特許第6252161号(P6252161)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6252161
(24)【登録日】2017年12月8日
(45)【発行日】2017年12月27日
(54)【発明の名称】エンジンのシリンダヘッド
(51)【国際特許分類】
   F02F 1/42 20060101AFI20171218BHJP
   F02F 1/36 20060101ALI20171218BHJP
   F01P 3/02 20060101ALI20171218BHJP
   F01P 3/14 20060101ALI20171218BHJP
【FI】
   F02F1/42 G
   F02F1/36 C
   F01P3/02 F
   F01P3/02 V
   F01P3/14 Z
【請求項の数】5
【全頁数】21
(21)【出願番号】特願2013-262512(P2013-262512)
(22)【出願日】2013年12月19日
(65)【公開番号】特開2015-117660(P2015-117660A)
(43)【公開日】2015年6月25日
【審査請求日】2016年10月21日
(73)【特許権者】
【識別番号】000006286
【氏名又は名称】三菱自動車工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100092978
【弁理士】
【氏名又は名称】真田 有
(72)【発明者】
【氏名】八木 一記
(72)【発明者】
【氏名】杉村 速人
(72)【発明者】
【氏名】岡 俊彦
(72)【発明者】
【氏名】川上 展弘
【審査官】 木村 麻乃
(56)【参考文献】
【文献】 特開2009−115031(JP,A)
【文献】 特開2008−267183(JP,A)
【文献】 特開2004−052546(JP,A)
【文献】 特開2002−205042(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
F02F 1/42
F01P 3/02
F01P 3/14
F02F 1/36
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
エンジンの排気系のマニホールド及びウォータージャケットを内蔵するシリンダヘッドにおいて、
前記マニホールドの下流端の排気口を囲んで環状に形成され、前記シリンダヘッドよりも下流側の排気管が接続されるフランジ部と、
前記フランジ部において前記排気口の周囲に設けられ、前記フランジ部と前記排気管との固定に係る締結具が取り付けられる複数のねじ穴と、
前記フランジ部と前記排気管との締結面の一部をなし、前記排気口の上側に配置される一対のねじ穴間を接続する上部締結面及び前記排気口の下側に配置される一対のねじ穴間を接続する下部締結面とを備え、
前記上部締結面及び前記上部締結面に接続される前記一対のねじ穴がともに、前記フランジ部の正面視で前記ウォータージャケットよりも上方に配置され、
前記下部締結面及び前記下部締結面に接続される前記一対のねじ穴がともに、前記フランジ部の正面視で前記ウォータージャケットと重合する領域内に配置される
ことを特徴とする、エンジンのシリンダヘッド。
【請求項2】
前記上部締結面と前記下部締結面とに挟まれた領域で前記締結面の一部をなし、他部よりも幅が狭く形成された除肉締結面を備えた
ことを特徴とする、請求項記載のエンジンのシリンダヘッド。
【請求項3】
前記エンジンの冷却水が内部を流通し、前記マニホールドの上面に沿って面状に配置される上側冷却水路と、
前記エンジンの冷却水が内部を流通し、前記マニホールドの下面に沿って面状に配置される下側冷却水路とを備え、
前記下部締結面が、前記フランジ部の正面視で前記下側冷却水路と重合する位置に配置され、
前記上部締結面が、前記上側冷却水路よりも上方に配置される
ことを特徴とする、請求項1または2記載のエンジンのシリンダヘッド。
【請求項4】
前記下側冷却水路が、前記下部締結面に接続される前記一対のねじ穴に対応する位置で前記シリンダヘッドの内側に向かって凹んだ形状の窪み部を有する
ことを特徴とする、請求項記載のエンジンのシリンダヘッド。
【請求項5】
前記下側冷却水路が、前記下部締結面に接続される前記一対のねじ穴の外周部に沿って前記冷却水の流通方向を案内する案内部を有する
ことを特徴とする、請求項記載のエンジンのシリンダヘッド。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、エンジンの排気系のマニホールドを内蔵するシリンダヘッドに関する。
【背景技術】
【0002】
従来、排気系のマニホールドをシリンダヘッドに内蔵させたエンジンが開発されている。すなわち、エンジンの燃焼室と繋がる複数の排気ポートがシリンダヘッド内で合流するように、シリンダヘッドと排気マニホールドとを一体に形成したものである。このような構造により、排気系に介装される排気浄化触媒とエンジンとの距離を短縮することができ、排気浄化性能を向上させることができるほか、エンジンの省スペース化が容易となる。
【0003】
一方、このようなシリンダヘッドは、マニホールドが別設されたものと比較して、排気熱を受けて高温になりやすいという難点がある。そこで、排気ポートの周囲にエンジン冷却水を流通させることによって、冷却性を向上させることが提唱されている。具体的には、排気ポートの周面をウォータージャケットで囲んだ形状にすることや、エンジン冷却水の流れが蛇行するようにウォータージャケットの形状を形成することが提案されている(特許文献1,2参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特許第4262343号公報
【特許文献2】特許第4098712号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、従来のマニホールド内蔵型のシリンダヘッドでは、その下流側の排気管を接続するためのフランジ部における温度分布が十分に考慮されていない。すなわち、シリンダヘッドの冷却手法には、おもに水冷と空冷との二通りの手法があり、冷却能力及び冷却効率はそれぞれの手法で相違する。このような相違を考慮することなく二つの冷却手法を闇雲に併用すると、シリンダヘッド内での温度分布に偏りが生じやすくなり、温度差による変形,歪みがシリンダヘッドの機能を阻害する場合がある。
【0006】
特に、シリンダヘッドとその下流側の排気管との接続部位となるフランジ部では、このような温度分布の偏りによって位置毎の熱膨張率が相違し、締結面に隙間が発生する可能性がある。例えば、特許文献1,2に記載のフランジでは、締結面の背面側にウォータージャケットが設けられた部位と設けられていない部位とが混在するため、締結面に生じた隙間からの排気漏れを引き起こすおそれがある。
【0007】
一方、フランジの締結面全体の背面にウォータージャケットを配置することで、このような温度分布の差を均等化することも考えられる。しかし、マニホールドの全周を囲むようにウォータージャケットが配置されたシリンダヘッドを製造することは、施工上困難である。
このように、従来のマニホールド内蔵型のシリンダヘッドでは、フランジ部における温度分布を考慮した冷却が難しいという課題がある。
【0008】
本件の目的の一つは、上記のような課題に鑑み創案されたもので、フランジ部における冷却温度分布を適正化することができるようにしたシリンダヘッドを提供することである。なお、この目的に限らず、後述する発明を実施するための形態に示す各構成により導かれる作用効果であって、従来の技術によっては得られない作用効果を奏することも本件の他の目的として位置づけることができる。
【課題を解決するための手段】
【0009】
(1)ここで開示するエンジンのシリンダヘッドは、エンジンの排気系のマニホールド及びウォータージャケットを内蔵するシリンダヘッドにおいて、前記マニホールドの下流端の排気口を囲んで環状に形成され、前記シリンダヘッドよりも下流側の排気管が接続されるフランジ部を備える。また、前記フランジ部において前記排気口の周囲に設けられ、前記フランジ部と前記排気管との固定に係る締結具が取り付けられる複数のねじ穴を備える。また、前記フランジ部と前記排気管との締結面の一部をなし、前記排気口の上側に配置される一対のねじ穴間を接続する上部締結面及び前記排気口の下側に配置される一対のねじ穴間を接続する下部締結面を備える。
また、前記上部締結面及び前記上部締結面に接続される前記一対のねじ穴がともに、前記フランジ部の正面視で前記ウォータージャケットよりも上方に配置される。一方、前記下部締結面及び前記下部締結面に接続される前記一対のねじ穴がともに、前記フランジ部の正面視で前記ウォータージャケットと重合する領域内に配置される
【0011】
)前記上部締結面と前記下部締結面とに挟まれた領域で前記締結面の一部をなし、他部よりも幅が狭く形成された除肉締結面を備えることが好ましい
【0012】
)前記エンジンの冷却水が内部を流通し、前記マニホールドの上面に沿って面状に配置される上側冷却水路と、前記エンジンの冷却水が内部を流通し、前記マニホールドの下面に沿って面状に配置される下側冷却水路とを、前記ウォータージャケットとして備えることが好ましい。
この場合、前記下部締結面が、前記フランジ部の正面視で前記下側冷却水路と重合する位置に配置され、前記上部締結面が、前記上側冷却水路よりも上方に配置されることが好ましい。
【0013】
)前記下側冷却水路が、前記下部締結面に接続される前記一対のねじ穴に対応する位置で前記シリンダヘッドの内側に向かって凹んだ形状の窪み部を有することが好ましい。
例えば、前記下側冷却水路が、前記シリンダヘッドと排気管との締結面に穿孔されるねじ穴を挟んで、前記締結面に迫り出した形状に形成されることが好ましい。言い換えれば、前記下側冷却水路が、前記ねじ穴の一側及び他側に所定の間隔を空けて設けられることが好ましい。つまり、前記ねじ穴が、前記下側冷却水路によって少なくとも二方向から(例えば左右から)挟まれた状態とされることが好ましい。
【0014】
)前記下側冷却水路が、前記ねじ穴の外周部に沿って前記冷却水の流通方向を案内する案内部を有することが好ましい。
この場合、前記案内部が、前記下側冷却水路のうち前記締結面に迫り出した形状の部位に向かって前記冷却水を案内する曲面形状を有することが好ましい。
【発明の効果】
【0015】
開示のエンジンのシリンダヘッドによれば、上部締結面及びこれに接続される一対のねじ穴の両方がウォータージャケットよりも上方に配置されるとともに、下部締結面及びこれに接続される一対のねじ穴の両方の裏側にウォータージャケットが配置されるため、上部締結面の一部分が局所的に過冷却されるようなことがなく、熱分布を均等にして適正化することができる。これにより、例えば締結面に隙間が生じることを防止することができるとともに、締結面の締結力を維持することができる。
また、開示の構造では、排気口の下側に配置される下部締結面がおもに水冷され、排気口の上側に配置される上部締結面はおもに空冷される。このように、冷却能力の高い水冷構造を排気口の下側に適用することで、シリンダブロック側からの熱伝達の影響を受けにくくすることができ、フランジ部の冷却性を向上させるとともに、締結力を維持することができる。また、フランジ部の上面側からの放熱性を高めつつ、その下面側の水冷性を向上させることができる。したがって、フランジ部の冷却性を向上させるとともに、締結力を維持することができる。
【図面の簡単な説明】
【0016】
図1】一実施形態に係るエンジンのシリンダヘッドを例示する斜視図である。
図2】エンジンの縦断面図である。
図3】(A)はシリンダヘッド内の吸排気ポート形状を示す水平断面図、(B)は排気ポートの構造を説明するための模式図である。
図4】シリンダヘッドの要部を拡大して示す斜視図である。
図5】(A)は上側ウォータージャケットの水平断面図、(B)は下側ウォータージャケットの水平断面図である。
図6】(A)はシリンダヘッドの要部を拡大して示す側面図、(B)は(A)のA−A断面図、(C)は(A)のB−B断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0017】
図面を参照して、車両に適用されたエンジンのシリンダヘッドについて説明する。なお、以下に示す実施形態はあくまでも例示に過ぎず、以下の実施形態で明示しない種々の変形や技術の適用を排除する意図はない。本実施形態の各構成は、それらの趣旨を逸脱しない範囲で種々変形して実施することができるとともに、必要に応じて取捨選択することができ、あるいは適宜組み合わせることが可能である。
【0018】
[1.エンジン構成]
本実施形態のシリンダヘッド1は、図1に示すエンジン10のシリンダブロック2に締結固定される。以下の説明では、シリンダヘッド1に対してシリンダブロック2が固定される側を下方とし、その逆側を上方とする。シリンダヘッド1の下面及びシリンダブロック2の上面はともに平面状に形成され、これらの接合面に気密性を確保するためのガスケットが介装された状態で、シリンダヘッド1とシリンダブロック2とが結合される。
【0019】
シリンダヘッド1の上面にはヘッドカバーが取り付けられ、シリンダブロック2の下面にはクランクケース及びオイルパンが取り付けられる。また、エンジン10のフロント側(図1中の左下方向)には、エンジン10の補機類や動力伝達用のプーリ(クランクプーリ,タイミングプーリ,スプロケット等)が設けられる。一方、エンジン10のリア側(図1中の右上方向)にはドライブプレート,フライホイールが設けられ、パワートレーンの下流側の各種装置(例えば、変速機,回転電機等)に接続される。
【0020】
このエンジン10は、水冷式の多気筒ガソリンエンジンである。エンジン10の内部には、中空円筒状に穿孔された複数のシリンダボア3(気筒,以下単にシリンダ3と呼ぶ)が列をなして配置される。図1に示すエンジン10は、四つのシリンダ3が直列に配置された四気筒のエンジン10である。シリンダ3の番号は、エンジン10のフロント側から順に、#1,#2,#3,#4と表記する。
【0021】
各シリンダ3内を摺動するピストンの下端は、コネクティングロッドを介してクランクシャフトに接続される。以下、シリンダ3が列状に並べられた方向(列設方向)をシリンダ列方向Lという。#1気筒,#4気筒は、シリンダ3の外表面側(シリンダ列方向Lの端部)に位置することから「外側気筒」と呼ばれる。これに対し、#2気筒,#3気筒は、シリンダ3の内部側(外側気筒よりも内側)に位置することから「内側気筒」と呼ばれる。
【0022】
シリンダ3の周囲には、シリンダ3の筒面3Bに沿って曲面状に掘り込まれたウォータージャケット4が配置される。ウォータージャケット4は、シリンダ3の外周側を囲うように設けられる。これにより、シリンダ3のほぼ全体が、ウォータージャケット4の内部を流通するエンジン冷却水によって冷却される。図1図2に示すシリンダブロック2はオープンデッキ型のものであり、シリンダブロック2の上面でウォータージャケット4の上方が開放されるとともに、シリンダヘッド1側に形成されるウォータージャケット4,4A,4Bに連通している。つまり、ウォータージャケット4は、シリンダブロック2の内部だけでなく、シリンダヘッド1の内部にも連続して形成され、エンジン10の全体を冷却する。これにより、例えばシリンダ3に接続される吸気ポート5(吸気流路),排気ポート6等の外周部分も、エンジン冷却水によって冷却される。
【0023】
図2に示すように、シリンダヘッド1の下面には、シリンダ3の天井面3A(燃焼室の天井面)となる凹みが形成される。天井面3Aの輪郭形状はシリンダ3と同一の円形であり、凹みの形状は例えばペントルーフ形状(三角屋根型)や半球状とされる。また、この天井面3Aには、吸気ポート5及び排気ポート6が接続される。吸気ポート5は、シリンダ3内に導入される吸入空気が流通する中空管状の通路であり、天井面3A及びシリンダヘッド1の吸気側側壁7の双方に対して開口部を持つ。同様に、排気ポート6は、排気が流通する中空管状の通路であり、天井面3A及びシリンダヘッド1の排気側側壁8の双方に対して開口部を持つ。吸気ポート5及び排気ポート6の流路形状は、滑らかに湾曲した形状とされる。本実施形態の排気ポート6は、排気系のマニホールド(多分岐管)として機能する多分岐型の排気流路である。
【0024】
吸気ポート5,排気ポート6における燃焼室側の端部には、図示しない吸気弁,排気弁が設けられる。以下、吸気弁によって開閉される吸気ポート5の端部開口を吸気バルブ孔11と呼び、排気弁によって開閉される排気ポート6の端部開口を排気バルブ孔12と呼ぶ。また、シリンダ3の天井面3Aには、シリンダヘッド1の上面まで貫通する点火プラグ挿入孔9が形成される。この点火プラグ挿入孔9は、点火プラグが固定される部位であり、それぞれのシリンダ3に対して一つずつ設けられる。
【0025】
図1に示すように、シリンダヘッド1の上部における点火プラグ挿入孔9の周囲には、動弁室13が形成される。動弁室13の内部には、吸気弁及び排気弁を駆動する動弁機構が収納される。本実施形態の動弁機構は、マルチバルブに対応するDOHC型の可変動弁機構である。吸気バルブ孔11は、一つのシリンダ3に対して二個設けられる。同様に、排気バルブ孔12も、一つのシリンダ3に対して二個設けられる。可変動弁機構は、これらのバルブ孔11,12のそれぞれを開閉するための吸気弁,排気弁の動作を自在に制御する。
【0026】
この可変動弁機構は、個々の吸気弁,排気弁のバルブリフト量及びバルブタイミングを個別に、又は、連動させつつ変更する機能を持つ。可変動弁機構には、吸気弁,排気弁のバルブリフト量及びバルブタイミングを変更するための機構として、可変バルブリフト機構及び可変バルブタイミング機構が内蔵される。これらの具体的な構造は任意であり、公知の可変動弁機構を本実施形態の動弁機構として適用することができる。
【0027】
[2.吸排気ポート]
シリンダヘッド1の内部における吸気ポート5及び排気ポート6の模式的な形状を、図3(A)に例示する。
吸気ポート5は、それぞれのシリンダ3に対して一つずつ設けられるとともに、それぞれのシリンダ3に形成された一対の吸気バルブ孔11の双方に対して下流端が接続されるように、二股に分岐した形状とされる。エンジン10の上面視における吸気ポート5の透視形状は、図3(A)に示すように、Y字状となる。また、それぞれのシリンダ3に接続された吸気ポート5は、シリンダヘッド1内で互いに集合することなく、独立して吸気側側壁7に開口する。したがって、シリンダヘッド1に形成される吸気ポート5の上流端の開口部は、図1に示すように、シリンダ3の数と同一数の四個となる。
【0028】
一方、排気ポート6(排気系のマニホールド)は、その全体がシリンダヘッド1に内蔵される。すなわち、図3(A)に示すように、排気ポート6の上流端は個々の排気バルブ孔12に対して接続されるように、八本に分岐した形状とされる。また、排気ポート6の下流端は、分岐している個々の通路が一本に集約された形状とされる。図3(B)に模式的に示すように、排気ポート6の分岐形状は、上流側ほど分岐数が増加する樹枝形状(樹形図形状)である。
【0029】
ここで、排気バルブ孔12に対して接続された最も細い通路(排気ポート6の最も上流に位置する枝管)のことを小通路6Aと呼ぶ。一本の小通路6Aの断面積S1は、一個の排気バルブ孔12の開口面積に応じた大きさ(例えば、排気バルブ孔12の開口面積と同程度)に設定される。また、同一のシリンダ3に接続された一対の小通路6Aは、排気バルブ孔12に比較的近い位置で合流して中通路6B(排気ポート6の中間部に位置する枝管)を形成する。中通路6Bの断面積S2は、その中通路6Bに合流している一対の小通路6Aの総断面積2S1に応じた大きさ(例えば、総断面積2S1と同程度の大きさ)に設定される。
【0030】
また、互いに隣接する二つのシリンダ3に接続された中通路6Bは、排気バルブ孔12から比較的遠い位置で合流して大通路6Cを形成する。図3(A)に示す例では、#1気筒及び#2気筒に接続される中通路6Bが合流して大通路6Cを形成するとともに、#3気筒及び#4気筒に接続される中通路6Bが合流して大通路6Cを形成している。
大通路6Cの断面積S3は、排気の流通方向の下流側ほど小さく(狭く)なるように設定される。大通路6Cの上流端では、その大通路6Cに合流している一対の中通路6Bの総断面積2S2に応じた大きさ(例えば、総断面積2S2と同程度の大きさ)に設定される。一方、大通路6Cの下流端では、一つの中通路6Bの断面積S2に応じた大きさ(例えば、断面積S2と同程度の大きさ)に設定される。
【0031】
一対の中通路6Bが合流する合流箇所の上流側において、一対の中通路6Bによって挟まれた部分のことを股部16と呼ぶ。股部16は、例えば、一方の中通路6Bまでの距離が所定距離以下となる部分(一方の中通路6Bの周面を拡径方向に広げた円筒の内側部分)と、他方の中通路6Bまでの距離が所定距離以下となる部分(他方の中通路6Bの周面を拡径方向に広げた円筒の内側部分)との重合領域として定義できる。
【0032】
図3(A)に示す例では、#1気筒からの排気流と#2気筒からの排気流とによって挟まれる三角形状の部位が、股部16に相当する。また、#3気筒からの排気流と#4気筒からの排気流とによって挟まれる三角形状の部位も、股部16に相当する。なお、股部16の具体的な立体形状は、シリンダヘッド1の内部における熱分布に応じて任意に設定することができる。
【0033】
二本の大通路6Cは、シリンダヘッド1の排気側側壁8に近い位置で合流して、全てのシリンダ3からの排気が流通する集合通路6Dを形成する。集合通路6Dの断面積S4は、その下流側に接続される排気管や触媒装置,ターボチャージャー等の大きさに応じて設定される。ただし、二本の大通路6Cの合流位置において、大通路6Cの下流端(すなわち、集合通路6Dの入り口部分)は、大通路6Cの上流端よりも細く絞られた形状とされている。これにより、一対の小通路6Aの合流位置での排気流速と、集合通路6Dの入り口部分での排気流速とがほぼ同一となる。したがって、集合通路6D内で排気の流れが失速しにくくなり、排気効率が向上する。
【0034】
上記の股部16と同様に、二本の大通路6Cによって挟まれる部分のことを第二股部17と呼ぶ。第二股部17は、例えば、一方の大通路6Cまでの距離が所定距離以下となる部分と、他方の大通路6Cまでの距離が所定距離以下となる部分との重合領域として定義できる。図3(A)に示す例では、#1,#2気筒からの排気流と#3,#4気筒からの排気流とによって挟まれる三角形状の部位が、第二股部17に相当する。第二股部17の具体的な立体形状は、シリンダヘッド1の内部における熱分布に応じて任意に設定することができる。
【0035】
図4は、シリンダヘッド1をその排気側側壁8側から見た斜視図である。排気側側壁8には、上記の排気ポート6の全体を囲むように、シリンダヘッド1の外側に向かって半月状に膨出した張出部14が設けられる。この張出部14は、エンジン10の上面視で半円弧形状の輪郭形状を有し、排気ポート6の集合通路6Dに臨む中央部分が水平方向外側に膨出した形状とされる。張出部14の全体形状は、図4に示すように、平坦な円筒の一部をその頂面に垂直な平面で切断した形状(切断されたホールケーキ形状)に準えることができる。
【0036】
張出部14の上面14A及び下面14Bは、それぞれが平面状であって互いにほぼ平行に設けられる。また、張出部14の上面14Aの位置は、シリンダヘッド1の上面よりも下方に設定され、張出部14の下面14Bの位置は、シリンダヘッド1の下面よりも上方(又は、シリンダヘッド1の下面と同一平面上)に設定される。水平方向外側に飛び出した張出部14の側面14C(外表面)は、切断された円弧をエンジン10の上下方向に伸ばしたときにできる弓形の曲面状となる。
【0037】
なお、張出部14の形状は、少なくとも排気ポート6の全体が収容される範囲で、できるだけ小さく形成されることが好ましい。逆に言えば、排気ポート6は、張出部14の内側において張出部14の側面14Cに沿って配設されることが好ましい。エンジン10の上面視における排気ポート6のレイアウトは、図3(A)に示すように、#1気筒からの排気を流通させる小通路6A,中通路6B,大通路6Cが、張出部14の側面14Cに沿って配置されたレイアウトとされる。同様に、#4気筒からの排気を流通させる小通路6A,中通路6B,大通路6Cも、張出部14の側面14Cに沿って配置される。
【0038】
集合通路6Dの下流端となる単一の開口部(以下、排気口18という)は、排気側側壁8におけるシリンダ列方向Lの中央に配置される。つまり、シリンダヘッド1を排気側側壁8側から見たときに、排気口18は#2気筒と#3気筒との間に位置するように設けられる。また、排気口18の周囲には、図4に示すように、排気の流通方向に対して垂直な平面状の締結面15Aを有するフランジ部15が形成される。フランジ部15は、図示しない下流側の排気管(触媒装置,ターボチャージャー等との接続用の管材を含む)が締結固定される部位である。フランジ部15の締結面15Aは、排気口18の周囲において、排気口18の上下左右を環状に囲むように設けられる。
【0039】
フランジ部15には、締結具を取り付けるための複数のボス部19が設けられる。各々のボス部19には、締結具と螺合する溝を内筒面に有する締結孔20(ねじ穴)が穿設される。締結孔20の穿設方向は、締結面15Aに垂直な方向とされる。ボス部19の位置は、排気口18の周方向に所定の間隔を空けて設定される。図4に示す例は、環状に配置された締結面15Aの四隅にボス部19が形成されたものである。
【0040】
これらのボス部19のうち、上側に位置する二つのボス部19は、張出部14の上面14Aよりもやや上方に膨出するように形成される。一方、下側に位置する二つのボス部19は、このボス部19の下端が張出部14の下面14Bとほぼ一致するように(例えば、張出部14の下面14Bよりも下方へは突出しないように)形成される。これにより、張出部14の下面14Bよりも下方の空間が確保され、例えばシリンダブロック2との干渉が防止される。
【0041】
ここで、フランジ部15の締結面15Aについて詳述する。図6(A)に示すように、締結面15Aのうち、上側に位置する二つのボス部19に穿孔された一対の締結孔20間に挟まれた部位のことを、上部締結領域15B(第二締結面)と呼ぶ。上部締結領域15Bは、上側の一対の締結孔20間を接続するように配置される。同様に、下側に位置する二つのボス部19に穿孔された一対の締結孔20間に挟まれた部位のことを、下部締結領域15C(第一締結面)と呼ぶ。下部締結領域15Cは、下側の一対の締結孔20間を接続するように配置される。
【0042】
フランジ部15のうち、排気口18の中心を基準として、シリンダ列方向Lに位置する部位(フランジ部15を正面から見て排気口18の左右の部位)には、フランジ部15の厚み(締結面15Aの幅)を他部よりも薄く形成した除肉部21が設けられる。ここでいうフランジ部15の厚みとは、フランジ部15の表面で排気口18の縁からフランジ部15の外側の縁までの長さである。この除肉部21は、排気口18を挟んでその左右両側に配置される。これにより、集合通路6Dの周囲の肉厚が薄くなり、放熱性が向上する。
【0043】
除肉部21の形状は、排気側側壁8(排気口18)をその正面から見たときに、上下のボス部19からの距離が離れるほど(上下方向の中央寄りとなる位置ほど)フランジ部15の厚みが薄くなるようにボス部19の間を接続する湾曲形状とされる。フランジ部15の正面視での形状は、四角形の縦辺を内側に湾曲させたような鼓型となる。以下、除肉部21における締結面15Aのことを、中央締結領域15D(除肉締結面)と呼ぶ。中央締結領域15Dは、上部締結領域15Bと下部締結領域15Cとの間に挟まれた領域で締結面15Aの一部をなし、他部(上部締結領域15B,下部締結領域15C)よりも幅が狭く形成される。
【0044】
図4に示すように、張出部14の側面14Cには、フランジ部15の除肉部21からシリンダ列方向Lに延びる放熱リブ22が膨出形成される。放熱リブ22は、側面14Cの表面から板厚方向外側に突出した突起部分を紐状に連設してなる突条(すなわち、紐状の突起)である。放熱リブ22は、フランジ部15の左右それぞれに一本ずつ設けられる。また、それぞれの放熱リブ22と除肉部21とが接する位置は、フランジ部15の厚みが最も薄肉となる位置の近傍とされる。これにより、放熱リブ22は、張出部14の側面14Cの剛性,強度を向上させるように機能するとともに、フランジ部15の剛性,強度を向上させるようにも機能する。
【0045】
また、放熱リブ22は張出部14の側面14Cに膨出形成されるため、空気に接触する面積が増大することになり、放熱性が向上する。これに加えて、放熱リブ22は放熱が促進される除肉部21に繋がって形成されるため、排気口18を通過する排気熱が除肉部21を介して放熱リブ22に伝達されやすくなる。これにより、排気熱は効率的に放熱される。なお、放熱リブ22のシリンダ列方向Lの長さや上下方向長さは、シリンダヘッド1を製造するときの湯流れ(溶湯の流動性)を考慮して適宜設定される。
【0046】
[3.ウォータージャケット]
シリンダヘッド1の内部におけるウォータージャケット4の形状を図5(A),(B)に例示する。シリンダヘッド1には、上記の排気ポート6(シリンダヘッド1に内蔵された排気系のマニホールド)の周囲を冷却するためのウォータージャケット4として、内側及び外側の二系統の冷却水路が設けられる。また、これらの二系統の冷却水路は、排気ポート6の上側及び下側の双方に設けられる。以下の説明で符号4Aは排気ポート6よりも上側に配置されるウォータージャケット4を表し、符号4Bは排気ポート6よりも下側に配置されるウォータージャケット4を表す。なお、図中の符号34は、シリンダヘッド1とシリンダブロック2とを締結固定するための締結具が挿入されるボルト孔(ボルト孔ボス)である。
【0047】
[3−1.上側ウォータージャケット]
上側ウォータージャケット4A(上側冷却水路)には、外側冷却水路23A及び内側冷却水路24Aが設けられる。これらの冷却水路23A,24Aは、ともにシリンダブロック2内に形成されるウォータージャケット4と連通している。図5(A),(B)中の符号26は冷却水出口に相当する。また、図中の細破線はシリンダヘッド1(張出部14)及び排気ポート6の輪郭に対応する線であり、二点鎖線はシリンダ3の天井面3Aの輪郭に対応する線である。
【0048】
外側冷却水路23Aは、張出部14の内部における側面14C寄り(シリンダヘッド1の外表面側)に位置する冷却水路であり、#1気筒及び#4気筒からの排気を流通させる排気ポート6に沿って、その上面側に配置される。外側冷却水路23Aの配置形状は、エンジン10の上面視で半円弧状とされる。つまり、外側冷却水路23Aは、外側気筒に接続された排気ポート6(マニホールド,排気通路)に沿って配置される。エンジン冷却水の流通方向は、図5(A)中に黒矢印で示すように、#1気筒側が上流であり、#4気筒側が下流である。
【0049】
内側冷却水路24Aは、外側冷却水路23Aよりも張出部14の内側に配置された冷却水路であり、#2気筒及び#3気筒からの排気を流通させる排気ポート6に沿って、その上面側に配置される。内側冷却水路24Aの配置形状は、エンジン10の上面視で外側冷却水路23Aよりも小さい半円弧状とされる。つまり、内側冷却水路24Aは、内側気筒に接続されたマニホールド(排気通路)に沿って配置される。エンジン冷却水の流通方向は、#2気筒側が上流であり、#3気筒側が下流である。
【0050】
図5(A)に示すように、内側冷却水路24Aは、外側冷却水路23Aから分岐したのちに合流する形状を有する。すなわち、上側ウォータージャケット4Aは、#1気筒付近で外側冷却水路23Aと内側冷却水路24Aとに分岐したのちに#4気筒付近で合流しており、二系統に分離した流路を有する。また、外側冷却水路23Aと内側冷却水路24Aとの間には、エンジン冷却水が流通しない島部29Aが形成される。シリンダヘッド1の上面側におけるエンジン冷却水の流れを二系統に分割することで、分割しない場合と比較してトータルの流路断面積が減少する。したがって、エンジン冷却水の流速が上昇し、冷却効率が向上する。エンジン冷却水の流速の増加量は、島部29Aの形状や流路方向の断面積に応じたものとなる。
【0051】
ここで、#2気筒の筒軸と#3気筒の筒軸との中間に位置し、これらの筒軸に平行な直線を「エンジン中心C」と定義する。内側冷却水路24Aは、外側冷却水路23Aをエンジン中心Cについて縮小させた形状(外側冷却水路23Aに相似な形状)に準えられる。外側冷却水路23A及び内側冷却水路24Aが相似形状であるとき、内側冷却水路24Aの流路長さは、外側冷却水路23Aの流路長さよりも短くなる。したがって、外側冷却水路23A及び内側冷却水路24Aの冷却効率を同等とするためには、外側冷却水路23Aの流速を高めるべく、外側冷却水路23Aの流路断面積を内側冷却水路24Aの流路断面積よりも小さくすることが好ましい。あるいは、外側冷却水路23A上に、流路断面積の小さい部位(狭く絞られた部位)を設けることが好ましい。
【0052】
本実施形態では、外側冷却水路23Aのうち、排気ポート6の集合通路6Dに臨む中央部分を含む範囲には、エンジン冷却水の流速を高めるための絞り部27が設けられる。絞り部27は、他部よりも流路断面積が小さく形成された部位である。これにより、外側冷却水路23A内のエンジン冷却水の流れは、張出部14の中央部分で加速される。一方、この張出部14の中央部分には、全てのシリンダ3から排出された排気が合流する集合通路6Dが設けられる。つまり、排気熱によって昇温しやすい張出部14の中央部分における冷却水の流速が上昇することになり、エンジン10の冷却効率が向上する。
また、本実施形態の絞り部27は、次に説明する接続冷却水路28Aの近傍に設けられる。これにより、接続冷却水路28Aを流通するエンジン冷却水の流速が上昇し、接続冷却水路28Aの周囲の冷却効率も上昇する。
【0053】
外側冷却水路23Aと内側冷却水路24Aとの間には、両者を接続する接続冷却水路28Aが設けられる。接続冷却水路28Aは、排気ポート6の枝管が合流する股部16及び第二股部17に対し、上下方向に隣接する位置に配置される。すなわち、図5(A)に示すように、エンジン10の上面視で股部16,第二股部17のそれぞれに重なる位置(ハッチングで示す部分)に、接続冷却水路28Aの位置が設定される。接続冷却水路28Aの延在方向は、エンジン中心Cからの放射方向に準えられる。また、接続冷却水路28Aの一端は、外側冷却水路23Aの絞り部27によって流路断面積が狭められた部位に接続される。したがって、ベンチュリ効果により流速の速い外側冷却水路23Aに向かってエンジン冷却水が吸い上げられることになり、エンジン冷却水は接続冷却水路28A内を淀みなく流通する。
【0054】
接続冷却水路28Aは、前述の島部29Aを貫通するエンジン冷却水の流路となり、島部29A及びその周辺を冷却するように機能する。接続冷却水路28Aの流路断面積は、外側冷却水路23A,内側冷却水路24Aの流路断面積よりも小さい値に設定される。つまり、図5(A)に示すように、接続冷却水路28Aは他部よりも細い冷却水路とされる。これにより、接続冷却水路28Aを流通するエンジン冷却水の流速が上昇し、島部29A及びその周辺の冷却効率が向上する。
【0055】
外側冷却水路23A及び内側冷却水路24Aの全体形状は、大づかみにいえば、排気ポート6の上面に沿って、張出部14の上面14Aに対してほぼ平行に配置された面状の形状である。具体的には、エンジン10の外側気筒(#1気筒,#4気筒)に接続された排気ポート6とシリンダ列とで囲まれた半円盤状の形状とされる。ここで、排気側側壁8の正面から見たときのフランジ部15と、張出部14の内部に設けられるウォータージャケット4Aを透視した輪郭線(破線)とを図6(A)に示す。
【0056】
外側冷却水路23A及び内側冷却水路24Aは、締結面15Aに設けられた四個の締結孔20のうち、上側の二つの締結孔20と干渉しないように、これらの締結孔20よりも下方に配置される。つまり、締結面15Aのうち、二つの上側のボス部19の間に挟まれる上部締結領域15Bの裏側には、上側ウォータージャケット4Aが配置されない。言い換えれば、上側の二つの締結孔20の間を接続するように配置される上部締結領域15Bは、フランジ部15の正面視で上側ウォータージャケット4Aと重合しない領域内に配置される。また、上部締結領域15B及びその左右両端に位置する二つの締結孔20の両方が、上側ウォータージャケット4Aと重合しないように配置される。
【0057】
したがって、上部締結領域15Bの一部分が上側ウォータージャケット4Aによって局所的に過冷却されるようなことがなく、熱の分布が均等化され、上部締結領域15Bの締結応力分布も均等となる。なお、上部締結領域15B及びその左右両端の締結孔20は、上側ウォータージャケット4Aから離隔して(上側ウォータージャケット4Aまでの最短距離が所定距離以上となるように)設けられることが好ましい。
【0058】
[3−2.下側ウォータージャケット]
下側ウォータージャケット4B(下側冷却水路)にも、外側冷却水路23B及び内側冷却水路24Bが設けられる。なお、下側ウォータージャケット4Bは、シリンダ3の天井面3Aの近傍で上側ウォータージャケット4Aと連通している。一方、張出部14内では、上下のウォータージャケット4A,4Bは互いに独立している。
また、下側ウォータージャケット4Bは、シリンダヘッド1の下面に形成された開口部33を介して、シリンダブロック2側のウォータージャケット4とも連通している。開口部33は、図5(B)に示すように、シリンダ3の天井面3Aの外周を囲むように、複数箇所に設けられる。
【0059】
外側冷却水路23Bは、張出部14の内部における側面14C寄り(シリンダヘッド1の外表面側)に位置する冷却水路であり、#1気筒及び#4気筒からの排気を流通させる排気ポート6に沿って、その下面側に配置される。外側冷却水路23Bの配置形状は、外側冷却水路23Aと同様に、エンジン10の上面視で半円弧状とされる。つまり、外側冷却水路23Bは、外側気筒に接続された排気ポート6(マニホールド,排気通路)に沿って配置される。これにより、排気ポート6は、対をなす外側冷却水路23A,23Bによって上下から挟まれた状態となる。エンジン冷却水の流通方向は、図5(B)中に黒矢印で示すように、#1気筒側が上流であり、#4気筒側が下流である。
【0060】
この外側冷却水路23Bは、エンジン10の上面視で上側の外側冷却水路23Aよりもやや大きめに形成される。すなわち、下側の外側冷却水路23Bにおけるエンジン中心Cから最も距離が大きい点までの距離(最大張出寸法)L2は、上側の外側冷却水路23Aにおける最大張出寸法L1よりも大きく設定される(L1<L2)。したがって、エンジン10の上面視では、図5(B)中に太破線で示すように、上側の外側冷却水路23Aの輪郭線から下側の外側冷却水路23Bの輪郭線がはみ出る。外側冷却水路23Bが突出している位置は、排気ポート6の集合通路6Dに臨む中央部分である。
【0061】
このように、上側の外側冷却水路23Aよりも最大張出寸法の大きい外側冷却水路23Bを張出部14の下面側に配置することで、シリンダブロック2側からの熱伝達が外側冷却水路23Bによって遮蔽されやすくなり、外側冷却水路23Bを流通するエンジン冷却水にその熱が吸収されやすくなる。つまり、シリンダブロック2側からの熱伝達に対する遮熱効果が向上し、シリンダヘッド1の冷却効率が大きく向上する。
【0062】
また、図4図6(C)に示すように、外側冷却水路23Bよりも外表面側の側面14Cには、外側に向かってリブ状に膨出した冷却水リブ32が設けられる。冷却水リブ32は、放熱リブ22と同様に、側面14Cの表面から板厚方向に膨出した膨出部分を紐状に連設してなる突条であり、その内側に外側冷却水路23Bが配置されたものである。つまり、外側冷却水路23Bがシリンダヘッド1の外表面側に向かって突き出て設けられたことによって、外側に浮き出た側面14Cの膨出部分が冷却水リブ32となる。
【0063】
冷却水リブ32は、張出部14の側面14Cと下面14Bとの間に形成される弓形の稜線に沿って、水平方向に延伸される。図4に示す例では、冷却水リブ32が張出部14の側面14Cの全幅にわたって形成されている。このように、張出部14の外表面に冷却水リブ32を設けることで、側面14Cの表面積が増加して放熱性が高まり、外側冷却水路23Bの冷却性が向上する。
【0064】
図5(B)に示すように、内側冷却水路24Bは、外側冷却水路23Bよりも張出部14の内側に配置された冷却水路であり、#2気筒及び#3気筒からの排気を流通させる排気ポート6に沿って、その下面側に配置される。内側冷却水路24Bの配置形状は、内側冷却水路24Aと同様に、エンジン10の上面視で外側冷却水路23Bよりも小さい半円弧状とされる。つまり、内側冷却水路24Bは、内側気筒に接続された排気ポート6(マニホールド,排気通路)に沿って配置される。これにより、排気ポート6は、対をなす内側冷却水路24A,24Bによって上下から挟まれた状態となる。エンジン冷却水の流通方向は、#2気筒側が上流であり、#3気筒側が下流である。
【0065】
内側冷却水路24Bは、外側冷却水路23Bから分岐したのちに合流する形状を有する。すなわち、下側ウォータージャケット4Bも、#1気筒付近で外側冷却水路23Bと内側冷却水路24Bとに分岐したのちに#4気筒付近で合流しており、二系統に分離した流路を有する。また、外側冷却水路23Bと内側冷却水路24Bとの間には、エンジン冷却水が流通しない島部29Bが形成される。シリンダヘッド1の下面側におけるエンジン冷却水の流れを二系統に分割することで、このような分割をしない場合と比較してトータルの流路断面積が減少する。したがって、エンジン冷却水の流速が上昇し、冷却効率が向上する。エンジン冷却水の流速の増加量は、島部29Bの形状や流路方向の断面積に応じたものとなる。
【0066】
内側冷却水路24Bは、外側冷却水路23Bをエンジン中心Cについて縮小させた形状(外側冷却水路23Bに相似な形状)に準えられる。外側冷却水路23B及び内側冷却水路24Bが相似形状であるとき、内側冷却水路24Bの流路長さは、外側冷却水路23Bの流路長さよりも短くなる。したがって、外側冷却水路23B及び内側冷却水路24Bの冷却効率を同等とするためには、外側冷却水路23Bの流路断面積を内側冷却水路24Bの流路断面積よりも小さくすることが好ましい。あるいは、外側冷却水路23B上に、流路断面積の小さい部位(狭く絞られた部位)を設けることが好ましい。
【0067】
外側冷却水路23Bのうち、排気ポート6の集合通路6Dに臨む中央部分を含む範囲には、図5(B)に示すように、張出部14の側面14C(外表面)からシリンダヘッド1の内側に向かって凹んだ形状の窪み部30が設けられる。窪み部30は、フランジ部15のボス部19のうち、下側の二つのボス部19(又は締結孔20)に対応する位置に設けられる。つまり、外側冷却水路23Bは、図5(B)に示すように、ボス部19(締結孔20)に対応する窪み部30を挟んで、フランジ部15の表面に迫り出した形状に形成される。これにより、これらのボス部19は、外側冷却水路23Bの冷却水によってエンジン10のフロント側及びリア側の双方から冷却される。ここで、外側冷却水路23Bのうち、二つのボス部19によって挟まれてフランジ部15の表面に迫り出した部分のことを、迫り出し部35と呼ぶ。
【0068】
また、外側冷却水路23Bの流路断面積は、窪み部30によって小さくなり、外側冷却水路23B内のエンジン冷却水の流れは、張出部14の中央部分で加速される。したがって、排気熱によって昇温しやすい張出部14の中央部分における冷却水の流速が上昇することになり、エンジン10の冷却効率が向上する。
【0069】
また、外側冷却水路23Bには、上記の二つのボス部19(又は締結孔20の外周部)に沿ってエンジン冷却水の流通方向を案内する案内部31が形成される。案内部31は、図5(B)に示すように、迫り出し部35の内側に向かって滑らかに突出した曲面形状の壁体である。案内部31は、#1気筒側から流入するエンジン冷却水を表面に当接させて、二つのボス部19の間(迫り出し部35)に向かう方向へとガイドする機能を持つ。また、二つのボス部19の間(迫り出し部35)に導入されたエンジン冷却水を表面に当接させて、速やかに#4気筒側へと流出させる機能を持つ。外側冷却水路23Bに案内部31を設けることで、迫り出し部35,ボス部19及び締結孔20の外周部における冷却作用が促進され、排気管に対するフランジ部15での締結力及び結合性が確保される。
【0070】
外側冷却水路23Bと内側冷却水路24Bとの間には、両者を接続する接続冷却水路28Bが設けられる。接続冷却水路28Bは、排気ポート6の枝管が合流する股部16及び第二股部17に隣接して配置される。すなわち、図5(B)に示すように、エンジン10の上面視で股部16,第二股部17のそれぞれ重なる位置(ハッチングで示す部分)に、接続冷却水路28Bの位置が設定される。接続冷却水路28Bは、前述の島部29Bを貫通するエンジン冷却水の流路となり、島部29B及びその周辺を冷却するように機能する。なお、接続冷却水路28Bの延在方向は、エンジン中心Cからの放射方向に準えられる。
【0071】
また、接続冷却水路28Bの流路断面積は、外側冷却水路23B,内側冷却水路24Bの流路断面積よりも小さい値に設定される。つまり、図5(B)に示すように、接続冷却水路28Bは他部よりも細い冷却水路とされる。これにより、接続冷却水路28Bを流通するエンジン冷却水の流速が上昇し、島部29B及びその周辺の冷却効率が向上する。
【0072】
外側冷却水路23B及び内側冷却水路24Bの全体形状は、大づかみにいえば、外側冷却水路23A及び内側冷却水路24Aの全体形状と同様に、排気ポート6の下面に沿って、張出部14の下面14Bに対してほぼ平行に配置された面状の形状である。具体的には、エンジン10の外側気筒(#1気筒,#4気筒)に接続された排気ポート6とシリンダ列とで囲まれた半円盤状の形状とされる。このような形状により、下側ウォータージャケット4Bは、シリンダヘッド1側(上方)とシリンダブロック2(下方)との間での熱伝達を遮蔽する熱遮蔽板として機能する。
【0073】
一方、外側冷却水路23Aとは異なり、外側冷却水路23Bの中央部分には、窪み部30及び迫り出し部35が設けられる。外側冷却水路23B及び内側冷却水路24Bは、図6(A),(B)に示すように、締結面15Aに設けられた四個のボス部19のうち、二つの下側のボス部19とほぼ同一の高さに配置される。
【0074】
つまり、外側冷却水路23B及び内側冷却水路24Bは、排気側側壁8の正面から見て、下側の二つのボス部19に干渉する位置に設けられる。そして、締結面15Aのうち二つの下側のボス部19の間に挟まれる下部締結領域15Cの裏側には、下側ウォータージャケット4Bが配置される。言い換えれば、下側の二つの締結孔20の間を接続するように配置される下部締結領域15Cは、フランジ部15の正面視で下側ウォータージャケット4Bと重合する領域内に配置される。つまり、下部締結領域15C及びその左右両端に位置する二つの締結孔20の両方が、下側ウォータージャケット4Bと重合するように配置される。
【0075】
したがって、下部締結領域15Cの全体が下側ウォータージャケット4Bによって満遍なく冷却されることになり、熱の分布が均等化され、下部締結領域15Cの締結応力分布も均等となる。なお、下部締結領域15C及びその左右両端の締結孔20は、下側ウォータージャケット4Bに近接して(下側ウォータージャケット4Bまでの最短距離が所定距離未満となるように)設けられることが好ましい。
【0076】
上部締結領域15Bと下部締結領域15Cとの間の中央締結領域15Dは、その裏側にウォータージャケット4A,4Bが配置されない。しかしこの領域には、空気冷却によってマイルドに熱を発散させる構造(除肉部21,放熱リブ22など)が適用されているため、ヒートスポットになりにくく、安定した冷却性が確保されるとともに、上部締結領域15B及び下部締結領域15C間の温度差に応じた滑らかな温度勾配が維持される。
【0077】
[4.作用,効果]
以下の説明では、上下の外側冷却水路23A,23Bを区別しない場合、単に外側冷却水路23と表記する。同様に、内側冷却水路24A,24Bや接続冷却水路28A,28Bについても、上下の区別が不要である場合には、内側冷却水路24,接続冷却水路28と表記する。
【0078】
(1)上記のシリンダヘッド1では、マニホールド型(多分岐型)の排気ポート6を冷却するためのウォータージャケット4として、外側冷却水路23と内側冷却水路24とが設けられる。このように、内外二系統の冷却水路を設けることで、トータルの流路断面積を確保しつつ、各々の流路断面積を小さくすることができ、冷却水の流速を高めることができる。これにより、シリンダヘッド1に内蔵された排気ポート6周辺の冷却効率を向上させることができる。
【0079】
また、それぞれの冷却水路23,24におけるエンジン冷却水の流速は、それぞれの流路断面積や形状に応じて定まる。このことから、張出部14からの放熱性を考慮して、二系統のそれぞれの冷却水路23,24における流速,流量を個別に設定することが可能となり、シリンダヘッド1の冷却効率を向上させることができる。
【0080】
また、シリンダヘッド1の外表面側と内部側とでは、シリンダヘッド1の外部への放熱性が相違するため、ウォータージャケット4に求められる冷却能力も若干相違する。一方、上記のシリンダヘッド1では、シリンダヘッド1の外表面側と内部側とのそれぞれに対して、ウォータージャケット4が分離して設けられる。これにより、各々の冷却水路に適した冷却能力を与えることができ、エンジン10の冷却性及びその制御性を向上させることができる。
【0081】
例えば、張出部14の側面14Cはその内部側よりも空冷されやすく、内側冷却水路24に求められる冷却能力は、外側冷却水路23に求められる冷却能力よりも大きい。そこで、内側冷却水路24A,24Bの冷却能力が外側冷却水路23の冷却能力よりも大きくなるように、二つの冷却水路23,24の流路断面積,形状を設定すれば、張出部14の内外方向での熱分布を均すことができ、全体としてのシリンダヘッド1の冷却効率を向上させることができる。
【0082】
(2)外側冷却水路23A,23Bは、外側気筒である#1気筒,#4気筒に接続された排気通路に沿って、エンジン10の上面視で半円弧状に配置される。一方、内側冷却水路24A,24Bは、内側気筒である#2気筒,#3気筒に接続された排気通路に沿って、外側冷却水路23A,23Bの内側で半円弧状に配置される。このような冷却水路のレイアウトにより、排気ポート6全体の冷却効率を高めつつ、ウォータージャケット4の省スペース化を図ることができる。
【0083】
(3)外側冷却水路23と内側冷却水路24との間には、両者を接続する接続冷却水路28が設けられる。この接続冷却水路28は、排気ポート6の枝管が合流する股部16及び第二股部17に隣接して配置される。このように、排気熱によって高温になりやすい股部16及び第二股部17に接続冷却水路28を設けることで、冷却性を向上させることができる。
【0084】
(4)上記のウォータージャケット4A,4Bは、マニホールド型の排気ポート6を上下から挟むように対をなして配置される。すなわち、シリンダヘッド1の外表面側に位置する排気通路は、二つの外側冷却水路23A,23Bによって上下から冷却され、シリンダヘッド1の内部側に位置する排気通路は、二つの内側冷却水路24A,24Bによって上下から冷却される。さらに、枝管が合流する股部16,第二股部17は、二つの接続冷却水路28A,28Bによって上下から冷却される。このように、排気通路の上下にウォータージャケット4A,4Bを配置することで、排気通路を均等に冷却して熱の偏りを均すことができ、冷却効率をさらに向上させることができる。
特に、上記のシリンダヘッド1では、股部16及び第二股部17が一対の接続冷却水路28によって上下から挟まれた状態となる。これにより、シリンダヘッド1の冷却性をさらに向上させることができる。
【0085】
(5)外側冷却水路23Bの中央部分には、張出部14の側面14C(外表面)からシリンダヘッド1の内側に向かって凹んだ形状の窪み部30が設けられ、窪み部30の内側にボス部19が配置される。つまり、ボス部19は外側冷却水路23Bによって左右から挟まれた状態となり、エンジン10のフロント側及びリア側の双方から冷却される。このように、外側冷却水路23Bに窪み部30を設けることで、締結孔20に固定される締結具の冷却性を向上させることができる。また、シリンダヘッド1と排気管(触媒装置,ターボチャージャー等との接続用の管材を含む)との接続箇所における締結力が熱によって低下するような事態を回避することができる。
【0086】
(6)外側冷却水路23Bには、図5(B)に示すように、二つのボス部19(又は締結孔20の外周部)に沿ってエンジン冷却水の流通方向を案内する案内部31が形成される。案内部31は、上記の窪み部30によって阻害されうるエンジン冷却水の流れをスムーズにするように機能する。例えば、#1気筒側から流入するエンジン冷却水は、一方の案内部31の表面に当接し、二つのボス部19の間(迫り出し部35)に向かって案内された後に、他方の案内部31の表面に当接して#4気筒側へと流出する。このように、案内部31を外側冷却水路23Bの窪み部30及び迫り出し部35に対応させて設けることにより、ボス部19や締結孔20の外周部の冷却効率を高めることができる。
【0087】
(7)外側冷却水路23Bの外側には、シリンダヘッド1の外表面から膨出した冷却水リブ32が設けられる。これにより、張出部14の側面14Cの表面積を増大させることができ、放熱性を向上させることができる。また、外側冷却水路23Bの内部を流通するエンジン冷却水の熱は、冷却水リブ32を介してエンジン10の外部へと放熱される。したがって、冷却系の温度上昇を抑制することができ、外側冷却水路23Bの冷却性を向上させることができる。
【0088】
(8)シリンダヘッド1の上側と下側とでは熱環境(例えば、シリンダブロック2,ターボチャージャー,排気触媒装置からの熱伝達量)が相違するため、ウォータージャケット4に求められる冷却能力も若干相違する。一方、上記のシリンダヘッド1では、マニホールド型(多分岐型)の排気ポート6を冷却するためのウォータージャケット4として、上側ウォータージャケット4Aと下側ウォータージャケット4Bとが設けられる。このように、上下二系統の冷却水路を設けることで、トータルの流路断面積を確保しつつ、各々の流路断面積を小さくすることができ、冷却水の流速を高めることができる。これにより、シリンダヘッド1に内蔵された排気ポート6周辺の冷却効率を向上させることができる。また、シリンダヘッド1の上側と下側とのそれぞれに対して、ウォータージャケット4を分離して設けることで、各々の冷却水路に適した冷却能力を与えることができ、エンジン10の冷却性及びその制御性を向上させることができる。
【0089】
また、一方のウォータージャケット4を他方よりも外側に突出させることで、上下のウォータージャケット4A,4Bの流量及び流速を相違させることができ、各々の部位に見合った冷却能力を設定することができ、エンジン10の冷却性及びその制御性を向上させることができる。例えば、下面側の方が上面側よりも熱くなりやすいエンジン10の場合には、下面側の冷却能力を高めるべく、下側ウォータージャケット4Bを上側ウォータージャケット4Aよりも大きくすることができ、シリンダヘッド1の冷却性,冷却効率を向上させることができる。反対に、上面側の方が下面側よりも熱くなりやすいエンジン10の場合には、上側ウォータージャケット4Aを下側ウォータージャケット4Bよりも大きくすることができ、シリンダヘッド1の冷却性,冷却効率を向上させることができる。
【0090】
(9)上記のシリンダヘッド1では、下側ウォータージャケット4Bが上側ウォータージャケット4Aよりもエンジン10の外側に向かって突出した形状に形成されているため、シリンダヘッド1側(上方)とシリンダブロック2(下方)との間での熱伝達を遮蔽することができ、シリンダヘッド1の冷却性及び冷却効率を向上させることができる。
また、シリンダヘッド1の下面には、燃焼室(シリンダ3)の天井面となる触火面が配置される。この触火面の近くに配置される下側ウォータージャケット4Bを、上側ウォータージャケット4Aよりもエンジン10の外側に向かって突出させることで、シリンダブロック2側からの熱伝達を効率的に遮断することができ、シリンダヘッド1に対する遮熱効果を向上させることができる。
【0091】
特に、下側ウォータージャケット4Bが突出している位置は、排気ポート6の集合通路6Dに臨む中央部分となっているため、フランジ部15の冷却効率を高めることができ、締結力が熱によって低下するような事態を回避することができる。
【0092】
(10)また、これらのウォータージャケット4A,4Bの全体形状は、外側気筒(#1気筒,#4気筒)に接続された排気ポート6とシリンダ列とで囲まれた半円盤状の形状とされているため、上下方向の寸法をコンパクトにまとめやすく、排気ポート6全体の冷却効率を高めつつ、ウォータージャケット4A,4Bの省スペース化を図ることができる。
【0093】
(11)図6(A)に示すように、上記のシリンダヘッド1では、裏側に上側ウォータージャケット4Aが配置されない二つの締結孔20の間が、これと同じく裏側に上側ウォータージャケット4Aが配置されない上部締結領域15Bによって接続される。一方、裏側に下側ウォータージャケット4Bが配置される二つの締結孔20の間は、これと同じく裏側に下側ウォータージャケット4Bが配置される下部締結領域15Cによって接続される。このようなレイアウトにより、上部締結領域15B及び下部締結領域15Cのそれぞれについて、熱分布を均等にして適正化することができ、締結面15Aの締結力を維持することができる。
【0094】
(12)上記のフランジ部15では、下部締結領域15Cがおもに水冷され、上部締結領域15Bはおもに空冷されるため、これらの間に冷却温度差が生じうる。一方、これらの上部締結領域15B及び下部締結領域15Cに挟まれた中央締結領域15Dは、他部よりも幅が狭く形成され、下部締結領域15Cの冷却能力と上部締結領域15Bの冷却能力との中間的な冷却能力が発揮される。これにより、下部締結領域15Cと上部締結領域15Bとの温度差に応じた滑らかな温度勾配を維持することができ、締結面15Aの締結力を維持することができる。
【0095】
さらに、上部締結領域15B及び下部締結領域15Cに挟まれた中央締結領域15Dには、除肉部21,放熱リブ22といった空冷構造が適用されるため、安定した冷却性を確保することができ、上部締結領域15B及び下部締結領域15C間の温度差に応じた滑らかな温度勾配を維持することができ、締結面15Aの締結力を維持することができる。
【0096】
(13)上記のフランジ部15では、排気口18の下側に配置される下部締結領域15Cがおもに水冷され、排気口18の上側に配置される上部締結領域15Bはおもに空冷される。このように、冷却能力の高い水冷構造を排気口18の下側に適用することで、シリンダブロック2側からの熱伝達の影響を受けにくくすることができ、フランジ部15の冷却性を向上させるとともに、締結力を維持することができる。
【0097】
(14)上記のシリンダヘッド1では、下部締結領域15Cが下側ウォータージャケット4Bと重合する位置に設けられる。一方、上部締結領域15Bは、上側ウォータージャケット4Aよりも上方に配置される。このようなレイアウトにより、フランジ部15の上面側からの放熱性を高めつつ、その下面側の水冷性を向上させることができる。したがって、フランジ部15の冷却性を向上させるとともに、締結力を維持することができる。
【0098】
[5.変形例]
上述した実施形態に関わらず、それらの趣旨を逸脱しない範囲で種々変形して実施することができる。本実施形態の各構成は、必要に応じて取捨選択することができ、あるいは適宜組み合わせてもよい。
【0099】
例えば、上述の実施形態では、第一締結面として機能する下部締結領域15Cが排気口18の下方に配置されたものを例示したが、下部締結領域15Cの配設位置はこれに限定されない。例えば、フランジ部15の上方に熱源となる装置が配置されたレイアウトの場合には、排気口18よりも上方に第一締結面として機能する締結面を設けることで、熱分布を適正化することができる。なお、第一締結面として機能する部位の延在方向も任意であり、例えばフランジ部15の正面視で縦方向に延在する形状としてもよい。これに加えて、第二締結面として機能する上部締結領域15Bに関しても同様である。
【0100】
また、上述の実施形態では、張出部14の内部に上下二層のウォータージャケット4A,4Bを形成したものを例示したが、ウォータージャケット4の層数は単層であってもよいし、三層以上の複層であってもよい。また、上述の実施形態では、張出部14の内部に内外二系統のウォータージャケット23,24を形成したものを例示したが、ウォータージャケット4の系統数は一系統であってもよいし、三系統以上であってもよい。
【0101】
少なくとも、任意の層のウォータージャケット4を外側冷却水路23と内側冷却水路24とに分離するように形成することで、あるいは、複層のウォータージャケット4を形成することで、各々の流路断面積を自在に変更することができ、放熱性を考慮した冷却能力を付与することができ、シリンダヘッド1の冷却効率を向上させることができる。
【0102】
また、上述の実施形態では、外側冷却水路23と内側冷却水路24とがともに、エンジン10の上面視で半円弧状に配置されたものを例示したが、具体的な配置形状はこれに限定されない。例えば、エンジン冷却水の流れやすさや、シリンダヘッド1の熱の分布、張出部14の外表面からの放熱量(空冷の効率)、シリンダブロック2側からの受熱量などを考慮して、最適な配置形状を設定してもよい。
【0103】
また、上述の実施形態では、フランジ部15がシリンダ列方向Lの中央に配置されたものを例示したが、フランジ部15の位置はこれに限られない。例えば、フランジ部15の位置を図4中の左右何れかの方向にシフトさせてもよい。また、フランジ部15の具体的な形状も任意に設定することができる。ボス部19は、締結面15Aの四隅に設けられていなくてもよいし、ボス部19の箇所数が三箇所であってもよい。また、ボス部19とシリンダヘッド1の内部のウォータージャケット4A,4Bとの位置関係も、上記したものに限られない。
【0104】
上記のシリンダヘッド1は、直列四気筒のエンジン10以外の多気筒エンジン(例えば直列三気筒エンジンやV型六気筒エンジンなど)にも適用可能である。また、一つのシリンダ3に吸気バルブ孔11及び排気バルブ孔12が一つずつ設けられたエンジン(マルチバルブでないエンジン)であってもよい。
【符号の説明】
【0105】
2 シリンダブロック
4 ウォータージャケット
4A 上側ウォータージャケット(上側冷却水路)
4B 下側ウォータージャケット(下側冷却水路)
5 吸気ポート
6 排気ポート
14 張出部
14A 上面
14B 下面
14C 側面
15 フランジ部
15A 締結面
15B 上部締結領域(第二締結面)
15C 下部締結領域(第一締結面)
15D 中間締結領域
20 締結孔(ねじ穴)
27 絞り部
28 接続冷却水路
29 島部
30 窪み部
31 案内部
32 冷却水リブ
図1
図2
図3
図4
図5
図6