特許第6252121号(P6252121)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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特許6252121放電ランプ点灯装置、放電ランプ点灯方法、及びプロジェクター
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6252121
(24)【登録日】2017年12月8日
(45)【発行日】2017年12月27日
(54)【発明の名称】放電ランプ点灯装置、放電ランプ点灯方法、及びプロジェクター
(51)【国際特許分類】
   H05B 41/24 20060101AFI20171218BHJP
【FI】
   H05B41/24
【請求項の数】9
【全頁数】18
(21)【出願番号】特願2013-234709(P2013-234709)
(22)【出願日】2013年11月13日
(65)【公開番号】特開2014-146591(P2014-146591A)
(43)【公開日】2014年8月14日
【審査請求日】2016年9月8日
(31)【優先権主張番号】特願2013-368(P2013-368)
(32)【優先日】2013年1月7日
(33)【優先権主張国】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】000002369
【氏名又は名称】セイコーエプソン株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100116665
【弁理士】
【氏名又は名称】渡辺 和昭
(74)【代理人】
【識別番号】100164633
【弁理士】
【氏名又は名称】西田 圭介
(74)【代理人】
【識別番号】100179475
【弁理士】
【氏名又は名称】仲井 智至
(72)【発明者】
【氏名】中込 陽一
(72)【発明者】
【氏名】寺島 徹生
【審査官】 山崎 晶
(56)【参考文献】
【文献】 特開2004−296119(JP,A)
【文献】 特開2011−044258(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H05B 41/24 − 41/298
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
放電ランプの点灯を制御する放電ランプ点灯装置であって、
前記放電ランプに駆動電流を供給する駆動部と、
前記駆動部を制御する制御部と、を備え、
前記制御部は、前記駆動電流の駆動周波数に応じて、前記駆動電流におけるオーバーシュート及びアンダーシュートの電流値を変化させることを特徴とする放電ランプ点灯装置。
【請求項2】
請求項に記載の放電ランプ点灯装置であって、
前記制御部は、前記駆動電流の平均駆動周波数が第1駆動周波数である場合の前記オーバーシュート及び前記アンダーシュートの電流値を、前記平均駆動周波数が前記第1駆動周波数よりも低い第2駆動周波数である場合の前記オーバーシュート及び前記アンダーシュートの電流値よりも小さくすることを特徴とする放電ランプ点灯装置。
【請求項3】
請求項1または2に記載の放電ランプ点灯装置であって、
前記制御部は、前記駆動電流の前記駆動周波数の変動幅が第1の値である場合の前記オーバーシュート及び前記アンダーシュートの電流値を、前記変動幅が前記第1の値よりも小さい第2の値である場合の前記オーバーシュート及び前記アンダーシュートの電流値よりも大きくすることを特徴とする放電ランプ点灯装置。
【請求項4】
請求項1から3の何れか一項に記載の放電ランプ点灯装置であって、
前記制御部は、前記放電ランプに供給される駆動電力の大きさに応じて、前記駆動電流における前記オーバーシュート及び前記アンダーシュートの電流値を変化させることを特徴とする放電ランプ点灯装置。
【請求項5】
請求項に記載の放電ランプ点灯装置であって、
前記制御部は、前記駆動電力が第1駆動電力である場合の前記オーバーシュート及び前記アンダーシュートの電流値を、前記駆動電力が前記第1駆動電力よりも小さい第2駆動電力である場合の前記オーバーシュート及び前記アンダーシュートの電流値よりも小さくすることを特徴とする放電ランプ点灯装置。
【請求項6】
請求項4または5に記載の放電ランプ点灯装置であって、
前記制御部は、前記駆動電力の大きさに応じた前記オーバーシュート及び前記アンダーシュートの電流値に、前記駆動電流の前記駆動周波数に応じた係数を乗算した電流値とすることを特徴とする放電ランプ点灯装置。
【請求項7】
請求項1から6の何れか一項に記載の放電ランプ点灯装置であって、
前記駆動部は、入力される直流電力を所定の出力電圧に降下して出力するダウンチョッパー部と、前記ダウンチョッパー部から供給される直流電力を交流電力に変換して出力する電力変換部と、を有し、
前記ダウンチョッパー部は、前記ダウンチョッパー部に電力を供給する電源と前記電力変換部との間に接続されたスイッチング素子を有し、
前記ダウンチョッパー部は、前記制御部からの制御信号に基づいて前記スイッチング素子のオン/オフを切り替えることにより、前記スイッチング素子のデューティー比に応じた出力電圧に変換された直流電力を出力し、
前記制御部は、前記デューティー比を調整することによって、前記オーバーシュート及び前記アンダーシュートの電流値を変化させることを特徴とする放電ランプ点灯装置。
【請求項8】
放電ランプの点灯を制御する放電ランプ点灯方法であって、
前記放電ランプに駆動電流を供給するステップと、
前記駆動電流の駆動周波数に応じて、前記駆動電流におけるオーバーシュート及びアンダーシュートの電流値を変化させるステップと、
を備えることを特徴とする放電ランプ点灯方法。
【請求項9】
光を照射する放電ランプと、
請求項1から7の何れか一項に記載の放電ランプ点灯装置と、
前記放電ランプからの光を画像データに応じて変調する光変調装置と、
前記光変調装置により変調された光を投射する投射光学系と、を備えたプロジェクター。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、放電ランプ点灯装置、放電ランプ点灯方法、及びプロジェクターに関する。
【背景技術】
【0002】
従来より、プロジェクター用の光源として、例えば、超高圧水銀ランプや、メタルハライドランプ、キセノンランプ等の放電ランプ(放電灯)が使用されている。
【0003】
ところで、このような放電ランプの点灯を制御する放電ランプ点灯装置では、放電ランプが点灯している時の駆動電流の波形にオーバーシュート及びアンダーシュートが発生することがある。
【0004】
オーバーシュート及びアンダーシュートは、放電ランプ点灯装置が備える回路構成等の原因により、放電ランプの電極間に一時的に想定以上の電流が流れる現象であり、放電ランプに供給される駆動電流の極性を切り替える度に、駆動電流の波形(矩形波)の立上り部分と立下り部分において、その波形が定常値となる基線を超過する現象のことを言う。
【0005】
オーバーシュート及びアンダーシュートが発生すると、放電ランプの照度変化や、放電ランプの電極へのダメージ等を引き起こす。具体的に、オーバーシュート及びアンダーシュートの発生により、放電ランプの電極が過熱されると、電極を形成するタングステンが蒸散を引き起こし、放電ランプに黒化が発生する恐れがある。また、オーバーシュート及びアンダーシュートの発生により、放電ランプの電極に振動が加わると、電極コイルの破壊等を引き起こすこともある。
【0006】
このようなオーバーシュート及びアンダーシュートの発生によるダメージは、放電ランプの駆動周波数が高いほど受ける回数が多くなり、且つ、放電ランプに供給される駆動電力(電流、電圧)が高いほど大きくなる。このため、放電ランプ点灯装置では、オーバーシュート及びアンダーシュートの発生をなるべく抑える必要がある。
【0007】
オーバーシュート(アンダーシュート)の発生を抑制する方法としては、例えば、複数のタイマーによって電流値を補正制御してオーバーシュートを低減する方法が提案されている(特許文献1を参照。)。また、オーバーシュート抑止回路を設けて、放電ランプの電圧、電流、電力及び光量が所定値に到達する度に、オーバーシュート抑止回路を動作させる方法が提案されている(特許文献2を参照。)。
【0008】
しかしながら、このような従来のオーバーシュートの抑制方法は、何れも制御部の駆動波形の応答性を低下させるものであり、オーバーシュートの発生を過度に抑制すると、駆動電流の波形や駆動電力等を正確に制御できなくなる。
【0009】
この場合、放電ランプの照度変化によりプロジェクターの投影画像がちらついてしまうことがある。特に、この現象は、放電ランプの駆動周波数に依存し、高周波になるほど制御が困難になる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0010】
【特許文献1】特開平9−232091号公報
【特許文献2】特開2004−39397号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0011】
本発明は、このような従来の事情に鑑みて提案されたものであり、オーバーシュート及びアンダーシュートの発生による影響を抑えつつ、放電ランプの点灯制御を適切に行うことができる放電ランプ点灯装置及び放電ランプ点灯方法、並びにそのような放電ランプ点灯装置を備えたプロジェクターを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0012】
上記目的を達成するために、本発明に係る放電ランプ点灯装置は、放電ランプの点灯を制御する放電ランプ点灯装置であって、前記放電ランプを駆動する駆動部と、前記駆動部の駆動を制御する制御部と、を備え、前記制御部は、少なくとも前記放電ランプに供給される駆動電力の大きさに応じて、前記駆動部が放電ランプを駆動するときの駆動電流の波形に発生するオーバーシュート及びアンダーシュートの電流値が異なることを特徴とする。
【0013】
この放電ランプ点灯装置では、放電ランプに供給される駆動電力の大きさに応じて、放電ランプを駆動するときの駆動電流の波形に発生するオーバーシュート及びアンダーシュートの電流値を異ならせることで、オーバーシュート及びアンダーシュートの発生による影響を抑えつつ、放電ランプの点灯制御を適切に行うことができる。
【0014】
また、前記制御部は、前記放電ランプに供給される駆動電力が大きいときに、前記オーバーシュート及びアンダーシュートの電流値が相対的に小さく、前記放電ランプに供給される駆動電力が小さいときに、前記オーバーシュート及びアンダーシュートの電流値が相対的に大きいことが好ましい。
【0015】
この場合、放電ランプに供給される駆動電力が大きいときは、オーバーシュート及びアンダーシュートの電流値を相対的に小さくすることで、制御部の応答速度の低下をある程度許容しながら、オーバーシュート及びアンダーシュートの発生による影響を低く抑えることができる。一方、放電ランプに供給される駆動電力が小さいときは、オーバーシュート及びアンダーシュートの電流値を相対的に大きくすることで、制御部の応答速度を上げながら、放電ランプの点灯制御を適切に行うことができる。
【0016】
また、前記制御部は、前記放電ランプの駆動モードに応じて、前記駆動部が放電ランプを駆動するときの駆動電流の波形に発生するオーバーシュート及びアンダーシュートの電流値が異なることが好ましい。
【0017】
この場合、放電ランプの駆動モードに応じて、放電ランプを駆動するときの駆動電流の波形に発生するオーバーシュート及びアンダーシュートの電流値を異ならせることで、オーバーシュート及びアンダーシュートの発生による影響を抑えつつ、放電ランプの点灯制御を適切に行うことができる。
【0018】
また、前記制御部は、前記放電ランプの駆動モードに応じて、前記放電ランプの平均駆動周波数が高いときに、前記オーバーシュート及びアンダーシュートの電流値が相対的に小さく、前記放電ランプの平均駆動周波数が低いときに、前記オーバーシュート及びアンダーシュートの電流値が相対的に大きいことが好ましい。
【0019】
この場合、放電ランプの平均駆動周波数が高いときは、オーバーシュート及びアンダーシュートの電流値を相対的に小さくすることで、オーバーシュート及びアンダーシュートの発生による影響を低く抑えることができる。一方、放電ランプの平均駆動周波数が低いときは、オーバーシュート及びアンダーシュートの電流値を相対的に大きくすることで、放電ランプの点灯制御を適切に行うことができる。
【0020】
また、前記制御部は、前記放電ランプの駆動モードに応じて、前記放電ランプの駆動周波数の変動幅が大きいときに、前記オーバーシュート及びアンダーシュートの電流値が相対的に大きいことが好ましい。
【0021】
この場合、放電ランプの駆動周波数の変動幅が大きいときに、オーバーシュート及びアンダーシュートの電流値を大きくすることで、放電ランプの点灯制御を適切に行うことができる。
【0022】
また、前記制御部は、前記放電ランプに供給される駆動電力の大きさに応じた前記オーバーシュート及びアンダーシュートの電流値に、前記放電ランプの駆動モードに応じた係数を乗算した電流値とすることが好ましい。
【0023】
この場合、放電ランプに供給される駆動電力の大きさに応じたオーバーシュート及びアンダーシュートの電流値の調整と、放電ランプの駆動モードに応じたオーバーシュート及びアンダーシュートの電流値の調整との両立を図りながら、オーバーシュート及びアンダーシュートの発生による影響を抑えると共に、放電ランプの点灯制御を適切に行うことができる。
【0024】
また、前記駆動部は、入力される直流電力を所定の出力電圧に降下して出力するダウンチョッパー部と、前記ダウンチョッパー部から供給される直流電力を交流電力に変換して出力する電力変換部とを有し、前記ダウンチョッパー部は、前記制御部からの制御信号に基づいて、この制御信号のデューティー比に応じた出力電圧に変換された直流電力を出力し、前記制御部は、所定の期間における前記制御信号のデューティー比を変更することによって、前記オーバーシュート及びアンダーシュートの電流値を異ならせるものであってもよい。
【0025】
この場合、上述した放電ランプに供給される駆動電力の大きさや放電ランプの駆動モードに応じて、オーバーシュート及びアンダーシュートの電流値を異ならせることができる。
【0026】
また、本発明に係る放電ランプ点灯方法は、放電ランプの点灯を制御する放電ランプ点灯方法であって、少なくとも前記放電ランプに供給する駆動電力の大きさに応じて、その駆動電流の波形に発生するオーバーシュート及びアンダーシュートの電流値を異ならせることを特徴とする。
【0027】
この放電ランプ点灯方法では、放電ランプに供給する駆動電力の大きさに応じて、放電ランプを駆動するときの駆動電流の波形に発生するオーバーシュート及びアンダーシュートの電流値を異ならせることで、オーバーシュート及びアンダーシュートの発生による影響を抑えつつ、放電ランプの点灯制御を適切に行うことができる。
【0028】
また、前記放電ランプに供給する駆動電力が大きいときに、前記オーバーシュート及びアンダーシュートの電流値を相対的に小さくし、前記放電ランプに供給する駆動電力が小さいときに、前記オーバーシュート及びアンダーシュートの電力値を相対的に大きくすることが好ましい。
【0029】
この場合、放電ランプに供給する駆動電力が大きいときは、オーバーシュート及びアンダーシュートの電流値を相対的に小さくすることで、制御部の応答速度の低下をある程度許容しながら、オーバーシュート及びアンダーシュートの発生による影響を低く抑えることができる。一方、放電ランプに供給する駆動電力が小さいときは、オーバーシュート及びアンダーシュートの電流値を相対的に大きくすることで、制御部の応答速度を上げながら、放電ランプの点灯制御を適切に行うことができる。
【0030】
また、前記放電ランプの駆動モードに応じて、その駆動電流の波形に発生するオーバーシュート及びアンダーシュートの電流値を異ならせることが好ましい。
【0031】
この場合、放電ランプの駆動モードに応じて、放電ランプを駆動するときの駆動電流の波形に発生するオーバーシュート及びアンダーシュートの電流値を異ならせることで、オーバーシュート及びアンダーシュートの発生による影響を抑えつつ、放電ランプの点灯制御を適切に行うことができる。
【0032】
また、前記放電ランプの駆動モードに応じて、前記放電ランプの平均駆動周波数が高いときに、前記オーバーシュート及びアンダーシュートの電流値を相対的に小さくし、前記放電ランプの平均駆動周波数が低いときに、前記オーバーシュート及びアンダーシュートの電流値を相対的に大きくすることが好ましい。
【0033】
この場合、放電ランプの平均駆動周波数が高いときは、オーバーシュート及びアンダーシュートの電流値を相対的に小さくすることで、オーバーシュート及びアンダーシュートの発生による影響を低く抑えることができる。一方、放電ランプの平均駆動周波数が低いときは、オーバーシュート及びアンダーシュートの電流値を相対的に大きくすることで、放電ランプの点灯制御を適切に行うことができる。
【0034】
また、前記放電ランプの駆動モードに応じて、前記放電ランプの駆動周波数の変動幅が大きいときに、前記オーバーシュート及びアンダーシュートの電流値を相対的に大きくすることが好ましい。
【0035】
この場合、放電ランプの駆動周波数の変動幅が大きいときに、オーバーシュート及びアンダーシュートの電流値を大きくすることで、放電ランプの点灯制御を適切に行うことができる。
【0036】
また、前記放電ランプに供給される駆動電力の大きさに応じた前記オーバーシュート及びアンダーシュートの電流値に、前記放電ランプの駆動モードに応じた係数を乗算した電流値とすることが好ましい。
【0037】
この場合、放電ランプに供給される駆動電力の大きさに応じたオーバーシュート及びアンダーシュートの電流値の調整と、放電ランプの駆動モードに応じたオーバーシュート及びアンダーシュートの電流値の調整との両立を図りながら、オーバーシュート及びアンダーシュートの発生による影響を抑えると共に、放電ランプの点灯制御を適切に行うことができる。
【0038】
また、本発明に係るプロジェクターは、上記何れかの放電ランプ点灯装置を備えることを特徴とする。
【0039】
このプロジェクターでは、上述したオーバーシュート及びアンダーシュートの発生による影響を抑えつつ、放電ランプの点灯制御を適切に行うことができる放電ランプ点灯装置を備えることで、更なる品質の向上を図ることができる。
【図面の簡単な説明】
【0040】
図1】本実施形態によるプロジェクターの一構成例を示すブロック図である。
図2】本実施形態による放電ランプ点灯装置の一構成例を示すブロック図である。
図3】オーバーシュート及びアンダーシュートが発生した場合の駆動電流の波形図の一例である。
図4】表1中に示す駆動電力が280Wのときオーバーシュート率を10%に設定した場合の駆動電流の波形図である。
図5】表1中に示す駆動電力が250Wのときオーバーシュート率を15%に設定した場合の駆動電流の波形図である。
図6】表1中に示す駆動電力が200Wのときオーバーシュート率を20%に設定した場合の駆動電流の波形図である。
図7】表1中に示す駆動電力が170Wのときオーバーシュート率を30%に設定した場合の駆動電流の波形図である。
図8】駆動周波数が変化する場合の駆動電流の波形図の一例である。
【発明を実施するための形態】
【0041】
以下、本発明の実施の形態について、図面を参照して詳細に説明する。
なお、以下の説明で用いる図面は、特徴をわかりやすくするために、便宜上特徴となる部分を拡大して示している場合があり、各構成要素の寸法比率などが実際と同じであるとは限らない。
【0042】
(プロジェクター)
図1は、本実施形態によるプロジェクター1の一構成例を示すブロック図である。
このプロジェクター1は、図1に示すように、照明光Lを照射する放電ランプ(光源)10と、照明光Lを画像データに応じて変調した画像光L’を形成する液晶パネル(光変調装置)20と、画像光L’をスクリーン(図示せず。)に投射する投射光学系30とを概略備えている。
【0043】
なお、本実施形態では、放電ランプ10として、アーク放電を利用した超高圧水銀ランプを用いた場合を例示するが、この場合に限定されず、例えばメタルハライドランプやキセノンランプなどの任意の放電ランプを用いることができる。
【0044】
また、プロジェクター1は、インターフェイス(I/F)部40と、画像処理部50と、液晶パネル駆動部60と、放電ランプ点灯装置70と、CPU(Central Processing Unit)80とを概略備えている。
【0045】
インターフェイス部40は、図示しないパーソナルコンピュータなどから入力される画像信号を、画像処理部50で処理可能な形式の画像データに変換するものである。
【0046】
画像処理部50は、インターフェイス部40から供給される画像データに対して、輝度調整や色バランス調整などの各種画像処理を施すものである。
【0047】
液晶パネル駆動部60は、画像処理部50により画像処理が施された画像データに基づいて液晶パネル20を駆動するためのものである。
【0048】
放電ランプ点灯装置70は、放電ランプ10の点灯を制御するものであり、放電ランプ10の始動時に後述する共振回路部73を用いて放電ランプ10の一対の電極間に数十kHz程度の高周波電圧を印加する。始動後は、放電ランプ10の駆動周波数を共振周波数よりも低い定常周波数(数百Hz程度)まで下げる動作を行い、この定常周波数での定常点灯を行う。
【0049】
CPU80は、図示しないリモートコントローラや、上記プロジェクター1の本体部等に設けられた操作ボタンの操作に従って、画像処理部50や投写光学系30を制御するものである。
【0050】
本実施形態では、例えば、利用者がプロジェクター1の電源スイッチ(図示せず。)を操作したときに、CPU80が放電ランプ点灯装置70に対して放電ランプ10を点灯させるための制御信号を出力する。
【0051】
(放電ランプ点灯装置)
図2は、本実施形態による放電ランプ点灯装置70の一構成例を示すブロック図である。
この放電ランプ点灯装置70は、図2に示すように、ダウンチョッパー部71と、電力変換部72と、共振回路部73と、電圧検出部74と、点灯検出部75と、制御部76とを概略備えている。このうち、ダウンチョッパー部71と、電力変換部72と、共振回路部73とが、上記放電ランプ10を駆動する駆動部77を構成している。
【0052】
ダウンチョッパー部71は、入力端子TIN1と入力端子TIN2との間に図示しない直流電源から印加される電圧Vinを有する直流電力を所定の直流電圧を有する直流電力に変換するものであり、例えばnチャネル型の電界効果トランジスタ(FET)711と、チョークコイル712と、ダイオード713と、コンデンサ714とから構成されている。
【0053】
そして、このダウンチョッパー部71では、制御部76から供給される制御信号S711に基づいて、FET711に流れる電流をチョッピングすることにより、制御信号S711のデューティー比に応じた所望の出力電圧を有する直流電力を得ることができる。
【0054】
電力変換部72は、ダウンチョッパー部71から供給される直流電力を交流電力に変換し、この交流電力を共振回路部73を介して放電ランプ10に供給するためのものであり、例えば、4つのnチャネル型の電界効果トランジスタ(FET)721〜724からなるフルブリッジ回路により構成されている。
【0055】
すなわち、このフルブリッジ回路を構成するFET721〜724のうち、FET721,722の各ドレインは、ダウンチョッパー部71を構成するFET711及びチョークコイル712を介して入力端子TIN1に繋がる高電位ノードNHに接続されている。また、これらFET721,722の各ソースは、それぞれFET723,724の各ドレインに接続されている。また、これらFET723,724の各ソースは、後述する点灯検出部75を構成する抵抗751を介して、入力端子TIN2に繋がる低電位ノードNLに接続されている。
【0056】
FET721とFET724のゲートには、制御部76から制御信号Saが供給され、FETトランジス722とFET723のゲートには、制御部76から上記制御信号Saの反転信号に相当する制御信号Sbが供給される。
【0057】
本実施形態では、FET721のソースとFET723のドレインとの間の接続部を電力変換部72の一方の出力ノードN1とし、FET722のソースとFET724のドレインとの間の接続部を電力変換部72の他方の出力ノードN2としている。
【0058】
そして、この電力変換部72では、制御部76から供給される制御信号S(Sa,Sb)に基づいて一対のFET722,723と一対のFET721,724とが相補的にスイッチング動作することにより、直流電力を交流電力に変換することが可能となっている。
【0059】
なお、本実施形態では、電力変換部72をフルブリッジ回路により構成したが、交流電力を共振回路部73に供給することができる限度において、電力変換部72の回路形式として、ハーフブリッジ回路等の任意の回路形式を用いてもよい。
【0060】
共振回路部73は、上記放電ランプ10の放電開始電圧(ブレークダウン電圧)を超える高電圧を発生させるイグナイタとして機能するものであり、出力端子TOUT1,TOUT2を介して電力変換部72とは並列に放電ランプ10と接続される。
【0061】
共振回路部73は、磁気的に結合された2つのコイル731,732と、コンデンサ733とから構成されている。このうち、コイル731の一端が電力変換部72の出力ノードN1に接続され、このコイル731の他端がコイル732の一端に接続され、このコイル732の他端が出力端子TOUT1に接続されている。また、コイル731とコイル732との間の接続ノードには、コンデンサ733の一方の電極が接続され、このコンデンサ733の他方の電極が、電力変換部72の出力ノードN2に接続されると共に、出力端子TOUT2に接続されている。
【0062】
本実施形態では、共振回路部73を構成するコイル731とコンデンサ733によりLC直列共振回路が形成されており、基本的には、このLC直列共振回路の共振周波数(コイル731とコンデンサ733により定まる共振周波数)が共振回路部73の固有の共振周波数になる。したがって、電力変換部72から供給される交流電力の周波数が共振回路部73の共振周波数と一致して、コイル731とコンデンサ733により構成されるLC直列共振回路が共振状態になれば、原理上、コンデンサ733の端子間電圧V733が無限大になり、放電ランプ10の放電を開始させるのに必要な高電圧が共振回路部73により得られる。
【0063】
ここで、上記LC直列共振回路が共振状態になっても、電力変換部72を構成するFETトランジス721〜724の抵抗成分や配線インピーダンスが存在すると、コンデンサ733の端子間電圧V733は概ね1〜1.5kV程度に留まり、放電ランプ10の放電を開始させるのに必要な高電圧が得られなくなる。
【0064】
そこで、本実施形態では、上記LC直列共振回路を構成するコイル731と磁気的に結合されたコイル732を配置し、コンデンサ733の端子間電圧V733を、コイル731とコイル732との巻数比に応じて増幅することにより、最終的に上記放電ランプ10の放電を開始させるのに必要な数kVの高電圧(共振電圧)を発生させている。
【0065】
圧検出部74は、共振回路部73を構成するコンデンサ733の端子間電圧V733を検出するためのものであり、このコンデンサ733の端子間に直列に接続された抵抗741及び抵抗742と、アナログ/デジタル(A/D)変換部743とから構成されている。
【0066】
このうち、抵抗741及び抵抗742は、共振回路部73のコンデンサ733の端子間電圧V733を分圧して、その抵抗比に応じた電圧V74を得るためのものである。
【0067】
一方、アナログ/デジタル変換部743は、分圧された電圧V74をデジタルデータに変換して出力するものである。本実施形態では、この分圧された電圧V74が、電圧V733をアナログ/デジタル変換部743の入力特性に適合させるために生成される中間段階の電圧である。したがって、アナログ/デジタル変換部743が出力するデジタルデータは、電圧V733の値を表し、この電圧検出部74で検出された電圧V733は制御部76に供給される。
【0068】
点灯検出部75は、上記放電ランプ10の点灯/不点灯を検出するものであり、抵抗751とコンパレータ部752とから構成されている。
【0069】
このうち、抵抗751は、入力端子TIN2と電力変換部72を構成するFET723,724の各ソースとの間に接続されており、この抵抗751の端子間電圧(降下電圧)はコンパレータ部752に入力される。
【0070】
コンパレータ部752は、抵抗751の端子間電圧に基づいて上記放電ランプ10を流れる電流を検出し、この検出された電流と、上記放電ランプ10が点灯したときに抵抗751を流れる電流に対応する所定電圧値(図示なし)とを比較することにより、上記放電ランプ10の点灯/不点灯を検出する。
【0071】
すなわち、この点灯検出部75は、例えば、抵抗751の端子間電圧が所定電圧値以上である場合には、上記放電ランプ10の点灯を検出する。一方、抵抗751の端子間電圧が所定電圧値を下回る場合には、上記放電ランプ10の不点灯を検出する。そして、この点灯検出部75は、上記放電ランプの点灯を検出した場合、その旨を示す信号を制御部76に出力する。
【0072】
制御部76は、上述したダウンチョッパー部71と電力変換部72の各スイッチング動作を制御するものである。また、制御部76は、電圧制御発振器761を備えている。この電圧制御発振器761は、入力電圧(図示なし)に応じた周波数の信号を制御信号Sとして出力するものである。この電圧制御発振器761の入力電圧を規定する信号は、電力変換部72のスイッチング動作が得られるように、制御部76において生成される。
【0073】
(放電ランプ点灯方法)
次に、本実施形態による放電ランプ点灯装置70の点灯制御(放電ランプ点灯方法)について説明する。
上記放電ランプ点灯装置70では、例えば図3に示すように、上記放電ランプ10を点灯させる際の駆動電流の波形(矩形波)にオーバーシュートOS及びアンダーシュートUSが発生することがある。なお、図3は、駆動電流の波形図において、駆動電流の波形にオーバーシュートOS及びアンダーシュートUSが発生した場合を例示したものである。
【0074】
本発明による点灯制御では、上記放電ランプ10に供給される駆動電力の大きさに応じて、上記放電ランプ10を駆動するときの駆動電流の波形に発生するオーバーシュートOS及びアンダーシュートUSの電流値を異ならせることを特徴とする。
【0075】
具体的に、上記制御部76は、所定の期間における上記制御信号S711のデューティー比を変更することによって、オーバーシュートOS及びアンダーシュートUSの発生量(電流値)STを異ならせることが可能である。
【0076】
すなわち、上記ダウンチョッパー部71では、スイッチング素子である上記FET711のオン/オフ(ON/OFF)の切り替えによって、上記電力変換部72のフルブリッジ回路を構成するFET721〜724へと直流電力を出力する。
【0077】
上記電力変換部72では、上記ダウンチョッパー部71から供給される直流電力を交流電力に変換する。上記電力変換部72では、駆動電流の波形が極性反転する際に、フルブリッジ回路を構成する全てのFET721〜724がオフ(OFF)となり、一瞬だけ通電が途切れる時間がある。
【0078】
このとき、FET711がオン(ON)になると、コンデンサ714に電荷が蓄えられる。そして、このフルブリッジ回路が再度通電したときに、コンデンサ714に蓄えられた電荷が放出される。このときの駆動電流の波形がオーバーシュートOS又はアンダーシュートUSの形で現れる。
【0079】
図3に示す駆動電流の波形(矩形波)には、駆動電流の極性が切り替わる度に、この駆動電流の波形の立上り部分と立下り部分において、それぞれの波形が定常値となる基線±Tを超過するオーバーシュートOSとアンダーシュートUSが発生する。
【0080】
したがって、上記ダウンチョッパー部71では、上記FET711のオン/オフ(ON/OFF)のデューティー比を変更することで、コンデンサ714に蓄えられる電荷量が調節される。これにより、オーバーシュートOS及びアンダーシュートUSの発生量(電流値)STを調整することが可能となっている。
【0081】
すなわち、ダウンチョッパー部71のONのデューティー比を高くしてダウンチョッパー部71からの電圧を高くすると、コンデンサ714に蓄えられる電荷量が大きくなり、オーバーシュートOS及びアンダーシュートUSの発生量(電流値)STが相対的に大きくなる。一方、ダウンチョッパー部71のONのデューティー比を低くしてダウンチョッパー部71からの電圧を低くすると、コンデンサ714に蓄えられる電荷量が小さくなり、オーバーシュートOS及びアンダーシュートUSの発生量(電流値)STが相対的に小さくなる。
【0082】
ここで、オーバーシュートOS及びアンダーシュートUSの発生量(電流値)STについて、上記放電ランプ10を駆動しているときの駆動電流の波形が定常値となる基線Tを超過する割合を百分率(%)で表した値を「オーバーシュート率」と定義する。例えば、図3に示す波形のオーバーシュート率は、定格電力比(%)が100%のとき、(140−100)/100×100=40%の場合を表している。これは、オーバーシュートOSが発生したときと、アンダーシュートUSが発生したときで同じ値を示すことから、これらをまとめて「オーバーシュート率」として表すものとする。
【0083】
なお、定格電力比は、上記放電ランプ10の駆動時における電力値を駆動電力の定格値で除した値を百分率(%)で表した値である。例えば、上記放電ランプ10の駆動電力の定格値が280Wの場合、上記放電ランプ10を280Wで駆動しているときの定格電力比は、280/280×100=100%である。
【0084】
本発明による点灯制御では、上記放電ランプ10に供給される駆動電力が大きいときに、オーバーシュートOS及びアンダーシュートUSの電流値を相対的に小さくする方向に調整を行い、上記放電ランプ10に供給される駆動電力が小さいときに、オーバーシュートOS及びアンダーシュートUSの電流値を相対的に大きくする方向に調整を行う。
【0085】
例えば、表1は、上記放電ランプ10の駆動電力の定格値が280Wの場合に、駆動電力毎の定格電力比(%)とオーバーシュート率(%)とを例示したものである。
【0086】
【表1】
【0087】
本発明による点灯制御では、表1に示すように、上記放電ランプ10の駆動電力毎に、上記放電ランプ10を駆動するときの駆動電流の波形におけるオーバーシュートOS及びアンダーシュードUSの電流値を異ならせている。
【0088】
ここで、オーバーシュートOS及びアンダーシュードUSの電流値については、実験に基づいて算出された下記式(1)を満足するように、上記放電ランプ10の駆動電力毎に上記放電ランプ10に供給される駆動電流のオーバーシュート率を設定することが好ましい。
Z<−0.45W+60 …(1)
Z:オーバーシュート率[%]
W:定格電力比[%]
【0089】
すなわち、上記放電ランプ10に供給される駆動電力が大きいときには、上記式(1)から、駆動電流のオーバーシュート率を相対的に小さくなる値に設定し、上記放電ランプ10に供給される駆動電力が小さいときには、上記式(1)から、駆動電流のオーバーシュート率を相対的に大きくなる値に設定することが好ましい。
【0090】
図4図7は、表1中に示す上記放電ランプ10の駆動電力毎の上記放電ランプ10に供給される駆動電流の波形図を表したものである。なお、図4は、表1中に示す駆動電力が280W(定格電力比100%)のときオーバーシュート率を10%に設定した場合の駆動電流の波形図である。図5は、表1中に示す駆動電力が250W(定格電力比90%)のときオーバーシュート率を15%に設定した場合の駆動電流の波形図である。図6は、表1中に示す駆動電力が200W(定格電力比70%)のときオーバーシュート率を20%に設定した場合の駆動電流の波形図である。図7は、表1中に示す駆動電力が170W(定格電力比60%)のときオーバーシュート率を30%に設定した場合の駆動電流の波形図である。
【0091】
上記式(1)から、オーバーシュート率Zの上限については、この「−0.45W+60」の値を超えないように設定を行うことが好ましい。一方、オーバーシュート率Zの下限については、駆動電流の波形や駆動電力等を正確に制御でき、なお且つ、上記放電ランプ10の照度変化によりプロジェクター1の投影画像にちらつきが発生しない範囲で設定を行うことが好ましい。
【0092】
上記ランプ点灯装置70では、図4図7に示すように、上記放電ランプ10の駆動電力が大きいときほど、オーバーシュートOS及びアンダーシュードUSの電流値を下げる制御が行われる。逆に、上記ランプ点灯装置70では、上記放電ランプ10の駆動電力が小さいときほど、オーバーシュートOS及びアンダーシュードUSの電流値を上げる制御が行われる。
【0093】
上記放電ランプ10の駆動電力が高い場合には、上記放電ランプ10の電極は高温による突起溶融のため放電が安定し、ちらつきが発生しにくい。このため、上記制御部76の応答速度の低下をある程度許容しつつ、上記放電ランプ10へのダメージのリスクを抑えるため、オーバーシュートOS及びアンダーシュードUSの電流値を下げる制御を行う。これにより、オーバーシュートOS及びアンダーシュードUSの電流値を相対的に小さくして、オーバーシュートOS及びアンダーシュートUSの発生による影響を低く抑えることができる。
【0094】
これに対して、上記放電ランプ10の駆動電力が低い場合には、上記放電ランプ10の電極は溶融しづらくなり、ちらつきのリスクが高まる。一方、上記放電ランプ10の駆動電力は低いため、上記放電ランプ10へのダメージのリスクは高電力駆動時よりも低い。そこで、オーバーシュートOS及びアンダーシュートUSの電流値を過多に抑制せず、上記制御部76の応答速度を上げながら駆動電流の波形を正確に制御できるように、オーバーシュートOS及びアンダーシュードUSの電流値を上げる制御を行う。これにより、オーバーシュートOS及びアンダーシュードUSの電流値を相対的に大きくして、上記放電ランプ10の点灯制御を適切に行うことができる。
【0095】
また、本発明による点灯制御では、上記放電ランプ10の駆動モードに応じて、その駆動電流の波形に発生するオーバーシュートOS及びアンダーシュートUSの電流値を異ならせることを特徴とする。
【0096】
具体的に、本発明による点灯制御では、上記放電ランプ10の駆動モードに応じて、上記放電ランプ10の平均駆動周波数が高いときに、オーバーシュートOS及びアンダーシュートUSの電流値を相対的に小さくする方向に調整を行い、上記放電ランプ10の平均駆動周波数が低いときに、オーバーシュートOS及びアンダーシュートUSの電流値を相対的に大きくする方向に調整を行う。
【0097】
上記放電ランプ10の駆動電力が同じで上記放電ランプの駆動モードが異なる場合は、上記放電ランプの平均駆動周波数が高い駆動モードほど、オーバーシュートOS及びアンダーシュートUSの発生によるリスクが大きい。
【0098】
そこで、上記放電ランプ10の駆動電力毎に設定されたオーバーシュートOS及びアンダーシュードUSの電流値に対して、平均駆動周波数の違いによって乗算される係数(以下、オーバーシュート係数という。)を決定する。
【0099】
例えば、表2は、上記放電ランプ10の駆動モードのうち、平均駆動周波数が高い場合(駆動モードA)と、平均駆動周波数が低い場合(駆動モードB)のオーバーシュート係数を例示したものである。
【0100】
【表2】
【0101】
上記ランプ点灯装置70では、上記放電ランプ10の平均駆動周波数が高いほど、オーバーシュートOS及びアンダーシュードUSの電流値を下げる制御が行われる。逆に、上記放電ランプ10の平均駆動周波数が低いほど、オーバーシュートOS及びアンダーシュードUSの電流値を上げる制御が行われる。
【0102】
このように、上記放電ランプ10の平均駆動周波数が高い駆動モードでは、上記制御部76に早い応答性が求められるが、オーバーシュートOS及びアンダーシュートUSによる上記放電ランプ10へのリスクとの兼ね合いを考え、オーバーシュートOS及びアンダーシュードUSの電流値を設定することが好ましい。
【0103】
これにより、オーバーシュートOS及びアンダーシュートUSの発生による影響を低く抑えつつ、上記放電ランプ10の点灯制御を適切に行うことができる。
【0104】
また、本発明による点灯制御では、上記放電ランプ10の駆動モードに応じて、上記放電ランプ10の駆動周波数の変動幅が大きくなるときに、オーバーシュートOS及びアンダーシュートUSの電流値を相対的に大きくする方向に調整を行う。
【0105】
具体的に、上記放電ランプ点灯装置70では、例えば図8に示すように、上記放電ランプ10を点灯させる際の駆動モードによって駆動周波数が急激に変化する場合がある。なお、図8は、駆動電流の波形図において、上記放電ランプ10の駆動周波数が変化する場合を例示したものである。
【0106】
図8中に示す駆動電流の波形図において、駆動周波数が500Hzから100Hzに切り替わる部分と、駆動周波数が100Hzから500Hzに切り替わる部分で、駆動周波数の変動幅が大きくなっている。そして、これらの部分において、オーバーシュートOS及びアンダーシュードUSの電流値を過多に抑制すると、上記制御部76の応答性が低下し、駆動電流の波形を正確に出力できなくなる。
【0107】
そこで、上記放電ランプ10の駆動電力毎に設定されたオーバーシュートOS及びアンダーシュードUSの電流値に対して、駆動周波数の変動幅の違いによって乗算されるオーバーシュート係数を決定する。
【0108】
例えば、表3は、上記放電ランプ10の駆動モードのうち、駆動周波数の変動幅が大きい場合(駆動モードC)と、駆動周波数の変動幅が小さい場合(駆動モードD)のオーバーシュート係数を例示したものである。
【0109】
【表3】
【0110】
上記ランプ点灯装置70では、上記放電ランプ10の駆動周波数の変動幅が大きいほど、オーバーシュートOS及びアンダーシュードUSの電流値を相対的に大きくする制御が行われる。これにより、駆動電流の波形や駆動電力等を正確に制御でき、なお且つ、上記放電ランプ10の照度変化によりプロジェクター1の投影画像にちらつきが発生しない範囲で設定を行うことができる。
【0111】
表4は、上記放電ランプ10に供給される駆動電力の大きさと、上記放電ランプ10の駆動モードに応じて設定されるオーバーシュート係数とから求まるオーバーシュート率Zをまとめたものである。
【0112】
【表4】
【0113】
本発明による点灯制御では、上記放電ランプ10に供給される駆動電力の大きさに応じたオーバーシュートOS及びアンダーシュートUSの電流値に、上記放電ランプ10の駆動モードに応じたオーバーシュート係数を乗算した電流値とする制御を行う。
【0114】
すなわち、本発明による点灯制御では、上記放電ランプ10の駆動電力毎に設定された電流値に、駆動モード毎に設定されたオーバーシュート係数を乗算することによって、上記放電ランプ10の駆動電力及び駆動モードに応じたオーバーシュートOS及びアンダーシュードUSの電流値の設定を行う。
【0115】
これにより、上記放電ランプ10に供給される駆動電力の大きさに応じたオーバーシュートOS及びアンダーシュートUSの電流値の調整と、上記放電ランプ10の駆動モードに応じたオーバーシュートOS及びアンダーシュートUSの電流値の調整との両立を図りながら、上述したオーバーシュートOS及びアンダーシュートUSの発生による影響を抑えると共に、上記放電ランプ10の点灯制御を適切に行うことができる。
【0116】
以上のように、本発明による上記放電ランプ10の点灯制御を行うことで、オーバーシュートOS及びアンダーシュートUSの発生によって上記放電ランプ10に黒化やコイル破壊等が発生するリスクと、上記放電ランプ10の照度変化によって投影画像にちらつきが発生するリスクとを回避することが可能である。
【0117】
したがって、上記プロジェクター1では、上述したオーバーシュートOS及びアンダーシュートUSの発生による影響を抑えつつ、上記放電ランプ10の点灯制御を適切に行うことができる放電ランプ点灯装置70を備えることで、更なる品質の向上を図ることが可能である。
【符号の説明】
【0118】
1…プロジェクター 10…放電ランプ(光源) 20…液晶パネル(光変調装置) 30…投射光学系 40…インターフェイス部 50…画像処理部 60…液晶パネル駆動部 70…放電ランプ点灯装置 71…ダウンチョッパー部 72…電力変換部 73…共振回路部 74…電圧検出部 75…点灯検出部 76…制御部 77…駆動部 80…CPU
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8