(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【発明を実施するための形態】
【0011】
本明細書及び添付図面の記載により、少なくとも次のことが明らかにされる。
【0012】
荷物を載置した状態で水平搬送手段により水平搬送されて、ラック倉庫に収納されるパレットであって、
前記水平搬送手段によりリフトされる台部と、
前記台部の上方に備えられ、前記荷物を載置する床部と、
前記床部と前記台部との間に設けられた免震層であって、前記台部と前記床部との間隔を保持する間隔保持機構と、粘弾性体と、を備える免震層と、
を有することを特徴とするパレット。
かかる場合には、地震がラック倉庫へ与える悪影響を適切に抑えることが可能となる。
【0013】
また、前記間隔保持機構は、
前記間隔を保持しつつ、前記床部を前記台部に対し水平方向に相対移動させるためのスライド機構であり、
該スライド機構は、前記床部を前記台部に対して相対移動させることにより、前記床部と前記台部との間に設けられた前記粘弾性体をせん断変形させることとしてもよい。
かかる場合には、地震がラック倉庫へ与える悪影響をより適切に抑えることが可能となる。
【0014】
また、前記スライド機構は、
長手方向が所定方向に沿うように前記台部に設けられた下側ガイドレールと、
長手方向が前記所定方向と直交する直交方向に沿うように前記床部に設けられた上側ガイドレールと、
前記下側ガイドレールと前記上側ガイドレールとの間に位置し、前記下側ガイドレールと前記上側ガイドレールの双方に嵌合する嵌合部材であって、前記下側ガイドレール上を該嵌合部材が前記所定方向に移動できるように、かつ、該嵌合部材上を前記上側ガイドレールが前記直交方向に移動できるように設けられた嵌合部材と、
を有することとしてもよい。
かかる場合には、地震による振動の方向がどの方向であっても、台部の振動が床部及び床部上の荷物へ伝わることを抑制することができる。
【0015】
また、前記スライド機構が、3つ以上設けられていることとしてもよい。
かかる場合には、スライド機構が安定して床部を支持する構成を容易に構築することが可能となる。
【0016】
また、前記スライド機構が、3つ設けられており、
前記床部の前記台部に対する相対移動が発生していない定常状態において、3つの前記嵌合部材が一直線上に並ばないように、前記スライド機構が配置されていることとしてもよい。
かかる場合には、スライド機構が安定して床部を支持する構成を容易に構築することが可能となる。
【0017】
また、前記パレットが前記ラック倉庫に収納されている際には、前記床部の前記台部に対する水平方向の相対移動を許容し、前記パレットが前記水平搬送手段により水平搬送される際には、前記相対移動を規制するロック機構を有することとしてもよい。
かかる場合には、パレットにおける床部の台部に対する相対移動を必要なときのみ許容することができる。
【0018】
===自動ラック倉庫10について===
図1は、本実施の形態に係る自動ラック倉庫10の概略正面図である。
図2は、本実施の形態に係る自動ラック倉庫10の概略側面図である。なお、
図2は、
図1を白矢印の方向から見たときの図となっている。また、
図1及び
図2には、便宜上、ラック12の最上部以外に荷物が収納されていない状態の自動ラック倉庫10を表している。
【0019】
ラック倉庫の一例としての自動ラック倉庫10は、ラック12と、水平搬送手段の一例としてのスタッカークレーン(不図示)と、を有している。
【0020】
ラック12は、荷物25(換言すれば、荷物25が載置されたパレット26である収納物24)を収納するためのものである。このラック12は、例えば、形鋼や鋼管材などによる鉄骨構造によって構成されている。また、本実施の形態に係るラック12は、所謂ユニット式のラックであり、倉庫床面上で自立している。
【0021】
ラック12は、
図1及び
図2に示すように、鉛直方向に延びたラック支柱14と水平方向に延びた腕木16とにより、複数個の収納部18(碁盤目状に区画された部屋)を形成している。なお、ラック支柱14及び腕木16の間には、適切な剛性を維持するためのブレース部材20が配設されている。
【0022】
また、ラック12は、複数個のラックユニット21から構成されている。これらのラックユニット21は、
図1における左右方向(後述する出し入れ方向)において並んでいる。そして、隣り合うラックユニット21は、頂部をつなぎ材13で連結されており、隣り合うラックユニット21の間には、スタッカークレーンの移動路を確保するためのスペース5が設けられている。スタッカークレーンは、前記スペース5内を、鉛直方向及び奥行方向(
図2参照)に沿って移動する。そして、複数の収納部18のうちの一に対向する位置で静止して、収納物24(荷物25、パレット26)を水平搬送(水平方向に搬送)する。すなわち、スタッカークレーンは、複数の収納部18のうちの一に対向する位置で静止して、収納物24を出し入れ方向(
図1参照。
図2においては、紙面を貫く方向)に沿って当該収納部18から出したり、当該収納部18へ入れたり(収納したり)する。
【0023】
また、
図2に示すように、各々のラックユニット21においては、奥行方向において、複数(本実施の形態においては6つ)の収納部18が並んでいる(つまり、奥行方向に複数の列が存在する。一方で、出し入れ方向においては、一つのみの収納部18があるだけである)。したがって、ラックユニット21は、奥行方向において長く出し入れ方向において短い形状を有している。
【0024】
また、収納物24は、収納部18に収納されるものである。この収納物24は、荷物25とパレット26を備える。つまり、収納物24は、パレット26に荷物25が載置されたものである。荷物25は、荷物25とパレット26とが接触した状態で、パレット26によって支持されている。次項において、パレット26について詳細に説明する。
【0025】
===パレット26について===
図3は、本実施の形態に係るパレット26の概略側面図である。
図4は、本実施の形態に係るパレット26の概略正面図である。
図5は、本実施の形態に係るパレット26の概略平面図である。
図6は、上側テーブル40が、台部30(下側テーブル32)に対し水平方向に移動する様子を示したイメージ図である。
図7は、スライド機構52を説明するための説明概念図である。
図8は、
図7のスライド機構52をX方向及びY方向から見たときの説明概念図であり、
図8の上図が、
図7のスライド機構52をX方向から見たときの図であり、
図8の下図が、
図7のスライド機構52をY方向から見たときの図である。
図9は、ロック機構60の動作原理を説明するための説明概念図である。
【0026】
なお、
図3は、
図5のA矢視図である。また、
図4は、
図5のB矢視図である。また、
図5は、
図3、
図4のC矢視図である。また、
図3、
図4、
図6、
図9においては、便宜上、スライド機構52と粘弾性体56の図示を省略している。
【0027】
前述したとおり、本実施の形態に係るパレット26は、荷物25を載置するためのものである。そして、荷物25を載置した状態でスタッカークレーンにより水平搬送されて、自動ラック倉庫10(のラック12)に収納される。
【0028】
また、ラック12に収納されたパレット26は、腕木16によって支持される。すなわち、荷物25を載置したパレット26は、腕木16上に位置している。
【0029】
パレット26は、台部30と、床部の一例としての上側テーブル40と、免震層50と、ロック機構60と、を有している。
【0030】
台部30は、
図5に示すように、上方から見たときに矩形状(本実施の形態においては、正方形状)を有し、後述する上側テーブル40を下方から支持する台としての機能を備える。また、台部30は、スタッカークレーンによりリフトされる部材としての役割も果たしている。
【0031】
この台部30は、下側テーブル32と、下側テーブル32を支持するための下側テーブル支持部材34と、を備えている。なお、この下側テーブル32と下側テーブル支持部材34は、一体的に設けられている(一体化されている)。
【0032】
下側テーブル32は、
図5に示すように、上方から見たときに矩形状(本実施の形態においては、正方形状)を有する板部材(薄板状の部材)であり、
図3に示すように、後述する免震層50を介して、上側テーブル40を支持している。本実施の形態に係る下側テーブル32は金属製である。
【0033】
下側テーブル支持部材34も、
図5に示すように、上方から見たときに矩形状(本実施の形態においては、正方形状)を有しているが、その正方形状の一辺の長さは、下側テーブル32の一辺の長さよりも若干大きくなっている。また、
図3に示すように、下側テーブル支持部材34の鉛直方向における厚みは、下側テーブル32の当該厚みよりも大きくなっている。なお、本実施の形態に係る下側テーブル支持部材34は金属製である。
【0034】
また、下側テーブル支持部材34には、フォークリフトによりパレット26(収納物24)が搬送される際に、フォークリフトの差し込み部が差し込まれる穴部34aが設けられている。つまり、フォークリフトの差し込み部が当該穴部34aに差し込まれた状態で、フォークリフトは、荷物25を載置した状態のパレット26、つまり、収納物24を搬送する。
【0035】
また、下側テーブル支持部材34は、パレット26(収納物24)がラック12に収納される際に、腕木16に接触する部材である。すなわち、パレット26(収納物24)がラック12に収納されると、下側テーブル支持部材34の下面34bが腕木16に接触した状態で、パレット26(収納物24)が腕木16によって支持されることとなる。
【0036】
また、下側テーブル支持部材34の内部には、後述するロック機構60が設けられている。
【0037】
上側テーブル40は、荷物25を載置するためのものである。すなわち、荷物25は上側テーブル40の上に置かれ、上側テーブル40は、荷物25と接触した状態で荷物25を支持する。
【0038】
上側テーブル40も、
図5に示すように、上方から見たときに矩形状(本実施の形態においては、正方形状)を有する板部材(薄板状の部材)である。この上側テーブル40のサイズ(すなわち、正方形状の一辺の長さ及び厚み)は、下側テーブル32のサイズと同じとなるように設定されている。なお、本実施の形態に係る上側テーブル40は金属製である。
【0039】
また、上側テーブル40は、
図3に示すように、台部30(下側テーブル32)の上方に備えられ、台部30(下側テーブル32)に対し、水平方向に相対移動(移動)することができるようになっている(
図6参照)。
【0040】
なお、当該上側テーブル40は、矩形状(正方形状)を有しているため、四つの側面(第一側面40a、第二側面40b、第三側面40c、第四側面40dと呼ぶ)と、四隅と、を有している。そして、四つの側面の各々の側方位置には、後述するロック機構60のストッパー部材66が位置するようになっている(後に詳述する)。
【0041】
免震層50は、地震による振動を荷物25に伝えにくくし、荷物25への地震動入力を低減するためのものである。この免震層50は、上側テーブル40と台部30(下側テーブル32)との間に設けられており、台部30(下側テーブル32)の振動(換言すれば、ラック12の振動)が上側テーブル40及び上側テーブル40上の荷物25へ伝わることを抑制する役割を果たす。
【0042】
免震層50は、スライド機構52(間隔保持機構に相当)と、粘弾性体56と、を有している。
【0043】
スライド機構52は、上側テーブル40を支持して上側テーブル40と台部30(下側テーブル32)との間隔を保持しつつ、上側テーブル40を台部30(下側テーブル32)に対し水平方向に相対移動(移動)させるためのものである。
【0044】
このスライド機構52は、下側ガイドレール53と、上側ガイドレール54と、嵌合部材55と、を備えている。
【0045】
下側ガイドレール53は、下側テーブル32の上面に設けられている(固定されている)ガイドレールである。この下側ガイドレール53は、
図5及び
図7に示すように、X方向(所定方向に相当。本実施の形態においては、正方形状を有する上側テーブル40や下側テーブル32の一方の対角線の方向)に沿って延びる長尺状の部材である。すなわち、下側ガイドレール53は、その長手方向がX方向に沿うように、下側テーブル32に取り付けられている。
【0046】
上側ガイドレール54は、上側テーブル40の下面に設けられている(固定されている)ガイドレールである。この下側ガイドレール53は、
図5及び
図7に示すように、Y方向(直交方向に相当。本実施の形態においては、正方形状を有する上側テーブル40や下側テーブル32の他方の対角線(つまり、前記一方の対角線に直交する対角線)の方向)に沿って延びる長尺状の部材である。すなわち、上側ガイドレール54は、その長手方向がX方向と直交するY方向に沿うように、上側テーブル40に取り付けられている。
【0047】
嵌合部材55は、鉛直方向において下側ガイドレール53と上側ガイドレール54の間に位置し、下側ガイドレール53と上側ガイドレール54の双方に嵌合する部材である。この嵌合部材55は、
図5に示すように、上方から見たときに矩形状(本実施の形態においては、正方形状)を有する板部材であり、
図7及び
図8に示すように、下面と上面にそれぞれ溝(以下、下面溝55a、上面溝55bと呼ぶ)を備えている。
【0048】
下面溝55aは、その長手方向がX方向に沿う溝であり、
図8に示すように、下側ガイドレール53に嵌合している。そして、嵌合部材55は、下側ガイドレール53上を殆ど摩擦が無い状態でX方向に移動できるようになっている。なお、嵌合部材55が下側ガイドレール53上をX方向に移動する際には、
図8から明らかなとおり、嵌合部材55と上側ガイドレール54とが一体的に移動することとなり、上側ガイドレール54は上側テーブル40に固定されているため、上側テーブル40がX方向に移動することとなる。
【0049】
また、上面溝55bは、その長手方向がY方向に沿う溝であり、
図8に示すように、上側ガイドレール54に嵌合している。そして、上側ガイドレール54は、嵌合部材55(の上面溝55b)上を殆ど摩擦が無い状態でY方向に移動できるようになっている。なお、上側ガイドレール54が嵌合部材55(の上面溝55b)上をY方向に移動する際には、上側ガイドレール54は上側テーブル40に固定されているため、上側テーブル40がY方向に移動することとなる。
【0050】
このように、スライド機構52の作用により、上側テーブル40は台部30(下側テーブル32)に対しX方向及びY方向の双方に殆ど摩擦が無い状態でスムーズに移動することができるようになっている。すなわち、スライド機構52は、
図6に示すように、上側テーブル40を任意の方向に殆ど摩擦が無い状態でスムーズに移動(スライド)させることができるようになっている。そして、このことにより、地震による振動の方向がどの方向であっても、台部30(下側テーブル32)の振動が上側テーブル40及び上側テーブル40上の荷物25へ伝わることを抑制することが可能となっている。
【0051】
また、下側ガイドレール53と上側ガイドレール54と嵌合部材55の鉛直方向における位置(高さ)は変わらないため、スライド機構52は、上側テーブル40と台部30(下側テーブル32)との間隔を保持する役割も果たしている。
【0052】
そして、本実施の形態に係るパレット26において、上述したような下側ガイドレール53と上側ガイドレール54と嵌合部材55を有するスライド機構52は、3つ以上設けられている。より具体的には、当該スライド機構52は、4つ(第一スライド機構52a、第二スライド機構52b、第三スライド機構52c、第四スライド機構52dと呼ぶ)備えられている。4つのスライド機構52の各々は、
図5に示すように、正方形状を有する上側テーブル40や下側テーブル32の四隅に対応する位置に設けられている。
【0053】
粘弾性体56は、上側テーブル40と台部30(下側テーブル32)との間に設けられたバネ性と減衰性を備えた部材である。この粘弾性体56は、スライド機構52の作用により台部30(下側テーブル32)に対し移動した上側テーブル40を元の位置に戻す機能(前記バネ性による復元作用)と、エネルギー吸収により振動を低減する機能(前記減衰性による減衰作用)と、を有している。
【0054】
すなわち、スライド機構52は、上側テーブル40を台部30(下側テーブル32)に対し相対移動させることにより、上側テーブル40と台部30(下側テーブル32)との間に設けられた粘弾性体56をせん断変形させ、このことにより、粘弾性体56が、振動を低減させる。そして、振動が低減した際には、粘弾性体56の復元作用により、上側テーブル40は元の位置(下側テーブル32の真上の位置)に戻ることとなる。
【0055】
また、粘弾性体56は、上側テーブル40と台部30(下側テーブル32)との間に挟まれた状態で、上側テーブル40と下側テーブル32の双方に固定されている。そして、本実施の形態に係るパレット26においては、粘弾性体56が、4つ備えられている。4つの粘弾性体56の各々は、
図5に示すように、水平方向において、第一スライド機構52aと第二スライド機構52bとの間、第二スライド機構52bと第三スライド機構52cとの間、第三スライド機構52cと第四スライド機構52dとの間、第四スライド機構52dと第一スライド機構52aとの間に、それぞれ設けられている。
【0056】
また、当該粘弾性体56の具体例としては、住友スリーエム製のVEMを挙げることができる。
【0057】
ロック機構60は、パレット26がスタッカークレーンにより水平搬送される際に、上側テーブル40の台部30(下側テーブル32)に対する水平方向の相対移動(移動)を規制する(相対移動が行われないようにする)ためのものである。一方で、当該ロック機構60は、パレット26が自動ラック倉庫10に収納されている際には、前記相対移動(移動)を許容する。
【0058】
このロック機構60は、下側テーブル支持部材34の内部に備えられ、
図9に示すように、接触部材62と、傾き部材64と、ストッパー部材66と、支持部68と、を備えている。なお、
図9の上図は、パレット26が自動ラック倉庫10(ラック12)の収納部18に収納されているときの様子を示した図であり、
図9の下図は、収納部18に収納されていないとき(例えば、パレット26がスタッカークレーンにより搬送されるとき)の様子を示した図である。
【0059】
接触部材62(
図5においては、黒丸で表している)は、自動ラック倉庫10の腕木16と接触する部材である。換言すれば、接触部材62は、パレット26が自動ラック倉庫10(ラック12)の収納部18に収納された際に、腕木16と接触する(下側テーブル支持部材34内の)位置に配置されている(
図5参照)。接触部材62は、その長手方向が鉛直方向に沿った棒状(長尺状)の部材であり、上下方向に移動可能となっている。
【0060】
接触部材62は、パレット26が自動ラック倉庫10(ラック12)の収納部18に収納されて腕木16と接触すると、上方へ移動するようになっている。すなわち、収納部18に収納されていないとき(例えば、パレット26がスタッカークレーンにより搬送されるとき)に下側位置(
図9の下図参照)に位置していた接触部材62の位置は、腕木16との接触によって、上側位置(
図9の上図参照)へ移行する。
【0061】
傾き部材64は、棒状(長尺状)の部材であり、
図9に示すように、その一端部にヒンジにより接触部材62(の上端部)が連結され、他端部に後述するストッパー部材66(の下端部)が一体的に連結されている。
【0062】
傾き部材64は、接触部材62が腕木16と接触して上方へ移動すると、前記一端部が上がって、傾くようになっている。この際に、前記他端部は下がり、その結果、ストッパー部材66は、下がることとなる。すなわち、パレット26が収納部18に収納されていないとき(例えば、パレット26がスタッカークレーンにより搬送されるとき)に略水平状態(
図9の下図参照)であった接触部材62は、接触部材62の上方への移動によって、傾いた傾き状態(
図9の上図参照)へ移行する。
【0063】
なお、傾き部材64は、支持部68により支持されている。すなわち、前述した通り、傾き部材64はシーソーに類似した動きを行うため、傾き部材64の長手方向中央部が支持部68により支えられている(当該長手方向中央部が支点となっている)。
【0064】
ストッパー部材66(
図5においては、白丸で表している)は、パレット26がスタッカークレーンにより水平搬送される際には、上側テーブル40を係止する係止位置(具体的には、上側テーブル40の側方位置)に位置して上側テーブル40の前記相対移動を規制する。一方で、パレット26が自動ラック倉庫10に収納される際には、接触部材62の腕木16への接触動作に連動して上側テーブル40を係止する係止位置(具体的には、上側テーブル40の側方位置)から退避して前記相対移動を許容する。
【0065】
すなわち、パレット26がスタッカークレーンにより搬送されるとき等のパレット26が収納部18に収納されていないときには、接触部材62は腕木16と接触しておらず、傾き部材64が水平状態を維持している。そして、かかる際に、ストッパー部材66は、
図9の下図に示すように、上側テーブル40の係止位置(側方位置)に位置しており、上側テーブル40の前記相対移動を規制する役割を果たす。すなわち、この状態においては、ストッパー部材66の最上端66aよりも下方に上側テーブル40が位置するために、ストッパー部材66が上側テーブル40に水平方向に接触して前記相対移動を妨げるようになっている。
【0066】
一方、パレット26が自動ラック倉庫10の収納部18に収納されると、接触部材62は腕木16と接触し、傾き部材64が傾き状態へ移行する。そして、かかる際に、ストッパー部材66は、
図9の上図に示すように、下方へ移動して上側テーブル40の係止位置(側方位置)から退避することとなる。そして、この状態においては、ストッパー部材66の最上端66aよりも上方に上側テーブル40が位置するために、ストッパー部材66が上側テーブル40の前記相対移動を妨げることはない。
【0067】
また、本実施の形態に係るパレット26においては、上述したロック機構60が、4つ備えられている。そして、各々のロック機構60のストッパー部材66は、パレット26がスタッカークレーンにより水平搬送される際には(パレット26が収納部18に収納されていないときには)、
図5に示すように、上側テーブル40の四隅のうちの第一隅40eにおける第一側面40aの側方位置と、第一隅40eにおける第二側面40bの側方位置と、第一隅40eの対角に位置する第二隅40fにおける第三側面40cの側方位置と、第二隅40fにおける第四側面40dの側方位置に位置するようになっている(
図5における、4つの白丸参照)。
【0068】
===本実施の形態に係るパレット26の有効性について===
上述したとおり、本実施の形態に係るパレット26は、荷物25を載置した状態でスタッカークレーンにより水平搬送されて、自動ラック倉庫10に収納される。そして、スタッカークレーンによりリフトされる台部30と、台部30の上方に備えられ、荷物25を載置する上側テーブル40と、上側テーブル40と台部30との間に設けられた免震層50であって、台部30と上側テーブル40との間隔を保持する間隔保持機構(本実施の形態においては、スライド機構52が持つ間隔保持機能)と、粘弾性体56と、を備える免震層50と、を有している。そのため、地震が自動ラック倉庫10へ与える悪影響を適切に抑えることが可能となる。
【0069】
前述したとおり、自動ラック倉庫10には、荷物25を載置した状態のパレット26、つまり、収納物24が、スタッカークレーンにより水平搬送されて収納されるようになっているが、当該自動ラック倉庫10においては、地震の外力を受けてラック12が大きく振動し、収納物24が荷ずれ、転倒、落下する場合があった。
【0070】
また、かかる事象が生じた場合には、スタッカークレーンの移動を妨げ、物流機能が停止するという事態が発生する場合もあった。
【0071】
これに対し、本実施の形態においては、上側テーブル40と台部30との間に免震層50を設け、当該免震層50に間隔保持機構(スライド機構52が持つ間隔保持機能)と粘弾性体56とを持たせることとした。
【0072】
そして、このような免震層50を設けたことにより、上側テーブル40の台部30(下側テーブル32)に対する相対移動が可能となり、台部30(下側テーブル32)の振動が上側テーブル40及び上側テーブル40上の荷物25へ伝わることを抑制することができる。また、上側テーブル40が台部30(下側テーブル32)に対して相対移動すると、双方の間に設けられた粘弾性体56がせん断変形するので、振動自体を低減させることもできる。さらに、振動が低減した際には、粘弾性体56の復元作用により、上側テーブル40を元の位置(下側テーブル32の真上の位置)に適切に戻すことができる。また、前記間隔保持機構(間隔保持機能)により、粘弾性体56のみでは不十分な上側テーブル40及びその上の荷物25の支持を適切に行うことができる(粘弾性体56がつぶれてしまうことを適切に抑止することができる)。
【0073】
そして、このような免震層50の作用により、収納物24の荷ずれ、転倒、落下を適切に抑えることができ、さらに、スタッカークレーンの移動が妨げられて物流機能が停止するという事態も適切に回避することができる。したがって、地震が自動ラック倉庫10へ与える悪影響を適切に抑えることが可能となる。
【0074】
また、本実施の形態において、スライド機構52は、長手方向がX方向に沿うように台部30(下側テーブル32)に設けられた下側ガイドレール53と、長手方向がY方向に沿うように上側テーブル40に設けられた上側ガイドレール54と、下側ガイドレール53と上側ガイドレール54との間に位置し、下側ガイドレール53と上側ガイドレール54の双方に嵌合する嵌合部材55であって、下側ガイドレール53上を該嵌合部材55がX方向に移動できるように、かつ、該嵌合部材55上を上側ガイドレール54がY方向に移動できるように設けられた嵌合部材55と、を有することとした。
【0075】
そのため、上述したとおり、地震による振動の方向がどの方向であっても、台部30(下側テーブル32)の振動が上側テーブル40及び上側テーブル40上の荷物25へ伝わることを抑制することができる。
【0076】
また、本実施の形態に係るパレット26は、パレット26が自動ラック倉庫10に収納されている際には、上側テーブル40の台部30に対する水平方向の相対移動を許容し、パレット26がスタッカークレーンにより水平搬送される際には、前記相対移動を規制するロック機構60を有することとした。
【0077】
そのため、台部30の振動が上側テーブル40及び上側テーブル40上の荷物25へ伝わることを抑制したい場面(つまり、パレット26が自動ラック倉庫10に収納されているとき)においては、上側テーブル40の台部30に対する水平方向の相対移動が発生し、スタッカークレーンによる収納物24(パレット26)のスムーズな水平搬送が妨げられる(搬送がしにくくなる)ため前記相対移動が起こって欲しくない場面(つまり、パレット26がスタッカークレーンにより水平搬送されるとき)においては、前記相対移動が発生しないようにすることが可能となる。このように、本実施の形態に係るパレット26によれば、パレット26における上側テーブル40の台部30に対する相対移動を必要なときのみ許容することが可能となる。
【0078】
===その他の実施の形態===
上記の実施の形態は、本発明の理解を容易にするためのものであり、本発明を限定して解釈するためのものではない。本発明は、その趣旨を逸脱することなく、変更、改良され得ると共に、本発明にはその等価物が含まれることは言うまでもない。特に、以下に述べる実施形態であっても、本発明に含まれるものである。
【0079】
上記実施の形態においては、ラック倉庫として自動ラック倉庫10を例に挙げて説明したが、これに限定されるものではなく、例えば、非自動のラック倉庫であってもよい。
【0080】
また、水平搬送手段としてスタッカークレーンを例に挙げて説明したが、これに限定されるものではない。例えば、フォークリフトであってもよい。
【0081】
また、上記実施の形態においては、ラック12として倉庫床面上で自立した所謂ユニット式のラックを例に挙げて説明したが、これに限定されるものではなく、例えば、ラック12の下部のみならず上部も被固定部材に固定された所謂ビル式のラックであってもよい。そして、本実施の形態に係るパレット26は、いずれのラック12にも収納することができる。
【0082】
また、上記実施の形態において、上側テーブル40、下側テーブル32、及び、下側テーブル支持部材34は、いずれも金属製であることとした(すなわち、パレット26は金属製であることとした)が、これに限定されるものではない。例えば、プラスチック製や木製であることとしてもよい。
【0083】
また、上記実施の形態において、粘弾性体56は、4つ備えられていることとしたが、これに限定されるものではなく、例えば、1つ又は(4つ以外の)複数の粘弾性体56が設けられることとしてもよい。
【0084】
また、上記実施の形態において、間隔保持機構は、台部30と上側テーブル40との間隔を保持しつつ、上側テーブル40を台部30に対し水平方向に相対移動させるためのスライド機構52であり、当該スライド機構52は、上側テーブル40を台部30に対して相対移動させることにより、台部30と上側テーブル40との間に設けられた粘弾性体56をせん断変形させることとした。すなわち、上記実施の形態においては、間隔保持機構が、間隔保持機能だけでなく、上側テーブル40を台部30に対し水平方向に相対移動させるためのスライド機能も備えることとした(つまり、間隔保持機構が、スライド機構52であることとした)。
【0085】
しかしながら、これに限定されるものではなく、間隔保持機構が、スライド機能を有していなくてもよい。例えば、スライド機構52のような積極的に(つまり、殆ど摩擦を無くして)前記相対移動を発生させる機構は必ずしも必要なく、パレット26において前記相対移動が構造上行えるようになっていればよい。
【0086】
ただし、本実施の形態のように、間隔保持機構がスライド機構52である場合には、上側テーブル40の台部30(下側テーブル32)に対する相対移動がよりスムーズとなり、台部30(下側テーブル32)の振動が上側テーブル40及び上側テーブル40上の荷物25へ伝わることをより適切に抑制することができる。また、粘弾性体56のせん断変形もスムーズに行われるので、振動もより適切に低減される。
【0087】
そのため、収納物24の荷ずれ、転倒、落下をより適切に抑えることができ、さらに、スタッカークレーンの移動が妨げられて物流機能が停止するという事態もより適切に回避することができる。したがって、地震が自動ラック倉庫10へ与える悪影響をより適切に抑えることが可能となる。
【0088】
また、上記実施の形態において、スライド機構52は、3つ以上設けられていることとしたが、これに限定されるものではなく、例えば、1つ又は2つのみ設けられていることとしてもよい。
【0089】
上述したとおり、スライド機構52は、上側テーブル40を支持する機能を備えるが、スライド機能53は上述した構成(すなわち、下側ガイドレール53、上側ガイドレール54、嵌合部材55からなる構成)を有しているため、上側テーブル40を支持する支持点の数は、スライド機構52の個数に依存する。すなわち、上側テーブル40は、実質的に、嵌合部材55が位置する位置において支持される(水平方向において嵌合部材55が位置する位置が支持点となる)ため、嵌合部材55の数(換言すれば、スライド機構52の数)が前記支持点の数となる。
【0090】
そのため、スライド機構52が1つ又は2つのみの場合には、前記支持点が1つ又は2つのみとなるため、上側テーブル40の安定性が適切でなくなる恐れがある。したがって、かかる場合には、上側テーブル40の支持を補助する補助輪(例えば、上側テーブル40の下面に固定され、車輪が下側テーブル40に接地するキャスター)が必要となる可能性もある。
【0091】
これに対し、上記実施の形態においては、スライド機構52が3つ以上設けられているため、前記支持点を3つ以上とすることが可能となり、スライド機構52が安定して上側テーブル40を支持する構成を容易に構築することが可能となる。かかる点で、上記実施の形態の方が望ましい。
【0092】
また、スライド機構52が3つ設けられている場合には、上側テーブル40の台部30(下側テーブル32)に対する相対移動が発生していない定常状態において、3つの嵌合部材55が一直線上に並ばないように、スライド機構52が配置されていることが望ましい(このような実施形態を、便宜上、第二実施形態と呼ぶ)。
【0093】
当該事項について、
図10を用いて説明する。
図10は、第二実施形態の有効性を説明するための説明概念図である。
図10の上図が、第二実施形態に係るスライド機構52の配置を示した図であり、
図10の下図が、比較例に係るスライド機構52の配置を示した図である。
【0094】
図10の下図(比較例)に示すように、前記定常状態において、3つの嵌合部材55が一直線上に並ぶようにスライド機構52が配置されている場合には、前記支持点が一直線上に並ぶため、上側テーブル40の安定性が適切でなくなる恐れがある。したがって、かかる場合には、上側テーブル40の支持を補助する補助輪(例えば、上側テーブル40の下面に固定され、車輪が下側テーブル40に接地するキャスター)が必要となる可能性もある。
【0095】
これに対し、
図10の上図に示すように、第二実施形態においては、前記定常状態において、3つの嵌合部材55が一直線上に並ばないようにスライド機構52が配置されているため、3つの嵌合部材55を相互に結んだ仮想線により形成される図形が三角形となる。そのため、スライド機構52が安定して上側テーブル40を支持する構成を容易に構築することが可能となる。
【0096】
さらに、第二実施形態においては、
図10の上図に示すように、前記定常状態において、3つの嵌合部材55を相互に結んだ仮想線により形成される図形が正三角形となるように、スライド機構52が配置されている。そのため、スライド機構52がより一層安定して上側テーブル40を支持する構成を構築することが可能となる。