特許第6252153号(P6252153)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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特許6252153ガスの処理装置及びガスの処理カートリッジ
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6252153
(24)【登録日】2017年12月8日
(45)【発行日】2017年12月27日
(54)【発明の名称】ガスの処理装置及びガスの処理カートリッジ
(51)【国際特許分類】
   B01D 53/14 20060101AFI20171218BHJP
   B01D 53/04 20060101ALI20171218BHJP
   B01D 53/02 20060101ALI20171218BHJP
   B01D 53/68 20060101ALI20171218BHJP
   B01J 20/18 20060101ALI20171218BHJP
   B01J 20/10 20060101ALI20171218BHJP
   B01J 20/08 20060101ALI20171218BHJP
   B01J 20/20 20060101ALI20171218BHJP
   B01J 20/12 20060101ALI20171218BHJP
   B01J 20/06 20060101ALI20171218BHJP
【FI】
   B01D53/14 100
   B01D53/04 110
   B01D53/02
   B01D53/68 100
   B01J20/18 B
   B01J20/10 A
   B01J20/08 A
   B01J20/20 B
   B01J20/10 C
   B01J20/18 E
   B01J20/12 A
   B01J20/12 C
   B01J20/06 A
   B01J20/06 B
   B01J20/06 C
   B01J20/20 D
【請求項の数】9
【全頁数】10
(21)【出願番号】特願2013-256709(P2013-256709)
(22)【出願日】2013年12月12日
(65)【公開番号】特開2015-112547(P2015-112547A)
(43)【公開日】2015年6月22日
【審査請求日】2016年10月14日
(73)【特許権者】
【識別番号】000000206
【氏名又は名称】宇部興産株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100134566
【弁理士】
【氏名又は名称】中山 和俊
(72)【発明者】
【氏名】徳浦 静雄
(72)【発明者】
【氏名】吉田 隆
(72)【発明者】
【氏名】堀田 和彦
(72)【発明者】
【氏名】百合園 英嗣
【審査官】 松井 一泰
(56)【参考文献】
【文献】 特許第4564242(JP,B2)
【文献】 特開2001−017831(JP,A)
【文献】 特開昭50−096382(JP,A)
【文献】 特開2009−268962(JP,A)
【文献】 特開平06−319947(JP,A)
【文献】 特開昭55−092122(JP,A)
【文献】 特開2001−338910(JP,A)
【文献】 特開平11−114360(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B01D 53/34− 53/96
B01D 53/14− 53/18
B01D 53/02− 53/12
C23C 16/00− 16/56
B01J 20/00− 20/34
B01J 10/00− 12/02
B01J 14/00− 19/32
H01L 21/302
H01L 21/461
C01B 15/00− 23/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
ハロゲン化物と、ハロゲンガスとを含む被処理ガスが導入される導入口と、処理済みのガスが排出される排出口と、前記導入口と前記排出口とに接続された処理室とを有する容器を備え、
前記処理室は、
第1の処理部と、
前記第1の処理部よりも前記排出口側に位置する第2の処理部と、
前記第2の処理部よりも前記排出口側に位置する第3の処理部と、
を有し、
前記第1の処理部には、金属の酸化物、金属の水酸化物及び金属の炭酸塩から選ばれた少なくとも一種の無機化合物が配されており、
前記第2の処理部には、金属の酸化物、金属の水酸化物及び金属の炭酸塩から選ばれた少なくとも一種の無機化合物と、硫黄原子を有する還元剤とが配されており、
前記第3の処理部には、酸化硫黄を吸着する吸着剤及び酸化硫黄と反応する反応剤の少なくとも一方が配されている、ガスの処理装置。
【請求項2】
前記無機化合物が、鉄及び亜鉛の少なくとも一方を含む酸化物である、請求項1に記載のガスの処理装置。
【請求項3】
前記第1の処理部には、酸化鉄が配されており、
前記第2の処理部には、酸化亜鉛と前記硫黄原子を有する還元剤とが配されている、請求項2に記載のガスの処理装置。
【請求項4】
前記硫黄原子を有する還元剤は、亜硫酸塩、亜二チオン酸塩、四チオン酸塩及びチオ硫酸塩から選ばれた少なくとも一種である、請求項1〜3のいずれか一項に記載のガスの処理装置。
【請求項5】
前記吸着剤が、ゼオライト、活性炭、活性白土、シリカ及びアルミナからなる群から選ばれた少なくとも一種である、請求項1〜4のいずれか一項に記載のガスの処理装置。
【請求項6】
前記第の処理部を冷却する冷却機構をさらに備える、請求項5に記載のガスの処理装置。
【請求項7】
前記第2の処理部と前記第3の処理部との間のガスをサンプリングするサンプリングポートを有する、請求項5又は6に記載のガスの処理装置。
【請求項8】
前記反応剤が、重曹、消石灰及び水酸化マグネシウムからなる群から選ばれた少なくとも一種である、請求項1〜7のいずれか一項に記載のガスの処理装置。
【請求項9】
ハロゲン化物と、ハロゲンガスとを含む被処理ガスが導入される導入口と、処理済みのガスが排出される排出口と、前記導入口と前記排出口とに接続された処理室とを有する容器を備え、
前記処理室は、
第1の処理部と、
前記第1の処理部よりも前記排出口側に位置する第2の処理部と、
前記第2の処理部よりも前記排出口側に位置する第3の処理部と、
を有し、
前記第1の処理部には、金属の酸化物、金属の水酸化物及び金属の炭酸塩から選ばれた少なくとも一種の無機化合物が配されており、
前記第2の処理部には、金属の酸化物、金属の水酸化物及び金属の炭酸塩から選ばれた少なくとも一種の無機化合物と、硫黄原子を有する還元剤とが配されており、
前記第3の処理部には、酸化硫黄を吸着する吸着剤及び酸化硫黄と反応する反応剤の少なくとも一方が配されている、ガスの処理カートリッジ。


【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ガスの処理装置及びガスの処理カートリッジに関する。
【背景技術】
【0002】
近年、排気ガスによる環境負荷を低減するために、排気ガスに対する規制が厳しくなってきている。これに伴い、排気ガスの処理方法が種々提案されている。例えば、特許文献1では、半導体装置においてエッチングが行われたときに排出される排気ガスを処理する方法が提案されている。具体的には、排気ガスを、充填塔内に充填された除害剤及び吸着剤としての活性炭を通過させることにより処理する方法が提案されている。
【0003】
具体的には、特許文献1に記載の処理装置では、充填塔の上流側に、鉄化合物とマンガン化合物とを含む除害剤が配されており、下流側に、活性炭が配されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開平6−319947号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
ガスの処理装置の処理能力をさらに高めたいという要望がある。
【0006】
本発明の主な目的は、優れた処理能力を有するガスの処理装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明に係るガスの処理装置は、容器を備える。容器は、導入口と、排出口と、処理室とを有する。導入口からは、被処理ガスが導入される。排出口からは、処理済みのガスが排出される。処理室は、導入口と排出口とに接続されている。処理室は、第1の処理部と、第2の処理部と、第3の処理部とを有する。第2の処理部は、第1の処理部よりも排出口側に位置している。第3の処理部は、第2の処理部よりも排出口側に位置している。第1の処理部には、金属の酸化物、金属の水酸化物及び金属の炭酸塩から選ばれた少なくとも一種の無機化合物が配されている。第2の処理部には、金属の酸化物、金属の水酸化物及び金属の炭酸塩から選ばれた少なくとも一種の無機化合物と、硫黄原子を有する還元剤とが配されている。第3の処理部には、酸化硫黄を吸着する吸着剤及び酸化硫黄と反応する反応剤の少なくとも一方が配されている。
【0008】
本発明に係るガスの処理カートリッジは、容器を備える。容器は、導入口と、排出口と、処理室とを有する。導入口からは、被処理ガスが導入される。排出口からは、処理済みのガスが排出される。処理室は、導入口と排出口とに接続されている。処理室は、第1の処理部と、第2の処理部と、第3の処理部とを有する。第2の処理部は、第1の処理部よりも排出口側に位置している。第3の処理部は、第2の処理部よりも排出口側に位置している。第1の処理部には、金属の酸化物、金属の水酸化物及び金属の炭酸塩から選ばれた少なくとも一種の無機化合物が配されている。第2の処理部には、金属の酸化物、金属の水酸化物及び金属の炭酸塩から選ばれた少なくとも一種の無機化合物と、硫黄原子を有する還元剤とが配されている。第3の処理部には、酸化硫黄を吸着する吸着剤及び酸化硫黄と反応する反応剤の少なくとも一方が配されている。
【発明の効果】
【0009】
本発明によれば、優れた処理能力を有するガスの処理装置を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
図1】第1の実施形態に係るガスの処理装置の模式的断面図である。
図2】第2の実施形態に係るガスの処理装置の模式的断面図である。
図3】第3の実施形態に係るガスの処理装置の模式的断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0011】
以下、本発明を実施した好ましい形態の一例について説明する。但し、下記の実施形態は、単なる例示である。本発明は、下記の実施形態に何ら限定されない。
【0012】
また、実施形態等において参照する各図面において、実質的に同一の機能を有する部材は同一の符号で参照することとする。また、実施形態等において参照する図面は、模式的に記載されたものである。図面に描画された物体の寸法の比率などは、現実の物体の寸法の比率などとは異なる場合がある。図面相互間においても、物体の寸法比率等が異なる場合がある。具体的な物体の寸法比率等は、以下の説明を参酌して判断されるべきである。
【0013】
(第1の実施形態)
図1は、本実施形態に係るガスの処理装置の模式的断面図である。
【0014】
図1に示される処理装置1は、より具体的には、例えば、アルミニウム膜等のドライエッチング装置から排出される、三塩化ホウ素などのハロゲン化合物と、塩素ガスなどのハロゲンガスとの両方を含むガスを処理するために好適に用いられる。
【0015】
図1に示されるように、処理装置1は、筐体10を備えている。筐体10内には、処理カートリッジ20が配されている。この処理カートリッジ20によりガスの処理が行われる。
【0016】
処理カートリッジ20は、容器21を有する。容器21は、導入口22と、排出口23と、処理室24とを有する。導入口22及び排出口23は、それぞれ、処理室24に接続されている。処理対象である被処理ガスは、導入口22から処理室24に導入される。被処理ガスは、処理室24において処理される。処理済みのガスは、排出口23から排出される。本実施形態では、導入口22は、容器21の下部に設けられている。排出口23は、容器21の上部に設けられている。もっとも、本発明は、この構成に限定されない。容器の上部に導入口が設けられており、下部に排出口が設けられていてもよい。
【0017】
処理室24は、第1の処理部24aと、第2の処理部24bと、第3の処理部24cとを有する。第1の処理部24aは、導入口22に接続されている。第2の処理部24bは、第1の処理部24aよりも排出口23側に配されている。第3の処理部24cは、第2の処理部24bよりも排出口23側に配されている。このため、導入口22から導入されたガスは、第1の処理部24aと、第2の処理部24bと、第3の処理部24cとをこの順番で経由した後に排出口23に到る。
【0018】
第1の処理部24aには、第1の処理剤31が配されている。第1の処理剤31は、第1の処理部24aに充填されている。第1の処理剤31は、金属の酸化物、金属の水酸化物及び金属の炭酸塩から選ばれた少なくとも一種の無機化合物を含む。本実施形態では、第1の処理剤31は、硫黄原子を有する還元剤を含まない。
【0019】
第2の処理部24bには、第2の処理剤32が配されている。第2の処理剤32は、第2の処理部24bに充填されている。第2の処理剤32は、金属の酸化物、金属の水酸化物及び金属の炭酸塩から選ばれた少なくとも一種の無機化合物と、硫黄原子を有する還元剤とを含む。
【0020】
第1及び第2の処理剤31,32に含まれる、金属の酸化物、金属の水酸化物及び金属の炭酸塩から選ばれた少なくとも一種の無機化合物は、例えばハロゲン化合物等の、被処理ガスに含まれる処理しようとする成分、又は処理しようとする成分から生成した成分と反応する。
【0021】
金属の酸化物、金属の水酸化物及び金属の炭酸塩から選ばれた少なくとも一種の無機化合物の具体例としては、例えば、鉄、亜鉛、銅及びマンガンからなる群から選ばれた少なくとも一種の金属の酸化物、水酸化物又は炭酸塩等が挙げられる。これらのうちの1種のみを用いてもよいし、複数種類を混合して用いてもよい。なかでも、金属の酸化物、金属の水酸化物及び金属の炭酸塩から選ばれた少なくとも一種の無機化合物としては、鉄及び亜鉛の少なくとも一方を含む酸化物が好ましく用いられる。第1の処理剤31に酸化鉄が含まれており、第2の処理剤32に酸化亜鉛が含まれていることがより好ましい。
【0022】
硫黄原子を有する還元剤は、被処理ガスに含まれる処理しようとする成分、又は処理しようとする成分から生成した成分と反応する。
【0023】
硫黄原子を有する還元剤の具体例としては、例えば、亜硫酸塩、亜二チオン酸塩、四チオン酸塩、チオ硫酸塩等が挙げられる。好ましく用いられる亜硫酸塩の具体例としては、例えば、亜硫酸ナトリウム、亜硫酸カリウム、亜硫酸アンモニウム等が挙げられる。好ましく用いられる亜二チオン酸塩の具体例としては、亜二チオン酸ナトリウム、亜二チオン酸カリウム等が挙げられる。好ましく用いられる四チオン酸塩の具体例としては、四チオン酸ナトリウム、四チオン酸カリウム等が挙げられる。好ましく用いられるチオ硫酸塩の具体例としては、チオ硫酸ナトリウム、チオ硫酸カリウム、チオ硫酸アンモニウム等が挙げられる。これらの還元剤の1種のみを用いてもよいし、複数種類を混合して用いてもよい。
【0024】
硫黄原子を有する還元剤は、Na・5HOなどの水和物であることが好ましい。
【0025】
第3の処理部24cには、第3の処理剤33が配されている。第3の処理剤33は、第3の処理部24cに充填されている。第3の処理剤33は、酸化硫黄(SO)を吸着する吸着剤、及び酸化硫黄(SO)と反応する反応剤の少なくとも一方が配されている。
【0026】
酸化硫黄を吸着する吸着剤の具体例としては、ゼオライト、活性炭、活性白土、シリカ、アルミナ等が挙げられる。これらのうちの1種のみを吸着剤として用いてもよいし、複数種類を吸着剤として用いてもよい。
【0027】
酸化硫黄と反応する反応剤の具体例としては、重曹、消石灰、水酸化マグネシウム等が挙げられる。これらのうちの1種のみを反応剤として用いてもよいし、複数種類を反応剤として用いてもよい。
【0028】
処理装置1の作用について、三塩化ホウ素ガスと、塩素ガスとを含む被処理ガスが処理装置1に導入された場合を例に挙げて説明する。なお、ここでは、第1の処理剤31が酸化亜鉛又は酸化鉄を含み、第2の処理剤32が酸化亜鉛又は酸化鉄とチオ硫酸ナトリウムとを含むものとする。
【0029】
第1及び第2の処理剤31,32が酸化亜鉛を含む場合は、被処理ガスに含まれる三塩化ホウ素ガスは、以下の反応式(1)及び反応式(2)により、第1及び第2の処理剤31,32によって処理される。
【0030】
BCl+3HO=3HCl+HBO ……… (1)
2HCl+ZnO=ZnCl+HO ……… (2)
一方、第1及び第2の処理剤31,32が酸化鉄を含む場合は、被処理ガスに含まれる三塩化ホウ素ガスは、以下の反応式(1)、反応式(3)及び反応式(4)により、第1及び第2の処理剤31,32によって処理される。
【0031】
BCl+3HO=3HCl+HBO ……… (1)
6HCl+Fe=2FeCl+3HO ……… (3)
2BCl+Fe=2FeCl+B ……… (4)
第2の処理剤32が酸化亜鉛を含む場合は、被処理ガスに含まれる塩素ガスは、以下の反応式(5)により、第2の処理剤32により処理される。
【0032】
4Cl+Na・5HO+5ZnO=2NaCl+3ZnCl+2ZnSO+5HO ……… (5)
特許文献1に記載の処理装置では、上流側に配された鉄化合物等により、三塩化ホウ素ガス等のハロゲン化物が処理される。一方、塩素ガス等のハロゲンガスは、上流側に配された鉄化合物等によっては処理されない。ハロゲンガスは、活性炭により吸着される。ここで、鉄化合物とハロゲン化物との反応は発熱反応である。このため、鉄化合物とハロゲン化物との反応により活性炭の吸着能が低下する。さらに、鉄化合物とハロゲン化物との反応により生じた水が活性炭に吸着されることにより、活性炭のハロゲン化物の吸着可能量が少なくなる。従って、特許文献1に記載の処理装置の、ハロゲン化物とハロゲンガスとを含む被処理ガスに対する処理能力は、必ずしも十分に高いとはいえない場合もある。
【0033】
本実施形態の処理装置1における第1の処理剤31とハロゲン化物との反応も発熱反応である。このため、第2の処理部24bが第1の処理剤31により加熱される。第2の処理剤32とハロゲン化物、ハロゲンガスとの反応は、高温になるほど進行しやすくなる。このため、第1の処理剤31とハロゲン化物との反応により、第2の処理剤32によるハロゲン化物及びハロゲンガスの処理も促進される。従って、処理装置1は、ハロゲン化物とハロゲンガスとを含む被処理ガスに対して高い処理能力を有する。
【0034】
なお、ハロゲンガスに対する処理能力を高める観点から、第1の処理剤にも硫黄原子を含む還元剤を含有させることも考えられる。しかしながら、硫黄原子を含む還元剤とハロゲンガスとの反応も発熱反応である。このため、第1の処理剤にまで硫黄原子を含む還元剤を添加してしまうと、第2の処理剤の温度が高くなりすぎる場合がある。よって、処理室において水分が欠乏してしまう場合がある。水分が欠乏すると、式(1)〜(4)から理解される通り、ハロゲン化物及びハロゲンガスの処理が進行しにくくなる。従って、ハロゲン化物及びハロゲンガスの処理能力がかえって低下してしまう。本実施形態のように、第1及び第2の処理剤31,32のそれぞれに、金属の酸化物、金属の水酸化物及び金属の炭酸塩から選ばれた少なくとも一種の無機化合物を含ませ、硫黄原子を有する還元剤は第1の処理剤31に含有させず、第2の処理剤32に含有させることにより、ハロゲン化物とハロゲンガスとを含む被処理ガスに対する高い処理能力を実現させることができる。
【0035】
上記観点からは、処理装置の処理能力をさらに向上させるために、第3の処理剤を設けず、第1及び第2の処理剤のみを設けることも考えられる。しかしながら、本発明者らは、鋭意研究の結果、第1及び第2の処理剤のみを設けた場合は、排出口23や排出口23に接続された配管が腐食することがあることを見出した。排出口23等が腐食する原因としては、定かではないが、被処理ガスの処理時に、硫黄原子を有する還元剤から酸化硫黄(SO)が発生していることが考えられる。
【0036】
本発明者らは、上記知見に基づき、第2の処理剤32の下流側に、酸化硫黄を吸着する吸着剤及び酸化硫黄と反応する反応剤のうちの少なくとも一方を含む第3の処理剤33を配することに想到した。第3の処理剤33を配することにより、第2の処理剤32において酸化硫黄が発生した場合であっても、その酸化硫黄は第3の処理剤33により吸着される。従って、排出口23や、排出口23に接続された配管等に腐食性のガスや液体が流入することが抑制される。
【0037】
なお、第3の処理剤33に吸着剤が含まれる場合、その吸着剤の吸着能は、高温になるほど低下する。しかしながら、発生する酸化硫黄は、被処理ガスに含まれるハロゲンガス等と比較して非常に少量であるため、吸着剤が高温になり、吸着剤の吸着能が低下しても、酸化硫黄の処理にそれほど大きな影響は発生しない。
【0038】
また、例えばハロゲンガスに対して第2の処理剤32が破過した場合であっても、第2の処理部24bを通過したハロゲンガスは、第3の処理剤33に吸着剤が含まれる場合は、その吸着剤により吸着される。従って、ハロゲンガスが排出口23から排出されることを抑制することができる。
【0039】
以下、本発明の好ましい実施形態の他の例について説明する。以下の説明において、上記第1の実施形態と実質的に共通の機能を有する部材を共通の符号で参照し、説明を省略する。
【0040】
(第2の実施形態)
図2は、第2の実施形態に係るガスの処理装置の模式的断面図である。
【0041】
本実施形態に係る処理装置2は、第3の処理部24cを冷却する冷却機構40を有する点で、第1の実施形態に係る処理装置1と異なる。冷却機構40を設けることにより、第3の処理部24cに配された吸着剤の温度が上昇することを抑制することができる。従って、吸着剤の吸着能の低下を抑制することができる。よって、酸化硫黄をより確実に吸着させることができる。
【0042】
本実施形態では、冷却機構40は、容器21の外表面から突出する突起部によって構成されている。突起部は、図2に示されるように、容器21の周方向に沿って延びていてもよいし、容器21の高さ方向に沿って延びていてもよい。
【0043】
本発明において、冷却機構は、突起部以外により構成されていてもよい。冷却機構は、例えば、ペルチェ素子などにより構成することもできるし、クーラントが供給される配管により構成することもできる。
【0044】
(第3の実施形態)
図3は、第3の実施形態に係るガスの処理装置の模式的断面図である。
【0045】
本実施形態に係る処理装置3は、サンプリングポート51を有する。サンプリングポート51は、第2の処理部24bと第3の処理部24cとの間のガスをサンプリングする。サンプリングされたガスは、サンプリングポート51が接続された検知器52に供給される。検知器52は、ハロゲン化物及びハロゲンガスのうち、少なくともハロゲンガスの検知を行う。
【0046】
本実施形態では、第3の処理剤33は、酸化硫黄のみならずハロゲンガスを吸着する吸着剤を含む。
【0047】
第2の処理剤32がハロゲンガスに対して破過をした場合、検知器52によって破過が検知される。破過が検知されたとしても、第2の処理剤32を通過したハロゲンガスは、第3の処理剤33により吸着される。このため、ハロゲンガスが排出口23から排出されるようになる前に、第2の処理剤32のハロゲンガスに対する破過を確実に検知することができる。
【符号の説明】
【0048】
1,2,3:処理装置
10:筐体
20:処理カートリッジ
21:容器
22:導入口
23:排出口
24:処理室
24a:第1の処理部
24b:第2の処理部
24c:第3の処理部
31:第1の処理剤
32:第2の処理剤
33:第3の処理剤
40:冷却機構
51:サンプリングポート
52:検知器
図1
図2
図3