(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
前記チェーン収容室に開口する前記連通路の上流開口端が、前記タイミングチェーンの幅の領域に重ならないように、前記タイミングチェーンの幅の領域に対して前記シリンダブロックの端部の壁面側、あるいは、前記タイミングチェーンの幅の領域に対して前記シリンダブロックから離隔する方向に位置することを特徴とする請求項1に記載の内燃機関のブローバイガス処理装置。
前記連通路が、前記オイルセパレータ室から前記チェーン収容室に向かって水平に延在するか、若しくは、前記オイルセパレータ室から前記チェーン収容室に向かって下方に傾斜することを特徴とする請求項1ないし請求項5のいずれか1項に記載の内燃機関のブローバイガス処理装置。
【背景技術】
【0002】
自動車等に搭載された内燃機関においては、内燃機関の運転に伴いピストンとシリンダ内壁との間から混合気および燃焼ガスがクランクケース内のクランク室に漏出し、所謂、ブローバイガスが発生するため、ブローバイガスを吸気系に還流して再度燃焼室に送り込み、再度燃焼させることにより、ブローバイガスによりオイルが劣化することを防止している。
【0003】
従来のブローバイガスの処理装置としては、シリンダブロックに、シリンダヘッドの動弁室と連通してブローバイガスからオイルミストを分離するオイルセパレータ室(保油室)を設け、オイルパンから動弁室に導入されたブローバイガスを動弁室からオイルセパレータ室に導入するものが知られている(例えば、特許文献1参照。)。
【0004】
また、上述した内燃機関においては、シリンダブロックの端部にクランク軸の駆動力をカム軸に伝達するタイミングチェーンを覆うチェーンケースが設けられているとともに、チェーンケースとシリンダブロックとの間にチェーン収容室が形成され、チェーン収容室がシリンダヘッドの動弁室と連通するものと考えられる。
【0005】
このため、チェーン収容室の換気が不十分であると、チェーン収容室において、ブローバイガス中に含まれるNOx(窒素酸化物)と水分が反応して硝酸が生成され、オイルがこの硝酸によって凝集し、スラッジが発生するおそれがある。そして、スラッジが内燃機関を潤滑するオイルに混入すると、油圧系の作動不良やクランク軸等の摺動部材の潤滑不良を引き起こしてしまい、内燃機関の燃費が悪化してしまうおそれがある。
【0006】
従来のブローバイガス処理装置は、チェーン収容室が動弁室を介してオイルセパレータ室に連通しているものと考えられるため、吸入負圧によってチェーン収容室のブローバイガスが動弁室を介してオイルセパレータ室に導入される。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
しかしながら、このような従来の内燃機関のブローバイガス処理装置にあっては、チェーン収容室が動弁室を介してオイルセパレータ室に連通しているため、ブローバイガスの流れる通路が長くなってしまう。これに加えて、動弁室は、吸排気カム軸等の動弁系の部品やシリンダヘッドをシリンダブロックに固定するためのボルト等の周辺部品が密集して配置されているため、ブローバイガスが流れる通路径を大きくすることが困難である。したがって、ブローバイガスが流れる通路の通路抵抗が増大してしまう。
【0009】
また、上述したようにブローバイガスが流れる通路の通路抵抗の増大に加えて、オイルセパレータ室からチェーン収容室までの距離が長くなるため、チェーン収容室の換気を十分に行うことが困難となり、スラッジが発生することを十分に抑制することができない。
【0010】
本発明は、上記のような問題点に着目してなされたものであり、チェーン収容室の換気を十分に行うことができ、チェーン収容室にスラッジが発生することを抑制することができる内燃機関のブローバイガス処理装置を提供することを目的とするものである。
【課題を解決するための手段】
【0011】
本発明の第1の態様は、シリンダブロックおよびシリンダヘッドの端部に、クランク軸の駆動力をカム軸に伝達するタイミングチェーンを覆うチェーンケースを備え
、チェーンケースおよびシリンダブロックとの間にチェーン収容室が形成され、前記シリンダブロックに、クランク室から導入されたブローバイガス中のオイルミストを分離するオイルセパレータ室が形成され、オイル分離後のブローバイガスを前記オイルセパレータ室から導出する内燃機関のブローバイガス処理装置であって、
チェーン収容室に、タイミングチェーンの走行を案内する案内部材と、クランク軸の端部に取付けられるとともにタイミングチェーンが巻回されるクランクスプロケットと、が設けられ、
案内部材が、シリンダブロックに揺動自在に支持されてタイミングチェーンに接触するチェーンテンショナおよびチェーンテンショナを押圧してタイミングチェーンに張力を付与するチェーンアジャスタを含んで構成され、シリンダブロックに、オイルセパレータ室とチェーン収容室とを連通する連通路が形成され、
クランク軸の軸線方向視において、連通路の上流開口端が、シリンダブロック、チェーンテンショナおよびチェーンアジャスタによって囲まれた範囲に形成され、チェーンアジャスタが連通路の上流開口端に対してクランクスプロケット側に配置されるものから構成されている。
【0012】
本発明の第2の態様としては、チェーン収容室に開口する連通路の上流開口端が、タイミングチェーンの幅の領域に重ならないように、タイミングチェーンの幅の領域に対してシリンダブロックの端部の壁面側、あるいは、タイミングチェーンの幅の領域に対してシリンダブロックから離隔する方向に形成されてもよい。
【0013】
本発明の第3の態様として
は、連通路の上流開口端が、案内部材に対してタイミングチェーンと反対側に形成されてもよい。
【0014】
本発明の第4の態様として
は、案内部材が、に対してタイミングチェーンの走行方向上流側に設けられてタイミングチェーンに接触する第1の案内部材およびクランクスプロケットに対してタイミングチェーンの走行方向下流側に設けられてタイミングチェーンに接触する第2の案内部材を含んで構成され、クランク軸の軸線方向視において、連通路の上流開口端が、クランクスプロケットの外接円の接線で、かつ第2の案内部材の下端を通る直線と、第2の案内部材とに挟まれた範囲に形成されてもよい。
【0015】
本発明の第5の態様としては、第2の案内部材が、
チェーンテンショナおよびチェーンアジャスタを含んで構成されてもよい。
【0016】
本発明の第6の態様としては、連通路が、オイルセパレータ室からチェーン収容室に向かって水平に延在するか、若しくは、オイルセパレータ室からチェーン収容室に向かって下方に傾斜してもよい。
【発明の効果】
【0017】
このように上記の第1の態様によれば、シリンダブロックに、オイルセパレータ室とチェーン収容室とを連通する連通路を形成したので、チェーン収容室からオイルセパレータ室にブローバイガスを直接流すことができる。このため、チェーン収容室からオイルセパレータ室までのブローバイガスが流れる通路を短くすることができる。
【0018】
これに加えて、吸排気カム軸等の周辺部材が密集しているシリンダヘッドを経由せずに、チェーン収容室からオイルセパレータ室にブローバイガスを直接流すことができるため、連通路の通路径を拡大することが可能となる。したがって、連通路の通路抵抗を低減することができる。
また、ブローバイガスがチェーン収容室から連通路を通してオイルセパレータ室に導入されるので、連通路を通してチェーン収容室を直接換気することができる。
【0019】
このように連通路の通路抵抗の低減を図ることができるとともに、連通路を通してチェーン収容室を直接換気することができるので、チェーン収容室の換気性を向上させることができ、チェーン収容室にスラッジが発生することを抑制することができる。
さらに、クランク軸の軸線方向視において、連通路の上流開口端が、シリンダブロック、チェーンテンショナおよびチェーンアジャスタによって囲まれた範囲に形成され、チェーンアジャスタが、連通路の上流開口端に対してクランクスプロケット側に配置される。
このため、タイミングチェーンを潤滑するオイルがタイミングチェーンの走行によって飛散した場合に、オイルを案内部材およびチェーンアジャスタに衝突させてチェーンアジャスタに対してタイミングチェーンの走行下流側に流入することを抑制することができる。このため、案内部材およびチェーンアジャスタを防御壁として利用することができ、連通路に流入するオイル量をより効果的に低減することができる。
【0020】
上記の第2の態様によれば、チェーン収容室に開口する連通路の上流開口端が、タイミングチェーンの幅の領域に重ならないようにシリンダブロックに形成されるので、クランク軸の軸線方向視において、タイミングチェーンの走行時にタイミングチェーンを潤滑するオイルがタイミングチェーンの走行によってタイミングチェーンの幅の範囲内で飛散した場合に、連通路に流入するオイル量を低減することができる。このため、オイルセパレータ室においてブローバイガスからオイルミストを分離するための分離性能を向上させることができる。
【0021】
上記の第3の態様によれ
ば、連通路の上流開口端が、案内部材に対してタイミングチェーンと反対側に形成されるので、タイミングチェーンを潤滑するオイルがタイミングチェーンの走行によって飛散した場合に、オイルを案内部材に衝突させることができる。このため、案内部材を防御壁として利用することができ、連通路に流入するオイル量を低減することができる。
【0022】
上記の第4の態様によれば、クランク軸の軸線方向視において、連通路の上流開口端が、クランクスプロケットの外接円の接線で、かつクランクスプロケットに対してタイミングチェーンの走行方向下流側に設けられた第2の案内部材の下端を通る直線と、第2の案内部材とに挟まれた範囲に形成される。
【0023】
このため、タイミングチェーンを潤滑するオイルがタイミングチェーンの走行によって飛散した場合に、オイルを第2の案内部材に衝突させることができる。したがって、第2の案内部材を防御壁として利用することができ、連通路に流入するオイル量をより効果的に低減することができる。
【0024】
上記の第5の態様によれば、
第2の案内部材が、チェーンテンショナおよびチェーンアジャスタを含んで構成される。
【0025】
このため、タイミングチェーンを潤滑するオイルがタイミングチェーンの走行によって飛散した場合に、オイルを第2の案内部材およびチェーンアジャスタに衝突させてチェーンアジャスタに対してタイミングチェーンの走行下流側に流入することを抑制することができる。このため、第2の案内部材およびチェーンアジャスタを防御壁として利用することができ、連通路に流入するオイル量をより効果的に低減することができる。
【0026】
上記の第6の態様によれば、連通路が、オイルセパレータ室からチェーン収容室に向かって水平に延在するか、若しくは、オイルセパレータ室からチェーン収容室に向かって下方に傾斜するので、仮に、連通路にオイルが侵入した場合であっても、オイルをチェーン収容室側に排出し易くでき、オイルセパレータ室にオイルが流入することを抑制して、オイルセパレータ室においてブローバイガスからオイルミストを分離するための分離性能を向上させることができる。
【発明を実施するための形態】
【0028】
以下、本発明に係る内燃機関のブローバイガス処理装置の実施形態について、図面を用いて説明する。
図1〜
図8は、本発明に係る一実施形態の内燃機関のブローバイガス処理装置を示す図である。
【0029】
まず、構成を説明する。
図1〜
図4において、内燃機関としてのエンジン1は、シリンダブロック2と、シリンダブロック2の上部に設けられたシリンダヘッド3と、シリンダヘッド3の上部に設けられたシリンダヘッドカバー4と、シリンダブロック2の下部に設けられたオイルパン5とを備えている。
【0030】
図1において、シリンダブロック2にはシリンダ27内に上下動自在に収容されたピストン28と、ピストン28の上下運動を回転運動に変換するクランク軸6等が収容されており、シリンダブロック2の下部にはクランク軸6を回転自在に支持するクランクケース2Aが一体的に設けられている。また、クランクケース2Aとオイルパン5との間にはクランク室24が形成されている。
【0031】
図1、
図4において、シリンダヘッド3は、シリンダの配列方向に沿って延在し、吸気カム7aを備えたカム軸としての吸気カム軸7と、吸気カム軸7と平行に配置されてシリンダの配列方向に沿って延在し、排気カム8aを備えたカム軸としての排気カム軸8とを備えている。
【0032】
本実施形態のエンジン1は、吸気カム軸7および排気カム軸8が収容されるシリンダヘッド3とシリンダヘッドカバー4との間の空間が動弁室13を構成している。また、吸気カム軸7および排気カム軸8は、複数のカムキャップ3Aによってシリンダヘッド3に回転自在に支持されている。
【0033】
図1において、シリンダヘッド3には吸気ポート29および排気ポート30が形成されており、吸気ポート29および排気ポート30は、吸気カム7aおよび排気カム8aの回転に伴って駆動される吸気バルブ31および排気バルブ32によって開閉される。
【0034】
シリンダヘッド3には吸気マニホールド33が取付けられており、吸気マニホールド33には吸気管34を介してエアクリーナ35が接続されている。エアクリーナ35は、外部から取り入れられる吸入空気Aiを浄化するようになっており、エアクリーナ35によって浄化された吸入空気Aiは、吸気管34から吸気マニホールド33に吸入され、吸気マニホールド33から各吸気ポート29を介して各シリンダ27に分配されて吸入される。
【0035】
吸気管34にはスロットルバルブ34Aが設けられており、このスロットルバルブ34Aは、シリンダ27に吸入される空気量を調整する。
【0036】
図4、
図5において、吸気カム軸7の端部には吸気カムスプロケット9が設けられており、この吸気カムスプロケット9にはタイミングチェーン11が巻回されている。排気カム軸8の端部には排気カムスプロケット10が設けられており、この排気カムスプロケット10にはタイミングチェーン11が巻回されている。
【0037】
クランク軸6の端部にはクランクスプロケット12が設けられており、このクランクスプロケット12にはタイミングチェーン11が巻回されている。このため、クランク軸6の回転は、クランクスプロケット12からタイミングチェーン11を介して吸気カムスプロケット9および排気カムスプロケット10に伝達されることにより、吸気カム軸7および排気カム軸8が回転する。
【0038】
そして、吸気カム7aおよび排気カム8aが回転すると、吸気バルブ31および排気バルブ32がそれぞれ吸気ポート29および排気ポート30(
図1、
図6参照)を開閉することで、シリンダ27の上部に形成された燃焼室と吸気ポート29および排気ポート30とを連通および遮断する。このようにタイミングチェーン11によって吸気バルブ31および排気バルブ32がクランク軸6の回転に応じて作動される。
【0039】
図2、
図3、
図6において、シリンダブロック2およびシリンダヘッド3の端部(エンジン1の前面側)にはチェーンケース21が設けられており、このチェーンケース21は、タイミングチェーン11を覆うとともに、シリンダブロック2とチェーンケース21との間でチェーン収容室22を形成している(
図3参照)。
【0040】
本実施形態のタイミングチェーン11は、
図5中、矢印Rで示す時計回転方向に走行するようになっており、クランクスプロケット12に対してタイミングチェーン11の走行方向上流側には案内部材および第1の案内部材としてのチェーンガイド14が設けられている。このチェーンガイド14は、タイミングチェーン11に接触してタイミングチェーン11の走行を案内する。
【0041】
クランクスプロケット12に対してタイミングチェーン11の走行方向下流側には案内部材および第2の案内部材としてのチェーンテンショナ15が設けられており、このチェーンテンショナ15は、シリンダブロック2に揺動自在に設けられた揺動軸15aを有し、揺動軸15aを中心に揺動するとともにタイミングチェーン11に摺接している。
【0042】
チェーンテンショナ15にはチェーンアジャスタ16が設けられており、このチェーンアジャスタ16は、チェーンテンショナ15を押圧してタイミングチェーン11に適度な張力を付与する。タイミングチェーン11の近傍にはオイルジェット26が設けられており(
図5参照)、タイミングチェーン11は、オイルジェット26から噴射されるオイルOによって潤滑される。
【0043】
図3、
図6において、シリンダブロック2の内部にはオイルセパレータ室17が形成されており、このオイルセパレータ室17は、シリンダブロック2に形成されたブローバイガス通路18を介してクランク室24に連通している。
【0044】
また、オイルセパレータ室17は、シリンダブロック2に形成された連通孔19(
図4参照)からブローバイガス排出管36を介して吸気マニホールド33に連通しており(
図1参照)、シリンダブロック2に形成されたオイル落とし穴20を介して動弁室13に連通している。
【0045】
オイル落とし穴20は、動弁室13に収容される吸気カム軸7や排気カム軸8等の摺動部材を潤滑したオイルをオイルセパレータ室17に落下させる。
【0046】
オイルセパレータ室17とブローバイガス排出管36の間にはPCVバルブ37が設けられており、このPCVバルブ37は、オイルセパレータ室17からブローバイガス排出管36に流れるブローバイガス流量を調整する。
【0047】
ブローバイガスは、エンジン1の運転中に、ピストンとシリンダとの間の隙間を通じてクランク室24に漏出する未燃焼の混合気や燃焼ガスである(
図1にGで示す)。このブローバイガスGの一部は、ブローバイガス通路18を通してオイルセパレータ室17に導入される。
【0048】
オイルセパレータ室17に導入されたブローバイガスは、オイルセパレータ室17によってブローバイガスに含まれるオイルミストが分離された後、吸入負圧により、連通孔19からブローバイガス排出管36を通して吸気マニホールド33に導入された後、エンジン1の燃焼室に導入されて燃焼室で燃焼される。
ここで、オイルセパレータ室17は、慣性衝突式、ラビリンス(迷路型)式、または、サイクロン式が用いられる。
【0049】
慣性衝突式は、オイルセパレータ室17の内部にブローバイガスの流れを遮る衝突板を設け、衝突板にブローバイガスを衝突させてブローバイガスに含まれるオイルミストを衝突板に付着させて捕集する。
【0050】
ラビリンス式は、オイルセパレータ室17の中に仕切り板を設けて、オイルミストの浮遊距離を長くしてオイルミストが自重で落下することを促す方式であり、仕切り板によりブローバイガスの流速が増して、仕切り板にオイルミストが衝突し易くなるので、仕切り板にオイルミストを付着させて捕集する。
【0051】
サイクロン式は、ブローバイガスを円筒状のサイクロン室内で旋回させ、遠心分離作用によってブローバイガスに含まれるオイルミストを分離する。
【0052】
本実施形態のオイルセパレータ室17の構成は、特に限定されるものではなく、ブローバイガスに含まれるオイルミストを分離する構成であればよい。そして、オイルセパレータ室17によってブローバイガスから分離されたオイルミストは、ブローバイガス通路18を通してオイルパン5に貯留されたオイルに戻される。
【0053】
図1〜
図5、
図7において、シリンダブロック2には連通路23が形成されており、この連通路23は、オイルセパレータ室17とチェーン収容室22とを連通している。
図7において、チェーン収容室22に開口する連通路23の上流開口端23aは、タイミングチェーン11の幅Wの領域に重ならないように、タイミングチェーン11の幅Wの領域に対してシリンダブロック2の端部の壁面2B側、すなわち、シリンダブロック2の壁面2Bに形成されている。換言すれば、連通路23の上流開口端23aは、タイミングチェーン11の幅Wの領域に重ならないようにタイミングチェーン11に対してエンジン1の後方側に位置している。
【0054】
図5において、連通路23の上流開口端23aは、チェーンテンショナ15に対してタイミングチェーン11と反対側に形成されており、クランク軸6の軸線方向視において、連通路23の上流開口端23aは、クランクスプロケット12の外接円の接線で、かつチェーンテンショナ15の下端を通る直線Aと、チェーンテンショナ15に挟まれた範囲に形成されている。
【0055】
図5において、クランク軸6の軸線方向視において、連通路23の上流開口端23aは、シリンダブロック2、チェーンテンショナ15およびチェーンアジャスタ16によって囲まれた範囲に形成されており、チェーンアジャスタ16は、連通路23の上流開口端23aに対してクランクスプロケット12側に配置されている。
【0056】
図3において、連通路23は、オイルセパレータ室17からチェーン収容室22に向かって水平に延在している。ここで、本実施形態のエンジン1は、オイルセパレータ室17、ブローバイガス通路18、連通孔19、チェーン収容室22および連通路23を含んでブローバイガス処理装置を構成している。
【0057】
図1において、シリンダヘッドカバー4とスロットルバルブ34Aに対して上流側の吸気管34とは、新気導入管38によって接続されており、新気導入管38は、吸入空気Aiの一部、すなわち、新気Anを動弁室13に導入する。
【0058】
シリンダブロック2およびシリンダヘッド3には新気流入通路39が形成されており、この新気流入通路39は、動弁室13とクランク室24とを連通している。吸入負圧によって新気導入管38から動弁室13に導入された新気は、チェーン収容室22から連通路23を介してオイルセパレータ室17に導入されるとともに、新気流入通路39からクランク室24およびブローバイガス通路18を介してオイルセパレータ室17に導入された後、ブローバイガス排出管36から吸気マニホールド33を介してシリンダ27に導入されるようになっており、動弁室13、チェーン収容室22およびクランク室24を含んだエンジン1の内部は、この新気によって換気される。
【0059】
次に、作用を説明する。
チェーン収容室22において、オイルジェット26からタイミングチェーン11にオイルが噴射されることでタイミングチェーン11の潤滑が行われる。このため、チェーン収容室22の換気が十分に行われないと、チェーン収容室22に導入されるブローバイガス中に含まれるNOx(窒素酸化物)と水分が反応して硝酸が生成され、オイルがこの硝酸によって凝集し、スラッジが発生する。
【0060】
このスラッジは、タール状の物質であり、スラッジがエンジン1を潤滑するオイルに混入すると、オイルの劣化を引き起してしまい、油圧系の作動不良やクランク軸6、吸気カム軸7および排気カム軸8等の摺動部材の潤滑不良を引き起こしてしまい、エンジン1の摺動抵抗が増大してエンジン1の燃費が悪化してしまう。
【0061】
本実施形態のブローバイガス処理装置によれば、シリンダブロック2に、オイルセパレータ室17とチェーン収容室22とを連通する連通路を形成したので、チェーン収容室22からオイルセパレータ室17にブローバイガスを直接流すことができる。このため、チェーン収容室22からオイルセパレータ室17までのブローバイガスが流れる通路を短くすることができる。
【0062】
これに加えて、吸気カム軸7や排気カム軸8等の周辺部材が密集しているシリンダヘッド3を経由せずに、チェーン収容室22からオイルセパレータ室17にブローバイガスを直接流すことができるため、連通路23の通路径を拡大することが可能となる。したがって、連通路23の通路抵抗を低減することができる。
【0063】
また、ブローバイガスをチェーン収容室22から連通路23を通してオイルセパレータ室17に導入することができるので、連通路23を通してチェーン収容室22を直接換気することができる。
【0064】
このように本実施形態のブローバイガス処理装置によれば、連通路23の通路抵抗の低減することができるとともに、連通路23を通してチェーン収容室22を換気することができるので、チェーン収容室22の換気性を向上させることができ、チェーン収容室22にスラッジが発生することを抑制することができる。
【0065】
このため、オイルの劣化を引き起すことを防止して、油圧系の作動不良やクランク軸6、吸気カム軸7および排気カム軸8等の摺動部材の潤滑不良を引き起こすことを防止することができる。したがって、エンジン1の摺動抵抗が増大することを防止して、エンジン1の燃費が悪化することを防止することができる。
【0066】
また、本実施形態のブローバイガス処理装置によれば、チェーン収容室22に開口する連通路23の上流開口端23aを、タイミングチェーン11の幅Wの領域に重ならないようにシリンダブロック2に形成している。
【0067】
このため、クランク軸6の軸線方向視において、タイミングチェーン11の走行時にタイミングチェーン11を潤滑するオイルがタイミングチェーン11の走行によってタイミングチェーン11の幅Wの範囲内で飛散した場合に、連通路23に流入するオイル量を低減することができる。したがって、オイルセパレータ室17においてブローバイガスからオイルミストを分離するための分離性能を向上させることができる。
【0068】
そして、オイルミストの分離性能を向上させることができるため、吸気管に導入されるブローバイガスを低減することができ、ブローバイガスに含まれるオイルミストがデポジットとなって吸気管の内面や各シリンダに備えられた吸気バルブに堆積する等の弊害が生じることを防止することができる。
【0069】
また、本実施形態のブローバイガス処理装置によれば、チェーン収容室22にタイミングチェーン11の走行を案内するチェーンテンショナ15を設け、連通路23の上流開口端23aを、チェーンテンショナ15に対してタイミングチェーン11と反対側に形成したので、タイミングチェーン11を潤滑するオイルがタイミングチェーン11の走行によって飛散した場合に、チェーンテンショナ15に衝突させることができる。このため、チェーンテンショナ15を防御壁として利用することができ、連通路23に流入するオイル量を低減することができる。
【0070】
また、本実施形態のブローバイガス処理によれば、クランク軸6の軸線方向視において、連通路23の上流開口端23aを、クランクスプロケット12の外接円の接線で、かつクランクスプロケット12に対してタイミングチェーン11の走行方向下流側に設けられたチェーンテンショナ15の下端を通る直線Aと、チェーンテンショナ15に挟まれた範囲に形成した。
【0071】
このため、タイミングチェーン11を潤滑するオイルがタイミングチェーン11の走行によって飛散した場合に、チェーンテンショナ15に衝突させることができる。したがって、チェーンテンショナ15を防御壁として利用することができ、連通路23に流入するオイル量をより効果的に低減することができる。
【0072】
また、本実施形態のブローバイガス処理装置によれば、クランク軸6の軸線方向視において、連通路23の上流開口端23aを、シリンダブロック2、チェーンテンショナ15およびチェーンアジャスタ16によって囲まれた範囲に形成するとともに、チェーンアジャスタ16を、連通路23の上流開口端23aに対してクランクスプロケット12側に配置した。
【0073】
このため、タイミングチェーン11を潤滑するオイルがタイミングチェーン11の走行によって飛散した場合に、チェーンテンショナ15およびチェーンアジャスタ16に衝突させてチェーンアジャスタ16に対してタイミングチェーン11の走行下流側に流入することを抑制することができる。このため、チェーンテンショナ15およびチェーンアジャスタ16を防御壁として利用することができ、連通路23に流入するオイル量をより効果的に低減することができる。
【0074】
また、本実施形態のブローバイガス処理装置によれば、連通路23を、オイルセパレータ室17からチェーン収容室22に向かって水平に延在させたので、仮に、連通路23にオイルが侵入した場合であっても、オイルをチェーン収容室22側に排出し易くでき、オイルセパレータ室17にオイルが流入することを抑制して、オイルセパレータ室においてブローバイガスからオイルミストを分離するための分離性能を向上させることができる。
【0075】
なお、本実施形態の連通路23の上流開口端23aは、タイミングチェーン11の幅Wの領域に重ならないようにタイミングチェーン11の幅Wの領域に対してシリンダブロック2の端部の壁面2B側に形成されているが、
図8に示すように、タイミングチェーン11の幅Wの領域に対してシリンダブロック2から離隔する方向に位置してもよい。
【0076】
換言すれば、連通路23の上流開口端23aは、タイミングチェーン11の幅Wの領域に重ならないようにタイミングチェーン11に対してエンジン1の前方側に形成されてもよい。
【0077】
この場合は、連通路23は、シリンダブロック2の壁面2Bからタイミングチェーン11の幅Wの領域から前方に突出する連通管25を備え、連通管25の内周部に連通路23の一部が形成されることになる。
【0078】
また、本実施形態の連通路23は、オイルセパレータ室17からチェーン収容室22に向かって水平に延在しているが、これに限らず、オイルセパレータ室17からチェーン収容室22に向かって下方に傾斜してもよい。このようにすれば、連通路23にオイルが侵入した場合であっても、オイルをチェーン収容室22側により効果的に排出し易くすることができる。
【0079】
また、本実施形態では、連通路23の上流開口端23aが、チェーンテンショナ15に対してタイミングチェーン11と反対側に形成されているが、チェーンガイド14に対してタイミングチェーン11と反対側に形成されてもよい。
【0080】
本発明の実施形態を開示したが、当業者によっては本発明の範囲を逸脱することなく変更が加えられうることは明白である。すべてのこのような修正及び等価物が次の請求項に含まれることが意図されている。