(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【背景技術】
【0002】
近年、地球環境問題が注目される中、クリーンなエネルギーである太陽光エネルギーを利用した太陽光発電システムの普及が進んでいる。この太陽光発電システムにおいては、システム自体を屋外に設置した状態で、太陽電池の出力特性の異常を評価する必要がある。この評価においては、太陽電池の直流電圧に対応した直流電流を測定し、これから
図18に示すような、直流電流と直流電圧との関係のカーブ(以下、I−Vカーブともいう。)を計測し、評価者が計測結果を確認することで太陽光発電システムが正常か異常かを判断する。
【0003】
しかしながら、
図19に示すように、I−Vカーブの計測時の天候によって、取得されるI−Vカーブが全く異なってしまうため、定量的な評価は困難になっている。このI−Vカーブの評価方法としては、出力係数PRを数式(1)のように定義し、I−Vカーブの計測値から最大出力の計測値を算出し、基準となる日射強度1kW/m
2という条件の下での出力を表す指標が提案されている(例えば、非特許文献1を参照)。
【数1】
Pmax:最大出力の計測値、Pmo:太陽電池の定格出力、G:日射強度の計測値(kW/m
2)、GSTC:基準日射強度=1(kW/m
2)
【0004】
しかしながら、太陽電池や日射計では同じ日射条件の下でも日射量が増加していくときの応答時間と日射量が低下していくときの応答速度が異なる場合がある。さらに、太陽電池と日射計とでは、日射量が増加していくときと日射量が低下していくときの応答速度の変化幅が異なる場合がある。これらのことから、最大電力の計測値と日照強度の計測値のピーク位置がずれる場合があった。また、各波形の形状が相似的にならないことから、太陽電池と日射計の間で同期を取るなどの補正は困難であった。これらの事情により、太陽電池のI−Vカーブの計測値と日射計による日射強度の計測値とから上記の出力係数を算出する際には大きな誤差を含んでしまい、正しい評価ができない場合があった。
図20には、太陽電池と日射計の応答速度の相違による出力係数の精度の低下について示す。
図20(a)は、I−Vカーブの最大動作点における出力値から得られる太陽電池の最大出力と、日射計による日射強度の変化を示す。また、
図20(b)には、算出された出力係数の変化を示す。
【0005】
図20(a)中、四角形でプロットされたのは日射計による日射強度を示す。また、ひし形でプロットされたのは太陽電池の最大出力を示す。
図20(a)からも分かるように、日射計の出力と太陽電池の最大出力との間にはタイムラグが生じており、上記の数式(1)で出力係数を算出した場合に、
図20(b)に示すようにシステムが正常であるにも拘わらず何箇所かの特異点が生じ、故障と誤判断されてしまう虞があった。
【0006】
なお、上記の非特許文献1に記載の発明では、システムで取得された太陽電池の出力のデータから、計測時間の1サイクル中の日射変動率が2%以下のデータを選別することで
、取得データのばらつきを低減しているが、これは、計測期間中に取得されたデータを後から選別する静的な処理であり、太陽電池のI−Vカーブのデータを計測しながらリアルタイムに取得データのばらつきを低減し安定化を図る処理とは異なっていた。
【0007】
また、上記した太陽電池と日射計の応答速度の相違による出力係数の精度の低下は、日射強度の変動が大きい場合に顕在化する。従って、出力係数の精度の低下を抑えるために、日射強度に応じて太陽電池の出力のデータを取得するか否かを判断して、日射強度が安定している時のデータのみを取得することが考えられる。しかしながら、これでは太陽光発電システムの評価の効率が低下したり、制御が複雑化してしまう場合があった。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
本発明は、上記の従来技術に鑑みて発明されたものであり、その目的は、屋外における太陽電池の出力特性の評価をより精度よくまたは効率的に実施することができる技術を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0010】
上記課題を解決するための本発明は、太陽電池の出力電圧と出力電流の関係から得られた太陽電池の最大電力点における電力値と、日射強度とに基づいて太陽電池の出力特性を評価する際に、
太陽電池の出力電圧と出力電流の関係と、日射強度の取得速度の相違に基づく、太陽電池の出力特性の値の変動を緩和する安定化手段を有することを最大の特徴とする。
【0011】
より詳しくは、太陽電池の出力電圧と出力電流の関係及び、日射強度を取得する取得手段と、
前記取得手段により取得された前記太陽電池の出力電圧と出力電流の関係から得られた前記太陽電池の最大電力点における電力値と、前記日射強度とに基づいて前記太陽電池の出力特性を評価する評価手段と、を備え、
前記評価手段は、
前記取得手段により取得された前記太陽電池の出力電圧と出力電流の関係と、前記日射強度の取得速度の相違に基づく、前記太陽電池の出力特性の値の変動を緩和する安定化手段を有することを特徴とする。
【0012】
すなわち、本発明においては、取得手段により取得された太陽電池の出力電圧と出力電流の関係から得られた太陽電池の最大電力点における電力値と、日射強度とに基づいて太陽電池の出力特性を評価する。そして、取得手段により取得された太陽電池の出力電圧と出力電流の関係と、日射強度の取得速度の相違があった場合には、安定化手段によって、そのことに基づく太陽電池の出力特性の計測値の変動を緩和させる。
【0013】
この安定化手段は、例えば、得られた太陽電池の出力特性が太陽電池の出力係数である場合には、この出力係数の時間的な変動に特異点があった場合に、当該特異点に関わる出力係数を評価から除外するものであってもよい。より具体的には、取得された出力係数の値が前回の取得機会において取得された出力係数の値に対して所定割合以上異なっている場合には、当該出力係数の値を評価から除外するようにしてもよい。また、出力係数の算出結果において例えば、大きい方から所定数個の出力係数の値と、小さい方から所定数の
出力係数の値を評価から除外しても構わない。さらに、出力係数の算出結果において、常に所定数の出力係数の平均値を評価に用いても構わない。
【0014】
また、上記課題を解決するための本発明は、太陽電池の出力電圧と出力電流の関係から得られた太陽電池の最大電力点における電力値と、日射強度とに基づいて太陽電池の出力特性を評価する際に、
太陽電池の太陽電池の出力電圧と出力電流の関係と日射強度とを複数回取得し、複数回取得した太陽電池の出力電圧と出力電流の関係における最大電力点における電力値のうちの所定回数分の平均値である平均最大電力値と、複数回取得した日射強度の所定回数分の平均値である平均日射強度とを算出し、
平均最大電力値と平均日射強度とに基づいて定められる平均出力係数と、出力係数についての所定の閾値とを比較することで、太陽電池の出力特性を評価することを特徴とする。
【0015】
より詳細には、前記安定化手段は、
前記太陽電池の出力電圧と出力電流の関係と前記日射強度とを複数回取得し、複数回取得した太陽電池の出力電圧と出力電流の関係から得られた前記太陽電池の最大電力点における電力値のうちの所定回数分の平均値である平均最大電力値と、複数回取得した前記日射強度の前記所定回数分の平均値である平均日射強度とを算出する平均値算出部と、
前記平均最大電力値と前記平均日射強度とに基づいて定められる平均出力係数と、出力係数についての所定の閾値とを比較して、太陽電池の出力特性を評価する出力係数評価部と、を有することを特徴とする。
【0016】
すなわち本発明においては、評価手段が、取得手段により取得された太陽電池の出力電圧と出力電流の関係から得られた太陽電池の最大電力点における電力値と、日射強度とに基づいて太陽電池の出力特性を評価する。その際、太陽電池の出力電圧と出力電流の関係と日射強度とが複数回取得され、複数回取得した複数回取得した太陽電池の出力電圧と出力電流の関係から得られた太陽電池の最大電力点における電力値のうちの所定回数分の平均値である平均最大電力値と、複数回取得した日射強度の前記所定回数分の平均値である平均日射強度とを算出する。そして、平均最大電力値と平均日射強度とに基づいて平均出力係数を算出する。
【0017】
すなわち、先述の数式(1)で表わされる出力係数において、最大出力の計測値Pmaxの代わりに平均最大電力値を使用し、また、Gの代わりに平均日射強度を使用し、平均出力係数を算出する。これによれば、太陽電池の出力特性を示す出力係数の変動を抑制することができ、例え、太陽電池と日射計との間に応答速度の相違があったとしても、安定した平均出力特性を得ることができる。従って、閾値との比較判断も容易になり、太陽電池の出力特性の評価の精度を向上させることができる。
【0018】
なお、上記した太陽電池と日射計の応答速度の相違による出力係数の精度の低下は、日射強度の変動が大きい場合に顕在化する。従って、出力係数の精度の低下を抑えるために、日射強度に応じて太陽電池の出力のデータを取得するか否かを判断して、日射強度が安定している時のデータのみを取得することが考えられる。しかしながら、これでは太陽光発電システムの評価の効率が低下したり、制御が複雑化してしまう場合があった。これに対し、本発明では、太陽電池の出力電圧と出力電流の関係と、日射強度のデータを連続的にに取得し、そのデータから安定した評価基準を得ることが可能であるので、太陽光発電システムの評価効率を向上させることができ、または、システムの制御を簡略化することができる。
【0019】
また、本発明においては、前記最大電力点における電力値と前記日射強度とに基づいて
算出される出力係数の標準偏差に基づいて前記所定回数を定める標準偏差判断手段と、
前記出力係数の標準偏差がそれ以下の場合に、充分に安定した前記平均出力係数の値が得られると考えられる前記標準偏差の閾値を記憶する閾値記憶手段と、
をさらに備え、
前記標準偏差判断手段は、前記安定化手段が前記太陽電池の出力電圧と出力電流の関係と前記日射強度とを複数回取得した際の各取得機会において取得された前記最大電力点における電力値と、各取得機会において取得された前記日射強度から、各取得機会における出力係数を算出する出力係数算出部と、
前記出力係数算出部において算出された複数の出力係数のデータについての標準偏差を算出する標準偏差算出部と、
前記標準偏差算出部によって算出された標準偏差が、前記閾値記憶手段に記憶された前記標準偏差の閾値以下になるときの前記出力係数のデータ数を算出するデータ数算出部と、を備え、
前記データ数算出部によって算出されたデータ数を、前記平均値算出部が平均最大電力値と平均日射強度を算出する際の所定回数として設定するようにしてもよい。
【0020】
本発明は、評価手段が、複数回取得した太陽電池の出力電圧と出力電流の関係から得られた太陽電池の最大電力点における電力値のうちの所定回数分の平均値である平均最大電力値と、複数回取得した日射強度の前記所定回数分の平均値である平均日射強度とを算出する際の、所定回数について規定したものである。ここで、太陽電池の出力電圧と出力電流の関係と日射強度の計測をN回行って出力係数をN回算出した場合について考えると、N数が増加するにつれて、出力係数の標準偏差は減少していく。そこで、本発明においては、N数を増加させていき、出力係数の標準偏差が閾値以下になった場合に、そのようなN数を所定回数として平均最大電力、平均日射強度及び、平均出力係数を算出するものである。
【0021】
これによれば、より確実に、平均出力係数の値を安定化することができ、より確実に閾値との比較判断を容易にすることができ、太陽電池の出力特性の評価の精度を向上させることができる。
【0022】
また、本発明においては、前記閾値記憶手段に記憶される前記標準偏差の閾値は、太陽電池の出力係数の値の信頼区間に基づいて定められるようにしてもよい。すなわち、前記標準偏差の閾値を信頼区間に基づいて定めるようにすれば、出力係数がどのような範囲に存在するかを確率的に推測することができ、統計学的手法に基づいてより確実に、出力係数の標準偏差の閾値を設定することができ、最終的にはより確実に、平均出力係数の値を安定化することが可能となる。
【0023】
また、本発明においては、前記太陽電池の出力特性の評価結果を表示する表示手段をさらに備えるようにしてもよい。これによれば、別途PCのディスプレイを準備することなどなく、平均出力係数の評価結果を確認することができ、本発明を適用した評価装置を製品として流通させることを考慮した場合には、より使用し易い態様を実現することができる。
【0024】
また、本発明においては、前記取得手段は、さらに太陽電池の温度を取得し、
前記評価手段は、前記太陽電池の出力電圧と出力電流の関係または前記太陽電池の最大電力点における電力値を、前記取得手段によって取得された前記太陽電池の温度に基づいて補正した上で、前記太陽電池の出力特性を評価するようにしてもよい。これによれば、太陽電池の温度の平均出力係数への影響を除外することができ、より精度よく、太陽電池の出力特性の評価を行うことが可能である。
【0025】
また、本発明においては、前記取得手段と、前記評価手段のうち、少なくとも一つを、可搬性の筐体内に収納してもよい。あるいは、前記取得手段段と、前記評価手段と、前記標準偏差判断手段と、前記閾値記憶手段のうち、少なくとも一つを、可搬性の筐体内に収納してもよい。これによれば、例えば、本発明を適用したハンディタイプの評価装置が実現可能であり、本発明を適用した評価装置を製品として流通させることを考慮した場合には、より使用し易い態様を実現することができる。また、本発明は、上記の太陽電池の評価装置における前記取得手段と、前記評価手段のうちの少なくとも一つと、DC/DCコンバータと、インバータと、を有するパワーコンディショナであってもよい。また、上記の太陽電池の評価装置における前記取得手段と、前記評価手段と、前記標準偏差判断手段と、前記閾値記憶手段のうちの少なくとも一つと、DC/DCコンバータと、インバータと、を有するパワーコンディショナであってもよい。
【0026】
また、本発明は、太陽電池モジュールと、上記の太陽電池の評価装置と、太陽電池モジュールの出力を昇圧するとともに直流電力を交流電力に変換するパワーコンディショナと、を備える太陽光発電システムであってもよい。また、その際は、取得手段と、評価手段のうち、少なくとも一つを、前記パワーコンディショナ内に組み込むようにしてもよい。
【0027】
また、本発明は、太陽電池モジュールと、
上記の太陽電池の評価装置と、
太陽電池モジュールの出力を昇圧するとともに直流電力を交流電力に変換するパワーコンディショナと、を備え
前記取得手段と、前記評価手段と、前記標準偏差判断手段と、前記閾値記憶手段のうち、少なくとも一つを、前記パワーコンディショナ内に組み込んだことを特徴とする太陽光発電システムであってもよい。
【0028】
また、本発明は、太陽電池の出力電圧と出力電流との関係を取得し、
前記太陽電池の出力電圧と出力電流との関係から得られた前記太陽電池の最大電力点における電力値と、日射強度とに基づいて前記太陽電池の出力特性を評価する、太陽電池の評価方法であって、
前記太陽電池の出力電圧と出力電流との関係と前記日射強度とを複数回取得し、複数回取得した太陽電池の出力電圧と出力電流との関係から得られた前記最大電力点における電力値のうちの所定回数分の平均値である平均最大電力値と、複数回取得した前記日射強度の前記所定回数分の平均値である平均日射強度とを算出し、
前記平均最大電力値と前記平均日射強度とに基づいて定められる平均出力係数と、出力係数についての所定の閾値とを比較することで、太陽電池の出力特性を評価することを特徴とする太陽電池の評価方法であってもよい。
【0029】
また、その際には、前記太陽電池の出力電圧と出力電流との関係を複数回取得した際の、各取得機会において取得された太陽電池の出力電圧と出力電流との関係から得られた太陽電池の最大電力点における電力値と、各取得機会において取得された前記日射強度から、各取得機会における出力係数を算出し、
算出された各取得機会における出力係数についての標準偏差を算出し、
前記算出された標準偏差が、所定の閾値以下になるときの、前記太陽電池の出力電圧と出力電流との関係と前記日射強度の取得回数を算出し、
前記取得回数を、前記平均最大電力値と平均日射強度を算出する際の所定回数として設定するようにしてもよい。また、その際の所定の閾値は、太陽電池の出力の値の信頼区間に基づいて定められるようにしてもよい。
【0030】
なお、上記した課題を解決するための手段は、可能な限り組み合わせて使用することが可能である。
【発明の効果】
【0031】
本発明によれば、屋外における太陽電池の出力の特性評価をより精度よく実施することが可能となる。
【発明を実施するための形態】
【0033】
以下に図面を参照して、この発明を実施するための形態を例示的に詳しく説明する。
【0034】
<実施例1>
太陽電池のI−Vカーブの評価方法としては、出力係数PRを先述の数式(1)のように定義し、基準となる日射強度1kW/m
2という条件の下での出力を表す指標が提案されていた。しかしながら、太陽電池と日射計では応答時間が異なるため、出力係数を算出する際には大きな誤差を含んでしまい、正しい評価ができない場合があった。
【0035】
それに対し、本実施例では、太陽電池のI−Vカーブの特性を、数式(2)で表される平均出力係数で評価することにした。
【数2】
【0036】
図1には、
図19に示したのと同じ日射強度及び太陽電池の最大出力に対して算出した、数式(2)に基づく平均出力係数のグラフを示す。
図1(a)は、I−Vカーブの最大動作点における出力値から得られる太陽電池の最大出力と、日射計による日射強度の変化である。また、
図1(b)は、算出された平均出力係数の変化である。ここで、第大出力の計測値平均と日射強度の計測値平均を算出する際のデータ数Nは20としている。
図1(b)に示すように、太陽電池の出力と日射計の出力との間に応答時間の差があったとしても、平均出力係数の値は安定している。このように、最大出力の計測値の平均値及び日射強度の計測値の平均値を用いて平均出力係数を算出し、この平均出力係数を用いて太陽電池の出力特性を評価することで、太陽電池の出力特性を安定的に評価することが可能となる。
【0037】
次に、
図2には、本実施例においてI−Vカーブを評価する際に実行されるI−Vカーブ評価ルーチンについてのフローチャートを示す。本ルーチンは太陽光発電システムが有する図示しないメモリーに記憶されたプログラムであり、太陽光発電システムが有する図示しないCPUにより実行される。本ルーチンが実行されるとまず、S101において太陽電池のI−Vカーブと日射強度とが計測される。S101の処理が終了するとS102に進む。
【0038】
S102においては、計測回数がN回より多いかどうかが判定される。ここで、計測回数がN回以下であると判定された場合には、まだ、平均出力係数を算出するための計測値が揃っていないと判定されるのでS101の処理の前に戻る。一方、S102で計測回数がN回より多いと判定された場合には、平均出力係数を算出するための計測値が揃ったと判定されるのでS103に進む。なお、ここで閾値Nは、予め実験的または理論的に、計測値がこれより多かった場合には、平均出力係数の値が充分に安定すると判断できる計測回数である。
【0039】
S103においては、数式(3)及び(4)に従い、I−Vカーブの最大出力の平均値と、日射強度の平均値とを算出する。
【数3】
【数4】
S103の処理が終了するとS104に進む。
【0040】
S104においては、S103で算出されたI−Vカーブの最大出力の平均値と、日射強度の平均値とから、数式(2)で示した平均出力係数を算出する。S104の処理が終了するとS105に進む。S105においては、平均出力係数によって太陽電池の性能を確認する。より具体的には平均出力係数が性能確認用閾値以下か否かが確認され、平均出力係数が性能確認用閾値以下であれば異常、平均出力係数が性能確認用閾値より大きければ正常と判定される。S105の処理が終了するとS106に進む。S106においては評価結果が表示器に表示される。S106の処理が終了すると本ルーチンを一旦終了する。
【0041】
以上のように、本実施例においては、太陽電池の出力特性を評価する際に、太陽電池のI−Vカーブの最大出力と、日射強度のリアルタイムの計測値を使用する代わりに、太陽電池のI−Vカーブの最大出力のN個の計測値の平均値と、日射強度のN個の計測値の平均値とを用いることとした。これにより、太陽電池の出力と、日射計の出力との間に応答速度の差があったとしても、そのことに起因する出力特性の値の変動を緩和することができ、より安定して精度のよいI−Vカーブの評価を行うことが可能となる。
【0042】
図3には、本実施例における太陽電池評価システム1の概略構成を示す。太陽電池評価システム1においては、太陽電池2が電流電圧特性計測部3に接続されており、太陽電池2の出力が電流電圧特性計測部3に入力されるようになっている。従って、太陽電池2のI−Vカーブの特性については電流電圧特性計測部3によって計測される。電流電圧特性計測部3の出力は取得手段の一例である計測データ取得部5に入力される。また、本システムには日照強度を計測する日射計4が設けられており、日射計4の出力も計測データ取得部5に入力される。計測データ取得部5に入力された電流電圧特性計測部3及び日射計4の計測値は計測データ取得部5に設けられた図示しないメモリーに保存される。
【0043】
計測データ取得部5において取得されたデータは演算手段の一例である演算部6に入力される。演算部6においては、電流電圧特性計測部3で計測されたI−Vカーブより、その最大出力点における電力値が算出される。演算部6の出力は評価手段の一例である評価部8に接続されており、演算部6で算出された最大出力点における電力値は評価部8に入力される。評価部8においては、数式(2)に基づく平均出力係数が演算される。また、この平均出力係数の値と性能確認用閾値とが比較され、太陽電池の出力のI−Vカーブが正常か異常かが判定される。評価部8は表示手段の一例である表示器8aに接続されており、平均出力係数の値と、太陽電池2のI−Vカーブの評価結果が表示器8aに入力され表示される。
【0044】
以上、説明したように、本実施例では、太陽電池の出力特性を評価する際に、数式(1)で示される出力係数でなく、数式(2)で示される平均出力係数を用いることとした。これにより、太陽電池2の出力と日射計4の出力との間に応答速度の差があったとしても、評価基準を安定化させることができ、より精度よく、太陽電池の出力特性を評価することが可能になる。また、本実施例では、太陽電池のI−Vカーブと日射強度のデータを取得しつつリアルタイムにデータの安定化を図り、太陽電池の出力特性を動的に評価することが可能となる。従って、より効率的に太陽電池の出力特性を評価することが可能となる。なお、本実施例においては、S104及びS105の処理を実施する図示しないCPU
は、平均値算出部及び出力係数評価部に相当する。また、I−Vカーブ評価ルーチンを実行させるCPUは安定化手段に相当する。
【0045】
なお、上記の実施例では、太陽電池のI−Vカーブを計測し、各々のカーブの最大出力の計測値の平均値と、日射強度の計測値の平均値とを用いて、太陽電池の平均出力係数を評価した。しかしながら、最大出力の平均値の算出方法はこれに限られない。例えば、複数のI−Vカーブを計測し、そのプロットのデータより、I−Vカーブの平均カーブを先に導出し、その平均カーブにおける最大出力を算出することで最大出力の平均値を算出しても構わない。
【0046】
<実施例2>
次に、本発明の実施例2について説明する。実施例1においては、太陽電池のI−Vカーブの最大出力のN個の計測値の平均値と、日射強度のN個の計測値の平均値とを用いて、太陽電池の平均出力係数を評価した。また、Nの値は予め定められた一定値とすることが前提であった。これに対し本実施例においては、太陽電池のI−Vカーブの最大出力と日射強度の各計測機会において出力係数を算出し、この出力係数の標準偏差を算出し、この標準偏差が所定の閾値より小さくなる際の測定データ数を、平均値の算出に使用するデータ数Nとする。
【0047】
先述のように、太陽電池のI−Vカーブの最大出力のN個の計測値の平均値と、日射強度のN個の計測値の平均値を用いて、太陽電池の平均出力係数を算出することで、太陽電池の出力特性のばらつきを緩和することができ、太陽電池の出力特性の評価の精度を向上させることができる。しかしながら、各々の平均値の算出に用いられるデータ数Nが多すぎると、測定感度が低下するとともに演算負荷や演算時間が増加する。よって、各々の平均値の算出に用いられるデータ数Nは必要最低限とすべきである。
【0048】
これに対し、本実施例においては、I−Vカーブにおける最大出力と日射強度とをN回ずつ測定し、平均出力係数を算出するとともに、N個の各データにより算出したN個の出力係数の標準偏差を算出する。そして、I−Vカーブにおける最大出力と日射強度を繰り返し測定してNの値を増加させ、各出力係数の標準偏差の値が所定の閾値以下となった場合に、その時のデータ数Nを採用して平均出力係数を算出し、太陽電池の出力特性の評価を行うことにした。
【0049】
図4には、平均出力係数を算出する際のデータ数Nと、各データに基づくN個の出力係数の標準偏差との関係のグラフを示す。
図4から分かるように、データ数Nが増加するにつれて出力係数の標準偏差は減少し、
図4ではN=25で標準偏差が閾値以下となっている。このように、標準偏差が閾値より小さくなるようなデータ数Nを用いて平均出力係数を算出することで、必要最低限のデータ数を用いて平均出力係数を算出し、太陽電池の出力特性を評価することが可能になる。なお、標準偏差についての閾値は、標準偏差がこの値以下となった場合には、充分に安定した平均出力係数の値が得られる標準偏差の値であり、予め理論的あるいは実験的に求めておいてもよい。
【0050】
次に、
図5には、本実施例におけるI−Vカーブ評価ルーチン2のフローチャートを示す。本ルーチンが実行されるとまず、S201において、出力係数の標準偏差の閾値が設定される。この閾値については上述のように予め実験的または理論的に適切な一定値に定めておいてもよい。S201の処理が終了するとS202に進む。S202においては太陽電池2のI−Vカーブと日射強度とが計測される。S202の処理が終了するとS203に進む。
【0051】
S203においては、数式(3)及び(4)を用いて、I−Vカーブの最大出力の平均
値と、日射強度の平均値とが算出される。続いて、S204においては、S203で算出されたI−Vカーブの最大出力の平均値と、日射強度の平均値とから、数式(2)で示した平均出力係数が算出される。このS203及びS204の処理は、
図2に示したS103及びS104の処理と同等であるので、詳細な説明は省略する。S204の処理が終了するとS205に進む。
【0052】
S205においては、本ルーチンの実行開始後、S202において計測されたN個の、I−Vカーブの最大出力とN個の日射強度から各々算出された、データ数Nの出力係数(平均出力係数ではない)の標準偏差が算出される。より具体的には、S205の処理が実行される度に、直近のS202の処理で計測された、I−Vカーブの最大出力と日射強度から出力係数を算出し、N番目の出力係数としてメモリーに記憶し、前回のS205の処理までに記憶されているN−1個の出力係数と最新の出力係数とを用いて出力係数の標準偏差を算出してもよい。S205の処理が終了するとS206に進む。
【0053】
S206においては、S205で算出したN個の出力係数の標準偏差が閾値以下かどうかが判定される。ここで、標準偏差が閾値より大きいと判定された場合には、さらにデータ数Nを増やして標準偏差を下げる必要があると判断されるのでS202の処理の前に戻る。一方、標準偏差が閾値以下と判定された場合には、この時点でのデータ数Nが充分な数であると判断されるので、S207に進む。
【0054】
S207においては、S204で算出したN個のデータによる平均出力係数により太陽電池の出力特性を確認する。具体的には、N個のI−Vカーブの最大出力の平均値とN個の日射強度の平均値を用いて算出された平均出力係数に基づき、平均出力係数が性能確認用閾値以下かどうかが確認される。S207の処理が終了すると評価結果が表示器8aで表示された上で、本ルーチンが一旦終了される。
【0055】
以上のように、本実施例においては、太陽電池の出力係数の評価において、太陽電池のI−Vカーブにおける最大出力のN個の計測値の平均値と、日射強度のN個の計測値の平均値を用いて平均出力係数を算出する場合に、データ数Nを、各出力係数の標準偏差が閾値以下となるように決定することとした。これにより、充分に安定した平均出力係数が得られるとともに、データ数Nが過剰に大きくなることを抑制できるので、システムの演算負荷及び演算時間を抑制し、評価時間の短縮化を促進することが可能となる。
【0056】
なお、本実施例において、I−Vカーブ評価ルーチン2の特にS205の処理を実行するCPUは、出力係数算出部と標準偏差算出部に相当する。また、特にS206の処理を実行してデータ数Nを確定するCPUはデータ数算出部に相当する。
【0057】
<実施例3>
次に、実施例3について説明する。本実施例では、実施例2で説明したI−Vカーブ評価ルーチン2における標準偏差の閾値を、出力係数の信頼区間に基づいて決定する例について説明する。
【0058】
次に、上記のI−Vカーブ評価ルーチン2における標準偏差の閾値の決定方法について説明する。
図6には、出力係数の値とその信頼区間についての概念図を示す。棒グラフで示すのはある出力係数の値であり、実線で表されている出力係数の範囲は例えば±5%の信頼区間である。ここで、ある信頼区間が3σに相当する信頼度99.73%を有するためには、以下の数式(3)が成り立つ必要がある。
【数5】
σ:出力係数の標準偏差、N:データ数
【0059】
従って、この範囲が±5%以内となるためには、以下の式(6)を満たす必要がある。
【数6】
【0060】
従って、満足すべき標準偏差の範囲は、式(7)のようになる。
【数7】
すなわち、この場合は標準偏差の閾値を5√N/3と定めればよいことになる。このように、信頼区間から閾値を決めてもよいが、この場合には閾値はNの値に応じて変化することとなる。
【0061】
図7には、本実施例におけるI−Vカーブ評価ルーチン3についてのフローチャートを示す。本ルーチンが実行されると、S301において出力係数の信頼区間の幅が設定される。本実施例では±5%と設定したが、この値に限定する趣旨ではない。S301の処理が終了するとS302に進む。
【0062】
S302においては、S301において設定された信頼区間の幅より、式(5)〜(7)に示したのと同様の計算をすることにより、標準偏差の閾値を算出する。S302の処理が終了すると、S303に進む。本ルーチンにおけるS303〜S308の処理の内容は、I−Vカーブ評価ルーチン2におけるS202〜S207の処理と同等であるので、ここでは詳細な説明は省略する。
【0063】
以上のように、本実施例においては、まず、出力係数の適切な信頼区間の幅を設定し、その信頼区間が±3σ相当となるように、標準偏差の閾値を定めた。従って、閾値の値を統計学に基づいたより信頼性の高い値に設定することが可能となり、より確実に、平均出力係数の値の精度を向上させ、太陽電池の出力特性をより精度よく評価することが可能になる。
【0064】
図8には、本実施例及び実施例2における太陽電池評価システム10の概略構成を示す。太陽電池評価システム10と、
図3に示した太陽電池評価システム1との相違点は、太陽電池評価システム10は、演算部6と、評価部8の間に、標準偏差判断手段の一例である標準偏差判断部17を備えている点である。また、標準偏差判断部17には閾値記憶手段の一例である閾値記憶部19が接続されており、閾値記憶部19が記憶している閾値の値が標準偏差判断部17に入力されるようになっている点である。
【0065】
本実施例及び実施例2における標準偏差判断部17においてはN個の、I−Vカーブの
最大出力とN個の日射強度から各々算出された、データ数Nの出力係数(平均出力係数ではない)の標準偏差が算出され、標準偏差が閾値記憶部19から入力される閾値以下と判定される、データ数Nが算出される。そして、評価部8においては、標準偏差判断部17で算出されたデータ数Nと数式(2)とに基づいて、平均出力係数が演算される。また、この平均出力係数の値と性能確認用閾値とが比較され、太陽電池の出力のI−Vカーブが正常か異常かが判定される。
【0066】
なお、閾値記憶部19に記憶されている閾値に関して、実施例2においては、単に実験的または理論的に求められているのに対し、実施例3においては、出力係数の信頼区間に基づき数式(5)〜(7)を用いて求められる点が異なる。
【0067】
<実施例4>
次に、本発明の実施例4について説明する。本実施例では、太陽電池のI−Vカーブ、日射強度の他に太陽電池の温度を取得して、太陽電池の出力特性の計測値を補正する例について説明する。
【0068】
ここで、太陽電池のI−Vカーブにおける電流値及び電圧値は、太陽電池の温度によって変化してしまうことが分かっている。よって、例えば、(1)太陽電池の温度が25℃±2℃の条件と、(2)日射強度が1000±10W/m
2の条件を基準条件とし、この基準条件下以外の環境においては、計測された電流値及び電圧値を、標準条件すなわち例えば日射強度1kW/m
2、太陽電池の温度が25℃の基準条件下における値に補正することで、太陽電池の出力特性の評価の精度をより向上させることが可能である。
【0069】
基準状態での日射強度、太陽電池の温度、電圧値及び電流値をそれぞれG2、T2、V2及びI2とし、日射強度、太陽電池の温度、電圧値、電流値及び短絡電流値の計測値をそれぞれ、G1、T1、V1、I1及びIscとした場合に、基準状態における電流値及び電圧値は、以下の数式(8)、(9)のように表わせる。本実施例においては、数式(8)、(9)を用いて、太陽電池の出力特性の計測値を補正する。
I2=I1+Isc(G2/G1−1)+α(T2−T1)・・・・・・(8)
V2=V1+β(T2−T1)−Rs・(I2−I1)−K・I2(T2−T1)・・(9)
α:1℃の温度上昇による短絡電流Iscの変動値(A/℃)、β:1℃の温度上昇による開放電圧Vocの変動値(V/℃)、Rs:太陽電池の直列抵抗(Ω)、K:曲線補正因子(Ω/℃)、Isc:短絡電流(A)
【0070】
図9には、本実施例における本実施例におけるI−Vカーブ評価ルーチン4についてのフローチャートを示す。本ルーチンが実行されるとまず、S201において、出力係数の標準偏差の閾値が設定される。次に、S212においては太陽電池2のI−Vカーブ、日射強度及び太陽電池2のパネル温度が計測される。S212の処理が終了するとS213に進む。
【0071】
S213においては、I−Vカーブ、日射強度、太陽電池の温度(パネル温度ともいう。)の平均値が算出される。ここで、I−Vカーブの平均値が算出される際には、各計測I−Vカーブを電圧(または電流)で等間隔に分割し、各々の電圧(または電流)において各計測I−Vカーブの電流(または電圧)を平均することで、平均I−Vカーブが求められる。また、日射強度Gの平均値は先述の数式(4)によって求められる。さらに、太陽電池の温度Tの平均値は、以下の数式(10)によって求められる。
【数8】
S213の処理が終了するとS214に進む。
【0072】
続いて、S214においては、S203で算出された平均I−Vカーブの各点(j=
1〜M)の電流Ijの平均値及び電圧Vjの平均値が、太陽電池2のパネル温度の平均値を用いて、以下の数式(11)及び(12)に基づいて補正される。なお、数式(11)においてIscは短絡電流である。
【数9】
【数10】
S214の処理が終了すると、S215に進む。
【0073】
そして、S215においては、補正後の平均I−Vカーブにおける最大出力値と定格出力Pmoとから平均出力係数PRaveが数式(13)に基づいて算出される。
【数11】
【0074】
S215の処理が終了するとS205からS207の処理が実行されるが、この処理は、I−Vカーブ評価ルーチン2におけるS205からS207までの処理と同等であるので、詳細な説明は省略する。なお、平均出力係数PRaveを表す数式(13)は、数式(2)とは異なっているが、これは、日射強度Gの平均値と基準日射温度GSTCの比の項については、I−Vカーブ評価ルーチン4では数式(11)で考慮されているからである。従って、S214の処理における数式(11)で、日射強度Gの平均値と基準日射温度GSTCの比の項を考慮することを止め、その代わりに、S215では数式(2)を用いて平均出力係数PRaveを求めるようにしても構わない。
【0075】
図10には、温度補正前後のI−Vカーブの変化の例を示す。また、
図11には本実施例における太陽電池評価システム20の概略構成を示す。太陽電池評価システム20の、太陽電池評価システム10との相違点は、センサとして、日射計4の他に温度取得手段の一例としての温度計24aを備えており、温度計24aによって太陽電池2の温度を取得し、I−Vカーブを補正する点である。
【0076】
なお、
図12には、I−Vカーブ評価ルーチン4と同じ目的を果たすための別ルーチンである、I−Vカーブ評価ルーチン5についてのフローチャートを示す。このルーチンで
は、I−Vカーブ評価ルーチン4のように、I−Vカーブの平均を求めるのではなく、各々のI−Vカーブにおける最大出力点の電流と電圧とを求め、その値の平均値を算出する点が異なる。
【0077】
本ルーチンにおいては、S212において、太陽電池2のI−Vカーブ、日射強度及び太陽電池2の温度が計測されると、S223に進む。S223では、各I−Vカーブの最大出力点の電流及び電圧の平均値と、日射強度の平均値と、太陽電池の温度の平均値と、短絡電流の平均値が算出される。ここで、各I−Vカーブの最大出力点の電流及び電圧の平均値は、より具体的には、まず、各I−Vカーブの最大出力点の電流Ipmと電圧Vpmが抽出され、以下の数式(14)及び(15)に従って算出される。
【数12】
また、日射強度の平均値は先述の数式(4)により、太陽電池の温度の平均値は先述の数式(10)により、短絡電流の平均値は先述の数式(11)の下段の式により算出される。
【0078】
S223の処理が終了するとS224に進む。S224においては、各I−Vカーブの最大出力点の電流及び電圧である、最大出力電流Ipmと最大出力電圧Vpmの平均値が、日射強度Gの平均値と、短絡電流Iscの平均値と、太陽電池の温度Tの平均値を用いて補正される。より具体的には、以下の数式(16)及び(17)を用いて補正される。
【数13】
【数14】
【0079】
S224の処理が終了するとS225に進む。S225においては、以下の数式(18)に示すように補正後の最大出力電流と最大出力電圧の平均値を乗積することにより、補正後の最大出力の平均値が算出され、さらに、先述の数式(13)を用いて平均出力係数PRaveが算出される。
【数15】
【0080】
S205〜S207の処理が実行されるが、これらの処理はI−Vカーブ評価ルーチン2と同等であるので、ここでは説明は省略する。なお、ここでも、数式(2)とは異なる平均出力係数の数式(13)が用いられるのは、日射強度Gの平均値と基準日射温度GSTCの比の項について、I−Vカーブ評価ルーチン5では数式(16)で考慮されているからである。従って、S224の処理における数式(16)では、日射強度Gの平均値と
基準日射温度GSTCの比の項を考慮すること止め、その代わりに、S225では先述の数式(2)を用いて平均出力係数を求めるようにしてもよい。
【0081】
以上、本実施例においては、温度計24aによって太陽電池2の温度を取得し、温度によってI−Vカーブを補正することにしたので、より精度良く太陽電池の出力特性の評価を行うことが可能である。
【0082】
<実施例5>
次に、実施例5について説明する。本実施例においては、太陽電池評価システムの構成の様々な態様について説明する。
【0083】
図13には、本実施例における太陽電池評価システム30の態様について示す。この態様における構成要素の太陽電池2、電流電圧特性計測部3、日射計4、温度計24a、演算部6、標準偏差判断部17、閾値記憶部19、評価部8、表示器8aについては、各々、
図11の太陽電池評価システム20に示した構成と同等である。一方、この態様においては、計測データ取得部35が、DC/DCコンバータ34a、インバータ34bとともにパワーコンディショナ34内に配置されている点が異なる。また、パワーコンディショナ34は、負荷36に接続されている。
【0084】
次に、
図14には、本実施例における太陽電池評価システム40の態様について示す。この態様における構成要素のうち太陽電池2、電流電圧特性計測部3、日射計4、温度計24a、表示器8a,負荷36については、各々、
図13に示した対応する構成と同等である。この態様においては、計測データ取得部45、演算部46、標準偏差判断部47、評価部48、閾値記憶部49が、DC/DCコンバータ44a、インバータ44bとともにパワーコンディショナ44内に構成されている。
【0085】
次に、
図15には、本実施例における太陽電池評価システム50の態様について示す。この態様における構成要素のうち太陽電池2、電流電圧特性計測部3、日射計4、温度計24aについては、各々、
図14に示した対応する構成と同等である。この態様においては、計測データ取得部55、演算部56、標準偏差判断部57、評価部58、表示部58a,閾値記憶部59が、パワーコンディショナとは独立して、ハンディタイプのI−V特性計測装置54内に構成されている。これによれば、評価者が太陽光発電システム50の評価に現場に向かう際に、ハンディタイプのI−V特性計測装置54を持参し、設置した上で、適切な期間だけ放置して評価を継続的に行うなどの運用が可能になる。
【0086】
次に、
図16には、本実施例における太陽電池評価システム60の態様について示す。この態様における電流電圧特性計測部3、日射計4、温度計24a、計測データ取得部45、演算部46、標準偏差判断部47、評価部48、閾値記憶部49、DC/DCコンバータ44a、インバータ44b、表示器8a、負荷36については、各々、
図14に示した対応する構成と同等である。この態様においては、複数の太陽電池62a、62bがパワーコンディショナ64に接続されており、電流電圧特性計測部3に入力されている。そして、スイッチ63a及び63bによって、電流電圧特性計測部3への入力が切り替えられるようになっている。この態様によれば、複数の太陽電池について、出力特性の評価を行うことが可能である。
【0087】
次に、
図17には、本実施例における太陽電池評価システム70の態様について示す。この態様における構成要素の太陽電池2、日射計4、温度計24a、計測データ取得部5、演算部6、標準偏差判断部17、閾値記憶部19、評価部8、表示器8aについては、各々、
図11の太陽電池評価システム20に示した構成と同等である。一方、この態様においては、電流電圧特性計測部73が、DC/DCコンバータ74a、インバータ74b
とともにパワーコンディショナ74内に配置されている点が異なる。
【0088】
このように、本発明における太陽電池評価システムにおいては、いずれの構成をパワーコンディショナに組み込むかという点について様々な組み合わせが考えられ、システム全体としての利便性に応じて適宜決定すればよい。この組み合わせについては上記の態様に限定する趣旨ではない。また、いずれの構成をハンディタイプのI−V特性計測装置に組み込むかという点についても同様である。
【0089】
<実施例6>
次に、本発明の実施例6について説明する。実施例1〜実施例5においては、太陽電池の出力特性を評価する際に、平均出力係数を用いることを前提としていたが、本実施例においては、平均出力係数を用いない例について説明する。
【0090】
本実施例においては、数式(2)で示される平均出力係数を用いて太陽電池の出力特性を評価するのではなく、数式(1)で示される出力係数を用いて太陽電池の出力特性を評価する。しかしながら、太陽電池2と、日射計4の応答速度の違いにより、
図20に示したように出力係数のグラフに特異点が現れた場合には、特異点のデータを排除する。より具体的には、横軸に計測回数、縦軸に出力係数をとった
図20(b)のようなグラフにおいて、前回の値に対して例えば±20%以上変化した値が現れた場合には、その値を削除してもよい。
【0091】
あるいは、出力係数のデータの中で、例えば大きい方から3点、小さい方から3点のデータを削除してもよい。もちろん、この3点という数値は出力係数のばらつきの大きさを考慮しつつ、適宜変更してもよい。さらに、太陽電池の出力特性の評価に用いる指標を、例えば、連続する10個の出力係数の平均値(平均出力係数とは異なる)ということにしても構わない。ここでも、この10個という数値は出力係数のばらつきの大きさを考慮しつつ、適宜変更してもよい。
【0092】
以上のように、本実施例においては、太陽電池の出力特性の評価のために、平均出力係数でなく、あくまで出力係数を用いた上で、太陽電池と、日射計の応答速度の違いによる出力係数の変動を緩和することにした。これによっても、太陽電池の出力特性の評価の精度を向上させることが可能である。なお、本実施例において説明した処理は、太陽光発電システムに設けられた図示しないCPUの指令により自動的に実施される。この意味で太陽光発電システムに設けられたCPUは安定化手段に相当する。