間の長さとほぼ同じ長さに形成されている。この仕切板30の両側部、つまり鍵盤部7の鍵配列方向(
図7では紙面の表裏面方向)における両側部には、
図7および
図8に示すように、放音孔30bがそれぞれ設けられている。
【0124】
この仕切板30の後面、つまりスピーカ側空間K2側に位置する仕切板30の後面(
図7では右側面)には、
図7および
図8に示すように、スピーカ10が各放音孔30bにそれぞれ対応して設けられている。これにより、スピーカ10は、高音側の音を仕切板30の放音孔30bから鍵盤側空間K1に向けて放音し、低音側の音をスピーカ側空間K2内に放音するように構成されている。
【0125】
ところで、この楽器ケース1の天板部60は、
図7および
図8に示すように、天板61が一対の側板5の前側上部に設けられている。これにより、楽器ケース1は、天板61の後部側が開放された構成になっている。この天板61の前端下部には、下り壁61aが設けられており、この天板61の後部下側には、補助天板62が配置されている。この補助天板62は、天板61の下側から後板4の内面に亘って配置され、この状態で取付金具63によって側板5の内面に取り付けられている。
【0126】
この補助天板62には、
図7および
図8に示すように、放音孔62aが設けられている。また、この補助天板62上には、放音蓋64が開閉可能に配置されている。この放音蓋64は、天板61とほぼ同じ厚みで形成され、補助天板62上に配置された際に、その上面が天板61の上面と同じ平面になるように形成されている。また、この放音蓋64は、その後端部が後板4の上端後部に蝶番65によって回転可能に取り付けられている。
【0127】
これにより、放音蓋64は、
図7および
図8に2点鎖線で示すように、蝶番65を中心に反時計回りに回転して補助天板62上に配置された際に、補助天板62の放音孔62aを塞ぐように構成されている。また、この放音蓋64は、
図7および
図8に実線で示すように、蝶番65を中心に時計回りに回転して補助天板62上に傾斜した状態で配置された際に、補助天板62の放音孔62aを開放するように構成されている。
【0128】
この場合、放音蓋64は、
図7および
図8に示すように、補助天板62上に傾斜した状態で起立して配置された際に、支持装置66によって支持されるように構成されている。この支持装置66は、放音蓋64の下面に設けられた金具収納部64a内の前部に回転可能に取り付けられた支持部材67と、この支持部材67の下部をガイドして保持するガイド保持部68とを備えている。
【0129】
支持部材67は、
図7および
図8に示すように、丸棒状に形成され、その上部が鍵盤部7の鍵配列方向に折り曲げられ、この折り曲げられた上部67aが放音蓋64の金具収納部64a内に取付板69によって回転可能に取り付けられている。また、支持部材67は、その下部が鍵盤部7の鍵配列方向に折り曲げられ、この折り曲げられた下部67bがガイド保持部68によってガイドされるように構成されている。
【0130】
ガイド保持部68は、
図7および
図8に示すように、帯板状に形成され、その両端部がL字状に折り曲げられ、この折り曲げられた両端部が補助天板62上に楽器ケース1の前後方向に位置する状態で取り付けられている。これにより、ガイド保持部68は、これと補助天板62との間に支持部材67の下部67bが移動可能に挿入され、この挿入された支持部材67の下部67bが前側の端部に当接することにより、支持部材67を起立させた状態で保持するように構成されている。
【0131】
これにより、支持装置66は、
図7および
図8に2点鎖線で示すように、放音蓋64が補助天板62上に配置された際に、支持部材67の上部67aがガイド保持部68の前端部の前側に位置し、支持部材67の下部67bがガイド保持部68の後端部に位置した状態で、支持部材67が横倒し、この状態で支持部材67とガイド保持部68とが放音蓋64の金具収納部64a内に収納されるように構成されている。
【0132】
また、この支持装置66は、
図7および
図8に実線で示すように、放音蓋64を補助天板62の上方に押し上げて起立させる際に、支持部材67の上部67aを中心に支持部材67が回転しながら、支持部材67の下部67bがガイド保持部68に沿って後部側から前部側に向けて移動し、この移動した支持部材67の下部67bがガイド保持部68の前端部に当接することにより、支持部材67を起立させた状態で保持し、この支持部材67が放音蓋64を補助天板62上に前上がりに傾斜させて支持するように構成されている。
【0133】
次に、このような電子鍵盤楽器の作用について説明する。
この電子鍵盤楽器で演奏する場合には、予め、放音蓋64を補助天板62上に配置させて補助天板62の放音孔62aを塞ぐ。この状態で、第1実施形態と同様、鍵盤蓋13を開いて鍵盤部7を上側に開放させる。
【0134】
そして、前蓋15が楽器ケース1の天板6の下側に配置されて、前蓋15のガイド軸15aがガイドレール部18の軸規制部37に位置規制されると、
図7に示すように、鍵盤蓋13が楽器ケース1内に第1収納状態で収納され、鍵盤部7が第1露呈状態で楽器ケース1の上側に露呈する。
【0135】
このときには、前蓋15の操作突起部35が仕切板30に接近または接触する。このため、仕切板30は、操作突起部35によって押圧されることがないので、傾動せず、ばね部材32のばね力によって鍵盤側空間K1とスピーカ側空間K2との間を塞いだ閉状態を維持する。これにより、スピーカ側空間K2が楽器ケース1内に音響空間として形成される。
【0136】
この状態では、鍵盤部7が上方に開放されて複数の鍵9が上側に露呈するので、演奏が可能な状態になる。この状態で、楽器ケース1の前部側から上側に露呈した鍵盤部7の複数の鍵9を押鍵操作して演奏すると、その押鍵操作に応じた音高の楽音をスピーカ10が発生する。
【0137】
このスピーカ10で発生した楽音のうち、高音側の音は、仕切板30の放音孔30bから楽器ケース1内の鍵盤側空間K1内に放音され、この鍵盤側空間K1内に放音された音が楽器ケース1の前側に向けて放音される。また、低音側の音は、スピーカ側空間K2内に放音される。このときには、補助天板62の放音孔62aが放音蓋64で塞がれ、仕切板30によってスピーカ側空間K2が音響空間になっているので、このスピーカ側空間K2内で音質が高められる。
【0138】
この状態で、放音蓋64を開いて補助天板62の放音孔62aを開放した場合には、高音側の音は、仕切板30の放音孔30bから楽器ケース1内の鍵盤側空間K1を通して楽器ケース1の前側に向けて放音されるが、低音側の音は、補助天板62の放音孔62aから楽器ケース1の上側に放音されて放音蓋64で楽器ケース1の前側に向けて反響される。これにより、音質がフラットな状態の音質になり、音質を変えることができる。
【0139】
一方、放音蓋64を補助天板62上に配置して補助天板62の放音孔62aを塞いだ状態で、スピーカ10で発生した音の音質を変える場合には、
図8に示すように、第1収納状態の鍵盤蓋13の前蓋15を楽器ケース1内に向けて更に押込み、前蓋15の前端部を天板6の前端部よりも後側に位置させる。このときには、前蓋15のガイド軸15aがガイドレール部18の軸規制部37を乗り越え、後蓋16が蝶番17を中心に更に回転して後方に傾いた第2収納状態になり、鍵盤部7が第2露呈状態で楽器ケース1の上側に露呈する。
【0140】
また、このときには、
図8に示すように、前蓋15の後端部に設けられた操作突起部35が仕切板30の上端部を押圧して、仕切板30をばね部材32のばね力に抗して回転させて傾ける。これにより、仕切板30は、後方に向けて斜めに傾くことにより、鍵盤側空間K1とスピーカ側空間K2との間が開放された開状態に切り替わる。
【0141】
これにより、第1実施形態と同様、仕切板30の上端部と補助天板62の下面との間に第1放音路38aが形成されると共に、仕切板30の下端部と底板3の上面との間に第2放音路38bが形成される。また、このときには、仕切板30がばね部材32のばね力に抗して一対の支持軸31を中心に回転して後方に傾くので、この仕切板30に設けられたスピーカ10が斜め上方を向いて傾いた状態になる。
【0142】
この状態で、楽器ケース1の前部側から上側に露呈した鍵盤部7の複数の鍵9を押鍵操作して演奏すると、その押鍵操作に応じた音高の楽音をスピーカ10が発生する。このスピーカ10で発生した楽音のうち、高音側の音は、仕切板30の放音孔30bから鍵盤側空間K1内に斜め上方に向けて放音され、この放音された音が楽器ケース1の前側に向けて放音される。
【0143】
また、低音側の音は、楽器ケース1のスピーカ側空間K2内に放音される。このスピーカ側空間K2内に放音された低音側の音は、補助天板62の放音孔62aが放音蓋64で塞がれているので、第1放音路38aと第2放音路38bとを通して楽器ケース1の前側に向けて放音される。このため、音質がフラットな状態の音質に変化する。
【0144】
すなわち、第1放音路38aは、仕切板30の上端部と補助天板62の下面との間に形成された隙間と、前蓋15の上面と天板6の下面との間に形成された隙間とによって、鍵盤蓋13の上側に形成されていることにより、スピーカ側空間K2内の音が楽器ケース1内の上側から楽器ケース1の前側に向けて放音される。
【0145】
また、第2放音路38bは、仕切板30の下端部と底板3の上面との間に形成された隙間と、鍵盤部7の複数の鍵9の各隙間とによって、楽器ケース1内の下部側に形成されていることにより、スピーカ側空間K2内の音が楽器ケース1内の下部側から楽器ケース1の前側に向けて放音される。これにより、スピーカ側空間K2内の音質がフラットな状態の音質に変化して放音される。
【0146】
この状態で、放音蓋64を開いて補助天板62の放音孔62aを開放した場合には、高音側の音は、仕切板30の放音孔30bから楽器ケース1内の鍵盤側空間K1を通して楽器ケース1の前側に向けて放音される。また、低音側の音は、第1放音路38aと第2放音路38bとを通して楽器ケース1の前側に向けて放音されるほかに、補助天板62の放音孔62aから楽器ケース1の上側に放音されて放音蓋64で楽器ケース1の前側に向けて反響される。これにより、音質が更にフラットな状態の音質になり、より一層、音質を変えることができる。
【0147】
このように、この電子鍵盤楽器によれば、第1実施形態と同様、鍵盤蓋13の開位置を変えるだけで、仕切板30によって鍵盤側空間K1とスピーカ側空間K2との間を開閉することができるので、仕切板30で鍵盤側空間K1とスピーカ側空間K2との間を仕切って塞いだ際に、スピーカ側空間K2を楽器ケース1内の音響空間として形成して音質を向上させることができ、また仕切板30で鍵盤側空間K1とスピーカ側空間K2との間を開放した際に、楽器ケース1内に第1、第2の各放音路38a、38bを形成して、スピーカ側空間K2内の音を楽器ケース1の前側に向けて放音させることができるので、簡単に音質を変化させることができる。
【0148】
この場合、スピーカ10は、仕切板30に取り付けられていることにより、仕切板30で鍵盤側空間K1とスピーカ側空間K2との間を仕切って塞いだ際に、スピーカ10で発生した音のうち、高音側の音を仕切板30の放音孔30bから楽器ケース1の前側に向けて放音することができる。また、仕切板30が鍵盤側空間K1とスピーカ側空間K2との間を開放した際に、仕切板30と共にスピーカ10が上向きに傾くので、このスピーカ10で発生した音のうち、高音側の音を楽器ケース1の前側上方に向けて放音することができ、これによりスピーカ10による音の指向を変えることができる。
【0149】
また、この電子鍵盤楽器では、楽器ケース1の天板部60の補助天板62に放音孔62aを設けると共に、この補助天板62上に放音蓋64を開閉可能に設けた構成であるから、仕切板30で鍵盤側空間K1とスピーカ側空間K2との間を仕切って塞いだ状態においても、また仕切板30が鍵盤側空間K1とスピーカ側空間K2との間を開放した状態においても、放音蓋64を開いて補助天板62の放音孔62aを開放することができ、これにより鍵盤蓋13の開位置に係わらず、音質を自由に変化させることができる。
【0150】
すなわち、この電子鍵盤楽器では、仕切板30で鍵盤側空間K1とスピーカ側空間K2との間を仕切って塞いだ状態で、放音蓋64で補助天板62の放音孔62aを塞ぐと、第1実施形態と同様、スピーカ側空間K2を音響空間として形成することができ、これにより音質を高めることができる。
【0151】
また、この電子鍵盤楽器では、仕切板30で鍵盤側空間K1とスピーカ側空間K2との間を仕切って塞いだ状態で、放音蓋64を開いて補助天板62の放音孔62aを開放すると、低音側の音を補助天板62の放音孔62aから放音させることができ、これにより音質をフラットな音質に変えることができる。
【0152】
さらに、この電子鍵盤楽器では、仕切板30が鍵盤側空間K1とスピーカ側空間K2との間を開放した状態で、放音蓋64で補助天板62の放音孔62aを塞ぐと、第1実施形態と同様、第1、第2の各放音路38a、38bを通して低音側の音を放音させることができ、これにより音質をフラットな音質に変えることができる。
【0153】
また、この電子鍵盤楽器では、仕切板30が鍵盤側空間K1とスピーカ側空間K2との間を開放した状態で、放音蓋64を開いて補助天板62の放音孔62aを開放すると、第1、第2の各放音路38a、38bを通して低音側の音を放音させるほか、補助天板62の放音孔62aからも放音させることができ、これにより音質を更にフラットな音質に変えることができる。
【0154】
なお、上述した第3実施形態では、鍵盤蓋13が前蓋15と後蓋16とを蝶番17で連結した構成である第1実施形態の電子鍵盤楽器に適用した場合について述べたが、これに限らず、例えば、鍵盤蓋40が1枚板で形成された第2実施形態の電子鍵盤楽器に適用することができる。この場合にも、鍵盤側空間K1とスピーカ側空間K2との間を仕切る仕切板30にスピーカ10を設けると共に、楽器ケース1の天板6を第3実施形態の天板部60と同じ構成にすれば良い。
【0155】
すなわち、仕切板30は、第3実施形態と同様、鍵盤側空間K1とスピーカ側空間K2との間を塞いだ閉状態のときに、スピーカ側空間K2を音響空間として形成し、鍵盤側空間K1とスピーカ側空間K2との間を開放した開状態のときに、仕切板30の上端部と天板6の下面との間に第1放音路53aを形成すると共に、仕切板30の下端部と底板3の上面との間に第2放音路53bを形成するように構成すれば良い。
【0156】
また、この仕切板30の両側部、つまり鍵盤部7の鍵配列方向における両側部には、第3実施形態と同様、放音孔30bをそれぞれ設けると共に、この仕切板30の後面、つまりスピーカ側空間K2側に位置する仕切板30の後面には、スピーカ10を各放音孔30bにそれぞれ対応させて設ける。これにより、スピーカ10は、高音側の音が仕切板30の放音孔30bから鍵盤側空間K1に向けて放音され、低音側の音がスピーカ側空間K2内に放音されるように構成すれば良い。
【0157】
また、楽器ケース1の天板部は、第3実施形態と同様、天板61を一対の側板5の前側上部に設けると共に、この天板61の下側には、補助天板62を天板61の下側から後板4の内面に亘って配置し、この状態で補助天板62を取付金具63によって側板5の内面に取り付ければ良い。また、この補助天板62には、放音孔62aを設けると共に、この補助天板62上には、放音蓋64を開閉可能に配置すれば良い。
【0158】
すなわち、この放音蓋64も、第3実施形態と同様、その後端部を後板4の上端後部に蝶番65によって回転可能に取り付ける。これにより、放音蓋64は、蝶番65を中心に反時計回りに回転して補助天板62上に配置された際に、補助天板62の放音孔62aを塞ぐように構成すれば良い。また、この放音蓋64は、蝶番65を中心に時計回りに回転して補助天板62上に傾斜した状態で配置された際に、補助天板62の放音孔62aを開放するように構成すれば良い。
【0159】
この場合にも、放音蓋64は、補助天板62上に傾斜した状態で配置された際に、支持装置66によって支持されるように構成すれば良い。この支持装置66は、放音蓋64の下面に設けられた金具収納部64a内の前部に回転可能に取り付けられた支持部材67と、この支持部材67の下部をガイドして保持するガイド保持部68とを備えていれば良い。
【0160】
これにより、支持装置66は、第3実施形態と同様、放音蓋64が補助天板62上に配置された際に、支持部材67の上部67aがガイド保持部68の前端部の前側に位置し、支持部材67の下部67bがガイド保持部68の後端部に位置した状態で、支持部材67が横倒し、この状態で支持部材67とガイド保持部68とが放音蓋64の金具収納部64a内に収納されるように構成されていれば良い。
【0161】
また、この支持装置66は、第3実施形態と同様、放音蓋64を補助天板62上に押し上げて起立させる際に、支持部材67の上部67aを中心に支持部材67が回転しながら、支持部材67の下部67bがガイド保持部68に沿って後部側から前部側に向けて移動し、この移動した支持部材67の下部67bがガイド保持部68の前端部に当接することにより、支持部材67を起立させた状態で放音蓋64を補助天板62上に前上がりに傾斜させて保持するように構成されていれば良い。
【0162】
このように、鍵盤蓋40を1枚板で形成した第2実施形態に第3実施形態を適用した電子鍵盤楽器においても、鍵盤側空間K1とスピーカ側空間K2との間を仕切る仕切板30を設け、この仕切板30にスピーカ10を設けると共に、楽器ケース1の天板6を第3実施形態と同じ天板部60に構成しても、第2実施形態および第3実施形態と同様の作用効果を有する。
【0163】
なお、上述した第1〜第3の各実施形態およびその変形例では、スピーカ10を楽器ケース1内に下向きまたは前向きに配置した場合について述べたが、これに限らず、楽器ケース1内にスピーカ10を上向きに配置しても良く、また後向きに配置しても良い。
【0164】
また、上述した第1〜第3の各実施形態およびその変形例では、ねじりコイルばねなどのばね部材32のばね力によって鍵盤側空間K1とスピーカ側空間K2とを塞ぐ位置に向けて仕切板30を付勢するように構成した場合について述べたが、これに限らず、板ばね、コイルばね、ゴム紐などの付勢部材で鍵盤側空間K1とスピーカ側空間K2との間を塞ぐ位置に向けて仕切板30を付勢するように構成しても良く、また付勢部材は、仕切板30の下部に錘を設け、この錘の重量で鍵盤側空間K1とスピーカ側空間K2との間を塞ぐ位置に向けて仕切板30を付勢するように構成しても良い。
【0165】
また、上述した第1〜第3の各実施形態およびその変形例では、鍵盤側空間K1とスピーカ側空間K2との間を塞ぐ位置に仕切板3を位置規制する位置規制部34を天板6の下面または補助天板61の下面に設けた場合について述べたが、これに限らず、例えば楽器ケースの底板2の上面または一対の側板5の内面に設けても良い。
【0166】
また、上述した第1〜第3の各実施形態およびその変形例では、鍵盤蓋13の前蓋15または鍵盤蓋40に操作突起部35、52を設け、この操作突起部35、52で仕切板30を押圧して傾動させるように構成した場合について述べたが、これに限らず、例えば仕切板30に操作突起部を設け、この操作突起部を鍵盤蓋が押圧して仕切板30を傾動させるように構成しても良い。また、これに限らず、例えば、操作突起部を鍵盤蓋13の前蓋15または鍵盤蓋40と仕切板30との両方に設けた構成であっても良い。
【0167】
さらに、上述した第1〜第3の各実施形態およびその変形例では、鍵盤蓋13、40を楽器ケース1にスライド可能に設けた構成である場合について述べたが、これに限らず、例えば鍵盤蓋を楽器ケースに回転可能に取り付け、鍵盤蓋を回転させることにより鍵盤部7を開閉するように構成しても良い。
【0168】
以上、この発明のいくつかの実施形態について説明したが、この発明は、これらに限られるものではなく、特許請求の範囲に記載された発明とその均等の範囲を含むものである。
以下に、本願の特許請求の範囲に記載された発明を付記する。
【0169】
(付記)
請求項1に記載の発明は、前部側が上方に開放された楽器ケースと、この楽器ケース内に配置され、当該楽器ケースの前部上側に露呈された鍵盤部と、この鍵盤部の後方に位置し、前記楽器ケース内に配置されたスピーカと、前記鍵盤部と前記スピーカとの間に設けられ、前記楽器ケース内を鍵盤側空間とスピーカ側空間とに仕切る仕切部材と、前記楽器ケース内に収納可能に構成され、当該楽器ケース内に収納されない状態で前記鍵盤部を覆うとともに当該楽器ケース内に収納された状態で前記鍵盤部を露呈させ、当該収納の状態に応じて前記仕切部材を傾動させて前記鍵盤側空間と前記スピーカ側空間との間を開閉させる鍵盤蓋と、を備えていることを特徴とする鍵盤楽器である。
【0170】
請求項2に記載の発明は、請求項1に記載の鍵盤楽器において、前記鍵盤蓋は前記収納の状態として、前記鍵盤部を露呈させた第1収納状態と、この第1収納状態から更に前記鍵盤蓋を前記楽器ケースの内部へ収納させた第2収納状態と、を有することを特徴とする鍵盤楽器である。
【0171】
請求項3に記載の発明は、請求項2に記載の鍵盤楽器において、前記仕切部材は前記楽器ケースの前後方向に傾動可能に設けられ、前記第1収納状態の場合に、前記仕切部材を傾動させず、当該仕切部材によって前記鍵盤側空間と前記スピーカ側空間との間を閉状態に維持させ、一方、前記第2収納状態の場合に、前記鍵盤蓋の開動作に伴って前記仕切部材を傾動させ、前記鍵盤側空間と前記スピーカ側空間との間を開放する開状態に切り替えることを特徴とする鍵盤楽器である。
【0172】
請求項4に記載の発明は、請求項3に記載の鍵盤楽器において、前記楽器ケース内に前記仕切部材を前後方向に回転可能に支持する支持軸と、前記鍵盤側空間と前記スピーカ側空間との間を塞ぐ位置に向けて前記仕切部材を付勢する付勢部材とを備えていることを特徴とする鍵盤楽器である。
【0173】
請求項5に記載の発明は、請求項1〜請求項4のいずれかに記載の鍵盤楽器において、前記鍵盤蓋は、複数の蓋部が折り曲げ可能に連結され、前記楽器ケースにスライド可能に設けられていることを特徴とする鍵盤楽器である。
【0174】
請求項6に記載の発明は、請求項1〜請求項4のいずれかに記載の鍵盤楽器において、前記鍵盤蓋は、1枚の平板で形成され、前記楽器ケースにスライド可能に設けられていることを特徴とする鍵盤楽器である。
【0175】
請求項7に記載の発明は、請求項1〜請求項6のいずれかに記載の鍵盤楽器において、前記スピーカは前記仕切部材に取り付けられていることを特徴とする鍵盤楽器である。