特許第6252124号(P6252124)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2015.5.11 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6252124
(24)【登録日】2017年12月8日
(45)【発行日】2017年12月27日
(54)【発明の名称】配管用の補強用具
(51)【国際特許分類】
   F16L 57/00 20060101AFI20171218BHJP
   F16L 55/18 20060101ALI20171218BHJP
   F22B 37/10 20060101ALI20171218BHJP
【FI】
   F16L57/00 A
   F16L55/18 Z
   F22B37/10 602Z
【請求項の数】6
【全頁数】11
(21)【出願番号】特願2013-235886(P2013-235886)
(22)【出願日】2013年11月14日
(65)【公開番号】特開2015-94457(P2015-94457A)
(43)【公開日】2015年5月18日
【審査請求日】2016年9月14日
(73)【特許権者】
【識別番号】000211307
【氏名又は名称】中国電力株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110000176
【氏名又は名称】一色国際特許業務法人
(72)【発明者】
【氏名】松村 栄郎
(72)【発明者】
【氏名】西田 秀高
(72)【発明者】
【氏名】森下 啓司
(72)【発明者】
【氏名】荒川 大輔
【審査官】 杉山 豊博
(56)【参考文献】
【文献】 実開昭55−132584(JP,U)
【文献】 特表2013−536381(JP,A)
【文献】 登録実用新案第046727(JP,Z2)
【文献】 登録実用新案第3003137(JP,U)
【文献】 実開平07−025047(JP,U)
【文献】 特開2002−022090(JP,A)
【文献】 特開2015−094458(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
F16L 57/00
F16L 55/18
F22B 37/10
F16L 9/04
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
金属製の配管の外周面に沿って当該配管を周方向に囲繞する状態で配置され、前記配管を補強する配管用の補強用具であって、
前記配管の長手方向に沿うスリットを形成しつつ前記外周面を囲繞する補強部材を有し、
前記補強部材は、前記スリットを形成する2つの端部の一方に、他方の端部側に突出された螺子棒が溶接され
前記他方の端部に、前記螺子棒が挿通される貫通孔が設けられており、
前記貫通孔を貫通した前記螺子棒にナット締め込まれて前記配管に取り付けられることを特徴とする配管用の補強用具。
【請求項2】
前記螺子棒は、突出する先端側に向かって前記外周面との間隔が広がることを特徴とする請求項1に記載の配管用の補強用具。
【請求項3】
金属製の配管の外周面に沿って当該配管を周方向に囲繞する状態で配置され、前記配管を補強する配管用の補強用具であって、
前記配管の長手方向に沿うスリットを形成しつつ前記外周面を囲繞する補強部材を有し、
前記補強部材は、前記スリットを形成する2つの端部の一方に、他方の端部側に突出された螺子棒が設けられ、
前記他方の端部に、前記螺子棒が挿通される貫通孔が設けられており、
前記螺子棒は、前記一方の端部との間に端部補強板が介在され、前記一方の端部に溶接された前記端部補強板に溶接され、
前記貫通孔を貫通した前記螺子棒にナットが締め込まれて前記配管に取り付けられることを特徴とする配管用の補強用具。
【請求項4】
前記端部補強板は、前記螺子棒との接触面積より、前記一方の端部との接触面積の方が広いことを特徴とする請求項3に記載の配管用の補強用具。
【請求項5】
金属製の配管の外周面に沿って当該配管を周方向に囲繞する状態で配置され、前記配管を補強する配管用の補強用具であって、
前記配管の長手方向に沿うスリットを形成しつつ前記外周面を囲繞する補強部材を有し、
前記補強部材は、前記スリットを形成する2つの端部の一方に、他方の端部側に突出された螺子棒が設けられ、
前記他方の端部に、前記螺子棒が挿通される貫通孔が設けられており、
前記貫通孔を貫通した前記螺子棒にナットが締め込まれて前記配管に取り付けられ、
前記他方の端部には、フランジ部材が溶接されており、前記貫通孔は前記端部及び前記フランジ部材を貫通していることを特徴する配管用の補強用具。
【請求項6】
金属製の配管の外周面に沿って当該配管を周方向に囲繞する状態で配置され、前記配管を補強する配管用の補強用具であって、
前記配管の長手方向に沿うスリットを形成しつつ前記外周面を囲繞する補強部材を有し、
前記補強部材は、前記スリットを形成する2つの端部の一方に、他方の端部側に突出された螺子棒が設けられ、
前記他方の端部に、前記螺子棒が挿通される貫通孔が設けられており、
前記貫通孔を貫通した前記螺子棒にナットが締め込まれて前記配管に取り付けられ、
前記螺子棒と前記ナットによる、前記一方の端部と前記他方の端部との接合部と、前記配管の前記外周部との間に生じる空隙には、スペーサーが介在されることを特徴する配管用の補強用具。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、金属製の配管を補強する配管用の補強用具に関する。
【背景技術】
【0002】
金属製の配管としては、例えば、蒸気タービン等の動力として使用され、蒸気温度が300℃から650℃、蒸気圧力が5Mpaから8Mpa程度の高温高圧の動力用蒸気を流す蒸気配管が知られている。このような蒸気配管は、高温高圧とされた動力用蒸気を流しているのでクリープによる劣化が生じる。
【0003】
クリープ劣化に伴う蒸気配管の破壊を防止すべく、この蒸気配管に対する補強が行われる。通常は、蒸気配管の対象部分を切断し、切断箇所に健全な配管を接合する方法が採られている。しかしながら、この方法では、蒸気配管の溶断・溶接作業や熱処理作業が伴うため、作業に手間がかかるという問題がある。そこで、例えば、蒸気配管の対象部分にワイヤーを巻回することで、蒸気配管を補強することが知られている(例えば、特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2011−185403号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
上記のようにワイヤーを巻回することにより蒸気配管を補強する方法おいて、ワイヤーを機械で回巻すると、建屋の梁や蒸気配管を固定している固定金具等が障害となり、ワイヤーをできない場合がある。このため、例えば、手作業でワイヤーを巻回することが考えられるが、手作業により張力をかけつつ巻回するので、繁雑な作業に多大な労力と時間とがかかるという課題がある。
【0006】
本発明は、このような事情に鑑みてなされたものであり、その目的は、配管に容易に且つ短時間で取り付けることが可能な配管用の補強用具を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
前述の目的を達成するため、本発明は、金属製の配管の外周面に沿って当該配管を周方向に囲繞する状態で配置され、前記配管を補強する配管用の補強用具であって、前記配管の長手方向に沿うスリットを形成しつつ前記外周面を囲繞する補強部材を有し、前記補強部材は、前記スリットを形成する2つの端部の一方に、他方の端部側に突出された螺子棒が溶接され、前記他方の端部に、前記螺子棒が挿通される貫通孔が設けられており、前記貫通孔を貫通した前記螺子棒にナット締め込まれて前記配管に取り付けられることを特徴とする配管用の補強用具である。
である。
【0008】
本発明の配管用の補強用具によれば、配管の外周面を囲繞する補強部材においてスリットを形成する2つの端部の一方に突出された螺子棒を、他方の端部に設けられた貫通孔に挿通させてナットを締め込むだけで、配管用の補強用具を容易に且つ短時間で取り付けることが可能である。このとき、螺子棒は、一方の端部に突出されているので、ナットを締め込んだ際に生じる螺子棒の圧縮応力と、補強部材において配管を囲繞する部分に作用する引張応力とは、配管の直径方向においてほぼ同じ位置にて作用する。このため、補強部材に引張応力を効率良く作用させることが可能である。特に、一方の端部においては、螺子棒の圧縮応力と、補強部材に作用する引張応力とがほぼ直線状に作用し、一方の端部及び他方の端部にモーメントが作用し難いので、一方の端部及び他方の端部を小さく形成することが可能である。このため、2つの端部間を接合する接合部を小さく軽量に形成することができるので、配管への負担を低減することが可能である。
【0009】
かかる配管用の補強用具において、前記螺子棒は、突出する先端側に向かって前記外周面との間隔が広がることが望ましい。
このような配管用の補強用具によれば、螺子棒の突出する先端は、補強部材における配管の外周面を囲繞する部分からも間隔が隔てられるので、螺子棒にナットを螺合し易い。このため、作業性に優れた配管用の補強用具を提供することが可能である。
【0010】
また、本発明は、金属製の配管の外周面に沿って当該配管を周方向に囲繞する状態で配置され、前記配管を補強する配管用の補強用具であって、前記配管の長手方向に沿うスリットを形成しつつ前記外周面を囲繞する補強部材を有し、前記補強部材は、前記スリットを形成する2つの端部の一方に、他方の端部側に突出された螺子棒が設けられ、前記他方の端部に、前記螺子棒が挿通される貫通孔が設けられており、前記螺子棒は、前記一方の端部との間に端部補強板が介在され、前記一方の端部に溶接された前記端部補強板に溶接され、前記貫通孔を貫通した前記螺子棒にナットが締め込まれて前記配管に取り付けられることを特徴とする
このような配管用の補強用具によれば、螺子棒は、一方の端部との間に端部補強板が介在されており端部補強板に溶接されているので、補強部材における配管を囲繞する部分は屈曲しやすく、螺子棒が溶接される端部は端部補強板により補強され高い強度を備えることが可能である。このため、配管を囲繞しやすくかつ接合部の強度が高い配管用の補強用具を提供することが可能である。
【0011】
かかる配管用の補強用具においては、前記端部補強板は、前記螺子棒との接触面積より、前記一方の端部との接触面積の方が広いことが望ましい。
このような配管用の補強用具によれば、端部補強板と螺子棒との接触面積より、端部補強板と一方の端部との接触面積の方が広いので、屈曲しやすい部分と繋がった一方の端部に螺子棒を直接溶接するよりも強固に接合された螺子棒を一方の端部から突出させることが可能である。
【0012】
また、本発明は、金属製の配管の外周面に沿って当該配管を周方向に囲繞する状態で配置され、前記配管を補強する配管用の補強用具であって、前記配管の長手方向に沿うスリットを形成しつつ前記外周面を囲繞する補強部材を有し、前記補強部材は、前記スリットを形成する2つの端部の一方に、他方の端部側に突出された螺子棒が設けられ、前記他方の端部に、前記螺子棒が挿通される貫通孔が設けられており、前記貫通孔を貫通した前記螺子棒にナットが締め込まれて前記配管に取り付けられ、前記他方の端部には、フランジ部材が溶接されており、前記貫通孔は前記端部及び前記フランジ部材を貫通していることを特徴とする
このような配管用の補強用具によれば、他方の端部にフランジ部材が溶接されているので、一方の端部側と共に接合部をなす他方の端部側に高い強度を備えることが可能である。また、他方の端部とフランジ部材とを貫通する貫通孔に、一方の端部から突出された螺子棒を挿通させてナットを締め込むことにより、確実に引張力を作用させることが可能である。
【0013】
更に本発明は、金属製の配管の外周面に沿って当該配管を周方向に囲繞する状態で配置され、前記配管を補強する配管用の補強用具であって、前記配管の長手方向に沿うスリットを形成しつつ前記外周面を囲繞する補強部材を有し、前記補強部材は、前記スリットを形成する2つの端部の一方に、他方の端部側に突出された螺子棒が設けられ、前記他方の端部に、前記螺子棒が挿通される貫通孔が設けられており、前記貫通孔を貫通した前記螺子棒にナットを締め込んで前記配管に取り付け、前記螺子棒と前記ナットによる、前記一方の端部と前記他方の端部との接合部と、前記配管の前記外周部との間に生じる空隙には、スペーサーが介在されることを特徴とする
このような配管用の補強用具によれば、一方の端部と他方の端部との接合部は、特に配管の直径が小さい場合には、配管の外周部との間に生じる空隙が大きくなるので、配管の外周部との間に生じる空隙にスペーサーを介在させることにより、ナットが螺子棒に締め込まれても2つの端部が適切に接合された状態を維持する可能である。このため、螺子棒ナットを締め込むことにより螺子棒及び一方の端部に沿って生じる圧縮応力を囲繞部の引張応力として効率良く作用させることが可能である。
【発明の効果】
【0014】
本発明によれば、配管に容易に且つ短時間で取り付けることが可能な配管用の補強用具を提供することが可能である。
【図面の簡単な説明】
【0015】
図1】本発明の一実施形態に係る補強用具10で補強された蒸気配管Xの構成を説明する斜視図である。
図2】本発明の一実施形態に係る補強用具10で補強された蒸気配管Xの構成を説明する断面図である。
図3】補強部材を2つの部材にて形成した補強用具を説明する断面図である。
図4】ヒンジを備えた補強部材を有する補強用具を説明する断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0016】
以下、本発明の実施形態について、金属製の配管として蒸気配管を例に挙げて説明する。図1は、本発明の一実施形態に係る補強用具10で補強された蒸気配管Xの構成を説明する斜視図である。図2は、本発明の一実施形態に係る補強用具10で補強された蒸気配管Xの構成を説明する断面図である。尚、図1においては、3つの補強用具10を示しているが、各補強用具の構成部位・部材の符号は1つの補強用具のみに付し、他の補強用具では省略している。
【0017】
図1図2に示すように蒸気配管Xは円筒状をなし、内部空間に動力用蒸気(蒸気温度=300℃〜650℃、蒸気圧力=5Mpa〜8Mpa)を長期間に亘って流すものであり、この動力用蒸気によってクリープが生じるものである。高温高圧の蒸気を流すことから、蒸気配管Xは、フェライト系クロム鋼(例えば9Cr〜12Cr)で形成されている。
【0018】
蒸気配管Xの直径は、用途によって様々であるが、例えば200mm以上1000mm以下の範囲に定められる。また蒸気配管Xの肉厚txは40mm以上70mm以下の範囲に定められる。なお、蒸気配管Xの直径や肉厚は、動力用蒸気の温度、圧力、流量、及び、流速といった諸条件を加味して定められる。
【0019】
本実施形態における補強対象部分は、蒸気配管Xのほぼ直線状をなす直管部分である。このような蒸気配管Xの直管部分は、所定の長さに形成された複数の配管部材1が、長手方向における互いの端部Xaが突き合わせられて溶接されて数百メートルにもおよぶ長さを有している。
【0020】
蒸気配管Xの直管部分には、蒸気配管Xのクリープ強度を補強する複数の補強用具10が蒸気配管Xの長手方向において互いに隣接するように取り付けられている。補強用具10は、蒸気配管Xの長手方向に沿って所定長さを有し蒸気配管Xを周方向に囲繞する状態で配置され、蒸気配管Xを囲繞する囲繞部12を有する補強部材11と、補強部材11を蒸気配管Xに取り付けるためのナット19と、補強部材11のナット19による接合部と蒸気配管Xとの間に形成される空隙に設けられるスペーサー25とを有している。この補強用具10は蒸気配管Xの長さに合わせて複数用いられる。
【0021】
補強部材11は、蒸気配管Xの外周面Xbを囲繞する部分をなし、ほぼ円弧状に湾曲した囲繞部12と、囲繞部12と繋がって蒸気配管Xの長手方向に沿うスリット11aを形成する2つの端部となる平板部13、14とを有している。補強部材11は、蒸気配管Xを囲繞した状態で、一方の平板部13の先端13aを延長した先に、他方の平板部14の蒸気配管X側の面14aが位置するように形成されている。すなわち、補強部材11が蒸気配管Xを囲繞した状態で、一方の平板部13の先端13aと、他方の平板部14の蒸気配管X側の面14aとは互いに間隔を隔てるとともに、一方の平板部13を延長した線と他方の平板部14とが交差している。ここで、一方の平板部13の先端13aと、他方の平板部14の蒸気配管X側の面14aとが互いに間隔を隔てた隙間がスリット11aをなしている。
【0022】
2つの平板部13、14のうちの一方の平板部13には、その外周側の面13bに溶接された端部補強板17と、端部補強板17の一方の平板部13と反対側の面17aに溶接された螺子棒18と、を有している。
【0023】
端部補強板17は、一方の平板部13とほぼ同じ大きさを有する矩形状の鋼板でなり、その外周縁部の全周が一方の平板部13の外周側の面13bに溶接されている。
【0024】
螺子棒18は、外周面に螺子溝が形成された丸棒状の部材であり、端部補強板17において蒸気配管Xの反対側となる面13bに、当該端部補強板17に沿って他方の平板部14の蒸気配管X側の面14aに向かうように突出させて複数(本実施形態では3本)溶接されている。
【0025】
他方の平板部14は、その外周側の面14bに溶接された、鋼製のブロック材でなるフランジ部材15とともにフランジ部16をなしている。フランジ部材15及び他方の平板部14には、一方の平板部13から突出された螺子棒18が挿通される貫通孔16aが、フランジ部材15及び他方の平板部14を貫通するように設けられている。フランジ部材15の、一方の平板部13と反対側は、貫通孔16aが貫通する方向と直交する平面15aが形成されており、螺子棒18に螺合されたナット19が当接され、このナット19を締め込むことにより螺子棒18がよりフランジ部16側に引っ張られるように構成されている。
【0026】
スペーサー25は、2つの平板部13、14の接合部と蒸気配管Xの外周面Xbとの間に介在される金属製のブロック状の部材である。これは、蒸気配管Xの直径が小さい場合に、2つの平板部13、14間を接合する接合部と蒸気配管Xの外周面Xbとの間に空隙が生じ、ナット19を締め込むことにより、接合部が蒸気配管X側に移動するように補強部材11が変形してしまうおそれがある。このため、図1、2に示すように、空隙を埋めるように介在されるが、蒸気配管Xの直径が大きい場合など、2つの平板部13、14間を接合する接合部と蒸気配管Xの外周面Xbとの間に空隙が生じない、または、空隙が小さい場合には、スペーサー25は、必ずしも設けなくともよい。
【0027】
囲繞部12、2つの平板部13、14、端部補強板17、フランジ部材15、及び、スペーサー25を形成する鋼材は、蒸気配管Xの素材(フェライト系クロム鋼)よりもクリープ強度の大きい素材によって形成されている。例えば、ステンレス鋼、ニッケル合金、コバルト合金、高クロム鋼が用いられる。このように、囲繞部12、2つの平板部13、14、端部補強板17、フランジ部材15、及び、スペーサー25を形成する鋼材の素材を、蒸気配管Xの素材よりもクリープ強度の大きい素材とすることにより、蒸気配管Xに対する補強強度を高めている。
【0028】
囲繞部12及び平板部13、14を形成する鋼板の板厚taは、蒸気配管Xの肉厚txよりも薄くなるように定められている。例えば、蒸気配管Xが肉厚40mmの9クロム鋼で作製され、補強部材11がオーステナイト系ステンレス鋼(例えばSUS304)で作製されている場合、鋼板の板厚taは5mm以上15mm以下の範囲に定められる。すなわち、鋼板の板厚taは、蒸気配管Xの肉厚txの1/8〜3/8程度に定められる。
【0029】
また、フランジ部16を貫通する螺子棒18、及び、螺子棒18に螺合されるナット19は、補強部材11と同様に蒸気配管Xの素材よりもクリープ強度の大きい素材にて形成されている。本実施形態では、補強部材11と同じ素材、例えばSUS304などのステンレス鋼で形成されている。
【0030】
本実施形態の補強用具10の取り付け方法は、まず、螺子棒18が貫通孔16aに挿通されていない状態で、補強部材11の螺子棒18の先端18aとフランジ部16との間隔を広げ、蒸気配管Xに対してほぼ平行に近づけ、広げた螺子棒18の先端18aとフランジ部16との間から蒸気配管Xを囲繞部12内に収容する。このとき、蒸気配管Xを囲繞部12内に収容した後には、螺子棒18がフランジ部16の貫通孔16aに挿通され、一方の平板部13の先端13aと他方の平板部14の蒸気配管X側の面14aとは、互いに間隔sを隔てて対向している。また、2つの平板部13、14が螺子棒18とナット19とにより接合された接合部と蒸気配管Xの外周面Xbとの間にスペーサー25を介在させる。
【0031】
次に、フランジ部16の貫通孔16aに挿通された螺子棒18にナット19を螺合する。すなわち、補強部材11の一方の平板部13に設けられた螺子棒18を、他方の平板部14側のフランジ部16に設けられた貫通孔16aに挿通させ、挿通した螺子棒18の先端18aからナット19を螺合し、フランジ部16の、貫通孔16aの貫通方向と直交する平面15aにナット19を当接させて2つの平板部13、14を結合する。
【0032】
螺子棒18に螺合されたナット19を締め込むことにより、螺子棒18が溶接されている補強部材11の一方の平板部13側が、フランジ部16側に引き寄せられ、囲繞部12には引張応力が生じ、この引張応力が蒸気配管Xの膨張を抑える方向に作用する。蒸気配管Xに作用し囲繞部12に生じる引張応力は、ナット19の締め込み具合により変化させることができる。
【0033】
本実施形態の蒸気配管X用の補強用具10によれば、蒸気配管Xの外周面Xbを囲繞する補強部材11にてスリット11aを形成する2つの平板部13、14の一方の平板部13に突出された螺子棒18を、他方の平板部14側のフランジ部16の貫通孔16aに挿通させ、ナット19を螺合するだけで、蒸気配管X用の補強用具10を容易に且つ短時間で取り付けることが可能である。
【0034】
また、他方の平板部14側のフランジ部16に設けられた貫通孔16aに、一方の平板部13から突出された螺子棒18を挿通させてナット19を締め込むことにより、確実に引張力を作用させることが可能である。このとき、螺子棒18は、一方の平板部13及び端部補強板17に沿って突出されているので、ナット19を締め込んだ際に生じる螺子棒18の圧縮応力と、囲繞部12に作用する引張応力とは、蒸気配管Xの直径方向においてほぼ同じ位置にて作用する。このため、引張応力を囲繞部12に効率良く作用させることが可能である。特に、一方の平板部13においては、螺子棒18の圧縮応力と、囲繞部12に作用する引張応力とがほぼ直線状に作用し、一方の平板部13及び螺子棒18を受けるフランジ部16にモーメントが作用し難いので、一方の平板部13及びフランジ部16を小さく形成することが可能である。このため、2つの平板部13、14間を接合する接合部を小さく軽量に形成することができるので、蒸気配管Xへの負担を低減することが可能である。
【0035】
また、螺子棒18の先端18aは蒸気配管Xの外周面Xbを囲繞する囲繞部12からも間隔が隔てられているので、ナット19を螺合し易い。このため、作業性に優れた蒸気配管X用の補強用具10を提供することが可能である。
【0036】
また、螺子棒18は、一方の平板部13との間に端部補強板17が介在されており、端部補強板17に溶接されているので、蒸気配管Xを囲繞する囲繞部12は屈曲しやすく、囲繞部12と繋がって螺子棒18が溶接される平板部13は端部補強板17により補強され高い強度を備えることが可能である。このため、蒸気配管Xを囲繞しやすくかつ接合部の強度が高い蒸気配管X用の補強用具10を提供することが可能である。
【0037】
このとき、端部補強板17と螺子棒18との接触面積より、端部補強板17と一方の平板部13との接触面積の方が広いので、屈曲しやすい囲繞部12と繋がった一方の平板部13に螺子棒18を直接溶接するよりも強固に一方の平板部13から螺子棒18を突出させることが可能である。
【0038】
また、囲繞部12と繋がった他方の平板部14にフランジ部材15が溶接されているので、高い強度を備えたフランジ部16を容易に製造することが可能である。たとえば、平板部とフランジ部材とが一体をなすフランジ部を備える場合には、フランジ部の厚みを有する材料から削り出す等の加工を必要とするため、多大な時間とコストとがかかるが、本願のように、他方の平板部14とフランジ部材15とを溶接してフランジ部16を形成することにより、製造が容易で安価な蒸気配管X用の補強用具10を提供することが可能である。
【0039】
また、2つの平板部13、14間を接合する接合部と蒸気配管Xの外周面Xbとの間に生じる空隙を埋めるようなスペーサー25を介在させたので、補強部材11が変形が抑えられ、ナット19を締め込むことにより生じる圧縮応力を効率良く補強部材11の引張応力として作用させることが可能である。
【0040】
図3は、補強部材を2つの部材にて形成した補強用具を説明する断面図である。
上記実施形態においては、2つの平板部13、14間を接合する接合部を、蒸気配管Xの周方向において1カ所に設けた例について説明したが、図3に示すように、例えば蒸気配管Xの直径方向における反対側に位置させて2カ所に設ける、或いは、蒸気配管Xの周方向において複数カ所に設けてもよい。図3に示すように、2つの補強部材20を用いる場合には、蒸気配管Xの両側から挟むように取り付けることが可能なので、直径の大きな蒸気配管Xであっても取り付けが容易である。
【0041】
図4は、ヒンジを備えた補強部材を有する補強用具を説明する断面図である。
また、図4に示すように、例えば、囲繞部21が、蒸気配管Xの長手方向に沿って分割され、補強部材22が2つの湾曲部材22aにて形成され、分割された端部同士がヒンジ23を構成して回動自在に連結されていてもよい。この場合には、直径の大きな蒸気配管Xであっても補強用具24を容易に取り付けることが可能であるとともに、補強部材22はヒンジ23により2つの湾曲部材22aが繋がっているので、より取り付けが容易である。このとき、ヒンジ23の位置を、蒸気配管Xの直径方向において反対側に配置すると、2つの平板部13、14間をより広く広げることが可能である。
【0042】
上記実施形態においては、一方の平板部13に溶接された端部補強板17の、一方の平板部13と反対側の面17aに、他方の平板部14の蒸気配管X側の面14aに向かうように突出させて螺子棒18が溶接されている例について説明したが、これに限るものではない。例えば、他方の平板部14の蒸気配管X側の面14aに向かって突出する螺子棒が一体に設けられた端部補強板が、補強部材の一方の平板部に溶接されていても構わない。
【0043】
上記実施形態においては、端部補強板17及びフランジ部材15を、囲繞部12及び平板部13、14を形成する鋼板と同じステンレス鋼とした例について説明したが、ステンレス鋼は重量が大きく蒸気配管Xへの負担が大きくなる。このため、端部補強板及びフランジ部材を高靱性(破壊靱性値6.0MPa√m以上)、高耐熱衝撃性(500℃以上)、高い3点曲げ強さ(400MPa以上)を備えたセラミック、例えば、チッ化珪素系セラミックス(例えば、サイアロン)またはセラミックマトリックス複合材料(Ceramic・Matrix・Composites:CMC)にて形成しても良い。
【0044】
セラミック製の端部補強板及びフランジ部材を用いる場合には、ナットの締め込み等により損傷するおそれがあるので、例えばステンレス鋼製の保護部材にて保護することが望ましい。
【0045】
また、配管は、動力用蒸気を流すものに限られない。動力用蒸気と同程度の高温高圧の蒸気を流す蒸気配管Xであってクリープ劣化を受けるものであれば、本発明を適用できる。また、上記実施形態においては、蒸気配管Xの直管部分に補強用具10を取り付けた例について説明したが、蒸気配管Xの屈曲部分であっても、その屈曲部に合わせて補強用具10の長さを変更すれば取り付けることが可能である。
【符号の説明】
【0046】
1 配管部材、10 補強用具、11 補強部材、11a スリット、12 囲繞部、13 一方の平板部、13a 一方の平板部の先端、
13b 一方の平板部における蒸気配管の反対側となる面、14 延出フランジ部、
14a 他方の平板部の蒸気配管側の面、
14b 他方の平板部における一方の平板部とは反対側の面、15 フランジ部材、
15a 平面、16 フランジ部、16a 貫通孔、17 端部補強板、
17a 端部補強板の一方の平板部と反対側の面、18 螺子棒、
18a 螺子棒の先端、19 ナット、20 補強部材、21 囲繞部、
22 補強部材、22a 湾曲部材、23 ヒンジ、24 補強用具、
25 スペーサー、
s フランジの間隔、X 蒸気配管、Xa 蒸気配管の端部、Xb 蒸気配管の外周面、
ta 鋼板の板厚、tx 蒸気配管の肉厚
図1
図2
図3
図4